内閣府 Cabinet Office, Government of Japan

内閣府ホーム  >  内閣府の政策  >  経済財政政策  >  経済計画ホームページ  >  経済審議会議事録 平成11年7月5日

経済審議会議事録 平成11年7月5日

時: 平成11年7月5日

所: 内閣総理大臣官邸ホール

経済企画庁

経済審議会議事次第

日時 平成11年7月5日(月)16:30~18:00

場所 内閣総理大臣官邸ホール

  1. 開会
  2. 経済企画庁長官挨拶
  3. 「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針(案) 」について
  4. 経済審議会会長談話(案)について
  5. 内閣総理大臣挨拶
  6. 閉会

(出席者)

(委員)豊田章一郎会長、長岡實会長代理、伊藤助成、稲葉興作、角道謙一、香西泰、小林陽太郎、末松謙一、鶴田卓彦、得本輝人、那須翔、畠山襄、星野進保、水口弘一、村田良平、諸井虔、山口光秀、山口泰、鷲尾悦也、和田正江 

(内閣)小渕内閣総理大臣、野中官房長官、鈴木官房副長官、上杉官房副長官、古川官房副長官、竹島内閣内政審議室長

(経済企画庁)堺屋長官、今井政務次官、塩谷事務次官、井出経済企画審議官、林官房長、中名生総合計画局長、河出調整局長、金子国民生活局長、小峰物価局長、新保調査局長、貞広経済研究所長、高橋総合計画局審議官、牛嶋総合計画局審議官 他

(配付資料)

  1. 資料1.経済審議会委員名簿
  2. 資料2.諮問第15号に対する答申について
  3. 資料3.「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針(案) 」
  4. 資料4.経済審議会会長談話(案)

(参考資料)

  • 構造改革推進部会報告書
  • 国民生活文化部会報告書
  • グローバリゼーション部会報告書
  • 地域経済・社会資本部会報告書

経済審議会委員名簿

会長
豊田 章一郎     トヨタ自動車(株)取締役名誉会長

会長代理
長岡  實      東京証券取引所正会員協会顧問、日本たばこ産業(株)顧問

伊藤 助成     日本生命保険相互会社代表取締役会長

稲葉 興作     日本商工会議所会頭

角道 兼一     農林中央金庫理事長

金井 務      (株)日立製作所取締役会長

公文 俊平     国際大学グローバル コミュニケーションセンター所長

香西 泰      (社)日本経済研究センター会長

小長 啓一     アラビア石油(株)取締役社長

小林 陽太郎     富士ゼロックス(株)代表取締役会長

佐々波 楊子     明海大学経済学部教授

下村 満子     (財)東京顕微鏡院理事長

末松 兼一     (株)さくら銀行常任顧問

鶴田 卓彦     (株)日本経済新聞社代表取締役社長

得本 輝人     全日本金属産業労働組合協議会議長

那須 翔      東京電力(株)相談役

畠山 襄      日本貿易振興会理事長

星野 進保     総合研究開発機構理事長

星野 昌子     日本国際ボランティアセンター特別顧問

水口 弘一     (株)野村総合研究所顧問

村田 良平     (株)三和銀行特別顧問

諸井 虔      太平洋セメント(株)取締役相談役

師岡 愛美     日本労働組合総連合会副会長

山口 光秀     東京証券取引所理事長

山口 泰      日本銀行副総裁

鷲尾 悦也     日本労働組合総連合会会長

和田 正江     主婦連合会会長


〔 豊田会長 〕 ただいまより経済審議会を開会いたします。

本日は、委員の皆様方には大変ご多忙中のところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。また、堺屋経済企画庁長官におかれましても、お忙しい中をご出席いただきましてありがとうございます。

なお、小渕総理大臣及び野中官房長官にも、後ほどご出席いただける予定となっております。

それでは早速でございますが、堺屋経済企画庁長官からご挨拶をいただきたく存じます。

〔 堺屋経済企画庁長官 〕 経済審議会委員の皆さんにおかれましては、本年1月に行われました総理大臣の諮問に応えて、6カ月にわたり熱心な調査審議をいただきましたことに、まず心から御礼申し上げます。

我が国の経済は、依然として厳しい状況にありますが、ようやく景気も下げ止まり、概ね横這いで推移しつつあると言えるところまでまいりました。しかし、長期的、構造的に見れば、日本経済は重大な岐路に立っております。政府といたしましては、不況対策に取り組むと同時に、この不況から立ち直った後の経済社会のあるべき姿と、21世紀初頭までの10年程度の間に実施すべき政策方針を、はっきりと提示しておくことが必要であります。21世紀末の現在は、人類の文明が大きく変わろうとしている最中だからであります。

目下進行中の人類文明の変化は、通常の進歩や高度化ではなく、新たな歴史的発展段階をつくるものでしょう。つまり、近代工業社会を超越して、新しい多様な知恵の社会に至る転換であります。

今回の不況から立ち直った日本の経済社会は、知恵の時代にふさわしい姿を指向していなければなりません。今、日本に必要なのは、この新しい時代における経済社会のあるべき姿を明確にし、国民に未来に対する期待と安心を持っていただくことでございましょう。

本日答申いただく予定の「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」は、2010年頃までの日本の経済社会について、少子・高齢化、グローバル化、知恵の社会への変化、環境制約などに対応し、不況から立ち直って後のあるべき姿と、それに至る政策を提示したものであり、経済構造や経済活動だけではなく、新しい経済社会の根底をなす条件、目標、概念及び価値観についても明示していただいております。まさに時代の要請に応えたものと申せましょう。

答申を取りまとめていただくにあたりご尽力いただきました、豊田会長をはじめとする委員の皆様方に対し心から御礼を申し上げまして、私の挨拶とさせていただきます。

どうもありがとうございました。

〔 豊田会長 〕 ありがとうございました。

さて、当審議会におきましては、本年の1月18日に総理から「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」策定の諮問をいただいた後に、各部会等におきまして集中的にご審議をいただきまして、部会報告をお取りまとめいただきました。企画部会におきましては、これら部会等の議論を踏まえまして「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」の原案につきましてご審議いただいたところでございます。

本日は、この答申案についてご議論をいただきまして、皆様のご承認を得ました後に、総理に答申いたしたいと存じます。

それでは、まず答申案を作成いただきました企画部会の小林部会長から答申案につきましてご説明をいただき、その後に事務局より補足説明をお願いいたします。

〔 小林委員 〕 企画部会長の小林でございます。本日お諮りをしております答申案は、企画部会で取りまとめさせていただきましたけれども、部会を代表いたしまして、その概要について簡単にご説明いたします。

この答申案は、序章、第1部、第2部、第3部、そして参考、この5本立てで構成されております。まず、序章では、この答申案の全体を貫く基本的な考え方をわかりやすくまとめております。

第1部では、「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」を策定する意義について述べております。先ほど長官からもお話がありましたが、現在、日本の経済社会が歴史的転換点にあるということを指摘し、ここで必要とされている改革は、これまでの延長線上の斬新的な制度の調整ではなくて、いずれの方向へ進むのかということについて、国民の選択がまず必要であるということを論じております。また、政策方針の実行に当たっては、特に本政策方針の中では、大きな方向性を提示するにとどまっているものについて、政府内で早急に具体化の検討に着手し、その結果をわかりやすいプログラムとして示すこととしております。

第2部では、「経済社会のあるべき姿」を描いております。我々が21世紀に築いていくべきものは、グローバリゼーションの下で次の3つの課題に応えた経済社会であると述べております。第1は、規格大量生産型の経済社会体制から多様な知恵の時代にふさわしい経済社会へと脱皮していくことであります。多様なの知恵の社会においては、個の自由と自己責任が基本的な行動原理となり、独創性、創造性が尊重されるとともに、しっかりとした安全ネット等により個々人が夢に挑戦できる環境が整備されていることが必要であります。

第2には、高齢社会、人口減少社会、これに備えた仕組みに変革し、生産性を高め活力を維持することであります。今後とも、経済の活力を維持していくためには、生産性の向上が極めて重要であります。それによって、人口減少によるマイナスの影響を補い、総体としての経済成長を維持することが重要であります。

