第3回 経済審議会 21世紀世界経済委員会

  1. 日時 平成8年8月2日(金)14:00~16:00
  2. 場所 経済企画庁 特別会議室(1230号室) (第4合同庁舎12階)
  3. 出席者
    (委員会) 佐々波委員長、
    伊丹敬之、浦田秀次郎、河合正弘、関志雄、栗原脩、田中明彦、
    張富士夫、西和彦、林紘一郎、星野昌子、村上英亮、村田良平、
    最上敏樹、吉野直行、若杉敬明、若杉隆平 の各委員
    (事務局) 水谷日銀政策委員、金子経済研究所長、新保審議官、
    坂本総合計画局長、小峰審議官、五十嵐審議官、道上計画企画官、
    安井計画官、服部計画官、太田計画官、大前計画官
  4. 議題
    • 情報通信のグローバリゼーションの進展状況と今後の展望
  5. 審議内容
    本委員会における主な意見は次のとおり。
    • 情報通信産業そのものの分析だけではなく、情報通信の発達による労働市場と雇用への影響も分析する必要があるのではないか。
    • 情報通信産業の発達イコール製造業の効率化に直接結びつかない。製造業自身がソフト開発により競争力を高めて始めて成り立つ。
    • 個々の人がどれだけ情報のリテラシィーとアクセスビリティーを持っているのかによって経済のストラクチャーもかなり変わるという要素を考える必要がある。また、ベンチャーを教育できるのかどうか疑問である。
    • 全世界の情報通信の高度化に対する国際協調については、富める国と富まない国との情報格差が大きなテーマであり、ネットワークを使った教育をどう展開するかが重要である。また、技術開発における産学官の連携が重要である。
    • 人材育成の場合は、いかに機械を使うかと同時にクリエイティビティーを教育できるかが課題である。
    • 情報通信産業の需要サイドから考えると、情報を上手く利用できる社会・組織になっているかどうか、また、供給サイドから考えると、競争を実現させればいいわけではなく、相互接続や規制の制度設計のあり方が問題である。
    • 日本の情報通信産業の市場の制度が、グローバル化しつつある需要に対して十分に対応できているのかどうかという評価や現状についての認識が必要である。
    • 一直線に情報通信の高度化が進んでも、一直線に民主化になるとはいいにくいのではないか。情報通信の発達によって全ての人が決定に参与することは、多数による専制の恐怖が生まれる可能性もあり、また、何でも速く決定を行うことが政治システムにとって望ましくない場合もかなりある。ただし、情報通信の発達が、民主主義にとって望ましい意見集約に役立つ場合に限り、民主主義の促進に役立つと思われる。
    • インターネット上では決して英語だけではなくなりつつある。インターネットで世界中がグローバルになっているといわれるが、グローバルとは、マルチローカルなのではないか。ただ、世界の大きなマーケットの中でコミュニケーションの手段としての英語は今後も無くならないと思う。
    • 情報通信の発達が第三次産業革命であるならば、第一次、第二次産業革命が社会の中で大きな反乱を引き起こしたのと同様に、グローバリゼーションに落ちこぼれた人達が反乱層となる可能性を十分に考えておく必要がある。
    • 個別的な民間企業の対応できるところ以外のところ(例えば国・自治体の行政のレスポンスの仕方)が、情報通信の進歩に対して上手くスピードが合っているかどうかを考えていく必要がある。
    • 情報化には、情報が大量に速やかに安く動くことにより、企業活動のなかで人やモノの流れが節約できるという側面があり、非常に大きな影響があると思われる。
    • 情報化により、1.組織がフラットになる、2.いい意味でも悪い意味でも隠し事ができなくなる、というような特性が現れるが、そうした特性に基づいた新しい形のよい社会制度が出来なければいけないし、造っていかなければならない。
    • 日本の情報通信産業の国際競争力が大か小かによって、日本の産業全体の国際競争力が大か小かの影響を受けるということは、疑問であるが、日本の情報通信産業が国際競争力が弱いということは、国にとって、経済の国際競争力の問題ではなく、安全保障の問題に非常に大きな影響が出てくる可能性があると思われる。
    • NGO・NPOの活動においても、世界女性会議や阪神の災害の際に情報の分野でボランティア活動を行うことが盛んになってきている。
    • 情報通信の高度化のインパクトは、人間の情報処理能力に限界があるため、第一次、第二次産業革命に匹敵する革命などと軽々に言わない方がよいのではないか。
    • 情報を使う側としては、情報の信頼性に関する何かの標準があればもっと使いやすくなるのではないか。情報を使う側である民間が主体となり標準化を決定する組織を造るべきではないか。
    • 情報通信は、産業全体のインフラとしての論理立てをすべきであり、国家の役割については競争政策、産業政策の面から取り上げるべきである。
以上
(速報のため、事後修正の可能性あり。)