第1回地球環境・エネルギー・食料問題研究会概要

1 日 時

平成8年10月1日(火)10:00~12:00

2 場 所

第4合同庁舎 共用第一特別会議室(1212号室)

3 出席者

(委員) 田中座長、
石川竹一、内田光穂、小川直宏、栗原史郎、厳善平、篠崎悦子、
柴田明夫、坪田邦夫、十市勉、中垣喜彦、中上英俊、西岡秀三、
藤田幸一、古沢広祐、横堀惠一
(事務局) 坂本総合計画局長、五十嵐審議官、小峰審議官、
前川経済構造調整推進室長、古賀電源開発官、小原計画官

4 議題

地球環境・エネルギー・食料問題の現状と主要論点等について

5 審議内容

主要論点についての主な意見は次のとおり。

・ 地球環境
○ 民生(家庭)部門については価格弾力性が低く、環境コストを市場価格に反映させる経済的措置 の効果は、あまり期待できない。この分野では新エネルギーの活用、省エネルギーが重要である。 民生・運輸部門については消費形態が多様であり、地域別等細かく実態を分析する必要がある。
○ 特に業務部門については、第三次産業の活動指数との相関が高い。
○ 全体を捉える方法論をどう考えるか。産業構造を規定する内的部分の発展パターン、外的部分の 市場構造をどのように提示出来るかが重要である。
○ 環境については、対象とする期間がかなり長期になるので、フォーキャストだけでなく、一定の 構造措置を仮定した上でのバックキャストとでもいうべき視点も入れておかねばならない。また、 環境に関しては、土地利用が一つのキーワードである。バイオマス、農地と都市の競合等につい ても検討すべき。
○ 三分野に共通していることだが、需要を前提として供給を考えるのではなく、生活の質という観 点から、そんなに需要が必要なのかということも検討する必要がある。

・ エネルギー
○ アジアの経済成長に対するエネルギー制約については、2020~30年までであれば資源不足という ことはない。価格の変動が経済成長にどういうインパクトを与えるかが問題である。また、エネ ルギー価格や食料価格が上がると、外貨制約等の問題が発生し、こういう形での経済成長への制 約の分析が大事である。
○ ここ20年で埋蔵資源量は拡大しており、資源量による制約が起きることはない。むしろ、今後こ のまま石油の市場化が進むのか、サウジが今の政治体制で続くのかがポイントとなる。
○ 2030年におけるエネルギー需給シナリオでは、新エネのコストが30兆円とあるが、イノベーショ ンによりコストが下がり、エネルギー需要も変動することを考慮する必要がある。

・ 食料
○ 熱帯林の減少については、人口増加よりも貧困が問題。例えばボリビアでは人口は増加しているが、 経済的に豊かなので森林は減少していない。また、先進国では環境問題が優先され、LLDCでは 食料問題が重視される等、先進国・NIEs・LLDC毎に三分野の捉え方が違う。
○ 食料問題は、市場のあり方が問題であり、公平な分配が重要な課題である。生産については、技術 と経済性の両面からみる必要がある。食料需給は短期的側面と長期的側面を、分けて検討する必要 がある。中国の食料問題については、西欧との食文化の違い等を踏まえるべき。
○ 70年代初期と同様、環境・エネルギー・食料がキーワードとなっているが、当時は先進国の問題で あったのに対し、今回は地球全体の問題となっている。70年代初期と今回の状況の違い等を検討す る必要がある。
○ 70年代初期の食料問題は、技術革新と投資の増大により対応したが、近年の食料問題は、技術進歩 に陰りが見え、環境も制約要因になっている等の違いがある。また、WTOの発足等によりオープ ンなトレーディングシステムが進展し、需給調整機能が低下し、価格変動の増大等不安定性が増し ている。さらに、近年農業投資が低迷しているが、2000年以降に影響が出てくる恐れがある。

・ 人口
○ 将来人口については、予測ではなく一定の前提条件による推計であることに留意すべき。 国連の人口推計は、従来5年毎に改定をしてきたが、最近では2年毎に行っている。これは、開発 途上地域での人口変化が大きく従前の前提条件が使えないため。これまで前提としていた先進国の 過去の人口パターン、都市化のメカニズムがそのまま使えなくなっている。例えば、アジアでは出 生率が急に低下している国や地域がある。このため、2020年位ならかなり確実に推計できるが、21 00年というロングランだとかなり変化する可能性があり、現在の推計が絶対とは言えない。 最新の研究では、人口と経済成長の関係については不明確というのが正直なところであり、人口が 環境に与える影響は、間接的効果の方が大きい。

(以上)