第3には、顕在化している環境制約を克服し、環境と調和した経済社会を構築していくことであります。また同時に、個々人が公の概念をきちんと持つことが求められるということを強調しております。

第3部は、経済新生の政策方針であります。ここでは、第2部で描いた「経済社会のあるべき姿」に向けて日本の経済社会を新生していくための政策方針を、重要なものに絞って整理しております。

まず、多様な知恵の社会の形成のための政策方針としては、第1に、物流や情報通信の分野について、包括的な改革方策について早急に検討を行い、明確なスケジュールの下に施策を実施すること。第2に、専門的・技術的分野の外国人労働者の積極的な受入れを推進すること。第3に、高度な都市機能がコンパクトに集積しネットワーク化された「小さな大都市」構想を推進すること。第4に、中山間地域・離島等については、集落の再編整備等による機能の強化を図ること等が盛り込まれております。

次に、少子・高齢社会、人口減少社会への備え、そのための政策方針としては、第1に、年齢にとらわれない経済社会を実現すること。第2に、歩いて暮らせる街づくりを推進すること。第3に、少子化への対応を進めること等が盛り込まれております。

次に、環境との調和、そのための政策方針としては、第1に、循環型経済社会の構築、第2に、地球環境問題に対して国際的にも、国内的にも積極的に取り組むこと等が盛り込まれております。

次に、世界秩序への取り組みとしては、第1に、国際金融市場におけるルール作り、第2に、アジア地域の中での役割、第3に、世界への情報発信力の拡大等が盛り込まれております。

次に、政府の役割について、事業に対する時間管理概念の導入やPFI事業の推進等を通じて行政の効率化を進めるとともに、究極的な財政の健全性を確保すること。地方分権の推進と行政の広域化を推進すること等が盛り込まれております。

さらに、厳しい現在の状況から「あるべき姿」に到達するまでの道筋に関しでありますけれども、特に今後、回復へのリスクを避けるための緊急避難的な対応を行う場合でも、究極的にあるべき姿の実現を念頭に置いた政策方針と整合的なものでなければ、ということを強調しております。

以上が第3部のポイントでございます。

最後に、第2部で描いた「経済社会のあるべき姿」をわかりやすく示すという目的のために、2010年頃までの経済について展望するとともに、2010年頃に実現するであろう国民生活の姿をできるだけ具体的に描くことを目的として、参考を付しております。

以上、本答申案の内容につきまして、序章から参考まで5つの部分について簡単にご紹介申し上げました。この後、より詳細な説明は事務局よりお願いしたいと思います。

〔 中名生総合計画局長 〕 総合計画局長の中名生でございます。お手元に、右肩に「

資料3」と書いてあります「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針(案) 」というのがございます。この資料に即して補足説明を申し上げます。

初めに、表紙をめくって目次をご覧いただきたいと存じます。今、部会長からお話がありましたように、全体の構成といたしましては、最初に「序章 知恵の時代へ」がございます。それから、目次の2ページ目で、中が3部構成になっておりまして、第1部に「『

経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針』策定の意義」がございます。第2部に「経済社会のあるべき姿」がございます。3ページの下の方ですが、第3部に「経済新生の政策方針」がございます。それから、この資料3の中に挟み込んであるかと存じますけれども、別冊で参考というものが付いてございます。

順次ご説明を申し上げます。答申案の1ページ目では、「序章 知恵の時代へ」ということで書いてございますが、この答申案では、数字でありますとか細かい政策というものよりも、大きな考え方、考え方の転換が重要であるということを言っておりますが、この序章では、部会長からもお話がございましたように、答申の全体を貫く基本的な考え方について述べております。

冒頭のところをご覧いただきますと、

日本経済は厳しい不況を経験した。政府としては、不況対策に取り組むと同時
に、この不況から立ち直った後の日本の経済社会の「あるべき姿」とそれに至る
政策を、はっきり提示しておくことが必要ある。20世紀末の現在は、世界の文明
が大きく変わろうとしている最中だからである。
目下、進行中の世界文明の変化は、近代工業社会を超越して、新しい多様な知
恵の社会に至る転換である。
今日の不況から立ち直った日本の経済社会は、知恵の社会にふさわしい姿を志
向していなければならない。それ故、この経済社会の「あるべき姿」においても
、経済構造や経済活動だけではなく、新しい経済社会の根底をなす条件、目標、
概念、価値観についても明確にしておくべきであろう。
そうすることによって、自信と誇りを持って、新しい時代を切り開くことがで
きる。

と言っておりまして、以下、そこにあります「あるべき姿」の条件、目標、概念、価値観について、それぞれ述べております。

3ページ目の第2節のところで、まず「『あるべき姿』の条件」ということで、4つの条件を掲げてございます。

第1に、知恵の社会、情報、知恵というものが経済的価値を持つという「知恵の社会」に対応していかなければいけない。

第2に、少子高齢社会に対応していかなければならない。

4ページにまいりまして、第3に、グローバリゼーションの動きに対応していかなければいけない。

第4に、顕在化してきております環境制約に対応していく必要がある。

この4点を満たすべき条件ということで掲げてございます。

第3節では、「『あるべき姿』の目標」ということで、3つの目標を掲げてございます。全体として「最大自由と最少不満」ということを言っております。

3つの目標と申しますのは、第1には、「『個』を基盤とした自由と『公』の概念」と書いてございますけれども、人々が人生の目的とその達成手段とを選び得る個人の自由を、社会全体として最大にしていくことが重要である、ということを強調しております。

また、その裏側といたしまして、社会の構成員として尊ぶべき共通の感覚、「公」、パブリックの概念というものがあわせて不可欠であるということを指摘しております。

5ページにまいりまして、第2には、「人権と尊厳が守られる経済社会」ということを指摘しております。この中の4行目に書いてございますように、競争社会では、当然、失敗者や社会的弱者も存在するということで、そういう人々にとって安全ネット、あるいは再挑戦の可能性がなければいけないと言っておりますが、2つ目のパラグラフで、「ただし」ということで書いてございますように、守るべきは個人の人権であって、経済的利権や行政的権限ではない、ということを確認をしております。さらに、その安全ネットを設定する場合に、そのための経済・社会的負担をする側にも大きな不満があってはいけない。そういう意味で、「最大自由と最少不満」という言い方をしております。

第3としては、成長を維持することが重要であるということを言っております。これは、2010年にかけて日本の人口が頭打ちから減少に転じる。さらに、2010年から先を考えますと、今の出生率が続くとかなり大幅な労働力人口の減が予測されるわけでありますけれども、そういう人口減少社会で、全体としての経済の規模が小さくなっていくことになりますと、経済社会の活力が失われていくということで、もちろん高度成長期のように極大成長を目指すということではありませんが、縮小再生産に陥らないということは必須の条件であるということを言っております。

次に、6ページでございますが、こういう21世紀初頭の「経済社会のあるべき姿」の重要なコンセプトを5つ示してございます。

5つのコンセプトの第1点は、自立した「個」を基礎とした経済社会でなければならない。

第2点は、「多様多角的な繋がりのある複属社会」ということで、これは7ページの冒頭のところに「会社人間」という言葉が出てまいりますけれども、戦後の経済社会の中で会社、職場にかなり生活の全体が包摂されている。そういう姿から、21世紀の初頭には、地域コミュニティ、NPO、趣味の集まり、多くのものに複属する、そういう社会に変わっていかなければいけない。

第3点は、経済社会における「官」の役割ということに触れております。ここでは、第3パラグラフのところに書いてございますけれども、「これからの官の役目は各人が好みによって製品やサービスが選べるように経済社会のルールを定め、それが守られるように監視し、生じた事故を適正迅速に処理することにある。」と言っております。これまでのように、官が路線を引くというあり方ではならないということを言っております。

8ページにまいりまして、第4点は、企業のあり方ということで、「創造的に変革する企業経営」ということを言っております。この中では、最後のパラグラフの3行目から書いてございますように、非常に変化の大きいこれからの社会にあって、「企業や団体が存続し繁栄し続けるためには、常に創造的な変革を続けなければならない。これからの企業経営にはそうした慣性をビルトインすることが必要になる。」ということを言っております。

