経済審議会企画部会(第13回)議事録

時: 平成11年5月25日

所: 経済企画庁特別会議室 (436号室)

経済企画庁

経済審議会企画部会(第13回)議事次第

日時 平成11年5月25日(水) 15:00~16:30

場所 経済企画庁特別会議室(436号室)

  1. 開会
  2. 「経済社会のあるべき姿と政策方針」の(構成案)について
  3. 閉会
    (配布資料)
    1. 資料1 企画部会委員名簿
    2. 資料2 「経済社会のあるべき姿と政策方針」(構成案)

経済審議会企画部会委員名簿

部会長

小林 陽太郎
富士ゼロックス(株)代表取締役会長

部会長代理

香西 泰
(社)日本経済研究センター会長

委員

跡田 直澄
大阪大学大学院国際公共政策研究科教授

荒木 襄
日本損害保険協会専務理事

伊藤 進一郎
住友電気工業(株)代表取締役専務

角道 謙一
農林中央金庫理事長

小島 明
(株)日本経済新聞社論説主幹

小長 啓一
アラビア石油(株)取締役社長

佐々波 楊子
明海大学経済学部教授

ポール・シェアード
ベアリング投信(株)ステラテジスト

嶌 信彦
ジャーナリスト

高橋 進
(財)建設経済研究所理事長

長岡 實
東京証券取引所正会員協会顧問,日本たばこ産業(株)顧問

中西 真彦
ベンカン(株)会長

那須 翔
東京電力(株)取締役会長

樋口 美雄
慶応義塾大学商学部教授

星野 進保
総合研究開発機構理事長

堀 紘一
ボストン・コンサルティング・グループ社長

松井 孝典
東京大学大学院新領域創成科学研究科教授

水口 弘一
(株)野村総合研究所顧問

村田 良平
(株)三和銀行特別顧問,外務省顧問

八代 尚宏
上智大学国際関係研究所教授

吉井 毅
新日本製鐡(株)代表取締役副社長

吉川 洋
東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授

鷲尾 悦也
日本労働組合総連合会会長

特別委員

岩城 秀裕
(株)野村総合研究所経済構造研究室長

大野 直志
日本開発銀行国際部副長

大前 孝太郎
経済戦略会議事務局主幹

金光 隆志
ボストン・コンサルティング・グループプロジェクトマネジャー

出席者

(部会) 小林陽太郎部会長、跡田直澄、荒木襄、伊藤進一郎、角道謙一、香西泰、小島明、佐々波楊子、樋口美雄、松井孝典、水口弘一、八代尚宏の各委員、岩城秀裕、大野直志、大前孝太郎、金光隆志の各特別委員

(事務局) 林官房長、中名生総合計画局長、高橋審議官、牛嶋審議官、梅村企画課長、大西計画課長、荒井計画官、渡辺電源開発官、染川計画官、林部計画官、塚原計画官、青木計画官、安井計画官、佐々木計画官、佐久間計画官、涌野計画企画官、岩瀬計画企画官、福島経済構造調整推進室長他


〔部会長〕

ただいまから、第13回企画部会を開催いたします。

本日は、委員の皆様にはお多しいところをお集まりいただきましてありがとうございます。

早速ですけれども、本日の議題に入らせていただきます。本日は、「経済社会のあるべき姿と政策方針」の(構成案)についてご審議いただきたいと思います。事務局から説明をお願いいたします。

〔事務局〕

お手元に資料2として、「『経済社会のあるべき姿と計画方針』(構成案)」ということで4枚のものがございます。本日は、この構成案のイメージをご覧いただいて、ご意見をいただければと思っております。

まず、その前に、今後の取りまとめに向けた予定について、少しご説明させていただきたいと思います。「経済社会のあるべき姿と政策方針」につきましては、先月の13日に、「考えるあたって」というのをお示ししたところでございます。現在、広く国民の皆様から、インターネットやファックスで意見を求めております。それから、昨日、仙台で地方シンポジウムを始めましたが、今週と来週で合わせて全国9箇所でシンポジウムを開催させていただくということで、委員の皆様に大変ご迷惑をかけているところでございますが、このようにして国民各位の意見を吸収しているということでございます。

たしか当初に、5月の終わりから6月の初めぐらいにでも、概案といいますか、中間報告を発表することを考えているとご説明したかと思いますが、4月13日の「考えるにあたって」を公表しまして、この中間的な考え方の公表という目的はある程度達成されております。それから、当初考えましたスケジュールが、半月といいまか、1カ月といいますか、多少遅れておりますので、改めて中間報告をさらにまとめるということは見送りたいと考えております。

今後のスケジュールでございますが、次回は6月11日金曜日に予定しておりまして、構成案をさらに書き込んだものの素案としてご覧いただきたい。そして、この案を最終答申、あるいは各部会の報告ということで、相互に書きぶりを調整して添えまして、11日頃に最終答申の素案という形でご覧いただきたいと考えております。

それでは、最終的出口はいつ頃かということでありますが、今のところ、7 月の上・中旬ぐらいということで取りまとめたいと、事務方としては考えているということをまず最初に申し上げさせていただきたいと思います。

前置きが長くなりましたが、資料をご覧ください。これは、先ほど申し上げましたように、全般のイメージを持っていただこうということで書いております。それで、ぜひ全体の構成のチェックをお願いしたいと思うわけであります。

これは3部構成になっております。第1部「『経済社会のあるべき姿と政策方針』策定の意義」、第2部「経済社会のあるべき姿」、第3部「経済新生の政策方針」という構成でございます。

「構成案」下に、副題としまして、「─個性と知恵の時代の扉を開く─」とキャッチコピーを付けてみておりますが、これがよろしいかどうかということもぜひアイデアをいただければと思います。

第1部「『経済社会のあるべき姿と政策方針』策定の意義」、第1章「戦後の経済発展の総括」から始まっておりますが、これは主に総括ということとともに、2つ目の「・」にありますように、特に大きな4つの変化を中心に説くところかと思っておりまして、

  1. 1)多様な知恵の時代への移行
  2. 2)少子高齢化の進展と減少に転ずる人口
  3. 3)グローバル化
  4. 4)環境問題による制約の高まり

という4本建てになっております。

以下の第2部、第3部とも、この4本の柱を中心に全体の構成をしまして、できるだけわかりやすさを追求してみたつもりでございます。

第2章「『あるべき姿』を選択する必要性」ということで、このような変化の中で抜本的な転換が必要である、国民の選択が必要だということを、押さえとして第2章がほしいと考えて書いております。

第3章「『経済社会のあるべき姿と政策方針』の基本的役割とその実行」は、これはいわば新しい経済計画でありますが、この意義を明確にするということで、その基本的役割と実行ということを書いております。

第2節をご覧いただきますと、「政策方針の実行」とございます。通例、計画の中にあるフォロー・アップ的な部分ですが、読ませていただきます。

  • 政策を立案していく必要がある分野については、政府は早急に検討を行い、向こう1年以内に具体的なアクションプログラムを策定する。
  • 本政策方針の実効性のある推進を図るため、毎年、経済審議会は、内外経済情勢及び実施状況を点検(フォロー・アップ)し、毎年度の経済運営との連携を図りつつ、その後の政策運営の方向性につき政府に報告する。

と書いております。

これは1年以内と書いておりますが、この報告を発表する際に、さらに重要である問題で検討課題として残っているものも予想されるわけですが、これについての具体的なアクションプログラムを作り具体化を進めるために、このような手法をとってはどうかということで書いてみたものでございます。

次は、第2部で「経済社会のあるべき姿」と言っておりますのは、いきなり10年程度先の姿を示そうというものでございます。

第4章「めざすべき経済社会」というところの最初に、「めざすべき社会の要約」というのがございます。最初に全体のイメージを置いてはどうかということでございます。まだ全体の整理がついていないところがありまして、さらに書き込まないといけないのですが、一番上に、「人口が減っていく中で、日本人の生産性を高めることにより、日本経済はプラスの成長を維持し活力を維持する」というくだりがご覧いただけると思います。「考えるにあたって」で、経済成長を目的ではなくて手段であるというような言い方をしておりますけれども、マクロ経済全体でも活力の維持というものは引き続き重要であるというご指摘もたくさんいただいておりまして、そういう点をここで1つ説こうというところから始まっております。その下では、自由化とか、効率化とか、世界の主要プレーヤーである、そのような言葉を使っておりますし、国土構造、安全ネットということについての、全体としての要約をここに置いてはどうかというので書いてみたものでございます。

