経済審議会第3回基本理念委員会議事録

時: 平成11年6月25日

所: 経済企画庁特別会議室(436号室)

経 済 企 画 庁

経済審議会基本理念委員会(第3回)議事次第

日時 平成11年6月25日(金) 16:00~17:30

場所 経済企画庁特別会議室(436号室)

  1. 開会
  2. 「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」(案)について
  3. 閉会

(配付資料)

資料1 基本理念委員会委員名簿

資料2 「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」(案)

出席者

  • (委員会)小林陽太郎企画部会部会長、水口弘一構造改革推進部会部会長、江口克彦構造改革推進部会部会長代理、清家篤国民生活文化部会部会長、大田弘子国民生活文化部会部会長代理、安土敏地域経済・社会資本部会部会長代理
  • (事務局)堺屋大臣、今井政務次官、塩谷事務次官、林官房長、梅村企画課長、中名生総合計画局長、高橋審議官、牛嶋審議官、大西計画課長、岩瀬計画企画官、福島経済構造調整推進室長、林部計画官、他。

経済審議会基本理念委員会委員名簿

経済審議会会長 豊田章一郎 トヨタ自動車(株)代表取締役会長

(企画部会)

部会長 小林陽太郎 富士ゼロックス(株)代表取締役会長

部会長代理 香西泰 (財)日本経済研究センター会長

(構造改革推進部会)

部会長 水口弘一 (株)野村総合研究所顧問

部会長代理 江口克彦 (株)PHP総合研究所取締役社長

(国民生活文化部会)

部会長 清家篤 慶応義塾大学商学部教授

部会長代理 大田弘子 政策研究大学院大学助教授

(グローバリゼーション部会)

部会長 八城政基前 シティバンクジャパン会長、RHJ インダストリアル・パートナーズ会長

部会長代理 田中明彦 東京大学東洋文化研究所教授

(地域経済・社会資本部会)

部会長 森地茂 東京大学大学院工学系研究科教授

部会長代理 安土敏 サミット(株)代表取締役社長、企業小説家


〔A委員〕

それでは、始めさせていただきます。

本日は、豊田会長がご欠席ということで、私が議事の進行役を代わりに務めさせていただきます。

本日は、委員の皆様にはお忙しいところ、また足元の悪いところをお出かけいただいてありがとうございました。

本日は、お手元にお配りしてあります「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針(案)」について、事務局から説明していただき、特に、全体としての基本的考え方を集約した序章を中心にご議論いただきたいと思います。

それでは、事務局からよろしくお願いします。

〔事務局〕

お手元の資料2の「取扱注意」とございますペーパーについて、簡単にご説明いたします。

最初に、これまでの経緯をもう一ぺんおさらいしてみたのですが、1月18日に総会で諮問いただきまして以来、各部会、基本理念委員会を合わせまして全部で48回開催しております。今後の予定としては、今のところ、来週の金曜日に15回目の企画部会をお願いしまして、7月5日の月曜日に総会をお願いできればと考えております。

それから、4月13日に「考えるにあたって」という中間報告を発表しましたのと、5月の下旬から6月の初めに、全国9カ所でシンポジウムを開催しまして、大体2,000人ぐらいの方に参加いただいております。

資料2「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針(案) 」は、お手元のとおりでございます。

以上で説明を終わります。

〔A委員〕

どうもありがとうございました。

大臣、さらに加えて、あるいは特に強調されたいところがございましたら。

〔大臣〕

皆さん、いろいろとお忙しいところを、この6か月間、本当にありがとうございました。

いよいよ大詰めにまいりまして、来月の上旬には「あるべき姿」を発表させていただきたいと考えております。つきましては、この基本理念委員会を今日開いていただきまして、この後、企画委員会、そして総会、こういう予定でございます。

今回の一番の特徴は、従来の計画ではない、「あるべき姿」でございます。

経済計画を戦後13回やってまいりました。ずっと政府が経済計画を立てて、日本経済を引っ張ってきたのでありますが、今回は、もう政府が計画を立てる時代でないだろうということになりまして、諮問そのものが「あるべき姿」ということになりました。

そこで、一番のポイントは、日本がどう変わったかということでございます。

この13回の計画の間というのは、変わった変わったと言いながらも、1つの同じ方向に進んでいたと思います。それは、高度成長、そして成長率は中程度になっても、ものづくりを中心とした規格大量生産の近代工業社会を目指すということでございました。したがって、新聞発表でも、まず出るのは、計画の成長率が何%と書いてあるかと、これが一番の見出しでございました。

ところが、今回は、この理念を変えるという大作業を始めなければならない。

それで、先ほど事務局がご説明申し上げましたように、まず第1に、理念の部分で、要約した「序章」というのを付けました。ここで書いておりますのは、従来の規格大量生産社会から知価社会に、知恵の値打ちの社会に変わってくる「知恵の時代へ」という変化が起こるだろう。そこでは、多様なものが生まれまして、一律に考えられにくくなってきます。そういう中で、我々は何に備えなければならないかというと、それは少子化であり、社会の変化であり、そして、グローバル化である。この3つを満たすような「あるべき姿」を考えなければいけないだろう、というようなことを書きました。

