第2回動向把握早期化委員会議事概要

1.日時:

平成11年1月18日(月)  18:30~20:30

2.場所:

経済企画庁特別会議室(436会議室)

3.出席者:

竹内啓座長、小邦宏二、宅森昭吉、野村信廣、早崎博、平野正宜、堀江正弘、村山昇作、森住昌弘、美添泰人の各委員、

粟飯原電通テレビ局テレビマーケティング部主務、岡本総務庁統計局統計調査部消費統計課長、田下社会調査研究所取締役調査事業本部長、高橋同研究所調査事業本部営業部部長、

新保調査局長、池田調査局審議官、

大守内国調査第一課長、掛林内国調査第二課長、

土肥原国民経済計算部長、淺見景気統計調査課長、中藤物価調査課長、

豊田国民支出課長、川上内国調査第一課調査官、他

4.主要議題:

需要側からの消費動向の早期把握

5.議事内容:

○需要側からの調査・統計の概要について、事務局の説明は概要以下のとおり。

  • 消費動向を判断する上で、家計調査の全世帯消費支出の前年同期比に着目しているが、これは振れが大きい。サンプル数が少ないことが関係していると思われる。
  • 消費動向調査等では消費者マインドやサービス支出の予定等に係る調査を行っている。家計調査報告と比べると報告者負担が少ないが、一方で定性的な情報が中心となっている。月次化を図っているが地方公共団体の人手等の問題もあり、具体的方向について検討中。
  • 他に、民間機関も消費者マインドを中心とした調査を実施している。
  • 消費を需要側から把握する場合、世帯毎や時期毎で振れが大きいため、供給側からの把握に比べ相当多いサンプル数が必要と考えられる。他方、サンプル数を増やし詳細な情報を把握しようすると、報告者負担が増すという問題が生じることになる。

○家計調査について、岡本総務庁統計局統計調査部消費統計課長の説明は概要以下のとおり。

  • 単身世帯等を除く約8,000世帯に毎月家計簿形式の調査票を配布し、集計する方式で調査を行っている。これだけの規模でかなり早期に調査結果を公表している調査は諸外国に類例がない。
  • 消費動向を正確に把握するための努力を続けており、平成7年より単身世帯収支調査を開始した。本調査は、家計簿記入期間を3か月に短縮し、金額のみの調査とするなど報告者負担も減らすようにしている。
  • 早期化については、平成9年4月より、家計調査の結果を従前と比べ約2週間早く公表するようにした。更なる早期公表を求める声が強かったため、昨年より検討会を開催し検討を行っている。この結果、家計調査のうち勤労者世帯については昨年の11月分から早期公表を行うこととなった。
  • 今後は、平成12年1月より農林漁家世帯を調査対象に含め、単身世帯については、寮・寄宿舎を対象とした調査を実施し、これに伴い単身世帯及び単身世帯を含めた総世帯についての調査結果を四半期ベースで公表する予定である。

○テレビ消費動向調査について、事務局の説明は概要以下のとおり。

  • イメージとしては、テレビの時間帯を政府が買い上げ、調査用の番組を放送するというもの。
  • テレゴング等を利用した電話による回答と双方向通信が可能な端末による回答の2つの方式を想定している。
  • 質問は記帳義務の必要ない簡単なものとし、なるべく多くの回答を得るようにする。
  • 結果はリアルタイムに番組に反映させる。双方向端末を使った場合には回答者の特性も特定できるため、構造的分析にも使える。バイアス修正なども行う。
  • 将来的には、消費動向の調査のみならず、労働供給の動向など広範な情報把握にも活用できる可能性がある。
  • 電話による回答も、最近のナンバーディスプレー機能等を利用することにより将来的に属性把握も可能となるかもしれない。