少しご覧いただきまして文章の凸凹があるかと思いますが、これは修正をしなければいけない。イメージとしてとらえていただければと思います。

第1節「多様なの知恵の社会」。一番上のところ、1.で「自由」と「個性」と「多様性」を言っております。ここでは、「考えるにあたって」で議論いたしました自由の考え方のところが整理されております。

2.「個々人が『夢』に挑戦できる社会」という言葉が出てまいります。ここは、「挑戦できる」ということで、挑戦とリスクに対する正当なリターンが確保されている。「あるべき姿」を4月13日に「考えるにあたって」を作りましたときのキーワードであります「夢に挑戦できる」というところのエッセンスを書いたのもでございます。

3.「多様な個人の帰属先」、ここも4月13日のペーパーのエッセンスを書いているところでございます。

4.「多様性のある国土」、上の「・」に少し変わったことが書いてございますが、日本の場合は、東京集中であるせいか、いわゆる東京にいるといつもパーティなどで顔を合わせる習慣が強い。だんだんとネットワーク化あるいは情報通信が進んでいくと、こういう対面慣習というものが薄まるのではないかという意味です。

その下の「・」に、首都機能が移転しますと、一極集中からの脱却のための契機となり、社会全体の効率的な流れをより加速化する、ということで書いております。

5で「人材の育成」を挙げておりまして、人材育成が大変重要だということで、5で押さえをしているものでございます。

第2節「高齢社会・人口減少社会への備え」は、4つからなっております。3ページの一番下の1.「経済成長の重要性(成長を続ける日本)」が、先ほどの要約の一番上にありました経済成長の重要性ということをもう一度強調しているところでございます。ご覧いただきたいのですが、下から2つ目の「・」は先ほどと同じことを書いております。その下の「・」に、経済が恒常的に低迷縮小しますと、財政の継続的縮小を必然とし、負担を過大化する。その場合、比率として増大する高齢者の扶養が難しくなるとともに、新しい事業の展開などが困難とならないか、という問題意識でございます。

そこで2.「長期的な人口の維持」としまして、急速な人口減少を避けることが重要ということで、こういう整理をしてみております。

3.「年齢・性別に関するフリーな発想」は、前回もご議論いただいたことでございます。

4.「高齢社会・人口減少社会の中での活力の確保」も、前回ご議論いただきましたところでございます。

第3節として「環境との調和」を挙げております。こちらでは、1.「循環型経済社会の形成」で少し書いておりますのと、2で「地球環境問題」について、触れております。調和環境問題は世界的な課題であって、日本が率先して対応していくのだということを強調しております。

第4節「世界における位置づけ」でございます。一等最初から、日本はどんな国になりたいのかという問いかけがございまして、これのいわゆる続々編といいましょうか、何回も議論したような気がいたしますが、続編であるということでございます。

ここでは、前はコアメンバーという表現を使っておりましたが、1.「世界の主要プレーヤーであり続ける日本」で、主要プレーヤーという言葉に表現を変えてみております。

最初に言っておりますのが、軍事大国となるべきでもなければ、なれない日本が、経済活力を失えば、地位の低下を招かないかということで、今述べてきたような課題を実現することが必要であろう。

それから、異なる文化と目標をもった国々のルール作りに参加するということで、日本の国内の制度や基準が、世界で最も進んだものとなれば、世界におけるルール作りにおいて日本が積極的な立場を取り、リーダーシップを発揮できるのではないか、ということを書いております。

2.「日本発の未来文化の発展」ということで、ここでは「敬愛される日本」という表現を使っておりますが、モノ、カネ・ヒト・情報の受発信基地の拠点ということです。日本発の文化の代表例として、「ゲームソフト、アニメ等」です。

それから、極めて重要な3.「アジアの中での発展の先導的役割」というのが、世界における位置づけとして書いてございます。

第5節では「新しい『公』の概念と政府」ということで、これも4月13日のときにご議論いただいたことでございますが、「公」、「新しい政府の役割」というところのイメージとしてエッセンスが書かれております。

第2部の最後に、第5章「経済社会の展望」というのがございます。この柱書き、第5勝の太字のすぐ下をご覧いただきたいですが、2010年に実現するであろう経済社会の姿を数量的なイメージを盛り込みつつ具体的に示す。可能なものについては、2010年頃に達成されている指標の数量的な展望を示すが、客観的な数量展望が難しい場合には、現状の国際比較のデータ等を記述に盛り込むことにより、将来向かうべき方向性のイメージを出すということで、この柱書きにありますように、なかなか難しいことが書いてございます。

従来から、新しい指標ということでいろいろご議論いただいてまいりました。ここでは、第5章の柱書きに書いてあるような意気込みで、6つの分野に分けてこのイメージを出せないかということで作ってみたものでございます。

第1節「産業と事業環境の姿」ということで、成長が期待される産業。

その下に、第2節「労働力と就業の姿」とありますが、例えば、「成長産業における雇用の吸収」というのがどのぐらいのものであろうか。こういったものに何らかの数量的な、市場規模とか雇用力というものが出せればというので、少しトライをしてみたいと考えております。

ただ、なかなか定量的なものばかりではありませんで、「リスクに対するリターン」というのは、いろいろ中では言われているわけですが、これをどう定量的に示すかというのは難しゅうございまして、アメリカなどでの新事業の成功例というものをイメージとして書いて、そういったことを踏まえて方向性を何か書けないかと考えているという意味でございます。

その下(開業率の国際比較)とありますが、これなどですと、欧米では、アメリカで14%とか言われております。ドイツでも11%とか高いそうです。日本では4%だということでございます。こういった低さを指摘して、将来の方向性を示すことが言えないかという意味でございます。

第2節「労働力と就業の姿」。労働供給などにつきましては、いろいろ今までデータもございますので、そういったものを活用していきたいということでございます。「人々の独立指向の高まり」、これなどは大変難しいのですが、このようなことも検討しているという意味でございます。「適材適所への配置を促す労働市場の機能」のところでは、均衡失業率と平均的な失業期間をイメージできないかと考えているということでございます。

第3節「国土構造と地域経済の姿」。ここは、地方分散された国土というイメージであったり、世界の中で最も魅力的な都市ということで、「魅力のある都市」というのを例えば情報の発信量ということが取れないだろうかと今、検討をしているところでございます。

第4節「環境と調和した社会の姿」ということで、2010年頃の廃棄物循環処理率、これは現行の経済計画で、21世紀初頭に大体100%ぐらい達成したいということが書かれておりまして、こういった数字もあるということでございます。

第5節「国民生活の姿」、これは前にもご覧いただきました可処分所得、可処分時間というもの、それから、もう少し突っ込めないのかというので、可処分時間の使い方、リカレント型ライフスコースの実現として、どれぐらいの人が社会人大学生あるいは大学院生になっているか。こういった選択の可能度というものも考えられないかということでございます。

第6節「政府の姿」として、政府のスリム化ということが言われるわけですが、この場合、政府の規模がどのくらいのものかということをどのように表現するかという宿題もあると考えております。それから、民間活力、資金、技術などを活用するPFIですが、PFI市場の拡大ということで、2010年ごろにこれが導入されて市場がどれぐらい大きくなっているかということも指標として考えられないだろうかというので、例として挙げております。

こういうことを考えつつ、今、作業をしてトライをしているということでイメージをしていただければと思います。この第5章で展望として挙げますイメージあるいは数字というものについての位置づけというのはなかなか難しいものがございます。また引き続き検討して、ご相談申し上げなければならないと思っております。

第3部「経済新生の政策方針」でございます。まず、第6章「多様な知恵の社会の形成」というところで、第1節「市場と事業環境の整備」から始まっております。ご覧いただいております部分は、構造改革部会のフィールドに当たるものでございます。1.「市場における透明なルールと消費者主権の確立」の一番上に、「物流、情報等グローバル化への対応が求められる重点分野において、大胆な改革を時間を限って実施(ビッグバン方式)」というのがご覧いただけると思います。それから、「政策評価体制及び手法確立」、「消費者契約法の制定」というようなことで、消費者主権を確立しようというのが1つのメッセージかと思います。それから、2.「国際的にみて魅力ある事業環境の整備」。3.「チャレンジのための環境整備」という事柄が第1節でございます。

