第5回動向把握早期化委員会議事概要
1.日時:
平成11年2月24日(水) 18:30~20:30
2.場所:
経済企画庁特別会議室(401会議室)
3.出席者:
(委員)
竹内啓座長、小邦宏二、宅森昭吉、野村信廣、早崎博、平野正宜、堀江正弘、村山昇作、森住昌弘、美添泰人
(ゲスト)
糸川昌志建設省建設経済局調査情報課長
木村嘉秀大蔵省主計局調査課長
坂井秀司自治省財政局指導課長
(事務局)
堺屋経済企画庁長官、
新保調査局長、池田調査局審議官、
大守内国調査第一課長、掛林内国調査第二課長、
土肥原国民経済計算部長、淺見景気統計調査課長、中藤物価調査課長、
広瀬国際経済第一課長、豊田国民支出課長、川上内国調査第一課調査官、他
4.主要議題:
公的部門の収入・支出動向の早期把握
5.議事内容:
○堺屋経済企画庁長官より挨拶。
○公的部門の重要性と現在の把握状況について、事務局からの説明は概要以下のとおり。
- 景気変動と公的固定資本形成のGDPに占める割合との関係をみると、公的固定資本形成の割合は景気上昇期には低下し、逆に景気下降期には増加する傾向にある。
- 公的固定資本形成の対名目GDP比は諸外国に比べて高く、またその変動も大きい。
- 公共事業関連指標で代表的なものとして、工事着工評価額(公共工事着工統計)等があるが、この中に発注側からの調査はない。諸外国をみると、アメリカは発注側からの調査を行っており、またフランスはアンケート調査による柊着工DI稗を作成している。
- 公共事業把握の現状における問題点は大きく3つある。1つ目は、公的固定資本形成のうち約74%(96年度)を占めている地方分の予算の把握が困難であること。2つ目は、予算の種類別(柊当初が補正か稗や柊直轄か補助か地方単独か稗等)の契約・支出状況が通常は明らかでなく、経済対策等の実施状況の確認が困難なこと。3つ目は、他分野の主要統計に比べて公表時期がやや遅いこと。
- 公共事業以外の政府支出で現在把握できるものは、決算、国民経済計算による情報、財政投融資や個別会計・個別機関に関する情報がある。速報性のあるものとしては、税収や対民間収支などがある。
○QEにおける公的固定資本形成の推計方法等について、事務局からの説明は概要以下のとおり。
- 名目値(原系列)の推計は、(1)年度現計予算額の推計、(2)年度決算見込額の推計、(3)当該四半期計数の推計の手順で行う。特に、四半期計数の推計にあたっては、主として公共工事関連指標の動向(建設総合(出来高)統計等)を踏まえて、年度の決算見込額を四半期計数に分割し、当該四半期計数を求めている。
- 名目値を推計した後、実質値(原系列、季節調整系列)の推計を行っている。
- ・推計上の問題点として、基礎情報の一層の整備が必要ではないかと考えている。具体的には3つある。1つ目は、SNAでは、建設総合統計等に基づき四半期計数を推計しているが、同統計の進捗転換の手法について明らかでない部分があること。2つ目は、公的部門について、発注者の範囲がSNAと関連統計とで一致していないなどSNAベースに基づく調査が必要であること。3つ目は、地方公共団体等の発注者側からは進捗ベースの計数を得られないこと。
○統計による公共工事の動向把握状況について、糸川建設省建設経済局調査情報課長からの説明は概要以下のとおり。
- 公共工事関連の主な統計として、公共工事着工統計、建設工事受注A調査、建設総合統計などがある。
- 公共工事着工統計の目的は執行状況の把握、公共工事の構造の把握、地域分析等である。調査周期は月次であり、調査項目としては、工事種類別、発注者別、地域別等がある。主な特徴は、建設業許可業者を対象としたサンプリング調査であること、工事の請負契約額を締結した月に算入していること、100万円未満の小規模工事は対象外であること、という点である。
- 建設工事受注A調査の目的は、大手建設業者の受注を早期に把握し、景気動向や建設業の生産活動を把握することである。調査対象は国内の代表的な大手建設会社50社であり、郵送により調査票を発送している。調査周期は月次であり、調査項目は工事種類別、発注者別、官民別等がある。主な特徴は、公共工事着工統計に比べ、約10日早く公表されること、回収率100%であること、民間からの受注も対象になっていること、という点である。
- 建設総合統計は、公共工事着工統計、建築着工統計及び民間土木工事着工統計を基に月々の建設工事の出来高を計算し、建設活動全体を着工高、出来高及び手持ち工事高(未消化工事高)で総合的に把握するというもの。(出来高展開のイメージ図を用いて説明)
- 公共工事関連の統計は現在全体的な見直しを行っており、平成12年度からの実施を予定している。
