公共事業の入札・契約手続の改善に関する行動計画

(平成6年1月18日 閣議了解)

国内の公共事業の入札及び執行をめぐる最近の状況にかんがみ、また、国際的な建設市場の開放を背景とした諸外国からの我が国建設市場への参入要望の高まりをも踏まえ、公共事業の入札・契約手続を国際的な視点も加味した透明で客観的かつ競争的なものとしていくことが重要である。かかる認識に基づき、政府は、今般、そのための措置を「公共事業の入札・契約手続の改善に関する行動計画」として取りまとめた。
本行動計画は、質の高い公共事業を確保することを念頭に置きつつ、我が国の公共事業の入札・契約手続について、透明性・客観性及び競争性をより高めるとともに、内外無差別の原則の一層の徹底と併せて、国際的にみてもなじみやすいものに改めることを目的とするものである。
政府は、今後、本行動計画に盛り込まれた措置を着実に推進していくものとする。


説明書

  1. 政府は、質の高い公共事業を確保することを念頭に置きつつ、我が国の公共事業の入札・契約手続について、透明性・客観性及び競争性をより高めるとともに、内外無差別の原則の一層の徹底と併せて新たなガット政府調達協定に関する交渉の実質的妥結も踏まえ、国際的にみてもなじみやすいものに改めるとの観点から、そのための措置を「公共事業の入札・契約手続の改善に関する行動計画」として取りまとめた。
  2. 実施時期については、可能な限り平成6年度当初予算に係る公共事業から実施することを基本とし、同年度末までに基準額以上の調達について透明・客観的かつ競争的な調達方式を採用する体制を整えることとする。
  3. 行動計画の主要な具体的措置は、次のとおりである。
    • (1) 透明・客観的かつ競争的な調達方式の採用
      国及び一定の政府関係機関の工事で、それぞれ450万SDR及び1,500万SDR以上のものの調達については、一般競争入札方式を採用する。
      国及び一定の政府関係機関の公共事業に係る設計・コンサルティング業務で45万SDR以上のものの調達については、公募型プロポーザル方式又は公募型競争入札方式を採用する。
    • (2) 調達手続
      1. 工事
        一般競争入札方式における基本的な手続の流れは、発注公告、競争参加者の資格確認申請書の提出、資格確認結果の通知、入札、落札・契約であり、公告の日から入札期日までの期間は、少なくとも40日とする。
      2. 設計・コンサルティング業務
        公募型プロポーザル方式の基本的な手続の流れは、手続開始の公示、企業の関心表明(簡易な技術資料の提出)、提案書提出者の選定・通知、提案書の提出、特定・契約であり、提案書提出者への通知から提案書の提出までの期間は、少なくとも40日とする。
        また、公募型競争入札方式の手続も、これに準じたものとする。
    • (3) 外国企業の適正な評価
      外国企業の日本国以外における技術者数、営業年数、過去の同種工事の実績等も評価の対象とする。また、外国企業が本国の建設業を営む親会社(建設業を含む分社化された企業グループの持株会社を含む。)の子会社である場合であって、当該親会社の人的、財政的支援が得られることの証明があるときは、当該親会社(建設業を営む分社化された企業グループにあっては、当該企業グループ)を含めた評価を行う。
    • (4) 苦情処理手続の整備
      中立的第三者機関による苦情処理手続として、当面、現行の建設調達審査委員会における審査を活用する。
    • (5) 入札談合等不正行為に対する防止措置
      入札談合、賄賂等不正行為に対する監督処分の強化、公共入札ガイドラインの策定及び独占禁止法違反行為等を行った者に対する競争参加の制限等の措置を行う。
    • (6) その他調達手続の改善に係る措置
      適正な技術仕様の使用、工事における共同企業体制度の改善、基準額未満の調達方式の改善等の措置を行う。
    • (7) 都道府県及び政令指定都市への勧奨
      政府は、都道府県及び政令指定都市に対し、当該都道府県及び政令指定都市の工事及び設計・コンサルティング業務で、それぞれ1,500万SDR及び150万SDR以上のものの調達については、地方の実情及び関連法令の規定を踏まえ、行動計画に準じた必要な措置を原則として採るよう勧める。

公共事業の入札・契約手続の改善に関する行動計画

(行動計画の背景と目的)