第5点は、「多様な補充源のある経済社会」ということでございます。要約して申し上げますと、9ページの第2パラグラフのところに書いてございますが、これからの社会を考えますと、「経済社会を限られた人口と特定の文化や慣習の中だけに限定して考えるのではなく、外国企業や専門的・技術的分野の外国人等の活用による多様な補充を検討すべきである。」ということを言っております。

次に、9ページの中ほどから、第5節といたしまして、「経済選択の基準としての価値観」ということを書いてございます。この中で指摘をしておりますのは、戦後の日本の経済社会においては、効率、平等、安全という3つが経済政策を判断するにあたって重要なクライテリアとされてきたということを書いております。この3つの価値基準は今後も引き続き重要である。しかしながら、その重点というのは変わってくるということを言っておりまして、第1に、効率というのは、ものをつくる製造業というところで非常に追求されていますが、それだけではなくて、教育、行政、あるいは福祉の問題、広く経済社会全体としての効率というのが今後は追求されなければならないということを言っております。

第2に、平等につきましても、結果の平等というよりは、10ページの中ほどに書いてございますが、「機会の平等と事後の調整」という形に平等の考え方も変わっていくべきであるということを言っております。

第3に、安全については、11ページの3つ目のパラグラフで書いておりますけれども、これからは地球環境の問題というのも、全体にとっての安全の問題として重視していかなければいけないということを言っております。

さらに、この3つの価値基準に加えまして、11ページの中ほどにございますけれども、第4の価値ということで、自由というものを重視しなければならないということを指摘しております。

次に、12ページからは、第1部「『経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針』策定の意義」ということで、この答申をこの時点で策定した意義を書いておりますけれども、今ご説明申し上げました序章の部分と重なる部分もございますので、第1章、第2章をとばして、第3章のところからご説明を申し上げます。15ページでございます。

15ページに、第3章「『経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針』の基本的役割とその実行」が書いてございます。最初に、第1節で、この文書の基本的役割は何かということを、3つに箇条書きにしてございます。1番目は、21世紀初頭の日本の経済社会のあるべき姿について、選択の方向を明らかにすること。2番目は、今後10年程度にわたって政府が行うべき経済運営の基本方向・課題を定めるとともに、重点となる政策目標と政策手段を明らかにすること。3番目は、民間の経済主体たる家計や企業の活動のガイドラインとしての意味を持つ、その3点を指摘しております。

次に、第2節では、ここに書かれている施策を実行していく方策が書いてございますが、この中で、特に最初のパラグラフの2行目から書いてございますが、「本政策方針の中では、大きな方向性を提示するにとどまっているものについては、政府内で早急に具体化の検討に着手し、その結果を分かり易いプログラムとして示すこととする。」ということで、これは第3部のご説明の中に出てまいりますが、いくつかの問題について具体的なプログラムを作成するということを書き込んでおります。その次の「また」のパラグラフでは、経済審議会において、そういうプログラムの具体化の状況を含めて、年々のフォローアップを行っていくことを言っております。

なお、一番下に(注)がございますように、行政改革に伴いまして、経済審議会は2001年の1月からなくなりますけれども、その機能は、経済財政諮問会議、新しくできる会議の任務の一部として引き継がれるべきものであるということを注記しております。

続いて、16ページからは、第2部「経済社会のあるべき姿」ということで、ここでは、従来の経済計画とは違って「あるべき姿」という形になっておりますが、まず、2010年頃の選択していくべき「あるべき姿」についてのコンセプトというものを、5本の柱で説明をしてございます。この点につきましては、先ほど、小林部会長からご説明もありましたので、簡単に申し上げます。

5本の柱と申しますのは、

第1は、16ページにあります第1章「多様な知恵の社会」でございます。

第2は、20ページにとびますが、第2章「少子・高齢社会、(さらに、2010年までを展望しますと人口も減少局面に差しかかるということで)人口減少社会への備え」でございます。

第3は、23ページにまいりまして、第3章「環境との調和」でございます。

第4は、24ページにまいりまして、第4章「世界における位置づけ」ということで、「

世界の主要プレーヤーであり続ける日本」ということを書いてございますが、この2つ目のパラグラフに書いてございますように、第1章、第2章、第3章で述べておりますような、「多様な知恵の社会への対応、少子高齢社会・人口減少社会への備え、環境との調和といった課題は、いずれも21世紀において、世界の多くの国々で取り組まなければならない課題である」。したがって、これらの面で日本が世界の範となるような社会をつくることは、日本が世界の主要プレーヤーであり続ける上において重要な力になる、ということをいっております。

そのためには、「日本発の未来文化」というのも重要であるということを、25ページで指摘しております。

第5は、26ページ、第5章「政府の役割と新しい『公』の概念」ということで、政府の役割というのは、26ページの第5章の冒頭に書いてございますが、「官から民へ諸機能が移管され、企業活動や産業に対する政府の関与は極力縮小される。こうした中で、経済政策における政府の役割は、市場ルールの整備、危機管理、安全ネットの整備、外部(不) 経済への対応、景気変動への対応等に純化される。」ということを言っております。その裏側としまして、第2節に書いてございますように、人々が「官」に頼る、「官」に任せればよいという風潮が薄れて、個々人がNPO等の形で「公」というものに参画をしていくことが重要であるということを指摘しております。

次に、27ページからの第3部「経済新生の政策方針」について申し上げます。第3部では、第2部で申し上げました5つの柱に対応させまして、それを実現していくためにとるべき経済政策について指摘しております。ここの冒頭で書いてございますように「重要な政策方針を示す」ということで、ここでは従来の経済計画に比べまして、取り上げる項目を非常に絞った形で書いてございます。

第1の柱が、「多様な知恵の社会を形成」していくためにとるべき政策ということでございます。最初に、「透明で公正な市場と消費者主権の確立」と書いてございますが、この中では、ア)の2行目の終わりから、特に強調しておりますのは、「日本経済社会をグローバル化に対応したものとする上で特に重要な役割を果たすと考えられる物流、情報通信の分野について、21世紀初頭において世界の最先端を行く効率的で魅力的な事業環境を整備するための包括的な改革方策について早急に検討を行い、明確なスケジュールの下に施策を実施する。」ということで、先ほど、政策の実行ということで申し上げました、国民に分かり易いプログラムを作って実施していくというのを、この物流、情報通信の分野の構造改革というような形で具体的に指摘されているということでございます。

時間の関係で大変はしょってご説明を申し上げますが、さらに、28ページでは、「魅力ある事業環境の整備」ということで、外国の企業が対日直接投資を進められるような環境整備を図っていく、あるいは創業・起業がし易い環境をつくっていくことを指摘しております。

それから、29ページの第2節では「多様な人材の育成と科学技術の振興」ということで、教育の問題も経済審議会のご議論の中で非常に活発なご議論をいただきまして、ア)で言っておりますポイントは、「多様な学校の設置や通学区域制度の弾力的運用の促進など、学校選択機会の拡大に向けた総合的な施策について、検討し、推進する。」ということで、選べる学校ということを強調しております。

それから、30ページのところでは、外国語教育、なかんずく事実上の国際語となっている英語についての教育を充実する必要がある。それから、情報教育の充実が必要だということを言っております。

2.「外国人労働力の受入れによる多様性と活力の確保」、これも密度高くご議論いただいた点でありますけれども、これについては最初のパラグラフのお終いのところに、「このため、次の点を基本的方向として、専門的・技術的分野の外国人労働者の受入れを積極的に進めるための具体的方策を検討し、推進する。」ということで、これも具体的方策をこの考え方に沿って今後検討していくということを言っております。

31ページ、3.で「科学技術の振興」を言っております。ここでは科学技術の振興とあわせて、最初のパラグラフのおしまいの方ですが、「自然科学のみならず、社会科学、人文科学についても、経済のグローバル化、社会構造の変化等、現代社会が抱える課題の解決に貢献し、長期的な経済社会、文化の発展に資するものとして、積極的にその振興を図っていくことが重要である。」ということを指摘しております。

また、32ページのところでは、「ものづくり」が非常に重要であるということで、法律に基づいて、ものづくり基盤技術振興基本計画本を策定するということを言っております。

