第5回構造改革推進研究会議事概要

1.日時 :

平成11年4月13日(火)10:00~12:00

2.場所 :

合同庁舎4号館共用第1特別会議室(404号室)

3.出席者 :

水口弘一部会長、五十嵐三津雄、岩田一政、江口克彦、加藤秀樹、リチャード・クー、草野厚、清水秀雄、中条潮、中村靖彦、長谷川公敏、濱田康行、村井勝の各委員

今井政務次官、中名生総合計画局長、牛嶋審議官、高橋審議官、荒井計画官、涌野計画官、佐久間計画官、安井計画官、林部計画官、佐久間計画官、渡辺電源開発官、岩瀬計画企画官他 

4.議題 :

  • 「環境と調和した経済社会を実現させるための構造改革」について
  • 「構造改革の経済効果についての数量的な分析」について

5.審議内容 :

(1)「環境と調和した経済社会を実現させるための構造改革」について

 事務局から資料2について説明。これに対する各委員からの主な意見は以下のとおり。

○ タイトルに「環境と調和した経済社会」とあるが、ここではエネルギー問題やCO2問題等は取り上げないのか。 

→(事務局)地球環境問題の中でも現在特に問題となっているリサイクルに焦点を絞って重点的に議論をしていきたいという趣旨。

○ 地球環境問題等に係る他省庁の議論の成果も盛り込むのか。

→(事務局)最終的な計画には入れて行きたい。

○ 社内調査によると、パソコンで最も環境負荷が大きいのは廃棄段階ではなく、使用時の電力消費。

 社内で日・米・欧を比較すると、欧州は廃棄物の受け入れ体制が整っており、経済全体では廃棄物が出ないような仕組みが確立している。これに対し、日本は個別企業の企業努力に任されているという印象。廃棄物の受け手企業をモチベートする仕組みと法律の整備を進めれば、中小企業が廃棄物削減・リサイクルに取り組みやすくなるのではないか。

 また、過剰な包装が放置されているが、是正に向けて何らかの運動が必要ではないか。

○ 参考図表17について、感覚的には、廃棄物処理を進めるとその分コストがかかり経済活動にはマイナスという印象があるが、そうではないということか。

→(事務局)このままいくとリサイクルコスト以上に処分場コストが高騰するということ。

○ 北海道でも中小企業がリサイクル製品をつくっている事例が結構あるが、最大の問題は官公庁が買ってくれないこと。本ペーパーにあるように、マーク制度、認証制度の整備等により認知を進めることは重要。

○ 食料品は廃棄物となる割合が高いが、コンポスト化等の取り組みは進んでいないのが現状。企業側にメリットがないという意識が強いからである。米国や欧州で見られるように、従量料金制の一般家庭への導入を進めることより、廃棄処分よりもリサイクルの方が安くなれば、自ずと家庭のリサイクルも進む。

○ 各自治体により廃棄物の回収方法、分別のルール、コスト負担の方法等が相当異なることが大きな問題。例えば、川崎市では同じ市内でも北部と南部では方式が異なり、場合によっては店頭に多くのごみ箱を並べなければならない。

 生ゴミのコンポスト化等に当社も取り組んでいるが、価格がバージン肥料の1.5倍にもなってしまうことが課題。

 ベンチャー企業は多くの有用なリサイクル技術を持っているので、公的機関が研究成果を情報公開することも重要。

 企業に環境会計の導入を促し、環境報告書の公開を義務付けるべき。環境への取り組みを経営資源として取り込まないと、国際競争力がつかないという意識が高まっている。

○ 本ペーパーに基本的に賛成だが、抽象的記述が多く具体的イメージが掴みにくい。循環型経済社会を実現するための政策の順位付けを国民に示すべき。

 隣接する自治体で同じような廃棄物処分場が数多く建設される例や、渋谷区の処理場建設反対運動の例をみても、広域行政の視点は重要。

○ 環境問題については総論的には誰しも賛成するが、各論で問題化するのがパターン。従って、具体的政策を示すことが重要。

 日本で資源循環性が低い理由、マテリアルリサイクル率が低迷する理由等は全てリサイクルが商売ベースにのらないため。広い意味での環境税の導入について記述すべきではないか。商売ベースにのればベンチャー等も自然とでてくるはず。

 環境税の導入を議論すると必ず国際競争力が落ちるとの反論がでるが、短期的に競争力が落ちるのは産業構造の変化の一過程にすぎない。環境考慮がデファクトスタンダードになるのならば、できるだけ早く環境税を検討すべき。

