第1章第2節

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2.雇用の動向

(有効求人倍率は改善しているが、足元は総じて横ばい)

有効求人倍率をみると、2013年以降、東海、北陸などのこれまでも有効求人倍率が高い地域のみならず、九州や沖縄などの従来水準の低い地域においても着実な改善がみられた(第1−2−1図)。東北においては復興需要等により有効求人倍率が2013年半ば以降1倍を超えて推移している。北関東は2012年に製造業での大規模な雇用調整が行われたことから改善が遅れていたが、2014年に入り1倍を超えて推移している。

また、新規求人倍率をみると、2013年末以降は全ての地域で1倍を上回っており、旺盛な新規求人が全業種にわたりみられるところである。一方で足元では、沖縄においては引き続き着実に改善しているものの、その他の地域では高水準ながらも横ばいないしは弱含みの動きがみられる(第1−2−2図)。

そこで地域別に業種別新規求人数をみると、2013年前半においては、北関東では雇用調整を受けて製造業や派遣等を含むサービスの寄与がマイナスとなっていることから新規求人数全体も伸び悩んでいたが、他の地域と同様に医療・福祉、卸売・小売、飲食・宿泊はプラスの寄与であった。また特に北海道や東北においては公共工事等の増加を受けて建設業の寄与が高くなっている。

2013年後半から2014年4~6月期においては、沖縄を除く全地域において、医療・福祉に加え、生産の回復を受けて製造業の寄与が大きくなり、同時にサービス業の寄与も大きくなった。また北海道、北陸、近畿、中国、四国及び沖縄においては引き続き建設業のプラスの寄与がみられた。

また、北海道、南関東、東海、北陸、沖縄においては卸売・小売や飲食・宿泊も引き続きプラスの寄与がみられる一方、東北、北関東、近畿、中国、四国、九州においては両者ないしはどちらか一方の寄与が弱く、消費者向けサービス業の雇用については地域によるばらつきがみられた。

2014年7~9月期においては北関東、南関東、九州、沖縄を除く各地域においてはサービス業がマイナスに寄与し、また沖縄を除く各地域において製造業及び建設業の寄与が低下していること等から新規求人数全体の伸び率のプラス幅が縮小またはマイナスとなる地域がみられ、労働需要が一部弱まっていることがうかがえる。10~11月期においてもこの傾向は継続し、サービス業のマイナス寄与が大きくなるとともに、製造業や建設業においても多くの地域でマイナスの寄与を示している。なお南関東においてはこの期間においても卸売・小売や宿泊・飲食が引き続きプラスで寄与している(第1−2−3図)。

(所得改善は東京で先行し、地方へと波及)

各都道府県がまとめている「毎月勤労統計調査」において現金給与総額をみると、東京では2013年1~6月期に他の地域に比べて先行して改善したが、その後はその他の都市部、地方へと改善が波及している。また就業者数をみると東京は2013年1~6月期以降伸び率が加速しており、9道府県においては伸び率はプラスで推移している。その他の地域においても足元は小幅ながらプラスに転じている(第1−2−4(1)図)。東京では、賞与支給月に他の地域に比べ給与水準が上昇する傾向にあり、賞与の伸びが東京の賃金上昇の要因となっているものとみられる(第1−2−4(2)図4別ウィンドウで開きます

このように今次回復局面では賃金の改善が東京で早くみられるが、その背景の一つとしては、円安による輸出数量の押上げ効果が低下する一方、輸出金額の増加を通じて企業収益が改善する傾向が強まっており、こうした変化により、大企業製造業の就業者が集中する地域の所得を高めた可能性がある。

これを確認するために、まず大企業(資本金50億円以上)製造業の就業者数の都道府県別の分布をみると、約半数が東京に集中し、これに大阪と愛知を加えると約75%を占めている(第1−2−5図)。

また、現金給与総額の伸び率の産業別寄与度を事業所の規模別(常用労働者数で5人以上、500人以上、1,000人以上)にみると、製造業の寄与は2013年1~6月期はいずれの事業所規模でみてもマイナスとなるものの、7~12月期と2014年1~6月期にかけては次第にプラスの寄与が大きくなり、また他の産業よりも寄与が大きいことがみてとれる(第1−2−6図)。なお、2013年1~6月期においては、常用労働者数500人以上及び1,000人以上の事業所でみると金融・保険業が大きく寄与しており5別ウィンドウで開きます 、回復初期における株式市場の改善の効果が表れた可能性がある6別ウィンドウで開きます

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