○公共事業等の施行状況の把握、国の歳入の状況及び歳出予算の執行状況の把握について、木村大蔵省主計局調査課長からの説明は以下のとおり。
- 公共事業等の施行状況の把握については、契約、支出等に関する状況を事業執行官庁より報告頂き、集計しており、集計の結果は、上半期の契約率目標を設定した場合には、9月末までの各月の契約状況等を閣議に報告し、新聞発表している。
- 施行対象経費の範囲は、一般会計、特別会計、公団・事業団の公共投資関係の経費のうち施行調整に馴染むものとしている。補助率のかさ上げ分である補助率差額、当年度の災害関係等は対象外である。
- 集計事務については、全国津々浦々の出先や市町村から、ブロック機関や都道府県を経て、執行官庁の本省で集計、チェック等を終えるまでに約1ヶ月、大蔵省での全体の集計、チェック等に約2週間の事務量が必要であり、現状の定員等の下では、前倒しは難しいことを御理解願いたい。
- 国の歳入の状況及び歳出予算の執行状況については、各省各庁から報告を頂き、集計しており、集計の結果は、毎月分を官報に掲載し公表するとともに、毎四半期分を国会に報告し、官報掲載・公表している。公表の前倒しについては、厳しい環境下ではあるが、ギリギリの努力を行い、毎月分に関しては現状の2ヶ月半後を翌々月末までに、また、四半期分に関しては現状の4ヶ月後を3ヶ月以内に、それぞれ公表したいと考えている。
- 平成15年度より、昭和52年度から進めている会計事務機械化の一環として、各省各庁の報告事務等のシステム化の導入を計画している。
○公共事業等の動向把握状況及び地方財政状況調査について、坂井自治省財政局指導課長からの説明は概要以下のとおり。
- 地方財政状況調査は、普通会計決算に係る決算規模、歳入項目、歳出項目、地方債残高及び基金残高等の各種項目についての調査である。対象は、5,578の地方公共団体である。
- 地方財政状況調査に基づく公表資料として、決算状況関係報告書及び地方財政白書がある。報告書の都道府県分は1月中、市町村分は、2月中に公表している。地方財政白書は地方公共団体全体の普通会計決算として、都道府県と市町村間の重複を除いた純計数値を算出し、それに基づき集計・分析をするもの。国会に報告後、公表している。
- 公共事業等の事業施行状況を把握するため、上半期の施行目標額、毎月の予算計上額、契約済額等について調査を行っている。対象団体は都道府県である。国において上半期における公共事業等の施行促進が決定され、地方公共団体に対しても国と同様の事業施行を図るよう要請がある場合、「公共事業等施行対策に関する関係閣僚会議」において契約率等について報告し、合わせて記者発表をしている。
○公的部門の収入・支出動向の把握に係る討議事項(案)について、事務局より説明。(別紙参照)
○自由討議(動向把握の改善策等について)
- 現状では、公共事業の動向について把握が不充分であり、特に地方単独事業の動向がほとんどわからないのが大きな問題である。発注側からの把握を図る必要があるが、具体的には、(1)特定の自治体を選んでサンプル調査を行い、(2)その後、抜本的な環境整備を図り把握体制を確立していく、といった二段階の方法が良いのではないか。
- 民間企業等も出来る限り利用し、地方自治体の人員を増やさずに、予算執行状況等の把握につき改善を図ることが望ましい。
- QEでは公的固定資本形成のフレが大きい。発注側からの把握を図るなど状況を改善し、公的固定資本形成の基になる決算見込額の数字を、信頼性のあるものにすることが必要。
- 四半期毎の公共事業等の把握は、制度自体を大幅に変えなければ、困難。
- 近年、政府支出は変動幅が極めて大きくなっている。景気判断等に際し、変動幅の大きい政府支出が早期につかめないのは問題であり、発注側からの把握が不可欠。
- 細部にいたる会計処理と概算の会計処理を分け、後者を景気情報として早期に公表するような方法が有効だろう。また、財政情報の公表を定例化していくことも必要である。
- 予算執行等の一連の作業において、民間企業と比べ電算化が不十分であり、この点で改善の余地が大きいと思われる。その際業務用のシステムと分析用のシステムを一体として整備すべき。
- 企業会計に沿った形で、国や地方自治体の会計制度を整備する必要がある。こうした整合化したシステムは一種の共通インフラであり、時間的・金銭的費用の大幅な削減につながる。
- 欲しいのは進捗ベースの数字だが、現状では信頼に足るものがない。制度自体を変えていく必要がある。
