グローバリゼーション部会(第7回)議事録

時:平成11年5月21日

所:官房特別会議室(436号室)

経済企画庁

グローバリゼーション部会(第7回)議事次第

日時 平成11年5月21日(金)14:00~16:00

場所 官房特別会議室(436号室)

  1. 開会
  2. 議題:グローバリゼーション部会報告(素案)について
  3. 閉会
    (配付資料)

    グローバリゼーション部会報告(素案)

グローバリゼーション部会委員名簿

部会長

八城 政基
シティバンクジャパン会長

部会長代理

田中 明彦
東京大学東洋文化研究所教授

糸瀬 茂
宮城大学事業構想学部助教授

國谷 史朗
弁護士

高阪 章
大阪大学大学院国際公共政策研究科教授

篠原 興
国際通貨研究所専務理事

下村 恭民
政策研究大学院大学教授・埼玉大学教授

高木 剛
ゼンセン同盟会長、連合副会長

中西 輝 政
京都大学総合人間学部教授

浜 矩子
株式会社三菱総合研究所経済調査部長

ロバート・アラン・フェルドマン
モルガン・スタンレー証券チーフエコノミスト

グレン・S・フクシマ
アーサーD・リトル(ジャパン)株式会社取締役社長

松本 大
ゴールドマン・サックス・グループLPリミテッド・パートナー 

若林 之矩
労働福祉事業団理事長


〔部会長〕

それでは、時間がまいりましたので、ただいまから、第7回のグローバリゼーション部会を開催させていただきます。

 本日は、ご多用中のところご出席賜りまして、誠にありがとうございます。

 それでは、早速ですが、本日の議題に入ります。本日は、前回に引き続きまして、「グローバリゼーション部会報告(素案)」に関しまして議論をいただきたいと思います。

 議事は、前回の議論に基づいて修正された部分等を事務局から簡単に説明していただいて、あとはページ・バイ・ページで、皆さんのご意見を伺い、場合によっては議論していただく。今までのように皆さんからコメントをいただいて、事務局がそれをその後の審議、あるいはドラフトに反映させるというよりも、皆さんの間でいろいろ議論していただいた方がいいのではないか。1ページずついきますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、事務局から、「グローバリゼーション部会報告(素案)」の修正ポイントを中心に、ご報告いただきたいと思います。

〔事務局〕

それでは、お手元の資料に基づいてご説明いたします。

 前回の素案に対して、いろいろな意見をいただきました。修正の箇所は、主要な部分については下線が引いてございますが、そのほかにも、趣旨そのものは変えてございませんけれども、表現の仕方を適切にするといったことで変更している部分もございます。特に部会長の方から、前回の素案に対して少し読みづらいというご意見もございまして、できるだけ読みやすくという趣旨で手を加えておりますけれども、まだ十分ではないというところもあると思いますので、そういう点も含めてご意見をいただければと思います。

 全体の素案の構成については、将来の方向付けを行っておりました第2章と、それに基づいて具体的な姿を論じている後の各章との間にリスクの話が挟まっていて、非常に流れが悪くて理解が難しいということがございまして、リスクの部分は一番後ろに移しております。それから、この報告の趣旨を明らかにするという意味で、「はじめに」を加えております。それぞれ本日、皆様に修文の部分は初めてご覧いただくことになると思いますけれども、大体ざっと読みながら聞いていただければと思います。

 まず、「はじめに」のところで、1ページですけれども、趣旨を加えさせていただきました。特に目新しいことが書いてあるわけではありませんけれども、グローバリゼーションの進展に伴う国際競争圧力の強まり。その結果、これまで国際競争の対象外に置かれていたような分野でも競争の波にさらされている。そういう例として、各国の市場の制度やルールも競争から無関係ではないと、まず1パラで述べております。

 また、そういうことで各国政府に制度の見直し、あるいは企業への厳しい効率化への要請がグローバリゼーションに伴って起こってきている。グローバリゼーションの成果のあらわれ方が国によって違う。うまく対応できたところと、そうでないところで非常に大きな違いが出てくる。また、情報通信技術等の革新が、金融危機にみられるように世界経済への不安定要因となるということも述べている。そういうことで、国際的な制度、ルールのあり方や我が国も含めたそれぞれの国の経済社会のあり方の見直しが迫られている。そういう認識を示して、本部会で、我が国の世界における役割、アジアにおける役割、我が国自身の改革という3つの観点から検討を行って、提言をまとめたということを初めに書いております。

 次に、まず1で「グローバリゼーションの進展と国民経済-現状認識-」。ここでは、前につけておりました「要約」の部分も含めまして、G委員の方から、例えば経済合理性といった意味や言葉遣いについて幾つかコメントもございました。そういう意味では、「要約」をここにつける必然性も必ずしもないということで、今回は「要約」はここから外しております。

 さらに、(2)に関して、3ページの上の方になりますけれども、例えば生産の派生需要である雇用ということの意味合いがどうかといったコメントもございましたので、上から3つ目のパラは、趣旨は変えたわけではございませんけれども、わかりやすく表現の変更を行っております。

 同じ3ページの下線が引いてある部分でございますが、これは何名かの委員からコメントがありました。グローバリゼーションの進展に伴って、国の意味合いが薄れてきているけれども、かえって地域の意味合い、地域と世界との直接的なつながりが強まる。そういう認識を書くべきだということで、下線部のような表現でその趣旨を入れております。

 4ページにまいりまして、第2パラグラフで、コメントを踏まえた修文をしております。1つは、多国籍企業の立地が進んで、それによって影響を受けることを、以前の文章では途上国を中心に表現がされていたわけですが、その影響は先進国も同様に受けるわけですので、そういう意味で、「多国籍企業の立地を首尾よく受け入れた先進国、開発途上国が高成長を遂げる一方、取り残された諸国、特に開発途上国は」云々という言い方にしております。

 その2行下で、「グローバリゼーションの根底に流れている効率性の追求のメリット」という表現がございますが、ここはレッセ・フェールという表現をして、レッセ・フェールというのはわかりにくいということもございましたので、「効率性の追求」という言い方にしております。

 その1行下で、国、政府の役割が相対的に低下しているという面もあるけれども、むしろ強まっている面もあるということで、「グローバリゼーションのメリットを活かし、デメリットを抑えるための国際間及び各国内での制度やルール作り」について、「政府の役割は以前にも増して大きい」という認識をここで示しております。

 5ページにまいりまして、(3)の「グローバリゼーションの中で「豊かで開かれた経済社会」を創造」するというところで、第1パラグラフは若干わかりやすくということで修文しております。その下の下線の部分の中で、「異質な文化や多様性を許容する開かれた経済社会」ということをつけ加えておりますけれども、グローバリゼーションの進展というのは、「世界を一様にしていく」と捉えられやすいので、そうではないということを書いておくべきだという指摘がございまして、ここに入れております。

 以上が、「21世紀初頭の我が国経済社会の姿」でございます。第2章の後にありましたリスクは後ろに持っていきまして、それを受けて、まず、コア・メンバーとしての世界での我が国の役割をその下に持ってきております。

 コメントに応じて修文したところは、7ページの下の方でありますが、「IMF等による公的支援が投資家のモラル・ハザードを生み出す」といった指摘もあるわけでありますけれども、その指摘を行った後で、次に、IMFに対し補完的な地域の危機管理ということを書いていたわけですが、モラル・ハザードの後にその話がくると意味が通じにくいということでご指摘がございましたので、そこは削除しております。地域的な危機管理の話は後ろの方で述べておりますので、重複を省くという意味でもここは削除するという措置をとりました。

 8ページにまいりまして、②の下から2つ目のパラグラフですけれども、「金融監督当局が、個別金融機関のヘッジファンド等に対する投融資に係る継続的なモニタリングを実施する」という表現にしております。前回は、ヘッジファンドに対しても当局が直接モニタリングをすると読めるような表現にしておりましたけれども、金融機関に対する健全性規制という、最近議論されている流れで表現した方がいい。ヘッジファンドに対する直接的なモニタリングではなくて、金融機関がどういう貸出をやっているかといった形で、金融機関に対するモニタリングという表現にした方がいいというご指摘がございまして、直しております。

