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経済審議会構造改革推進部会(第4回)

議事録

時:平成11年3月26日

所:長官官房特別会議室(729号室)

経済企画庁


経済審議会構造改革推進部会(第4回)議事次第

日時 平成11年3月26日(金) 14:00~16:00

場所 長官官房特別会議室(729号室)

  1. 開会  
  2. 議題 「企業や個人の創造性と自由度が高い経済社会を実現させるための構造改革」について
  3. 閉会

(配付資料)

  1. 資料1  委員名簿
  2. 資料2 「企業や個人の創造性と自由度が高い経済社会」を実現させるための構造改革(案)
  3. 資料3  短期集中委託調査「創業・起業に対する日本的風土の改革に関する調査」(中間報告)
  4. 資料4  検討スケジュール
  5. 参考資料 「企業や個人の創造性と自由度が高い経済社会」を実現させるための構造改革に関連する参考資料

経済審議会構造改革推進部会委員名簿

部会長   水口  弘一  (株)野村総合研究所顧問
部会長代理 江口  克彦  (株)PHP総合研究所取締役副社長
      五十嵐  三津雄  簡易保険福祉事業団理事長
      岩田  一政  東京大学大学院総合文化研究科教授
      加藤  秀樹  構想日本代表
      リチャード・クー  (株)野村総合研究所主席研究員
      草野   厚  慶応義塾大学総合政策学部教授
      草野  忠義  日本労働組合総連合会副会長
      清水  秀雄  (株)セブンーイレブン・ジャパン取締役副会長
      中条   潮  慶応義塾大学商学部教授
中村  靖彦  NHK解説委員
      野中  郁次郎  北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科長
      長谷川  公敏  (株)第一生命経済研究所常務取締役
      濱田  康行  北海道大学経済学部教授
      村井   勝  コンパックコンピュータ(株)顧問


〔 部会長 〕 まだ2、3お見えにならない方もいらっしゃいますけれども、定刻でございますので、ただいまから、第4回の構造改革推進部会を開催させていただきます。

 本日は委員の皆様方には、ご多用中のところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。特に、本日は皆出席という予定が、お二方ほど風邪で休まれて残念でございます。

 本日の議題は、「企業や個人の創造性と自由度が高い経済社会を実現させるための構造改革」についてでございます。最初に事務局から説明をお願いいたします。

〔 事務局 〕 お手元にございます資料2と参考資料を使いまして、ご説明させていただきたいと思います。

 資料2「企業や個人の創造性と自由度の高い経済社会を実現させるための構造改革(案)」でございます。

 Ⅰ「企業や個人の創造性と自由度の高い経済社会の姿」ですが、一応読ませていただきます。

 「これからは、我が国経済の活力、競争力を維持していく観点からも、企業や個人が創造的で、自由度が高く多様な選択の機会が存在していることが必要である。

 このためには、企業の面からは、独創的な新技術等を背景に、活発な創業・起業が興り、多様な新商品・新サービスが供給されるようなシステム変革が重要である。また、個人の面からは特定の組織に縛られず、組織からの自由度を高めるための改革とともに、多様な人生の選択のための環境整備が必要である。」

という認識でございます。

 これを受けまして、Ⅱ「構造改革の進め方」ですが、「企業の面からの改革」と「個人の面からの改革」の2つに大きく分けております。

 最初に、1.「企業の面からの改革」ですが、「企業や個人の創造性と自由度の高い経済社会」の構築のために、企業の面からの改革として、「(1)創業・起業の促進」、「(2)新技術・新業態の開発・普及」、「(3)ビジネス仲介機能の強化」の3点から構造改革について検討したいと考えております。

 最初の、(1)「創業・起業の促進」ですが、【1】「基本的な考え方」でございます。

 「創業・起業については、産業における新しい事業展開や雇用機会の創出という観点からその活性化が切望されており、各種の施策が講じられつつある。しかしながら、アメリカに広く根づいているような企業家精神の旺盛な社会的風土が我が国においては大きく劣っているのが現状。

 このため、我が国においても、自らの責任によりリスクに果敢に挑む創業者・起業家が正当に評価され、また尊敬されるという社会的風土への改革を通じて、企業家精神を高揚させる環境を整備していくことが重要。」

という基本的な考え方でございます。

 次のページをおめくりいただきまして、【2】「政策方針の論点」でございます。

○創業・起業に影響する日本的風土として、個性よりも組織を尊重する風潮、若者の大企業志向、敗者復活のビジネス風土の欠如等が大きな要因と考えてよいか。

○シンクタンクへの短期集中委託調査

シンクタンクへ短期集中委託調査を、三菱総合研究所で行っています。「創業・起業に影響を与えている4つの日本的風土と改革方向」を提示しております。詳細については、後ほど三菱総合研究所の方からご説明いたします。

○創業・起業に対する日本的風土の改革を進めていくためには、現在進められている施策で何が不足しているか。また、戦略的に進める必要があるのは何か。

 施策の項目をそこに載せておりますけれども、

・社会のニーズに適合した高等教育

・流動性の高い労働市場

・創業段階における円滑な資金供給

・規制の撤廃・緩和、税制面の支援

・外資系企業、対内直接投資の促進

・ビジネス上の信頼あるセーフティネットの構築

 こういう項目があるわけですが、どういったところで戦略的な施策があるかをご議論いただければと考えております。特に「ビジネス上の信頼あるセーフティネットの構築」が重要と思うわけですけれども、非常に難しい問題でして、どのような仕組みで、どの程度の水準に設定することが必要かということで、現在進められている倒産関連の法制等をどう考えていったらいいのかというところが議論になるかと思っております。