○テレビ消費動向調査について、粟飯原電通テレビ局テレビマーケティング部主務の説明は概要以下のとおり。

  • テレゴングとはテレビを利用した投票システム。テレビで選択肢を表示し、回答に応じた電話番号に電話してもらうことで、短時間に多数の回答を集計することができる。
  • ただし、番組の視聴者の偏りから回答者に偏りが発生することが予想される。また、連続的な回答ができないので、回答の特性までは分析できない。
  • ITビジョンとは、地上放送の電波にデジタル信号を多重し、専用の端末を通して受信する双方向放送システム。文字に加え、簡単なグラフを表示することができ、現在、一部のテレビ局で実用化されている。
  • テレゴングについては、メリットとして、(1)数万単位の膨大なサンプル数が得られる、(2)気楽に参加できる、(3)リアルタイムに集計できることなどがある反面、デメリットとして、(1)番組の特性により回答者に偏りがある、(2)回答者のプロフィールが不明、(3)番組の買い上げ費用が必要などがあげられる。
  • ITビジョンについては、メリットとして、(1)複数の複雑な設問が可能、(2)気楽に参加できる、(3)回答者のプロフィールが明らか、(4)リアルタイムに集計できるなどがある反面、デメリットとして、(1)サンプル数が少ない(端末出荷ベースで15万台、ID登録数で2万程度)、(2)番組の買い上げ費用が必要、(3)モニターの維持費用が必要などがあげられる。
  • 技術的には、発展途上にあり、地上放送がデジタル化される2003年ごろには基幹的メディアになると予想されるため、ITビジョンについては、将来的に活用することを考えるべきではないか。

○バーコード等を利用した調査について、高橋社会調査研究所調査事業本部営業部部長の説明は概要以下のとおり。

  • 本研究所では、SCI(消費者購買情報データベース)及びSRI(小売店販売情報データベース)を中心に情報を提供している。
  • SCIは、「誰が、何を、いつ、どこで、いくらで、どれだけ購買したか」を把握する調査であり、バーコードを利用した点が特徴である。
  • 家計調査との違いは、バーコードを使っていることの他、調査世帯数が、家計調査では8,000世帯強であるのに対し、SCIでは11,000世帯となっていること、家計調査が贈答品や生鮮品、サービス(交通費等)を含むのに対し、SCIではこれらは含まれないことなどがある。
  • 単身世帯調査については過去実施していたが、転居が多いこと、家計簿方式では詳細性が欠けることから、現在では一時中断している。
  • SCIの調査対象は、現在のところ、食品139品目、日用雑貨品62品目の計201品目となっており、当該週データを翌々週の火曜日には提供できる。

○討議の方向性について、事務局からの説明の概要は以下のとおり。

  • 大きな問題意識として、消費について供給側と需要側のどちらから把握すべきか、需要側から把握する場合どのような方法が望ましいか、などがある。
  • テレビを利用する方法について、バイアスを補正し精度を高める良い手法はあるか、虚偽の報告等をどうチェックするか、より広範に有効利用するための方法や逆に暴走を防止する上で必要な留意点は何か、などの問題がある。
  • バーコード等を利用する場合、既存の統計をどのように補完できるか、将来性をどう評価するか、などの問題が考えられる。

〇自由討議

(全体に係る意見)

  • 需要側、供給側の双方からの把握が重要だが、経済分析の観点からは供給側の方が重要。また、需要側からの把握については、報告者負担軽減と早期化の二つの目標を達成できるように工夫すべき。
  • 情報を公表していることと、利用者の便を図ることは違うこと。統計全般について、出来る限りデジタル化したデータを公表するようにしてほしい。
  • 景気の動きは高額支出に現われると考えるため、こうした方面についての調査を強化すべき。色々な調査を始めるよりは、既存の業務統計などが使えないか、今何が不十分なのかを調べ、そこを改善することに傾注すべきだろう。
  • 報告者が気軽に回答できる設問設定をする努力が必要だろう。また、消費構造の変化は、消耗品ではなく耐久消費財、奢侈品に現われるものであり、こうした観点からも設問設定を工夫する余地がある。

(需要側統計、特に家計調査に係る意見)