第2節「人材育成と外国人労働者」、これも何回かご議論いただいておりますが、1.「多様な知恵の社会のための人材育成」に、外国語教育、情報教育、教育への競争原理の導入というのがございます。

2.「専門的・技術的分野の外国人労働力の受け入れ」、受け入れについての環境整備、留学生の受入れという問題をイメージとして、頭出しをしてみております。これはグローバリゼーション部会の検討フィールドでございます。

第3節「多様な知恵の社会における地域経済と社会資本」ですが、ここでは3つ言っております。1が、「様々な高度な機能が近接化・複合化・ネットワーク化された街づくり」ということであります。この中により広範な用途複合という問題も出てこようかと思います。

2が「独自の産業・文化を持つ地域造りと中山間地域等の活性化」、ここはいろいろなテーマがあるわけですが、首都機能移転の具体化に向けた積極的な検討として、(情報ネットワークとフットワークの向上によるモビリティの相乗化を図る)ということを書いてみております。これは首都機能の議論をする際に、それがどういうすうに全体としての効率性の高揚につながるかということを、前にちょっと書いたわけでありますが、それをもう少し、ネットワーク+フットワークということは、ネットワーク×フットワークでしょう、という意味でとらえたらどうかというので考えて書いたものでございます。

3が「多様な知恵の社会のための社会資本整備」ということで、大容量ネットワーク、スーパーハイウェイという事柄が並んでおります。

第7章「高齢社会・人口減少社会への備え」でございますが、第1節「安心でき、かつ効率的な社会保障」で、1の「公的年金」、2の「医療と介護」について、公的年金のところは、国民的議論を行い、将来にわたって安定した制度を構築する。医療と介護については、公的部門が社会保険制度の安定的な運営に責任をもつこと、民間事業者に開かれたものにするということを、ちょっと頭出しをしております。

ここは国民生活文化部会のフィールドでございまして、現在さらに突っ込んでご議論いただいているところでございます。

第2節「年齢・性別にとらわれない経済社会の形成」、年齢・性別からフリーな社会ということで、ここは定年制の問題が出てくるところでございます。1.「年齢にとらわれない経済社会」ですが、将来的には廃止を含む定年制のあり方の見直し。2.「性別にとらわれない経済社会」では、保育サービスなどの問題が触れられようかというのでイメージとして書いております。

第3節「高齢社会における街づくりと社会資本」、地域の話、都市の話というのはこの先に出ておりますが、こちらでは高齢者社会という切り口からまちづくりということをもう一回強調するものでして、1.の「歩いて暮らせる街づくり」というスローガンで書かれております。それから、2.「高齢社会にふさわしい社会資本整備」、これはバリアフリーとか、高齢者に使いやすいような情報機器などのユニバーサルデザインという事柄でございます。

第4節としまして、下に「出生率回復を目指す取組み(育児しやすい環境の整備)」を入れてみました。これは現在、内閣でも関係閣僚会議を作ったりして検討を始めておりますが、人が減るということの問題が大きいわけで、出生率の回復というのも、1つ節を立てるぐらいの大きな話かなと思って、このようなことを書いてございます。

第8章「環境との調和」。先ほどご覧いただきました、第1節「循環型経済社会の形成」、第2節「地球環境問題への対応」ということで、これは構造改革推進部会でまとめつつありますもののエッセンスを書いております。循環型経済社会については、リサイクル可能なあらゆる品目についてリサイクルを進めるという基本原則を明確にするのだということが一番重要だろうと思います。それから、地球環境問題は、先ほどございましたように、日本が積極的にルール作りなどに取り組むということであろうかと思います。

第9章「世界秩序への取組み」、ここは4つに分けておりますけれども、第1節「世界経済のルールへの取組み」、第2節「アジア地域の中での役割」、第3節「世界への情報発信」といった事柄が中心でございます。

ご覧いただければと思いますが、「アジア地域の中での役割」のところでは、「域内の(貿易・投資などの)自由化のモメンタムを維持、高揚」とありますのは、ちょっとわかりにくいですが、今、危機からの脱却とか、成長軌道への回復という局面にありますが、それを踏まえて「域内の自由化のモメンタムを維持、高揚」しよう。それから、その下にありますような、「通貨金融危機の支援・予防のための体制整備」をしようということでございます。

第3節「世界への情報発信」は、前からもいろいろご議論いただいております、「知的活動のハブ」となろうということ、「外国教育と日本語の国際社会への普及促進」といってテーマでございます。

第4節「経済協力のあり方」を1つの押さえとして書いてございます。

第10章「政府の役割」では、第1節「行政の効率化と財政再建」、第2節「地方の自立と競争」の2つに分けております。第1節の下の2つの「・」は、前回、「考えるにあたって」でも書かせていただいているイメージですが、上の4の「・」は少し新しいことを書いているような気がします。1つは、「組織のスリム化の推進」、これは書いてあったものです。2つは、「人事・給与体系において年功的な要素を縮小」、これもある意味で芽は出していたと思います。3つは、「PFIの推進」。4つは、会計ディスクロージャーの充実による「外部からのチェック機能を高める」という事柄でございます。このような事柄を、まだよく整理ができておりませんが、さらに整理をして、「行政の効率化と財政再建」ということに触れるということでございます。

第2節「地方の自立と競争」、ここは項目だけになっておりまして、十分書けておりませんが、こういった事柄があるかと思っております。

最後に、第11章「新しい回復軌道到達へ向けての政策課題と道筋」ですが、いきなり10年後に飛んで「あるべき姿」と「そのための政策方針」ということを言っているわけですが、足元には、新しい回復軌道到達へ向けての政策課題があるわけでございます。これは前回ご議論いただきました事柄のエッセンスまとめてメモしてみたものだとお考えいただければと思います。

第1節「新しい回復軌道到達へ向けての道筋とリスク」、1.「足元の経済動向」がどうかということで、3つ書かれております。1つは、軽さがみられるけれども、大変厳しいということであろうかと思います。12ページに、2.「新しい回復軌道へ向けての道筋ということで、企業のリストラが進むとか、悲観論の払拭で、資産効果などで需要拡大をもたらすのではないかということ。3.「道筋におけるリスク」で、その回復軌道への道筋におけるリスクということについて触れるのではないか。これは頭出しでございます。

第2節として「新しい回復軌道達成へ向けての政策課題」は何かということを、3つ例示をしております。

第3節で「新しい回復軌道到達後の成長軌道」、これも第5章「経済社会の展望」の国際比較データなどで将来の方向性のイメージを出すというところとかなり関係があるのですけれども、こちらの方は、主要なマクロ指標について、回復軌道に到達した後、2010年頃までの期間の姿を数量的に示してはどうかということで、回復軌道の到達後の巡行速度といいましょうか、そういった経済成長率、物価、あるいは失業率を例として挙げておりますが、そういった数字について示してはどうかということで考えてみたものでございます。

今ご説明いたしましたように、「あるべき姿」ということをまず最後に要約し、その概念を説明し、第2章の頭で、あるべき・目指すべき経済社会というものを説明しております。その意味では、いきなり飛んでいるわけですが、その後で、今の足元からの回復軌道ということについても、定性的なり、あるいは回復軌道に乗った後は定量的なり説明をして、ある意味で、足元だけを見てつんのめらないようにしたいといいますか、そうした工夫をして全体の説明をしてみてはどうかということで構成をしてみたものでございます。

以上長くなりましたが、ご説明を終わります。

〔部会長〕

ありがとうございました。

今日は4時半までで1時間ほどございますから、どうぞご自由にご意見をお述べください。

〔A委員〕

2つほど。第1点は、今のご説明でよくわかりましたけれども、第1部、第1章「戦後の経済発展の総括」のところ、80年代のバブルというものと、90年代のそのバブルの崩壊後の経済の実態というものは、最後に持ってくるのではなくて、総括の一番主要な問題ではないかと思いますので、その辺をひとつお考えいただきたいという点です。

