平成13年度

地域経済レポート2001

−公共投資依存からの脱却と雇用の創出−

平成13年11月

内 閣 府 政 策 統 括 官

(経済財政-景気判断・政策分析担当)


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<コラム>米国における同時多発テロ事件の影響

1.沖縄経済に与えた影響

(1)観光産業、米軍基地への依存度が高い沖縄県の経済

 沖縄県の経済は、観光産業、基地関連支出への依存度が大きい(第2−2−1表)。97年の沖縄県内総生産に占める観光収入の割合は12.4%であり、製造業(同6.1%)の約2倍となっている。同じく、基地関連支出(軍関係受取)の割合は5.4%であり、市の面積の約36%を米軍軍用地が占める沖縄市などでは更にその割合が高い。

(2)観光客数への影響

 航空乗客輸送実績人数をみると(第2−2−2表)、米国における同時多発テロ事件(以下、同時多発テロと略。)前の9月10日までは前年を上回っていたものが、11〜20日には前年を下回った。そして、10月1〜10日には対前年比で14.8%、約1万8千人減少し、10月に入り影響が顕著となっている。

 また、沖縄県観光リゾート局による旅行代理店への聞き取り調査によると(第2−2−3表)、10月11日現在で沖縄県への旅行予約のキャンセル人数が10万人を超えた(2000年の年間入域観光客数は約452万人)。同3日調査時点のキャンセル人数が約5万4千人であったことから、キャンセル人数の増加のペースは早くなっている。特に、修学旅行のキャンセル数が全体の約8割を占めている。一方で、海外旅行から沖縄旅行への振替は約1千人にとどまっている。

 90年8月から91年2月にかけての湾岸戦争が沖縄への入域観光客数に与えた影響を振り返ってみると(第2−2−4図)、90年8月のイラクによるクウェート侵攻の影響で9月に一時落ち込み、更に、多国籍軍がイラクに対して攻撃を開始した91年1月から、対前年比で1月2.7%減、2月3.4%減、3月3.3%減と3か月連続でマイナスを記録したものの、戦争終了の翌々月の4月以降は持ち直した。

(3)小売その他への影響

 沖縄商工会議所は、10月2〜4日に沖縄市胡屋地区の事業所346件(うち小売業は304件)を対象に同時多発テロに関するアンケート調査を行った。その結果によると、全体の43.1%が売上減少などの経営上の影響を受けている。そのうち、売上への影響が30%を超えた事業所は49.0%に上っている。尚、来店客に占める米軍人等の割合が4割を超える事業所は57.7%に上っており、この地域の軍施設への経済的依存度の高さが伺える。また、内閣府の景気ウォッチャー調査(2001年9月調査)においては、多数の人が同時多発テロの影響についてコメントしている。2〜3か月後の景気の先行き判断の理由をみると、「同時多発テロの影響で、今後も旅行等で沖縄を避けることが懸念され、売上も減少が見込まれる(高級レストラン)」、「同時多発テロに関連して、修学旅行のキャンセルに伴う、団体貨物のキャンセルが予想される(輸送業)」といったコメントがみられ、幅広い業種で同時多発テロの影響が懸念されている。先行き判断DIも、8月の40.0から9月は32.4へ△7.6ポイントと、全国(35.3から31.1に△4.2ポイント悪化)と比べて悪化幅が大きくなっている。

(4)沖縄振興開発金融公庫の緊急支援策について

 沖縄振興開発金融公庫は、観光関連事業者の経営支援策として緊急に特別相談窓口を設けた。セーフティーネット融資制度として、同時多発テロによる観光客数の減少等の影響を受けて売上が減少した観光関連事業者に、資金繰りを安定させるために必要な運転資金を通常より低利の1.40%−1.45%で融資する。また、返済期間も通常は5年以内のところを最大で7年以内に延長するなどの措置をとった。その後、相談状況を踏まえて特別利率0.9%の緊急融資制度を適用するなどの融資支援策を更に強化している。


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2.運輸・旅行業に与えた影響

ここでは同時多発テロの影響が顕著に現れたとみられる運輸・旅行業について、その影響の程度を概観する。

 同時多発テロによる我が国航空会社・旅行会社への影響について国土交通省が調べたところによると、航空会社大手3社の国際線の旅客・貨物収入の減収は、9月11日から9月24日の期間で約107億円であった。更に、同時多発テロの影響は旅客・貨物収入の減収にとどまらず、航空保険契約の見直し(保険料の追加徴収)に伴う約400億円と航空保安体制強化に伴う約3.8億円の費用増加が見込まれる他、受託手荷物の全数検査を行うためのX線検査機器の購入費として約4億円が見込まれている。

 同時多発テロによる国際旅客数の減少及び費用増加に加え、世界的なIT不況による国際貨物需要の低迷も予想されることから、某大手航空会社は、2001年度の業績予想を経常利益の赤字化を見込むなど5月時点の見通しに比べ大きく下方に修正した。また、航空各社では航空保険料の値上げに伴い国際旅客便については5ドル、国内旅客便については500円の「航空保険特別料金」を設定し、国土交通省への認可申請・届出を行った。

 次に旅行会社への影響について同じく国土交通省が調べたところによると、主要8社の海外旅行のキャンセル状況は、9月11日時点の予約済み分から事件発生以降9月28日までのキャンセル分が取扱高ベ−スで約520億円に達した。取消者人数は約29万人であった。事件直後の短期間にもかかわらずその影響は小さくないといえる。

 参考までに、湾岸戦争時の海外旅行者数及び海外旅行取扱高の推移をみると(第2−2−5図)、多国籍軍がイラクへの攻撃を開始した1991年1月に減少に転じた後、2月、3月と急減し、2月の戦争終結後も低調な動きが続いた。海外旅行が本格的な回復をみたのは9月以降であった。


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