国内の公共事業の入札や執行をめぐる最近の状況にかんがみ、公共事業の執行、さらには公共事業そのものに対する国民の信頼を回復することが、焦眉の急となっている。また、国際的な、建設市場の開放を背景として、米国及びその他の外国からも建設市場への参入の要望が高まっていることも踏まえ、我が国としても、国際的な視点も加味した透明で客観的な公共事業の入札・契約手続としていくことが重要である。かかる認識に基づき、政府は、昨年10月26日「公共事業の入札・契約手続の改善に関する行動計画の骨子」を発表し、本年初頭に「公共事業の入札・契約手続の改善に関する行動計画」(附則を含む。)(以下「行動計画」という。)を策定することとした。

この間、中央建設業審議会においては、入札・契約制度の抜本的な改革に取り組み、去る12月21日には建議(「公共事業に関する入札・契約制度の改革について」)が行われた。

また、新たなガット政府調達協定に関する交渉が実質的に妥結し、1996年から世界の主要国を中心に、工事及び設計・コンサルティング業務を含むサービス調達について、新たに国際的なルールが確立されようとしている。 今後、各発注者においては、これらの新しい動向を踏まえて各々の公共事業の入札・契約手続の改善に取り組む必要がある。また、同時に、対外的な関係については我が国として統一的な対応を図る必要がある。したがって、政府としては、その共通的な指針として行動計画を取りまとめた。

行動計画の目的は、質の高い公共事業を確保することを念頭に置きつつ、我が国の公共事業の入札・契約手続を、より透明性・客観性及び競争性の高いものへと改革するとともに、内外無差別の原則の一層の徹底と併せて国際的にみてもなじみやすいものへと改革することにある。このために、今後、我が国は、透明・客観的かつ競争的な調達方式の採用、外国企業の適正な評価、苦情処理手続の整備、入札談合等不正行為の防止措置等以下に掲げる具体的措置を実施することとする。
行動計画の実施に当たっては、ガットの枠組みにおいて交渉され、現在効力を有する、又は将来効力を生じる協定であって我が国が締約国であるものの規定との整合性を確保する。

(実施時期)

国及び政府関係機関においては、行動計画に定める具体的措置を可能な限り平成6年度当初予算に係る公共事業から実施することを基本とし、同年度末までには基準額以上の調達について透明・客観的かつ競争的な調達方式を採用する体制を整えることとする。