 9ページにまいりまして、上から2つ目のパラで、途上国なり市場経済移行国なりでの自由化プロセスを記述しているところでありますけれども、十分な管理体制が整わないうちに自由化をする、特に短資の自由化をするということは望ましくないのだということをもっと強く表現しておくべきであるという指摘がございまして、下線部のように、「これらの体制整備を抜きにした自由化は望ましくない結果をもたらすことになろう」という表現をしております。

 (3)の「対外的な情報発信の在り方」の①ですが、対外発信を日本語で行うというのは適切ではないのではないかというご指摘もありまして、2行ほど削っております。この部分は、②で日本語の利用ということが書いてございますので、削らせていただいております。

 10ページにまいりまして、我が国を「世界における知的活動のハブ」的なものにしていくというところで、これは外国人労働者の我が国での受入れのところでもコメントをいただいておりましたけれども、人材の育成ということを考えれば、外から受け入れるだけでなく、日本からも積極的に留学等の機会を通じて外に行くことが重要であるという指摘もありましたので、「諸外国への留学機会の拡大支援」ということを入れております。

 13ページにまいりまして、4番目の章立てとして、アジアにおける我が国の役割の部分でございます。(1)の一番最後のパラグラフになりますが、アジアにおける共同市場を形成することを念頭に置いて、まずその一歩として、「韓国との二国間における環境を整備していく」ということで、実際そういう動きがあるのかどうか。韓国側はそれについてどういう受けとめをするだろうかというご質問、あるいはご懸念もございました。これは実際に昨年来から韓国の方が、二国間、我が国との間での共同市場ということも念頭に置いて協議を進めていこうではないかということを提案してきておりまして、我が国としてもこれに応え、二国間で話が進められつつあるという状況になっておりまして、そういう状況を踏まえて書いているものでございます。

 (2)の「アジア地域における通貨金融危機防止への枠組み作り」のところで、14ページになりますけれども、これは指摘がございまして、円の国際化について前回は触れていなかったわけですが、「「円の国際化」を進めることも必要であろう」ということを入れております。

 5の「グローバリゼーションの中で「豊かで開かれた経済社会」を創造」という章でございますが、最初のところは表現を少し簡略化しております。

 15ページにまいりまして、ここは以前は「企業のグローバリゼーション」と、労働市場の話として「雇用の安定と流動性の確保」、3番目で「外国人労働者と移民」ということで3つの柱立てをしていたわけでありますけれども、「雇用の安定と流動性の確保」でいろいろなご意見をいただきました。我々、グローバリゼーション部会の中で、我が国の雇用制度のあり方のそもそも論まで踏み込んで考え方を明らかにするということは必ずしも必要ではないのではないかというご示唆もいただきまして、一方で、この面で重要なのは、外部労働市場の整備であります。外国企業が日本に来た場合に、人材を容易に調達できるといった観点からの外部労働市場の整備は必要なわけでございますので、そういう中身に改めております。そういうことで、見出しとして、15ページの(1)ですが、「企業と人のグローバリゼーションに対応した政策」という表現にしておりまして、①で「企業のグローバリゼーションに対応した政策」を述べており、これは中身は前回と変えておりません。②で「人のグローバリゼーションに対応した政策」という見出しにしております。②は、「企業のグローバリゼーションは、同時に人のグローバリゼーションももたらす。我が国の企業が諸外国へ進出することに伴い、多くの日本人が進出先国で働くことになる一方、諸外国の企業が我が国へ進出した場合には、それに伴って多くの外国人が我が国で働くことになる。したがって、これらの外国人労働者が働きやすく、生活しやすい環境を整えることが必要」と述べております。16ページにまいりまして、「より多くの外国企業が日本に進出してくるようになるためには、労働市場において当該企業が必要な人材を確保できる状況を作り出す」ことが必要であるということを認識として述べた後で、1)で「外部労働市場の整備」ということで、そのような条件を作り出すということを1つ述べ、2)で「外国人の居住環境の整備」ということを述べております。

 次の(2)で、前回は「外国労働者及び移民への対応」という表現にしておりましたけれども、外国労働者という表現が、いかにもいわゆる単純労働をイメージしやすいというご指摘もありまして、「外国人労働への対応」という言い方にしております。例えば①では依然として「外国人労働者」と書いておりますけれども、そこは「専門的・技術的分野」と限定しておりますので、そういう誤解はないだろうということでそのままの表現にしております。この部分で、16ページの一番下のバラですけれども、留学生等に対して宿舎の整備等の支援の充実が重要であるといったご指摘もございまして、付け加えております。

 最後に、リスクを一番最後の6章に移してきておりまして、17ページになります。リスクへの対応の中で、前回の素案では、国際機関を通じた多国籍の対応といった視点が出ていないということもございましたので、その趣旨をそこに、「国際機関を通じた多国間の枠組みによるもの、地域的もしくは二国間の協力関係によるもの、そして我が国単独で実施するもの」がありますよということをまず触れて、あとはそれぞれのリスク及び対応につなげております。リスクの部分では、まずリスクを列挙して、それからまた対応をまとめて列挙するという形をとっておりましたけれども、そこも離れてわかりづらいということで、それぞれの問題ごとにリスクとそれへの対応ということを書いております。また、食料問題のところは、リスクの対応のところで若干書き加えております。

 以上のような修正を行いましたけれども、なお委員のご指摘を十分に受け切れていないところもあると思いますし、また、文章表現等でも十分にこなれていないというものもあると思いますので、それらも含めてご意見をいただければと考えております。

〔部会長〕

どうもありがとうございました。

 前回同様のことなのですが、本部会の資料は非公開となっていますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、先ほど申し上げましたように、セクションごとに皆さんのご意見をいただきたいと思います。あるいは皆さんの間で議論をなさっていただくのがいいのだろうと思うのですが、私自身は、この前のいろいろなご意見を出されたのを踏まえて、事務局はかなりよく修正してくれたという印象を持っています。大変読みやすくなったことは事実で、しかも、ある意味ではコンパクトになっていると思います。ですから、つながりがきちんとロジカルにできていると思いますので、その点、事務局は、恐らく夜遅くまで何日かかかってなさったに違いないと思うので、部会長として一言お礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。

 では、まず最初に、「はじめに」が1ページ目にありますが、どうぞご自由にご発言いただきたいと思います。

〔A委員〕

「はじめに」についてということなのですが、少し全体の構成について申し上げたいのですが、非常によく整理されたと思います。リスクを後ろに回し、途中にやや何となくペシミスティックなムードが漂うのが大分改善されたという感じがいたします。

 それから、途中の大きい項目の3、4、5の位置付けが、世界における役割、アジアにおける役割、我が国自身の改革という3つの流れに沿ったチャプター立てになっておりまして、それも非常に読みやすいと思うのですが、全体を見ますと、3の(3)の「対外的な情報発信の在り方」、それから、(5)の「新たな国際経済協力の在り方」。これらはどちらかというと我が国の改革の部類に入るのではないかという印象があります。第3章の「世界経済の発展と安定化」云々という問題、「世界経済のコア・メンバーとしてのアジア地域における役割」という第4章の位置付け、第5章の「豊かで開かれた経済社会」を創造するという我が国自身の改革の問題のバランスをとりますと、5がやや小さいという印象を受けています。例えば一つの代案ですが、3の(3)の「対外的な情報発信の在り方」、3の(5)の「新たな国際経済協力の在り方」。これらを5へ持ってきて、5の(1)、(2)は、我が国の労働市場に関わる問題ですので、これらは一つにまとめ、5については我が国の改革に関するところということで、情報発信の在り方、労働市場の在り方、国際経済協力の在り方、とこのように持ってきたらもっとわかりやすいのではないか。

〔部会長〕

どうぞそれはご検討ください。

〔B委員〕

細かく読むことはできなくて、申し訳ないのですけれども、「グローバリゼーションの進展に伴い」から始まっています。グローバリゼーションの定義をみんながはっきりわかっているという前提で文章が始まっていると思いますけれども、グローバリゼーションという言葉はかたかな言葉で、漢字に直そうと思ったら難しいのです。ですから、どこかで少し短めの定義を入れたらどうか。ではどういう定義がいいかというのは非常に難しいのですけれども、いきなりみんながわかっているような書き方をすると混乱してしまう可能性があるのではないか。