 ちなみに、参考資料を少しご説明させていただきます。1ページ目をご覧いただきたいと思います。これは最近よく出されていますけれども、【1】で、我が国の開業率と廃業率を比べると、ともに低下傾向にあり、かつ廃業率の方が開業率を上回る逆転現象が1989年~91年以降続いている。一方、【2】で、アメリカの開廃業率の推移がありますけれども、アメリカは、開業率が依然として廃業率を上回っているということでございます。

 2ページ目をご覧いただきたいと思います。製造業とサービス業の内訳がございます。1994ー96年のところをご覧いただきますとわかりますが、製造業の廃業率が非常に高くなっております。一方、サービス業については、現時点でも開業率の低下傾向は続いているわけですけれども、開業率が廃業率を上回っている状況にございます。

 3ページ目も簡単にご説明いたしますが、これは会社数ではなくて従業員数ですけれども、我が国においてもサービス業、飲食店、小売業等で雇用の機会が増大しているという図でございます。

 4ページ目もご覧いただきますと、アメリカではどうかということですが、アメリカにおいても、雇用吸収先ですけれども、人材派遣サービス、飲食店、百貨店、映画製作と関連サービス、こういったところでいろいろな業が興っているということでございます。

 5ページ目でございますが、先ほどの若者の大企業志向の1つ例ですけれども、東大、東工大工学部卒業生とMIT工学部卒業生の進路を見ると、MIT工学部の学生は従業員 300人以下の企業であっても3割ぐらいの人が選択しているというグラフでございます。

 6ページ目をご覧いただきたいと思います。これは1997年度にアントレプレナーセミナーに参加した人に対して行ったアンケート調査の結果ですけれども、創業を考えている分野としては、学生では、生活文化関連、情報通信関連、環境関連が多くなっている。一方、社会人では、環境関連、医療・福祉関連、情報通信関連、新製造技術関連が多くなっているということが言えます。

7ページ目、施策に対する要望です。これも同じ調査ですけれども、創業に対する不安材料としては、「資金繰りの難しさ」、「失敗時の多大な金銭的リスク」等事業面のものばかりでなく、「生活の不安定さ」というものも挙げられています。

 それから、公的機関に求める創業支援施策としては、広く資金面での支援を求める声が多い一方で、学生に関しては教育面での充実を求める声もございます。

 8ページ目は、経団連が行った調査でございますけれども、ここでも、資金調達、販売ルートの確保等の要望が出ているということでございます。

 少しとばして、11ページをご覧いただきたいと思います。ベンチャーキャピタル投資状況調査ですが、我が国においては創業初期段階への投資の比率が低いということでございます。

 それから少しとばして、17ページをご覧いただきたいと思います。「倒産法制の見直しの動き」を整理したものです。次の18ページに、3「倒産法制見直しに関する現在の状況と今後の予定」が書かれていますが、現在、法制審議会で倒産法制に関する改正検討事項についての意見照会をやっていまして、この見直しを審議中でございます。これは2000年度中という、まだちょっと先ですが、そこを目標に検討が進めらております。

それに加え、現下の厳しい経済状況に照らし、主として中小企業等を対象とする新しい再建型手続の導入については、今年の夏までに法律案を作成すべく、今、作業が進んでいるという状況でございます。

資料2の方にお戻りいただき、3ページ目をご覧いただきたいと思います。(2)「新技術・新業態の開発・普及」でございます。

 【1】「基本的な考え方」ですが、

 「創業・起業に加え、既存企業での新規事業を促進するため、製造業での技術開発の促進及び開発された新技術の普及に加え、非製造業によるソフトな分野での技術開発も今後一層重要。」

 【2】「政策方針の論点」ですが、

○新規事業の促進等の観点から、今後の新技術の開発・普及をどう進めていくべきか。また、技術開発に関する事前及び事後の評価をどう取り込んでいくのか。

 ・日本版SBIR制度(中小企業技術革新制度)の普及

 後で簡単にご紹介いたしますが、今、日本版SBIR制度(中小企業技術革新制度)というのが動いているということが1つございます。

○製造業に偏っているといわれる技術開発に対して、非製造業によるソフトな分野での技術開発をどう支援していくのか。また、多様な業種での新業態の開発・普及のために何が必要か。

 (3)「ビジネス仲介機能の強化」でございます。

 【1】「基本的な考え方」ですが、

 「創業・起業を含め、企業経営の一層の活性化のためには、その一つの手段として、技術や企業活動に関する情報等の円滑な移動を促進するためのビジネス仲介機能の強化が重要。」

【2】「政策方針の論点」ですが、

○技術情報の仲介機能を強化し、知的財産権の一層の流通、移転を促進するために何が必要か。特に、TLO(技術移転機関)の役割を高めるために何が必要か。

○外部経営資源の紹介等マッチング事業を促進する必要があるのではないか。

 ・経営ノウハウを有する企業の退職者と新規起業家

 ・M&Aアドバイザー

 ここで、恐縮ですが、参考資料をご覧いただきたいと思います。22ページをご覧いただきたいと思います。「中小企業技術革新制度の概要図」という、ちょっと細かい表が載せてございますけれども、中小企業の新技術に関する研究開発と、その成果の事業化を補助金交付、債務保証、投資により、一貫して支援する新たな制度ということでございます。真ん中にありますけれども、中小企業へ国の技術開発の予算を一定額支出する制度で、各中小企業が申請をして、それに対して補助を出すという制度でございます。

