第3回経済審議会首都機能移転委員会議事概要

  1. 日時 平成8年7月29日(月)14:00~16:00
  2. 場所 経済企画庁 特別会議室(1230号室)(第4合同庁舎12階)
  3. 出席者
    (委員会)那須委員長、星野委員長代理
    井上繁、奥村洋彦、貝塚啓明、金本良嗣、黒川洸、斉藤忠夫、
    下村満子、杉山武彦、中村仁、原五月、藤田夏樹、水上萬里夫、
    宮澤美智雄、三好正也 の各委員
    (事務局)水谷日銀政策委員、坂本総合計画局長、小峰審議官、五十嵐審議官、
    道上計画企画官、服部計画官、太田計画官、安井計画官、赤井計画官
  4. 議題
    1. 21世紀における我が国経済社会と首都機能移転
    2. 首都機能移転による経済的影響(その1)
  5. 審議内容
    21世紀における我が国経済社会と首都機能移転
    (主な意見)
    質疑等特になし。
    (第2回委員会からの継続案件)
    首都機能移転による経済的影響(その1)
    首都機能移転による経済的効果を計量モデルを作成して計測するという事務局提案に対し以下のような意見があった。
    (主な意見)
    地域生産関数の推計で過去のデータを用いるのであれば、既存の制度とか規制も既に折り込み済みと考えられるため、基本的な枠組みが変わらない中で資本、労働を動かすモデルとなる。
    既に市場メカニズムが効いているという視点に立てば、それはあまり意味を持たないのではないか。
    建設投資効果が一人歩きしている現状の中で、中長期的な経済効果を分析対象とする点には賛成である。
    ただし、中央省庁再編、地方分権、規制緩和などの広い意味での構造改革とセットである必要がある。
    そうした構造改革の視点からバイアスをかけてケースを分けて議論する必要がある。
    また、現在の体制を前提とせずに政治と経済が分離された新しい日本の社会はどうあるべきかという発想で考えるべきである。
    首都機能移転という歴史的プロジェクトの前に、地方分権、中央省庁の再編の結論を先に出しておくのが大原則だと思う。
    また、震災安保の観点から種々のケース(危機管理部門の移転だけという選択など)を分けて考える必要があること、国際空港の採算が合うかどうかの議論がないこと、個人的に聞いた範囲では移転対象の中央の官僚も移転に賛成してないことなどからも、理想論ばかりでなく悲観的ケースも含めて現実に立脚して考える必要がある。
    このような分析には価値があると感じるが、生産関数から出てくる経済効果よりも、シナリオに基づく「引っ越し論理」などからの効果の方が影響が大きいと思われるので、数量的にどう把握するかは別としてシナリオをキッチリ議論する必要がある。
    また、規制緩和の促進の効果も数量的に示すものでなければ意味がなく、その前提として中央政府と地方政府の大胆な統合などが必要だと思われる。
    財源問題や政治的問題と切り離して経済的効果を計測するつもりなら、その前提を明確にしておくべきである。
    首都機能移転により必然的に多極分散化が当然の如く生じるという前提があるように見えるが、そこのところが良く分からない。
    政治、行政の中枢の移転だけで必然的に全国的に地方分権、多極分散化が促進されると考えられないが。
    首都機能移転の経済効果を定量的に計ること自体がそもそも難しい問題であり、通常の狭い範囲の経済的な見方からは、日本経済全体にマイナスになることもある。
    ただし、通常の経済の範囲に含まれない、通勤時間の問題などの東京在住者の生活面でのマイナス面、外部不経済を足し合わせたらかなりになると思われるので、それが東京ではどれだけ減少し、また反対に地方では生活面での「ゆとり」 がどれだけ生まれるか、そうした経済効果は計算が非常に難しいが、社会的安定、 政治的安定という観点から重要なものだと思う。
    政府の機能と東京大都市圏の両方の震災対策があり、いづれも重要だが、3000万人の中で中央政府・国家機能が果たせるのかという問題がある。
    3000万人の震災対策とは切り離して議論する必要がある。
    通勤時間の問題など既存の経済的価値に入っていない部分を、困難かもしれないが、あえてその部分の計算を試みないと意味がない。
    また、欧米の例ではある程度までは可能である。
    経済効果を計る対象が、現在想定される指標をそのまま50年後に用いて良いという保証はなく、シナリオの検討全体においてそうした質的な要素を十分に取り入れた対象を選んで検討を行う必要がある。
    首都機能を移転しない場合の、20~30年先の東京都の問題(例えば、ゴミの問題をこのまま放置したらどうなるか)を明確に整理しておくことが議論の出発点として重要ではないか。
    移転先を全く新しい地域とするのか、既存の都市を柱とする方法もあるのではないか。
    そういう想定も必要ではないか。
    インターネットの例のように、情報通信分野の急速な技術革新からは、例えば、米国では既にかなり普及している在宅勤務が数年後には日本でも現実化する可能性も否定できないので、首都機能移転が情報化のスプリングボードになるという可能性も踏まえて是非とも情報化の経済効果が入れられる必要があると思う。
    地方分権、経済構造改革、規制緩和の効果がどのくらい数字になるか非常に難しいと思うので、最初からモデルではなく、首都機能移転のプラス、マイナスを詳細に分析することから始めてはどうか。
    (首都機能移転で不要となる国有地である)200ha以上の土地をどう活用するのか、緑の公園なのか、オフォス街なのかでも全く東京の将来は異なる。
    それが民間のアクティビティーに任せられるのならば、再度東京に企業や人が集中することになるだろう。

以上