国及び政府関係機関は、このための準備に直ちに着手するものとする。

【具体的措置】

  1. 透明・客観的かつ競争的な調達方式の採用
    1. 調達方式
      工事及び設計・コンサルティング業務については、以下のとおり、国際的な視点も加味した透明・客観的かつ競争的な調達方式を採用する。ただし、安全保障に係る調達並びに緊急を要する場合及び秘密を要する場合等における調達については、これによらないことができる。
      • (1) 工事―一般競争入札方式の採用
        国(新たなガット政府調達協定附属書1(注釈を含む。)に掲げる我が国の機関。以下「国」という。)及び政府関係機関(同協定附属書3(注釈を含む。)に掲げる我が国の機関。以下「政府関係機関」という。)の工事で、2.に定める基準額以上の調達については、一般競争入札方式で調達を行う。
      • (2) 設計・コンサルティング業務-公募型方式の導入
        国及び政府関係機関の公共事業に係る設計・コンサルティング業務で、2.に定める基準額以上の調達については、公募型プロポーザル方式又は公募型競争入札方式で調達を行う。ただし、新たなガット政府調達協定における我が国のオファーで除外されている定型的な単純業務が単独で発注される場合を除く。
    2. 基準額
      • (1) 各発注者ごとの基準額は、下表によるものとする。
          [対象業務] [基準額]
        (イ) 国 工事 450万SDR
        設計・コンサルティング業務 45万SDR
        (ロ) 政府関係機関 工事 1,500万SDR
        設計・コンサルティング業務 45万SDR
      • (2) 基準額は、発注公告又は公示を行う時点における契約単位ごとの見積価額とする。
      • (3) 発注者は、行動計画に係る措置の適用を避ける目的又は特定の供給者を利する目的で、契約を作成し、又は立案してはならない。
      • (4) 発注者は、基準額未満に契約額を引き下げる意図の下に調達契約を分割してはならず、また、その見積方法を選択してはならない。
  2. 透明・客観的かつ競争的な調達手続
    1. 工事
      • (1) 建設業の許可
        公共工事を受注しようとする者は、土木工事業、建設工事業及び機械器具設置工事等建設業法に定める必要な建設業の許可(建設業法第2章)を取得した上で、調達手続に参加するものとする。
      • (2) 調達手続
        • (イ) 調達手続の概要
          一般競争入札方式における基本的な手続の流れは、発注公告、競争参加希望者の資格確認申請書の提出、資格確認結果の通知、入札、落札、契約であり、公告の日から入札期日までの期間は、少なくとも40日とする(別添1-1参照)。ただし、新たなガット政府調達協定第11条3に定める例外規定に該当する場合には、この期間を短縮することができる。
          特に施工の難易度が高い工事の場合には、競争参加の条件の一つとして、あらかじめ当該工事に係る施工計画の提出を求め、その技術審査を行う方式(施工計画審査型)の一般競争入札を行うことができる(別添1-2参照)。
          また、発注者は、毎年度予算成立後、当該年度における基準額以上の調達案件に係る情報を年度発注計画として公表する。
        • (ロ) 発注公告
          1. 発注者は、官報に調達手続が開始されたことを示す以下の内容を含む公示を行う。ただし、新たなガット政府調達協定が我が国について効力を生じるまでの間、事業の執行に支障のある場合には、官報に代えて別添2に掲げる日刊業界紙に公告することができる。
            • 工事の概要(工事名、工事場所、工事内容及び工期)
            • 競争参加者に要求される資格要件に関する事項(経営事項審査に基づく客観点数、過去の同種工事の実績、十分な資格・経験を有する技術者の配置、不適格要件及び必要な場合にはその他の資格要件に関する事項。施工計画審査型の場合には、これらに加えて施工計画)
            • 入札説明書を入手する方法及び場所
            • 入札に参加するための申請書及び資料の提出方法及び期限
            • 元請業者又は下請業者によって調達される主要な資機材に関する情報
            • 入札の方法及び場所並びに入札書の提出期限
            • 関連情報を入手するための照会窓口
              競争参加者に要求される資格要件については、入札に参加しようとする者が条件に適合しているか否かを自ら判断できるように、客観的かつ具体的に公告する。
          2. 以下の事項については、日本語のほか、英語で公告される。
            • 工事名
            • 入札に参加するための申請書及び資料並びに入札書の提出期限
            • 入札説明書を入手するための照会窓口
        • (ハ) 入札説明書の配布
          1. 競争参加希望者は、有効な入札書を提出するために必要なすべての情報を記載した入札説明書(具体的には、発注公告書の写し、契約書案、入札心得、図面、仕様書及びその他の説明書。施工計画審査型の場合には、これらに加えて施工計画作成資料)を、発注公告により示された入札説明書の入手場所で入手できる。
          2. 入札説明書には以下の内容が含まれるものとする。
            • 入札書を受け付ける機関のあて先
            • 補足的な情報を要請する場合において、その要請を受け付けるあて先
            • 入札書及び入札に係る文書の作成に用いる言語
            • 入札書の受領の最終日時及び入札書が受領される期間
            • 開札に立ち会うことを認められる者並びに開札の日時及び場所
            • 要求されている工事及び必要があればその要件についての十分な説明
            • 支払条件
            • 必要な場合には、その他入札に参加しようとする者に要求される経済上及び技術上の要件、資金上の保証並びに情報又は文書
