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経済審議会経済主体役割部会 (第4回)

議事録

平成9年11月7日(金)10:00~12:00

経済企画庁特別会議室 (1230号室)


議事次第

  1. 開会
  2. 官民の役割分担
  3. 企業部門の課題
  4. その他
  5. 閉会

(配付資料)

  1. 資料1.経済審議会経済主体役割部会委員名簿
  2. 資料2.官民の役割分担について
  3. 資料3.シェアード委員問題提起用資料
  4. 資料4.「企業部門の課題」に関する参考資料
  5. 資料5.今後の審議スケジュールについて(案)

経済審議会経済主体役割部会委員名簿

 

   部会長 水口  弘一    (株)野村総合研究所顧問
 部会長代理 金井   務    (株)日立製作所取締役社長
       潮田  道夫    毎日新聞経済部副部長
       浦田  秀次郎    早稲田大学社会科学部教授
       奥野  正寛    東京大学大学院経済学研究科教授
       川勝  平太    早稲田大学政治経済学部教授
       河村  幹夫    多摩大学経営情報学部教授
       神田  秀樹    東京大学大学院法学研究科教授
       公文  俊平    国際大学グローバルコミュニケーションセンター所長
       ポール・シェアード   ベアリング投信株式会社ストラテジスト
       末松  謙 一    (株)さくら銀行相談役
       竹内  佐和子    長銀総合研究所主席研究員
       鶴田  卓彦    (株)日本経済新聞社代表取締役社長
       得本  輝人    日本労働組合総連合会副会長
       豊島   格    日本貿易振興会理事長
       那須   翔    東京電力(株)取締役会長
       西村  清彦    東京大学大学院経済学研究科教授
       樋口  美雄    慶応義塾大学商学部教授
       グレン・S・フクシマ  在日米国商工会議所(ACCJ) 副会頭
       星野  進保   総合研究開発機構理事長
       星野  昌子   日本国際ボランティアセンター特別顧問
       森地   茂    東京大学大学院工学系研究科教授
       諸井   虔    秩父小野田(株)取締役相談役
       山内  弘隆    一橋大学商学部助教授
       山口  光秀    東京証券取引所理事長
       吉野  直行    慶応義塾大学経済学部教授
       米倉  誠一郎    一橋大学イノベーション研究センター教授
       和田  正江    主婦連合会副会長


〔 部会長 〕 定刻になりましたので、ただいまから、第4回の経済主体役割部会 を開催させていただきます。
 本日は委員の皆様方には、ご多用中のところを早朝からお集まりいただきまして、誠に ありがとうございます。
 本日の議題は2つございます。
 第1は、「官民の役割分担」についてでございます。第2が「企業部門の課題」につい てでございます。
 それでは、本日の議事に入ります前に、栗本経済企画政務次官がお見えでございますの で、ご挨拶をいただきたいと存じます。次官、よろしくお願いいたします。

〔 栗本政務次官 〕 経済企画政務次官の栗本慎一郎でございます。
 最近の我が国の景気動向をみますと、民間需要を中心とする景気回復の基調は基本的に は失われておらず、腰折れというような状況にはないものと認識しております。しかし、 今売っております超大手週刊誌を見ますと、“もう日本はだめだ”という記事が掲載され ております。実はこのベースは全部私が提供したものでありまして、私が具体的に細かく 数字等を挙げまして、日本経済の良い点、悪い点を含めて説明したところ、意見を全部抜 きまして、「これでだめだ。日本と香港の市場は完全にリンクして、両方だめになる」と いうふうなことを書いております。これがいわば国民の本当の声であるのか、あるいは、 マインドが無理に不安に揺れているだけなのかということも含めて、日本国経済というの を考えなければいけないのかと、私は、後者で今考えております。
 そういうような中で、経済企画庁といたしましては、単に指標を出すだけではなく、し かし、現実を厳しく認識して、これまで以上に厳しい対策を経済企画庁を中心に政府・橋 本内閣においてとっていこうと今しているところでございます。
 また、経済主体役割部会の委員の皆様方には、本当にいろいろご提言、ご審査賜りまし て感謝申し上げますが、同時に、ご承知のとおり、第2次橋本内閣が進行させております、 テレビ・新聞では省庁再編だけが問題になっておりますが、同時にそこでは、言うまでも なく、官民の一体どこまでが官なのかということを具体的に今策定作業をしております。 そういったことを踏まえまして、今のような国民あるいはジャーナリズムのマインドも含 めまして、実際に可能な改革を一刻も早くご指示賜りますようにお願いを申し上げたいと 思っております。
 何よりもまた、その中では経済企画庁の役割自身が、官でございますけれども、一体ど うなのかという議論さえもあるわけでございまして、新しくこういう船をつくったらいい、 そういう議論も必要かと思いますけれども、時期的にいいまして、それがSFになってし まうこともございます。今実際、日本では何ができるのか。今言ったようなマインドも含 めまして何ができるのか、できることをやろうではないか。そして、改革をしようではな いかという視点でぜひとも、この審議から提言に至れるような、いい船の構図はあるのだ けれども、それは誰も乗らない、あるいはつくらない、というようなことでは仕方ないの ではないだろうかと思っておりまして、委員の皆様の具体的で、積極的で、非常にプラク ティカルな、その意味でレボリューショナルなご審議・ご提言を賜りたいと思っておりま す。
 どうもありがとうございました。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。
 それではまず、第1の議題であります「官民の役割分担」に入らせていただきます。
 本日は、事務局からの説明に引き続き、山内委員より、PFIなどについて問題提起を していただき、それをもとに委員の皆様に議論をしていただきたいと思います。
 それではまず、事務局より説明をお願いいたします。