 国際貢献の一環として、循環型経済社会への取り組みを率先して行うことも考えるべき。

 産業廃棄物の不法投棄については、規則と罰則を体系的に整備するべき。

 日本では、大気汚染、水質汚濁についての法規制はあるが、土壌汚染に対する法規制がないことが環境汚染をしり抜けにしている面がある。土壌汚染に係る法制化を進めるべき。

○ 基本的には本ペーパーに賛成だが、廃棄物の処理コストが高騰しているというのは本当か。環境対策のコスト、ベネフィットの評価はしっかりと行った方がよい。

 消費者に廃棄物の処理コストを意識させる仕組みを構築することが必要。その場合に、リサイクルと上手く関連づけることが重要。

○ 日本の粗大ごみの大半は未だ使えるもの。粗大ごみのリサイクル市場等を整備することが必要。

 パソコンにみられるように、非常に技術革新が速い時代のごみ処理やリサイクルをどのように製品コストに反映させていくべきか検討が必要。

 例えば、日本の車検制度は廃車を増やす方向に作用していた。制度を少し変えるだけで非常に効果がある場合もある。

○ 本ペーパーに概ね賛成。環境への対応については、国民への啓蒙とともに行政機関の意識の向上が重要。

○ 今までなぜ循環型経済社会への構造改革ができなかったのかを分析することが重要。既得権益の打破について、少しは書き込む必要がある。

○ 環境問題の難しい点は、既得権益を手放すということよりも、ごみの従量料金制のように今まで殆ど支払っていなかったコストの負担を求められることに対する抵抗が大きいこと。新たな負担が必要となることも書き込む必要がある。

○ 「環境と調和した経済社会」というタイトルにもかかわらず、CO2問題等について全く触れないのであれば、その旨整理して記述する必要がある。場合によっては見出しを変えた方がよいかもしれない。

○ 既得権益の打破は重要。新規リサイクル事業者に需要先が見つからないのも、既往の納入業者という既得権益があるから。

○ 米国では、自動車メーカーの部品保有期間が過ぎた後も、特定業者がその部品を購入しストックしているので、何年経っても車の修理ができるが、日本ではメーカーが部品を保有している7年間しか修理ができず、また、その部品が廃棄物となっている。部品ストックの仕組みや、部品保存期間の延長等を検討する必要がある。

 車のエンジンだけを交換し性能アップさせるような、部品を交換して機能を向上させる仕組みの検討も必要。

(2)「構造改革の経済効果についての数量的な分析」について

 事務局より、資料3-1「近年の規制緩和による経済効果の改訂試算」、資料3-2「規制緩和などの経済構造が経済に与える影響について」を説明。これらに対する各委員からの主な意見は以下のとおり。

○ 96-97年度にかけて国内航空分野での効果が著しいが、このころ航空業界では目立った規制緩和は行われていない。これを規制緩和による効果とするのはどうか。

○ 産業廃棄物の問題は、本来、企業で負担すべきであったものがそうしてこなかった結果であり、供給曲線を上にシフトさせると思うが、規制緩和による効果は供給曲線を下にシフトさせるのではないか。

○ 規制緩和がもたらす効果を新規需要だけで見るなら、需要曲線が右にシフトするのは1回限りであり、効果は限定的と思われる。

○ 規制緩和のサプライサイドへの効果としては、TFPが高まる効果と、Distortion(歪み)が排除され経済がフロンティアに近づく効果の2つがある。

○ 利用者メリットに関してであるが、価格低下に伴い経済全体での余剰の増加は、需要曲線と供給曲線の作る「三角形」の部分であることに注意すべき。

○ 統計を取るにあたっては、運輸と通信とを分けるなど、実体に応じた産業分類の見直しを進めるべきである。

○ 携帯電話が爆発的に普及したのは、売り切り制導入のみでなく、技術革新が進んだおかげで半導体価格が大幅に低下したこと、また、同一地域でPHSも含めれば7社で競争させたことなどの結果料金が下がったことによる。

○ NTTの国際通信市場への進出やKDDの国内通信市場への進出は、マーケット全体で見れば大したことではない。それよりも、現在の日本では、通信のネットワークに入るためには必ずNTTを経由しなければならず、そういった面から考えると’99年に予定されているNTTの再編成が大きな転機になると思う。

○ 数字を出す際には悪用されない様に慎重に対処すべきである。そういった例として、2年前の財政再建にかかるものがある。政府は財政再建が可能だといっていたが、結局解決されていない。アメリカでのLaffer Curveの考えも発想はこういったところにあるが、レーガン時代、短期的に効果があるといっていたにもかかわらず、効果が出たのは10年後、つまり現在になってからである。

○ 規制緩和の効果はなかなか目に見えるものではないが、物事にはタイミングがあり、環境の認識が重要である。

○ 金融分野で考えた場合、様々な意味でコストがかかっているこの時期に規制が緩和されると、更にコストが増すことが懸念され、トータル的に見て規制緩和がプラスに働いたのかマイナスに働いたのかわかりにくい。

○ 生産性の上昇が雇用を減らす場合には、受け皿になるのはどういった産業なのかを具体的に記述しないと国民は安心できない。

6.今後のスケジュール :

 次回の構造改革推進部会(第6回)は4月20日10:00~12:00に開催する予定。

以上

なお、本議事概要は、速報のため、事後修正の可能性があります。

(連絡先)

経済企画庁総合計画局計画企画官室

      Tel  3581-0977