            • その他の条件
        • (ニ) 競争参加資格
          良質で効率的な公共事業の確保により納税者の利益を増進するため、透明かつ客観的な手続に従い信頼のおける者に発注することが必要である。
          1. 一般競争有資格業者の登録
            発注者は、公共事業の入札に参加しようとする者について、その申請に基づき、一般競争有資格業者の登録を行う。また、登録の有効期間は2年間とし、随時に登録が可能なものとする。ただし、一般競争有資格業者の登録を受けていない者及び発注公告で明示された不適格要件に該当する者は、競争参加資格を有しない。
          2. 経営事項審査
            • 発注者は、公共事業の入札参加希望者の経営状況等について客観的に審査するために、建設業法に基づく経営事項審査の審査結果を活用することとする。
            • 経営事項審査の項目は、当分の間、工事種類別の年間工事完成高、自己資本額、職員数、経営状況、技術職員数及び営業年数とし、経営事項審査に基づく点数が競争参加の条件の一つとして公告される。
            • 経営事項審査の点数の計算方法は、公表される。また、自己の経営事項審査の審査結果については通知され、審査結果に異議がある場合には、許可行政庁に対して再審査の申立てを行うことができる。
          3. 個別工事に係る技術的条件
            一般競争入札方式においては、具体的な工事に照らして当該工事の契約を履行する能力があるかどうかを判断するために個別の工事ごとに必要不可欠な競争参加資格の条件が設定される。この条件には、過去の同種工事の実績及び十分な資格・経験を有する技術者の配置等が含まれ、これらは、入札に参加しようとする者が当該条件に適合しているか否かを自ら判断できるように、発注公告において客観的かつ具体的に明示される。また、施工計画審査型の場合には、特に難易度が高い工事を確実に施工できることを示す施工計画の提出が条件として追加される。
        • (ホ) 競争参加資格の確認
          1. 競争参加資格の確認は、申請書及び資料の提出期限日を基準日として行う。
          2. 施工計画審査型の場合には、資料作成説明会及びヒアリングを実施することができる。その場合には事前に発注公告の中で、資料作成説明会及びヒアリングを実施する旨並びにそれらの日時及び場所等を明らかにするものとする。
          3. 発注者は、通常の場合には申請書及び資料の提出期限日の翌日から起算して7日以内に、施工計画審査型の場合には14日以内に、競争参加資格確認の結果を書面で通知する。
          4. 競争参加資格がないと認められた者に対しては、その理由を付すとともに、競争参加資格確認の結果を通知した日の翌日から起算して7日(行政機関の休日を含まない。)以内に競争参加資格がないと認めた理由について説明を求めることができる旨を通知する。発注者は、その者から要請がある場合には、競争参加資格がないと認めた理由を説明する。
        • (ヘ) 入札結果の公表
           発注者は、落札者の決定後速やかに、入札経緯及び落札者名を含む結果について公表する。
        • (ト) 契約
           契約は、発注者が定めた予定価格以下で最低の価格をもって入札を行った者と行う。発注者は、入札価格が著しく低い場合には、その妥当性を確認するため審査する場合がある。
        • (チ) 苦情処理
          以上の手続については、「IV.苦情処理手続の整備」に定めるところにより、苦情を申し立てることができる。
    2. 設計・コンサルティング業務
      • (1) 調達手続
        • (イ) 調達手続の概要
          公募型プロポーザル方式の基本的な手続の流れは、手続開始の公示、企業の関心表明(簡易な技術資料の提出)、提案書提出者の選定・通知、提案書の提出・特定、契約であり、提案書提出者への通知から提案書の提出までの期間は、少なくとも40日とする(別添3参照)。ただし、新たなガット政府調達協定第11条3に定める例外規定に相当する場合には、この期間を短縮することができる。
        • (ロ) 有資格業者の登録
          提案書を提出するためには、発注者ごとに登録を行わなければならない。また、登録の有効期間は2年間とし、随時に登録が可能なものとする。
        • (ハ) 手続開始の公示
          1. 発注者は、官報に、調達手続が開始されたことを示す以下の内容を含む公示を行う。ただし、新たなガット政府調達協定が我が国について効力を生じるまでの間、事業の執行に支障のある場合には、官報に代えて別添2に掲げる日刊業界紙に公示することができる。
            • 業務の概要(業務名、業務内容及び履行期限)
            • 関心表明の方法及び期限
            • 提案書の提出者に要求される資格要件及び選定のための基準に関する事項
            • 提案書の特定のための評価基準に関する事項
            • 提案書を入手する方法及び場所
            • 提案書の提出の方法、場所及び提出期限
            • 関連情報を入手するための照会窓口
          2. 以下の業務については、日本語のほか、英語で公示される。
            • 業務名
            • 関心表明の期限及び提案書の提出期限
            • 説明書を入手するための照会窓口
        • (ニ) 説明書の配布
          1. 提案書を提出しようとする者は、有効な提案書を提出するために必要なすべての情報を記載した説明書を、公示により示された説明書の入手場所で入手できる。
          2. 説明書には以下の内容が含まれるものとする。
            • 提案書を受け付ける機関のあて先
            • 補足的な情報を要請する場合において、その要請を受け付けるあて先
            • 提案書及び提案に係る文書の作成に用いる言語