〔 事務局 〕 それでは、事務局より資料2に基づきまして説明をさせていただき ます。
 前回の役割部会の議事概要がお手元にあると思います。前回につきましては、官民の役 割分担について、社会資本整備を題材にして議論を進めさせていただきました。この中で は、我が国の社会資本整備に一層の民間活力を導入するために現在、欧米諸国やアジア諸 国で行われております、BOT(Build Operate Transfer)方式等について事例をご紹介し、 特にユーロトンネルでの問題点等をご説明する中で、我が国の社会資本整備への導入に当 たっての課題、例えば、リスク分担のあり方ですとか、料金改定の仕組みですとか、用地 取得等の仕組みですとか、等々において官民がどのように役割分担をし、さらに官のサイ ドでどんな条件整備をすれば実際に導入ができるかというところをご議論いただいたわけ でございます。
 さらに、地域における社会資本整備、昨今の財政状況の厳しい折、地域においてはまだ まだ社会資本整備が未熟であるという議論もございます。こうした中で、民間活力をうま く導入しながら着実な整備を進めていく上にどんな工夫をしたらいいかということで、各 府県なり町で取り組んでいる工夫をご紹介し、ご議論をいただいたわけでございます。
 本日は、論点にございますように、前回ご議論いただいたBOTという、1つはプロジ ェクトの整備・運営体制ということで、ある意味でグローバルなスタンダードになってい るもの、そういう概念を広く取り込んだ形で、最近よく話題になっておりますイギリスの PFI (Private Finance Initiative) 民間資金先行あるいは先導構想とでも訳したらよ ろしいでしょうか、これをご紹介しまして、ご議論をいただきたいと思います。
 あわせまして、前回、地域の社会資本整備の管理・運営のあり方につきましていろいろ ご議論いただきました。それを計画から実施に至るプロセスを少し簡単にまとめまして、 こうした中で現在、社会資本整備の評価ということでいろいろなところでいろいろな取組 みがなされております。これもちょっとご紹介する中でご議論の材料にしていただきたい と思っております。 まず、PFIにつきましての簡単なご説明をさせていただきます。5ページ目でござい ます。
 PFIにつきましては、これはイギリスで92年からメージャー政権下で「シティズンズ ・チャーター」という市民憲章の中に示された考え方を基本として具体化されたものでご ざいまして、基本的には公共サービスについて、市場化テストを通じて質の改善を目指す。 今まで、官がサービスを提供していたものですが、それは公共部門が、政府が、そのサー ビスの購入媒体となってやるということで、基本的に民間にプロジェクトの建設とか運営 を委ねて、まず考えてみようということでございます。
 これにつきましては、80年代のサッチャー政権下でさまざまな民活の取組みがなされま した。こういう流れを受けて、幾多の問題も含んでいたわけですが、イギリスの置かれて おりました「英国病」と言われている状況を打破するために、ビッグバンでありましたり、 ある意味では行政改革になりまして、1つは、政府はサービスの購入媒体となるという考 え方に基づいてやっているわけでございます。
 ですから、基本的に社会資本整備にとらわれず、例えば、次の7ページの一番上の表に ございますように、そういう概念の下に広い分野にわたってPFIの概念を適用してやっ ているということでございます。
 6ページ目でございます。社会資本につきましては、いろいろなサービスがあるわけで すけれども、社会資本整備というのを中心にご説明させていただきます。
 イギリスの大蔵省での整理ということで、3タイプの分類がございます。まず1つは、 自立タイプ。これは有料橋等でやります、公的負担はないということですが、政府が事業 許可を出す。民間が施設を運営し事業を行って、コストは利用料金の収入によって回収す る。一定期間後、公に渡すというタイプでございます。
 これにつきましては、具体的な事例として、8ページの「クイーンエリザベス二世橋」 というところにありますが、これは20年で資金を回収するということでございます。 もう一つは、公共サービスへの提供タイプ。これは、民間セクターが施設を建設運営し ます。それから、主として公共セクターがその資金といいますか利用料を払うということ で、その公共セクターからの収入によってコストを回収します。情報システム、病院、道 路とかいうものがございます。
 3つ目のタイプで、ジョイントベンチャータイプ。これは補助金的支援活用型とも言わ れておりますが、再開発とか鉄道等で多用されているわけですけれども、官民双方の資金 を用いて施設を建設する。プロジェクトの運営は民間が主導する。公共セクターのリター ンはプロジェクトから直接回収できない外部経済によるというのが一般的になっています。 これの例も8ページにございますように、鉄道としてドックランドライトレイル延伸工 事がございます。公共サイドとしては公社が土地取得と鉄道運営を行う。民間は、プロジ ェクトの設計、建設、資金調達及びメンテナンスを行う。これは契約期間は24年半という ことですが、期間終了後施設を無償で公社に渡す。事業会社は公社に鉄道施設を貸し付け ることによって資金を回収するという方式です。 それから、再開発の例としてカーフィリー地区の再開発の事例がございます。まず土地 公社が地権者から土地を購入する。自治体と開発方針を協議して、その後具体的な開発を 民間企業に委ねる。民間と国がお金を出してプロジェクトの資金に充てるということで、 民間企業は、地区内の新設の建物を保有し、各業者にこれを賃貸することによって収益を 上げるということです。 とばしましたが、2番目の公共サービスへの提供タイプの例が、8ページの下の方に道 路としてDBFO(Design Build Finance Operate)、これは前回BOTでご紹介したのと ちょっと違うタイプのものでございます。これにつきましては、イギリスの場合は道路は 基本的に無料でございます。橋とかトンネルは、一番上にあったように有料でやっていま すが、一般の道路は有料ですので、一つ一つの利用者から料金はとらないで、基本的に交 通省による事業として、30年間の契約期間を前提として、民間事業者、応札者が自らの交 通需要予測に従って仮想通行料金を定めて、それから公共の定めるサービス水準に従って 施設の設計から運営までを行う。公共サイドは、実際の通行料に応じた対価を民間事業者 に支払うということで、初期の建設投資は民間事業者に委ねて、その使用料という形で後 から順々に民間事業者に支払うというスキームでございます。 このようなものにつきましては6ページ目に示しましたような「PFIの実施プロセス」 ということで、ニーズと目的の多様化から始まりまして、民間実施それから公共実施をか なり細部にわたるまで同時並行的に詰めた後で実際にどちらにやるか。基本的には民間と いうのを頭に置きながら進めるということでございます。
 7ページ目に「PFIの実績」というのがございますが、時間もございませんので簡単 に申し上げます。一番下の「公共部門資本支出の推移及び計画」という表に、1999年度ま での3カ年のPFIの計画がございますが、公共部門支出のそれぞれに96、97、98年度に 従って9%、13%、15%と増加しているということですが、ここでちょっと見ていただき たいのは、例えば一番右の欄、中央政府・地方団体・国営企業体等とありまして、公共部 門の占める比率が中央が4、地方が3、国営企業が3という比率でございます。日本が、 上から1対8対1という比率で地方が大きいというふうになっておりますので、こういう PFI方式を考えるに当たりましてもそうですが、地方政府の持っている社会資本整備に ついてどう考えるかというのが1つの課題であると思います。
 9ページ目ですが、「PFI推進の前提条件」並びに「PFIのメリットと問題点」と いうのがございます。下の方のメリット・デメリットにつきましては、公共にとって最大 の利点としては、計画面等で行政の関与を維持しながら財政負担と政府のリスクを民間に 移転できるということでございます。したがいまして、政府は予算制約を超えたプロジェ クトを実現できる。一方、ユーザー側にしてみると良いサービスが提供されると同時に、 事業を行う民間事業者にとってはビジネスチャンスでございまして、新たな収益機会を獲 得するチャンスとなります。
 一方、イギリスで同時にいろいろ問題点が指摘されております。
 ・プロジェクト入札から契約までの手続きが複雑で時間を要する。
 ・公共からのリスクの押し付けが過度になる(あるいは公共がリスクを過大に負うこと になるおそれもある)。
 ・そういうリスクの高さから入札者が限られる(これは大手に限られる)。
 ・入札に係るコストが割高になる。
 ・いざ事業がうまくいかなかった場合に政府が事業をコントロールするのが難しい。
 ・(ある意味ではコストとの比較ですが、)サービスの質が低下するおそれもある。
 ・落札後、契約までの条件の詰めにおいて価格が増嵩する事例がある。 等々がございますが、今イギリスにおいてはまだ積極的にこの取組みを進めているという ことでございます。
 次に10ページ目ですが、これは簡単にご説明したいと思います。行政運営における評価 について、行財政改革の中での取組みを、例えば行政改革委員会の資料から、11ページ~ 12ページのように抜粋させていただいていますが、官と民の境目をどのように考えるか、 行政における説明責任の遂行と透明性の確保というのを便益と費用の相互評価とか数量的 評価に従ってやるということで、12ページの下の図に示しましたような矢印の向きで今後 考えていくべきだということも示してございます。これはあくまでも参考でございます。 13ページに、前回の3回目のときも若干ご説明したのですが、社会資本整備等における 評価は今どんなものがなされているか。費用効果分析の実施・公表、事業採択基準の公表、 事後評価の取組みということでそれぞれの分野でなされております。
 14ページは、マスコミ等で有名になりました北海道における「時のアセスメント」とい うことで、一定の時間の変化を踏まえて、以前から行っている施策のなかなか実施できな い、あるいは進まない施策の再評価をするという、一定期間後・時間経過後の評価をして いる事例が1つございます。
 15ページは、三重県における取組み事例。これは先ほどのPFIとある意味では似たよ うなものかもしれませんが、行政の役割をサービスという観点から見直しを行って、15ペ ージの下に書いてございますように「目的の妥当性を評価し、改革を行う」、「総合計画 における政策体系に基づいて事務事業の目的評価を行う」、「目的達成度を計るために指 標を設定する」という取組みがございまして、95年度から97年度の3カ年でかなりいろい ろ進めているところです。
 17ページは、政令市の1つの事例ですが、北九州市において、行財政システムをゼロベ ースの視点に立って抜本的に見直すということで、基本的に事業の優先度を位置づける、 あるいは市民参加による町づくりを推進するといった各地でのいろいろな取組がございま す。
 それを踏まえまして、また前回の3回目の部会の議論を踏まえまして、3ページに戻っ ていただきまして恐縮ですが、「社会資本整備における国と地方の役割分担、官と民の役 割分担の視点からの評価検討手法について」ということで簡単に取りまとめたものでござ います。1つは、各地域でどのような社会資本を整備してどのような地域づくりを行うか ということでございます。これは既に、法に基づくもの、あるいは自主的に作っている総 合計画等いろいろなものがございます。これについて、欠けている視点というのですか、 例えばその計画がフィージブルなものであるかどうか、優先順位が付けられているか、資 金計画がきちんとしているか、あるいは他計画との連携で、特に最近は地域連携というこ とで、近接する自治体の施設も有効に活用するとか、そもそも自分のところのつくるもの ばかりではなくて、今あるものをいかにうまく使うかという、そういう取組みをどうした らいいか、というようなものを踏まえた上で計画を作り、さらに個々のプロジェクトにつ いては3ページに書いてありますようなグローバルな視点、ナショナルな視点、これは国 ・県・市というふうに分かれるのかもしれませんが、それぞれの社会資本の性格に従って 分担をしていく。さらに、一つ一つやるときには、事業効果をきちんと出して公表する。 さらには、さまざまな時点で民間活力の導入を検討するような取組みが必要ではないか。
 ということで前回いろいろご議論いただきましたものをここに取りまとめました。ちょ っと時間超過いたしましたが、事務局からの説明は以上でございます。

〔 部会長 〕 ありがとうございました。
 次に、山内委員よろしくお願いいたします。

〔 山内委員 〕 ただいま、PFIについてご説明いただきましたが、私のコメントは PFIについてもう少し具体的な問題点あるいは評価についてお話をするということでご ざいます。
 あらかたのことは今ご説明していただいたとおりでございますが、私の方からもう少し 付け加えたいと思います。まず1点目は、資料の5ページ目にもありましたけれども、P FIが出てきた背景と申しますか、考え方でございます。イギリスのサッチャー政権以降 の経済の市場化という流れの中でPFIというのは出てきたわけですけれども、先ほども ご紹介いただきましたマーケットテスティングあるいはバリューフォーマネーという考え 方、つまり公的なサービスであっても一度マーケットのテストをして、それによって効率 化あるいはコストの有効性というものを図ろう、そういう考え方の中に出てきたというこ とであります。ですから、ご承知のとおり現在、行政改革の方で問題になっていますいわ ゆる独立行政法人エージェンシーの考え方に非常に近く、エージェンシーの場合もある一 定の目標を設定して、それをどう評価するということであります。それと同時に、PFI の場合も公的なサービスをいかにマーケットのテストに応じて評価するかという、そうい う背景を持っているという点であります。
 このことは実は、全体の政策を考える上で比較的重要なポイントなわけでありまして、 日本の場合でも、個別の事業について例えば入札制をとるとか、あるいは公的な機関がア ウトソーシングをする場合に入札という手順をとっているわけですけれども、それを根本 のところからやってしまうおうという、そういう考え方に立っているということでありま す。
 これが日本の今の行政制度の中でどこまで取り入れられるかというような問題もありま すので、それについては後ほど指摘をしたいと思います。
 具体的なPFIの方法につきましては、先ほど6ページのところで類型を出していただ きましたが、3つぐらいに分けられるのが一般的な分け方になっておりますが、ただ注意 すべきことは、PFIというのは何か根拠法があって、その根拠法に基づいてやるという わけではないということです。つまり、民間活力が主体となって資金調達をして事業を行 うという、こういう手法全体を漠然とPFIという呼び方をしているだけでありまして、 例えば、これを我が国でやる場合に、その法的整備をどうするのかといったような場合に、 いわゆる英米法の考え方と日本の場合は違いますので、その辺の注意も必要かなという感 じを持っております。
 先ほどの類型にございました3つのタイプ、自立タイプと言われるものは前回もご指摘 いてだきましたBOT(Build Operate Transfer)、いわゆる民間がつくって運営をして、 それによって事業を成り立たせて、その後で公的機関に移管する、そういうやり方に非常 に近いです。
 それから、公共サービスへの提供タイプというのは、アウトソーシングと考えていただ くのが一番いいと思うのですが、要するに公的な主体が供給するサービスについて民間か らアウトソーシングをして、それを政府なり地方自治体が購入する、こういう形をとって いるものです。
 ジョイントベンチャータイプは、いろいろありますけれども、先ほどご説明がありまし たドックランドの鉄道のケースなどというのは、日本の言葉でいいますと公設民営に比較 的近い形になっています。公設民営と申しますのは、いわゆる基本的なインフラ部分を公 的な主体がつくり、その上を民が運営する。例えば、鉄道であれば鉄道線路から下の部分 を公的な部分がつくって、それを運営する主体を民間に行わせる、こういうようなやり方 になっているわけであります。
 ジョイントベンチャータイプで官民が資金を出し合ってという形、双方が資金を出し合 ってという形ですが、基本的にこういう形は1つのやり方としては日本では第三セクター の方式がありますが、それをもうちょっと明確化するといいますか、責任分担をはっきり させるというようなやり方が、イギリスで行われているようなケースだというふうに思い ます。
 いくつかの例がありましたけれども、基本的にはPFIがどういうようなところでメリ ットをもつかということ、先ほどもまとめがありましたけれども、1つは、マーケットテ スティングという形で効率的な運営がなされるというのもそれでありますが、もう一つは、 公的なサービスの提供の範囲を拡大することができるというような点にあるわけです。し かし、このことは逆にみますといくつかの問題点を含んでいるということです。
 例えば、有名な例ですが、先ほどの行政サービスのアウトソーシングとして刑務所を民 営化したというようなケースがありますが、これはどういうことかといいますと、いわゆ る刑務所に必要な要件を備えたものについてあらかじめ設定しておきまして、それを民間 でコンペにかけて調達といいますか、サービスを提供させる。それに対して行政は、刑務 所のサービスを購入するという形で使用料を払っていくわけです。逆に考えますと、この ことは、1つは、公的なサービスとして一括の何かまとまった資金が必要なところを民間 が資金調達をして、それを代替するという形にはなりますが、見方によってはこれは、例 えば刑務所をつくるときに、ある公的な主体が本来であれば起債をしてつくったところを、 民間が起債をする形になっていて、それを延べ払いで公的な主体が使用料として払うとい うような形になっている。そうすると、ある意味では隠れ借金的なものになる可能性もあ ります。
 イギリスの政府に聞きますと、これは隠れ借金ではないというふうに言いますし、PF Iの隠れ借金自体は、これは基本的にいけないことであるという認識はあるわけですが、 そういう使われ方をする可能性もあるわけで、そういう危険性をはらんでいるということ は認識すべきだというふうに思います。
 もう一つの大きな問題は、リスクをどういうふうに見積もるかということでありまして、 大規模投資ほど当然そのリスクが大きいわけですから、そのリスクを適切に見積もるのか どうかということであります。イギリスの例を見ますと、いろいろな形で官民の間でリス クの分担を調整しているということであります。例えば、先ほどクイーンエリザベス二世 橋の例がありましたけれども、これは非常に大きなプロジェクトであってリスクも大きい わけですが、その場合も、例えば橋と競合するトンネルを同じ会社に運営させる。そのこ とによって、ある意味では地域独占性をつくり出してリスクを下げる、そういうやり方を とることもできます。
 それから、先ほどのアウトソーシングのケースですと、使用料として事前に契約で使用 料金みたいなものが支払われることになっていますので、極めて大きな部分のリスクが民 間側から官側に移管するという形になります。
 それから、先ほどちょっとご紹介のありました8ページの道路のDBFO(Design Build Finance Operate) ですが、これについてもシャドートール(Shadow Toll)という形で料 金が官から民間会社に支払われるという形になります。シャドートール(Shadow Toll) と 申しますのは、いわゆる料金を、通行した台数に対して1台当たりいくらということを事 前に決めておきまして、通った台数に応じて料金を支払うという形であります。この形で すと、通行量によって料金収入が違ってきますので、リスクの面からみますと、民間会社 と官とある程度分担をするというような形になります。
 いずれにしましても、そういう形でいろいろなリスクの程度をケース・ケースに応じて 分担し合っているというものがあります。これをどう見積もるかというのは比較的難しい 問題でありまして、特に最後の問題点で挙げられましたけれども、事業サービス供給の安 定性あるいは確実性というものをどのように見積もるかによって、リスクのとり方がずい ぶん変わったわけです。例えば、ある事業をある事業主体が落札をしたといいますか、請 け負った。それが本当に始められるのかどうか。始まってそのサービスの安定性が確認さ れるのかどうか。こういうような問題がリスクとともに絡んでくるということです。
 それから、日本についてこれを適用する場合のいくつかの点でございますが、ある意味 では日本はこういった公共施設を民間的な手法で供給するという面では先行的な事例を持 っています。具体的に申しますと、例えば道路の場合であれば、公社公団方式というのを とりまして、利用者負担によってそれを供給するという形ができております。ですので、 これとどのような関わりをこのPFIの間に持たせるかという問題があります。ただ、ご 承知のとおり、公社公団の方はどちらかというと安定的かつ早期の施設整備というものを 前提としていますので、最初に申し上げましたマーケットテストといわれる基準からは比 較的遠い存在にある。そうしますと、日本の公社公団みたいなものを、このマーケットテ ストというものにどこまで近づけていくのかというのも1つの視点かなと考えております。
 それから、これは官民の話ではございませんが、先ごろ電力の発電事業につきまして一 部規制緩和がなされ、IPPというのが存在しておりまして、この場合、電力会社が独立 の発電事業者から電力を購入するという形になっていますが、これについていろいろ調べ させていただきますと、例えばPFIで行われるような入札に関わる問題点、具体的に言 いますとリスクの問題であるとか、サービスの安定供給であるとか、そういった問題点が 比較的具体的にあらわれてきているということです。ですから、日本で考える場合に、例 えば電力のIPPにおける問題点等を考慮しまして、PFIの具体的な施策を講じる場合 には参考になるのではないかという考えを持っております。
 私のコメントは以上でございます。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。
 ただいまご説明のありました議題「官民の役割分担」について、これからご意見を伺い たいと思います。どうぞご自由にお願いいたします。
 その前に、事務局にちょっと教えていただきたいのは、1981年に公表されたライリール ールというのがあって、89年にそれが緩和されたという話があります。このライリールー ルとシティズンズ・チャーターとの関連性とか、その辺の問題を解説していただきたいと 思います。