第3節「多様な知恵の社会における地域経済と社会資本」では、知恵の社会に対応した地域経済のあり方、社会資本整備の方向ということで、ここでは「小さな大都市」ということを言っておりまして、これまで外延的に拡大してきた大都会というものは、むしろ、コンパクトにまとまって、国際競争力を持った都市にする。さらに、コンパクトにまとめることによって空間的・時間的なゆとりをつくり出していくということを言っております。

2番目に、地方都市については、独自の産業・文化を持つ地域づくりが重要であるということを言っております。

33ページにまいりまして、3番目に、中山間地域等につきましては、多面的な機能を形成していく必要があるということを言っております。

33ページの下の方で、4番目、社会資本の整備ということで、多様な知恵の社会に対応するために、ア)に書いてございますが、「情報通信ネットワークについて、市場経済の原則に基づき、通信ケーブルの光ファイバー化と接続中継点における各種情報通信機器の高度化を進め、日本列島の中核に世界最大級の高速・大容量を持つ情報通信ネットワークの形成に努める。」ということを言っております。

34ページの第4節では「首都機能移転の検討」が書いてありまして、首都機能移転の意義を書いて、35ページの冒頭のところで、「『国会等の移転に関する法律』に則り、その具体化に向けた積極的検討を進める。」ということを指摘しております。

第2の柱が、「少子・高齢社会、人口減少社会への備え」ということでありまして、「

安心でき、かつ効率的な社会保障」ということで、1番目に、公的年金については、「厚生年金の給付水準や支給開始年齢などについて所要の改正を早急に行う。なお、現在各方面から指摘されている年金制度に関する諸問題については、今後とも幅広い議論」が必要であるということを言っております。

2番目に、高齢者医療と介護という問題につきましては、36ページの1行目に書いてございますけれども、「民間事業者など多様な提供主体の参入を図る。その際には、医療・介護サービスについて、利用者による適切な選択ができくよう、情報提供の充実を図る。」ということを指摘しております。

3番目に、「年齢にとらわれない経済社会」ということで、特に、働き方のことをここで取り上げておりますけれども、そこの2行目にありますように、当面雇用情勢が大変厳しいということで、60歳台前半層の雇用機会の創出が当面最重要の課題でありますが、さらに、労働力人口が減少していく2010年頃を念頭に置いて考えますと、一番最後のところに書いてございますが、アメリカのように、むしろ定年制を廃止して、年齢による差別禁止という考え方をとる方がよいかどうかということを、今後検討していく必要があると指摘しております。

第4に、少子・高齢社会に向けた街づくりということを言っております。このため、社会資本についてもユニバーサルデザイン化、バリアフリー化等を推進するということを言っております。

第5に、「少子化への対応」と書いておりまして、直近のところで合計特殊出生率が1.38ということで、出生率が非常に下がっているわけですが、こういう事態にどのように対応するかということで、冒頭に書いてございますように、結婚や出産は個人の選択の問題であるということを前提とした上で、「個人が望む選択ができるような環境整備を行っていくことが重要である」ということで、その下にございますように、「こうした観点から、以下の施策を実施するとともに、検討を深めるたうえで、少子化に対応するための基本的な方針を策定する」。これも今後、具体的なプログラムを作っていくということをここで規定しております。

第3の柱は、「環境との調和」というところで、38ページの下からございますが、ここでは2つ言っておりまして、第1は、39ページにございますように、廃棄物の問題ということで、「循環型経済社会の構築」を言っております。ここでは、リサイクルできるものは、可能な限りリサイクルするという基本原則を徹底し、排出者、製造者、処理業者等々の責任分担を明確にするということを言っております。さらに、39ページの下から、「動脈産業・静脈産業」ということがございますが、資源から製品をつくっていくという製造業だけでなく、インバースマニュファクチャリングといいますか、それをまた資源に戻していく、そういう静脈産業というのを形成していかなければいけないということを強調しております。

そういう指摘を踏まえて、40ページの中ほど、第2節の前のところで、「循環型経済社会の実現のため、各種施策について検討し、プログラムを具体化し推進する。」ということで、これもプログラムを作って推進していくことを指摘しております。

第2は、地球温暖化等のグローバルな環境問題への対応ということを言っております。

42ページにまいりまして、第4の柱は、「世界秩序への取り組み」ということで、ここではまず第1節で、世界のルール作りに積極的に参画していくということを言っておりまして、これから始まりますWTO交渉における積極的な働きかけ。43ページのところでは、「国際金融資本市場におけるルール作り」ということで、下から4行目から、「具体的には『最後の貸し手』としてのIMFの資金調達の多様化、緊急時における迅速な資金供給を可能とする弾力的な融資制度創設等の改革を進める。また、IMFが危機に陥った国に融資条件として提示する経済調整プログラムの効果向上のために、当該プログラムの妥当性、透明性確保、及び危機に適切に対処し得る手続の構築などを進める。」ということを指摘しております。

第2節で、アジア地域での役割ということで、アジア地域での連携の強化を図るということを言っております。

第3節で強調しておりますのは、日本から世界への情報発信が重要であるということで、これについては最初のパラグラフの最後に書いてございますように、「以下の施策の有効性・必要性等の検討を踏まえた上で、包括的なプログラムの策定等に取り組む。」ということで、日本が世界に向けていかに有効に情報発信していくかということについても、包括的なプログラムを作るということを言っております。

第4節は、「国際経済協力のあり方」ということで、46ページのエ) とオ) に書いてございますように、「国際経済協力の展望を明らかにする。」とともに、「ODAの中期政策をすみやかに策定する。」ということを言っております。

第5の柱は、「政府の役割」ということで、ここではまず政府の「組織の簡素化と事業効率の向上」ということを言っております。この中では、部会長からもご紹介がございましたけれども、47ページの上から5行目、「事業の時間的効率性を向上させるために、時間管理概念を導入する」ということで、とかく政府の仕事の場合には金利の概念・時間の概念がないということが言われていますけれども、時間管理概念を導入するということを指摘しております。さらに、その次のパラグラフでは、これも部会長からご紹介がありましたが、「PFI(private finance initiative) -その次に括弧して説明が付いておりますが、(民間の資金とノウハウを活用して優れた公共施設の整備やサービスの充実を促す新しい事業方式-を積極的に推進する。」ということで、これにつきましては議員立法で法案が提出されておりまして、衆議院で可決されて、現在参議院でご審議中ということでございます。

それから、47ページの下では、「生産性向上のための組織編成、人事管理」ということで、48ページの冒頭のア) で書いてございますけれども、公務員についても、「能力・実績に応じた処遇が不可欠であり、従来の年功的な運用を見直し、年次の逆転を含め、採用試験の種類、事務官・技官、性別等にとらわれない弾力的な人事運用を推進するとともに、複線型の人事管理への移行を推進する。」ということをうたっております。

それから、48ページの下からは、「財政再建方策」ということで、49ページの5.の上のところをご覧いただきますと、結論的に、財政再建については、「日本経済が回復軌道に到達した後に」ということで景気の回復を確認した上で、「財政再建の具体的プログラムを策定する」ということを言っております。その財政再建のプログラムについては、その前で書いてございますけれども、まず第1に、歳出面での削減を図ることを言っておりまして、第2に、歳入面の措置、さらに第3には、「また」以下で書いてございますけれども、「国有財産については今後とも不断の見直しを行い、集約、立体化等有効活用を図りながら、一層の売却を進める。」ということを言っております。

それから、49ページの下、「行政の透明性確保」ということで、政府会計について、国民がより監視しやすいようにするよう、企業会計的要素の導入についても検討するということを言っております。

50ページにまいりまして、第2節で「地方の自立」ということで、地方分権と、それから51ページでは、行政の広域化の推進ということを言っております。ここでは、3行目で、「市町村合併を積極的に推進」するということを言いまして、その次のパラグラフで、「さらに、中長期的には、市町村の機能強化を踏まえ、都道府県合併も視野に入れて、都道府県の持つべき機能とその機能にふさわしい適切な規模について検討する。その上で、道州制の意義について、幅広い観点から検討を行う。以上により、行政の広域化を推進する。」ということを言っております。