そして、それにふさわしい概念というものをつくり、特に自由というのを強調して、これからは、自由な競争社会でないと生き残れないという話をしております。

そもそも、経済が自由経済であるべきか、あるいは指導された経済であるべきか、これはソクラテス、その次のプラトンから始まる、長い長い論争でございます。大体、ヨーロッパの方は、統制経済思想がプラトン以来ずっと強いです。不思議なことに、東洋には、唐の時代を別といたしまして、班田の法が行われた時代を別としまして、自由経済思想の方で強いのです。

例えば、司馬遷は、『史記』の中に「貨殖列伝」というのを書きまして、市場経済で大儲けした人の話を延々と、相当長く書いております。そして、あらゆる増税に反対し、専売制度、ちょうどこの頃に「塩鉄論」というものが書かれまして、塩と鉄を専売にして財政を賄うべきだという話をするのですが、これにも司馬遷は反対の意向を、書いております。以来、自由経済を賛美する人が東洋では多いのです。

司馬遷より少し前にプラトンが出るわけですが、アリストテレスも貨幣の値打ちを通貨の交換と尺度、物資の交換手段と価格の尺度としか考えておりませんが、司馬遷は、明らかに資本として考えておりますから、金利を肯定しています。東洋は、ずっと金利肯定です。西洋がやっと金利を肯定するようになるのは、16世紀になってからです。その辺がずいぶん違うところです。

今度の考え方「あるべき姿」は、この自由経済を肯定しておりまして、個人の選択というものを非常に強く打ち出しています。「最大自由と最少不満」というのがこれからのあるべき姿です。

最大自由で、政府の役割は、ルールを決めること、違反を取り締まること、事後処理ということになる「公」の概念、ガバメントとは異なるパブリックの概念が生まれてきます。

そして、安全ネットは敷かれなければならないが、それは、最少不満(負担する側の不満も最少、そして受ける側の不満も最少)、そういう間に生まれるのではないか。

もう一つ、この答申に書かせていただいています特徴は、経済成長は続くべきだと断言しております。これも、アリストテレスを越えると、ギリシャ哲学は、リタイアメンティズムになりまして、どんどんと後退主義になるのです。その後退主義を否定いたしまして、全体として成長しなければ日本はうまくいかないのだ、ということを強調しているのが特徴です。

(参考)に付いているのですが、経済成長率は、実質2%程度、名目物価デフレーターは 1.5%程度、合わせて名目 3.5%程度の成長。失業率は、3%台の中頃から4%台の中頃までの間を往復するだろうというような、いささかバラ色の描き方をしております。

そのために、激しい競争が必要であり、常に革新的な創業が行われなければならないという、かなり動きの激しい世の中を想定しているというのが特徴ではないかと思います。

今日まで、皆様方からいろいろ議論をいただきましたところを集約した結果が、そういうことではないかと私たちは感じたわけでございますけれども、ご意見をぜひ承りたいと思います。

〔A委員〕

どうもありがとうございました。

今日は、時間を5時半までいただいています。

さっき大臣からお話がありましたように、今日またご意見があれば、この後の企画部会でやりまして、今のところは、5日に総会ということになっております。今の事務局の説明、さらに大臣のお話も踏まえて、それぞれの部会でご検討いただいているわけですけれども、さらに付け加えること等がありましたら、どうぞおっしゃってください。

〔B委員〕

私も、この審議会で勉強させていただいて、宮澤内閣、村山内閣と2回の経済5カ年計画に参画させていただいて、常に、経済計画とは非常に無理であるから、「21世紀のあるべき姿」を描くということは必要ではないでしょうかということを主張してきた1人として、今回のは、非常に時宜を得たものだと思って、高く評価しております。

また、構造改革推進部会といたしましても、情報通信の相当な部分が盛り込まれてきたということで、非常に高く評価したいと思っております。ご苦労さまだと思います。

ただ、一つ意見だけを言わせていただければ、今、お話のありました経済成長という問題です。序章と本文に両方出ておりますけれども、これを見ますと本文の方が文章が短く、序章の方が詳しく出ているという問題があります。その辺は、少し整合性をとっていただいた方がいいのではないかというのが1つでございます。

もう一つは、今、大臣の方からは、(参考)の方でパーセンテージが出されましたけれども、このパーセンテージが出ますと、とかく日本のマスコミはそればかり取り上げるという悪弊がございますので、ここにありますように、全要素生産性というような成長率計算からいくとこうなるというような、前提をはっきりと書かれた方がいいのではないか。不毛の議論を呼ばないためにも、そのような感じがしております。

これは全く感想でありますが、首都機能移転についてです。これは、もう法律もできて、そうやるということになって、着々と進んでいるお話ですから、一般国民は、自治省の大ビルができたり、総理官邸が新しくできるというようなときに、「首都機能移転とは何であるか」ということに、素朴な疑問をかなり持っていると思いますので、その辺は、十分かなという気持ちがいたします。

