第2回経済審議会首都機能移転委員会議事概要

  1. 日時: 平成8年6月25日(火)14:00~16:00
  2. 場所: 経済企画庁 特別会議室(1230号室)(第4合同庁舎12階)
  3. 出席者:
    (委員会)那須委員長、星野委員長代理
    井出多加子、奥村洋彦、貝塚啓明、金本良嗣、黒川洸、今野修平、 下村満子、杉山武彦、トラン・ヴァン・トゥ、中村仁、中村英夫、 藤田夏樹、水上萬里夫、宮澤美智雄、三好正也 の各委員
    (事務局)糠谷事務次官、小峰審議官、五十嵐審議官、服部計画官、 太田計画官、筧計画官、土肥原計画官、馬渡計画官
  4. 議題
    1. 東京都からの意見聴取
    2. 野村総合研究所からの意見聴取
  5. 審議内容 東京都からの意見聴取について

    (意見の概要)
    東京一極集中の是正が首都機能移転推進の直接の理由であったが、近年、東京への集中を示す指標の急速な低下や産業空洞化の深刻化など、東京を取り巻く環境に変化がみられる。
    また、首都機能移転は、東京経済の活力の低下や企業のコミュニケーション・コストの増大等の影響を東京経済に及ぼす恐れがある。
    したがって、まず地方分権・規制緩和を優先して実施し、それでもなお移転が必要であれば再度検討すればよいのであって、早急に移転を行うべきではないと考えている。

    (主な意見)
    東京圏の人口が転出超過に転じたことの要因分析を行うことが重要である。
    地価は下落しているが、その絶対水準が高いことが転出超過の要因ではないか。
    産業空洞化は東京に限った問題ではなく、日本全体の問題である。
    日本全体の空洞化は、高い人件費、地価による面が大きく、首都機能移転により地価が下がるとすればむしろ東京にもプラスに働くのではないか。
    行政の枠組み、行政と産業の関係は現状どおりという前提ではなく、抜本的な行政改革を踏まえた首都機能移転の効果分析を行うべきではないか。
    首都機能移転は日本の再活性化のために行うものであり、短期的な東京へのマイナス効果については長期的にみればカバーできるのではないか。
    産業空洞化問題については、生産活動に関するコストの削減等を行えば解決できる。
    そのためには、首都機能移転による一極集中の是正が必要ではないか。
    東京をどうするかというビジョンを打ち出すことが必要である。
    首都機能移転を行うと東京が地盤沈下するということよりも、むしろ、首都機能移転後の東京の発展のポテンシャリティーについて検討することの方が重要ではないか。
    本格的な地方分権が実現された後にもこれまでのような集積のメリットを東京に期待できると考えてよいのか。
    また、災害問題をはじめとする集積のディメリットについては、首都機能移転を行わなくとも解消が図られるのかという点からの分析も必要ではないか。
    東京圏の人口が転出超過に転じているとあるが、東京圏をもう少し厳密に捉え、茨城県や栃木県の南部を加えてみれば、必ずしも転出超過にはなっていないはずである。
    今の東京が、他の地方に比べて地盤沈下しているとは思わない。
    いわゆる引っ越しの議論は妥当性があると思う。
    行政改革は、首都機能移転のようなインパクトがないと進まない。
    日本全体にとって首都である東京が必要か、また東京都民にとって中央官庁は必要かという観点から論点を整理することができるのではないか。
    野村総合研究所からの意見聴取について(意見の概要)首都機能移転は、構想、計画、建設・移転、移転後の各段階において、国土、政治、行財政、経済等の各システムに様々な影響・効果を与えることが想定される。
    首都機能移転の経済効果等としては、建設波及効果のほか、新しい都市をモデル的に造ることに伴う太陽光発電等の新技術の市場創出効果、国土構造の改編効果、行財政改革の効果があると考えている。