第2点は、今日午前中に構造改革推進部会をやりましたが、長官がいないところで欠席裁判してもしょうがないのですけれども、昨日、構造改革部会の現状における素案を事務局の方が説明したら、これは虫の目であって、鳥の目がない、鳥瞰図がないと。2010年頃は、こういう構造改革をやったらどうなっているかという数字を出してほしいというご意見があったようであります。

構造改革推進部会の委員の見解は、その辺の総論的な部分は企画部会でまず示される。それをもとにして整合性のあるものを作っていこう、このような考えでおりました。

鳥瞰図を作るのは、これは簡単と言うと簡単、難しいと言えば難しいわけですけれども、それは総論部会でひとつやろうと。特に労働問題なども加えてありますので、経済構造がどう変わるか、どうなっているかということを入れようと思っているのですが、企画部会とのその辺の整合性を、今のご説明の中でも、第5章の冒頭の部分、「可能なものについては、2010年頃に達成されている指標の数量的な展望を示す」。第1節が「産業と事業環境の姿」ということで、これはまさに現在、構造改革推進部会でやっているところです。それから、第6章につきましてもご説明のとおり、第1節「市場と事業環境の整備」というところを今まさにやっている最中でありますが、ここにつきましても、今日の委員会で議論がありまして、大胆な改革を時間を限って実施する。ビッグバン方式、あるいはビッグバンアプローチと称していますが、これが現在、物流と情報通信と2つが例示として出ていますが、果たしてそれだけかと。ほかの部分にも、雇用の問題にしろ、福祉の問題にしろ、いろいろビッグバンアプローチが必要な問題はある。したがって、それを全部、時間的な問題があって取り上げるわけにもいきませんけれども、その辺をどういうふうに触れておくかということは必要ではないか、こういう意見が多数ございました。また、私自身もそう考えおりますので、その辺の取扱いをお願いしたいということ。

それから、第8章「環境との調和」で第1節「循環型経済社会の形成」、循環型経済はこのとおりで、私どもの部会で今一生懸命やっているところですので、企画部会の「あるべき姿と政策方針」という問題、基本的な問題でありますが、それと、他の部会でもいろいろな問題が多いかと思いますが、その整合性をきちっとこれから取るような方向でいろいろ考えていただきたいと思います。

〔B委員〕

ずっと出席させていただきまして、今回の企画部会での1つは、10年後には、少なくとも成長率というものが入ったということは、成長することはいいことであって、今はバブル後の調整期かビッグバンか知りませんけれども、活性化するのだというのに1つ議論があって、ここにまとまった点ではないかと私自身は思っているのです。

経済社会の展望というのに、1つには、10年後だと言うけれども、さはさりながらというので、一番最後の「足元」のお話。むしろ、10年後に活性化する。それを実現するのに経済再生するための政策方針というところを、もう少し整理される必要があるのではないかと思って、私自身若干気になりました点を申し上げたいと思います。

1つは、政策方針として、どこまで政府がなさるのか。一番最後の「足元」のところをやるには、一体今、政府の支援みたいなのは何か。ここの方になると、かなり回復軌道にずいぶんいろいろなことを政府はやらなければいけないみたいなことが書いてある。けれども、それは現在の話なので、基本的には、活性化というのが、こういう環境を整備したり、労働力の新しい政策をすればできるのだというメッセージが明確に伝わるとか。

何かごちゃごちゃ、今はいっぱいやっているのだけれども、そのうち基本的には自分たちでしっかりやらなければいけない制度整備を政策方針としてするのだというのが、私自身考えて、重要ではないかというふうに思っております。

自分に関連するところを申し上げますと、例えば、大学です。「人材育成と外国人労働者」の人材育成というのに、大学というのがまだ非常に重要なようなことで、ここでいきなり「大学等の新設、創設の規制緩和」というのですけれども、大学が新設と言われると、むしろ増やすことが意なのか。それとも、これからの社会というのは、ここで「もう一ぺんやり直しの効く社会」というのが出てきます。次に、「リカレント方のライフコース」というのが出ている。これは、もう一ぺんやり直しの人たちの社会とかいうのに密接に結びつくので、ここのところだと、そうかなという感じがするのです。前の「増設の規制緩和」というので、規制緩和をすれば何でもよくなるということではなくて、今までと違った役割、違った方針で、大学なら大学、労働者についてもするのだというようなこと、後の方はそうかなと思うのですけれども、ここで整合性を取っていかないといけないのではないか。

むしろ少子化社会ですと、大学の新設というのは現実問題として非常に難しくなっている面がございますようで、大学というけれども、地域密着型にするのだとか、再度流入するのだとか、入れてやるだとか、そのようなことで新しいものが出てきた方がいいのではないかというのが感想でございます。

〔C委員〕

私は、個々のものはあまりよく知りませんので、全体的なことで質問しますが、第1部の第1章から、今まで機能してきたシステムが更なる発展のためには、むしろ障害になっている」ということで、「あるべき姿」としては、何か新しいシステムを構築するのだ、こう書いてあるわけです。

私がこれを読んで疑問に思うのは、新しいシステムというのは、本来は、経済社会のあるべき姿、第4章「めざすべき経済社会」の(めざすべき経済社会の要約)のところに、まとめられているはずです。

その中で、新しいシステムを作る上の認識として、1)~4)の4点がある。

構成として見ていくと、こういうのに対応したような、第4章「めざすべき経済社会」の一番最初に書いてあるのは、たぶんそれを要約としてまとめているはずですね、「・」でずっと並んでいるのは。

ところが、第4章の第1節以下に、個別的なものに対して書いてあることと、ここで書いてあることとの関係性というのは、私にはよくわからないのです。

こっちが最優先の考え方みたいなものが一番最初に並んでいるのか、それとも、後に書いてあるのをただ要約して書いてあるのか、どうもそうではないみたいですが、その辺の関係がよくわからないというのが第1点です。

それから、新しいシステムという以上、政府というのがどういう役割を演じるかというのが、新しいシステムの中で今までのシステムとどう変わっていくのかというところがもっと明確に記述されていないと、10年後の政府のあり方というのが私にはよくわからない。

例えば、グローバル化ということでも、世界の中で日本という国家がどういうふうに関わっていくのかというところが、恐らく重要な問題だろうと思うのですが、国家とは何ぞやとか、そういう問題も全く見えてこない。

そうすると、さっきは、全体的なものがよく見えないという話がありましたが、大枠がわからない中で、非常に個別的なその辺が押さえられていないために、具体的なイメージが非常にわかりにくいのです。

本当はシステムというのは、何かある大枠が決まってはじめて、どういうシステムになるかというイメージができるのだけれども、書いてあることは実際は全く逆で、そういう大枠は何も書いてないのだけれども、個人が主体の社会という言い方になっているのです。政府とか国家とは何ぞやということは何も定義がなくて、個人が主体の社会とある。

これは、システムとして考えたら、個人が主体の社会なんてものすごく不安定なものであって、システムが安定であるためには、国家とか政府の役割というのがきちっとはっきりどこかに書かれているからこそ、システムとしては安定だということになるわけです。

その意味では、私からすると、これは論理的な意味で何が言いたいのかがよくわからない。それが私の印象です。

〔部会長〕

一番最初のC委員の、第2部の第4章の頭のところに書いてあることと、第1節以降のところについて。

〔C委員〕

それはどういう関係になっているのですか。

〔部会長〕

このとおりに読むと、ここには(めざすべき経済社会の要約)と書いてあるから。

〔C委員〕

そうなのだけれども、だけど後ろと全然関連がないですね。

〔事務局〕

今のご指摘の点ですが、そういうご喚問もあるかと思って、文章が凸凹しているというふうに最初に申し上げていたのです。

実は考え方は、ここで「要約」と書いておいてはどうかと申し上げたように、第1節以下の要約として、「めざすべき経済社会」を最初にイメージしてほしいということであります。それがそのようになっていないというご指摘は、そのとおりかもしれません。

なぜそれを考えたかといいますと、第1節以下は、多様な知恵、高齢社会、環境というふうに書いてまいりますと、それぞれが重複した部分がございますし、切り口がそれぞれ違ったものですので、全体として、1箇所置かなければいけないだろうというので、要約があるということです。それが1点。