〔 事務局 〕 すみません、ライリールールの説明をとばしましたが、81年に公表 されたライリールールというのは、そこに書いてございますが、民間の資金を公的な施設 をつくるのに使おうということで、民間の資金を公共事業に活用する場合には、「公的資 金を用いる場合と比較」というのは、公共事業と比較して安価であるということをまず第 1の条件にして、さらには、そうした民間資本を使う事業にあっては公的支出を当初の資 金計画から減らす、公共事業予算を減らすということでございます。上の枠の中にちょっ と書いてございますが、公共(「公共」というのは役所だろうと思います。)からみて民 間資金を積極的に図るインセンティブがなかったので、当時はなかなか民間資金の導入が 進まなかった、ということのようでございます。このため、89年には、この民間資金を使 う分その公的支出を減らすという部分を緩和した。だから、何かをやるときには、民間を 使っても公的な部分を必ずしも全部、その部分を減らさなくてもいい。だから、いろいろ 知恵を出しなさい、というふうになったと私どもは聞いております。 シティズンズ・チャーターというものの考え方ですが、シティズンズ・チャーターとい うのは全体を含める広い考え方ですので、シティズンズ・チャーターの中で租税という対 価に対して最も価値のあるサービスを提供するというバリュー・フォー・マネー、これも 以前からイギリスにあった概念ですが、こういう概念の下に、今ほどご説明いたしました PFIというのを提供した。ということで、ライリールールというのが今のPFIの中で はあまり占めていないといいますか、これは一つのきっかけにすぎなかったというふうに 理解しております。
 山内先生、そこはいかがでしょうか。

〔 山内委員 〕 ライリールールについては、削減された予算をそのまま使えなかった のですが、それだとかなりインセンティブがありませんので、その後、PFIによって公 的支出が削減された部分は、原則として担当部局が別の目的に使用できるという形に直っ たと思います。 それから、シティズンズ・チャーターについては、いわゆるマーケットテスティングと いうことで、市場の評価を受けなさいという、その基本的な考え方を出したというふうに 理解していただければいいと思います。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。 それでは、ご自由にお願いいたします。

〔 B 委員 〕 何点か申し上げたいのですが、結論から言いますと、もう少し具体 的な施策をデザインして、それをフィージブルなものかどうか、あるいはどういう効果が あるかということを詰める必要があるだろう。
 もう一点申し上げたいことは、新たなオプションとしてこういう考え方を入れるのは大 変賛成でございます。
 では、なぜそういうふうに考えるかといいますと、例えば、明治5年に岩倉使節団が、 ご承知のとおりアメリカ、ヨーロッパを回っておりますが、あの中で既に、鉄道は官営が いいのか、民営がいいのか、上下分離がいいのか、こういう議論をしております。それか ら道路についても、大正の初めから昭和の初めにかけて、有料であるべきか、民間でやる べきか、あるいはBOT--言葉が違いますが、全くBOTと同じコンセプト--を入れ たらどうかという議論を延々とやっております。
 先ほどA先生がおっしゃったように、日本は非常に複雑な社会資本整備の仕組みを既に 持っていますので、欧米で言われている、あるいは発展途上国で言われるようなプロトタ イプはほとんどございます。それぞれが既に日本の中で、どこがまずくて、どこがいいの かということがそれぞれの部局ではっきりしているわけで、そこを全部置いといて、「イ ギリスでやっている日本でどうか」とやると、そもそもこれのクオリティを相当疑われこ とになろうかと思います。
 二、三だけ具体的な例を申しますと、官と民の役割分担も重要ですが、例えば常磐新線 とか、関空だとかを見ていますと、官対民ではなくて、官の中の自治体相互とか、国と自 治体とか、民の中で民相互とか、そういうところのコンフリクトがうまくマネージできな くて、それが大変なタイムコンシューミングになってみたり、最適行動ができなくなった りというようなことが具体的に起こっております。例えばこんな例もございます。
 それから、なぜ大手私鉄は補助金を嫌がるのか。ジョイントベンチャー方式とおっしゃ るのですが、大手私鉄の方のどなたに聞いても「補助金はいらない」とおっしゃる。では 何で、そういうことを踏まえて鉄建公団方式みたいのをとられているのか。これにはちゃ んと背景があるわけです。
 それから、例えば関空、あのころのカナダのトロントの空港とかでやられたプロセスを 見ていきますと、トロントの空港の第3ターミナルの場合は、プロジェクトを公表してい ろいろな人に応募してくださいと、それはテンタティブの応募です。その応募する期間が 例えば1カ月あって、それから2カ月間に誰かがこういう情報をほしいと言えば、必ずそ れを官の側が用意して、言わない人にも全部提供します。2カ月たった後、そういう情報 を使ってもう一回競争をしてください。これをタイムスケジュールにきちっと乗ってやっ てきているわけです。関空で何が起こったかというのは、皆さんよくご存じのとおりで、 外国の連中から見ると、日本というのは一体どういう組織なんだ、こういうことになりま す。こういうところの問題を解決しないと多分うまくまいりません。
 時間がございませんので、あと1つ、2つだけ例を申しますが、アジアの高速道路は大 変おもしろくて、マニラが最初でございます。マニラに最初に高速道路ができて、都心部 のところを、もう償還したではないかといって市民に訴えられました。最高裁まで行って、 政府が負けました。そこで内部補助ができなくなって、それっきりになってしまいました。 いまだに10Km走って5円とか10円とか、そういう通行料でございます。バンコクは、ご承 知のとおり当社は公社方式でやっていて、BOT方式をやりました。これがなかなか料金 の問題とかでうまくいかなくて日本が撤退したわけですが、結果的に何をやったかという と、もとのネットワークと後から追加されたネットワークの別組織であるにもかかわらず、 その間は内部補助システムを入れ込みました。その前はずっと進まなかったです。インド ネシアは完全な公団方式、日本とほとんど似たような方式でやって、料金は高いのだけれ ども、整備は大変進みました。何でそういう違うことが起こって、どこが失敗したかとい うのは、こんなことがございます。 もう時間の関係でやめますが、そういったたぐいの具体の事例がたくさんあるところを もう一回よく勉強されて、しかも、このイギリスの方式がいいというのではなくて、どの 場所にどういう政策ならうまくいくかというイグザンプルでもいいからやって、それがち ゃんと機能するために何をすればいいかというところを、少し詰める必要があろうかと思 います。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。 それでは、栗本次官から、お時間の関係がありますのでどうぞ。