最後に第6章では、この5つの柱に加えて、今の状況から新しい姿へ持っていくための「景気回復軌道に向けての政策課題」ということを言っております。

新しい経済成長の姿については、挟んであります参考の方をご覧いただきたいと存じます。「参考資料」ということで書いてございますが、この中では2つ書いてありまして、1つは、「経済社会の展望」ということで、資料の1ページからでございますが、従来の経済計画では、期間中の成長率、物価上昇率等を書いておりましたが、今度の場合、国民所得倍増計画以来の、10年という非常に長い期間を視野に置いてのものということで、その間の数字を一義的に書き込むということよりも、むしろ景気が回復した後の姿を参考でお示しするというのが適切ではないかということで、ここで成長率と、物価と、失業率について書いてございます。

成長率につきましては、景気が回復した後の2010年頃までというのを考えると、実質で2%程度、名目で3%台半ばと書いてございます。それから、これは新しい試みでありますけれども、実質2%という成長の根拠を書いておりまして、その上にありますが、資本の寄与が1%程度、労働の寄与が若干のマイナス、技術進歩が1%強ということで、2%と判断した内訳を書いてございます。

消費者物価につきましては、一番下の行でありますけれども、景気が回復した後では2%程度の消費者物価の上昇が見込まれる。

さらに、2ページにまいりまして、失業率につきましては、これは期間中ではなくて、2010年頃の数字でありますけれども、幅をもって、完全失業率が3%台後半~4%台前半と見込まれるということで、その中で、「できる限り低くするよう努める必要がある」ということを言っております。

第2章以下は、本答申案の第2部で書きました「あるべき姿」というのを国民生活に引きつけて、「働き方」、「学び方」、「消費生活、余暇」、「家族、地域、コミュニティ」、「老後」ということで、もう少し具体的なイメージがわくように努力して書いたということでございます。

少し長くなりましたが、以上ございます。

〔 豊田会長 〕 ありがとうございました。

ただいま、説明のありました答申案につきまして、ご意見、ご質問等がございましたらお願いいたします。

〔 畠山委員 〕 ご説明も簡略で結構でしたし、それから、新しい「公」の概念の確立ですとか、外国人労働者の受入れ促進ですとか、都道府県の合併の検討ですとか、非常に結構なことが載っていると思うのでございます。

ただ、1、2点ご質問したいのは、例えば17ページをご覧いただきますと、「『原則自由』への発想の転換」とか、「需給調整規則の原則廃止」とか、「新規参入の自由化」とかいうことが書いてあるわけでございますけれども、今こういうことは、例えば貿易という世界で言いますと、大宗を占める工業製品については、原則自由ですし、新規参入も自由ですし、それから市場メカニズムの活用が最優先の原則になっていると思うのです。そういう意味で言うと、一般的に反対解釈されると、日本の経済というのは原則が今は不自由で、新規参入は自由でなくて、そして市場メカニズムの活用が最優先の原則になっていない、需給調整規則もあちこちにある、こういうニュアンスになって、今の工業製品についてのマーケットの実情に合わないのではないか。

それで、こういうご指摘のようなことは、例えば、農産物の市場ですとか、それからサービスの市場(金融とか、公共事業もそうでしょうか)というところでは確かにあるので、それは直すというのはわかるのですけれども、こういうふうに一般的におっしゃると、反対に解釈されて、現在は一般的に、今申し上げたように、原則自由ではなくて、原則不自由の発想なのだというふうにとられます。

そうすると、これが英訳されて国際的にまかれると、どうなのかなと。その辺をどういうふうにお考えになったのでございましょうか、ということが質問の1つでございます。

それから、11ページですけれども、この辺は非常に歯切れがよくて、大変敬服すべき文章だと思うのですけれども、他方、自由というのが正義として日本では認識されてこなかったというのは、本当にそうなのでしょうかということです。

例えば、憲法の前文にも自由ということは書いてあるし、宗教の自由とかいろいろ書いてあるわけです、憲法には。それは、社会正義としては「しかし、認識されていなかったのだ」という認識が本当に正しいだろうかどうか。

変な例で恐縮ですけれども、オウムなども、信教の自由を尊重するがあまりに、手つかずであそこまで来てしまったということだと思うのです。

そういう意味で、ここにありますように、「自由と効率、平等、安全とが抵触した場合には、政治的議論となる前に、行政の判断で自由が抑えられてきている。」ということに、全体のケースとしてそういうふうになっているのでございましょうかという質問。

その2点でございます。

〔 堺屋経済企画庁長官 〕 まず、17ページの件でございますが、これは工業製品に限れば、委員のおっしゃるとおりでございますけれども、例えば、教育、医療等広範に見ますと、必ずしも、原則自由とは言えない。それで、この部分は、工業製品に限らず、すべてのものを原則自由として、そして市場ルールに従って、需給調整による制限は廃止する。これは、医療や教育、あるいは金融、運輸等すべてを含めての話ということでございます。

ご指摘の点、英文にするときには注意したいと思います。

それから、11ページのことでございますが、これまで日本で、確かに憲法の中には4つの自由が書かれておりますけれども、一般的な生活において、例えば、お祭りをするときに道路の使い方はどうなのか、あるいは文章を書くときに用語はどうなのか、あるいは今申しましたような医療活動や教育についてどうなのか、そういうことを見ますと、かなり自由が正義として議論されないで抑えられたことがあります。それに対して、ここに挙げております「効率、平等、安全」については、あらゆる場面で議論になっている。例えば、自動車の速度と安全性の問題、あるいは廃棄物の濃度と安全性の問題、こういうのは効率対安全として語られています。また、公共事業の配分なども、効率対地域的な平等という点で語られています。すべてに社会的に取り上げられているという意味で、この3つは確かに正義である。

自由は、ときに限られた範囲で議論されているだけでございまして、必ずしも、全体に、「あればいいものだ」と考えられてはおりますけれども、社会的正義にはなっていなかったのではないか。将来の世界では、すべての面で正義の1つとして議論されるべきものだ。こういう意味で、最大自由ということを取り上げているわけでございます。

〔 豊田会長 〕 今のお答えで、この文章につきましてはよろしいでしょうか。

〔 畠山委員 〕 第1点は、日本語もあれでしょうけれども、英文にするときにご配慮いただくということでございますので、結構でございます。

ただ、自由については、どうなのでしょうか、今おっしゃったようなことなのかどうか。自由貿易原則とか、自由経済原則とか、そういうものは正義として認定されてきているのではないかというふうに思うわけでございますけれども。若干そういうところの思いが残りますけれども。

〔 堺屋経済企画庁長官 〕 もう一度申し上げさせていただきますと、自由経済原則あるいは自由職業の原則を言うときに、必ず、どこかで効率に引っかかってくるのです、日本の議論は。自由貿易をすると、それだけ安くていいものが手に入る。それが経済的効率に引っかかって、「効率がたとえ悪くても、安全と平等に逆らっても、自由だから」という議論は、ずいぶん調べたのですが、あまりございません。必ずどこかで、この3つの正義に引っかかって議論されておりますが、本当の自由というのは、それ自体に価値を認めて、たとえ効率が悪くなっても自由というものは正義なのだという議論になるべきだと、こういう主張なのです。

〔 鷲尾委員 〕 これまでも経済審議会の部会、企画部会を通じて労働組合側の意見もたくさん言わせていただいておりますので、ずいぶん文章的には、私どもが考えていることについて散りばめられているということで、その点では評価をいたします。

ただ、基本的な価値観の問題から言うと、多数の委員の方と、私と、あるいは長官はじめ経済企画庁の皆さん方と、哲学が違うみたいで、ここは全然仕方がありません、少数意見ということで、しかも、最後の場面になって「反対」というのも大人げがありませんから反対とは言いませんけれども、私どもとしては意見が違うということを少し申し上げさせていただきたいと思います。