以上ございます。

〔C委員〕

私も、最初の序章は非常に格調が高くていいと思っているのですけれども、少し技術的なことを、3点ばかり申し上げたいと思います。

1つは、会社人間からの自立に関してです。

労働経済学者として申し上げますと、日本の企業というのはこれまで、ものすごく人材の育成に熱心ですから、育成した人材が外に逃げないような雇用制度を作ってきたというのが、定説になっているわけです。ですから、人材の育成に熱心ということと、会社人間というのは、表裏一体のものでありまして、一方で「会社人間」をやめようと言いながら、ここで「人材の育成」の、「育成」という言葉がちょっと引っかかるのです。これが、例えば、人材の自立的な能力開発を促すとか、そういう形になっていればコンシステントだと思いますが。

これは、私の非常に専門的な興味でありまして、一般の人はあまり気にしないかもしれませんけれども、コンシステンシィを保つためには、言い方を「個人の能力開発を促す」という形に変えた方がいいかなと思います。

それから、先ほどの事務局のお話でも、完全失業率は、まだ何%ということは挙げられていません。一つ確認したいのですが、これは需給ギャップも含んだ失業率ですか、あるいは、いわゆる完全雇用失業率ですか。つまり、ベーカンシィが全くゼロの場合の失業率を推計して入れるのでしょうか、どっちですか。

〔事務局〕

それは、2010年で、経済の均衡状況を考えておりますので、完全雇用失業率というふうに考えて。

〔C委員〕

完全雇用失業率ですか。そうすると、需給ギャップはないということですか。

〔事務局〕

基本的にそうです。

〔C委員〕

そうすると、存在する失業はすべて、摩擦的な失業。

〔事務局〕

そうだと思います。

〔C委員〕

そうだとすると、その上で、新規雇用機会の創出というのは、需給ギャップに対する政策ですから、もし、これが完全雇用失業率だとすると、政策的には、あとはミスマッチを解消する以外には失業率を下げる方法はありませんから、能力開発とか、労働需給の調整機能の強化ということになってくるかと思います。

ただ、このところを完全雇用失業率を入れることが正しいかどうかということについては、つまり、これは適切な経済運営に努めたりすることによって、需要不足失業が発生しないように計画的に誘導するということが、暗黙に前提になっているのですか。

〔事務局〕

需要不足失業は、できるだけ発生しないという、2010年の状況を政策よろしきを得て一応、何と言いますか。

〔C委員〕

存在する失業はすべて摩擦的な失業だけ、ということですか。

〔事務局〕

はい。

〔大臣〕

それは、ちょっと無理なところがありましてね。私どもは最初、4%の上という、おっしゃるような摩擦的失業だけでなしに、構造的失業があるとしました。そうしたら、労働省が承知しないですね。

〔C委員〕

わかりました。

それでしたら、用語として、いわゆる需給ギャップのない完全雇用失業率というふうに書かれた方が、誤解を招かない。

一般的に失業率と書かれた場合には、これは需給ギャップも含んでいると理解されると思いますので、完全雇用失業率と書かれた方がよろしいかと思います。

もう一つは、全く言葉の問題で、このように定義されればいいのですが、「可処分時間」という定義がございます。例えば、24時間が1日に与えられているとすると、そこから睡眠時間、家事時間、労働時間、通勤時間を引いたものを可処分時間というふうに定義されています。経済学でいえば、これは余暇と定義されるわけです。

こういうふうにしますと、要するに、労働時間というのは自分で決められないという前提になります。つまり、普通に考えると、24時間与えられた物理的時間から、生きていくためにどうしても必要な時間を引いた残りの時間は、個人が何時間働くとか、何時間余暇を楽しむとかということを決められる時間として、まさにそこが可処分時間に通常はなると思うのです。

つまり、1日24時間というのは人間に物理的に与えられた時間で、そこから整理的にどうしても必要な時間を引いた残りは、自分が処分できる。実際に、パートタイマーで働く人もいるし、フルタイムで働く必要もいるということだと思うのです。何時間働くとかいうことは、個人の選択の外なのだということを前提に、可処分時間というのを定義されているようですが、それはもしかすると、最初の方で言われている、「自立した個人」とかいったものと若干矛盾するのかなと、言葉の定義の問題として思いました。

以上です。

〔D委員〕

序章は、私もほぼ全面的に賛成です。

この序章の考え方を貫くために、政策スタンスとして日本がどうしても変えなければいけないことが2つあって、1つは、中小は弱者であって守らねばならないという考えだと思います。もう一つは、どんな地方にいても手厚く、生活レベルがかなり高いレベルで保障される。どの地域にいても一律に保障される。この2点を乗り越えなければいけないと思うのです。その2点が、序章はいいのですが、本文の後で少し弱いように思います。

まず、中小というところでいきますと、中小企業基本法では、かなりの中小企業を対象に、中小はすべて弱者であって守っているわけです。所得再分配を行っているわけです。むしろ、これからは、中小企業は決して弱者でなく、起業力やスピードで伸びていくわけですから、あくまで支援すべきはリスクテーキングに対する支援ということだと思うのです。その点が、中小企業=弱者というのが、政策の公共事業に至るまでかなり広く浸透しておりますので、その点の転換が必要だということです。