 24ページをご覧いただきたいと思います。我が国の非製造業の研究費を見ると、そのグラフにありますが、全産業の約8%です。(参考)のところでアメリカを見ていただきますと、全産業の約25%ということで、日本は製造業のウェイトが非常に高いと言えると思います。

 29ページをご覧いただきたいと思います。先ほど申しました技術移転機関(TLO)のイメージ図です。真ん中にTLOがありますが、大学と企業が運営に参画し、ここで特許の情報、知的財産の情報などをマッチングするというものでございます。

 その具体的なものが、30ページをご覧いただきますと、「TLOに関する動き」というところに少しまとめていますけれども、1998年8月に、東京大学が「先端科学技術インキュベーションセンター」を設立して以来、各大学にTLOが設置されつつあるというものでございます。

その上、「特許流通の状況」というところですが、特許の流通についても今、いろいろな活動をしていますけれども、財団法人の日本テクノマートというところで40件の技術供与案件が成立したという事例がございます。

 資料2にお戻りいただきたいと思います。4ページ目でございます。2.「個人の面からの改革」ということで整理をさせていただいております。

【1】「基本的な考え方」ですが、

 「個人が特定の組織に縛られず、組織からの自由度を高めるためには、組織間の移動を可能とする環境を整えるとともに、組織に縛られない働き方を実現することが必要。また、個人が多様な人生の選択を可能とするためには、多様な選択肢が存在し自由にそれを選び得ること、それに必要な時間が存在することが必要。

 そのためには、個人の市場価値を高めるための能力開発、雇用の流動化、勤務形態の多様化、多様な能力発揮の場としてのNPOの展開促進、可処分時間の増加などが重要。

 そこで当部会では、上記のうち個人の市場価値を高めるための能力開発のあり方を中心に、可処分時間の増加など関連する施策について重点的に検討。

 なお、その他の課題については、経済審議会国民生活文化部会において、「ポスト企業中心型社会」のテーマとして扱う予定。」

 【2】「政策方針の論点」ですが、

○社会のニーズに対応したリカレント型の能力開発の場をいかにして提供すべきか。特に、高等教育は社会人の多様な能力開発のニーズに応えるものとして期待されるが、今後どのように改革をすべきか。

 参考に、構造改革推進研究会が昨年12月14日に公表した中間報告書の施策の項目だけを載せてございます。

○意欲ある人間が誰でも容易に、個人が主導して行う能力開発を行えるようにするための環境整備として何が必要か。具体的には、社会人が能力開発を行う上での障害として、費用面や時間面での問題が指摘されているが、いかにして対処すべきか。

(費用面)

 ・労働者個人に対する職業能力支援のあり方

 ・奨学金制度のあり方

(時間面)

 ・職業能力開発のための休暇制度の導入促進、フレックスタイム制、裁量労働制など労働時間の弾力化の促進による可処分時間の増加。

○その他、職業能力開発を促進する上でのインセンティブとなる施策は何か。

という問題を設定させていただいております。

 続きまして、参考資料をご覧いただきたいと思います。36ページでございます。「大学院修士課程及び博士課程への社会人入学者数は近年増加傾向にある。」ということで、そこにありますように、修士課程では 4,305人、博士課程では 1,807人という状況になっております。

39ページをご覧いただきたいと思います。大学のカリキュラムについての学生の要望を見ますと、専門教育の充実のほか、資格取得や職業に役立つカリキュラムについての要望が強いというものでございます。

 41ページをご覧いただきたいと思います。日本の外国人留学生受入数を、他の国と比較したものですが、ここにご覧いただけるように、他の主要国と比較して、特にアメリカに比べるとかなり低い、ヨーロッパの国に比べても低い状況がありまして、日本の大学は世界からみてもあまり魅力的でないということが言えるのではないかと思います。

 42ページをご覧いただきたいと思います。アメリカとイギリスの大学院の在学者をみると、30歳以上が占める割合が非常に高いということでございます。アメリカでは、そこにありますように、1992年とちょっと古いですが、30歳以上の方が53.9%いらっしゃる。イギリスでは、同じように51%ということで、先ほどのリカレント型の大学院になっているということでございます。

43ページは、自己啓発の実施状況でございます。そこにありますように、自己啓発を行った労働者は約半数にとどまるというものでございます。

では、どういったところが障害になっているのかというのは、44ページをご覧いただきたいと思いますが、労働者が自己啓発を実施するに当たっては、時間と費用が障害となっていると考えられるということで、自己啓発のための時間がない、自己啓発のための休暇がとれない、自己啓発のための費用がかかりすぎる、ということが挙げられております。

45ページでございますけれども、これは例えばですが、社会人大学院生の年間授業料を見ると、個人主導型は、転職・脱サラ型、自己啓発型ですが、50万円程度です。職場主導型は、職場から派遣されているということで、81万円と割高になっております。個人主導型の場合、職場主導型の学生よりも額は低いのですけれども、学費額への評価では、約6割の方が「高い」と答えているということでございます。