と申しますのは、とりわけ9ページの第5節、「経済選択の基準としての価値観」というのが書かれております。確かに、長官も畠山さんのご意見に答弁されていましたように、そうした傾向を認めないわけではないですけれども、私は、この経済計画の全体的なトーンが、自由、競争社会、効率というものがキーワードになっていると思います。これ自身は、私自身も、全くなしでいいということを言っているわけではありません。しかしながら、これまでの経験則から言いましても、私どもが修正をしていただいたいろいろな意見の中に散りばめられた大変いい部分、例えば、複属社会であるとか、新しい公のあり方であるとか、時間や空間のゆとりであるとか、消費者主権であるとか、安心でき効率的な(「効率的な」というのはどうか、疑問がありますけれども、)社会保障であるとか、年齢・性別にとらわれない経済社会のあり方、これは非常に今までにない経済計画でありますから評価をいたします。しかしながら、簡単に言いますと、自由を中心とした競争社会で、効率を前提にすることがしばしば、今申し上げましたような問題点が阻害されるケースが多いわけです。ですから、各論ではいっぱいいいことが言ってありますけれども、基本原則でこうした価値観の違いといいますか、こうしたやり方を原則にいたしますと、今言ったいいようなことが阻害されるということ自体が、単にセーフティネットで守るだけではない、阻害要因になってくるということを、私の意見で、考え方で言います、あるのではないか、こんなふうに思っているわけです。

例えば、自由の問題についてもそうでありますけれども、私が知り得る自由というのは、他人の自由を妨げないということが絶対条件でありまして、マーケットというのは、場合によると貧困という他人の自由を妨げる危険性があるわけですから、その意味でのコントロールも絶対必要ではないか、こういうふうに思っています。

また、これも意見の違いでありますけれども、私は、福祉社会(これは言葉はこの中には入っておりませんけれども、)を否定する議論については、例えば、ヨーロッパ型の福祉社会というのは、改善しなければいけない問題点は多々あると思います。しかしながら、社会の基本原則としての福祉社会というものの考え方も、私は存立する価値は十分にあるのではないか、このように思っています。

とりわけ、自立した個人というものを考えた場合、確かに、個性的で自立した個人に日本人全部が存在すれば、これは一番望ましいことでありますけれども、私どもが普通付き合っているのは、私もそうですけれども、平々凡々な凡人でありまして、他人に頼りたがる。そして、個性などはなかなか出でこない。そうありたいと思いますけれども、出てこない。こういう社会は、私は、お互いに助け合っていく社会ではないか、と。したがって、前の経済計画で出ております共生というものがここに入ってこなければいけない、こういうふうに思うわけであります。そういうお互いが助け合う社会ということこそ、複属社会を生み出す要因でありますから、典型的な競争社会のぎすぎすしたところで、複属社会なんていうのはあり得ない。うっかりすると、そうなってしまう危険性があるのではないか、こんなふうに思っています。

もう一つは、これは企画部会で出た話でありますけれども、所得格差の問題でありますが、競争社会というのはどうしても所得格差をつくり上げます。優勝劣敗が出ますので、敗者が出る。もちろん、セーフティネットで救うということは書いてあるのですけれども、私は、逆の立場からいって、所得格差を認めて、一生懸命やった人が膨大な所得を得られることが、本当にそういうグループの人たちのインセンティブになっているのかどうか。ノーブレスオブリジュというきざなことは言いませんけれども、所得が多いから、ここにおられる財界の方も一生懸命頑張っているわけではなくて、それをやることによって自分の自己実現ができるからやっておられるのではないかと私は思うのです。それほど所得格差を認めなければだめだという話にはならないと思う。

ということでありまして、できれば、私は、税や社会保障というものを所得の再配分機構として使って、チャンスの平等は長官がしつこくおっしゃっていますように、絶対にチャンスの平等というのは確保されなければいけない前提ですけれども、結果の平等についても配慮すべき社会の方が安定して、しかも活力ある社会になるのではないか、こんなふうに思っています。

これは全然哲学が違いますから、全然取り入れられないことはわかっておりますけれども、意見としては申し上げておきたいと思います。

以上です。

〔 豊田会長 〕 貴重なご意見、ありがとうございます。

〔 水口委員 〕 私は、参考資料として出ております、構造改革推進部会の部会長を務めさせていただきましたので、その立場から申し上げますと、構造改革部会は、第1に、グローバリゼーションに対応した経済社会、第2に、企業や個人の創造性と自由度の高い経済社会、第3に、環境と調和した循環型経済社会、ということを3つの視点としておりまして、結論から申し上げれば、私は、部会の内部で約10回にわたって検討してこの報告書になっております内容が、この答申案に相当織り込まれたということで非常に高く評価をしております。

特に、27ページの第3部「経済新生の政策方針」、第1章、第1節、1.のア) で、先ほど局長が引用されました、「日本の経済社会をグローバル化に対応したものにする上で特に重要な役割を果たすものと考えられる物流、情報通信の分野について、21世紀初頭において世界の最先端を行く効率的で魅力的な事業環境を整備するための包括的な改革方策について早急に検討を行い、明確なスケジュールの下に施策を実施する。」という文言は、従来の審議会報告にあまりなく(もちろん、我々民間シンクタンクが出す報告ほど明確にはいかないのははっきりしておりますけれども)、相当はっきりものを書かれた。特に物流と情報通信については、部会の委員の間では「ビッグバン方式だ」という言葉が非常に多かったのですが、また部会の報告では、「2001年をめどに結論を得ることとして、明確なスケジュールの下に施策を実施することを期待する。」となっておりますので、心はそういうところにございますので、そういう方向で実施をしていただきたいということを申し上げておきたいと思います。

〔 豊田会長 〕 ありがとうございました。まだご意見があると思いますが、時間の関係もございまして、質問を打ち切らせていただきます。

ただいま、いろいろ貴重なご意見をいただきましてありがとうございました。

それでは、「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」(案) を経済審議会として承認したいと存じますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

〔 豊田会長 〕 ありがとうございました。それでは、原案どおり承認することといたします。

次に、この答申に際しまして、政府及び民間の方々への呼びかけを、会長談話という形で発表させていただきたいと存じます。それでは、事務局から説明をお願いいたします。

〔 中名生総合計画局長 〕 お手元の資料4「経済審議会会長談話(案)」でございます。

内外の歴史的な大転換期において、我が国の制度や慣習の中には、今日の経済
社会にそぐわなくなったものが増えております。それらを見直し、構造改革を抜
本的に前進させることにより、経済社会システムを時代に適合したものに変革し
ていくことが重要な課題となっております。
この変革は、これまでのシステムの延長線上で漸進的に制度を調整していくと
いう対応では限界があり、人々の行動様式から発想に至るまで、まったく異なる
枠組みへの転換を伴わざるを得ないものであります。
こうした改革を行うには、いずれの方向へ進むかについて、国民の選択が必要
であり、その大きな方向性について回答を出すことが求められていると言えまし
ょう。
このため、本答申では、まず、経済社会の「あるべき姿」として、今後21世紀
へ向けて我々が選択すべき方向性と、その結果として実現されるであろう経済社
会の姿を描きました。
以下「その第一は」、「第二は」、「第三は」は繰り返しになるので、とばして読み上げます。2ページの中ほどからであります。
本答申では、こうした経済社会のあるべき姿を実現するための政策方針を重要
施策にしぼって取りまとめました。その際、本政策方針の中では大きな方向性を
提示するにとどまっているものについては、政府内で早急に具体化の検討に着手
し、その結果を分かり易いプログラムとして示すことを盛り込んでいることが、
特徴の1つです。
本答申の策定過程においては、幅広く国民や海外からの声を吸収するため、有
識者やシンクタンク等からの意見を収集したり、調査審議の中間段階で「『経済
社会のあるべき姿』を考えるにあたって」を公表し、インターネットやモニター
等を通じて意見募集を行いました。また、国際会議の場等を活用して海外との意
見交換にも努めた他、本年5月下旬からは経済審議会の地方シンポジウムを開催
するなど、内外からの意見を幅広く吸収しました。これらにより、国民各界各層
及び海外からの多様な意見が反映された答申が作成されたと考えております。
今後、政府に対しましては、本答申の内容が国民に対して十分に理解されるよ
う内容の周知に努力するとともに、全力を挙げて本政策方針の推進を図っていく
ことを求めます。
また、国民に対しましては、本答申の内容を十分ご理解いただいたうえで、「経
済社会のあるべき姿」に向けて、自信を持って進んでいかれることを期待いたし
ます。

