第6回経済審議会グローバリゼーション部会議事概要

1.日時:

平成11年5月14日(金) 14:00~16:00

2.場所:

中央合同庁舎第4号館共用第2特別会議室(407号室)

3.出席者:

(部会)八城政基部会長、糸瀬茂、國谷史朗、高阪章、下村恭民、髙木剛、浜矩子、ロバート・アラン・フェルドマン、グレン・S・フクシマ、松本大、若林之矩の各委員

(事務局)今井政務次官、中名生総合計画局長、川本調整局審議官、高橋総合計画局審議官、牛嶋総合計画局審議官、西経済協力第一課長、大西計画課長、染川計画官、塚原計画官、青木計画官 

4.議題:

  • グローバリゼーション部会報告(素案)について

5.議事内容:

事務局より資料(「グローバリゼーション部会報告(素案)」、「グローバリゼーション部会追加論点(案)」について説明した後、グローバリゼーション部会報告(素案)について、討議。各委員からの主な意見は以下の通り。

・グローバリゼーション部会報告(素案)全体について

  • ◯素案前半について、グローバル時代を論じていながらも文章がグローバル化以前の表現になっている。
  • ◯国の中にある地域経済、地域社会の役割はどうなのかということに言及していただきたい。
  • ◯全体的な書きぶりを、「補完的」から「主体的」に変更。具体的には、我が国から立法、行政に関する国際機関へ人材(特にトップ)をもっと派遣できるような方策を打ち出すべき。
  • ◯中央だけでなく、地方自治体においてもグローバリゼーションに対応した方策(外国人の住居、教育環境の整備、情報発信等)ができるような予算配分等の仕組みを作るべき。
  • ◯概念的なものが多いので、どう実現するのかということを、ぜひ最後にでも書き込んで欲しい。
  • ◯文章が難しい。柔らかい表現で読み易くして欲しい。
  • ◯構成上、方向付けと役割が離れており、その間にリスクが入っているので分かりにくい。方向付けと役割を一緒にした方がいい。

1.「グローバリゼーションの進展と国民経済-現状認識-」について

  • ◯グローバル化とは、一様にグローバル化する側面と、グローバル化のプロセスの中でローカリティー、リージョナリティーがかえって鮮明になっていくという両側面がある。その側面に対しもう少し配慮があってもよいのでは。
  • ◯レッセフェールと自由化は違う。自由化、規制緩和は、基本的には新しいルールをどう作るか、というイメージ。レッセフェールというと規制も何もなくなるというイメージ。
  • ◯政府の役割は相対的に小さくなるということだが、変化していくのは確か。その変化とは、明確なルールを作るという役割、それを遵守し、それを破る人を制裁する役割、国際間で調整する役割が増えてくること。そういうことも配慮するべき。
  • ◯政府の役割が相対的に低下するということは現状認識として正しい。しからばその政府が主体であるところの経済政策がどういう位置付けをもっていくのか。
  • ◯「生産の派生需要である雇用」という考え方はそもそもいいのか。
  • ◯技術進歩がもたらす分配上のデメリットを解消する際、どんな配慮があるのか。それがなぜグローバリゼーションの進展に伴って生じる所得分配面における変化に対しても同様に求められるのか。
  • ◯デメリット回避のためのガイドラインの記述がない。
  • ◯多国籍企業の立地に関する雇用創出や技術伝播等は開発途上国だけのことではない。むしろ、先進工業国についてもベネフィットが大きい。修正が必要。

2.「21世紀初頭の我が国経済社会の姿―グローバリゼーションの中で我が国が目指す方向―」について

  • ◯我が国が目指す方向として、2010年頃において引き続き世界の経済的な大国であったり、NIEs、ASEANに中国とインドを加えたものに匹敵するという表現は、そこまでは行くが後は衰退するようなニュアンスを感じる。
  • ◯豊かで開かれた経済社会が何をする社会なのか。何を国際社会に対してやりたいのか、メッセージを明確にすべき。
  • ◯「世界の中で流通している思考様式」を我々も受入れ、他の国にも受入れるよう助言していくべきなのか。思考様式の多様化が失われることに問題意識がなく、むしろ一元化に参画するようなイメージがある。

3.「21世紀初頭の世界経済―リスク要因とその対応―」について

  • ◯リスク要因に対する対策に共通することは、二国間あるいは多国間の国際協力の重要性、国際機関の役割。それを全体な姿勢として打ち出せば、文章を理解し易くなる。
  • ◯情報通信については、リスクを強調しすぎて悲観的な印象を受けるので、どこかに積極的な可能性としての情報通信というプラスの記述を入れて欲しい。
  • ◯リスクについては、かけ離れた話になっているので、リスクをどう少なくするのかという方向にしたらどうか。
  • ◯政治的な手段による紛争予防措置とあるが、具体的にどういう対応を想定しているのか。
  • ◯在留邦人の安全問題に対する対応はどうするのか。