2点目に、これはまだイメージとして書き始めたところの中間製品をご覧いただいて恐縮なのでありますが、第1節の「多様な知恵の社会」以下のところは、考えるにあたって、例えば、10の考え方というのが一番重要だというのを強調いたしましたが、そのあたりをまず強調したり、それから第2章のところでは、あるべき姿として、個々人が夢に挑戦できるというのが、4月13日のペーパーでは売り文句であったのですが、それをここに入れたりして構成をしている関係で、そこの点の凸凹がどうしてもあるわけです。

それを要約しようとして、上に書いた部分をご覧いただきますと、例えば、自由とかいうところを、(めざすべき経済社会の要約)ですと、2つ目の「・」で、「効率的な経済社会」という言葉になっています。それから、「自由な活動による事業環境が整備され」ということで、「世界の主要プレーヤー」という言葉もちょっと書きたかったものですから、そこまで書いてしまって、やや「自由」と「効率」という言葉が行ったり来たりしているという点がございます。

そういうことですが、いずれにしても志は、ここに「多様な知恵」「環境」というふうに並べていきますと全体がどうしてもわかりにくくなる。そこで、最初に要約を置きたいということでございます。

もう一点、新しいシステムという場合に政府はどうなるかということがよく見えないではないかというご指摘ですが、前に「考えるにあたって」を作ったときも、政府の役割というものをもう少しはっきり書くべきであるというご指摘をいただいておりまして、今回も、その点は大変重要であると事務局としては認識しておりまして、このペーパーでは、さっきの説明でははしょりましたけれども、これは頭だけしか出しておりませんけれども、「『官から民』への流れの中で」ということで、「市場機能をよりよく発揮させるような法制度の整備や安全ネットの整備等に純化させる」ということしか書いてございませんが、こういったところで、きちんと政府の役割、新しいシステムにおける政府はどうなるかということは書かねばならないと考えております。

〔C委員〕

もう一つ、技術革新みたいな問題というのが非常に重要だと思うのです。今、アメリカが発展しているのも、基本的には、昔、軍事機器にものすごいお金を注ぎ込んで、軍事技術として新しい技術が出てきたようなものを民間に開放した。それで新しい社会の基盤みたいものが出てきたというようなところがあるとすると、そういう技術革新を行うためには、かなり効率的なお金をやる。

日本なんかで、軍事費というのはあり得ないわけですから、恐らくそれに相当するものとしては、例えば科学技術研究費とか、そういったところしかないわけです。

どうも見ていると、日本の場合には、そういうところに行くお金がみんな公共事業的なところへ行って、全然蓄積されないようなところがあるわけで、技術革新みたいなものというのを、もうちょっとどこかで触れることは必要ではないかと思います。

〔D委員〕

途中で退席させていただきますので、思いつきでありますが、若干述べさせていただきます。

まず、表題の「経済社会のあるべき姿」という「経済社会」というのは、私は理解しにくいのです。今まであったのは、一番最初はたしか、「新たなる時代のあるべき姿」と、時代ということで、経済を越えた非常に幅広い将来展望ということから始まったと思います。それが前回までは「経済のあるべき姿」と、経済ということに絞られていた。今度は、「経済社会」という言葉になってきました。社会経済というのは、よく社会と経済というので使いますけれども、経済社会というと、逆に経済がより狭いのか、そういう臭いがいたしますので、この辺の言葉の使い方は少しお考えいただいた方がいいと思います。

また、大臣の思いと、この辺が経済的なものへだんだん絞られてきますと、その辺のギャップのようなものが今後出てくると非常に心配をいたします。

第1章のところは、先ほどもご発言がございましたが、戦後全体の総括も必要かもしれませんけれども、80年代から90年代にかけてのバブルと、バブルの崩壊、ここが一番大事な問題だと思いますので、そこはきちんとやられるといいと思います。

また、さっきの表題に返りますけれども、今までの経済計画の延長線で今度の展望をするのか、そこと違うのか、そういう意味では、今までの経済計画についての反省なり、ここがねらっているものというのを少し明確に出された方がいいのではないかと思います。

第2章「『あるべき姿』を選択する必要性」、これも選択という言葉がちょっと引っ掛かるわけですけれども、国民の選択といったら、国民がこう指向して選んでいくというとそうでしょうけれども、表題として「『あるべき姿』を選択する」というと、いくつかこの中に展望の選択肢があって、その中から国民が選ぶというような印象も与えますので、その辺は、表題については若干言葉をお考えいただけばいいのではないかと思います。

この見直しは確かに必要だと思います。ただ、毎年度というのはあくまで原則ということで、非常に経済情勢に変化がある場合、年度途中であってもやらなければならないと思いますので、「原則として」とか、そういうことで随時経済情勢の変化に応じて見直しをするということでやりませんと、前の失敗をする可能性があると思います。

第4章でありますが、これは後の方にも若干関連するのですが、全体として非常に市場効率、市場主義、マーケットと合理化というのが非常に強く出ております。個別の企業なりではそうだと思いますが、マクロの経済で見た場合に、市場万能と必ずしもいかないわけです。むしろ、みんな市場あるいはリストラに走れば、今のような失業問題とかが出てまいります。それについての救済措置は、チャンスを与えるというようなことを書かれておりますけれども、その辺のネットワークがこれから一番大事になると思います。その意味で、その辺は、こういう市場性、効率性を書かれた場合に、そういう社会全体としてのセーフティネットを非常に重視することを書いていただいた方がいいと思います。

今の英国の例を見ておりましても、サッチャー時代の見直しというのが今、ブレアの時代になって相当行われております。これも今指向していることについての反省的なものがいるのではないかと思います。

同じ問題で、「国土構造においても効率性が追求され、過疎地帯に対して非効率な方法による公的サービスの供給は行わない」というのがございまして、後の方、第3節の2ですけれども、「人口過少地における情報、交通、娯楽,医療、教育等のあり方を根本的に見直す」。この見直しが効率化の観点だけでやられるとすれば、国土保全なり環境保全、地方分権、地方の振興ということと矛盾といいますか、非常に衝突してまいりますので、これから文章をお書きになるときに、十分ご注意をいただきたいと思っております。

第2節の1でありますけれども、最初に、「マクロとしてのある程度の経済成長は、国の活力維持のためには不可欠」、この「ある程度」というのは、非常にささやかな感じをいたしまして、この辺はもう少し自信をもって、ある程度一定のところをきちんと書かれた方がいいのではないかという感じがいたします。

とびますが、「教育への競争原理の導入」、これについては、先ほどB委員からもお話がございましたが、具体的にこうやってお書きになるのならば、現在の6・3・3・4の学制についても抜本的な見直しがいるのではないか。戦後で一番間違った問題が起きたのは、戦前の学制から6・3・3・4へ切り換えた。また、その教育の中身ということがございますので、個別にお書きになるならば、6・3・3・4についても見直しが必要ではないという感じが私はしております。

第4節「出生率回復を目指す取組み」、これは大事なことであります。これはぜひ強くお書きいただければいいと思います。

第1節「世界経済のルール作りへの取組み」でございますが、「国際金融市場等における新たなルール作り」、この中身の問題でありますが、今言われているいろいろな金融市場でのルール作りは、グローバルと言っておりますが、実は直接金融中心、あるいは個人投資が非常に進んでいますアメリカの金融市場、そこでのルールがどうやらグローバルなルールになっておりますので、その辺は、あまりアメリカ的なルールがグローバルになるというところでなしに、それぞれの国に即したものがあるという点については、考えていただければありがたいと思っております。

これは非常に問題があるかもしれません、1.「足元の経済動向」で、「デフレスパイラルに陥る危機は脱した」と非常に断定的に書いてございますけれども、例えば、日銀などの発表を見ておりましても、脱したとまでは言っていないので、ひょっとするとまだ戻る可能性は秘めております。また、いろいろな経済アナリストなどかおっしゃっていますのは、4~6期の経済、これについては非常に心配であるというような意見も非常に強うございます。これが7月に発表されるとすれば、この辺の先行きの経済状況なり、政府の施策というものをよく把握してお書きいただいた方がいいのではないかと思います。

