おわりに -グローバル化時代の地域経済-

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交通や通信手段の発達により、一層ボーダーレス化した現在では、地域経済は国内市場にとどまらず、今や直接、世界市場との結び付きが強まっている。こうした中、地域やそこに根ざす企業はどのような戦略を取ることが望ましいのだろうか。

ブランド化・差別化が重要

グローバル化時代の中で地域経済がその真価を発揮するためには、業種を問わずにブランド化・差別化を図ることが重要である。

製造業の事例として挙げた企業は、いずれもその企業ならではというブランド化と差別化を実現している。それ故、海外市場に進出しても海外製品と太刀打ちし、緩やかなデフレ傾向にあっても低価格化を阻止することができたのである。

農業では、日本の農産物が「おいしい、綺麗」というブランドを確立したことによって、国際競争力を持ち、輸出が好調となっている品目もある。

外資系小売業の日本進出に苦戦しているのも、ブランドが浸透していないのが一因であると考えられる。

観光についても、「オーストラリアが夏の時期に雪質の良い北海道でスキー」というように「この地ならでは」という御当地ブランドを確立することによって、他の地域に比較して観光客をひきつけることが可能となるのである。

もちろん、ブランドは一朝一夕に達成されるものではなく、その形成には時間が必要である。出店ラッシュが続く海外高級ブランドでさえも、長い時間をかけて日本市場に浸透してきたからこそ現在が好調であるとも言える。しかし、日本進出したアメリカのコーヒーチェーンがごく短期間でブランドを浸透させた例もあり、結局はその地域・企業の戦略の問題であると言うこともできる。ブランド化・差別化とは、いかにその地域・企業の特色を出すかということである。

やはり人材が重要

活躍している企業や外国人観光客の誘致に成功した地域などをみると、いずれも卓越した技術力と柔軟な発想力を持っている。やはり人材が重要である。優れた人材なくして、地域経済の活性化は図れない。製造業の技術を伝承し発展させるためには、長期にわたり継続して技術を磨くとともに、柔軟な発想力を持つために視野を広く持つことも重要である。このためにも海外進出は、役立つとも言える。また、地域ぐるみで高校からの人材育成に取り組み始めた大田区の例も参考になる。観光の総合的な戦略作りのために、民間企業から期限付き登用をするという地方自治体の試みもみられる。自組織では育成するには難しい人材は、他組織からまかなうことで、人材という「資源」を有効に活用していると言える。

堅調な景気回復が浸透しつつある今こそが好機

2004年秋口現在、景気は堅調に回復しており、これが地域経済にばらつきはあるにせよ、徐々に浸透しつつある。これは、企業の血のにじむような努力がようやく実を結んだ結果であるとも言えるし、構造改革の芽が出てきたことのあらわれとも言える。構造改革特区、地域再生計画など、地域経済に密接に関連する施策も効果がみられつつある。こういう状況である今、地域経済の足腰を強くするための取組を進めるべきである。

地域の力を結集せよ

地域の力、人材、知恵、資源等々、全てを結集させ、地域経済の活性化を進める。つまり、官も民も役割に応じて精一杯活動することである。

行政は、民間活力の発揮のための環境作りや、地域の企業や住民の要望に迅速に応え、支援していくことが必要である。折しも地方分権の風が吹いている。地域独自の工夫で全国一律の規制の緩和を図ることのできる特区制度なども形が整っている。行政改革を進め、自らの効率化を図り、柔軟な発想のもとに、地域作りを進めるべきである。内閣府の実施したアンケートによると、各自治体とも行政改革への取組はかなり進んでいることが分かった。限りなく無駄を省き、迅速な意思決定と強固なリーダーシップで地域に根ざした企業の後押しをする、これが開かれた行政の姿である。

地域のブランド化には企業独自の取組に加えて、行政が広報の役割を担うことも考えられる。地域ぐるみのブランド化が浸透すれば「日本一の田舎」ではなく、「世界一の田舎」になることすら可能である。

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