4.「世界経済の発展と安定化を積極的に促進するコア・メンバーとしての役割」について

  • ◯現在、IMFの経済調整プログラムがどういう問題点を持ち、そのためにどんな議論が必要なのか。
  • ◯セーフティネットを作れば作るほどモラルハザードの問題も起こってしまう。そのトレードオフは絶対無くならない。
  • ◯生命保険やミューチュアルファンドや年金基金などが機関投資家と呼ばれており、ヘッジファンド的なものまでが機関投資家と呼ぶのが適切なのか。基本的には、国際投資家のビヘイビアが国際金融システムにどういう悪い影響があるか、それをどうやったら取り除けるのかということなので、「機関投資家等」あるいは「国際投資家等」の方が適切では。
  • ◯IMFに関連したモラルハザードについて論じるかと思いきや、地域的な管理メカニズム等、IMFと同じ発想の議論に展開している。両者について段落を分けて前半はもう少し説明を加えた方が話が通りやすい。
  • ◯金融機関がヘッジファンドに投融資を行う際には、当該金融機関に情報開示を求めた方がよいのでは。
  • ◯途上国への知的支援とあるが、今後助言できるとすれば、リスク管理体制などが整うまでは自由化しない方がよい、というべき。今後途上国が短期資本の移動に対してどう対応したらいいか伝わるよう明確にすべき。
  • ◯海外において日本語教育を促進する理由に情報発信を挙げるのはどうか。海外に対する情報発信は、英語でやるのが効率的で、日本語でやるのは非現実的。
  • ◯グローバル社会に対して知的インプットをしていける存在でありたい、ということを言うことは必要。教育まで遡ってしなやかな知性を持って論議に貢献できる人間形成を考えていく必要がある。

5.「世界経済のコア・メンバーとしてのアジア地域における役割」について

  • ◯「韓国との二国間における環境を整備」とあるが、これは既に韓国に相談しているのか。
  • ◯経済発展段階が日本と比較的近い韓国でなく、むしろ最も遠いところとの二国間における環境を整備するほうが建設的。
  • ◯資本の大量かつ急激な流出入だけがアジア通貨危機の原因のような表現が出てくるが、他方、後述では、いろいろな要因があり、資本の大量かつ急激な流出入が直接的な引き金となったという書き方になっており、後者の方が客観的で公平な見方である。

6.「グローバリゼーションの中で「豊かで開かれた経済社会」を創造」について

  • ◯単語として流動性と安定性とを一緒に消化するのは難しいので、一工夫しては。例えば仮に今失業率が8%に上がったとしても、失業期間が短く、流動性が高ければ問題は少なく、固定化してしまうと問題となる。
  • ◯雇用の流動性と安定性という言葉の使い方はもう一工夫いるのでは。
  • ◯今後人口が減少する中、限りある労働資源の社会的に最適な活用を促す観点から雇用システムを構築することは重要。
  • ◯雇用の維持を重視するという日本の経営のあり方を大切にするべき。それを前提として雇用の流動性を位置付けていくべき。
  • ◯アメリカのように外部労働市場に調整を委ねるようなシステムを中心にしていくことは、日本の将来に大きな問題を残す。この雇用の流動性と安定性の議論に入る前に、そういった趣旨のことを書きこむべき。
  • ◯基本的には労使が雇用の維持を重視するという認識がないと雇用の安定はありえない。
  • ◯新しい職場を求めたい、やむをえず企業から外部労働市場に出て行く、という時にしっかりした制度を作ることが重要。
  • ◯雇用の流動性や労働移動がどこまで分析されているのか。雇用の流動性という言葉を吟味すべき。根本的に雇用問題の捉え方が違うのでは。
  • ◯年金のポータビリティの確保云々前に、中小企業の人々はその対象となるものさえ持っていないことが多い。退職金のないところも多い。これは一部の人のニーズであり、全体的なニーズについてはどう考えるか。
  • ◯年金生活者と現役の労働者が敵対関係にならないように総資産に対するリターンを上げる必要がある。
  • ◯退職金、年金の権利をどうするかをはっきりし、資源の再分配ができるようにすべき。
  • ◯「外国人労働者・移民」というとアンスキルドレイバーのイメージがある。「外国人」の方が適切。同様に「専門的・技術的分野の外国人労働者」は「専門的・技術的分野の外国人」が適切。
  • ◯外から企業や人を受入れるという視点だけでなく、日本人をもっと外に出すという視点も必要。
  • ◯外国人労働者や移民に関する政策の透明性と情報開示について、国内だけでなく国外に対しても情報開示していくことが必要。

・グローバリゼーション部会追加論点(案)について

  • ◯経済成長と移民とを因果関係として捉えるのはどうか。
  • ◯人口減少対策として外国人労働者の受入れを行うことは社会的に大きな摩擦が生じる。また、現実性に乏しいと思う。
  • ◯人口成長が「自然にマイナス」とは、動かせない事実のような書き方。そうではなく、もっと子供を産みたいというような環境を整えるためにどうすればよいか、などの少子化対策を先に考えるべき。
  • ◯グローバル化を論議している片方で、規模の経済がなくなるという閉鎖経済的な発想があるのは奇異。
  • ◯一人当たりの経済成長がプラスになるのが当然望ましい。むしろどのくらいの成長を目指すのかという政治的意思の問題。客観的にみても先進国の成長パターンが長期にマイナスというのは政策の失敗以外考えられない。
  • ◯産業構造の高度化と高付加価値化は関係がない。
  • ◯移民の受入れによって、受入れ国だけでなく、送出し国の人的投資・人的資本蓄積による成長努力が失われる可能性がある。
  • ◯人口減少を補正するための移民受入れという発想には違和感がある。
  • ◯人口成長がマイナスになるという問題があるのなら、それが大きくならないための対応策はいろいろあるかと思うがその中で移民の話だけが出てくるのはバランスを欠いている。
  • ◯留学生受入れの問題について、ソフト面だけでなく、住宅を中心としたハード面を強調してほしい。
  • ◯移民という考え方の前に、一人当たりの生産性を上げるにはどうすればよいか、女性の活用、日本にある労働リソースの最適配分といった方策を最初に議論すべき。

6.今後のスケジュール:

次回のグローバリゼーション部会(第7回)は5月21日14:00~16:00に開催する予定。

なお、本議事概要は、速報のため、事後修正の可能性があります。

(連絡先)

経済企画庁総合計画局国際経済班

Tel  03-3581-0464