第5回 経済審議会 地域経済・社会資本部会議事概要

1 日時:

平成11年4月22日(木)14:00~16:00

2 場所:

経済企画庁共用特別第二会議室(407)(第4合同庁舎4F)

3 出席者

(部会)

森地茂部会長

安土敏、石川嘉延、井上繁、北村浩子、小林重敬、坂本多旦、戸所隆、中邨秀雄、長谷川逸子、林淳司、溝口薫平 の各委員

(事務局)

今井政務次官、中名生総合計画局長、高橋審議官、牛嶋審議官、大西計画課長、林部計画官、安井計画官、涌野計画官、佐久間計画官

4 議題

  • 21世紀型社会資本整備のあり方について

5 議事内容

 事務局より資料2「21世紀型社会資本整備の在り方についての主な論点」について説明。これらに対する各委員からの主な意見は以下のとおり。

  • 国と地方公共団体との役割分担については、全般的に正しい議論であると思うが、今後大きな時代の変わり目においては、リスクの大きな社会資本など、国が当面先駆的に役割を負うべき分野があるはずである。そういう観点があるということを付け加えるべきである。
  • ハード中心の発想からハードとソフトを対等に考える発想の転換が重要である。デザイン、設計等について、より従来以上に使いやすさを重視して計画を決めていくべきである。つまり、従来はハードの付随物としてとらえられていたソフトについて「ソフトの独立」という視点で考えていくことが重要であると考える。また特に介護や福祉の分野では、施設の整備に加えて運営に人手が多くかかる。そういう運営維持費を含めたトータルな公共支出を考えていくべきである。従来のような予算計上の在り方を見直すべきである。
  • 国と地方公共団体との役割分担において、地方公共団体に社会資本整備を任せることになる場合、その社会資本の維持管理がその地方の経済状況に影響されるため、社会資本の現状について、地方間で格差が生ずるおそれがある。地方分権の推進も重要であるが、国がこういう格差をどうするのか、明確にすべきである。また、景観配慮はメンタルな部分にも関連するので、社会資本整備の中でどのように取り組むのかトータルに考えなければ、せっかく整備された社会資本が機能しなくなるおそれがある。
  • 統合補助金の活用については、これを適用するときに、補助金の配分に当たって、事実上事業の見込みの積み上げを前提としていては、従来の補助金と変わりがなく中央省庁がコントロールするだけになってしまう。配分の基準は、一定の客観的な指標、例えば年齢構成、人口等を中心とすべきである。また、社会資本の運営は人材が重要である。そのためにも人材育成、つまり教育投資が大切。施設をマネジメントする人材の育成を公共、PFI、純民間のいずれが行うのかはともかく、そのような視点が必要。
  • 景観配慮、ソフトとハードの問題、人材育成等は施設等を設計する者と施設等を利用する者の対話により解決しなければならない。施設等を造る段階で、利用する者の代表者ではなく、具体的に直接利用する者や生活する者の声で対話するシステムを構築することが重要である。
  • 景観配慮や緑化政策は、本来、その地方の風土や自然を愛でるという意味の観光政策を考えることにつながる。観光は広い意味で1次産業であり農業や漁業にも関連する。またその地方の伝統文化、歴史にも基づくものであり、また国定公園等環境政策にも関連する。しかし、外国人を迎えるには、お粗末な状況。そのため、観光を運輸省や建設省だけでなく、文化庁や環境庁等々をも含んだ広い視点で考えて海外から日本を見てもらう必要があるのではないか。
  • 「観光などに予算を使うのか」というような議論がいまだにある。従来のように補助金等に代表されるようないわゆる供給サイドの金回りではなく、地方に金を回したくなるような、そこで消費することで金が回るいわゆる消費サイドの金回りが機能するようなシステムの構築が必要であると思う。
  • 観光、文化、楽しさの点でも人材養成が大切。例えば、グリーンツーリズムにしても、現在の農水省の補助金で充分対応できるが、問題はそれを引っ張る人材をどう確保するかということ。歴史や風土に代表される地方の美しさは、国が一元的に決定するのではなく、地方ごとに競争させればより望ましいのではないか。その競争のためにも、重要な経済の一分野である観光や文化を支える人材養成が必要であり、大学で重要性を説いてみてはどうか。
  • 社会資本整備でいかにして地方や時代の差異に対する感度の良さを引き上げるか、という発想がないと画一的な整備に流されてしまう。そのためにも管理の段階からではなく、社会資本整備の企画立案の段階で魅力ある人材がいることが必要。また、楽しい空間という意味では、日本は、国内で経済活動をする外国人に楽しい空間を供与するという点で他国に遅れをとっている。
  • 21世紀の社会資本整備を論ずる前に、「20世紀に対応損ねた部分に対応する」という、いわば過去を手直しするという視点も必要なのではないか。また、我が国は私権が強いと言われているが、政策実現をするために報酬と罰金の制度を設け、マーケットメカニズムを活用するのも1つの方法ではないか。さらに、外国人にも分かりやすいように交通標識に少なくとも英語と中国語の標記を加えるべきではないか。