            • 提案書の受領の最終日時及び提案書が受領される期間
            • 提案書の特定のための評価基準
            • 要求されている業務及び必要があればその要件についての十分な説明
            • 支払条件
            • 必要な場合には、その他提案書を提出しようとする者に要求される経済上及び技術上の要件、資金上の保証並びに情報又は文書
            • その他の条件
        • (ホ) 提案書提出者の選定・通知
          1. 発注者は、簡易な技術資料を提出して関心表明を行った者の中から、公表した選定のための基準に基づき、提案書を提出できる者を選定する。発注者は、関心表明を行った者に対し、選定された旨又は選定されなかった旨を通知する。
          2. 選定されなかった者に対しては、通知の日の翌日から起算して7日(行政機関の休日を含まない。)以内に選定されなかった理由について説明を求めることができる旨を併せて通知する。発注者は、その者から要請がある場合には、選定しなかった理由を説明する。
        • (ヘ) 提案書の提出
          提案書の提出を認められた者は、公示により指定された期日までに提案書を提出する。
        • (ト) 提案書の特定
          1. 発注者は、提出された提案書の中から、公表した提案書の特定のための評価基準に基づき、最も優れた提案書を特定する。発注者は、提案書を提出した者に対し、その提案書が特定された旨又は特定されなかった旨を通知する。
          2. その提案書が特定されなかった者に対しては、その理由を付すとともに、通知の日の翌日から起算して7日(行政機関の休日を含まない。)以内に特定しなかった理由について説明を求めることができる旨を通知する。発注者は、その者から要請がある場合には、特定しなかった理由を説明する。
          3. 発注者は、提案書が特定された者との間で予定価格の範囲内の価格で契約の交渉を行う。
        • (チ) なお、参加の招請を受けた者の落札基準が価格のみの場合には、本方式に準じた手続である公募型競争入札方式を採用する。この場合の手続の基本的な流れは、手続開始の公示、企業の関心表明(簡易な技術資料の提出)、競争参加者の選定・通知(参加の要請)、入札、落札・契約であり、参加の招請から入札までの期間は、少なくとも40日とする(別添3参照)。ただし、新たなガット政府調達協定第11条3に定める例外規定に相当する場合には、この期間を短縮することができる。
        • (リ) 苦情処理手続
          以上の手続については、「④.苦情処理手続の整備」に定めるところにより、苦情を申し立てることができる。
      • (2) 外注の適正化
        • (イ) 発注者は、その職員が技術上又は業務の実施上対応できない設計・コンサルティング業務については外注することとする。
        • (ロ) 発注者は、外部の個人、企業又は研究会・協議会等のいかなる者からであっても、設計・コンサルティング・サービスを受ける場合には、透明な手続により、かつ、適正な対価を支払うものとする。
        • (ハ) 発注者は、設計・コンサルティング業務の受託者及び当該受託者と資本、人事面等において関連があると認められる建設業者については、当該設計・コンサルティング業務に係る工事の入札に参加させ、又は当該工事を請け負わせてはならないものとする。ただし、当初より一体として発注される場合、緊急の場合は他に代替する企業がいない場合を除く。
  3. 外国企業の適正な評価
    外国企業は、公共事業の入札手続のすべての側面において差別されないものとする。
    外国企業の評価に当たっては、評価項目である工事種類別の完成工事高、自己資本額、建設業に従事する職員数及び経営状況については、従来より海外実績も含めて評価してきたところであるが、さらに国際的な視点も加味し、内外無差別の原則の徹底を図るため、次のような措置を行う。
    • (1) 建設大臣又は都道府県知事は、外国企業の日本国以外における技術者数及び営業年数も、経営事項審査の評価の対象とする。なお、技術者数及び営業年数の認定については、当面、建設大臣が個別に定める基準により行う。
    • (2) 発注者は、外国企業の日本国以外における過去の同種工事の実績、十分な資格・経験を有する技術者の配置等について、他の発注者への個別問合せや証明書の提出等の方法により、評価の対象とする。
    • (3) 外国企業が本国の建設業を営む親会社(建設業を営む分社化された企業グループの持株会社を含む。)の子会社であるときは、当該親会社の人的、財政的支援が得られることの証明がある場合には、当該親会社(建設業を営む分社化された企業グループにあっては、当該企業グループ)を含めた評価が行われる。
  4. 苦情処理手続の整備
    別添4 2.に掲げる者は、I.2.に定める基準額以上の調達について、第三者機関に苦情を申し立てることができる。このため、当面は、現行の建設調達審査委員会を活用するものとする。
    なお、この苦情処理手続は、暫定的なものとし、新たなガット政府調達協定が我が国について効力を生じた場合には、同協定第20条に基づく手続に従うものとする。苦情処理手続の詳細については、別添4のとおり。
  5. 入札談合等不正行為に対する防止措置
    1. 入札談合、贈賄等不正行為に対する監督処分の強化
      建設大臣又は都道府県知事が行う建設業法上の監督処分の強化を図るため、平成6年3月末を目途に、違反の形態等に応じ処分の内容を明確にした監督処分基準を策定する。
    2. 競争参加者の制限
      平成6年度からの一般競争入札方式の本格的採用に併せて、一定の不正又は不誠実な行為等を行った者を排除することにより適正な契約の履行を確保するため、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」(以下「独占禁止法」という。)違反行為等を行った者に対し、発注者は競争への参加を制限する措置を講じる。
    3. 公共入札ガイドラインの策定
