第6回地球問題・エネルギー・食料問題研究会概要

1 日時

平成9年2月28日(金)10:00~12:00

2 場所

経済企画庁特別会議室(1230号室)

3 出席者

(委員) 田中座長、
石井 彰、石川竹一、内田光穂、厳 善平、柴田明夫、坪田邦夫、
中垣喜彦、中上英俊、細田衛士、柳原 透、横堀惠一
(事務局) 坂本総合計画局長、五十嵐審議官、
西川経済構造調整推進室長、小原計画官、古賀電源開発官

4 議題

地球環境・エネルギー食料問題研究会報告書(案)について

5 審議内容

主な意見は次のとおり

(1) 第一章 地球的規模の問題と経済成長について

○ 三分野の相関関係の分析がうまくまとめられており、こういった相関関連性を国民が幅広く 理解し、共有することが、現代のこの問題を解決する手段となるのではないか。

○ 相互関係のうち、食料とエネルギーの関係はどうか。

○ グローバルマーケットに関する記述のところは、短期的な不安定要因については、現状では、 短期・長期の問題を並列に扱うのではなく、基本のトーンと短期の問題の関係を明確にした方 がよい。

(2) 第二章 食料問題と持続的経済成長について

○ 「過度の輸入」、「農工間のバランスある発展」等について説明がほしい。日本の穀物消費 量が少ないのは、魚介類消費が多いことによるので、魚介についての記述がほしい。食料の分 配問題についても、突っ込んだ記述がほしい。

○ 「過度の輸入」、「輸入と備蓄の組み合わせ」については、非常に微妙な問題で難しい。本 研究会では主にアジア中心であるが、分配問題については、アフリカのところで記述している とおり一歩前進している。日本では魚介類の消費が多いのは事実だがここでは最初に食料の定 義を穀物に限ると記述している。

○ 環境による供給制約(土壌劣化)の問題について、どの程度深刻なのか、もう少し情報が欲し い。耕地面積については、本当に悲観的なのか。農業投資が十分になされるかどうかと関連付 けられていると思うが、市場要因だけで考えてよいのではないか。

○ 食料は、全体としてバランスがとれているにもかかわらず、地域的な過剰と不足の偏在によ り飢餓が生じているという分配のシステムの改善について、その是正策を国際協力で触れるべ き。「適正な価格水準」というところで、国の発展段階に応じた対応の必要性についてふれる べき。

○ 日本の役割も述べるべき。中国の食料自給率については、食料生産が比較劣位化しているこ とから、95%より低い数字が妥当との意見もある。先進国での増産がすぐに環境悪化につながる ような書き方はどうか。市場至上主義では農業は比較劣位であり、日本などでは生産能力があ っても、過剰問題に悩み生産を抑制している。

○ 食料援助の問題は、現在途上国からの要請主義で行っおり、途上国は工業援助にプライオリ ティを置きがち。援助国として、先進国から、農工間のバランスある発展を積極的に打ち出す ことは有意義である。

(3) 第三章 エネルギー問題と持続的経済成長について

○ 今後の石油における対応としては、フレキシブルな世界市場を保つための資源開発に対する 技術開発や投資環境の維持であり、非中東地域の生産をいかに維持するかが重要である。世界 市場が維持されている限りアジアの中東依存度の高まりというのは石油そのものにとってあま り問題とはならない。問題となるのは主に政治的なことである。

○ 中東地域との関係強化については、世界市場維持の観点からみれば、バイラテラルな関係の 構築はグローバルな市場化と逆の過程となるため、むしろ中東湾岸諸国の経済状態が悪くなら ないように援助するいった意味の方が重要である。また、我が国が石油蜩d力事業者に対して投 資蜉O資規制を撤廃し、市場開放することで経済的に関係強化を行うという意味もあるのではな いか。

○ 超長期の資源の供給制約がいつ起こるのかについては本当はよくわからない。むしろ技術革 新、投資などの対策を講じ、枯渇の時期を伸ばすことが大切。

○ 石油の国家備蓄については、余った部分を今後石油需要が増加する国に融通するメカニズム の構築なども必要ではないか。日本としても、国際石油市場安定化のために機動的に備蓄を活 用する視点も必要である。

○ 民活インフラは結局コストパフォーマンス中心となるため、送配電網、環境対策、新エネ、 原子力や多国間パイプライン等の国際協力などでは公的資金の適切な配分が重要であり、民間 と公的機関の役割分担の指摘が必要。民間投資のリスクヘッジにおける公的役割として、包括 的投資保護協定ができれば民間の安心材料となる。

○ 今後の対策については供給サイドだけでなく、需要サイドも触れる必要がある。大きな意味 でのデマンドサイドマネージメントが必要である。

○ エネルギー需要はミクロをベースに積み上げていくものであり、特に民生について文化・風 土に左右されるため、需要面での今後の対応についてアジアを一括して述べることは不可能で ある。その意味で、需要に関しては、マクロなアプローチをしており、ミクロ的な部分には触 れていない旨を報告書の冒頭で述べておくことが必要。

(4) 第四章 地球環境問題と持続的経済成長について

○ 温暖化の不確実性は、それを確実にする努力が必要であり、科学と経済の立国である日本の 役割は大きい。酸性雨については、途上国で酸性雨の問題意識が低いのは、貧困のためであり、 他の問題とも相関関係で結びついている。

○ 合理的な行動のための教育の必要性など述べたらどうか。共同実施についても、円滑に実施 する上での問題点を指摘したらどうか。

(5) 第五章 地球環境・エネルギー食料問題と経済成長について

○ 我が国の役割、特にアジアとの関係の中でを、総まとめとしてイーブンな視点から述べるべ き。公的な国際協力、市場参加型の私的部門の役割のコンビネーションの必要も書くとよいの ではないか。

○ 「エネルギー多消費型産業から寡消費型産業への構造転換」というところは、個別産業にお ける消費構造の転換についても書くべき。 途上国の温暖化対策等を資金面だけの援助でなく、技術移転、人材養成などの面の援助の体制 (組織)作りの強化についても書くべき。

○ CO2問題の対応として、先進国社会におけるパラダイムの転換、個人レベルの価値観等の転 換といったことに触れることが必要ではないか。

○ 持続的「発展」ではなく、持続的「成長」を用いているが、これに対するスタンスを持って おくべき。

○ 全体像としては、問題提起型悪循環の構図のみではなく持続的成長を目指した場合の好循環 の構図も入れたらどうか。

(以上)