  • 20世紀は地域の進出の時代であり、21世紀は地方に回帰してくる時代であると思われる。地方の都市を考えた場合、公共交通をどうすべきかという視点が必要で、ここに公的資金を導入する制度も確立する必要がある。地方都市の中心部を人が歩かないのはおもしろくないからであり、東京は楽しいから自然に歩いてしまう。また21世紀は知的インフラ、人材育成等の社会的インフラが重要になると思われるが、人材が中央に吸い上げられて帰ってこない。これをどういうように解消するか。
  • 高齢社会と公共交通を考慮すると、路面電車の普及が環境面から見ても望ましい。また日本の道路が外国人から見て分かりにくいことへの対応としては、道路を記号と番号で区分けするとよいのではないか。また、地方交付税制度は、地方の国への依存体質を助長する構造である。「地方交付税等の一般財源の確保」という視点と、「自己決定と自己責任システムの確立を図る観点から、地方の住民の受益と負担の対応関係………」という視点は矛盾しているのではないか。21世紀に向けて必要になるのは、後半の視点であり地方で必要なものはある程度、地方独自で稼いでいく、そしてこれが地方の課税自主権につながるのではないか。
  • 観光は関連産業のすそ野が広く、経済波及効果も高いことから地域の活性化にとって重要産業としての位置付けが必要。従来の定住人口中心に代えて、今後は交流人口を中心とした投資を拡大し、観光立県、交流立県といった視点で魅力ある地域づくりをすることが重要。その際、既存インフラの活用、交流人口を中心とした産業連携、顧客の視点による個性化が重要。これが産業連携にもつながり地域の魅力を高め、都市づくりが促進される。また、観光産業で潤っている地域は、過疎地域であっても過疎債が発行できない。隣の過疎の町村が過疎債を活用してハードの施設が整っているのに、観光産業で潤っている地域はソフトは充実しているが、ハードは整っていない。こういう矛盾を解消するためにも地域連合が必要である。
  • 社会資本整備のシステム論はソフト面の議論であり、大切なことである。時間管理概念に加えて、社会的コストの一つである、行政の許認可の標準処理期間を設定することが重要である。また、アカンタビリティーに関連して、外国の公共事業の場合に街角に貼られるポスターのように、当該工事の担当者の名前や写真等の連絡先等も公表するのも一案である。そうすれば当該工事の責任者が誰であるのか明確になり、顔の見える行政が実現される。
  • 日本人は文化的に芸術を好むのに、芸術や芸能、文化、歴史というものに国が支援していくという視点が従来から欠けている。また地方には立派な文化的施設があるのに、それを運営する行政側が専門性に欠けている。
  • 公共交通に関して言えば、政策的にアメとムチを採用するのも一案である。例えば、自動車を保有することに対して保有税を課し、それにより自動車の保有数を抑えるべき。また1人当たりの費用を示すことで、政策的に何らかの費用概念を示し、利用主体に対し費用意識をもたらすことも必要ではないか。
  • 高齢化・長寿化の進行により余暇が増大したのではないか。21世紀には文化面や芸術面に注力していくべきである。関西の千里ニュータウンは40年前に整備されたのであるが、今は若者が流出し、高齢者だけが残っている。今後更なる高齢社会を迎えるに当たって、こうした所の整備を確実に行っていくことが重要ではないか。
  • 国民は、社会資本整備は、経済対策のためであるという認識を持ってしまっている。以前のように、住民が公の意識を持ち、自分のこととして取り組むよう、国、県、市町村、住民の役割区分を明確なものにしていく努力が必要である。
  • 事業評価制度の議論は重要であるが、客観的な評価システムの導入に徹底すべきである。例えば、地方で空港を整備する基準を、過去のデータやトレンドに求めがち。将来的にその空港を整備することでどういう効果が生まれるのか、これは不確定要素も含んでいるが、こういうものを考慮に入れて慎重に議論すべきである。また、時間管理概念では、なぜそもそも5年とか10年とかかかってしまうのか、という議論が必要。例えば、同種の公共工事であれば、通常他の地域や外国では何年でできるとか、そういう比較検討も必要。
  • 英国の鉄道の評価基準は、そういう将来的な見込みも考慮されている。時間管理概念を導入した入札制度も検討すべき。
  • 公共工事が遅れる原因の大部分は、用地買収が遅れるためである。時間管理概念を導入した入札制度は興味深い。
  • 時間管理概念というような議論は民間事業者からすると考えられない。民間事業者は、事業用地が全部買収できないからといって、そのまま放っておくことなく、他の利益の上がる方法に使用し、少なくとも金利分だけは稼ぐ。時間管理概念ではなく、もう少し採算意識をもつべきである。
  • 時間管理概念も大事であり、民間の採算意識も大事であるから、公共工事をPFIで、という議論の持って行き方も重要。また、アカウンタビリティが重要であり、地方公共団体の職員の説明能力が低いことが多い。
  • 国と地方公共団体の関係では、「自己決定と自己責任システム、受益と負担」の視点は大切であるが、これを財源の面からいかに実現していくかという方法論が必要。現在は、地方交付税のように国が配分しているが、将来的にこれを全く止めてしまえば、地方公共団体は何もできなくなる。財源の再配分の方法論を議論すべきである。

(本議事概要に関する問い合わせ先)

経済企画庁総合計画局社会資本班

堀江

TEL:03―3581―0764