 46ページをご覧いただきたいと思います。最近出された経済戦略会議の答申の中に「能力開発バウチャー」という制度がございます。その概要を載せてございます。必要な教育経費の50%を支給することとし、かつ 100万円を限度とする。ただ、支給対象が、現に失業している者ということになっております。「予算額」のところにありますように、 100万人とすれば、 100万円を掛ければ1兆円という予算額が出ております。

 47ページ、こちらはもう制度として動いているものですが、教育訓練給付制度というのがございます。平成10年12月1日から開始。こちらは、支給対象者は、特に失業者という限定はございませんが、支給額は、教育訓練経費の80%に相当する額。ただし、80%に相当する額が、20万円を超える場合の支給額は20万円まで。こういう制度が動き出しております。

48ページをご覧いただきたいと思います。大学院奨学金制度(日本育英会) の概要ですが、社会人の大学院の学生の方でも、この奨学金は受けることができるわけですけれども、例えば、収入基準額を超えてしまうと受けられない等の理由で、49ページにございますけれども、現に大学院修士課程に在学している社会人がどのくらい受けているかといいますと、 7.3%のしか奨学金を実際には受けていないという状況がございます。

50ページでございますけれども、大学院教育に対する社会人学生の意識を見ると、仕事への支障について満足度が低いという結果が出ております。

最後に、休暇制度の話を少し資料でご説明いたしますと、51ページでございますけれども、有給教育訓練休暇制度を導入しているか、していないかということですが、「制度がある」というのが21.8%、まだまだ少ないということでございます。

53ページをご覧いただきたいと思います。よりフレキシブルな、例えばフレックスタイム制、裁量労働のみなし労働時間制、こういうものが適用されている労働者の割合というのは、 7.6%とか、 0.4%と非常に少ないということでございます。

55~56ページが、先ほどご紹介いたしました、構造改革推進研究会中間報告書のうち教育分野のことを扱ったものの施策の部分でございます。

以上でございます。

〔 部会長 〕 次に、事務局資料の説明の中で紹介しました、短期集中委託調査「創業・起業に対する日本的風土の改革に関する調査」について、三菱総合研究所・開発技術研究センター長の大野二朗さんから中間報告をお願いいたします。

〔 大野開発技術研究センター長(株式会社三菱総合研究所) 〕 お手元の資料3に基づきご報告させていただきます。

 「日本的風土の改革」ということで、非常に漠たるテーマを与えられているわけですが、問題意識として、今、ご説明にもありましたように、日本の風土とアメリカの風土、特に新しい事業を興すという意味合いではずいぶん劣っているのではないか、という基本的な認識がございます。その中で、「問題意識」の後半のところに書いてありますように、社会的風土への改革を通じて企業家精神を高揚させる環境を整備したい、ということが問題意識でございます。

 2番目に、「基本的な考え方」ということで4つの仮説を設けました。

 1つは、集団志向、内向志向、大企業志向の企業社会

 2つは、起業家が事業に無限責任を負う社会

 3つは、官に追従しがちな企業体質

 4つが、成功者に相応の報酬や社会的評価を与えない均衡分配型社会

この4つでございます。

 ただ、仮説で設けている4つの点ですが、必ずしも長い歴史の中で日本の固有の風土ができたとは理解しておりません。戦後50数年間に経験した世界史上希有とも言えるような経済復興がなされたという中ででき上がったものではないだろうか。さらに、「日本的風土の改革」と書いてございますが、歴史的に誤りがあったということよりも、今は非常に環境が変化している中で、変化に対応できるような環境あるいは風土をどうすべきかということで考えております。

 3番目に、調査方法としまして、今までいろいろと語られています、これを文献調査で、今、4つの日本的風土の仮説を設けたというところでございます。

 4つの日本的風土の仮説について、資料3の最後のページにございます、今のところ、8人の先生方にインタビューをさせていただき、ご指摘等々をいただいております。まだ取材が十分にできているわけではないですが、1つは、有識者の方々へのインタビュー等で、その妥当性や改革の方向性についてのご示唆をいただきたいと思っております。

 3点目としては、国内外の状況を調査し、上記仮説の検証を行いたいということでございます。

 続きまして、2ページ目でございます。「4つの日本的風土と改革方向」ということで、仮説【1】「集団志向、内向志向、大企業志向の企業社会」。端的に言いますと、日本型社会、「社会的同質性を良し」とする風土、我々社会と私社会というのですか--WeとIということになるかもしれません--、「なるべく個性が出ないように」を良しとする風土があるのではないだろうか。

あるいは、特に戦後の産業政策にみられる護送船団方式等といわれる政策を展開する中で、今まではうまくいっていたのですが、これから、これがいいのかどうか。

 企業間の取引においても、系列や業界の仲間意識、あるいは縦系列でいけば「協力会」という、ある種ビジネスの中でも「内」と「外」を仕分ける。あるいはその中で「出る杭は打たれる」という風土が根強く残ってきているのではないか。そうしますと、新しいビジネスのネットワークをつくる、あるいは新しいパートナーを探していくといったときに、内向きに見られていることから、適当なパートナーがどこにいるのか、情報発信もできない、あるいは知ることもできないということで、新しい芽が育ちにくいと言えるのではないだろうかという問題意識でございます。