2番目の地方ですが、国が守るべきはナショナルミニマムだけであって、あとは、地域の自主性なのです。何を伸ばそうが、ダメになろうが、それは地域の自主性で、格差があって当然なわけですが、この中に「中山間地域」がこれだけ出てくると、ちょっとげんなりしてしまって、序章にこれだけ書いていて、政策転換は果たしてあるのかな、という感じがしてくるのです。

私は、中山間地域にしても、この言葉自体を国民はよく知りませんけれども、山間はともかく、その中間まで含めて手厚く守るというのは、相当政治的なごまかしがあると思うのです。環境か何かで、その守るべき場所はかなり限定しなければいけないと思います。棚田を守らなければいけない、なんて一体誰がどこで決めたのだという感じがあります。

中山間地域、これも個性だというふうに私は思っています。国として、環境という面で守るべき場所は、もっと限定的だというふうに思います。

それから、中山間を除く地域の自主性というところでは、地方都市がどうなるか、これも自主性。

何より重要なのは、地方交付税にメスを入れることだと思っております。後ろの方で、地方交付税というのを、地方の税源が不足したときの調整なのだというふうに書かれているのですが、こう書いてしまいますと、今と何も変わらない状態になりますので、国はナショナルミニマムだけを確保する。あとは、地域の自主性だ、ということが重要ではないかと思います。

それ以外の点として、道州制が少し後ろに下がってしまったようで大変残念です。中央主権は変えなければいけない。でも、はっきり言って地方分権も、今の財政調整にメスが入らない状態ですと限界があるわけです。私は、道州制という議論を早急にでも始めるべきだと思います。文章の中では、「これこれがあって、その上で道州制の意義について」というような書かれ方がされていますので、少し残念だと思います。

日本がこれから世界に対して示すモデルとして、高齢化に対応した社会経済システムというのは、特に大事だと思います。1行書かれてはいるのですが、ここをもっと強調してもいいのではないか。いずれ、アジアでも高齢化が始まるわけで、これに対して社会・経済の仕組みをどうつくっていくのかというのは大変重要で、これこそ日本がやるべき重要な役割の1つだと思います。

それから、B委員が、首都機能移転をおっしゃったのですが、これが、費用対効果の問題が相当大きいと思っています。タダで出来るのなら大賛成なのですけれども、非常に大きい財政支出をして、首都機能を移転するのかどうかというのは、少し疑問がありますので、これも費用対効果をきちんと見ながら、というようなことではないでしょうか。

もう一点、規制緩和に関して、需給調整条項を廃止するということが強調されているのですが、これだけですと、ずいぶん前の行革審で出されたことと同じになってしまいますので、むしろ今、規制緩和で相当難しいのは、聖域です。医療とか、介護とか、教育もそうですけれども、聖域と言われてきたところがなかなか議論ができないのです。ですから、需給調整条項とか、あえて書くよりも、聖域をつけないとか、生産性保護的な規制はもう全廃するのだ、というようなことを書いた方がいいのではないかと思います。

以上です。

〔E委員〕

序章の部分は、本当にすばらしい。

こういうところに、純粋のサラリーマンにどっぷり浸っていた人が参加しているということは過去にあまりないと思うのです。私は、企業の経営もやり、ものも書きながら、一方で、完全なサラリーマンを40年やってまいりました。その立場から見ると、これは本当にすばらしいです。ちょっと大げさに言えば、ほろっと涙が出てくるぐらい、我々の気持ちを掴んでいると思う。その意味において、大変にすばらしいと思います。

しかし──しかしと言うよりも、それであるからこそ、中をいろいろ、私どもの地域経済・社会資本部会の議論や、その他を踏まえてみましても、本当に2010年とか2000年代の初めにこういう状況に一歩でも近づいた状態に具体的になってくるのだろうかということに、むしろ不安を覚えるほど、逆に言えば、すばらしい。

例えば、この間、仙台のシンポジウムに参加させてもらったのですが、そのときにも、地方の首長さんあたりから、公共投資中心の社会資本ではまずいという話だけれども、それがなければ地方はやっていけない、という声が非常に強く出ている。それはどうしてかというと、結局、人口がいなくなって支えられないのだ、それでぎりぎり支えてきたのだ、という言い方をされました。私は公共投資中心でやっていくのはおかしいのではないか、という非常に強い気持ちを持っていながら、その問題に対して何か手を差し延べなければ、これは確かに非常に大変だなという気がしました。

その他、特に今のサラリーマンということで言いますと、会社人間、企業と個人の関係というものは、一般にいろいろ書かれたりしていますが、自分の体験では、サラリーマンの中に浸かっていない人間からは創造がつかないぐらい厳しい厳しい世界で、最近、報道がいろいろあるように、50代の自殺者が激増しています。あるいは、明らかに生命保険を目的にして、1年以上前に生命保険に加入する人がかなり増えているというような、組織人間にとってものすごく深刻な状態になっているわけです。

それと、脱会社人間でなく、個人と企業との関わりが非常にいい状態になっていく・自由な関係になっていくということとの間に、どのような方法によってそれが実現するかということが非常に難しいと思うわけです。