〔E委員〕

3点ばかりお話ししたいのです。既に出ている点ですが、一番最初に、大きな社会システム(社会経済システムというか、経済社会システムというかは別にして)、そこがおかしいから新たな時代に新しいシステムを作りましょうという議論。それから、一番最後のところは、景気の問題となっているわけですけれども、基本的には、政策決定のシステムがおかしかった、ないしは判断が遅れた、そういうことからの部分と、その決定システム。政府の内部での政策決定システムのような問題、この2つのそれぞれのシステムが相まって今の現状をつくり、そして戦後のこの経済の発展は、大きな社会経済システムもありますけれども、政府内部での意思決定のシステム、これが最初はよかったのかもしれませんが、最近になってからはそれがうまく機能しなくなったという点がありますから、そういう点からするならば、最初のところには、もう少し後半部分といいますか、現状の景気低迷ということ、現象としてはそうなのですが、その背後にある政府の内部のシステムというようなものを少し入れられて、システムが問題と、2つシステムの問題という形でお話を進められたらば、次のところで経済構造の改革と、それから政府の改革と2つが必要だということにつながってくるのではないかと思います。それが第1点でございます。

もう一つは、ある意味では、政府に対しての危機意識が薄いせいかわからないですけれども、基本的に政府の財政バランスというのをどういうふうに考えていらっしゃるのか。先ほどの「政府の新しい役割」、もしこれで政府の役割を限定するということであれば、この文言の中から、ほかのところに書かれている様々な社会資本の整備というのはいらないお話になってくるのではないかという気もいたします。市場を確立していくというところに、ある程度は社会資本整備が入るところはあるかもしれませんけれども、あまりにも旧態依然とした社会資本整備のお話がところどころに復活してきているような気がいたします。この辺、財政バランスというものをどういうふうにとらえていくのか、政府の構造改革というお話、そこの部分への踏み込みというのをもう少し明確にされてもいいのではないか。

そのようなことになってしまう原因というのは、こういう総合計画を作る中でも何らかの形で、具体的な個々の計画なり政策指針というものに、やはり順位づけ的なものをしておかないと、結局、あれもこれも全部書いてしまうという必要性がいろいろなところから出てきて、入ってしまう。書いてもいいですけれども、一番重要なのはここです、という形で順番に重要なところから書いていくという形、具体的な政策を書かれる、そのあたりへの書き方というものを少し考えられたらどうかと思います。

大きい3点目としましては、市場化ということに対して一体どう対応していくのか。政府は、基本的には手を引きます。そして、市場に任せていきますというときに、安全ネットだけを政府がやりますというふうに、完全に行政から手放していくという形で、本当に覚悟を決めてやっていくのかどうか。これを見る限りでは、そういうふうに見えるのですけれども、前の回にも少し申し上げたかと思うのですが、市場というのは、何らかの形でリーダーシップを必要とするはずです。それが、今までは規制という形で政府・行政がやってきたわけですけれども、それをやめるとして、誰がそういう役割を担っていくのか。政府が安全ネットだけをやるのか、ここには明確に役割の中に書かれていないですけれども、モニターをするとか、情報を市場に適宜流していくような役割とか、それを政府がやるのか、それとも民間との共同でやっていくような形にするのか、それも民間に任せてしまうのか。市場をうまく機能させていくような何かシステムというものをもう少し、経済学者でありながら、そこの部分を最終的な結論は出ていないのですけれども、市場が失敗し、政府が失敗した後の市場というものに対して、どういう形で我々が対応していくというふうに言えるのか、その辺を少し、先ほど申し上げたモニターとか情報しかないとは今の段階で思うのですけれども、そういうことも少し入れられたらどうかというのが、最後の点です。

〔F委員〕

今日は、全体的な構成をということですので、構成に関して注文をつけたいと思います。

まず最初に、第2部「経済社会のあるべき姿」というのが出てくるわけです。この「あるべき姿」をそれぞれ個人と企業と行政・政府が、どのような役割分担をしていくのかというようなことが、やはり出てこないと、政府はいかにあるべきかというような新しい政府の役割というところに直接とんでいくわけでして、まさに去年、A委員の下で役割部会をやって、そのときにいろいろ議論されてきたこと、そこにおける個人と企業と政府というのはどういう役割分担を将来していくのかということがあり、その中で、政府のあるべき姿というのが出てくるのではないかと思います。ですから、ぜひそれを入れてほしい。

それと同時に、新しい政府の役割というのが、今の「あるべき姿」の中に、第4章の中に入っているわけです、「めざすべき経済社会」。これはそうではなくて、めざすべき経済社会を実現するために政府は何をするべきなのか、個人は何をするべきなのか、企業は何をするべきなのか、というような構成になってくるのではないかと思います。

ですから、4章の中に入れるのではなくて、1章で立てるべきではないかというのが私の考えです。

そのときの、役割部会でもいろいろ議論になったのは、結局、自己責任が取れるような体制というものをどのように作っていくのか。そのためには、自己選択というのも重要でしょう、ということも議論があったかと思いますので、そういったことも書いていただけたらと思います。

今、E委員が言った、市場をどのように危機させていくのかということが、新しい政府の役割というところでぜひとも必要だと思うのですが、そのときに、ここですと政府の役割の中に、法制度の整備や安全ネットの整備ということだけが書かれているのですが、リーダーシップはどうするのかというような話、それと事後的にそのルールが守られているのかどうかという監視機能の強化というのは、政府にどうしても必要になるわけですが、そういったものを入れていただきたいということであります。

とびまして、第3部で「経済新生の政策方針」というのが出てくるわけですが、この政策というのは、私の理解では、政府の政策に限定した議論をしている。個人がどういうふうにするのか、企業がどうするのかというのは、その前でいろいろ受けていて、そこで発生する問題に対して、政府としてどのような対応を考えるのかということを第3部でまとめようということだろうと思うのですが、見てみますと、中には、むしろ民間の問題に関しても政府がいろいろ言っているところがあるわけです。

具体的に申し上げれば、これは受け止め方によって違うかと思いますが、「年齢・性別にとらわれない経済社会の形成」というところで、年功賃金をどうするのかとか、あるいは定年制をどうするのかということで、これが直接政府がどうするというような問題として考えるのかどうか。むしろ、これは労使の問題であって、政府はこれに対しては中立的ですというような考え方もあるわけで、このところを政府の政策のあり方ということであれば、それに徹するべきだ。もし、こういう書き方で、65歳までの希望者全員が雇用される、そういう制度の普及促進ということであれば、それに対して政府は何をやるのかというような、具体策の方がむしろ求められるのではないかと思います。

〔G委員〕

具体的には、第3節「多様な知恵の社会における地域経済と社会資本」とあります。多様な知恵の社会における社会資本とつなげてきたので、そうなるのかなと思うのですが、この3番目の項で「多様な知恵の社会のための社会資本整備」ということで、ここに書かれているのを読むと、結局、一番最後のことは別として、光ファイバー論です。確かに、通信のネットワークの高速化とか、大容量化とか、ひいては価格の低下とういうようなことを考えますと、光ファイバーのネットワークを潤沢に用意するというのはそれ自体として決して悪いことではありませんが、しかし、ひょっとすると、東京の都心などには、もうめちゃくちゃに光ファイバーは引かれているのだけれども、あまり使われていないものが結構あるのではないかという気がしないでもない。つまり、光ファイバーをいくら引いても、実際にそれを誰がどうやって利用するかというのは、経済原則でやっているので、なかなかこれは難しい問題ではないかという気がします。

特に民間で光ファイバーを引くわけですから、その投資コストがちゃんと回収できるメドがなければ、そういうこともできないわけでありますから、「多様な知恵の社会のための社会資本整備」という中に、例えば、知的な集積を地域社会にもっと高めていくということが重要ではないかと思うのです。その意味では、国なり地方の自治体の研究機関であるとか、大学であるとか、そういうものをもと地方分散するといいますか、そんな社会資本整備に関連したといいますか、整備された社会資本をどういう人がどうやって使っていくのかということも考えながら、総合的な対策が必要ではないかという気がいたします。

全くとびますが、「政府の役割」に関連しまして、行政の効率化のところがあります。その4番目の「・」に、「外部からのチェック機能を高める」ということがありまして、私は大賛成でありますが、しかし、政府の財政なり、言ってみれば会計のシステムぐらいわかりにくいものはない。たぶんそういうこともあって、新しい都知事が企業会計の考え方を導入したらどうかということを言っておられるのではないかと推察いたしますが、ここで言うところの、チェック機能を高めること、あるいは、ディスクロージャーの充実という場合には、もう少し具体的な、例えば会計原則を改めるというようなことまで踏み込んだ提案がないと、なかなか納得感がないのではないかという気がいたします。