 それから、先ほどもありましたように、若者にとってみますと大企業志向。これ全部を否定するわけでもありませんけれども、アメリカと比較しますと、日本の若者は大企業にどんどん行ってしまうということで、新しいベンチャー企業が生まれる風土がなかなかない。大企業で年功序列のレールに乗ることが、結果的には本人にとっては楽なケースになるということで、企業家精神を高揚させるチャンスができていないという意味合いでございます。

 改革の方向ですが、既得権益にしがみつく体質がどうしても強く残ってしまって、多様な志向性をもった人間をつくり出すシステムを改めてつくり直していく必要があるか。地域開発などでも、個性ある地域づくりということが言われているわけですが、それが掛け声倒れに終わっているということで、新しいシステムの構築というのがあるかもしれないということでございます。

 教育面については、多様な解答、言ってみれば価値の存在を前提とするということで、一流の大学、一流の企業、一流の官庁、これが成功者であるという認識から、もう少し多様な生き方とか、多様な価値の存在を認めるような社会・教育システムも必要ではないだろうかというところでございます。

 企業社会においては、個人の資質あるいは生き方をよく見ていただくような、一流志向というラベルで判断するのではなくて、個人の能力・レベルのところで判断いただけるような仕組みにして、人材の流動化が実現できないだろうかというところでございます。

 次の3ページ目、仮説【2】「起業家が事業に無限責任を負う社会」でございます。よく言われているところは、日本の社会の中にエンジェルがいないという話がありますけれども、実質のところ、起業あるいは創業に関わる資金というのが、資本金という投資の格好でなく、融資という間接金融の割合が大きい。そうしますと、その融資を受けるために、起業家自身あるいはその家族が、自分の持っておらる資産を担保にして金を引き出してくる。したがって、事業が失敗したときに、その起業家あるいはその家族の生活基盤そのものも失われてしまう。それであるが故に、結果としては、事業を失敗したことイコール人生の落後者、という格好でかなりきつい目で見られるという状況もあるかと思います。

 ここで申し上げたいことは、1つは、事業を興すということですから、自己責任できちっと自立してやっていくことは当然のことですが、やる気のある方が失敗したときに再度チャレンジするような環境整備、そして、やる気のある方をそのように見ていただけるような環境が重要ではないか、というのが仮説【2】でございます。

 改革の方向としまして、自立を前提としながら、責任の一端あるいはかなりの部分、これは起業家自身が負うのは当然のことですが、再度挑戦できるようなビジネス風土。中段に「セーフティネットの構築」ということが書いてありますが、再度立ち上がれる仕組みということが必要。もう一つは、失敗したときの原因を客観的に評価する。客観的に評価して、この失敗の原因が共有化できるとすれば、これからはもう少し効率よく新しい創業が生まれてくることにもなろうかと思っております。

 もう一つ、資金の話でいきますと、起業家の資質とか事業性を積極的に評価できるシステムを構築する。今、PFI等で言われていますが、今までですとコーポレート・ファイナンスということで資産に対しての金は貸し付ける、ただ、ビジネスに対してプロジェクト・ファイナンスは日本型ではなかなかないと言われていますが、この風土、いわゆる仕組みをつくっていくチャンスではないか。そして、創業・起業間もない企業であっても、プロジェクトの質が良ければ比較的容易に資金調達ができる手段を実現する必要があるのではないだろうか。

 あるいは、高等教育機関の中で、実践的な体験機会を充実させるということもあろうかと思います。

 次の4ページ目、仮説【3】「官に追従しがちな企業体質」でございます。今までの戦後経済の中で傾斜生産あるいは傾斜配分ということで重点投資を行いながら、産業政策をリードしてきて、見事によみがえったということです。ただ、それが強過ぎたきらいもあって、産業自身が保護政策に強く依存してきた点もあるのではないだろうか。これから、歴史的な転換点にあるときに従来型でよろしいのだろうか、というのが仮説の3つ目でございます。

 特に、市場が非常に多様化している、国際化している中で、従来の方式、供給不足のときにいかにモノをつくるかという観点では非常に意味があったと思うのですが、現段階、需要が不足しているとき、これがどう展開していくのかという意味では、民の力をより発揮すべきではないか。そして、企業がネットワーク化していく中で「何をどう生み出す」という、新しい仕掛けも重要ではないだろうかという意味合いでございます。

 その仮説の最後のところに書いてございますけれども、企業が個々の責任のもとに、自ら市場をつくっていくことが求められているだろう、ということで仮説の3を置きました。

 改革の方向としましては、全部否定するわけではございませんけれども、今まで一部の産業とか企業に支えられているモノ、これをより大きな民間のレベルで対応していく。そして、官の意向を把握することが強過ぎるきらいを訂正していく必要があるのではないか。あるいは今、行政改革・地方分権・規制緩和等々の事柄が語られていますけれども、特に地方分権で言えば、中央からの発想ではなくて、地方からの発想ということになります。あるいは、規制緩和の中で自由裁量余地を増やしていくなかでの展開ということが求められているだろう、ということでございます。

