第4回経済審議会21世紀世界経済委員会議事概要

  1. 日時 平成8年9月20日(金)10:00~14:00
  2. 場所 経済企画庁 特別会議室(1230号室) (第4合同庁舎12階)
  3. 出席者
    (委員会) 佐々波委員長、公文委員長代理
    関志雄、黒川和美、四野宮睦雄、張富士夫、西和彦、村上英亮、
    村田良平、最上敏樹、吉野直行 の各委員
    (事務局) 坂本総合計画局長、金子経済研究所長、小峰審議官、五十嵐審議官、
    志賀計画課長、道上計画企画官、大前計画官、太田計画官、服部計画官
    安井計画官
  4. 議題
    1) 金融におけるグローバリゼーションの進展状況と今後の展望
    2) グローバリゼーションの進展下における知識・技能を備えた人材の移動・雇用
  5. 審議内容
    1)の議題について本委員会における主な意見は次のとおり。
    • 日本の金融機関は効率性が良くないと言われているが、一人当たりの生産性は中小では良くないが大手は非常に良くなっており、金融機関全体としては指標の採り方によっては海外の金融機関より良い部分もある。
    • 個人の貯蓄や企業の引当金のような資金が国内でたまっていくことが、東京の金融市場を膨らませていくことになるのか。
    • 外国金融機関にヒヤリングして今後の東京市場について聞いてみると、唯一評価している点が資本市場の今後の拡がりが大きいという点である。それは、日本人がお金を持っているということだが、それが東京の金融市場にとってシンガポール等と比較してどれくらい相対的に有利なのか。
    • 東京などの都市に金融機関が集中することが本当に金融機関にとって競争力を持つと言う意味で重要なことなのか。また、日本に多くの貯蓄があるということが、金融機関の競争力上どのように評価されるのか。金融機関としての競争力はお金をたくさん持っていてたくさん貸すだけということではないのではないか。国際金融競争における競争力の定義をしっかりおさえておく必要がある。
    • 円の国際化の議論に際し、債権国としての日本の国益という観点から見る必要があるが、日本は世界一の債権国となっている中、円の国際化が進んでいないためその大半はドルベースで持っている。対外資産は日本国民の老後のために蓄えてきたものなので、購買力の維持が大変重要であり、対策として対外債権を円で持つことが考えられる。
    • 米国の金融機関が強い理由は、ドルが基軸通貨であるためどこでも使えるからである。円の国際化が進めば、日本の金融機関ももっと競争力が強くなる。円の取引が増えれば、日本の金融機関にとってもビジネスチャンスが増えることになる。
    • 従来、円の国際化を議論することはドル体制の補完的な意味合いであった。日本とアジアの間の相互依存関係が深まっている中、円が果たす役割はドルより低い。それはアジア各国の為替政策が概ねドルリンクであるからである。
    • 新しいプロジェクト・ファイナンスを組むとき、日本の金融機関より海外の金融機関を選ぶケースが多いが、日本の金融機関が新しい商品を考えても実際には規制が多すぎて実現しないという不安があるからである。また、日本の金融機関はグローバルな視点から見た知恵の出し方が足りない。金融の機能は変化しており、金融の機能を分解して各々につき規制の必要な部分と必要でない部分を分けて考える必要がある。 2)の議題について本委員会における主な意見は次のとおり。
    • 日本に優秀な人材が集まって来るかどうかは、留学生が集まって来るかどうかでほぼ決まってくる。アジアの学生から見て欧米と比較して日本は研究の環境、言葉の壁、物価高及び帰国後のメリットなどを考え併せてみると必ずしも魅力ある留学先ではない。また、留学生の数は増えているけれど、質や制度の面では色々な問題がある。
    • 色々な技術を持っている人が日本に来ても日本と欧米の仕組みが違うため、その技術を活かしきれない。
    • 日本の強さは企業が人を育てるという点である。長い目で見た場合、日本のファンを増やさなければならない。そのために日本が一番やれるのは企業内教育であり、そこに焦点をあてて政府、企業はそれぞれの役割を考えなければいけない。
    • 日本人が考えている以上にアジアの現地政府は教育問題を重視している。日本とアジアとの会合では、必ず現地政府は人材育成を議題に挙げる。
    • 留学生が優秀な成績で卒業しても日本の企業は雇ってくれないし、また雇うシステムも確立していない。
    • 留学生の受け入れに関し、どこにいい人材がいるかという情報がなかなか入ってこない。また、漢字を読めない学生への対応ができていない。
    • 昔日本の企業は欧米へ行って学んだが、今後は日本がお返しをしなければならない。長い目で見て、多くの外国人を受け入れてよかったという部分は必ずある。確かにマイナスの部分もあるが、トータルでどうすべきか判断する必要がある。また、航空ネットワークの整備が進めば、情報通信機器を活用したテレワークは相乗的に伸びる。
    • 留学生の日本でとった資格が、母国に帰国しても評価されないという不都合なケースがあるが、これは日本の問題というよりは、その母国での受け入れ体制の問題である。
以上
(速報の為、事後修正の可能性有り)