〔H委員〕

私の言いたいことは、既にE委員とF委員がおっしゃったことと基本的に同じで、政府の役割ということをもうちょっと重視。6ページのところでも非常に小さく取り扱われているのですが、手を引くだけでなくて、市場機能を促進するための機能、具体的に言いますと競争政策、これはもっときちっとしないと、ほっておくと寡占化してしまう危険性があるかと思います。それが原則です。

それから、「新しい政府の役割」で重要なのは、「官から民へ」というところは比較的きちっと書いてあるのですが、「国から地方へ」というところは、単に地方分権化ということしか書いてないですが、これはかなり問題がありまして、単に地方分権化していくときに、各地域が保護主義を取る危険性がかなりあるわけですが、それに対してほっといていいのかということがあります。

具体的に言いますと、今、大店舗規制法みたいなのが地方の裁量に任されている。そのときに、本当にきちっと機能するかどうか。あるいは、民間の介護サービスの事業者の参入ということが介護保険で認められているのですが、そのときに、地方自治体が地元業者を優先しないかどうか。かなり危険性があるわけで、そういうときに地方分権化を進めると同時に、共通ルールに基づいた競争政策といいますか、内外無差別の原則、それから、最恵国待遇みたいな、いわばWTOで今や世界貿易の自由化のルールとして当然とされていることは、県ごと・市町村ごとの間にも当然成り立つわけでありまして、そういうWTOと国との関係のようなものを、国と地方との関係で明確にするような、一種の広義の競争政策というものがなければ、かえって日本中が保護主義の海に呑み込まれてしまう危険性があるのではないか、それが第1点です。

「年齢・性別にとらわれない経済社会の形成」、F委員のおっしゃったように、政府は中立的だというのが1つですが、こういう文章を書くならば、この文章は「継続雇用制度は普及促進」と書いてあって、「年功序列の見直しのための環境整備」ということで、すごくこっちはトーンダウンしている。年功序列は残しつつ、継続雇用を普及促進という、連合が言っていることをそのまま書いてあるわけです。これはバランスがなければいけないわけで、年功序列をきちっと見直せば、ある意味で継続雇用とか定年制の廃止はほぼ自動的に行われるのではないか。ですから、何の順序が大事かというと、これは逆ではないかと思います。

その次の「性別にとらわれない経済社会」というところでも、保育と年金のことが書いてあるのは結構ですが、ある意味で、生活給というのもこれと全く同じ考え方でありまして、生活給というのは、働かない女性を養っている男性に対する補助金であるわけで、これはまさに性別にとらわれない経済社会という面と逆行するわけです。その意味で、年功所列というのは、単に高齢者と関連するわけではなくて、年功賃金的なものはまさに女性の雇用ということとも密接に関連するわけで,極めて重要ではないかということであります。

〔H委員〕

私、実際の経営に携わっている者で、それからこれを見ますと、どなたかがおっしゃいましたけれども、最後の「新しい回復軌道到達への政策課題と道筋」、これをまずはっきりしていただいて、これである程度今の経済の要するに復活と申しますか、そのあたりの土壌がまずはっきりあって、それから次の新しい経済社会の方にスタートしていく。

そのためには、今の産業のあり方というのは、産業競争力会議ではありませんけれども、新しい産業をどうやって育成していくかがないと、次の経済の活性化はないのではないかと思うのです。

まず、今のやつを回復して、次の産業の活性化をしていく。それから10年後のあるべき姿、そのときには何年たっているのか知りませんけれども、残された5年なのか、6年なのかは知りませんけれども、そこに向かって進めていくというような、大きな今の時系列がないとよくわからない。

先行きの話がずっと出ててきて、最後に、現実はこういうふうに変わっていくのですよと言われても、ちょっと実感が経営者としてはこないところがあります。

ですから、これはこういう構成になっていますので、それ自体は大変結構だと思うのですが、我々の説得性からいきますと、実際に経営を携わっている者は、そこが非常に疑問である。

ただ、B委員もおっしゃいましたように、成長をはっきりとうたわれたのは大変結構だと思います。やはりプラスの成長の中で物事を解釈していかないと、成長のない社会においては、すべてのものが解決できないことははっきりしているわけです。そのためには、どのようなことなら本当に成長ができるのだろうかというところを明確にしていただかないと、説得性がちょっと薄いのではないかと感じます。

文明評論的には大変結構だと思うのですが、経済社会というふうにうたうのであれば、そこのところを明確にしていただきたいと思います。

〔部会長〕

H委員がおっしゃったことについて、もちろん、僕も同じ企業人として同じく感ずるところもあるのですが、ただ、あえて言いますと、もともとそういうアプローチで今まで何回かやってきて、今度は10年に、10年は最後の到達点ではないのだけれども、その辺を1つ焦点に定めて、どっちかというと、今のH委員の疑問に応えなければいけないとすれば、ここには少し書いてあるのでしょうけれども、10年後の経済社会で、まさにその時点で、例えば今は日本経済は2つの経済とかいろいろ言っていますが、10年後に、将来に向かって何を尺度にして成長と言うかわかりませんが、それの主役になっている、エンジンを担っている産業というのはどういう産業か、あるいは女性の問題いろいろ出てきましたけれども、今と違ったプレーヤーがこういう役割を果たしているのではないか。その中には、新しい産業などもあって、10年後にはそういう姿があるとしたら、まさに今のお話で、急にそこで生まれるわけではないから、今のうちに、そのための育成をしなければいけないとか、種をまかなければいけないとか、そういうことになるのだろうと思うのです。

そのアプローチそのものは、今までいろいろおっしゃったようなことをやってきたのだけれども、それはそれでなかなかうまくいかなかったので、あえて一ぺん先を書いて、そこへここからどうするかというところもきちんと詰めていこうということだろうと思います。

おっしゃることは、よくわかります。

〔I委員〕

私も、今の第11章のところと、前の方のつながり方がちょっと。あまりにも11章が景気循環論に徹しすぎているのではないかという気がします。最後のページに書いてあるように、これは株が上がって気分がよくなればよくなるよという話で、それはそうなのですけれども、そう思って過去に何回も買い支えをやって、結局はうまくいかなかったわけです。

循環論としては、確かにこういう面もあると思うのですが、「回復」というより、むしろ新しい軌道に移行するわけで、その過程で新しい社会がだんだん形成もされてくるし、技術革新も起きてくるし、それから、外資に対する我々の態度も大きく変わっていくとか、いろいろなプレーヤーが代わっていく中で、新しい成長軌道に移行していくということで、あまり景気循環回復論にとらわれていると、ついこういうことになってしまうのではないか、そんな印象を受けました。

それから、例えば、「新しい回復軌道到達後」というのは始点はいつか言わないとおっしゃるのですが、財政はそのときにどっちへ入っているのか。恐らく、この考え方は、回復軌道に乗ったら財政に手を付けるということですね。つまり、財政は、このときではまだなのでしょうか。その辺はあまりはっきりしていないので、E委員も言われましたけれども、財政を2010年までにどういうふうにしているのかというは、逃れられない課題ではないかと思っているわけです。

〔J委員〕

第1章で4つに大きく柱を分けられました。あるいは「多様な知恵」の中に入るのかもしれませんが、技術の体系がこの20世紀から21世紀の境目で大きく変わっているというところを、入れた方がいいかなという感じがするのです。

実は、この10年間、日本がひたすら経済停滞になり、アメリカは10年間、インフレなき高度成長を続けていて、いまだにインフレがわっと出てきそうな感じもない。いろいろな要因があるのでしょうけれども、1つ最近話題になっいるのは、FRBのアラン・グリンースパン議長が、5月6日に、詳細なその辺の分析をしているのです。彼はずっと、インフレの可能性が完全雇用の中であるのだということで慎重な発言をしていて、歴史を振り返ると必ず、その慎重な態度は必要だということを繰り返し言っていたのです。しかし、従来の経済の見方と違う何かが起こっているということを、最初に彼がはっきり言ったのが、たしか、アジア通貨危機が起こったあたり、97年7月の末だったと思います。