以上でございます。

〔 豊田会長 〕 ありがとうございました。

ただいま説明のありました案につきまして、ご意見、ご質問等ございましたらお願いいたします。

特にないようでございますので、それでは、、経済審議会会長談話(案)を経済審議会として承認したいと存じますが、いかがでございましょうか。

(「異議なし」の声あり)

〔 豊田会長 〕 ありがとうございました。それでは、会長談話につきまして、原案どおりとさせていただきます。

ただいま、総理がお見えになりましたので、先ほど、ご承認いただきました「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」をお渡しいたします。

( 答申手交 )

〔 豊田会長 〕 それでは、総理よりご挨拶をいただきたいと存じます。

〔 小渕内閣総理大臣 〕 ただいま、答申をいただきました。経済審議会委員の皆様には、本年1月に私から「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」の策定をお願いして以来、熱心な調査審議を重ねていただきありがとうございました。厚くお礼申し上げます。

我が国の経済は、歴史的な大転換期であります。知恵の社会の到来、少子高齢化、グローバル化、環境問題への対応など、現在我が国が直面している諸課題を克服してさらなる繁栄を築くためには、この国の仕組みと気質を抜本的に変革することが不可欠であります。

本答申は、知恵の時代への扉を開くため、21世紀初頭の日本のあるべき姿について、我々が選択すべき方向性と、その結果として実現されるであろう経済社会の姿とを描き、それを達成するため、経済運営の基本方針を定め、重点となる政策目標と手段を明らかにしたものであります。

これはまた、個人や企業の活動のガイドラインを示すことでも大きな役割を担っております。

時代の転換期にあたって、先行きの不透明感が経済主体の活動を躊躇させている現在、21世紀初頭の経済社会のあるべき姿と政策方針を示すことの意味合いは、極めて高いものがあります。また、日本経済が目指す方向と政策方針を、世界に向けて発信することの意義も大きなものがあります。

政府といたしましては、本日いただいた答申をすみやかに閣議決定し、その推進に最大限の努力を尽くしてまいります。

本答申で述べられている政策課題を実施していくためには様々な努力が必要であるとともに、国民の幅広い理解と協力を得ることが欠かせません。私は、国民一人ひとりが、本答申の趣旨を十分ご理解のうえ、積極的なご協力がいただけるよう呼びかけていきたいと考えております。

また今後、さらに詳細に検討した上で、具体的な政策を立案していく必要のある分野では、政府内で早急に検討し、その結果を分かり易いプログラムとして示すことといたします。

半年間、精力的に調査審議を進められ本答申をおまとめいただいた、豊田会長はじめとする関係各位のご尽力に対し、重ねて心から御礼申し上げ、私の挨拶といたします。

ありがとうございました。

〔 豊田会長 〕 ありがとうございました。

本日は30分ほど総理のお時間をいただいております。折角の機会でございますので、特に申し上げることがございましたら、ご発言をいただきたいと思います。

〔 鶴田委員 〕 総理がいらっしゃいましたので、いい機会ですから、一言だけ、私の希望のようなものを申し上げてみたいと思うのです。

今日答申いたしました「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」、私は、内容的に大変よくできていると思います。今までのいろいろな計画に比べまして、戦後初めて、日本の政治・行政のあり方を転換するような内容が含まれているというふうに思います。

非常に分かり易く言えば、かつての所得倍増計画、その次の日本列島改造に次ぐくらいの、僕は内容のあるものではないかと思います。それだけに、これからこれをどうやって肉づけをしていくかということが、大変な作業になるのではないかというふうに思います。

ただいま、総理も、この内容を十分に検討しながら実行していくというお話でありましたけれども、戦後の日本人の考え方というか、日本の経済政策というか、あるいは行政というか、そういった基本的な理念、概念を随所で覆しているような点があると思うのです。

例えば、「個」の自由、大変おもしろい発想だと思うのです。今までは、日本人は、先ほども自由論がありましたけれども、本当の意味の自由なんて、私はないと思うのです。自己責任もない。お上依存なのです、日本の国民は、産業社会もそうだと思うのです。それでは、これから国際社会には通用しないということで、このあたりはもっともっと強調してもいいのではないかと思うのです。

それから、平等の問題についていろいろ議論はありますけれども、今までは、結果の平等を重視し過ぎていたと僕は思います。機会の平等が大事ではないかという気がするのです。機会の平等がなければ、インセンティブも何もないです。そういう意味で、こういった点を打ち出したのは非常に重要ではないか。

しかし、これを実行していくために、いろいろな法律を変えていかなければいけないのではないか。例えば、安全ネットというのがいろいろ書いてありますけれども、従来よりも、ひょっとしたら安全ネットは低いところに張られるのかなという感じがいたします。

それも1つの方向ではないかと思いますけれども、こういった大転換を、国民にうまく説得して実行していくということは、なかなか容易なことでないのではないか。だから、政府は本気になってこういう問題に取り組んでいただきたいと思います。

そういった意味で、これは恐らく閣議でも決定されるかと思いますけれども、各省庁大臣がこれをしっかり理解して実行していくことが必要ではないかと思います。

そういうふうに思いますので、折角の機会ですから、一言だけ私の希望のようなのものを申し上げてみました。ありがとうございました。

〔 小林委員 〕 今、鶴田さんがおっしゃったこととややダブりますけれども、先ほど総理から、でき上がったこの政策方針を、ご自身で国民の皆さんにわかってもらうように努力するとお話しいただいて、大変に心強いことだと思っています。

ぜひそれに絡んでお願いしたいのは、実際に今度のような計画については、私も企画部会に参画をさせていただいて、委員の皆さんもそうですし、もちろん長官ご自身も事務方のご苦労は大変だったわけですが、先ほどの「原則自由はどうか」というのが1つの象徴だと思いますが、ああいう疑問だとか議論がここで終わらないで、これからも多くの人たちに、「本当に自由はあったのだろうか、いやそうではないのではないか」ということが続いていくことが非常に大切だと思います。

この計画の策定プロセスは、私も参画した前のものなどに比べて、インターネット、あるいは地方に出ていくことを含めて、かなり従来とは違った形で皆さんの意見が入っているわけで、ぜひこれがここで終わらないで、この先に向かってもいろいろな形でそういう意見の取り入れというものが続くように。私は、それが国民の皆さん自身が、ある意味では最終的に賛成しない人も結構いるかもしれないし、全然コンセプトが違うという人もいるかもしれないけれども、こうやって議論をして関心を持つこと自体が、従来と違って、こういうもの自身が「これは誰かが作った」というのではなくて「自分たち自身のものだ」、そういうことを高めていくことにつながると思いますので、ぜひ総理からもそういう点、ある意味では刺激するというか、エンカレッジしていただくような方向でお話しをいただくと大変ありがたいと思います。

〔 鷲尾委員 〕 先ほど申し上げたことを繰り返すつもりは全然ないのです。今、小林さんがおっしゃったことは非常に重要だと思いますし、今までのプロセスで、従来と違ったやり方をして、地方のシンポジウムをやったり、インターネットを使って意見を聞いたりするのは非常に大事だと思います。したがって、今おっしゃったのにかぶせて言うようなことではありませんけれども、現実の政策に作っていく場合には、普通の人ができるだけ参画できる合意形成の場というか、そういう議論の場を積極的につくらないといけないと思うのです。

私も含めて、ここのメンバーはあまり普通の人ではないのです。お人柄は皆、普通の方ではあるのですけれども、やはり、ポジション・立場からいうと、普通の人とはちょっと違うと思います。したがって、その意味から言いますと、できるだけ一般の人たちに、こういうことはどういうふうな考え方をするのかという問題提起ができるような形で議論を沸騰させることが非常に大事である。これが、参画型社会というか民主主義の基本(釈迦に説法ですけれども)と思いますから、その点については、総理はじめ政府としてもぜひ工夫をしていただくとありがたい、こういうふうに思います。