    (主な意見)
    首都機能移転の建設波及効果については、公共投資が削られることのマイナス効果も考慮すべきではないか。
    新技術市場の創出によって生まれる需要は、国内企業のみが享受するものではなく、需要が海外に流出する可能性についても考慮すべきではないか。
    首都機能移転の効果を考える場合、効果をダブルカウントしないこと、因果関係の薄いものを加えないことの2点に注意しなければならない。
    例えば、新技術市場の創出は、移転をしなくとも起こるものではないか。
    首都機能移転の最大の問題は巨額の資金がかかることである。
    移転のコストを回収し、お釣りがくるほどのメリットが期待できると考えてよいのか。
    人工的に新たに都市を造ることは、量的な問題は別として、イノベーションの契機になると思う。
    都市規模について、アメリカ、カナダ、オーストラリアと日本、イギリス、フランスを比べるのは、行政システムや国土の状況の違いからみて、適当でない。
    首都機能移転の目的・手段と新技術市場の創出のような間接的な効果とを明確に区別することが必要である。
    災害に対するリダンダンシーを確保することによる経済的メリットについても考慮する必要があるのではないか。
    首都機能移転の経済効果については、人や企業の流れを動的に捉えた分析が必要ではないか。
    今回予定されていた議題のうち、「21世紀における我が国経済社会と首都機能移転」については、次回の委員会に持ち越すこととされた。
    1. (1)本委員会の公開について、次のとおり決定された。
      1. i.原則として議事録を1ヶ月以内に公開する。
        ただし、発言者名は公開しない。
        また、原則として議事要旨を2日以内に公開する。
      2. ii.配布資料は、原則として議事録と併せ公開する。
      3. iii.開催日程は、事前に周知を図る。
    2. (2)本委員会における主要論点についての主な意見は次のとおり。
      • グローバリゼーションを考えるに当たっては、国と国との間の制度の問題を視野に入れ、市場を規定する制度と、その制度の中で活動する経済主体との相互の関わり合いを議論する必要がある。
      • グローバリゼーションにより各政策の効果が異なってくると思われるため、グローバリゼーションの中で政策をどう立てたらよいのか、その有効性はどうなるのかを考える必要がある。
      • 国際通貨の問題についても考える必要がある。
        為替レートの大きな変動がグローバリゼーションにどのような意味を持っているのか。
      • 国というものがあって、グローバリゼーションがあるため、国の概念を明確にしないと議論が進まないのではないか。
      • 国によってインターネットの使い方が異なってしまい、インフラがあっても使いこなせないという大きな問題が生じる。
      • 産業の性格からすると流通は通信と似ているが、流通において「買う」ということ自体が電子化されることがあり、これをどう考えるか。
      • グローバル化していく経済のなかで女性、子供、貧困者等への影響を配慮していくべきである。
      • グローバリゼーションは事実先行で進んでしまっており、制度、考え方、思想等が追いついていないのが現状である。
        グローバリゼーションを進めるに当たっては、日本人としての姿勢を議論すべきではないか。
      • 企業が最適事業環境を求めて国・システムを選ぶことを、日本としてどう考えるのか。
        また、グローバル化している世界における日本の潜在的競争力、国・社会としての競争力を踏まえて議論すべきではないか。
      • グローバリゼーションと空洞化はどういう関係にあるのかを整理する必要がある。
        本来、市場経済が上手く機能していれば、海外に進出するのは何ら問題がないが、空洞化が議論されるということは、市場が不完全であり、歪みが生じているためである。
      • 日本から日本企業は外へ出るばかりでまた外国企業も入ってこないが、これは国内に規制が多い等の理由による。
        このように日本国内はグローバル化していない、という点を踏まえて議論してほしい。
      • 中国のエネルギー問題、アジアのインフラ整備等地球的規模とも言える問題についても、アジアにおける日本の政策を考える際には、必要なのではないか。
      • グローバリゼーションが所得分配、技術面に及ぼす影響を考える必要がある。
      • グローバリゼーションが及ぼす好影響ばかりではなく、それによって起こる歪みなど悪影響も議論の必要がある。
      • グローバリゼーションにアクターとして係わっているNAFTA、APEC等の機構の役割はどうあるべきか検討が必要。

以上