〔 栗本政務次官 〕 今年の11月は例年の5倍ぐらい政治家は忙しくて、税も引きずり 出していますので、ちょっと前半だけの出席だけなので、一言、前からこの問題について お聞きしたいと思ってたことを申し上げて、後でそれをご処理いただければと思います。
 1つは、イギリスは、(短いので、わかりやすく言います。)一たんトップとったけれ ども、あきらめて後退戦をやっている国だ、国民もそういうふうに考えている。日本はそ うじゃないでしょう、まだ、後退戦じゃなくて、狙えるかどうかというので改革を考えて いる、負けて後退戦になるかもしれませんが。そういったことで、PFIということ自身 がまず国民的に受け入れられないだろう。
 コストの話は、当然、民間資金投入はコストがなければいけないのですが、今、B委員 からおっしゃられたとおり、日本では17兆円の地方交付税があります。「これはいけない から、なくせ」、そんなことはできないわけです、できるのなら苦労はいたしませんが。 そういうのがあって、さらに、それ以外に自分で返せれば、起債について有効である。つ まり、公的資金という公営で行って、後で民営にするということは可能であるけれども、 その逆というのは全く不可能であるのに、どうして簡単にご議論するのだろうか。あるの ならば、こうやったらばできるという、それが私の最初の挨拶の趣旨でもあるのであるの であります。
 今度、東京都23区が基礎的な地方公共団体、つまり地方自治体に格上げになります。今 までは、世田谷区とか大田区は島根県より大きいのですけれども、議会もある、首長も公 選しているけれども、さまざまな権利において自治団体ではないのです。いろいろなこと がありますけれども、自治団体になったら起債が可能になる。今も可能ですけれども、簡 単といいますか、普通の手続きになる。だから、彼らはやろうとしている。これはPFI の全く逆の話じゃないですか、変ですね。 さらに、企業を自治体がやる場合には自治体の事業になるわけです、公的事業になりま す。それについて金、融資についても財政投融資はそこから出る。民間活力について財政 投融資を出すということは、よほど何か切り替えをしなければいけない。 そういったこと、まず技術的に不可能であり、現実に血脈のように毛細血管までしみ通 ってしまっている日本において、これはどういう意味を持つのだろうか。イギリスはそう いうのがありますよ、という話は全然だめだ。
 例に刑務所をお使いになるのは、私も反対であります。なぜかというと、日本の刑務所 とイギリスの刑務所は意味が違います。イギリスの法というのは基本的に慣習法で、誰で も裁判がてきる。キリスト教に基づけば誰でも裁判ができる。だから、市民の代表が、専 門の法曹でなくて、陪審員としてやれる。日本はそれを一度とりましたけれども、それは 日本としては間違っておりました。刑務所のようなところは絶対に公営でなければならな いわけです。 ですから、イギリスの例を勉強するのはいいと思うのですけれども、それは私たちの社 会にとって有効なものになるだろうかなと。ライリールールというのを日本で適用したら 絶対に公的なものの方が勝っちゃうという状況なのです。 官と民に関しまして、与党・自由民主党の中の基本的な議論は、簡単にこう言っており ます。私もそれでいいと思います。「官でしかできないものを官でやる」、簡単にそうい うことです。 だから、郵政事業でも官でしかできないと思えないので、方向としては全体に民営化す る。これは現在の反対論者も確認しているのです。ただし、じゃあ明日やるのか、来年や るのか、少なくとも日程を決めていくのかということになると、日程を決めるなと。当面 維持というふうになっています。全部が「当面」であります。新聞によるとすごく悪口を 書かれていますけれども、永続的と言っている人はいない。それは小泉大臣に言わせると、 10人しかいないということですが、実際はそんなことだろうと思います。 そういったこと等を踏まえまして、これからの時代にはもっと別の形での民活のあり方、 私は具体的には、今病院とか学校で進みつつありますけれども、最初の滑り出しは公があ る程度出してやる。それから民営でやっていけるようにする。これは明治初年の富岡製糸 をつくった形と基本的には変わらないのですが、そういうことしかないのではないかなと。 それで最終的には、官でしかできないもの。実はすごく少なくなるのですけれども、そう いうものにする。 その方向はいいのですが、ひとつそういう歴史的背景、文化的背景、それから現実にこ の進行している日本経済があるわけですけれども、この中でぜひ理解できるご審議とご提 案をいただきたいと思っております。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。 引き続きまして、どうぞ。

〔 A 委員 〕 今のご指摘ですが、ちょっと誤解が私の説明に生じているような気 がいたしますので申します。 要するに、官がやるか民がやるかというのをアプリオリに決められればいいのですが、 それをどうしようかという議論だと思うのです。もしもアプリオに決められるのならば、 それで結構なのですが、そうではなくて、例えば同じサービスについて官と民とコストを 比較してどうだとか、そういうような発想が入ってもいいのではないかというのが、恐ら くマーケットテスティングです。ですから、マーケットテスティングを入れるということ は現在の制度をすべて壊すことではなくて、それに補完的に入るという面もあります。 それから、最初に公がつくって、それから運営を・・・という話がありましたが、財政制 約がなければそれも可能だと思いますが、要するに財政制約があって、官の側あるいは公 の側でお金がないときに、それをどういうふうに処理するかということですから、もしそ うだとすれば、ある事業について民がやれるかどうかと試してみる、テストをしてみる、 そういう発想だということをご理解いただければと思います。

〔 栗本政務次官 〕 発想はよく理解いたしますけれども、イギリスには地方交付税交 付金がないのだということを理解していただきたい。それから、日本はさらにほかのもの があって・・・。
 この地方交付税交付金、私は学者としては反対ですが、今17兆円のものを、じゃあ来年 からゼロにする。そんなこと、話をするだけでも無駄な話じゃないですか。例えて言えば。 現実には、今、私たちが全体としてやろうとしていることは、そこの採算性を全くゼロ のものは削って。まず、そうするけれども、何とか自分で借金は返せる。借金を返すのに また国から利子補填で、さらに追加補助金だとやっているわけですから、それをこうしよ うと。
 住宅公団などは一番ひどい例ですよ、まともにやっていない。ということで、それを削 っていこうというのが今の日本政府の方向ですし、私も、それしかないだろうと。
 コストのことを考えたら初めから議論にならないでしょう、ということです。

〔 A 委員 〕 と申しますと。

〔 栗本政務次官 〕 事業を立ち上げるときに、まるっきり民間では勝てないでしょう。 だから、日本は、政府が競合しないものをつくっていくのです。これまでの実態がそうで しょう。
 広い意味でもっとベンチャービジネスに限らない日本の企業の、あるいは民間の拡大と いうのは絶対すべきだと思っていますが、つまり舞台が違う、そういう話ですね。

〔 A 委員 〕 一言だけ、すみません。 民間と公が競争して民間が勝てないということについてはちょっと意見を異にしますが、 その前半についておっしゃっているようなことは、ほとんど私が思い描いていることが一 緒であると思っておりますので。

〔 栗本政務次官 〕 何とか民間をもっと・・・というふうに思っております。

〔 部会長 〕 それでは、お2人のそれぞれのご議論、問題提起を含みながら、ひ とつご意見をお願いしたいと思います。

〔 C 委員 〕 非常に難しい問題で私も立派なことは言えないのですけれども、B OT、これはイギリスのPFIということですけれども、我々が直接にあれするのは、発 展途上国で「BOTをやってくれ」というのがあって、それはどこから発生しているかと いうと、インフラが従来の政府援助ではとても追いつかない、10年間でアジアだけで1兆 数千億、何兆ドルいる、それでBOT。
 それは何かというと、要するにODAではやれない。しかし、また民間金を借りたので は返す債務負担があるから、投資であればその負担もないしと、こういうことです。逆に 言うと、投資する者がいるかどうか、こういうことだったと思います。
 それでいろいろと援助と組み合わせたり、あるいは相手国が購入を保証するとか、国が 保証するとかいろいろやっていますけれども。しかし、それだけでなくて、中南米を見ま すと、わりとそういう民営化の動きとともにやっているのです。
 それで、ブラジルなどはコストブラジルという言葉があるというので、私はよくわから ないのですが、日本の高コスト構造というのですか、港湾とか、そういうものを含めて民 間でやった方が効率がいいし安くなる。ブラジルの経済の競争力を作るために、むしろB OTで民間を入れた方がいい、こういう考え方で、本当かどうかわかりませんけれども、 ある程度成功していると言われています。
 それからイギリスでも、これも正式な報告ではないですが、評価としては、DBFOを 導入した先ほどの道路、そういうことで15%ぐらい削減しているとかいうことです。 サービスとか何かですけれども、やるからには、そういうことは絶対にあり得ないと次 官はおっしゃいましたし、そうかもしれませんけれども、ねらいは、単に金が足らなくて 予算がどうこうということだけではなくて、それでやるとどんどんそちらでやった負担は 国民に行ってしまうわけですから、コストが安くなる、効率がよくなるというねらいがな いと問題かなという気が1ついたします。
 もう一つは、民間がそれじゃやれるかといったら、とても採算が合わない、リスクが大 きすぎるという議論がございまして、ここにも書いてあるのですけれども、あまり発展途 上国の方が知恵があると思いませんけれども、道路などを有料道路にするときに、これは 原本を当たっていないので間違った情報かもわからないですけれども、相互に政府と民間 とが道路管理者とか有料道路をつくってやって、大体需要を見積もって、その需要は大体 正しい。しかし、やってみないとわからないということで、その需要にもし達しなかった 場合は政府がリスクを負う。そういうやり方もやっているということで、先進国ではなく て、発展途上国でもそれなりに苦労をしていろいろと考えているので、日本は先進国です から、そんなに学ぶべきことはないという議論もあるかと思いますが、その辺はよく調べ ることも必要かと。実際うまくいくかどうかということまでいうと、自信はございません けれども、そんな感じがいたします。

〔 D 委員 〕 議論のスタンスでちょっと問題だと思うのは、地方交付税はなくな らないのだから議論すべきではない、それはあまりにも愚かな話で、そういうことを含め て・・・。

〔 栗本政務次官 〕 なくならないのだから議論すべきではない、と言っているのでは なくて・・・。

〔 D 委員 〕 初めから、できっこないのだからやるべきではないということでは なくて、それを踏まえて、どうやって民間に任せるかということを議論するのがここです。 それは対抗関係のことでお互いに議論すべき話であって、初めからそれを前提に持ち込む のはおかしいと私は思います。
 もう一つ、それとは別にA委員に聞きたいのですが、B委員も同じなのですが、日本の 中でいろいろなことが既に試されている。その試されている中でリスクのシェアリングと いうのはかなり進んだものがある。それが今、あえてイギリスの事例を参考にしなければ ならないというのは、オペレーションの問題で不都合が生じてきたのか、それとももとも との発想でマーケットに試されない、そういうことが含まれていたのか、それのどちらで しょうか。

〔 B 委員 〕 非常に単純化して申しますと、1つは、多くの事業が民間に開放さ れてなかったというのがあります。例えば、道路は民間に開放されていまして、たくさん、 56路線ぐらいあると思うのです。ターンパイクみたいなのがありますが、中に開放されて いないのがあります。国幹道の一部を民間がやれるかというと、それはできないというよ うな恰好ですね。 もう一つは、民間に対する補助金を出すことに非常に臆病な制度をずっととってきまし た、農家は別にすれば。したがって、その延長線上で、アメリカでやっているような補助 金自身を、どれくらいの補助金をもらえば自分は応札するかという、そういうビッド制度 が定着しませんでした。その意味で、基本的な制度上のもっとバラエティに富ませること は僕はあると思います。その辺が一番大きな理由ですし・・・。

〔 D 委員 〕 それでは、入札者をオープンにしたり、そういうふうにすることに よってかなりモディファイできるというか、マーケットのテストに耐え得るようなシステ ムは既に日本にたくさんあると考えてよろしいでしょうか。それとも、もともとの思想的 あるいは完全に制度的な改廃が必要であると・・・。