 仮説【4】「成功者に相応の報酬や社会的評価を与えない均衡分配型社会」でございます。当然のことながら、創業・起業においては大きなリスクが伴うけれども、同時に高いリターンがあるから大きなリスクをかぶれるわけでございます。文章中にはビル・ゲイツの話も出しておりますけれども、日本型社会はこれが十分発揮されていないのではないかという問題意識でございます。よく言われます「機会平等よりも結果平等の社会」、これが貫徹されているのではないかという問題意識でございます。果実を均等に分配しようとする構造になっているということでございます。

 最後の行にありますけれども、平等主義的な成長ということで、アメリカンドリームが生まれない構造になっているのではないだろうか。今まで、どちらかと言えば、「みんなが豊かになる社会」を目指してきたわけですが、結果的に、その中で成功する人、他よりも優れている人に関する社会的評価の尺度を忘れてきてしまっているのではないか。成功を収めた、あるいは優れた資質、これに見合った報酬(報酬というのは金銭的な対価だけではなくて、社会的な尊敬も含めて)を受けることも拒否する「行き過ぎた富の平等分配」を何とかしていく必要があるのではないかというところでございます。

 改革の方向としましては、ストックオプションの導入や所得税の改革、相続税改革等の税制面での、成功したものを自分の後継者に伝えられる仕組み、あるいは一定の相応の資産が受け取れるシステム、あるいは起業の現場を体験できる教育システム、というあたりの仕組みを変えていく必要がある、ということで出させていただいております。

 最後の部分、トーンが違うわけですが、ただ「巨大な富」というだけでなくて、最近言われていますけれども、スモールビジネス、マイクロ産業、このあたりについても観点を当てて、いろいろな格好での創業ができる環境整備が必要というところでございます。

 6ページ目でございます。今申し上げました4つの仮説以外、各先生方からもご指摘いただいた点、2つほど載せてございます。1つは、「日本の創業・起業を支えてきた風土」ということでよく言われることですが、「地域産業コミュニティにおける『協動』システム」。具体的にイメージしていますのは、大田区であるとか、関西でいいますと東大阪市、中小企業の集積しているエリアでございます。ここでは、かつては協動システムというものが機能していて、一時、経営が困難になるとか、あるいは各種の難しい局面に入ったときに、地域は相互に仕事を融通し合うとかいう形で相互扶助システムができてきた。ある方に言わせれば、大田区というのはナショナルテクノポリスであるという評価もされているわけです。ただ、残念なことに、これが大部崩れてきているという状況です。これを再生するということで申し上げているわけではないですが、ただ、従来の知恵に基づいた地域産業コミュニティ、これは機能縁といいますか、それぞれの役割分担に基づいて、広域でのネットワーク型コミュニティというものをつくっていくということも1つあるかなというところでございます。

 2つ目は、「日本の創業・起業に影響を与えたもう一つの風土」、これは「日本的あいまいさ」というのが挙げられると考えました。

 具体的には、日本の契約書をご覧になっていただくと、最後の一番条項に「上記事項に定めのない事項については、甲乙両者が協議するものとする。」という項目が出ております。これが日本的曖昧さの端的な例だろうと思っています。双方わかり合った世界の中でビジネスも行われている。それが逆に言えば、甘さが出てきているところもあるかと思っています。そして、今を乗り切っていくために、必ずしも合理的な判断が貫徹されていないというところもあるのではないか。これが起業家マインドといいますか、創業・起業において失敗したときに、冷静に、合理的に判断しないところにもつながってくるかもしれません。あるいは、事業性そのものを評価するところでも、必ずしも合理的に評価されていないのではないだろうか。この辺の日本的な曖昧さ、良さもあるわけですが、この辺についてもう少し改善する余地があるかなというところでございます。

 そして、改革方向としまして、物事の本質を見極め、詳細に検討し明確な判断を下す、ある意味では当然のことですが、これをきちっとやっていくことだろうと思っております。

 「 たとえば」ということで、ドイツとか北欧の自動車メーカーの事例を出していますけれども、何かあったときに、客観的にアクシデントの原因をきちっと押さえる。そして、それを生産システムに活かしていくということ。これは手間もお金もかかることですが、こういうことをやっていく必要がある。あるいは、失敗の体験を詳細かつ冷静に検討する中で、負の体験の共有化というあたりについても、対応の仕方があるだろうというところでございます。

 最後に7ページ目でございますが、企業で、例えば失敗したときにも、再度起業化に挑戦できるような仕組み、そして、それが前回どういったことがあったからどうなったのだということで、学習効果が出るような仕組み、このあたりを意識したいと考えております。

 鵜飼先生、金谷先生、河村先生、熊沢先生、グレゴリークラーク先生、関先生、望月先生、柳先生、8名の方からご意見を頂戴いたしました。

 以上でございます。

〔 部会長 〕 ありがとうございました。

 ただいま説明のありました資料2及び短期集中委託調査中間報告につきまして、これから自由にご意見をお伺いしたいと思います。

 それではA委員いかがでございますか。

〔 A委員 〕 日本的風土のというものは、全般のトーンとしてペシミスティックに書かれているわけです。本当にそうだろうかと、特に最近、疑問に思っております。

 例えば、仮説【1】にしましても、集団志向というのは本当にいけないのだろうか。シリコンバレーを見ましても、欧米のイノベーティブなカンパニーを見ましても、強い個とチームが非常に協調関係にあるといいますか、強い個とチームが両立している、という感じがいたします。

