第1章 第2節 集積メリットの活用を模索する各地の実例 4.

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地域クラスターの所在地 東海

(この地域の特徴)

  • * 自治体の主導により、新規に開拓されたIT 産業集積
  • * 海外を含む広域かつ多様な連携により「情場」の形成を目指す

(ソフトピアジャパン(19)内にある企業数等の推移)(単位:社、人)

ソフトピアジャパン内にある企業数の推移

(集積形成を主導した自治体の先見と熱意)

大垣市は、岐阜県西部にある人口15万の都市で、関ヶ原の古戦場も近い。「ソフトピアジャパン」は、96年6月ここにオープンした「センタービル」を核とするIT 関連産業の集積の中心である。技術開発室、起業家育成施設(ビジネス・インキュベータ)、IT 専門研修施設、複合サポート施設(商業施設、宿泊施設、賃貸住宅等)などが次々と整備され、現在は、企業数147社、従業者数約1,800人が集まっている。内訳は、民間分譲用地に18社、技術開発室に83社、ビジネス・インキュベータに34社などとなっている。

ソフトピアジャパン全景

大垣市は、古くから東西交通の結節点で、今も東海道新幹線、東海道本線、名神高速道路が付近を走っているが、ソフトピアジャパンの立地するところはかつて一面の水田であった。ここにIT 集積が形成されたのは、情報化社会の到来を見据え、それを生き抜こうと考えた岐阜県及び大垣市の熱意によるところが大きい。県は、87年には基本構想を策定し、94年3月に財団法人ソフトピアジャパンを設立した。

(集積企業の増加につながった周辺関連施設の充実)

センタービル開設の96年6月には、59社が参加したが、その後、周辺関連施設が目覚しい勢いで充実している。まず、大垣市との合築により「アネックス」がオープンし(98年2月)、センタービル機能の拡張に加え、技術開発室、市民向けの体験施設等が提供されている。次いで、2000年8月には、ビジネス・インキュベータとIT 専門研修施設からなる「ドリーム・コア」、2002年5月に複合サポート施設「ワークショップ24」がオープンした(左表)。このような周辺関連施設の充実につれて集積企業数も増えている。施設の充実によって企業が集まり、それが魅力となって一層企業が集まるという好循環が働いている可能性がある。

(様々な連携をサポートする関連プロジェクト)

このような充実した施設、高度な交通インフラ、そして自治体の積極的な誘致に加え、(財)ソフトピアジャパンでは様々な支援策を行っている。ビジネス・インキュベータの使用料を初年度は半額にしているほか、次のような関連プロジェクトを推進している。まず、ソフトピアジャパンを含む県南部は、「東海ものづくり創生プロジェクト」として経済産業省「産業クラスター計画」に参画している。また、県はソフトピアジャパンを含む地域を構造改革特区「スイートバレー・情場形成特区(20)」として申請し、その認定を受けた(2003年4月)。そして2003年6月には、ソフトピアジャパンにある企業が東証マザーズに上場している。主な集積支援策をみると次のようになる。

  • ○人材の育成:ソフトピアジャパンから車で約10分の所に、県立「国際情報科学芸術アカデミー」(96年4月開校)、「情報科学芸術大学院大学」(2001年4月開校)がある。これは(財)ソフトピアジャパンとの連携のもと、マルチメディア技術での人材育成を目的に設置され、その卒業生が起業した会社が既に3社、ソフトピアジャパンに拠点を置いている。
  • ○大学との共同研究:2002年度の報告書によると、15テーマの共同研究が、集積企業と慶應義塾大学や岐阜大学など計10大学との間で行われた。これらに対して、(財)ソフトピアジャパンが研究資金を補助し、成果を共有するなどコーディネート機能を果たしている。
  • ○海外との連携:これまでに南カルフォルニア大学と共同研究を行うなど、15の地域や大学と協定を結んでいる。外資系企業も5社立地している。
  • ○集積企業間の連携:集積内企業間の情報交流や技術交流を進めるための交流会を開催し、技術者に特化した会員制クラブを設置するなど、交流促進を図っている。
  • ○ベンチャー支援:2つの支援機関が、地元の地方銀行などにより運営され、資金調達やコンサルティングなどを行っている。
  • ○リサーチパーク間の連携:国内では先進的な集積である、横須賀リサーチパーク(YRP)、京都リサーチパーク(KRP)、そして(財)ソフトピアジャパンの三者間で「リサーチパーク・アライアンス」を結成している。それぞれの得意な領域を使って相互に補完することで、高度な情報通信技術の開発と応用に取り組んでいる。

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