第2部 第1章 第5節 公共投資削減の影響 2.

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2.地域経済への影響

こうした公共事業関係費の削減は地域経済にどのような影響を与えているのだろうか。

(1)公共工事の削減の規模

まず、国土交通省「建設工事受注動態統計調査」で建設工事全体の動向をみると(第2-1-5(1)図)、2001年度から2003年度にかけて、東海と近畿を除いた全地域で大幅に減少している。内訳をみると、公共工事は全地域で減少しているが、減少率は地域によって異なる。特に北海道、東北、北関東、北陸、中国、四国では10%以上減少している。最も減少率の大きいのは北海道であり、20%以上減少している。また、民間工事は近畿と東海で大きく増加、北関東で大きく減少している以外は、地域差はあまりみられず、増減寄与も小さい。

次に公共工事の発注者別の内訳をみる。各地域の保証事業協会の「公共工事請負金額」の動向をみると(第2-1-5(2)図)、2001年度から2003年度にかけて、全地域で減少している。中でも特に寄与の大きいのが地方の機関である。南関東を除いて、公共工事の減少の7割程度が地方の機関による寄与となっている。

(2)公共投資削減の影響

公共工事の減少率には地域差があまりみられないものの、公共投資削減の影響は、公共投資依存度(公共投資依存度=県内総資本形成のうち公的/県内総支出)の高い地域に比較的大きく出ると推察される。

県民経済計算は2001年度までのものしか公表されていないため、県内総資本形成のうちの公的部門の減少率が、公共工事請負金額の減少率と同率で減少したと仮定して、公共投資削減の影響を試算する。これによると、県内総支出の押し下げ効果は、北海道が最も大きく、全国平均の2倍を超える値となる(第2-1-5(3)図)。一方で、沖縄は公共投資依存度の最も高い地域であるが、公共工事請負金額の減少率が全国を下回っているため、県内総支出の押し下げ自体は平均程度となる。また、公共投資依存度の低い南関東と東海は、沖縄同様に減少率が全国平均を下回っていることもあり、押し下げ効果も非常に小さくなると試算される。

一方で、雇用や給与にはどのような影響を与えたのであろうか。

まず雇用について、労働力調査で全体の動向をみる(第2-1-5(4)表(17)

2001年から2003年にかけての就業者数をみると、全産業は96万人の減少、建設業は28万人の減少となっている。減少率をみると、全産業は1.5%減であるのに対して、建設業は4.4%減となっており、建設業の減少率の方が大きくなっている。これを年齢別に分けてみると、15~24歳の若年層は、全産業が8.9%減であるのに対して、建設業は15.7%減と2倍近い値となっている。また、65歳以上の高齢者層は、全産業が0.6%減であるのに対して、建設業は7.5%減と大きく減少している。建設業では若年層の雇用が抑えられ、高齢者層の雇用調整が進んだと言える。

次に給与について、賃金構造基本統計調査(18)によって全体の動向をみる。

2001年から2003年にかけての給与額をみると(第2-1-5(5)表)、全産業は14.8万円の減少、建設業は32.5万円の減少となっている。減少率をみると、全産業は3.0%減であるのに対して、建設業は6.4%減と2倍を超える値となっている。一方、平均年齢をみると全産業は0.4歳上昇、建設業は0.3歳上昇とほぼ同じ動きとなっており、年齢構成の変化の影響にほとんど差はない。よって、建設業では全産業よりも給与の減少率が大きかったと言える。

以上から、公共投資削減の影響は雇用・給与の両面に現れていると言える。しかし、民間需要のシェアが高ければ公共投資削減の影響は小さいと考えられる。公共投資依存経済からの脱却が必要と言える。

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