      公正取引委員会は、公共的な入札に係る談合行為の防止の徹底を図るため、新たに「公共入札ガイドライン」(仮称)を策定する。同ガイドラインでは、公共工事、物品調達等を含む公共的な入札全般に係る事業者及び事業者団体の活動を対象として、独占禁止法との関係について、基本的な考え方を示すとともに、具体例を挙げて、「原則として違反となるもの」、「違反のとなるおそれがあるもの」及び「原則として違反とならないもの」に分類して提示する。原案を本年度中のできるだけ早い時期に作成・公表し、それに対する関係方面からの意見を踏まえてさらに検討を行い、本年夏を目途に最終的なガイドラインの策定を完了する。同ガイドラインの策定に伴い、現行の「建設業ガイドライン」は廃止する。
    4. 独占禁止法の厳正な運用
      公正取引委員会は、引き続き、あらゆる産業における入札談合に対し独占禁止法を厳格に適用するとともに、入札談合に関する関連情報の提供を受けた場合には、情報の内容と信憑性に応じて適切に対処する。また、公正取引委員会は勧告や課徴金納付命令等の法的措置を採った場合には、引き続き、違反した者の氏名、違反の態様及び違反に係る状況を含むその措置内容を公表する。警告についても、例外的な場合を除き、公表する。
    5. 発注者による公正取引委員会との緊密な連携
      • (1) 入札談合情報の処理システムの整備
         発注者は、入札談合の疑いがある場合の公正取引委員会への通知等を含めた手続の流れについてマニュアル化を行う。また、公正取引委員会と発注者は「公共入札に関する公正取引委員会との連絡担当官会議」の一層の活用を図る。
      • (2) 研修プログラム
         発注者は、公正な調達を行うための研修プログラムを実施する。
         公正取引委員会は、それに対し、入札談合の防止や公正かつ自由な競争の促進の観点から支援する。
    6. 公正な入札の確保
      • (1) 入札書への記載
        発注者は、入札書において、入札参加者に、独占禁止法等に抵触する行為を行ってはならないと認識していること及び現に行っていないことを確認させるものとする。
      • (2) 損害賠償の請求
        発注者は、談合金の授受がある場合など損害額の認定が可能な場合には、民法等に基づき、当該企業の不正行為の結果として発注者が被った損害額の賠償を請求する。
  6. その他調達手続の改善に係る措置
    1. 適正な技術仕様の使用
      • (1) 発注者は、外国企業を含む特定の調達手続参加希望者に不利になるような技術仕様を作成し、又は使用してはならないものとする。
      • (2) 発注者は、技術仕様を作成し、又は使用するに当たって、適切な場合には以下のとおりとする。
        • (イ) デザインや外形的な特徴ではなく、性能を基準とすること。
        • (ロ) 国際規格、国内強制規格、認められた国内任意規格又は建設基準法規に基づくものであること。
      • (3) 発注者は、資材の技術仕様について、適切な場合には、国内の規格又は当該規格と同等のものを使用するものとする。
      • (4) 発注者は、技術仕様との適合性を判断する際には、特段の理由がない限り、一般的に受け入れられている外国試験データ及び外国における使用実績を日本の試験データ及び日本における使用実績と同等に扱う。発注者が、外国試験データを同等なものとして受け入れない場合には、発注者は、具体的な利害関係を有する調達手続参加希望者からの照会があれば、落札前に書面により当該特段の理由につき説明を行う。
      • (5) 発注者は、個別の調達の技術仕様の作成又は使用に当たって、他の調達手続参加希望者が不利になるような協力を、調達手続参加希望者又はその関連会社や子会社に対し求めてはならない。
    2. 工事における共同企業体制度の改善
      • (1) 単なる受注機会の配分との誤解を招くような共同企業体を排除するため、単体発注の原則をより一層徹底する。
        なお、共同企業体とは、建設業者が数人で共同して一つの建設工事を受注し、施工するために結成する事業組織体であって、そのすべての構成員が発注者の契約相手方として、直接、法律上の地位を有するものをいう。個別の工事について他の建設業者と下請やその協力関係を有する者であっても、発注者との契約が単独である場合には、ここにいう共同企業体には当たらず、単体発注の入札手続から排除されるものではない。
      • (2) 工事の調達においては、工事の規模及び技術上の必要から共同企業体発注とすることができるが、その場合でも、単独で施工が可能な業者があれば、その者による入札を認めることとする。
    3. 基準額未満の調達方式の改善
      国及び政府関係機関の行う公共事業の調達が基準額に満たない場合には、どのような調達方式を採用するかは、法令等の制限の範囲内で、基本的には発注者の選択に委ねられる。その現実的な選択として、指名競争方式を活用する場合においても、大幅に透明性・客観性及び競争性を高める措置を講ずることとする。
    4. 情報アクセス
      • (1) 発注者は、その調達に関する情報アクセスにおいて、外国企業に対し、外国企業であることを理由として差別しない。
      • (2) 国及び政府関係機関は、行動計画に定める措置の実施に関する情報を提供するため、別添5の照会窓口を設置する。
    5. 下請調達
      政府は、下請調達において、競争力のある企業(外国企業を含む。)による取引の申出に対して、真剣な考慮が払われることを期待する。
      発注者は、行動計画の措置の対象となる工事の調達において、元請業者又は下請業者によって調達される主要な資機材に関する情報を発注公告に記載する。
  7. 都道府県及び政令指定都市への勧奨
    政府は、都道府県及び政令指定都市が行う以下の基準額以上の調達については、地方の実情及び関連法令の規定を踏まえ、行動計画に準じた必要な措置を原則として採るよう勧める。
    (1) 工事 1,500万SDR
    (2) 設計・コンサルティング業務 150万SDR
    なお、基準額以上の調達に係る苦情処理については、政府は、都道府県及び政令指定都市に対し、所要の処理体制の整備を検討するよう勧める。