〔事務局〕

2ページの(1)の「グローバリゼーションとは何か」というところで、「グローバリゼーションとは」という定義をしているのですが、これは最初に持ってくるには少し硬い定義なものですから、第1章で述べております。この表現で大体雰囲気がわかるかと思います。

〔B委員〕

この定義を見てピンとこないのですけれども、グローバリゼーションとは、「情報通信コストの低下と各国間の制度上の差異が縮小することによって、グローバリゼーションと呼ばれる流れが加速している」。ということは、グローバリゼーションは流れの種類だということですか。

〔事務局〕

その後で、「ここでの「グローバリゼーション」とは、経済的な側面から、様々な経済主体が効率性の追求を全地球的規模で行うようになることである」と述べております。

〔B委員〕

差異の縮小であるということであればわかります。

〔部会長〕

「はじめに」を読んで、すぐ次のページにいっていただくということを前提にすれば、ここで「グローバリゼーションとは何か」と書いてあることはかなり助けになると思います。後で出てくるわけではありませんから。これでよろしいのではないでしょうか。こういう観念が日本では今までなかったから日本語訳ができないのでしょう。そういう意味では非常に難しいと思いますけれども、第1章の冒頭にきていますから、私としてはそれでご理解いただけると思いますが。

〔C委員〕

「はじめに」の印象と全体のトーンについてですが、受身的で、やや悲観的な要素がまだ相当あるのではないか。

 それをどのように修正すればいいかというのは私もよくわからないのですけれども、例えば「はじめに」の文章のどこかに、もう少しグローバリゼーションというのはいろいろ可能性がある、いろいろ経済的にも社会的にも文化的にも繁栄できるポジティブな側面もあるということをもう少し強調した方が、読者としても将来がもう少し明るいという印象を受けるのではないかと思います。もちろんポジティブな面も少しありますけれども、圧力や競争が激化して、メリットがすべての国で一緒に発揮されるわけではない。何となくゼロ・サム的な要素が相当あるという印象を受けるのです。

 なぜこれを感じるかといいますと、一番最後に移されましたリスクの部分の、例えば労働者、あるいは情報通信のことなのですけれども、最近、アメリカに行って非常に印象的に感じるのは、特に情報通信に関する社会における影響が大変明るい。国民経済に大変貢献して、いろいろな形で産業も繁栄して、とにかく非常にポジティブな面が強調されているわけなのです。それがすべてではないし、もちろん多分リスクもいろいろあると思いますけれども、今の日本の経済の情勢のことを考えた場合、特にグローバリゼーションというものが、危険がたくさんあって、非常にゼロ・サム的ということを強調されますと、さらにもっと暗くなってしまうのではないかという懸念が少しあります。もしできましたら、「はじめに」のところにもう少し、グローバリゼーションというものはいろいろリスクもあるし問題もあるかもしれないけれども、大変いろいろな意味でポジティブな側面もある、可能性もある、それで、国、あるいは企業、個人として、しっかりいい選択をすれば非常にいい結果にもなる可能性があるという、ポジティブな面を少し強調していただきたいと考えます。

〔部会長〕

今のC委員の意見に対して、どなたかご意見があればお願いします。

〔D委員〕

グローバリゼーションだ、マーケットだ、と言われて浮かされた結果が、しっぺ返しを食らった危機であったというのが、アジアの国々、円のグローバリゼーションというものの今日的なインプリケーションであると言っても過言ではないと思います。

 したがって、グローバリゼーションとして語られているテーマの中に、C委員が言われたようなポジティブないいきっかけになる、あるいはいいきっかけを作るモチベーションとなるところが大変にたくさん含まれていることは認めるのにやぶさかではありません。グローバリゼーションというのが、例えば比喩的に言えば、ウォールストリートの民間企業の私利私欲の追求のために使われてきたターミノロジーであったという見方もできなくはないといったことから、あまり手放しのグローバリゼーション賛成、グローバリゼーションであれば多分何でもうまくいくだろうという書き方は、むしろ僕は反対したいと思っておりました。しかし今C委員が最後の方で言及されましたので、部分的に賛成です。

〔E委員〕

基本的にC委員のお話に僕は賛成なのですが、もしそれを入れるとすると、続き言葉として多分自己責任まで触れなければいけなくなると思うのです。そうすると逆に、いいところを話して、その裏側に必ず自己責任があるということまで触れないとそのストーリーは完結しないので、それをここでやると少し長くなるから、むしろ触らなくてもいいのではないか。

〔F委員〕

私はわりとC委員の意見に賛成でありまして、「はじめに」のところは、もう少しグローバリゼーションのいいところを前に1行、2行、書いていただいてから始めたらいいのではないかと思うのです。「グローバリゼーションの進展に伴い、国際競争の圧力が強まっている」というところから入るのが本当にいいかどうか。後ろの方で、日本人が発信能力を持たなければいけないとか、日本が知的な活動のハブにならなければいけないと言っているわけですけれども、こういうことは、圧力があるから仕方がないから、発信能力を持たなければいけない、あるいは知的なハブにならなければいけないというのは、やはり変な話です。そもそも発信していけば、我々の見方その他が世界に広まっていく機会があり、日本人がそうやって世界中に行っていろいろな活躍ができる。これがグローバリゼーションの特徴で、グローバリゼーションがあるからこそ、うまくやっていけば日本も世界の知的な活動のハブになることができるのだし、それはそれ自体として望ましいことなわけですから、そういうオポチュニティーの増大を、もう1センテンスぐらい入れていただいた方がいいのではないかと思います。

〔G委員〕

確かにグローバリゼーションの捉え方には、立場など含めていろいろなものがあるような気がします。一般的に、例えばアメリカン・スタンダードとか、アングロサクソン・スタンダードということに収斂していくことがいいことだというような捉え方です。今はいろいろな捉え方がある時期かと思います。少なくともここ2~3年のアジアや日本の議論の中では、結局光と陰と両方だという捉え方で、いかに陰の部分をコントロールできるか、できないのか、あるいは制御できるのか、できないのかということについて、まだコントロールできるのだということが実感できていない人が、国民の中の圧倒的な比率を占めるのだろう。ポジティブな可能性があるということをお書きになるなら、それがゆえに起こってくる制御しなければならない部分について、こういう制御、考え方が要るのだということも併せて書いていただかないといけないのではないか。あまりポジティブには、少なくとも私自身はそうは受けとめられない現象に現在ぶつかっておりますということを訴えたいと思います。

〔A委員〕

私も基本的にはC委員、F委員と同じ意見であります。

 デメリットをコントロールできないというリスクの問題が起こっていることは確かだと思いますけれども、とにかく我々は今一つの不可逆的な動きに直面していて、それはプラスにもとれるし、マイナスにもとれる。特にプラス面が非常に大きいということは、べつにグローバル化ということは、アメリカン・スタンダード化と直、捉えなくていい部分をたくさん持っていると思います。それは我々が非常に知的な資源を非常に簡単に受けているということ。例えば学生が修士論文を書いていくときに、今までだったら、取ってくるだけで随分時間がかかった統計資料を非常に簡単に手に入れることができる。最先端の情報やアイデアも簡単にアクセスできる。こういうことはすばらしいことであって、しかも、そういう動きはいろいろなところで現れ、それがある意味では古いシステムを揺るがしている。古いシステムがどこに問題があったかを明らかにしたある意味ではプレッシャー、刺激というものをポジティブに捉えないでおいて、リスク面だけを書くというのは、基本的には問題だろうと思います。

 その意味で、「はじめに」のところは、我々の今の気分をかなり反映して、危機やデメリットをコントロールできないのではないかということが、非常によくわかりますけれども、それをいかに利用するか、そして、そのことに伴うリスクはどうコントロールしたらいいのかということを書いていただいた方がよろしいかと思います。