- そもそも公共関係のデータは、デフレーターの作成が困難であることから速報と確報との変動幅が大きいという難点があり、これによってGDPの数値が大きく影響を受け得ることから、月次やQEの経済指標として馴染みにくい点があることにも留意が必要。このようなことから、アメリカにおいては「政府の支出は経済指標として分類しない」ことが明言され、景気分析において経済指標から外されている。
- 会計制度の標準化を図るとともに、処理の電算化を図ることが必要。こうした措置は、統計インフラの構築という意味で極めて重要。
- 政府において、システムの合理化が民間企業と比べ遅れているのは事実。政府支出等の把握の早期化は、こうした合理化があってはじめて可能なものだろう。
- 日本経済に関して外国から質問が多いのは、予算や財政関連の情報、特に執行状況である。これは、国や地方自治体に関する情報だから調べればわかるはずのものである。先行きが見えない今のような状況では、調べればわかるものぐらい、きちんと調べて公表すべき。
- 国民からみれば、政府支出等の情報は、景気関連情報として一番把握しやすいところに思えるだろう。今の景気の状況では、国民の多くが公共事業の動向に関心を持っている。サンプル調査等でもかまわないから、情報の開示を進めて行くべき。
(その他)
- 会計事務の機械化を図る計画があるとのことだが、今後、例えば「公共事業」という項目で数字が公表されるのか。また、計画ではどの程度早期化が図られるのか。
- 財政投融資については、個別の機関等については分かっても、資金の流れがよく分からない。
- GDPの確報の推計では、全体の固定資本形成から公的固定資本形成を差し引いて民間企業設備投資を求めるという。したがって政府部門のデータの誤差が大きい場合、民間の活動についての分析も困難になる。
- 政府支出等について、現状ではある程度費目別のデータが分かっても、経済分析向きのデータではなく、使い勝手が悪い。
(関係省庁からの発言)
- 会計事務の機械化は、対象官署数が2,640にも上り、厳しい財政事情等を考慮しつつ、逐次かつ計画的にその推進を図ってきている。各省各庁の報告事務等のシステム化については平成15年度導入を予定していることから、現在システム設計中であり、詳細は定まっていない。
- 財政投融資については、月次の資金運用部月報等で負債・資産の増減等の情報が公表されている。
(速報のため事後修正の可能性あり)
問い合わせ先
経済企画庁調査局
内国調査第一課 指標班
直通 03-3581-9527
(別紙)
公的部門の収入・支出動向の把握に係る討議事項(案)
平成11年2月24日
経済企画庁
1.公共事業の動向の早期把握について
公共事業が景気対策として活用され、その動向が重要視されているにも関わらず、
- 特に地方分に関する予算関連情報が少ない
- 予算種類別情報が少ない(1と2は発注側でないと把握困難か)
- 他の需要項目関連指標より遅く、信頼性に関する情報も少ない
- (1)受注側、発注側のどちらに力を入れ、どのような情報の把握を拡充すべきか?
- (2)受注側の諸指標のバイアスの性格や程度はどのようなものと考えられるか?
- (3)発注側から予算状況や執行状況の把握を拡充する場合
- 会計記録(決算)となると正確さが優先され速報性が期待しにくいが、どのように「執行概況」を把握すべきか?DIの有効性をどう評価するか?
- 民間委託になじみにくいので、公的部門の作業が増えるが、限られた定員の中で、また他にも重要な行政需要のある中で、どう拡充していくか?
-中央分については、「公共事業等の施行対策に関する関係閣僚による会議」などが設置されている際に実施されるような調査を経常的に行うことも考えられるが、どのような形で各省庁の協力を取り付けるか。
-地方分については、
- A:緊急度の極めて高い問題として、自治体に優先的対応を求める方向
- B:予算のみならず人員も拡充して体制を強化する方向
- C:特定の自治体を選んでサンプル調査を行う方向
- D:環境整備(例えば予算執行概況把握や予算のコード化に関する共通ガイドラインのようなものを作成)を図りつつ、事務の電算化や情報公開等の進展に応じて中長期的計画の下に把握体制を確立していく方向などの選択肢が考えられるが、どの方向が望ましいか?
(4)当面の対策として、発注側と受注側を折衷し、地方コンサルなどを通じて、例えば都道府県毎に公共事業の予算関連情報および実績見込みと見通しについての動向を把握する、という方式は有効か?
2.公共事業以外(福祉、教育、財投など)の動向の早期把握
(1)公共事業以外に速報性がある指標は少ないが重要性の高いものは何か?
- 月次や四半期速報などの形で、早期把握の必要性が高いものは何か?
- 速報性以前の問題として、調査・統計の空白地帯は何か?
(2)それはどのような方法で把握可能か?