【附則】

  1. 措置の対象国
    本措置は、効力を有するガット政府調達協定の規定を適用しているすべての国を対象として実施する。ただし、日本国政府は、本措置の対象国が公共事業の調達において我が国企業に対する差別的慣行を有していると認定した場合には、当該国がその差別的慣行を廃止するまでの間、新たなガット政府調達協定に整合的な方法で、当該国に対する本措置の実施を停止することができる。
  2. MPAの取扱い
    • (1) MPAとは、1988年及び1991年に我が国が一方的措置として導入した大型公共事業への参入機会等に関する我が国政府の措置をいう。MPAの対象プロジェクト及び将来プロジェクトのリストは、別添6のとおり。
    • (2) MPAに定める特定公共プロジェクトに係る調達手続は、以下のとおりとする。
      • (イ) 工事及び設計・コンサルティング業務については、行動計画に定める基準額以上の調達を行う場合には、発注者は、行動計画の措置を採用するか、又はVI.3.の方針に則り、透明で客観的かつ競争的な手続としてMPAの措置を引き続き実施する。
      • (ロ) 物品については、MPAの措置を引き続き実施する。
    • (3) MPAに定める特定民間プロジェクト及び第三セクター・プロジェクトに係る工事、設計・コンサルティング業務及び物品の調達については、MPAの措置を引き続き実施する。
    • (4) 将来プロジェクトに関する調達については、当該プロジェクトの発注者が国又は政府関係機関となった場合には、(2)に定める措置を採り、特定民間又は第三セクターとなった場合には、(3)の措置を採る。
    • (5) これらのプロジェクトが終了した際には、MPAは終了する。