 それから、西欧のベンチャー・ビジネスにしましても、どこかで中小企業・ベンチャーと大企業が、コラボレーションといいますか、いわゆる中小、特に小企業が生み出すのは基本的にはコンセプトだけで、実体のコアテクノロジーとか基盤技術というのは大企業に集積されているわけですが、それが実はコラボレーションしている、こういうことではなかろうかという感じがする。そういう意味で、社会的分業が行われている。

 日本の場合には、大企業の中でコンセプト創造から全部一貫して内生的にやってしまう。アウトソーシングの活用、外部の血の活用というものが相対的にうまくない、こういうことがあると思うのです。

 そういう意味で私が感じますのは、日本の社会あるいは企業の特質を二元論的に切っていくのではなくて、つまり、either or といいますか、あれもこれもという議論よりも、新しい方向というのは、我々の持っている利点と欧米の持っている利点を相乗的に、both andといいますか、そういう知恵を発揮するシステムを構築することが、私からみると、日本企業のもっている、あるいは日本の風土のもっている独自の価値と、それからもう一つリスクテイキングな価値というのを、むしろ融合するという基本的なスタンスとして、そういう方向の知恵を発揮するというのが重要ではないか。そんなことを、非常に一般論でありますけれども、感じます。

もう一つ、非常に感じますのは、社会的な批判主義といいますか、極めて浅薄な批判主義が蔓延しきっていまして、言ってみれば、極めて知的に貧困な社会的インフラを、私は、マスコミがつくっているという感じがしまして、本質論をやらない、これが非常に大きなリスクテイキングというのを知らず知らず日常生活の中で殺していくということが非常に重要な問題だと思っております。

 もう一つ、感じますのは、特に教育の問題は私どもも責任があるのですが、これまで我々が得意であった技能中心型の、いわゆる経験主義といいますか、あるいはOJTで体育会系的にハウツーのノウハウを集積していくという、その技能的なハウツーのスキルに関しては世界に冠たるものがありますが、知の性質が知識社会では根底から変わってきていまして、いわゆるコンセプチュアルなスキルといいますか、概念化の能力といいますか、つまりメタフィジカルな根本的なものの本質を追求するような哲学から始まって新しい概念を生み出すという概念スキル、これがどうも遅れた、またそれを支援する教育のシステム、とりわけ大学教育で決定的に遅れた。ビジネススクールというのは非常に批判がありますけれども、私は、少なくとも、あれは概念の評価能力というものを社会的に非常に高めているような気がしてなりません。そういう意味で、概念化のスキルをどういうふうにして蓄積するかということに関しては、とりわけ大学教育の質的充実が重要だろう。その点に関しては、基本的には私は賛成しております。

 しかし、何かこういう話を聞いていると、すべていろいろな仕掛けを提供すればイノベーションが自然発生的に出てくるかのような錯覚になるのですが、実は、イノベーションをやるというのは気違いみたいな人ですから、ファッションといいますかね。そういう人材を我々が評価できないところに、つまり新しいコンセプトの評価能力が社会的に低いために、実はつぶされている。その辺が、システムの背後にある、何か目に見えないイノベーションを殺すシステムと風土、これが問題ではないか。

 非常に簡単で、失礼しました。

〔 部会長 〕 冒頭にまず問題をいろいろ指摘していただきました。

 続きまして、B委員どうぞ。

〔 B委員 〕 「創業・起業に対する日本的風土の改革に関する調査」とか、「『企業や個人の創造性と自由度の高い経済社会』を実現させるための構造改革」という資料は、まさに非常にいいご指摘で同感する部分が多いのですけれども、もう一つ、これと並行して、私が感じていますのは、「村社会」ということを今考えたのです。

 というのは、私が付き合っています第1次産業、農業の分野でこのごろ気になっていますのは、農業側の意向が、「とにかく国が政策を提示してほしい、国がやってくれ」という意見が非常に強いのです。

 なぜそういう要望が強くなっているかと言えば、つまり、みんなにその方が説明しやすい。なかなか難しい、やや改革的な、特にここにあるような創造的なことを打ち出してしまうと、村社会の中に波紋を広げて、必ずしも好ましくない。国が説明してくれたからこれは非常にやりやすいのだ、という気持ちがあると思うのです。逆に言えば、そういうことを言えば、規制に従っている方が長年の伝統で楽だ、という気持ちがあるのだと思うのです。

 そういう村社会というのが、実は、農業という非常に狭い世界だけではなくて、ここにあるような日本的風土の根底にあるのではないかという気がしているわけです。

 国がやってくれるということこは、つまり、ここの4つの基本的な考え方の仮説の中の、「官に追従しがちな企業体質」というものと相通ずるところがあるだろうと思うのです。ですから、そういう根底のところから、発想、考え方を変えていくためにはどうしたらいいのだろうか。

 すぐ考えつくのは教育で、ここに教育の重要性というのはいろいろ取り上げられていますけれども、一言で言えば、教育の面でいろいろそういった点の配慮を、必ずしも村社会でなくても、そこで力を発揮できてみんなに認められる、こういう雰囲気といいますか、風土といいますか、それを教育的な側面で醸し出していくというようなことも必要ではないかという気がいたしました。

 私の関係している分野で、ご説明を聞いていて感じたものですから、一言申し上げました。

〔 C委員 〕 最初にご報告いただきました案ですが、現状分析がよくできていると思いますが、私が感じますのは、ここに優先順位づけがないのが一番大きな問題ではないか。