〔 B 委員 〕 いえ、そんなことはないと思います。全体については、オープンに しても、先ほど次官がおっしゃったように、なかなか応札してくれる人がいなくて、ほと んど整備が終わって、あとちょっと追加するとか、そういうところでないとうまくいかな いし、東京の地下鉄みたいに、例えば東横高速とか埼玉高速が別途の会社にして、BOT とは言いませんが、それに近いような方式で、民間で別組織でやったときに、あんな運賃 格差がついてしまって、結果としては最適な利用がされない、こんなことが起こってしま います。非常に密度の高いインフラの中でやるケースと地方でやるケースとずいぶん違う かと思います。 ついでに申しますと、地下鉄とかをつくるときにバス会社に補償するとか、橋を架ける ときにフェリー会社に補償するなんて慣習は外国には全くありませんし、漁業権そのもの がありませんし、何度も払うなんて、大変不思議な制度を持っていて、しかも、あらゆる トラブルについて最後まで、裁判ではなくて、和解・合議することが役所の使命であるか のごとくやってどんどん時間を浪費するようなところ、その辺はややカルチャーに属する かもわかりませんが、そういう社会全体の仕組みの話と、冒頭申し上げたような話はちょ っと違うかと思います。 補助金についてのビット方式などは、多分、今提案しておられるところにうまく組み込 むと、もっといい方式が提案できるかなという予感はいたします。

〔 A 委員 〕 今、B委員が言われたことを私なりに解釈してD先生のに回答する と、マーケットテストみたいなものがなかったというのが基本だと思います。 それから、リスクのシェアのやり方というのはいろいろなケースで結果的には出てきて いるのですけれども、それを整理するとか、1つの方式にするとか、そういう慣習がこれ までなかったというのが一番大きな違いだというふうに思います。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。
 Eさん、いかがですか。先ほどのお話の中にも、官と民、官の中でも国とか地方といろ いろあるという話もありますが、その辺を踏まえて何かご意見・・・。

〔 E 委員 〕 初めて出てきたので、まだよく頭が整理されていませんから、もう 少したってから。

〔 部会長 〕 わかりました。
  F委員、どうぞ。

〔 F 委員 〕 私も初めて出てきたので見当違いのことを申し上げるかもしれませ んが、基本は、栗本政務次官が言われたとおり、官でしかやれないものは官でやる。しか し、官でも、民でもやれるものはできるだけ民でもやれるような工夫を考えていく時代に 入ったのではないか。
 スリム化しようとか何とかというのはそのとおりだと思いますが、国・地方を通じまし て、これだけ膨大な仕事をやっている。それで、先ほど政務次官が言われた方向で、官で しかやれないものにだんだん、一ぺんにはできませんけれども、特化していかなければい けない。結局、官でやるということは租税負担でやるということです。だから、租税負担 でやる世界というのをなるべく小さくして、マーケットでやれるものはなるべくマーケッ トでやる、という方向というものを考えていかないと、21世紀のある時期には国民負担率 が50%を超えるおそれが十分にあるわけですから、それを考えていかなければいけないの ではないか、というのが基本だと思うのです。 民にやらせることによって、より効率的にできれば、それは国民経済的に見ても大変有 利だ。そうでないものもあるでしょうけれどもね。というのが1つの側面だと思いますが、 裏腹のことかなと。 国のやっている仕事というのはわりかし民になじみにくい仕事がかなりあろうかと思い ますが、地方のやっている仕事というのは、いわば権力行政ではなくて、経済行為に属す るものがかなり多いわけですから、国も、それから地方も含めて、いろいろな工夫を考え ていったらいいのではないか。その場合に、イギリスにおける考え方というのは、そのま ま日本に当てはまるかどうかはわかりませんけれども、大いに参考になるのであって、こ ういう場でそれを議論していただいて、日本的な実現可能なやり方というのを世に示すと いうことが、国・地方を含めたそうした大きな流れに向かって勢いをつける意味で大変基 本的な課題ではないかと思います。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。
 それでは、本日初めてという方で、Gさん何かございましたら。

〔 G 委員 〕 おっしゃったように初めてなものですからちょっと全体の話の中で バランスがおかしくなるかもしれませんが、今ちょっと伺って私なりに、初めて来て乱暴 な言い方かもしれませんが、学者の先生方の論理と、我々みたいな一般のビジネスマン的 な発想の論理とが一緒に並行して論議されつつあるような気がしてなりません。そのこと 自体を悪いとは申しませんが、私どもはおよそそういう勉強もしないで、非常に専門的な ことの中でお話を伺っていると、それを消化するのに大変で、私どもとしても、片一方で 今までもっていた頭の中とそれとをどうスイッチして、そこでどう咀嚼させていくかとい う戸惑いを感じているのが実感です。 ただ、Fさんがおっしゃったように、私は、これだけどこの国もが政府の仕事について 批判が起こっているということは、いろいろ試行錯誤をしてみたけれども、まずくて、ビ ジネスに限らず、公的な仕事についても民間の論理を使った方がいいのだという発想が各 国であったのだろうと思うのです。それから言ったら、民間でやれることは民間でやる。 しかも、そのときに民間で100%ではなく、いろいろな形で、当然政府が負担すべき、あ るいは地方公共団体が負担すべきであったのなら、それも含めて民間に譲ることによって、 民間がやった方がより効率のいいものができるのだったら、それをやる。そういう2つの 入り口のところの選択はまずあってしかるべきではないかという気がしています。

〔 部会長 〕 ありがとうございました。おっしゃるとおり、基本的な考え方はみ んな共通で、それでこういう部会を開いております。したがいまして、学者は学者の立場 で、それからビジネスはビジネスの立場で、あるいは言論界は言論界で、労働界は労働界 で、あるいは消費者団体は消費者団体で、それぞれのお立場で自由に議論をしていただき たいと思います。

〔 H 委員 〕 今日のPFIの考え方というのは、それから後半の評価の問題とい うのは非常にくっついている問題で、特に評価の方の費用対効果とかプロジェクトの事後 評価の仕組みというのは、どちらかというと、PFIという選択肢をとるかとらないかに かかわらず、基本的な、日本としてはすぐやらなければならないテーマだと思います。
 それで、PFIという考え方が事後評価のシステムとして、あるいは消費者・利用者の 満足度などをチェックするシステムとしてどの程度優れているかということになるのです が、私の感じでは、PFIを今、日本になじむかなじまないかという議論をしているので すが、PFIはもう物事の前提だと思います。つまり、それは収入の形で採算がとれるか どうかというのは1つの方法として重要なテーマで、もし万が一、税金を使ったり補助金 を使ったりしたとしても、つくった施設がどのような形で効果を上げているかというのは、 どちらにしても検証しなければいけない。
 それで今、イギリスの例が出ているのですが、G委員もおっしゃったように、これはフ ランスもすさまじい勢いでやっていまして、フランスの方が多分、日本に近いと思うので すけれども、非常に中央集権的で官僚がいろいろな規制をたくさん使っているのですが、 その建設省のエンジニアの頭の中では、このPFIという考え方、あるいはBOT、フラ ンスではコンセッショネーというのですけれども、基礎知識なのです。別に取り入れる・ 取り入れないの問題ではなくて、このくらいのことはわからないと建設省のエンジニアを やっていないというくらい。私もフランスのエンジニアスクールにいたのですけれども、 学校でこれが基礎知識の中に入っていまして、PFIの考え方、BOTのいわゆる資金調 達から回収までのプロセスがきちっと計算できないと、建設省のエンジニアをやっていら れない。
 なおかつ、計画の方は建設省がやる。しかし、事業体としては事業会社を使うというケ ースはいくらでもあるので、日本になじむかなじまないではなくて、当たり前の話のよう に私は感じているのです。基礎知識というか。
 この回収はどうであるかということは、今まで、どちらかというとモラル論になってい て、国はどこまでやってあげるべきかという、あるいは地方交付税としてどの程度所得を 過疎地域に分配すべきか、そういう基準はあったのだけれども、これからの考え方として は、そのモラル論ではなくて、まさにコストベネフィットをきちっと、どの程度はっきり するかと。
 ただ、PFIとかBOTの考え方は、それを収入で評価するということなので、ある面 では十分でないところもあるかもしれない。例え収入が低くても、もしかすると、環境の 問題とか、そういういろいろな住民の満足度が高い場合もあるので、必ずしも、収入が低 いからまずいかというと、その場合には補助金を入れるという考え方も出てくるわけで、 1つの評価にしてはいけないということはあると思いますけれども、私の感じでは、この 考え方はもう、どちらかというと、ワン・オブ・イグザンプルではなくて、ベーシックイ グザンプルに近いものではないかなという感じがします。

〔 I 委員 〕 特に公共事業とかいろいろな面について、計画の段階でもうちょっ と参入ができるのか、それからまた評価をどうするのかというあたりでは、何とか変えて いかなければならないという形にはなっておりますが、今、H委員は、当たり前だと。私 も当然、当たり前だろうと思います。
 ただ、そのときに、例えばイギリスのPFIあたりについては勉強させてもらいました が、日本でも、例えば先ほどのお話を聞いていると、私もあまり具体例は知りませんが、 道路なら道路の問題でも、いわゆる道路公団があったときに、建設省との人間関係とか、 天下りとか、いろいろな形で制約をされている。そうすると、形ではいわゆる料金をベー スにしながら建設がされていると言いながらも、コントロールはどうも官の方にされてい るのではなかろうか。そういうところで、日本の場合には第三セクターとかいろいろな形 で参入はいろいろな面でできても、結果的にはなかなか自由度がきかない。イギリスの場 合などは、そのあたりはうまく機能しているのかどうか。私は、いろいろな資金や財源の 仕組みという形は一般財源と違うような仕組みとか、またはいわゆる料金だとかいろいろ な形でなっていても、人的な側面とかいろいろな形でコントロールされているという、そ ういう面は日本的な悪いところがあるのではなかろうかと思いますが、イギリスなどでは そのあたりはいいのでしょうか。私、よくわからないものですから・・・。

〔 部会長 〕 回答はございますか。あるいは、調べて後ほどにいたしますか。

〔 事務局 〕 はい。

〔 J 委員 〕 私も初めてでして、発言させていただきます。
 今までの議論の市場テストといった場合に、コストの面が重点だったと思うのですが、 もちろんそれも重要なことはよくわかるのですが、マーケットテストと言った場合、価格 という面、あるいはサービス・商品の価格・品質とか、そういった面もあるかと思います。
 これはお聞きしたいのですけれども、イギリスのいろいろな例を出していただいたので すか、またその価格についてもある程度の、こういった形で決められているというような ことは書かれているのですが、もう少し具体的に、価格はどう決まっているのか、また価 格決定あるいはサービスが提供された後での価格に対して、例えば公正取引委員会のよう な、競争政策を担当するようなところが何か監視をしているのかどうか。そういったよう なことをまず第1点にお聞きしたいです。
 それから、やはり競争政策に関連して、コストの面でも、例えば建設業界とか、今お話 もありましたが、そういった公共施設を建設するに当たって関わる業界の競争体質といい ますか、そういったところももちろんコストに響いてくるわけです。そういった建設段階 における競争政策の適用、こういったようなことがイギリスでどうなされているのかとい うことをお聞きしたいと思います。
 それから、政務次官がもう退席なさってしまったので、ちょっと言うか言うまいかまだ 迷っているのですが、欠席裁判みたいでちょっと嫌な気もするのですが・・・。D委員が言 われたように、交付税があるからどうしようもないのだという、政務次官のご意見だった と思うのですが。ただ、その前に、学者としては反対だけど、とおっしゃったと思うので す。僕も学者ですので--というか学者の前に、もちろん一般市民なのですが--、もし そうであれば、そういった考えをいかに政策に反映していくかという考え方でやっていた だきたいという気がいたします。
 もう一つだけ、富岡製糸工場の例が出ましたが、僕は、あまり歴史は詳しくないので、 もし間違っていたら訂正していただきたいのですが、確かに富岡製糸工場は官でつくられ たものですが、たしか経営がうまくいかなくなって、民間に払い下げたと思うのです。そ れで成功した。まさに官が、ちょっと変な言い方ですが、悪い見本を見せてくれたので、 それを教訓として民は成功したのかもしれませんが。そういう意味から、官の役割、歴史 的にどういう役割を果たしたかというところももう少しちゃんとみる必要があるかなとい う気がいたしました。
 勝手な発言ですが・・・。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。最後の政務次官に対するご意見に つきましては、政務次官は審議会の委員ではございませんので、委員からこういうご意見 があったということは伝えるようにしたいと思います。
 それから前半の、これは1つのケーススタディの具体的な内容の紹介ということになる わけですけれども、時間的な関係で、きちっとしたペーパーなり何なりを次回に出してい ただくような形でいかがでしょうか。