最後の部会で、ちょうど大臣にその質問をして、大臣から、大変にいいヒントというか、お考えをいただいたのですが、それは、オーケストラ型とジャズバンド型なのだ。オーケストラは、中身が変わっても、オーケストラの質が落ちたとか上がったということで、個人は出てこないけれども、ジャズバンドは「誰が」ということが出てくるから、企業と個人の関係はジャズバンド型になっていくということです。

これは、確かに感覚的によくわかることなのです。しかし、現実の企業──数千人、数万人、あるいは数百人を抱えた企業の中で、これをジャズバンドのように「誰の」ということが出てくる、匿名でなく・名前が出てくるような関係にどうやってできるのかというのは、非常に難しいと思っているわけです。

そのためには、何か相当の知恵が、それこそ知恵が出てこなければいけない。例えば、よく前から言っているのですが、現在、企業と個人の関わりというのは、基本的、一般には雇用と委任です。雇用と委任という契約の形では、現在のサラリーマンたちの働く姿を規定できません。

例えば、A社の社員でありながらB社に出向して経営をしている人、あるいは企業の中で発明や発見やデザイン、そういう創造的な活動をしている人、あるいは勤務時間と全く無関係にディーリングや為替などをやっている等々の人、その関係をうまく律する法律を考え出す、生み出すという種類の知恵など、全部の分野にそういうことがあるのではないかと思うので、その辺について、何かのヒントがないと「絵に書いた餅」に終わる恐れがあるのではないかという気がいたします。

したがって、言ってみると、知恵を生み出すにはどうしたらいいのかという「知恵」とでもいうのでしょうか。知恵を生み出すための「知恵」が必要だというようなことを、どこかにうたって、また、それをどうしたらいいのかを、何かヒントなりともあるといいのではないかという気がいたしました。

〔F委員〕

私の方は、先ほどD委員が言われましたけれども、道州制がこれだけのページで1枚というか、半分ぐらいにちょろっと書かれているというのは、もったいないという気がするわけです。

日本のあるべき姿、そういうことであるとするならば、国のかたちをイメージできるといったら、道州制が一番国民に訴求力があるだろうと思います。また、道州制によって、中央集権体制も、あるいは介護問題も含めまして様々な問題が解決されていくというようなことを考えていくならば、序章や、あるいはその他のところで、こういうふうな記述はそれぞれ必要だと思いますし、委員の先生方がご指摘のとおり、非常に示唆に富んでいるというところでしょうけれども、むしろ、10年後をメドに道州制をやるとか、また、そういう方向で考えていくとかというようなことを、もっと大胆に打ち出していくべきではないだろうか。

21世紀の日本というものを考えたときに、日本を12ぐらいの州に分けて、州政府をつくって、それぞれに政治をやらせる。国は、国がやるべき最小限の政治というか、それに取り組んでいく。そういうところに、財政赤字の問題も、財政再建の問題も、あらゆる問題が解決されていくということになるのではないだろうか。

そういうことで、これはもっと大きく、あるいはもっと前の部分で取り上げてもいいことではないだろうかと思っております。

それと、この中で、いわゆる市町村合併というか、都道府県合併も視野に入れてという形での道州制というのは、たぶん実現できないだろうと思っているのです。行政の広域化で道州制というものは実現できないと解釈しているのですけれども、ぜひ、ひとつ大所高所から、道州制をやっていく方向で何か具体的に国民にイメージできる国のかたちというものを、このレポートで打ち出せば、内容のあるというか国民が理解できる方向性と内容になるのではないだろうかと思っています。

以上です。

〔A委員〕

道州制が、今、D委員、F委員からお話が出ました。僕も不勉強ですが、1つは、今度の5つの部会の中でこの辺の問題が具体的に取り上げられた部会は、地域経済・社会資本部会ですが、その部会の中で、非常に重要なウェイトを持った議論なのですか。

〔F委員〕

少なくとも、私個人は、構造改革推進部会で、地域主権というか、道州制のことをずっと言ってきたし。

〔A委員〕

F委員のスタンスは、わかりしまた。

部会全体として、この問題というのは、非常にプライオリティの高いことだったのですか。

〔事務局〕

道州制の議論は、地域経済・社会資本部会でも議論になりました。ただ、正直に申し上げて反対の意見も、かなりありまして、あの部会に関する限りは、道州制を支持する意見が少のうございました。

それから、地域シンポジウムを行ったわけですが、F委員にもご参加いただきましたが、道州制を強く主張されたのは、近畿地区です。ここは道州制の議論が大勢を占めて、ぜひやってくれという意見が強くございましたが、ほかの地区に行きますと、必ずしもそうでないという感じがありました。

やはり全国にはいろいろな議論があるものだな、いろいろな方の意見があるものだなという感じを受け、そういうことも踏まえて、地域経済・社会資本部会では、こういうような形でとりまとめて、ご了承を得たところでございます。

〔A委員〕

もう一つ、ついでに。これはこの審議会の活動ではないですが、たまたま、D委員と、第3次行革審でご一緒したときを覚えているのですが、道州制そのものが、今度の審議会や何かは別にしまして、いろいろ話が出てから、具体的にどういう形で、しかも、どのくらいのウェイトを持って議論されてきているのかということですが、まさに近畿、宇野さんがその中心におられて、宇野さん自身まさにそこでも強く主張されていました。

