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第2章 東日本大震災の発生と復旧・復興

2011年3月11日の東日本大震災の発生から7か月余りが経過した。この震災は、戦後これまでの間に経験のない未曽有の自然災害となり、我が国に大きな犠牲を強い、想像を超える難苦を課し、人生観や価値観さえをも揺るがし転換させるほどの大きな変化を各人に刻み込んだ。経済的な側面に限ってみても被害は甚大であり、今もなおその爪痕は癒えずに深く残っている。

地域経済にとっても厳しい一年となった。いわゆるリーマンショックから立ち直るべく打たれた累次の経済対策による様々な政策措置の効果も相俟って、景気は持ち直しに向けて徐々に歩みを進めていた。アジアにおける生産調整を背景に景気は一時足踏み状態となったものの、その後は再び持ち直しの動きが見え始めていた。そうした中で、突然の震災によって、直接的な人的・物的被害のみならず、サプライチェーンの寸断と生産の低迷、倒産や失業者数の増加、消費の買いだめや自粛の動きによる混乱やマインド低下による停滞、先行き不安感の増大などにより、地域の経済活動は強く圧迫されることとなった。その影響はいまだ消え去っていない。

本章では、この震災が地域経済に与えた影響について、特に東北地域を中心に検証する。最初に、震災発生に伴う経済的被害を建造物やインフラ等ストック面への影響を中心に見た後、企業の生産活動や家計の消費等フロー面への影響について考察する。その際には、1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災の経験との比較検討も行う。なお、本章では、データが許す限りにおいて、特に被害の大きかった岩手県、宮城県及び福島県の3県(以下、「被災3県」と言う。)、あるいは被災3県のうち津波を受けて甚大な被害を被った沿岸市町村(以下、「津波被災地域」と言う。)についても、分析を行う。最後に、これまでの復旧・復興への取組を概観する。

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