第2回地球環境・エネルギー・食料問題研究会概要

1 日時

平成8年10月21日(月)14:00~16:00

2 場所

経済企画庁特別会議室(1230号室)

3 出席者

(委員) 田中座長、
石井彰、石川竹一、内田光穂、栗原史郎、柴田明夫、中垣喜彦、
中上英俊、西岡秀三、藤田幸一、古沢広祐、細田衛士、横堀惠一
(事務局) 坂本総合計画局長、五十嵐審議官、
前川経済構造調整推進室長、古賀電源開発官、小原計画官

4 議題

地球温暖化問題について

5 審議内容

主な意見は次のとおり。

(地球環境問題一般について)
○ 地球温暖化の影響については、海外では、不確実性もあることから懐疑的な意見も多いが、経済   活動による温暖化への影響があることは事実である。従って、地球温暖化問題については、対策   の強化と同時に、その影響予測に関する分析力を更に高めていくことも重要である。
○ 温暖化の影響については、エアロゾルによる冷却効果、オゾン層破壊の影響、バイオマスの減少   等、他の環境問題との相殺、相乗効果を含めたより広い視点から検証される必要がある。
○ 温暖化対策の費用対効果を論じる際には、温暖化が、現にある各国間の気象条件的格差を更に押   し広げるものであること、不可逆的なものであること、更に、その対策からCO2濃度の安定まで   に数十年、気候の安定までには百年オーダーの遅れをもつこと等 のリスク要因に十分留意する必   要がある。
○ 地球環境の問題として、温暖化のみでなく、生物多様性の問題、特に熱帯林における種の保存の問   題を取り上げるべきである。

(国内における対応について)
○ 先ずエネルギー消費大国である我が国において、エネルギーとライフスタイル、カルチャーの関係   について国民にPRし、啓蒙していくことが必要である。
○ 1990年頃の環境ブーム以降、多くの調査で環境問題が国民の意識に根付いているという結果が出て   いるにも拘らず、なぜそこから行動の段階に踏み出すことがないかというと、それはシステムの問   題である。自動車などの幾つかの分野では、製品規格に高い目標を設定すればそれをクリアする製   品が生まれ、更に消費者にも受け入れられることが既に判っている。そこでドイツのように、環境   を無視しては生き残れないのだということを産業界全体に向かって示唆することも可能である。
○ 家庭部門におけるCO2排出量の3~4割がマイカーによるものといわれているが、 これについて   は技術、交通システム、あるいはライフスタイルといった様々なレベルからの検討を加えることが   必要である。
○ 例えばソーラーパネルについては、単に電源の代替効果だけではなく、ピーク時電力の抑制効果も   併せ持つ。そのような連続的ではない不連続な効果を様々な分野で多く引き出すことも有効である。
○ 先進国中、家庭用のエネルギー消費原単位が最近上昇しているのは日本だけである。それは、一方   で暖房のように、他の先進国に比べまだ遅れている面があることにもよるが、他方では、待機電力   等不必要に利便性を追求しているという面もある。
○ CO2排出抑制技術の中でも、新エネルギー技術と省エネルギー技術では状況が異なる。省エネルギ   ー技術においては既にその採算性は担保されており、後はどうアナウンスしていくかが問題であるの   に対し、新エネルギー技術においては例え補助金を貰ったとしても採算が取れず、導入する経済的合   理性が存在しない。こうした、経済的合理性がないにも拘らず、社会的必要からそれが要求されると   いう場合には、その導入の負担を広く薄く市民に負担させていくような社会の仕組みが必要である。

(途上国への対応について)
○ 地球環境問題と同時に途上国の地域環境汚染の改善にもつながる方策として化石燃料利用の高効率   化がある。特に発電部門を中心としたこの分野の途上国への技術移転等に関し、政府は体系立った   支援システムを作っていくべきである。
○ 途上国の今後のエネルギー需要に関連し、途上国におけるエネルギー価格、特に電力料金が政策料   金的色彩からおしなべて安いため、適正化を図っていく必要がある。
○ 先進国の現在の電源構成をそのまま途上国に移転することは、温暖化対策上必ずしも有効ではない。   新エネルギー発電は技術的にはかなり改善されてきており、中小規模の途上国においては、水力、   風力、太陽光といった再生可能エネルギーを主力とした電源構成も可能である。
○ 現在途上国では民間の技術、資金による電源開発が主流となりつつあるが、そこでは資金的な制約   から環境対策が取り残されている。そこで我が国のODAを中心とした資金援助を、環境分野にシ   フトさせることが今後必要である。
○ 炭素税の適正なレベルが各先進国において異なっていることからわかるとおり、CO2排出抑制にか   かる限界費用は先進国間においても異なっている。そこで共同実施活動 は、対途上国に限らず、先   進国間で行うことも有用である。
○ 途上国の多くは権威主義的体制から民主主義的体制に移行しつつあり、今後はこれまでのように環   境問題を軽視し経済発展のみを追求するような政策は転換せざるを得なくなるか、あるいは既にそ   のように変化していると考えられる。
○ 途上国への援助については、途上国を現在行われている地球温暖化問題の議論の場からドロップア   ウトさせないということが最も重要であり、そのためにも先進国はより積極的な姿勢を示し続けて     いく必要がある。
○ 技術援助以外にも、新しい形の文明をアジアで発掘し、援助していくことも必要である。例えば菜   食主義であるとか、あるいは米食文化も、小麦等と比べ土壌からの栄養素の収奪が少ない作物とし   て利用可能である。
○ ODAの環境枠を広げる必要があることは勿論だが、共同実施活動についても、国内におけるイン   センティブの乏さが問題であり、これを支援する財源の確保が必要である。
○ 途上国も多様であり、地域別や産業特性別、産業発展レベル別といった細かい分析、及びそれに応   じた対応策が必要である。

(我が国、途上国に共通する対応について)
○ 化石燃料は一括ではなく、石炭、石油、天然ガスを分けてみるべきである。発熱量当たりのCO2発   生量は、コンバインドサイクルガスタービンを用いた場合、石炭の半分 程度となる。アジアにおい   ては、現在石炭比率が高く天然ガス比率が低いため、改善余力は大きい。  炭素税関連では、OPECは、OECD諸国の現在のエネルギー課税制度、例えば石炭はほとんど   非課税の上に補助金まで出している国もあることが、批判の対象になっている。

(分析上の技術的問題について)
○ CO2排出量を、東京の8月平均気温と実質GDP、水力発電量で説明した式では、 実質GDPの   弾性値が非常に高くなっているが、最近のCO2排出量の増加については 、むしろエネルギー価格   の低下が大きく寄与していると考えるべきである。
○ 各部門のエネルギー消費量の価格弾性値を検証する際には、名目だけではなく実質のエネルギー価   格を用いた分析をすべきである。
○ 民生-業務部門における業種別のデータにはサンプル数が異常に少ないものを無理に全体に推計し   ている等の不正確なものがあり、これをもって業務部門における細かい分析を行うことは危険であ   ることに注意すべき。

(以上)