第2部 第1章 第1節 緩やかな回復の進む地域経済 4.

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4.地域ごとに景気循環を付ける試み

以上は、各地域ともに景気の循環が全国と同じと仮定した場合の分析であった。果たして景気の循環は各地域ともに同じと言えるのだろうか。

過去の経験では、地方圏の景気は都市圏に比べて回復が遅く、後退は早いと言われる。これが正しいとすると、全国の景気の循環を使って、地域の回復度を計測することは、判断を誤るおそれがある。

このような問題点に立って、地域ごとの景気の循環を示したものが第2-1-1(4)図である。

ただし、日本の景気基準日付は、内閣府「景気動向指数」の一致DIの各採用系列から作られるヒストリカルDIに基づき、景気動向指数研究会での議論を経た後、経済社会総合研究所長によって設定される。これに対して本レポートでは、インデックスにブライ・ボッシャン法を適用し、その山谷をもって当該地域の景気の山谷とする、機械的かつ簡便な方法を用いている点に留意が必要である(2)

今回の景気回復局面は、公式判断では2002年1月を谷として始まったとされているが、東北、東海、北陸、近畿、四国ではそれに先立って回復局面入りしている。なお、回復局面入りが早かった地域とその回復度には必ずしも相関がない。つまり、回復局面入りが早かったと言って、回復度が大きいとは必ずしも言えない。

ここで、地域別の景気循環に基づいた回復率をみてみよう(第2-1-1(5)図)。 全国的な景気循環に基づくと、回復が他地域より遅れていた北海道においても、地域ごとの景気循環によると、四国や沖縄並みに回復していることが分かる。また、前々回、前回、今回の景気回復の標準偏差を取ると、順に5.4、4.1、6.3となっており、今回の標準偏差が最も大きくなっている。

このように、今回の回復局面はおおむね各地域ともに回復の動きがみられるものの、その回復の度合いは過去の景気回復局面と比較して、地域間のばらつきが大きいものになっていると言える。

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