第3回地球環境・エネルギー・食料問題研究会概要

1 日 時

平成8年11月13日(水)10:00~12:00

2 場 所

経済企画庁特別会議室(1230号室)

3 出席者

(委 員) 田中座長、
石井 彰、内田光穂、栗原史郎、篠崎悦子、柴田明夫、十市勉、
中垣喜彦、中上英俊、柳原 透、横堀惠一
(事務局) 五十嵐審議官、西川経済構造調整推進室長、
古賀電源開発官、小原計画官

4 議 題

エネルギー問題について

5 審議内容

主な意見は次のとおり。

○中国の電力とGDPを捉えたエネルギー原単位が横這いになっているのは、むしろ相当効率化が 進んでいるのではないか。また、中国のGDPはこれまでの過少評価が徐々に是正されつつある。 エネルギー危機について、構造的なものか、一過性のものと捉えるかをはっきりさせた方がよ いのではないか。問題はOPECをどのように捉えるかであり、個人的には後者と思われる。 石油需給の情報が非常にスムーズに流れ危機的状況を回避できたことから、市場のトランスペ アレンシーを評価すべき。 民活におけるリスクのうち、受入国の権威主義的な制度・法律による責任回避が最も問題とな る。 今後、中国の影響が最も大きい。日本は二国間や、APECを通じてアプローチしている。しかし、 IEAと中国の協力関係も徐々にできていることから、中国のエネルギー 問題について多国間メ カニズムをうまく利用するという視点も加えたらどうか。
○石油危機を議論するにあたっては、OPEC、非OPECを分けて議論することはあまり意味がない。 OPECの中でもベネズエラ等では石油の増産を行い、協定を守っていない。市場全体の寡占度合 や中東湾岸依存度が増大するか、という観点から見るのが適切と思われる。 また、中東湾岸依存度上昇を避けるためには、これまで国営企業によって管理されていた旧ソ 連・中国などの国々において、国際企業の資本が導入されるべく市場化に向けた努力がなされ、 構造的問題を顕在化させないことが最良の方策と考えられる。つまり、市場化の維持がポイン トとなる。 長期的には問題がないと思われるが、短期的な状況の方が問題。第2次 湾岸ショックのような 意図しない危機が起こる可能性が非常に高い。サウジの余剰能力に頼ることは産油国にゲタを 預けることになることから危険。消費国での対応が重要。対策として石油備蓄があるが、現在 の制度では、世界的に石油が一時供給途絶した場合、石油の買い溜による価格高騰が起きやすい。 機動的な備蓄放出が必要。
○非OPECの増産に伴い、OPECのシェアが下がり、価格の市場化が進展したという論理によれば、 逆に再度OPECのシェアが高まると、石油価格市場化自体が再度ひっくり返ることがあり得るか どうか。 石油が世界的な商品となっている中で、アジアの石油市場の強化はどういう意味を持つのか。 APECという場は、アジアと太平洋を含むが、アジアのくくりとAPECの協力が齟齬なくスムーズ にいくものなのか。
○中国のエネルギーの対GDP原単位が高いのは、最近の研究では中国のGDPは統計よりも大きいと いわれていること、電力不足によりエネルギー効率の高い産業へ電力が重点配分されているこ と等から、実際のエネルギー原単位は低いと考えられる。 今後、インフラ整備のためのエネルギー多消費型産業の増加や、電力供給力が増加することで 低エネルギー消費効率産業へも電力供給されることから、逆にエネルギー原単位は高くなると 考えられる。
○前回は地球環境問題を取り上げ、かなり厳しい見方をしていたが、今回は環境問題は除かれて、 エネルギーは経済成長の制約要因とはならないような楽観的見通しの印象。環境制約がエネル ギーを通して経済成長への制約要因になるかどうかを議論することが最重要ではないか。 また、石油価格が楽観的見通しに対して、省エネルギーが悲観的にならないのは問題がある。 その他にアジアにおける新エネルギーの導入を取り上げることは重要。米国、ドイツでは風 力発電導入のための法制化、規制緩和により5年間で百万kWを超えている。 アジアにおいて も制度面の政策が重要。
○アジア民活インフラプロジェクトについて、相手国の受入責任体制が一部を除いて未整備であ  り、体制の確立が必要。現在は政府による支援がないと民間資金の導入につながらない。 また、アジアではコスト高の要因である環境対策への意識が完全に欠落している。先進国から  の公的資金の環境対策への重点化、発電所の熱効率を上げること等が必要。
○石油に関しての問題が多く取り上げられているが、石油についてはほぼ学習済みではないか。  天然ガスはクリーンだということで大変注目されており、ガスについても議論すべきではない  か。 また、消費側の対策として、省エネルギーに関して最先端の技術協力が必要。今後は需要を管  理することを捉える必要がある。
○石油の市場化が進んで価格の長期的安定が図られると考えれるが、何が価格を決めるのかをも  っと議論する必要がある。 原油価格は今後緩やかに上昇していくことが代替エネルギー開発等、様々な問題の解決に都合  がよいのではないか。
○楽観的な見方という指摘については、資源的には制約要因とならないと考えられるCO2排出抑制  により資源があっても使えないという状況になれば明らかに経済成長へ の制約要因である。そ  ういう状況になるかどうかの議論が最も重要。 在来型の環境問題については、各国がどれだけ真剣に取り組むかの問題。
○天然ガスについては、資源が豊富にあるが、コストが限界的であり、市場メカニズムだけでは  進まない。多国間にわたるインフラ整備が必要であり、政策的な取組が重要。
○ エネルギー問題については、CO2問題にも踏み込み、さらに2020年を超えて考える 必要がある。

(以上)