 また、もう少し現状から距離を置いて、中長期に見ればいいことがたくさんあります。例えばよくなっていくということはどういうことかというと、非常に低賃金で肉体的な痛みの大きいような職業にたくさんの人が就かなければいけないという状態をなるべく少なくしていくということは、よくなっていくということだと思うのです。そういった圧力をうまく利用して、それで人々がより快適に、より自己実現できるような、そういう動きがグローバル化だと思いますし、そういう力をうまく利用するためには何をしたらいいのか。そういうポジティブな方向性をもう少し出された方が、よくバランスのとれた報告書になるのではないかと思います。

〔H委員〕

私も同じような観点からのプラス方向をという意見なのですけれども、今、グローバリゼーションがどういうことを引き起こしているのか。これは現状の問題と、それをどのように捉えていくのかという問題は全然違う問題でして、いわゆるグローバリゼーションと言われているものが起きていること、日本の経済や国民生活に影響を及ぼしていることは否定しがたい事実です。これがいいことなのか悪いことなのか。これは賛否両論あると思うのです。これは現状把握の問題なのです。それとはまた全然別の問題として、ではこれからどうしていくのか。それをプラスにとらえていくのか。グローバリゼーションから距離を置いて、マイナスの方向に離れていくのか。これはまた全然別の視点なのです。日本が明治以来とってきたのは、明らかに前者、プラス方向の視点ですし、それで成功してきた。今後もその方向付けでしかあり得ないと思うのです。日本みたいな小さな国が世界の中で生きていこうと思うと、選択の余地はあまりないと思うのです。そうしますと、これはポジティブ、プラス的に捉えるしかない。

 シンガポールという国がありまして、シンガポールは日本よりずっと人口規模も小さいですし、市場もありません。ただし、日本よりもずっとその辺の意識はプラス指向でして、むしろアジアを引っ張っていく、日本よりもアジアの中心になろうという意識がある。例えば空港のハブ化や経済の情報化、コンピュータの利用など、あらゆる国家組織等の面で積極的に世界の模範となろうというシステムを作っているのです。そういう意気込みを各種レポートや発言等から見ますと、このレポートですと非常に弱いと思います。日本ほどの力のある、また、前向きにいかないといけない国が、シンガポールという国が作るレポートと比べてみると、数段劣るようなトーンなのです。ものすごく力がない。小結と横綱ぐらいの感覚のレポートの差があるような感じがします。

 ですから、私は何ももっと強調しろというわけではないのですが、二者択一を迫られたら、ポジティブで前向きにいって、もっと積極的に、むしろ利用してやるのだというぐらいの気概がにじみ出るようなレポートというのが望ましいと思っています。

〔I委員〕

私も、グローバリゼーションに関しては、プラス、マイナス、どちらかというと絶対プラスで受けとめるべきであり、流れがあるので、何らかの形で対処しなければいけないのは間違いないことだと思います。

 あとは、「はじめに」の部分については特に強い意見はございません。

〔J委員〕

私は、この前文でいいのではないかと思いますけれども、基本的にはグローバリゼーションというものは一つの現実なのだと思います。我が国のみならず、グローバリゼーションというものをどう受けとめていくかということは、各国の識者、ある意味では積極的に、ある意味では消極的に、ある意味では戸惑い、対応している問題のように思うのです。ですから、基本的にはこれを事実として受けとめて、もちろん対応するときには、マイナスに対応していくといったことはないわけですけれども、事実として受けとめ、しかも、やや中立的にものを見ていく時期ではないだろうかと思っております。そういう意味では、ややG委員のお考えに近いのではないかと思っております。

〔部会長〕

1ページだけに大分時間を使いましたけれども、これは意味のあることであって、実は「はじめに」というのが何をこの部会として言おうしているかをあらわしていると思うのです。

 ここで時間を使いましたけれども、皆さんのご意見をまとめた感想としては、恐らくグローバリゼーションという一つの大きな世界の流れが現実にあるのだ。その流れに対して、日本はどのような方向付けをしていったらいいのだろうか。単に反応するのみならず、日本の将来を考えたときに、どうしたらいいのだろうかということを、この部会は恐らく求められていると思うのです。グローバリゼーションはすべていいのだ、ということを前提にした議論をするわけではもちろんありませんが、そうではなく、グローバリゼーションという流れに対して、日本の将来をどう考えるのですかという話があって、問題があるとすれば、それに対しては対策をとらなければいけないという話だろうと思うのです。ですから、「はじめに」のところはそういうプラスのことを書いていただきたい。恐らくC委員の印象は、第2のパラグラフで、「それぞれの国民の生活水準の向上や経済発展に寄与することが期待されるが」、「全ての国で一様に発揮されるわけではない」と、そこでトーンダウンしてしまうから、それで少し弱いというご意見を持っていらっしゃるのではないかという感じがします。もう少しプラスの面を出すということは、同時に、プラスの面は出し、しかしながら、こういった問題があり得る、あるいは起きている、それに対して我が国としてはどうすべきかということを言う方がよいのでは、と思いますが、いかがでしょうか。

〔C委員〕

私もそれでよろしいと思いますが、ただ、先ほど申しましたように、「国際競争の圧力」、あるいは「グローバリゼーションのメリットをすべての国が一様に発揮されるわけではない」、あるいは例えば私が最も関心のある情報通信のパラグラフを見ますと、すべてこれはネガティブなのです。情報通信の結果というのは、まさにアジア通貨危機であった。それも事実かもしれないです。ただ、それに対比して、情報通信によっていろいろいいこともあるわけです。ですから、ほんの1つのセンテンスか2つのセンテンスで、もう少しバランスをとっていただければと考えます。私もグローバリゼーションがバラ色でいいことばかりだとも考えていませんが、多分日本の読者から見ますと、これでは大変暗い、ネガティブな印象を受けてしまう可能性があります。まさにF委員がおっしゃったように、積極的に日本が参加して、発言して、発信して、貢献してという、そういう意欲も少し薄くなってしまうのでは、という懸念が個人的にあります。

〔部会長〕

どなたかほかにこの問題についてありますか。もしなければ、今までのご意見を踏まえた上で修正を図っていただいたらどうでしょうか。要するにポジティブな方向に持っていく必要があるということだと思うのです。世界の流れがそうだとするならば。しかし、こういうところにいろいろ問題がある、ということはあまり書かず、むしろ問題がこういう分野にあり、それについては対策をとるべきだ、という書き方がよいのでは。

〔事務局〕

確かにいろいろ今ご意見を伺って読み直してみて、明るい部分がなく、おっしゃるところは確かに感じますので、それを踏まえて書き直してみたいと思います。

〔G委員 〕

皆さんのおっしゃることもわからないでもないのですが、例えば情報通信技術の問題にしても、その技術の進歩がいろいろ変えていくだろう。ただし、現在それが使われて現に起こっていることが問題なのです。うまく使われている部分はものすごく人間のためになっている。そうでない、結果的にそういう手段があるから何をやってもいいのだ、というところを世界的に制御できていない面が多い。ですから、これは不可逆的な流れだということについて私どももそう認識しなければいけないと思っております。

 もう一点。第1パラグラフのところで、人が国を選ぶ時代という表現をされています。1億 2,500万人で、国を選べる人はどれぐらいいるのだろうか。これは非常にシンボリックに書いていると思うのですけれども、とりわけ言葉の問題等を抱えている圧倒的多数の日本国民は、逆にこの37万平方キロの中で生きていくしかない。そういう人生の設計しかできない人が圧倒的に日本国民の中には多いのです。

〔部会長〕

わかりました。多少いろいろなところに筆が走ってしまったというところがあるかと思いますけれども、そういうところは気をつけて、もう一度読み直していただくことにしたいと思います。ただ、G委員のおっしゃったのは、情報通信の分野について、短期資本市場の問題ですね。これは規制をする方法を考えるべきなのです。ただ、それをやめると言っても、実はやめようがないのです。なぜかというと、自分の家で何でもできてしまうわけですから。それをやめさせることはできないけれども、資本の短期移動によって起きる問題を、どうやって弊害が起こさないようにできるかということは考えるべきことなのです。だから、通信技術が悪いのではなく、その結果として起きる問題のハームをできるだけ最小限にするということだろうと思うのです。それはかなり書いてあると思うのです。例えば新しい金融・資本市場の中で、監督や規制体制、あるいはリスク管理体制を作らなければいけないということを書いており、かなりバランスはとれているのではないかという印象を持っていたのですが、もう一度よく読み直していただきたい。