第3次行革審で、地方分権、その他の話が議論されました。あのときは、細川さんが総理で、細川さんご自身は、必ずしも道州制には(反対というのではないけれども)、必ずしも100%賛成ではない。

その後ずっとありまして、諸井さんが、地方分権、その他の委員会で。

こういういろいろな流れがあるのですけれども、道州制の問題というのが、新しい国づくりのあり方として、国民的レベルで大きな盛り上がりの対象になっているとは、必ずしも、僕は感じていないのです。

ですから、今度の部会の中で議論されても、両方の意見があることはいいと思いますけれども、少なくとも、それそのもののウェイトというのは、もちろん傾聴すべき意見であるけれども、今度の議論のプロセスの中で、どうしても強調しなければいけないというところまでウェイトが高いかというと、そこまでは。

ですから、F委員のご意見は、もちろんよくわかりますけれども、部会そのものとして、ウェイトづけが低いので、これではいかんということではないというふうに、理解しています。

もちろん、これはF委員のご意見としては尊重しなければいけないと思いますが。

〔B委員〕

それとの関係で、これはもちろん部会のご意見が中心という話ですから。

ちょうど今、事務局から近畿のお話が出ました。E委員もご一緒で、仙台のシンポジウムに行きました時に、昼食の市町村長の方との懇談、それから夜の地元の経済界の方との懇談で僕が受けた印象は、市町村の方は介護保険の問題について地域の広域化でやるというのは必要だというご意見です。財界の方は、東北3県をうまく連結するような道路の建設については、広域行政的なプランが必要であるという話は、ともにありました。ただ、僕の印象では、だから道州制にすぐ行けという話ではなくて、広域的なそういうものが必要だという意見が非常に強かったという印象です。

ご報告まで。

〔D委員〕

地域改革というのは、たぶん推進力はないのだと思うのです。今が一番居心地がいいわけですので、地方分権にしても、機関委任事務までは議論は出たけれども、それ以上の改革というのは推進力がないわけです。その結果として、財政の規律がない、非常に無責任体制が蔓延したり、ばらまき、悪平等ということが起こっているわけで、今、それがかなり限界に近いところです。財政面だけみると、地域の経済力がかなり落ちていることからみても、もう限界に来ていると思うのです。

ですから、これはもう一度きっちり議論しなければいけないことで、さっき地方交付税を申し上げましたが、それも、独立というよりも、地方を一体どうするのか、という議論が必要です。

ですから、道州制がいいかということまでは、とても書けないと思いますが、議論をもう一度起こす一つの核といいますか、そういう意味では重要ではないかと思います。

〔A委員〕

1つだけ、簡単な質問です。アジアのところで、最初の序章のところも、後で受けるところでも、これは確認しておいた方がいいかなと思うのは、先導的という言葉が使われています、日本がそういう役割を果たすという。

我々の意気込みは、そうすべきだと思いますが、基本的にフェアに考えると、アジアとの関係で日本が先導的役割を果たすという時期はもう過ぎているのではないかという気がして。

先導という意味はいろいろあって、まさに経済発展の先頭に立つとか、必ずしもそういう意味でもないのだと思いますけれども、これを英語にして。

それから、アジアなどの、ここ何年かの意識から言うと、日本が先導的役割を果たすということを書いたりしては、「何言ってるんだ」という意識が非常に強い。部分的には、確かに依然として「日本に学べ」というところもありますけれども、経済の分野や、金融の分野などになると、必ずしも、日本が先導的役割を果たせる等とアジアで思っている人はいないのではないかという気もします。

この辺は、こういう言葉を使わないといけないのかどうかという意味で、どうかなという感じを持ちました。感想です。

今までご意見が大きなところでずいぶん出たことについて、事務局の方で何かありますか。

〔大臣〕

1つは、地域の問題です。地域は、それぞれ難しい利害関係、思惑、その他が絡んでおりまして難しい話でございますが、ここの私たちの議論で1つ進歩したのは、「集落の再編整備等による機能の強化」と、「集落の再編整備」というのが初めて入ったことです。これは、集落を寄せ集めて再編しなければいけないという概念が入っておりまして、なかなか難しい発想ですが、1 つの進歩だったと思っております。

したがって、その上の、通信ネットワークとか、尖った産業の特徴ある産業というのが生きてきているのではないか。その程度が、今の農林省や自治省を相手にしますと、限界だなという感じでございます。

それから、首都機能の移転でございますが、これは非常に誤解がございまして、首都機能の移転がこの形で言い出されたのは、バブルがはじけた後なのです。よく、バブル時代の構想だと言う人がいるのですが、平成4年からでございます。

その最大の理由が、一番安くつくということです。東京を地震から安全にするためには、一番安く言っている人が70兆円です。これだと14兆円で出来るのです。だから、一番安くつくということから始まっているのです。