〔 事務局 〕 わかりました、調べてみます。

〔 部会長 〕 いろいろまだご議論は多いと思いますけれども、時間の関係がござ いますので、第1の議題につきましては、一応、本日はここまでとしていただきまして、 後ほどまたいろいろご議論がございましたら、どうぞファックスなり、ペーパーなりで、 事務局の方へお出しいただきたいと思います。
 それでは、次に、第2の議題であります「企業部門の課題」に移らせていただきたいと 思います。
 本日は、ポール・シェアード委員より、株式持合いの問題などについて問題提起をして いただきまして、引き続いて、事務局より関連の参考資料について説明をしていただきま す。それらをもとに委員の皆様に議論していただきたいと思います。特に今日、一部新聞 にはかなりセンセーショナルな報道などもございまして、F委員のお話ですと、株式市場 にも早速影響があったというような、かなりホットなあるいは問題でもございます。
 それではまず、シェアード委員よろしくお願いいたします。

〔 シェアード委員 〕 このコーポレート・ガバナンスの問題提起をする機会をいただ きまして、大変光栄に思っております。
 実は、私、最近「メインバンク資本主義の危機」という本を出させていただいて、そこ でいろいろな詳細な議論をしていますが、参考までに、そこから第8章を抜粋して配付い たしましたので、時間がある限りそれを見ていただければ大変幸いですが、今日、時間が 非常に限られているわけですので、私の基本認識、これからの展望--コーポレート・ガ バナンスをどういうふうに展望していくのだろうかということ--、それから、どういう 問題点があるのか、3点について簡単に触れておきたいと思います。
 まず、基本認識ですけれども、今、部会長から指摘があった、センセーショナルなスキ ャンダラスな話があるわけですけれども、私は、日本のコーポレート・ガバナンス・シス テムそのものは、歴史的に振り返ってみると、非常に機能的な合理的なシステムだったと、 一応基本的な評価をしているわけです。ただ、いろいろな問題があって、バブル崩壊後の いろいろな出来事を列挙するまでもなく、明らかに再構築の時期にきているということが 言えると思います。
 日本的コーポレート・ガバナンス・システムは一体何なのかということですけれども、 非常に複雑なシステムですが、私は、話を簡単化するために2つのシステムを想定してお ります。1つは内部型システム、これはまさに日本的なシステムだと思います。それに対 してオープン型、オープン市場型、開放市場型なシステムを考えているのです。
 日本の場合は、この2つの特徴があると思うのですが、1つは、非常に広範な持合い関 係があった。恐らく、全体の6割とかはそういった感じだと思います。それから、持合い 関係のそういう構造の中で、メインバンクなり大企業・親企業が、積極的な監視あるいは 介入する主体として活躍してきたというシステムだというふうに特徴づけられると思いま す。
 これがコーポレート・ガバナンス・システムの観点なのですけれども、実は、このシス テムが全体の企業システムの中の1つのサブシステムにすぎず、このシステムが雇用シス テムあるいは生産システムと深く結びついているというのが日本のシステムの1つの特徴 だと思います。ですから、コーポレート・ガバナンスのシステムを議論するときには、例 えばどういうふうにこれが内部の雇用システムに波及していくのか、あるいは系列関係と か、生産システムまで波及するのかという、非常に総合的な広い観点、視野が必要だと思 うわけです。
 結論から言うと、どのようなシステムが日本の場合は望ましいかということですが、言 ってみれば完全なオープン型のシステムに移行するよりも、現在のシステムを残して、た だ、それを縮小させて、あるいは変形させて再活性化する。これを一言でいうと、市場立 脚型のメインバンクシステム、あるいは持合いシステムにすべきではないかという気がす るわけです。
 展望の方に移るわけですが、これからどういうふうになっていくのかということですが、 1つは、恐らく、持合い制度そのものは残るだろうと私は考えているのです。これは日本 のコーポレート・ガバナンス・システムの中枢を成しているというふうに評価しますけれ ども、どうもコーポレート・ガバナンスという話をしますと非常に抽象的なイメージです けれども、非常に具体的な例で考えますと、一言でいうと、日本では非常に驚異的な乗っ 取り市場が発達していくのか、これでもよいのか、ということに尽きるかと思います。
 私は、持合い制度そのものは残るだろうというふうに思っているのは、言葉を変えます と、非常に欧米型な脅威的な乗っ取り市場は恐らく発達しないだろうと思っております。 あるいは、むしろ発展しない方が日本のいろいろな、政務次官の話もありましたけれども、 現実問題を考えた場合はそれが望ましいのではないかという気さえするわけでございます。
 ただ、システムとしては残るのですが、この持合い解消とか、持合いシステムを議論す るときには、常に気をつけなければいけないのは、この持合い解消と持合いシステムその もの、この2つのことが異なっているということです。ですから、システムが残る流れの 中では、恐らく、持合い率が相当下がるだろう。むしろ引き下げた方が、この日本型のシ ステムを残す上では必要になってくるだろうと思っているわけです。例えば、半減しても かまわないのではないかというような気がしているのです。
 その逆として、ビッグバンが進むにつれて今度、純粋機関投資家、純粋株主の比重が非 常に高まってくるだろうということです。また日本のシステムを議論するときには、例え ば、よく日本の企業の株主どうのこうのという話があるのですけれども、日本の企業の株 主を議論するとき、はっきり2種類に分けて、取引先株主、つまり何らかの形でその企業 と継続的な取引を持っている株主と、それから純粋株主、つまり株を持って期待収益率の 向上とか、それしか期待していない、あるいはそれしか関わりのない株主、この2つに分 けて考える必要があろうかと思います。むしろ、ビッグバンが進む流れの中で、この2種 類の株主、持合い株主と純粋株主の役割分担が相当変わってくるだろうと考えているので す。
 それから、先ほど触れましたけれども、こういうことこそが内部型のシステムの再活性 化の鍵になるだろうと思っているわけです。
 展望のところでは、最後にちょっと具体的な話としては、持株会社について触れておき たいと思います。これから日本のコーポレート・ガバナンス・システムの再編成が行われ ると思うのですが、持株会社の導入が1つの大きな起爆剤になるというふうに評価してい ます。
 実は、持株会社制度が今年法制化されたのですけれども、それから、これから金融持株 会社の導入という枠組みもできてくると思うのですが、これは言ってみれば日本のコーポ レート・ガバナンスの歴史の上では非常に画期的な、もしかすると革命的な出来事になる 可能性が十分あると言えると思います。
 どうしてこれが重要かということについていくつかのポイントをリストアップしました けれども、1つは、持合い解消の受け皿になる。先ほど言いましたように、むしろ持合い 解消という言葉を使いますと、まるで持合いシステムそのものがなくなるかのような錯覚 に陥りやすいのですが、むしろ、持合い再編の新しい軸としてできてくるという考え方の 方がいいかなと思っています。
 それから、1つ問題は、これから誰がコーポレート・ガバナンスの担い手として一番活 躍するのか。今までメインバンクが大きな役割を果してきたのですが、ビッグバンなどの 流れがあって、恐らくメインバンクの監視・介入機能が多少は低下していくだろう。なく なると思いませんけれども、多少下がっていくだろうと思っています。その1つの代替物 として、持株会社そのものが重要なガバナンスの担い手として活躍が期待できるという気 がするのです。
 現に、今までは日本の場合は、メインバンクだけではなくて、上場企業でいうと大企業 ・親企業、総合商社、あるいは大きな自動車メーカー、製鉄メーカー、こういった会社が 上場株式市場の中でもガバナンスの担い手、親企業のガバナンスの担い手として静かな存 在ではありますが、ずいぶんと活躍してきたというふうに思っているのですけれども、ま すますこういう役割が重要になってくるかなと思っています。
 3番目としては、これは経営者の考え方あるいは経営者の役割に関わってくるのですが、 持株会社ができると、ある意味では日本のトップ経営者の経営資源そのものをもう少し効 率的に、あるいは集中的に使えるということです。
 4番目は、先ほど、脅威的な欧米型の乗っ取りシステム、テークオーバーマーケットが、 恐らく日本の場合は根づかないだろうと申し上げたのですけれども、それに代わる日本型 M&A市場がかなりこれからは出てくるだろうと思っています。
 日本型のところですけれども、結論から言うと、協調的、友好的ではあるが、その枠組 みの中で非常に活発的なM&A活動がこれから出てくるだろう。持株会社そのものができ ると、例えば、そういう再編成の受け皿ができると同時に、企業を売買するという概念自 身が定着してくる可能性もありますし、そういう考え方が変わってくるだろうということ です。
 最後に、持合い株主と純粋株主の2種類があるのですが、持株会社はもしかすると純粋 株主、純粋投資家の目から見たら、非常にふさわしい投資対象としてクローズアップされ てくるのではないか、魅力があるものとなるのではないかと思っています。ですから、結 論から言うと、非常に持株会社の導入に当たって期待をかけていると思うのです。ただ、 その危険性がないわけでもなくて、いろいろ注意すべき点もあろうかと思います。
 時間の関係で課題の方に移りたいと思います。次のページになります。私が描いている 展望が仮に実現したとしても、どういう問題点、どういう課題があるのかということで、 いくつかピックアップしました。1つは、果してそういう方向が望ましいとしても日本型 の再編成された内部型システムがこういうビッグバンの流れ、激変に耐え得るかどうかと いう疑問です。つまり、ビッグバンをやると、日本のせっかくのシステムが、持合いを根 本とするシステムがもろに崩壊していくのではないかという危惧があるのですが、実は私 は、もう少し前向きな評価をしているのです。むしろ、縮小させて、透明化させて、再編 成させることによって、それこそ市場のプレッシャー--規制緩和をやりまして内部型の システムのまわりにある市場そのもののプレッシャーが高まってくることによって、この 内部型のシステムが、ある意味では今までちょっと目立ってきた悪いところがかなり払拭 されて、いいところがかなり活かすことができるのではないかと思っているところです。
 ただ、内部型システムの信頼度に関わる問題があるのですけれども、これをどういうふ うに高めるのか。つまり、内部型システムの1つの問題点としては、このシステムが非常 に不透明であるとか、内部で何をやっているのか、責任の所在は一体どこにあるのかとか、 外から見たらいろいろな問題点が浮かび上がってくるのです。ですから、このフィージビ リティーをどういうふうに高めるのかというのが、ある意味では経営者の責任であるわけ ですけれども、そういう課題があると思います。
 それから、関連しますけれども、果して純粋機関投資家のシステムと、例えば私が勤め ているベアリング投信はその一部類ですけれども、それから取引先投資家の集団・群、こ の2つのサブシステムがうまく両立できるかどうかという点もあります。例えば、取引先 投資家の持株率が下がって、例えば2割とか1割になってしまった時点では、恐らく、こ の2つのサブシステムは両立できなくなるだろう。つまり、後者の方が淘汰されていくだ ろう。淘汰されていくと、言ってみれば完全なオープン型ガバナンス・システムになって しまうわけで、そこでいろいろな日本企業の良い点、労使関係とかあるいは系列関係とか、 そういうものがなくなる危険性がある。しかし、恐らく、相当なビッグバン、年金システ ムの自由化、あるいは規制緩和をやったとして、安定株主率が半減、あるいは3割とか2 割、そのぐらいまで下がっても、この2つのシステムはまだ両立できるだろうと思ってい るところです。
 次の問題としては、先ほど、それこそ日本の望ましい資源配分を促進するためには、あ るいは企業収益を上げるためには、これからもう少し積極的なM&Aマーケットが必要だ ろうというふうに論じたのですが、この仕組みをどうやって作るのか、どうやって確立さ せるのかという問題があります。つまり、M&A市場のルールづくりです。従来から、T OBのルールとか、あるいは商法に係わる規定とかいろいろあったのですが、果してこれ からこういうルールで十分なのかどうかという、実務的なレベルで仕組みを整備するとい ったことが必要になってくるだろうと思います。
 もう一つの問題は、持株会社が重要なガバナンスの担い手として出てくるだろうという ふうに言ったのですが、では持株会社そのもののガバナンスを誰が担うのかということが 1つ問題として出てくるのです。結論から言うと、持株会社も多少の持合い関係を確立さ せるだろうと思っているので、むしろ持株会社そのものは外の純粋機関投資家のプレッシ ャーを受けながら、内部から一種の内部型システムの影響を受けるだろうというふうに思 っているのですが、それよりもちょっと気になるのは、特に金融機関のガバナンスを誰が 担うのか。これはまさにビッグバンで事情がかなり変わってきているのです。今までは実 は金融当局が金融機関のガバナンスに当たって大きな役割を果してきたということです。 ですから、ビッグバンを進めることによって金融当局が一線後退して、言ってみれば、金 融機関のガバナンスを市場に任せるという流れになってくると思うのですけれども、そこ で、市場は何なのか、内部型の市場なのか。つまり、銀行の株主がこれからより積極的な ガバナンスの担い手として出てくるかどうかという疑問と問題があると思います。
 ちょっと観点を変えまして、もう一つの問題としては、日本の場合は非常に望ましい、 優れた協調的な労使関係があり、これが恐らく戦後の日本企業の競争力を維持・向上させ た大きな一因になったと思うのですけれども、こういうコーポレート・ガバナンスに一種 の革命を起こしながら、それをどういうふうに保っていくのか。協調的労使関係が、例え ば、M&A活動も含めて、そういう前向きな企業再編成を阻止するための道具として使っ てはいけないと思いますけれども、かといって、これを放棄してもいいかということにな りますと、決してそうでもないのです。ですから、これからもう少し、コーポレート・ガ バナンスを議論するときに、労働側の意見とか、労働側がどういうふうにこれに積極的に 係わっていくのかということについて議論する必要があろうかと思います。
 最後になりますけれども、実は持株会社だけではなくて、今はいろいろなコーポレート ・ガバナンスをめぐる制度改革実験が行われているのです。そこでは6つをリストアップ したのですが、例えば、年金システムの自由化、自社株買い制度の導入・定着、最近にな りましたら、ストップオプションの導入、先ほどから議論している持株会社の導入、それ から金融行政の転換、最後に日本版社外重役制度の導入、あるいはその発展です。実はこ れは全部、今行われつつあるのですが、全部を足してみると非常に画期的なコーポレート ・ガバナンスの革命になってくるのですが、最後に労働市場の流動化との関連で考えます と、これを全部有機的な整合的な制度として確立できるかどうかという観点があるのです が、これをぜひとも総合的に整合的な枠組みの中で考えるべきだろうと思っている次第で ございます。
 以上、ちょっととりとめのない話になってしまいましたけれども、私のコーポレート・ ガバナンスに関する考え方、それから、それがどういうふうに展望していくのか、その中 の課題は何なのかということについて、一応問題提起として提供させていただきました。
 ありがとうございました。