 それでは、次はページごとにいかずに、第1の「グローバリゼーションの進展と国民経済-現状認識-」について、ご意見を伺いたいと思います。ページで言いますと4ページの中ほどまでです。ないようでしたら、次の4ページの2の「21世紀初頭の我が国経済社会の姿-グローバリゼーションの中で我が国が目指す方向-」。この点について何かご意見があればどうぞ。

〔A委員〕

1の現状認識で、3ページにアンダーラインが引いてありまして、「グローバリゼーションの進展にしたがって、経済活動にとっての国境の意味合いが薄れてきており」とあります。それはそのとおりですし、私が前回申し上げた、グローバリゼーションの中でローカルな話も浮き彫りにされてくるといったことは先ほどのご説明の中で、国境とは別の、もっと国境の中の地域の問題として浮かび上がってきているという捉え方でお話をなさったと思います。私が申し上げたのは、そのことももちろんありますけれども、企業活動はかなり国境を意識しないで、わりと自由にボーダーを超えて行くわけですが、先ほど人が国を選ぶということに対するご批判がありましたが、それはある意味ではそのとおりです。人はそんなに自由に動けない。企業活動も人間の社会生活も国がまだ一つの単位になっていて、福祉やナショナル・ウェルフェア等を考える主体も、ネイション・ステートのガバメントがあるという現実がまだ非常に強く残っているわけであります。

 その意味では、企業が国を選ぶのに比べると、人が国を選んだり、あるいは国が雇用問題を考えたりというところで、非対称な現実があると思います。そのことを「国境の意味合いが薄れた」という企業活動の面だけに力を入れてやると、非常に片手落ちである。企業活動が非常にグローバル化していく中で、人がそう簡単に動けなかったり、雇用の問題がそう簡単に解決できなかったりする。そこで人々が職を変えるというのはそんなに容易なことではない。企業が製品の種類を変えるのに比べると、人が職業を変えるのはよほど大変なわけであります。そのことは、特に労働市場に携わっている方から、非常にグローバル化に対してネガティブな意見が出てくる一つの根拠になっているわけです。ただ単に国境の意味合いが薄れてきているというだけで捉えるのは危険であるという認識がどこかにあればいいのでは、というのが、私の印象です。

〔E委員〕

今のご意見と関連ないのですけれども、5ページの(3)の「グローバリゼーションの中で「豊かで開かれた経済社会」を創造」の2行目から3行目。「経済の制度やルールをグローバリゼーションに対応したものに変革していく」。言わんとすることはまさにグローバル・スタンダードだと思うのですが、この文章で問題ないと思うのですけれども、特にグローバル・スタンダードという言葉を使わなかった理由は何ですか。それが難しければ、いわゆるグローバル・スタンダードという言葉でもいいと思うのですが、もし意図的に使われなかった理由があるのだったら教えていただきたいと思います。

〔事務局〕

グローバル・スタンダードという言葉は、ここでもご議論いただいたことがあると思いますし、別途の構造改革部会の方でも、グローバル・スタンダードについてご議論いただきました。

 そのときにいろいろなご意見が出て、グローバル・スタンダードという言葉の受けとめ方がかなり人によってまちまちでありました。それをあえて使わなくても議論ができるのであれば、むしろグローバル・スタンダードという言葉は避けて別の言葉で表現した方がいいというのが、事務方のいろいろな検討の結果でありました。そういう意味で、構造部会の方でも、あえてグローバル・スタンダードという言葉は使わないで、別の表現でそれぞれ言いたいことを表現している。できればグローバル・スタンダードという言葉は、あまりにもいろいろな意味で受けとめ方がなされますので、使いたくないというのが事務方の考え方でございます。

〔部会長〕

それでよろしいですか。

〔E委員〕

はい。

〔部会長〕

では、それでご了承ください。

 先ほどA委員がおっしゃった、あるいはG委員が最初におっしゃった、人が国を選ぶということは、やめた方がいいと思うのです。そう簡単に、それこそ1億 3,000万人近くの人が自分の住むところ、自分の国を選ぶなどということはできないし、誰もしないと思うのです。むしろ問題は、日本を自分たちが本当にここにいたいと思うようないい国にするのが一番いいと思うのです。だから、人が国を選ぶということは実際的でないし、むしろそれは目的ではないと思うのですけれども、皆さんいかがですか。そういう表現があればやめた方がいいと思います。

〔B委員〕

簡単に2点。今のご発言に対しまして、国を選ぶという表現は、どこに住むかという定義が普通かと思いますけれども、まさに部会長がおっしゃったように、どうやって日本を作り直すかが問題です。だから、人が国を選ぶということは、国作りの問題ではないかと思います。だから、場所的な解釈ではなくて、制度改革。どうやって日本人がこれから日本を変えていくかということが、人間が国を選ぶという言葉の意味ではないかという気がしています。

 もう一つ、3ページのアンダーラインが引いてあるところですけれども、これはまさに内政干渉はどうやってこれから定義するかが問題です。今、スコットランドが新しい自分の地域国家を作っていますし、まさにコソボ問題がこういう内政干渉とは何かという問題になると思いますけれども、そこまで厳しく書く必要はないかもしれません。これは非常に難問です。

〔I委員〕

細かいところなのですが、3ページの今の下線部のすぐ上のところで、「情報の伝播速度の迅速化による国際的な情報集積が可能になると同時に」の後で、「アクセス手段を持つものと持たざるものの間に格差が生じ、情報の過疎化も進展している」とあるのですけれども、情報通信技術がこのように伸びてきた中で、過去に比べて過疎化が進んだなどという事例が本当にあるのか、と思うのです。過疎化がどんどん減っていくだけのような気がしていたのですが、そうではないのでしょうか。

〔事務局〕

私の理解ではこれは2つの意味があると思うのです。例えば国際的にも、必ずしもすべての人がパソコンを使ってインターネットという状況に、リテラシーという問題があって、それのない人とある人の間の情報の格差はかなり広がりつつあるという認識があると思います。また、国の間でも、日本やアメリカのような国と、そうでない途上国で、情報格差が大きく広がってきている。そこから取り残された人なり国なり地域なりは、ある意味で情報の過疎化と言えるような状況になっている。そういう認識を述べております。

〔I委員〕

例えば国内で考えたときに、もちろんインターネットを使っている人と使っていない人がいると思うのですけれども、もともと国の情報について官報などでしか見れなかった時代に比べて、インターネットなどで見れるようになれば、そのときに比べれば、全体で見たら過疎化は減っているわけです。それは格差はあるでしょうけれども、全体で見ると情報はより多く流通できるようになっているので、こういう書き方ですと、かえって情報が過疎化するような感じなのですが、そうではなくて、全体ではよくなるのだけれども、当然手段によって差は出るということで、若干違う気がいたしました。

〔部会長〕

今のご意見、テイクノートしてください。ほかにございますか。

 それでは、3に移りましょう。「世界経済の発展と安定化を積極的に促進するコア・メンバーとしての役割」で、(1)の①~④の部分でのコメント、ご意見を聞かせていただければと思います。

〔A委員〕

2の(1)、(2)、(3)が、ちょうどその次の3、4、5のアブストラクトになっているわけですよね。

〔事務局〕

アブストラクトというよりは、導入部と考えていただきたい。

〔A委員〕

そうとも言えますね。私の印象としては、先ほど申し上げましような整理の仕方で、世界経済における役割、アジア地域における役割、我が国自身の改革、そういう3つの柱になっているのであれば、それをうまくスキームしているのかどうかというところが問題だと思うのです。後の3、4、5のバランスが私は悪いような気がしますので、その意味ではこの2がうまく後につながればよろしいかと思います。