安くつくと言うと、反対が増えるのです。せっかく公共事業を期待しているのに、安くつくのかって、反対者も減るかわりに、賛成者もいなくなっちゃうのです。

だから、どっちとも言ってないのですけれども、本当は、断然安くつく手法です。

今のマレーシアも、この間、40~50キロ離れたところへお移しになりましたけれども、クアラルンプールを改造するより安くつくというのが理由でした。

ブラジリアの例が記憶に強いものですから、非常に高くつくという思想が多いですけれども、開発型の首都と調整型の首都というのがありまして、2つの大都市、もしくは文化圏の真ん中に置くと調整型、文化圏から離れて未開のところ・開発余地のところに置くと開発型といいますが、開発型は非常に高くつくのです。そのかわりに、大きな資源は開発できます。ブラジリアは、その典型を試みたのですが、あまり成功しませんでした。

当時、終戦直後は高度成長で、イスラマバードもそうですし、開発型が流行ったのです。その後、それ以外のところは、例えば、ワシントンにしましても、今でこそ東に偏っておりますが、独立13州でど真ん中、南部と北部の間。キャンベラも、シドニーとメルボルンの間。オタワも、モントリオールとトロントの間。そういうところに置いたものは、わりと安上がりなのです。

今度のベルリン移転などを見ますと、最初は200億マルクと言っていたのが、どんどん値下がりしておりまして、半分ぐらいで出来ましたね。

だから、サラのところにつくったら安いということは、わかると思うのです。

今の国会でも、参議院の佐藤道夫さんという人が、事あるごとに「首相官邸を建てているのはけしからん、700億もかけて」とおっしゃっています。ところが、700億かかっているのですが、正確には 500何十何億と附帯施設で700億弱かかっているのですけれども、そのうちの300何十何億は通信施設で、耐用年数が10年ぐらいのものが多いのです。建物そのものは200億ぐらいのものです。

そんな言い訳をいろいろとしておりまして、どうせこれをつくるとしても15年かかると、戦前にできた大蔵省と文部省と会計検査院がなくなるからちょうどいいのだ、とかいい加減なことを言っておりますけれども。

大体、そんな話でございます。

それから、組織有価という言葉ですが、これは要するに、法人に所有権がある。さっき、E委員におっしゃっていただきました、ジャズバンド型とフィルハーモニー型の感じでございまして、フィルハーモニーの著作権はフィルハーモニーにあるけれども、ジャズバンドの著作権は何の誰それにある、というような感じです。

人の知恵を組織が(今の日本は、社員が発明すると全部が会社になってしまう)社員に全然還元いたしませんけれども、だんだん個人に帰属するようになるのではないか、そういう感じのことを書いたところでございます。

ちょっとわかりにくいようですから、文字を変えさせていただきたいと思います。

〔D委員〕

小さいところで、すみません。年金のところですが、「保障内容は通常の支出をまかなう水準」という「通常の」というのは、普通の人が読めば、今の水準を言うように思いますので、これは「必需的な支出」の方がいいのではないかと思います。そうしませんと、次で書かれている将来世代の負担を軽くするというところと整合性がとれないように思います。

〔A委員〕

入っていませんが。

〔D委員〕

なければ、結構です。

〔A委員〕

D委員のは。

〔D委員〕

チェックしたのを、持ってきました。

〔事務局〕

いくつかご質問をいただきましたので、答えられる範囲内で申し上げたいと思います。

C委員がおっしゃった言葉の使い方は、もう一度精査させていただきますが、例えば、失業率などについては、さっき申し上げましたように巡航スピードになったところでの話をしておりまして、完全雇用失業率という考え方であります。

可処分時間についても、言葉の書き方としてちょっとわかりにくいのかもしれませんので、もう一度見直しますが、そのあたりは勘違いをされないように、きちんと説明をしたいと思います。

D委員のおっしゃった中小企業の話ですが、あまり言ってはいけないのですけれども、このペーパーというのは中小企業についてほとんど書かれていないのです。逆に、中小企業について何も書いていないではないか、という槍が飛んできたらどうしようかというのを本当は心配しておりまして、そこは、おっしゃるように、起業や創業ということで書いていて、その意味で弱者というふうに考えているとか、そういう発想からもある意味でとんでいるということで、大分無理をしているのだというご理解をいただければとありがたいです。

それから、さっき、大臣から集落の再編の話がございましたが、いろいろ地域の自主性で、いわゆる保全化、国土の保全はどうだという話がございましたが、その点は、「効率的に構築する」ということで、さっきの集落の再編も含めて、中山間地域とか、それは多面的機能があるということはある程度認めざるを得ないと思うのですが、守るべき場所を限って考えるべきだという思想も滲み出させたつもりでございます。

それから、ご批判のいっぱいございました道州制でございますが、不十分ではないかというご指摘が強いのでありますけれども、実は、書き分けているので読みずらいということもあるのですが、市町村合併を積極的に推進するというのは、地方分権などでも強く言われております。それでは不十分ではないかということですが、ここまでしか言われていないわけです。そうすると、次に出てくる問題は、都道府県の機能や規模という話であり、その中で、道州制の意義について出てきます。市町村合併も含めて、「以上により」というのは全部係っておりまして、「行政の広域化を推進する」という、「推進」という言葉に、迫力がないぞというご指摘でございますが、気持ちを滲み出しているというふうに受け止めていただければと思います。

