平成13年度

地域経済レポート2001

−公共投資依存からの脱却と雇用の創出−

平成13年11月

内 閣 府 政 策 統 括 官

(経済財政-景気判断・政策分析担当)


[目次] [戻る] [次へ]

第2節 地方財政の厳しい状況を受けた公共投資縮減の動き

1.地方財政の悪化と経済効果の低下が背景

(1) 中央も地方も財政が悪化している 

 日本の財政赤字の大きさは先進7か国中最悪のものである(第1−1−18図)。バブル経済が崩壊した1992年以降、中央政府の赤字幅は拡大し、地方政府も黒字から赤字に転じた。これは急激な景気の減速を阻止すべく、景気浮揚の需要拡大政策と減税策が採られたこと、また、税収の減少、社会保障費の拡大等があった結果であり、99年以降はかつてのイギリス並の赤字幅が続いている。

 この結果、中央と地方の政府長期債務残高は第1−1−19図にみるように2001年度末には666兆円(純計)に達するとみられている。この内訳は国が506兆円で90年比2.53倍、地方が188兆円で同2.81倍と、地方の伸び率が高い。

(2) 公共投資の配分の硬直性と経済効果の低下

 中央政府、地方公共団体、特殊法人などを含む行政投資の事業目的別構成比は、これまで14年間大きな変化がなく、配分が硬直的であることは前節でみたとおりである(前掲第1−1−3図)。配分が硬直的であるということは、この間の社会資本整備の進展を反映していないとも考えられる。ちなみに、総理府が定期的に実施している社会資本整備に関する世論調査から道路、下水処理施設に対する満足度をみると、98年までにほとんどの地域で満足度が高まってきている。しかし、道路では国道など幹線道路は満足している割合が6割前後となっているものの、住宅周辺の生活道路に関してはむしろまだ不満としている人が多い。道路に限らず、これからの公共投資はその事業内訳に踏み込んだメリハリの利いた配分見直しが求められている。

 また、今日では社会資本整備がかなり進展したこともあり、前節でみたように、社会資本の企業立地を誘発する効果が低下していることや、硬直的な事業配分が事業の効率性への疑問を擁かせている面などからも、これまでの事業配分の見直しが求められている。また、今日の厳しい財政状況や、公共投資の国民経済に占める割合が国際的にみても高い水準が続いていることから、公共投資総額の縮減が求められている。


[目次]

2.減少傾向にある地方の公共投資支出

 次に、国の予算規模と、それに占める公共投資の大きさを確認しておこう。2001年度の国家予算総額は、82.6兆円でこのうち公共事業関係費は9.4兆円で11.4%を占めている。最もシェアが大きいのは、高齢化社会を反映して社会保障関係費(21.2%)、二番目は最近急増している国債費(20.8%)となっており、公共事業関係費は地方交付税交付金に続き4番目となっている。更に、最近20年間の主な項目の構成比の変化をみると、公共事業関係費は1990年度をボトム(10.1%)として、その後急上昇し93年度にはピーク(19.6%)を打ち、94、95年度とほぼ横ばい、その後は、98年度に一時上昇したものの徐々に低下している。

 一方、地方の予算規模に相当する地方財政計画(県・市町村の重複分を除いた純計ベース)をみると、2001年度の歳出総額は89.3兆円で、このうち投資的経費は27.2兆円で総額の30.4%を占めている。その内訳である地方単独事業は19.6%の17.5兆円、国の直轄事業地方負担分・補助事業は10.8%の9.7兆円である。

 また、地方財政の公共投資を決算ベースでもう少し長い時間軸でみると、建設事業費の対歳出総額構成比は大きな波を打ちながらも概ね緩やかな減少傾向にある。そうした中で、80年代後半以降はバブル景気と共に急増し、1993年度をピークにその後減少に転じ、99年度にはバブル期以前の水準に低下した(第1−1−20図)。即ち、公共投資の縮減は歳出構成比の面では、99年度時点で既にかなり進んでいるのである。更に、内訳の補助事業と単独事業別にみると両者は対照的な動きを示している。補助事業は80年代後半以降はほぼ横ばいとなっているのに対し、地方単独事業は80年代後半から急増し、93年度をピークにその後は急減している。歳出の増加は、財源としての地方債の増加をもたらしており、公債費構成比は最近年のボトムである92年の7.9%から99年は11.6%に高まっている。

 次に、地域別に行政投資実績の動向とその財源構成(国費、県費、町村費)変化をみる(第1−1−21図)。まず、行政投資額の動向は、93年度〜98年度の動きから3つのタイプに分けられる。[1]増加を続けた北海道、東北、北陸、四国、九州、沖縄の6地方圏。[2]やや減少した北関東、東海、中国の3地域。[3]大きく減少した南関東、近畿の2地域である。総じて、経済成長が停滞したこの時期に、地方圏では増加が続き、三大都市圏では減少したといえる。次に、その財源構成比は、沖縄では国費が7割(98年度)と断然大きく、市町村費は2割未満に過ぎないのが特徴で、ほかに大きな特徴はみられなかった。


[目次]

3.地方財政の悪化と公共投資

(1) 歳入に占める一般財源と地方債

 地方税、地方譲与税、地方交付税の3税は地方公共団体が使途を自由に決定できる一般財源といわれている。歳入項目の中で最も基本的な財源である地方税について、対歳入総額構成比の小さい順に左から右に並べたのが第1−1−22図である。人口・産業集中度の高い東京都の地方税収はそれらの低い島根県の6.0倍となっている。こうした地域差を均すため、地方交付税制度があり、地方交付税と地方譲与税を加えた一般財源3税で東京都と島根県を比較するとその差は1.5倍と大きく縮まっている。ちなみに、一般財源の対歳入総額比は、高度成長期から1980年代前半までは50%強で、1990年前後に約60%まで上昇したが、それ以降低下して、近年では50%強となっている。また、地方債収入の比率は各県平均13.9%のシェアであり、歳入項目中4番目の大きさであるものの、近年の地方債の増加は著しい。