〔F委員〕

前に戻ってしまうかもしれないのですけれども、4ページの2で、私もA委員の意見に賛成で、日本が国内でやるべきことというのは後ろに回した方がいいと思うのです。その面で言うと、4ページの2の(1)の「世界経済の発展と安定化を積極的に促進するコア・メンバーとしての役割」で、第2パラグラフの「グローバリゼーションは」云々とあって、「政府の地位を低下させるが、それは必ずしも政府の役割を減少することを意味しない」という文章が書いてある。この文章はかなり一般論で、先ほどA委員のおっしゃった、国の役割は低下しないといった一般論がここに入っているわけです。ですから、やや論理的に言うと、こういう一般論はもう少し前の方に持っていった方がいいような感じがするのです。特にここは、3で、(1)のWTOの新ラウンドや(2)の国際通貨・金融体制など、そういう国際的なレジームの問題を具体論として述べるわけですから、それが必要だという導入部をここに書かないと具合悪いのではないか。(1)は、国際的なレジームが、今のグローバライズする世界の中で、グローバリゼーションのいい面を伸ばし、悪い面を防ぐためには、整備することが必要不可欠だといったことをここに書いていないと、なぜその中で日本はコア・メンバーとしてやっていかなければならないのかという話につながらないような気がするのです。ですから、少しそのロジカルな、2の(1)が前振りでいくとすれば、3に出てくるものを導入するような書き方にお考えいただいた方がいいのではないかと思います。

〔B委員〕

8ページの②の6つ目のパラグラフ、「具体的には」というところですが、「ヘッジファンド等に対する投融資に係る継続的なモニタリングを実施する等」云々と書いてあるのですけれども、引っかかったところは「継続的」という言葉です。そういう投資家に政府官僚が一人立ってすべてを常に目付け役として見ているという読み方になりますと、相当専制政権的な感じがしたのです。立場上そういうことに敏感だという見方をするのはどうかと思いますが。「継続的」という言葉よりも何かいい表現はないかと思ったのです。例えば、「頻繁に」、あるいは「効果的に」はどうでしょうか。

〔D委員〕

この「継続的」という意味は、毎日毎日、1秒も目をそらさずにという意味ではないと思います。むしろこれはピリオディカルに、例えば年に1回、何年も続けるという意味の「継続的」だと思います。したがって、あまりご心配はないのではないかと思います。

〔B委員〕

はい。ほかの方の解釈はいかがですか。

〔部会長〕

意味があいまいです。どうにでもとれます。これはもう少し言葉の使い方を考えていただいたらどうでしょうか。何を意味されているのか、それを伺った方がいいかもしれないのですが。

〔B委員〕

頻繁的に見るべきということも大賛成です。

〔部会長〕

効果的なモニタリングというのはいいと思うのです。モニタリングしても全く何もわからなかったようなことがかつてありましたので。「効果的」でよろしいでしょうか。

〔B委員〕

はい。

〔事務局〕

今のようなことがあるということであれば、別の言葉を考えたいと思います。効果的という言葉がいいのかどうか。IMFの議論などもされて、わりと英語を日本語に直したところがありますので。

〔部会長〕

では、私から皆さんに意見を聞きたいところがあるのですが、次の9ページの上から2つ目のパラグラフですが、「また、これら自由化のプロセスにおいては、金融・資本市場に対する監督・規制制度やリスク管理体制、借り手の情報開示といった、短期資本の動きを的確に把握し得る体制整備が行われることが前提条件となる」。私が少し引っかかるのは、「規制制度」という言葉は、過去のイメージが強いものですから、はたして言おうとしていることが正確に伝わるかどうか。

〔B委員〕

私がここで引っかかるのは、「情報開示」という言葉はありますし、「把握し得る」という言葉もあるのですけれども、誰が誰に情報を開示するのか。みんなにか、それともそれぞれの銀行、あるいは当局に言うだけか。情報の使い方によってかなり変わってくると思います。即ち、政府がインサイダー情報を自分のために使うという恐れが出てくる可能性があります。ですから、仮に公表するなど、情報を開示するという意味合いならばいいのですけれども、すべての情報を政府がもらい、自分の力を強くするためにその情報を使うということならば、制度が逆に悪化する。そういう心配を私は持っています。

〔部会長〕

どなたか、今のご意見に対してありますか。

〔A委員〕

例えば「金融・資本市場に対する監督・規制制度や」云々というところに、「市場インフラとしての」を入れたらどうでしょうか。つまり市場メカニズムをうまく安全に使わせるための監督規制システムという意味のはずですから。このまま書くともとへ戻ってしまうという印象がある。表現の問題だと思うのです。

〔部会長〕

要するに新しい規制や監督のあり方を言っているのですよね。

〔A委員〕

そうです。

〔部会長〕

情報開示についても同じです。情報開示については、第一義的には投資家であったり、あるいは融資をした人に対して情報を開示するということが求められているのです。今まで情報開示は行われていませんから。アメリカで起きたLTCMの問題も、情報を開示していなくて、投資家も、あるいは金を貸した人も求めなかったところに問題がある。そうだと思って私は読んでいたのですが、この短い文章の中にそれを入れるのは大変苦労するだろうと思いますが、いかがですか。

〔B委員〕

情報公開という言葉を使ったらいかがですか。

〔部会長〕

それは考えていただきましょう。

〔B委員〕

お願いします。

〔H委員〕

少し戻るのですけれども、6ページの②の「また」で始まるところですが、「また、貿易措置(例えばアンチダンピング)についても、競争の観点からの見直しが重要である」。わざわざアンチダンピングを例に出されているのですが、これはアメリカやEUのダンピング制度について、管轄の関係からいくと通産マターなのかもしれませんけれども、少し行き過ぎであるといった申入れが既にされているように理解するのですけれども、そのことを指されているのですか。

〔事務局〕

そうです。

〔H委員〕

このレポートの位置付けと、この短いレポートにそういう格別の問題をどこまで踏み込めるかということはわからないのですけれども、これを読んだだけでは、「見直しが重要である」というのが、どの辺まで何を指していらっしゃるのか全然わからない。少なくとも普通の方が読まれたら多分理解はできないと思うのです。細かく書くということを申し上げているわけではないのですが、このレポートが今後どのように利用されるのかということも含めて、お伺いしたい。

〔事務局〕

言っている意味をわかってもらうことは非常に重要だと思いますけれども、それをすべてにわたって考えると、枚数がかなりのものになる。これはもう少し説明してくれないといくら何でもわからない、と感じられる部分については、趣旨がわかるように書き込んでいきたいと思います。

〔部会長〕

H委員、何か代案がありますか。

〔H委員〕

いえ。大体やむを得ないと思っているのですが、多分短い言葉で書けないのですね。アンチダンピング制度は不当である、と短く書くと、物議をかもすでしょうし。

〔部会長〕

この「例えば」を削除してしまえばいいのですか。

〔H委員〕

「例えば」を削除してしまったら、さらにわかりにくくなりますけれども、それはそれなりに落ち着くとは思います。たまたまダンピングが入っていて見直しと言われているのが、何となく浮き過ぎているという印象がしました。

〔部会長〕

それは事務局の方でお考えいただきたい。

〔H委員〕

ただ、このままで強い異議があるという趣旨ではございません。

〔部会長〕

例えば例を2つ出すという手もあります。

〔事務局〕

アンチダンピングは、日本がずっと前から主張していることです。

〔部会長〕

それでは、H委員、もしよほど強い反対がなければ、これでよろしいでしょうか。

〔H委員〕

かまいません。

〔部会長〕

そうですか。事務局の方でももう一度考えてください。

〔E委員〕

先ほど部会長が指摘された、「規制制度」についてですが、多分言わんとすることは、文章を抽象化するかもしれないのですけれども、信頼性があって、安定性がある金融システムのことを、金融・資本市場に対する監督、規制制度のところまではおっしゃっていると思うので、むしろ金融システムという言葉を使われた方がいいのではないかと思います。

 それから、リスク管理体制が誰のリスク管理体制か明らかではなくて、第一義的に金融機関自身のリスク管理が問題とされるべきなので、それがわかるようにした方がいいと思うのです。