そのときに、アメリカの経済社会に、1世紀に1回か2回起こるかもしれない、そういう新しい何かがある。それは技術の問題が大きく1つありまして、特に今回強調しているは、情報技術です。情報技術が飛躍的に変わっている、進歩している。それが例えば金融のグローバル化、経済のグローバル化、そういうものが当然に世界的に支えているのですが、アメリカでは、情報技術革新が生産の現場、生活の現場、生活の現場、政府の行政の現場にどんどん入れられて、いろいろな面でのリーダータイムがどんどん短くなり、リアルタイムの情報が同時にシェアされて、それから人材教育も、要するに情報化教育です。それによって社会全体が、企業も、個人も、会計も、情報技術革命を受け入れる柔軟性を示した。その結果、労働生産性が過去の拡大サイクルでもせいぜい1%だったのが、この数年間は年に3%で上がり続けている。このままずっと続くということはないのでしょうが、10年続いた景気拡大、しかも完全雇用、日本より失業率が低い中で起こっている何かの変化、それは従来と見方を変えた要素をしっかりと重視していかなければいけないのではないかという感じがするのです。

現実に、日本で不況だということで公共事業、道路、土木投資をやっていますが、アメリカにおける投資は民間中心ですし、民間の投資のかなりの部分が高度情報技術及び施設をどんどん入れるという形になっている。それが従来と違う展開なのかもしれないという感じがします。

日本は、20世紀全体としては高度成長を続けて、大変な奇跡をもたらしたのですが、しかし、今の時点で起こっているのは、日本が得意であった規格大量型ものづくりエンジニアリング技術の世界、そこが一番付加価値と可能性、競争力を生む世界から、情報集約的な世界に技術のパラダイムが変わっている。それを社会がどう取り入れるかというところで、単に循環型の景気の短期的な見方ではなくて、これからの社会をみる、経済をみる、それから政策のあり方をみる、企業の経営者がどういう視点で考える、というところに何かポイントがあるのではないかという感じがします。もしそうだとすれば、そこら辺は皆さんでご議論していただいて、柱の1つに入れることがいいのかなという感じがします。

それから、再三指摘があった定年の問題ですが、政府と定年、アメリカはたしか民間の雇用については政策というか、法律で、70歳までは年齢を理由に雇用制限してはいけないと、政府が徹底的に法律まで通して介入しているのです。しかし、よく誤解が出るのは、この不況で人余り中で定年制を伸ばすのは何だ、という議論です。それは既存の雇用体系を前提にしているからそういうことになっていて、恐らく、これからは雇用が流動化するし、年齢も長寿化する中で、70歳まで元気な人がいるし、能力のある人が増えている中で、年齢だけを理由に雇用差別しない。したがって、高齢でも能力がある人にふさわしい職場が提供されるような仕組みに、あるいは社会になっていけるのかどうか。

みんなその賛否の議論は、同じところにずっと勤めていて、今は60だけれども、それを65にするという発想ですから、企業側もとんでもないという話になります。そうではなくて、人々が年齢に応じて、あるいは自分のそれぞれの年齢段階で取得した技術・能力に応じていろいろな職場にチャレンジする。そのような第2の雇用チャネルができれば、強制的な法律で、70歳定年というよりも、年齢による雇用差別禁止ということをはっきりうたって、その中のやり方は、政府でなくて、自由に個人と企業・社会が選択する。

そういう発想がないと、議論は、過剰雇用の中で何だ、不況の中で大変だ、ただでさえ人が余っているという話になってしまう。今の状況では、当然そういう議論に引っ張られがちですが、先々、我々が重視している長い視点で考えますと、同じところにみんなが50歳まで勤めるか、60歳まで勤めるか、70歳まで勤めるかということではなくて、年齢による雇用差別という視点で、そういう差別のない社会でどういう雇用機会を柔軟に社会が提供できるか、そのための企業のあり方ですとか、高齢者だけ雇用している企業が成功している例も最近ぽちぽち出てきています。それは政策のあり方も含めて、もう一つ新しい視点を加えた上で定年制を議論していただくと、未来と、長期と短期が、両方満足できるのではないかという感じがします。

〔部会長〕

J委員が最後におっしゃったところは、一方で今、政府あるいは自民党などで検討している話というのは、従来流の例えば雇用調整助成金というのはなくすとか少なくする、その代わりに、リエンプロイメンタル対策をやろうという、かなりそっちの方向に動いているわけです。

経済審議会も、エンプロイヤビリティという言葉をこの中で使ってもう数年になります。

具体的に年金のポータビリティの問題などを含めて、具体的にそれを進める方向をきちんと入れていかなければいけないということなのでしょうね。

今までいろいろお話があった中で、何人かの方がおっしゃったのは、従来の総括のところで、バブルの本当の種というのはもう少し前にまかれたのかもしれませんが、特に現象としてバブル化した80年代と、その後のところなどについて、少しきちんと言うべきではないかということ。また、それに絡んで、あえてシステムという言葉を使うのであれば、政・官・財、特にその中での官の役割の問題とか、あるいは官・政府その中での仕組みとか、民の中の仕組みとか、そういうシステム的なところをもう少しきちんと。旧のシステムはこうだったから、それではダメで、新しいこういう潮流に対してはこういう仕組みでとか、こういう新しい主役を中心にとかいうことを、もう少しきちんと言うべきではないかというお話があったような気がします。

それは特に、第2章の「あるべき姿」に絡んでも、その辺はきちんと入れた方がいいのではないか。

それから、C委員が最初におっしゃって、今、J委員もおっしゃったのですが、G委員もちょっと触れられましたけれども、多様な知価社会に絡んでだけで技術ということなはなくて、技術そのもののウェイトというもの、それを越えてかなり大きな1節なり何なりを設けてもいいぐらい重要な位置づけにあるのではないか。

グリンースパン、今もお話がありましたが、それを受けて、この間もJPモーガンの国際諮問委員会でも、あえてニューエコノミーとは言いませんでしたけれども、そう言っていいぐらいに、従来のを越えたようなインパクトを持ちつつあるのではないか。

これはいい例かどうかわかりませんが、例のチャールズ・シュワークというトレーダー、あそこのマーケットバリューはこの2年ぐらいに、めちゃくちゃに増えているのですが、その8割というのが、とにかくインターネットトリーディングだという。

だからといって、一事が万事と言ってはいけないけれども、かなりそういうインパクトというのは、従来考えていた技術のインパクトよりははるかに広範で大きいのではないかという意味から言うと、インターネットばかりではありませんが、今後のこういう経済社会とか経済を考える上で、技術の位置づけというのは、もう少し重要な位置づけを与えてもいいのかもしれないという感じは私もします。

〔事務局〕

2、3ご説明申し上げたいのですが、たくさんご意見をいただきましたので、それを踏まえて素案を作らせていただきます。

それから、科学技術の話、技術の話でございますが、「考えるにあたって」のときは、1つ科学技術という技術のチャプターを起こしておりまして、今回は、全体の構成に気を取られ過ぎて、少し不注意で落ちているように読めますので、それはきちんと立てたいと思います。

それから、これはイメージを持っていただくというように、最初に申し上げたのですけれども、今書きつつありますものの一部を抜き出したりしておりまして、そのため、まさに鳥瞰図としてご覧になりにくかったのかと思います。それで、いろいろおっしゃった中で、政府の役割、個々の政策の優先順位づけ、これだけをご覧になると「いろいろ書いてあるね」という感じがあるのではないかと思います。その点は書き方を工夫したいと思います。できるだけ、この政策方針の中に入りますものは重要なことに絞って書きたいとも考えております。

それから、F委員がおっしゃった、第3部「経済新生の政策方針」ところに、民間の事柄も入っているのではなかろうか。そこは政府に限定してはどうかというご指摘でございますが、ここは、他の部会の方の整理との関係もありまして、政策方針としても少し民にも求めるというものも入ってこようかと思いますが、その点、もう少し精査をしてみたいと思います。

いずれにいたしましても、ご意見を踏まえまして素案を作ってまいりたいと思います。

〔部会長〕

それでは、時間もまいりました。大変貴重なご意見をたくさんいただいてありがとうございました。

最初にご説明したように、次回は、6月11日金曜日の15時から、部屋はこの特別会議室(436号室) でございます。

今いただいたご意見などを踏まえ少し中身を入れたものをご案内をしたいと思います。

それでは、第13回の企画部会の審議はこれで終了いたします。どうもありがとうございました。

以上