(2) 地方財政の借入金残高の推移 

 第1−1−23図は地方財政の借入金残高とその内訳3項目の金額、更に残高総額の対名目GDP比を示してある。対GDP比をみると80〜91年までは横ばいないし減少傾向にあり、91年度にボトム(14.7%)となり、それ以降上昇し99年度には33.8%と91年度の2.3倍に膨らんでいる。内訳項目をみると、地方債現在高が圧倒的に大きく、99年度には125.6兆円となっている。また、グラフでは金額が小さくやや分かりにくいが、交付税及び譲与税配布金特別会計(以下、交付税特会と略す)の借入金残高(地方負担分)が91年度をボトムにそれ以降急上昇した。地方交付税は国の一般会計から、いったんこの交付税特会の歳入とされ、そこから各自治体に歳出されることとなっている。この歳入額は法人税をはじめとする国税5税の一定割合であるのに対し、この歳出額は地方財政計画における地方交付税の総額や各自治体の基準財政需要額と基準財政収入額(8)の差額で決まる。そしてこの歳出・歳入は各々の算出方法が異なるため差額が生ずる。その多くを埋めているのが交付税特会の借入金である。なお、2001年度から3年間はこれまでの交付税特会借入方式に変えて、国負担分は一般会計からの繰入により、地方負担分は特例地方債(臨時財政対策債)の発行で補てんすることとなった。

 地方債現在高の目的別構成比をみると、一般単独事業債が40.1%と抜きん出て大きな割合を占めている。以下、一般公共事業債(17.1%)、減税補てん債(4.6%)、減収補てん債(4.4%)、義務教育施設整備事業債(4.3%)の順となっている(第1−1−24図)。また、借入先別構成比は政府資金が44.4%、市中銀行資金が32.5%となっている。


[目次]

4.公共事業改革に向けた取り組み 

 1993年の公共工事入札をめぐる贈収賄事件を契機に、公共工事の入札・契約制度改革が中央建設業審議会で検討され改善案が報告された。その後の検討も経て、今日では以下のような新しい入札・契約方式が提案されている。[1]CM(コンストラクション・マネジメント)は、発注者との契約に基づき、設計の検討、施工管理、費用管理などを、専門家が発注者の補助者として運営を支援する方法で、発注者が技術的・体制的に十分でない場合に支援を受けることができるメリットがある。[2]VE(バリュー・エンジニアリング)は、受注者が施工方法などについて改善の提案を行い、発注者の承認を得て、その手法を用いて施工することができる契約である。入札の際に、設計の改善案を入札者が提案する入札時VEと、入札後に受注者からの提案を受け付けそれがもたらす費用の低下の一部を受注者に還元する契約後VEがある。[3]総合評価方式は、品質や安全性などの価格以外の要因と価格とを総合的に評価して落札者を決める方式である。[4]DB(デザイン・ビルド)は、設計と施工を一括して発注する方式で、高い技術力と資金力が必要となる。わが国では設計と施工を分離することが原則で、施工だけの発注が多くの建設事業者に受注の機会を生じ、競争を刺激し費用が低下するとされてきた。しかし分離することにより独自の技術やノウハウをもつ施工事業者の能力を十分活かせないなどのデメリットもある。

 また、これらと観点は違うが、電子入札制が実用化され始めている。これは事業参加機会の公平性や契約の迅速化にも貢献するものであり、今後、全自治体で推進することが望まれる。同時に、その標準化も重要な課題である。

 一般に、公共部門においても企業経営的な手法を導入し、より効率的で質の高い行政サービスの提供を目指す新しい行政運営の考え方(ニューパブリックマネージメント(9);NPM)が国際的な流れとなっている。公共事業においても競争原理を導入し、事業の効率を高めることは、そのコストを負担する国民の利益にかなっている。入札方式の改革とともに、公正な入札が実施されるように監視機能を強め、談合を防止することが求められる。これには、競争市場が健全に働くような制度環境を整備することが必要である。

 更に、公共事業の地方財政負担の軽減、効率性向上等のため、民間の資金や経営手法等を活用して公共施設等の設計、建設、維持管理、運営等を行うPFIの導入や検討が地方公共団体で進められている。PFI事業を行うことで、低廉かつ良質なサービスが提供されること、官民の新たなパートナーシップが形成されること、民間の事業機会を創出することを通じ経済の活性化に資すること等が期待されている。


[目次]

8) 基準財政収入額は、地方交付税の算定に用いるもので、各地方公共団体の財政力を合理的に測定するために、標準的な状態において徴収が見込まれる税収入を一定の方法によって算定した額。また、基準財政需要額は、地方交付税の算定基礎となるもので、各地方公共団体が、合理的かつ妥当な水準における行政を行い、又は施設を維持するための財政需要を一定の方法によって合理的に算定した額。基準財政需要額が基準財政収入額を超える地方公共団体に対して、その差額(財政不足額)を基本として普通交付税が交付される。

9) NPMの理論は、[1]徹底した競争原理の導入、[2]業績/成果による評価、[3]政策の企画立案と実施執行の分離という概念に基づいている。


[目次] [戻る] [次へ]