 それから、借り手の情報開示が意味がよくわからない。これは途上国の話で、先ほどヘッジファンドのときには、ヘッジファンドに対する貸し手の情報開示の話をしていたので、この借り手の主体が誰かがわからない。これも何を意図されたか、お聞きしたいのですが。

〔事務局〕

途上国の金融機関が、先進国等の外国から借り入れている。その借り入れた金融機関の資金の使用状況がどうなっているか。そういうことを当局に開示するという意味で書いています。

〔部会長〕

それはできるでしょうか。

〔D委員〕

例えば上場企業の上場基準や、上場のディスクロージャーのシステムなどは国によってまちまちでしょう。これは途上国の、あるいは体制移行国のことを言っているのであって、あなた方は何をどうしようとしているかきちんと言ってください、そうすれば、我々はいわゆるグローバリゼーションという流れの中で、あなた方がどういうところにいるかよく理解した上で、自己責任に基づいたお金は回すかもしれません、という貸し手の情報というのは、上場基準等のディスクロージャーの整備についてのことではないか、翻って日本のディスクロージャーがアメリカに比べたらまだ生温い、ということも指しているのでは。

〔部会長〕

これは貸し手であろうと借り手であろうと、同じことを言っていると思うのです。貸す方が誰に貸すかという決定をするときに、相手についてきちんとした情報を求めるのは当たり前の話であって、あえて借り手の情報ということをここで言う必要はないように思うのです。相手がどのようなリスクを負っている借り手であるかということを理解せずに貸すところに問題がまずある。皆さんのおっしゃることはよくわかりますので、それを踏まえた上で文章は考えていただきたいと思います。

〔事務局〕

誰を念頭に置いて書かれているのか、何をどうしろと言っているのかということがわかるように直します。

〔部会長〕

お願いします。

〔C委員〕

先ほどのH委員のご意見で、貿易措置に関してですけれども、私はできましたらこの例を取っていただきたいと考えるのです。これは明らかに日本とアメリカの政府の間で長年議論されていることなのですけれども、貿易措置に関するいろいろな論点はアメリカと日本、あるいはアメリカとヨーロッパ、OECD、WTO、いろいろなところであると思うのですけれども、ただ、1つだけの例をこのように取り上げるということは、明らかに少しバイヤスがかかってしまうので、むしろもう少し中立的にするために、この例をできましたら削除していただきたいと思います。

〔部会長〕

今言われたことですけれども、これは日本の経済審議会の中の部会ですから、日本の立場でこういう問題があるのは書いてもおかしくないと私は思いますが、いかがでしょうか。

〔C委員〕

それは結構です。もしそうであれば私は、この点に関しては反対意見があったということを示していただければ結構です。

〔部会長〕

それを始めると、たくさん出てくると思うのです。我々はみんな一委員です。全員が賛成するというところまでなかなか最後はいかないと思うのです。だから、皆さんのご意見次第ですけれども、この例を取ってほしいということについて皆さんがよければ、私は全くかまいません。しかし、これは日本政府が既に主張しているのなら、皆さんがこれは入れておいた方がいいという意見なら、入れておいた方がいいのではないかと思います。

〔C委員〕

ですから、一番簡単なやり方は、例を取って、貿易措置という問題があるというジェネラリックの形で示すことに関しては全く問題ないと思うのです。一つの例としてこのように出すということに関して、この報告書が発表されるとき、私はこの報告書に対して、例えばインタビューを受けるとき、この問題については私は実は反対意見があったということをはっきり言わせていただきます。

〔部会長〕

それは結構ですので、おっしゃっていただいて全くかまいません。事務局はどうですか。アンチダンピングを例にしたことについての議論は一度もしなかった。これは何か理由があるのですか。

〔事務局〕

これは第3回の部会において、通産省の方が来たときに、アンチダンピングの話は出たように記憶にございます。今、C委員がおっしゃられたことは、部会長がおっしゃられたように、反対意見をここに書き込むのは少し技術的に難しい面もあるので、公開される議事録に、個人名は出さないのですが、こういう反対意見もあったということは書けます。

〔部会長〕

ただ、C委員は、報告書についてインタビューを受けたときに、自分は反対であったということを言いたいと先ほどおっしゃっていました。それは全く問題ないと思います。

〔C委員〕

最後に1つだけ。少し飛んでしまうのですけれども、一番最後のリスク要因に関して、これは言葉遣いのことですが、食料問題と、エネルギー問題、地域紛争・移民問題、情報通信技術問題。「問題」と言っているわけです。食料問題とエネルギー問題は、限られた資源の一つのプロブレムだとは言えると思いますし、3番目の地域紛争、あるいは移民の問題は、これもプロブレムとして多分捉えることが大事ではないかと思いますけれども、情報通信技術問題が、これがイシューとしての問題か、あるいはプロブレムとしての問題かというのが私にはよくわからないのです。むしろこれは情報通信技術の一つの手段、一つの事実であって、それを情報通信技術の政策や整備など、何かもう少し中立的な言葉を使うことができないのか。

〔事務局〕

ご指摘の点はよくわかりますので、工夫してみます。

〔B委員〕

簡単に「問題」という言葉を取ったらどうですか。

〔C委員〕

分野という言葉はどうでしょうか。

〔部会長〕

全部統一しなくてもいいでしょう。例えば難民問題。これは問題ですよね。だから、統一しなくても、すべて問題にする必要はない。

 それでは、あちこちいきましたので、ページに関係なしにご意見をどうぞ。

〔G委員〕

6ページの「投資に関するルールの整備」、「競争に関するルールの整備」という項なのですが、OECDやWTOでも、この辺いろいろ議論になるところだろうと思うのです。投資しやすく、引き揚げやすく、富を送りやすく、といろいろ投資する側の論理はあるわけですが、投資される側の現地の論理との調整は大変でしょう。それで、ただし書きのところに、「柔軟かつ適切な配慮」とありますが、こういうことができるかできないのかという問題もございます。例えばソーシャル・クローズという議論がございまして、来月から始まりますILOの総会で児童労働の問題が議論されます。児童労働で作られた製品の扱い方の問題が、恐らく次のWTOの会議でもかなりの議論になるでしょう。そういう中で、投資するに当たって、行動コンダクトをこのようにしてください、という議論もあるわけです。この文章はどちらを向いて対応するということなのか。どうにでも読める。日本政府はこの辺は今まで、率直にいうと、はっきりしない立場で行動してきたのが実態ではないか。輸出各国の問題等もいろいろな議論がありますが、普遍的な人権と投資、あるいは貿易との葛藤をどうするのかといったことについて、書けるのか書けないのか。私はこれからの時代、書いていくべき時代ではないかと思います。グローバル化ということでこれだけ皆さんがおっしゃるなら、そういう問題からも日本は逃げてはいけないのではないか。もちろん短い文章ですから、包括的なルールの中身を一々書いてもらうわけにはいかないということはよくわかりますが。

〔事務局〕

先般、第3回の部会におきまして、WTOに関する考え方につきまして、関係の役所から説明がございましたけれども、例えば先ほどおっしゃられた労働関係基準を引き下げて、それを外国企業を誘致するインセンティブに使うような話もありかねないので、その辺のところが問題です。ただ、どこの場所でやるかということもございまして、基本的には、WTOで関係する問題を全部できれば一番いいのですけれども、なかなか労働問題につきましては、先ほどおっしゃられましたように、ILOの問題もございますし、フォーラムの問題もございます。これらの点については基本的には、国内の内政問題でございますから、それぞれの国がやるべき問題であります。ここではWTOについての取り組み方ということで書いているものですから、あらゆる関係する問題について全部書き込むというのは難しい面もある。それで、かなり包括的な、「柔軟かつ適切な配慮」云々という書き方で表現しておりますので、それで全部お読みいただければと思います。

〔G委員〕

アンチダンピングではないですけれども、括弧で(例えば)と入れてもらうわけにはいかないですか。

〔事務局〕

そうですね。

〔E委員〕

15ページ、(1)の②の「人のグローバリゼーションに対応した政策」のところですが、2つのパラグラフを削られた理由は、先ほどご説明があったので理解いたしました。個人的には、安定と流動性の言葉の平仄をどう合わせるかというのは、労働移動を図ることによって市場全体の安定を図るという趣旨で、個人的には文章を入れていただきたかったのですけれども、他の部会でやるということであればあきらめます。