〔 部会長 〕 シェアードさん、どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの問題提起を中心にいたしまして、どうぞ自由にご意見をお願いし たいと思います。

〔 K 委員 〕 いくつか教えていただきたいのです。1つは、アメリカのような場 合に、マネージメントがよくない場合に株主総会でいろいろ批判されたら、経営者の責任 のとり方というのはどういうふうになっているのか。それと、アメリカでは経営者のマー ケットというのがあるような話を聞きました。いい経営者は、あちこちの経営をやってい く。そうすると、これまでの日本のように中でずっと働いた方がトップに行かれるという システムが崩れたときに、崩れた方がいいのかどうか。そうしますと終身雇用とかいうと ころにも影響してくるのではないかと思いますが、それが第1点です。
 2番目は、日本の社会はアメリカやイギリスに追いつけ型、キャッチアップ型の社会の ときには間接金融中心だったわけですが、今後もし直接金融が大きくなるとしますと、消 費者にとってもそれぞれの金融機関のリターンがすぐにわかるようになりますから、こう いうふうに株主によるチェック以外に、もっと商品を見ただけである程度金融機関が判断 できるとすると、そちらの方からの金融機関の選別というのも出てくるのではないかと思 うのですが・・・。
 それから最後は、持株会社ができたときに、金融機関の場合は金融持株会社があれば、 その持株会社が金融機関をみるのだと思うのですが、最後の持株会社の純粋投資家という のはおられるのだと思うのですけれども、そういう方たちが最後、持株会社をみる、そう いうふうな形になるのかどうか。
 3つお聞きしたいのです。

〔 シェアード委員 〕 第1点目、米国はどういうふうになっているのかという話です けれども、それは一番端的に日米の2つのシステムでどういうふうに異なるのかというこ とになりますと、経営者の刷新権を誰が握っているか、どういうふうに握られているのか ということになってくると思うのです。
 日本の場合は、安定株主工作を通じて、ある意味では、当該企業と一番密接な関係にあ る企業群、系列関係とか金融関係の企業にある株主が1つのマジョリティーを形成してい ます。つまり、共同的な形で当該企業の経営権を握っているということが言えるのです。 そうすると、例えばその企業の経営が望ましくなくなってきたときに、経営不振になった り、日本の場合は一種の内部型のテークオーバー・乗っ取りメカニズムがそこで働いてく るのです。ですから、例えばメインバンクの人を持ってきたり、その持合株主が静かな形 でプレシャーをかけて、刷新させる。新しい人を社長として持ってくるとか、いろいろな 形でやる。
 今、Kさんがおっしゃったように、これは日本の経営者の市場そのものの構造に深く係 わってくる問題です。つまり、日本の場合は終身雇用制度があって、内部から経営者も上 がっていくということです。
 では米国の場合はどうかということになりますと、経営者の市場そのものが非常に競争 的、流動的になっているのです。そうすると、ある企業がうまくいかない場合、乗っ取り の市場のプレッシャーが働いて乗っ取られる。そして経営者が、極論すると、クビになる。 クビになったということは、米国の場合はそう大した問題ではないのです。クビになって、 また労働市場に出ればいいわけです。つまり、非常に流動的な労働市場そのものが1つの 保険メカニズムとして働いてくるということです。
 また、その考えでちょっと指摘しておきたいのは、日本型の乗っ取りメカニズムとアメ リカ型の乗っ取りメカニズムはどう違うかということですが、一番根本的な違いは、アメ リカの場合は、オープン型のテークオーバーメカニズムの場合は、企業がいい状態にあっ ても悪い状態にあっても、乗っ取りメカニズムが働き得るということです。日本の場合は、 むしろ企業経営がうまくいっていれば、安定株主工作を通じて、一種の猶予をそこで与え る。つまり、ノータッチするという約束ができています。ただ、悪くなってくると、安定 株主だって積極的な行動に出るということですね。
 大局的に見ると、これから日本にとって1つの問題は、果して企業の内部にたくさんの 資金留保をためているときにこういう構造でいいかどうかという問題があるのです。今日 の話では、日本のシステムのいいところをかなり強調したのですけれども、悪いところと しては、そういう問題があると思うのです。つまり、今までは日本の場合は、企業内部で お金がたまってきたら、この余剰資金をうまい具合に株式市場の方に返すという手法が、 あるいはメカニズムそのものが非常に不足していた。ですから、それがこれからは一番期 待されるところです。
 第2番目のところ、直接金融との話だったと思うのですけれども、恐らくこれから、そ の監視メカニズムあるいは介入メカニズムの多様化というものが進むだろうと思います。 つまり、ビッグバンが進展するにつれていろいろな形で格付け機関が出てきたり、あるい は株価だって1つの指標として働くのですけれども、そういった形でいろいろなメカニズ ムが出てくるだろうと思いますが、果して直接金融が進んでオープン型になってしまうか といいますと、恐らく、そういうふうにならないだろうと思います。むしろ、間接金融と 直接金融の分け方よりも、私は、取引先投資家と純粋投資家、こういう分け方の方がいい と思います。というのは、銀行の借入金がなくなって、銀行の持株率が残るという動きが あるのですけれども、これは一種の間接金融ですね。つまり、まだ銀行という仲介部隊が まだ残るということで、私は、従来からの間接金融と直接金融の分け方はあまり好まない。 むしろ、その中でそのコーポレート・ガバナンスの主導権はどこにあるのか。つまり、内 部のところにあるのか、それとも外部市場の方にあるのか。これから私の理想像としては、 内部のシステムが残るけれども、Kさんが示唆されているように、ますます外部の市場の いろいろなインフラに刺激を受けながら依存するということです。
 第3番目、持株会社の話だったと思うのです。図を資料6に出したのですが、これから 新しいメインバンク資本主義の監視体制はどういうふうになるのかという図です。つまり、 金融持株会社ができて、それから事業持株会社もできる。恐らく、従来どおりこの2つの 間にはかなりの持合い関係ができるだろうと見ているのです。だた、純粋投資家がますま す比重を高めてくる。純粋投資家が金融持株会社にあるいは事業持株会社に積極的に投資 する。では、そこでは純粋投資家が積極的なガバナンスの機能まで担うかといいますと、 恐らくそうではなくて、あくまでも間接的な形で、つまり優良企業を探して、いい経営を している企業あるいは持株会社を探して、そこに投資をする。その持株会社の経営がだめ な場合は資金を引き上げて市場に回す。そこで競争原理が働くのですけれども、こういう 形にすると、そこで例えば、持株会社だって何を主な仕事としてやっているのか、あるい は市場からどういうような評価を受けているのかということがより明確になってくるだろ うと想定しております。

