内閣府 Cabinet Office, Government of Japan

内閣府ホーム  >  内閣府の政策  >  経済財政政策  >  白書等(経済財政白書、世界経済の潮流、地域の経済等)  >  地域の経済 2016  >  第2章  >  第2節 インバウンド需要の取込みに向けて

第2章 第2節 

[目次]  [戻る]  [次へ]

インバウンド需要の取込みに向けて

上記のような地方創生について、第1章で示した外国人観光客によるインバウンド需要の取込みを例として、ポイントとなる点を検討しよう。需要の取込みには、単に宿泊施設の拡充だけでなく、外国人観光客の訪日動機や行動を把握することが重要である。

(国籍によって異なる外国人観光客の訪問先)

外国人観光客の属性や動機、滞在先等を整理すると、三つの特徴がある。第一に、国籍によって訪問先に違いがみられる。宿泊者の国籍別比率を都道府県別に比べると、アジア地域からの観光客は、九州地方やその周辺地域、及び沖縄県、静岡県などに多く、当該地の外国人観光客に占める比率が8割を超えている。他方、欧米地域からの観光客は、広島県、栃木県、青森県、京都府31などで割合が高く、約3割を占める(第2-2-1図)。

こうした訪問先の偏りは、訪日目的の違いだけでなく、就航路線等のアクセスの違いにより生じるものもあると考えられる。具体的には、アジア地域からは、近さとアクセスの良さ(空路、海路)から、九州地域及び沖縄県への訪問が多く、また、いわゆる「ゴールデンルート」と呼ばれる東京都と大阪府を結ぶ線上にあり、近年、中国からの就航便が急増32している静岡県への訪問が多い。他方、欧米地域からの観光客は、観光を目的とし、歴史的な観光名所の所在地を訪れる割合が高い。

なお、外国人観光客の国別シェアを都道府県別にみると、中国からの旅行者割合が最も高いのは静岡県で約7割を占め、次いで山梨県、愛知県となっている。また、韓国からの旅行者割合が最も高いのは大分県で約5割を占め、次いで、鳥取県、佐賀県となっている(第2-2-2図)。背景には、旅行の目的(温泉観光、ゴルフ等)との整合性、直行便の存在(佐賀空港、米子空港)や定期貨客船の就航(境港)といったインフラ整備、地方公共団体による観光戦略(県による空港施設使用料33等)があると考えられる。

(国籍によって異なる滞在日数)

第二に、国籍によって訪問日数に違いがみられる。アジア地域からの観光客は、8割弱が1週間以内の滞在だが、欧米地域からの観光客は、6割以上が1週間以上、3割弱は2週間以上の長期滞在となっている(第2-2-3図)。滞在期間の違いには、滞在目的や人員構成だけでなく、母国における休暇取得の状況や休み方も影響している。

欧米地域とアジア地域における平均有給休暇の付与日数を比較すると、欧米地域は、ドイツ(30日)、フランス(30日)、イギリス(25日)、アメリカ(16日)であり、アジア地域では中国(5-15日、勤務年数別)、韓国(15日)、香港(15日)、台湾(7-30日、勤務年数別)となっている。また、実際の休暇取得率をみると、フランスは100%、アメリカは73%、韓国は40%、香港は100%となっている34。欧米地域(主に欧州)は有給休暇を利用し長期休暇を過ごす傾向が強く、滞在も長期化する一方で、アジア地域については、春節、旧正月等の祝日等を利用した休暇中に来訪する割合が多く、有給休暇を利用することも少ないため滞在日数が短くなる傾向がある。

(国籍によって異なる買い物代)

第三に、国籍によって購入物品等に違いがみられる。国籍別に一人当たり消費額(買物代のみ)を比べると、中国の観光客が非常に多い(第2-2-4図)。

さらに、品目別一人当たり消費支出のシェアを国籍別にみると、中国からの観光客は、化粧品・香水、服(和服以外)・かばん・靴、医薬品、電気製品、カメラ・ビデオカメラ・時計のシェアが高く、韓国からの観光客は、服(和服以外)・かばん・靴、飲食料品・たばこ、医薬品、化粧品・香水が高い。また、欧米地域からの観光客は、飲食料品・たばこや服、和服・民芸品が上位を占める(第2-2-5(1)図)。

なお、2016年に入り、中国からの観光客の一人当たりの消費支出及び購入品目のシェアには変化がみられる。一人当たり消費支出は、2015年から2016年4-6月期にかけて約3割減少している。購入品目のシェアをみると、電気製品、カメラ・ビデオカメラ・時計などの高単価品目のシェアが縮小し、化粧品・香水、医薬品といった日用品のシェアが相対的に高まっている(第2-2-5(2)図)。

(地域資源のパッケージ化を図り、交流人口の増加を地方創生に活かすDMO)

外国人観光客が倍増するうち、リピーターも約6割を占めるようになっている(第2-2-6図)。訪問回数の多い外国人観光客は滞在期間を長期化し、新たな街へ出かける傾向もあることから、各地域において自らの観光資源を売り出し、観光客誘致に向けた努力を行うことが重要である。