 次の下線部の新しく挿入されたパラグラフなのですが、おっしゃることはわかるのですけれども、第一印象が、日本の会社が外国に行くと日本人がたくさん行くとか、外資系が日本に来るとそれに伴って外人がたくさん来るという印象を受けます。今日たまたま朝の「日経金融」で部会長がコラムを書いておられて、日本の銀行が向こうで失敗した例は日本人ばかり行っているからだという話がありましたけれども、そういう印象を持ってしまうのです。本来、日本の企業が向こうに行っても向こうの労働市場を活用するべきだし、外国企業がこちらに来ても日本人を活用するべきだし、現にそちらのウェイトの方がはるかに高いので、少し一工夫されたらどうか、という気がします。

〔部会長〕

1つ質問があるのですが、今の15ページの最後のパラグラフ、アンダーラインしたところです。「諸外国の企業が我が国に進出した場合には、それに伴って多くの外国人が我が国で働くことになる」。ここまではいいのですけれども、「したがって、これらの外国人労働者が働きやすく、生活しやすい環境を整えることが必要である」。この最後のセンテンスは必要ですか。わざわざそんなことする必要はないのではないかと思うのですけれども。魅力があれば来るだけで、魅力がなければ来ません。特別に外国人が生活しやすいようなことをやるというのは大変だと思いますが。

〔B委員〕

出島をもう一回作ってみようという読み方もできますし、国際学校をもっと作ろうといういい意味にもとれます。

〔事務局〕

C委員からの指摘もあって、特別に何かやらなければいけないというよりも、外国人が来たときに日本人が暮らすのと同等に暮らせるような条件を整備する。もちろん言葉のハンデはありますけれども、一般的に言えばそういう趣旨の話で、特別に何かをやるということが書いてあるということではない。

〔部会長〕

この印象は、特別に何かやらなければいけないような印象を受けます。だから、こちらに来たら、日本語を覚えてもらうということが前提だと思うのです。これは少し過剰表現ではないか。

〔H委員〕

ただ、物理的環境を整えるという趣旨以上に、ここは日本語としてはもう少し広い趣旨を含んでいると思います。例えば余分な法規制とか、日本人にはなくて、外国人に対する不合理な規制なり届け出なり、そういうものがあってはいけないという趣旨からすれば、残しておくべきではないか。日本語の「環境」というのは、いろいろな意味で使われると思いますので。

〔事務局〕

それはおっしゃるとおりの趣旨で書いております。要するに外国の人が日本で働くときに、日本人が働くのと大体同じような環境条件にするということです。

〔部会長〕

それは不利な立場に置かれないように、必要だと思います。

〔事務局〕

そのときにもし法的なことで、いわば外国人であることで非常に障害になるようなものがあれば、それは除くということも当然この中に含んでいます。

〔A委員〕

そのように、差別的な環境があればそれをなくすというふうに書かれた方がいいのではないでしょうか。このままでは、何か特権を与えるみたいに思われるのではないか。

〔I委員〕

一番最後の(4)「情報通信技術問題」の②の「リスク対応の方向」。20ページの最後ですが、電子商取引や、認証、暗号といった話に関して、そういうリスクをなくすように事業者がしっかりしなければいけない、とあります。このように書く以上は国もある程度の形でそれを、保証はできないでしょうけれども、何か関与していくといったイメージだと思います。実際にはこの手のことに関して完全なものを作るのは恐らく不可能であって、常に技術は追い掛けてきて新しい技術があるでしょうから、そういうリスクがなくなる方向にしなければいけないという捉え方はかなり無理がある。もちろんこういうことはやらなければいけないのですけれども、同時にどういうリスクがあるかということをしっかり公表し、説明し、あるいは何か事故が起きた場合の責任の分担を予めしっかり明らかにしておくべき。絶対防ぐことは不可能なので、起きた場合にある程度自己責任をとってもらわないと仕方がない部分もあると思いますし、そういった観点をつけ加える方がいいと思います。

〔部会長〕

非常にいいポイントだと思います。

〔J委員〕

先ほど6ページの投資ルールのところでG委員がおっしゃった点につきまして、私はこの原案でいいと思っております。G委員のおっしゃることも十分に理解できるわけでございますけれども、この問題はILOの仕事として処理をしていく。ILOは、各国の労使関係、労働条件の問題について大変長い歴史を持ち、また、大変苦労してきている国際機関でありまして、日本も実はその対象となって挙げてございますけれども、大変忍耐強く問題の解決を図ってきているわけであります。若干時間はかかるという点はありますけれども、間違いなく物事は前進してきていると思っております。したがいまして、この点はILOの努力、また、ILOを前面に立てた各国の努力、労使の努力に委ねるべきではないか。そういう意味で、私はこの原文でいいのではないかと思っております。

〔D委員〕

金融問題についていろいろなところでいろいろな格好で書かれています。取り上げ方、問題意識、あるいはそこに盛られているテーマが、我々にとってどういうインプリケーションを持ち、これを読んだアジアの国々がどう考えるかということまで思って見ても、比較的うまく書いてあると思います。

 1箇所だけ引っかかっているとすれば、7ページの①「国際通貨・金融体制の改革」の最終行の「地域別に管理メカニズムを」の「管理」は、英語にすると何になるのか。管理というのは、ある種見ているだけで、ここで考えているのは地域のメカニズムであって、後ろの方に出てくるアジア通貨基金として呼ばれるようなものの創設であるとすれば、それはいわゆる一般的な日本語の管理を超えたファンクションを持つものである、と思いました。

〔部会長〕

「管理メカニズム」の「管理」という言葉を使わないで、おっしゃることをあらわす言葉はありませんか。

〔D委員〕

あまり説明的になっても仕方がないとは思っています。IMFの機能は危機管理の機能もあるというところで管理という言葉も使われているものですから、それに引きずられればいいのかなという感じもします。

〔部会長〕

これはマネージメントメカニズム、マネージメントシステムという意味なのですか。アドミスレイティブという意味ではなく、マネージメントですか。

〔D委員〕

ええ。英語でそういう感じの言葉であればいいと思います。

〔部会長〕

ではマネージメントシステムだと理解しましょう。

〔G委員〕

管理や規制というニュアンスの言葉を、それぞれで使い分けておられるのだろうと思いますが、いわゆるサーベイランスなのか、レギュレートなのか、コントロールなのか。簡単に書き分けるのは難しいのかもしれませんが、どれだろうと思うところが1、2箇所ありますので、一度吟味していただいたらと思います。

〔部会長〕

今のご発言は非常にいいポイントだと思うのです。レポートを最初から全部読み直していただいて、例えばコントロール、アドミストレーション、マネージメント、サーベイランスといった言葉が、英語からきた場合に特に具合い悪いのです。英語を離れても日本語で本当の意味を伝えられる方法をとった方がいいと思います。

 それでは、今日は少し早めに終わります。当初の予定では、最終回が6月18日4時30分~6時で、21日以降私が公表するということになっていたのですが、諸般の事情により、今後の日程の変更があります。6月18日(金)は通常の部会として、さらに直された案文を検討していただく。その際に、各関係省庁からのコメント等があれば、事務局からご紹介いただけるだろうと思います。したがって、最終回は6月下旬から7月で検討ということになるようですので、スケジュールが遅れます。最初は5月の中旬で終わる予定だったのがだんだん延びてきたので、皆さんのお時間をいただいて恐縮ですが、できるだけ満点に近いものを作って、何か世の中にインパクトを与えるようなものにしていった方がいいのではないかと思います。

〔事務局〕

お気付きの点があれば、メモででもいただくと私どもとしても大変ありがたいので、ぜひよろしくお願いいたします。

〔部会長〕

次回は、6月18日午後4時30分~6時。場所は、今回と同じ経済企画庁官房特別会議室436号室を予定しております。別途開催通知は郵送させていただきます。

 それでは、第7回のグローバリゼーション部会の審議はこれで終わりにしたいと思います。本日は、どうもありがとうございました。

以上