〔 D 委員 〕 先ほど、議論すべきことはないなどと言ってはいけないと言った舌 の根も乾かないうちに、こういうことを言うのは何なのですが、コーポレート・ガバナン スというのは、極めて企業の戦略的な問題でありまして、こういうところで一義的にこう あるべきだと言うことはできないのではないかというのが私の考え方なのです。
 経営学をやっていますと、かつてから日本型のコーポレート・ガバナンスは長期的な投 資、それから長期的な戦略的な、特に集中できる投資です。それから安定した労使関係に はいいが、経営者の規律を保てない。それから、労使関係の馴れ合いを防げない。それか ら、株主に利益が還元されない。これはずっと言ってきたことです。それでもかつてはよ かったのは、日本が高度成長、キャッチアップの中で戦略的な投資を遂行し得るというこ とが可能であった。ところが、状況が変わってキャッチアップができなくなって、これか らは今までと違った、既に目標があるところに戦略を立てるのではなくて、横並びではな くて、それぞれの企業集団、それぞれの企業が多様な投資を敢行しなければならない。そ のときに、今までの仕組みだと規律が保てなくなるだろう。これで、いろいろなコーポレ ート・ガバナンスのあり方を問いましょうということになって、いきなりアメリカ型に行 くかといったら、アメリカの中でも、イギリスの中でも、全く違ったコーポレート・ガバ ナンスをやって安定した労使関係をやっている企業もありますし、極めて乗っ取りを中心 に資源の効率分配を追求している企業もある。僕は、これを選ぶのが株主であり、この戦 略を遂行するのが経営者であり、それを規制するのが労働組合だと思うのです。
 これを一義的にかくあるべきと言うのではなくて、今もしここで議論するのだとすれば、 そういう多様な戦略をとれないような仕組みあるいは障壁がこの日本の中に存在するなら ば、それを排除しましょう、という議論ならば納得できるのですが、コーポレート・ガバ ナンスはかくあるべしという議論は、日本の中にも極めて敵対的なコーポレート・ガバナ ンスをもって資源の効率化を図る企業が存在してもいいし、極めて日本的な経営を守ると いう企業が存在してもいい、僕はそういうふうに思うのです。それを判断するのは株主で あり、市場である。そういうパラダイム転換をすべきだという議論をしているときに、申 しわけないのですが、こういう“かくあるべし”という議論は違うのではないかという違 和感を持つという気がするのですが。

〔 シェアード委員 〕 お叱りを受けて恐縮ですけれども、実は私は、3年前ぐらいま では学者だったわけで、全く同じような思考だったのです。あまり、こうあるべきだとい うたぐいの議論は好きでなかったのですけれども、こういう経済審議会みたいなところま で出させていただいて、むしろ、その辺の視点が要求されるのかなという気がして、あえ てやったのですけれども。

〔 部会長 〕 これは問題提起でありますので、この部会の役割はあくまでも「経 済主体の中での民間部門の役割」ということでやっておりますので、D委員の言われる趣 旨とは全く同一だと私は理解して運営するつもりでおります。

〔 シェアード委員 〕 ちょっと反論をさせていただくと、実は制度改革とかルールづ くりが非常に影響するということです。株主の選択だけではなくて、市場のプレッシャー だけではなくて、制度基盤はどういうルールがあるのかとか、その辺のことも非常に重要 な要素としてあると思います。

〔 E 委員 〕 日本的な経営の特徴というのは、今ご説明のあったところでほぼ尽 きているように思うのですが、ただ、1つ抜けていると思ったのは、日本の場合、コーポ レート・ガバナンスの一番中心にあるのは、企業の中の管理職集団だと思うのです。これ は毎年毎年新卒が入ってきて、年度の中で競争をして、ある年次が過ぎると管理職になっ て、だんだん上にあがっていって、その管理職集団の中から専務が出て、社長が出る。こ れが実は一番根幹になっているわけです。これは多分、戦後の経営者の追放のときから出 てきた流れだと思うのです。
 それから、この管理職集団が財閥解体で株式が分散し、その株式を取引先にはめ込んで いった。それから、戦後の非常に激しいストライキを経て、企業内組合という形で労使間 のタイアップをした。ですから、持合い株主と企業内組合が管理職集団というものを中心 にして、企業のコーポレート・ガバナンスを構築した。これは実は、共通の利益が会社の 発展拡大にあるわけです。管理職にしてみれば、もちろんポジションもどんどん増えてく るわけだし、あるいはステータスも給料も上がってくる。それから持合い株主にすれば、 その会社との取引がどんどん増えてくる。これは配当や何かよりよっぽど大事なことです。 それから企業内組合にしても、組合員の数がどんどん大きくなっていく。ですから、三者 の利害というものは右肩上がりの経済の中で非常にうまく合致した。
 それが今日、そういう関係というものが大きく崩れてきてしまっているわけです。です から、持合い株主にしてみれば、その企業と取引をしていても、必ずしも取引が拡大する わけでない。それから、企業内組合も組合員が増えるどころではなくて、だんたんこれか ら、今まで同一組合・同一賃金体系でやってきたのが、いろいろな新しい給与体系が入っ てきて、パートも入ってくるし、職種別組合のような様相が少しずつ入ってくるようにな ってくるだろう。それから、管理職集団にしても、これから終身雇用・年功序列というの を崩して、管理職自体のリストラをしていかなければならない。恐らく、ですから、スペ シャリスト主義とか、あるいは能力主義とかいうものが非常に強くなってくる。そういう 中からまた経営者を選んでくる新しいシステムを考えていかなければいけない。
 そういうようなことで、この三者の関係というのはこれから大きく変わっていくだろう と思います。ただ、日本的社会というのは、アメリカのように一ぺんにレイオフを許すと か、あるいは非常に大きな所得の格差を許すとか、そういう社会ではない。ですから、一 挙にアメリカのようになるということはあり得ないし、また、そういうことをやっていけ ば日本の企業にとってプラスかというと、必ずしもそうじゃないのだろうと私は思います。 ただ、これからだんだん日本的経営というものは環境変化でもって変わっていかざるを得 ない。今お話があったように、もちろん一ぺんに変わらないですから、少しは残っていく のだろうと思いますけれども、そういう中からまた新しい日本の状況にあった経営の体系、 体制を作り直していくということは、日本の企業にとって必要だと思う。
 それから、実は日米欧いずれの経営システムも、決して完成したものではなくて、いわ ゆる理想的な経営形態というものにまだ到達していないのだろうと思うのです。そういう 意味でも、我々は、日本の状況に合った経営形態というものを模索していく。これは“か くあるべし”と役所から与えられるものではないということはDさんの言われるとおりで すが、そういうことで我々自身がいろいろ模索してトライをしているということではない かと思います。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。
 ほかにいかがでございましょうか。

〔 H 委員 〕 コーポレート・ガバナンスがうまく機能しているかどうかというい ろいろな指標があるのですけれども、それは非常に難しいテーマを含んでいまして、なぜ 企業が活動をしているかといいますと、最終的には消費者の利益というものを明確に出せ るかどうかというところだと思うのです。つまり、消費者のニーズですとか、カスタマー のプロフィットというものをどのくらい企業がキャッチして、消費者に自分の経営を合わ せるというような思考というのが、私は、どこの国が一番いいとは言えませんが、どうも 日本はサプライサイドのような気持ちがするところもあります。
 つまり、どのようなコーポレート・ガバナンスであれ、消費者にきちっとしたものを提 供しているところはやはり経営がいい。経営が悪いのは、コーポレート・ガバナンスが悪 いのではなくて、そういう商品を提供していない、つまりカスタマーの考え方をチェック していないからだ。となりますと、そういうふうな部分を企業の中でどのように直接的に 反映させる手法があるのかなと。
 アメリカの場合には、いろいろな第三者機関みたいなものもありますし、それから最近 のマイクロソフトの例でも、消費者団体のリーダーが、ある程度企業が独占的なサービス を消費者に提供しているということになりますと、企業のトップとやり合って、いわゆる 官がやるような仕事をそういった形で消費者利益の追求をやったりします。だから、消費 者運動がどうのこうのというのではないのですけれども、何かもう少し株主以外に、先ほ どK委員も消費者の話をしたのですが、そういう消極的な形ではなくて、もっと経営の中 に入れられたという感じを消費者が受けるようなメッセージがあると、日本の経営も少し お客さんを考えているのかなという感じになるわけです。
 もちろん、うまくいっているところがないわけではないのですが、ただ、サービス分野 ですとか、いろいろな通信ですとか、今まで価格が十分に見合っていないという声もずい ぶんありましたし、それが実際に取り上げられるのにすごく時間がかかったり、今カード ビジネスもたくさんあるのですけれども、消費者がいろいろな企業が出すカードをそれぞ れ持って、例えば、どこかに書いたことがあるのですが、JR東日本のビューカードは京 都に行ったら使えないとか、要するに非常にサプライサイドの消費者ビジネスをやってい て、うまくいかないとなると、「消費者が悪いのだ、買わなくなった、不景気なのだ」と いう言い方をすることがあります。それは不景気の問題ではなくて、経営の問題であると 思うのですが、そういうサプライサイドの考え方を、こういうふうなコーポレート・ガバ ナンスのハードな議論ではなくて、もう少しソフトの中に入れ込める方法があるのかない のか。そこを客観的に調べる方として、ROEというのもありますが、これは直接的には 企業のエフィシェンシーというものを示すには完璧ではないというふうに思いまして、も し一言でも何かその辺がございましたら良いのではないか。

〔 E 委員 〕 今の話に関連して、僕は、経営者、特に社長の最大の責任というの は会社の利益と社会の利益を合致させることだと思うのです。ですから、社会に害悪を流 して利益を得るというのは、これは社長の責任だと思うのです。ただ、その場合に社会と いうのが一体何だと。これは消費者だけが社会でもないだろうし、日本の社会だけが社会 ではないのだろうし、その社会の利益とは何なのだろうと。究極になると、あるいは人類 の平和と繁栄みたいな話になっちゃうのかもしれないけれども、少なくとも、そういうこ とを常々考えて、そこの相反が起こらないようにするのが、私は、社長の最大の責任では ないかと思っています。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。
 まだ、いろいろご意見があろうかと思いますが、時間の関係もございますので、第2の 議題につきましては、ここまでとさせていただきます。
 また今、H委員のいろいろな疑問点あるいは質問につきましては、また今後の問題点と して、またH先生自身も考えていただきたいと思います。
 最後に今後の日程につきまして、事務局よりお願いします。

〔 事務局 〕 お手元の資料5に今後の審議スケジュールについてお示ししており ますが、次回第5回の部会は、今月25日火曜日の14時から、この同じ場所で開催させてい ただきますので、よろしくお願いいたします。なお、新年明け6回、7回、8回も一応予 定させていただきましたので、ご予定に加えていただければ幸いでございます。
 ありがとうございました。

〔 部会長 〕 それでは、第4回の経済主体役割部会の審議は本日は以上としたい と存じます。
 本日は長時間のご審議を、誠にありがとうございました。次回もよろしくお願いいたし ます。

--以上--

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