地方創生による取組支援としては、日本版DMO35(Destination Management/Marketing Organization)候補法人登録制度が2015年11月に立ち上がり、2016年2月には第1弾として24の候補法人が登録された。2016年7月までに88の候補法人が登録されるなど、DMOを設立する動きが各地で盛んになっている。日本版DMOとは、民間事業者、地方自治体、地域住民等の多様な関係者と協同しながら、観光地域づくりを実現するための戦略の策定、その戦略を着実に実施するための調整機能を備えた法人のことある(第2-2-7図)。

観光地域が広域的に連携した取組事例としては、2013年4月に7県(兵庫県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県)により設立された瀬戸内ブランド推進連合が挙げられる。これは、「瀬戸内が全世界の人々に認知され、一度ならず二度、三度訪れてみたい場所として選ばれる(瀬戸内のブランド化)」を目指したものであり、三つの戦略([1]SNS等を活用した瀬戸内ブランドの浸透・定着、[2]瀬戸内の魅力を体感する環境整備やプロダクツの充実、[3]推進体制の構築(瀬戸内ブランドサポーター(約300社との連携))により、国内外の観光客誘致の取組を行ってきた。瀬戸内ブランド推進連合が実施したインターネット調査(2012年、2015年)によると、瀬戸内への来訪意向は2012年の23.9%から、2015年には27.7%まで上昇した。

DMO制度の発足を受け、2016年3月には「(一社)せとうち観光推進機構」に改組し、観光地域づくりの強化を目指している。このように、DMOによる地域の観光資源のパッケージ化を図ることで、地域一体の魅力的な観光地域づくりの推進、戦略に基づく一元的な情報発信・プロモーションにより、観光客の呼び込みが可能となる。今後、日本版DMOの浸透により、観光による地方創生が期待される。

(地方空港の機能強化により、インバウンド需要を取込む)

また、地方空港の発着枠利用率は6-7割にとどまり、稼働率に余力があることから、追加的にインバウンド需要のとりこみを実現することが可能と見込まれる(第2-2-8図)。例えば、松山空港には4割の枠が空いているが、現在進めている「せとうちDMO」の中において、利活用を進める余力がある。

次に、地方空港の入国者別に外国人観光客の消費額の変化をみると、那覇空港利用客の消費額の伸び率は直近3年間で約4倍と大きく増加した(第2-2-9図)。那覇空港利用客の消費額が増加した背景には、当該空港を利用する外国人観光客数の増加がある。客数の増加に寄与しているのは、主にLCCを含む国際就航路線の拡大である。国際線は、2014年には7都市、90便(週)であったが、2016年には10都市、146便(週)に増加し、LCCについても2社から6社へと拡大している。

最後に、外国人観光客の需要を地域に呼び込むためには、各地域のアクセスポイントとなる空港等の交通の利便性向上も重要である。空港施設と市街地、観光拠点等を結ぶ公共交通ネットワークの連動が不可欠であり、地域全体の中で施策の整合性を確保する必要がある。


脚注31 欧米地域からの観光客が訪問する先としては、例えば、広島県(広島平和記念資料館、宮島)、栃木県(日光東照宮、足利フラワーパーク)、青森県(十和田湖、奥入瀬渓流、弘前城)、京都府(伏見稲荷大社、金閣寺、清水寺)などがある。
脚注32 中国と静岡空港を結ぶ1週間当たりの定期便就航数は2014年12月時点の8便から、2016年2月時点では25便と3倍以上の増加である。なお、就航都市数も同期間で2都市から8都市へ増加している。
脚注33 「米子空港国際定期航路利用促進対策費」とは、米子・ソウル便の安定運行を実現するため、アシアナ航空に対して米子空港の着陸料、施設使用料等の経費を支援するもの。2016年度予算計上額は81,203千円。
脚注34 海外の平均有給休暇の付与日数及び休暇取得率は、(独)労働政策研究・研修機構「国別基礎情報」及び「データブック国際労働比較」、(財)海外職業訓練協会「雇用労働関係法令一覧」、日本貿易振興機構(JETRO)「各国の基本情報」による。
脚注35 観光による地方創生の取組として、地域資源を組み合わせた観光地の一体的なブランドづくり、ウェブ・SNS等を活用した情報発信・プロモーション、効果的なマーケティング、戦略策定等について、地域が主体となって行う観光地域づくりの推進主体を担う法人であり、日本では、2015年11月にDMO候補法人登録制度が立ち上がった。候補法人は、2016年7月15日現在で88件(広域連携DMO4件、地域連携DMO40件、地域DMO44件)。
 海外では、バルセロナ観光局(スペイン)(1992年のオリンピック・パラリンピック招致を契機にバルセロナ市が設置し、ディスティネーションマーケティングを実践)、ビジット・ナパ・バレー(米国カリフォルニア州ナパ郡)(富裕層やミーティングプランナー、イベントプランナー等のターゲットに応じたマーケティング、日-木曜日の旅行を推進するマーケットプログラム等の実施)などの先進事例がある。
[目次]  [戻る]  [次へ]
内閣府 Cabinet Office, Government of Japan〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
電話番号 03-5253-2111(大代表)