〔 諸井委員 〕 今、我々は、自由か平等か、どっちを選ぶかという議論をしているわけではないのだろうと思います。今の先進国というのを見てみても、大体あまり自由の方に行き過ぎれば、所得格差が非常に激しくて社会が不安定になってくる。逆に、平等の方へ行き過ぎれば、経済全体が不活発になって、それで国民の生活水準が低下をしてしまう。ですから、自由と平等というもの、どの辺にバランスをとるのかということをいつも選択していかなければならない。そういう、今は時代ではないかと思うのです。

そういう視点で見たときに、今の日本のポジションというのは、あまりにも悪平等の方に偏り過ぎているのではないか。それをもう少し自由の方へ持っていくというのが、今我々が直面している課題ではないか。それをどうやって国民に理解してもらうか。

それでは、我々はアメリカのような社会になろうとしているかというと、全くそうではなくて、あんな所得格差の激しいような国になるつもりは私はないと思うし、日本の経営者だって、アメリカの経営者のような給料を取ろうというようなことを考えている人は誰もいないと思うのです。

今、我々がどういうポジョンにいて、どういう方向へ行こうとしているかということをよく理解してもらうということが大事ではないかと思います。

ありがとうございました。

〔 和田委員 〕 今回の答申の中で大変分かり易く、そして大きな課題がいくつか示されておりますけれども、その1つに、環境問題というのがあると思います。環境との調和、1つは循環型社会の構築、また地球環境問題への対応という大きな課題、これは待ったなしの課題というふうになっております。

それから現実に、私どもは消費者運動の中で、また個人個人の自分の家庭でいろいろ取り組んでおります。今まで経済再生がとにかく大きな課題なのだということの陰に、環境問題というのがともすると隠れがちになっていたのが、きちっとこれだけうたわれているということですから、これから具体的なことに向かったときに、決して、これだけの書かれたことが弱まることのないようにということを、改めてお願いしておきたいと思います。

特に、リユースを含むリサイクルというものは、何年かかかって、やっとその歯車が具体的にそちらの方向に向かい始めたということを実感しております。正直なところ、一番具体的な例で申しますと、今まで、例えば、古紙を使ったトイレットペーパーというのは、安売りのバージンパルプのものよりも値段が高くて、正直なところ、なかなか消費が伸びなかったということがありますけれども、今やっと、いろいろなところの値段を見ますと、全部を調査したとは申しませんけれども、その価格が大体似かよった価格になってきたということが言えると思います。こういうふうに、歯車がやっと動き出したところで、そちらの方向に向けて具体的に、今、もう立ち止まることの許されないときにかかっておりますので、これからの対策というものをしっかりと取っていただきたいと考えております。

それから1点、経済審議会のこの後についても触れられておりますけれども、いろいろな審議会の検討をされています中で、私どもが疑問に思っておりますのは、審議会と名前がつかなくても、検討会、研究会、懇談会、いろいろなものがあるのです。名前だけを変えて、同じような内容のものが続くのであれば、審議会を見直しても意味がないではないかということを痛切に感じておりますので、その点、本当に実質的に審議会なり何なりを見直していくということをやっていただきたいことを、改めてお願いしておきたいと思います。

以上でございます。

〔 畠山委員 〕 具体的には44ページ「アジアの地域の中での役割」という中に、「制度の調和にも踏み込んだ『共同市場』を形成することを念頭に」置け、そして、とりあえず韓国と環境整備を図れということが書いてございまして、大変結構なことではないかと思います。

ご案内のとおり、今、共同市場に手を染めていない国というのは、大きなところで言えば、日本と、中国と、韓国と、台湾しかないわけであります。

そして、日本はなぜ共同市場をやってこなかったかといえば、共同市場は、メンバー国の間では自由というか共同だけれども、非メンバー国に対しては差別的な側面を含んでいる。したがって、これはWTOといいますか、GATTといいますか、その無差別原則に反するということでやってこなかったわけです。しかし、世界の国の上位30カ国を拾ってみましても、26対4という比率ですから、共同市場側が26で、そうでない日本のような良心的なことを言っているのは4しかないわけで、そういう正論を言っても通らないわけです。

他方、共同市場側の言い分も多少あって、隣国とはいえ、共同市場して自由化をしていけば、世界中の自由化の程度というものは増えていくではないか。だから、分けて登る麓の道は違っても、同じ、WTOみたいな多国間原則に最後は行き着きますよ。だから、我々は、共同市場で隣から自由化していく。日本は、いきなりWTOでやるならやったらいい、WTOは賛成ではあるけれども、という話なわけです。

今までは、その正論が通らなかったわけですが、それをここで初めて、経済審議会というベースの中で切り換えられている。そして、両方を追求しようという感じになさったのは、大変なご英断だと思って、評価させていただきたいと思います。

〔 豊田会長 〕 ありがとうございました。

これまでのご発言に対しまして、総理より何かお言葉をいただけますでしょうか。

〔 小渕内閣総理大臣 〕 改めてでございますけれども、立派な答申をいただきまして心から感謝申し上げます。

小渕内閣につきましては、国会あるいは日本の中で、まずビジョンがないとか、長期計画がないとか、大変ご批判を頂戴してきましたが、これでそういうことはなくなったという、自信を持ってこれからやっていけるというものをいただいたというふうに考えております。

それぞれの委員の先生方のお話を要約すれば、要は実行であるということであろうかと思います。そのためには、国民の各界各層の理解を得なければならないことだということで、その合意形成のためにも、その先頭に立って実行のために努力をする、こういうことかと思います。

新しい公の概念というものも取り入れていただいておりまして、官でない、公という形の中で、国民自身もそうした考え方に則って21世紀をどう生きていくかということについて指針をお示しいただいておりますので、ぜひ国民の理解を得ながらこれを進めていきたいと、改めて決意をいたしたところでございます。

特に、フィロソフィといいますか、流れる一本の哲学というものを感じさせていただいておりますので、それをベースにして、これから対応していきたいと思っております。

自由と平等の問題もお話しいただきましたが、かねがね、政府・与党たる自由民主党のことをときどき言われるわけで、自由と民主主義と両立をいかに図るかということについては、自由を極端に推進すれば、片や民主でなくなる部面もあって、両方を兼ね備えた政党だから立派だという意見もありますけれども、なかなか難しい選択を象徴しているのではないかというお話もございましたけれども、しかし、これを調和させていくところにも視点があるというご指摘がございまして、そういった点も努力をしていきたいと思っております。

いずれにいたしましても、折角おまとめいただきまして、1つのすばらしい方向性をお示しいただきましたので、先ほどご挨拶申し上げましたように、内閣としては一日も早くこれを閣議決定して、それぞれの具体的な政策を遂行していきたいと思っております。

重ねて、今後とものご鞭撻、ご支援もいただきたいと思っております。

ありがとうございました。

〔 豊田会長 〕 ありがとうございました。

なお、総理はご多忙でいらっしゃいますので、ここでご退席になります。どうもありがとうございました。

( 内閣総理大臣退場 )

〔 豊田会長 〕 最後に経済審議会の今後の運営につきまして皆様方のご了解をいただきたいと存じます。今回の「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」策定に際しましては、審議会の下に設置しました基本理念委員会と5つの部会において集中的に審議を進めてまいりましたが、本日の答申をもちまして、これらを廃止することにいたしたいと存じます。

今後は、本答申に掲げられました各般の施策の実効性のある推進を図る必要があります。そのためにはまず、本答申の趣旨や内容につきまして、広く国民にご理解いただくため、十分な広報活動が必要であると考えます。この点につきまして、事務局によろしくお願いいたしたいと存じます。また、本答申の政策方針に関するフォローアップを行うにあたりましては、本審議会の下にしかるべき体制を設けることとしたいと存じます。その具体的な体制につきましては、事務局を中心にご検討いただきまして、次回の審議会において改めてご審議いただきたいと存じますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

〔 豊田会長 〕 ありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきます。

皆様方のご尽力によりまして、本日ここに答申を行うことができました。会長といたしまして委員、関係の皆様方に厚く御礼を申し上げます。

なお、本日の審議の模様及び私の談話につきましては、この後、私から記者発表させていただく予定でございます。

それでは、これにて散会といたします。どうもありがとうございました。

-以上-

内閣府 Cabinet Office, Government of Japan〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
電話番号 03-5253-2111(大代表)