  • 家計調査は負担の多い調査のため、サンプルが几帳面な人に偏る傾向があるのではないか。また、家計調査の母集団とサンプルとの乖離について、何かデータは公表されているのか。
  • 消費の実態を把握する調査としては、家計調査の規模は十分ではないか。
  • 家計調査は、消費の構造を分析する上では極めて有効な調査。今後、こうした観点から家計調査を活用していくべき。
  • 消費動向の時々刻々の変化については、供給側からの把握が有効。一方、消費の変化の背景、理由については需要側からの把握が有効。家計調査も潜在的に多くの情報を有しており、既存の需要側データは十分に生かされていないという印象を受ける。パネルデータ的に用いて分析するなどもっと工夫する姿勢が必要。
  • 家計調査は所得統計を含んでおり、消費と所得の双方から分析ができる点が有難い。ただ問題点として、サンプル数が少ないために調査結果の振れが大きいことがある。
  • 家計調査の改善点として、報告者負担を減らすということがある。他の調査で把握できる調査項目は、家計調査から落とすといった工夫が必要だろう。バーコードの利用も、家計簿方式に代わるツールとして家計調査に取り入れていけばいいのではないか。
  • 今の家計調査は総じて細かすぎる。概要調査と詳細調査の二つに分けて、前者の調査のみサンプルを増やすなどの改善をすれば良いのではないか。全てについてサンプルを増やすというのは予算の問題もあり困難だろう。
  • 毎月発表される家計調査には、インターネット等での公表も含め調査項目の一部しか掲載されていない。総務庁統計局まで行けば細目はわかるが、利用者の観点からもう少し情報アクセスを改善できないか。

(テレビを利用する方法についての意見)

  • テレビを利用した調査は有効だろう。ただし費用対効果の認識をもって最終的に評価する必要がある。
  • テレビを利用するといっても、視聴者は飽きやすく継続的な回答を得るのは困難だろう。具体的にどのような方法でこの問題を解決するつもりなのか。
  • 調査というのは、報告者がいつも嫌がるものではない。既存のテレゴングなどにも積極的な参加がある。ただし、この点がバイアスにつながる可能性がある。
  • バイアスがある程度あっても、継続して調査を行えば経験則的にバイアスの姿は見えてくるもの。バイアスを特に恐れる必要はない。
  • インターネットを利用した調査は米国ではかなり普及している。インセンティブを与える手法として謝礼があるが、本人確認ができないため、偽名や組織的な犯行を防ぎきれない。米国では記入代行をする業者も出てきていると聞いている。テレビについても同様の問題があり、こうしたマルチメディアを用いた調査は長期的には有望だが、短期的には問題が多い。
  • テレビを用いた調査は、双方向形式で報告者の属性がわかる調査であれば、モニター調査として有効なもの。調査員手当てを支払うよりコストが低ければ、費用対効果の観点からテレビ調査を利用していくべき。
  • テレビ調査等を活用して、変化の方向性、まさに「変化の胎動」の有無をつかむことができると考える。また、視聴者参加型のため、経済問題に国民に関心を持ってもらうのにも良い方法。政策の評価、例えば地域振興券の利用状況等を把握するのにも有効であり、色々な応用方法があると考えられる。

(バーコード等を利用する方法についての意見)

  • バーコードのついてない物についての処理はどうするのか。
  • バーコードであれば報告者負担は非常に少ないため、出来る限り利用するべきだろう。
  • バーコードを利用した調査について、耐久財や冠婚葬祭等の高額支出は調査対象に入っているのか。本調査は個別の商品の消費動向を見るのには有効だが、消費動向全体をみるのにはあまり有効ではない。
  • 技術的に問題な点はあると思うが、スキャナーを配布するなどしてバーコードを調査手段として積極的に活用すべき。

○委員からの主な質問に対する回答は以下のとおり。

  • 家計調査について、サンプル数については現時点で十分だとは言い切いれないが、調査内容を考慮すると拡充は困難だと思われる。ただし、高額支出を除くなどの加工指標の可能性も含め、今後検討をしていきたい。
  • 家計調査について、報告者の性格まではわからないが共働き世帯が過少になっているという意見はある。我々としては結果を左右するようなバイアスはないと考えている。また、母集団とサンプルを比較する上で必要なデータは基本的に公表されている。
  • 家計調査の細目を毎月の印刷物等で公表できるかどうかは、今後の検討課題であり現状では何ともいえない。
  • テレビを利用した調査について、謝礼金を払う、番組を魅力的なものにするなど、サンプル数を確保するための種々のインセンティブを今後検討する必要がある。
  • バーコードを利用した調査について、バーコードがないとメーカー名等は入力できないが、例えば「洗剤を買った」という情報を送ってもらうようにして、消費動向を把握することは可能である。やり方を色々工夫して情報を収集している。
  • バーコードを利用した調査について、耐久財等は調査対象に入っていないものが多い。また、ビジネスの観点からは、消費動向全体に係る情報はニーズがないのが現状であり、このため個別商品の動向を追う調査が主要なものとなっている。

(速報のため事後修正の可能性あり)

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