〔F委員〕

もう少し、そこのところを文章的に強調することはできませんか。

〔事務局〕

これも、先ほどの最大自由と最少不満というところで、大分苦労した結果であるということも、ご理解をいただければと思うのですが。

規制緩和のところで、もう少し切り込めないかということでございますが、考え方としては、従来、計画では構造改革のための計画というのを前回作っておりまして、10分野を取り上げて、これこれの計画について具体的プログラムというアプローチでございました。今回は、その点はある意味でかなり進んでいるという前提の下に(その効果がこれから発現してこなければいけないということですが)、フットワークとネットワークと、これが全体のあるべき姿から見て最も重要だということで強調するということにしております。それ以外のものについて不十分だということでは決してありませんで、先ほど、ちょっと見ていただきましたように、介護や医療についても、そのくだりで競争、市場原理ということも言っているところでございます。

〔事務局〕

規制改革等についての不足ですが、構造改革推進部会でも、需給調整規制の撤廃というのは当然の原則として、いかにして経済社会の状況に応じて市場メカニズムがきちっと機能するような仕組みにしていくのかということで議論を行いました。結局、1つは、社会情勢の変化に応じてきちんと市場がワークするような形で、発想も転換させて、規制という仕組みを、むしろ市場に任せた上で、事後チェック型の議論という方向に転換をしていく。規制の仕組みとしては、規制改革ということを強調しまして、透明性、説明責任、情勢の変化への適合性という3つの視点を重視した体制に持っていく。常に、政策評価というのをきちんとやっていく。その評価の実施にあたっては、今言いましたような3点を十分に重視して政策評価を行い、その政策評価で、例えば、費用対効果分析をすべてにかけて行い、それに基づいて規制の見直しが必要であればしていくということで、きちんと市場がワークするような方法で、常に状況に合った形の規制が行われるような仕組みをつくっていこう、そこを強調しております。

個別の分野についても、部会の方では、例えば、福祉とか土地流通等で思い切った改革が必要だということをも述べておりますが、この報告の中にも各分野で、それぞれの必要な方策については述べているわけですけれども、基本的には、これが発想の転換に合ったきちっとした仕組みをつくっていくというのが、ここでの言い方にしてございます。

それから、先導的という、A委員からのお話がございましたけれども、日本が一番先にいるというよりも、そういうつもり。例えば、制度調和あるいはアジアでの連携強化というものを、日本がイニシアティブをとってやっていこうということを、先導的にやっていくというふうに表現していると我々としては考えております。

〔D委員〕

どうして、中山間地域だけを取り出すのでしょうか。

過疎地を政策的にどうこうして人口流出を止めるというのは、もう既に失敗であるということは、これまでの経験でもよくわかっております。むしろ、これから増えるのは、大都市の高齢者ですから、コミュニティーという面でも大都市が重要です。中山間地域での政策は、依然として大都市からずっとお金を流し続けるわけです。コミュニティーというのを、中山間地域だけ、どうして特別にするかなと思います。

〔大臣〕

それは、中山間地域を、「官に頼らないで生きろ」という意味でございます。住民が極端に減少する地域もある、と明言しているのです。そんなところで、どうして生きるかというので、西部劇みたいに「コミュニティーづくり」というところがあります。

要するに、補助金中心にまとまったコミュニティから、「文化、スポーツ、旅行、健康、NPO活動等の自己実現を図るための多様なコミュニティに」変わるのです。そして、極端に人口が減るのですね。

だから、これは精神は、ちょっと突き放した感じになっているのです。けれども、表現も突き放すと、怒る人がたくさんいるものですから。

もう一つ、中小企業のことですが、序章のところに「保護すべきは人権であって、利権であってはならない」ということを大変強調しております。これは、この「あるべき姿」を貫くポイントの1つでございまして、あくまでも、人権は保護するけれども、利権は保護しない。それで、守るものと守られるものとの不満が釣り合うように、守る側、つまり、負担者の側にも大変な不満が存在するのだということを書いたのです。その辺をあわせ読んでいただくと、大体気持ちはおわかりいただけるという感じがするのですけれども。

これは閣議決定でございますので、なかなか。閣議報告なら、もうちょっと大胆に。

〔A委員〕

ありがとうございました。

今おっしゃった、閣議報告でさえも、いろいろ議論を読んでいるわけですから、閣議決定は、なおさらご苦労のところであると思います。

今日、本当にいいご意見をいただいて、今度の企画部会に出しますのに、ある程度の修正、その他の必要があれば、それは事務局にお任せをいただいて、なるべく、今日皆さんから出たご意見についてはきちんと反映をされるように。また、必要な説明があれば、今度の企画部会でも、私が部会長をやっておりますので、部会の皆さんにも十分にご説明をするようにしたいと思います。

時間にもなりました。事務局から何か特にございませんか。

大臣、よろしゅうございますか。

〔大臣〕

長らく大変ありがとうございました。

人材の育成のところは、発掘とでもしたらどうかと思います。

それから、組織有価のところは、法人が占有することは難しい、というふうに変えさせていただきたいと思います。

D委員の、過疎地の問題は、もう一ぺん読み返して。

〔A委員〕

ありがとうございました。

それでは、これで今日の基本理念委員会を終了させていただきます。

─以上─