 こういう会合をやっていますと、問題の指摘はいろいろ出てくるのですけれども、その中で一体何から始めたらいいのかというところのコンセンサスを作らないと、これもあれもということになると、結局何も手がつかないのではないかという印象を私は強くもっております。

 もう一つ、このお話をお伺いして感じることは、特に最近私は心配しているのですが、ベンチャー・ビジネスを育てなければいけないということで、政府が金銭的な援助もする、何もするというお話はたくさんあるのですが、実態は、そこに果たしてニーズがあるのか、モチベーションがあるのかというところが1つ大きな問題だと思うのです。そういう市場がないのにお金をばらまいても、それを効率よく使えませんから、結局、そういうお金を預かった人たちというのは破産して、またネガティブなところに戻ってしまう。したがって、ニーズを作るということ、それからモチベーションを作るということが非常に大切ではないか。

 それから、風土というお話ですけれども、私は、これは風土ではなくて、そういったニーズとモチベーションから生まれてきているものであって、学校を卒業してサラリーマンになるという考え方は、将来を考えた場合の生活の安定だとか、それから、先ほどからご指摘になっているような、成長したときに十分なリターンがない、こういうモチベーションがないと、当然のことながら、安全な道を選ぶ。だから、これは風土でも何でもなくて、現在の社会制度がそういうふうにしているのではないか。

 したがって、これから必要なのは、そういうニーズをクリエートしたり、あるいはモチベーションをクリエートする社会ではないか。

 米国の情報産業で言いますと、ずっとIBMの時代が続いたわけですけれども、1990年代になって、シリコンバレーそのほかが活躍し始めて、そのころカリフォルニア州で、今や大きな会社に入っているよりはベンチャービジネスに入っている方が将来の生活がいいですよということが盛んに言われた時代があるのです。そういうものが今現在の情報産業を見た場合のベンチャー・ビジネスの原点になっているような気がするのです。そこには、やはり、ニーズがあったと私は思うのです。

 93年のIIN構想を打ち出されて、相当はっきりした米国政府の方針が出て、つい最近、それの評価が出てまいりましたけれども、その評価は、彼らが93年に考えた目標をはるかに超えた結果が出てきているのです。

ですから、そういった大きな方針、また元に戻るのですが、一番最初のご指摘の点について、もう少し数を減らして、要するに優先順位を決める。その優先順位についてはいろいろ議論があると思うのですが、ここをきっちりコンセンサスをとるようなご議論をしていただければいいのではないかと思うわけであります。

また、教育については、はっきり申し上げて、私はあまり希望をもてないのです。私も、3年ほど前に、日本の企業の部長クラスの方々15人ばかり、カリフォルニア大学に連れて行きまして、このテーマで、ベンチャー企業ばかりお邪魔したわけです。このときは、カリフォルニア大学の先生方にコーディネーションをしていただいて、たくさんの先生方が参加なさったのですが、やはり、実業社会に対する先生方のご興味というのは非常に強くて、そういうベンチャービジネスに出て行って、日本人の性格としてはご案内のとおりあまり質問しないのですけれども、むしろ、現地の先生方が積極的にそういうベンチャー企業の経営者と議論なさっている風景などを見ますと、そういったカルチャー的なことも含めて、教育の世界というのは改造していただきたい。もっともっと実業界をうまく使うような仕組みを作っていただきたいと思うわけです。

〔 D委員 〕 C委員のご意見に全面的に賛成というわけにはいかないのですけれども、高等教育については、これはまた別に議論する機会があると思いますけれども、プライオリティを付けるという点は全く賛成です。これの1、2、3、4、5、6のどれがどういうふうな優位性があるのかというのを議論した方がいいかなということです。

 私が申し上げたいのは、第1回目に発言をさせていただいたときにも申し上げたのですけれども、こういう新しい議論を行うと同時に、既に現在、ベンチャーの支援策を含めて様々な議論が行われ、そして、制度的な枠組みもできている。それがどの程度きちんと実施されているか、効果を上げているかどうかという点、これを追跡調査する必要があるだろうと思います。

 そういう点でやや具体的なお話を2つしたいと思うのですけれども、第1は、ベンチャー支援。いろいろな方が風土を理由に、先ほどの三菱総研の調査報告に私は全く賛成ではありますけれども、風土的に手を挙げるという人たちは少ないのかもしれませんけれども、仮に手を挙げたとしても、今日の参考資料の7ページ目にもありますように、創業者としては、開業資金の調達というのが、どういうアンケート調査を見ても最大のネックになっている。

 これをずっと調べてみますと、この間、九州のある県でベンチャーのフォーラムに呼ばれて、いろいろお話を伺う機会があったのですけれども、そのときにわかりましたのは、ずいぶん各地方自治体で、あるいは中央政府で、ベンチャー支援の融資の枠組みはできている。にもかかわらず、これがうまく使われていない。なぜかといいますと、これは単年度主義ということと大いに関係があるのです。例えば、申込みの融資の期限が1月だとすると、仮に2月にそういう融資を受けたいと考えたベンチャー予備軍は、来年にならないと、そういう融資の機会がないということによって、ベンチャーを始めようという意欲が失われているというケースがたくさんある。つまり、これまである中小企業支援の、ベンチャー支援の制度的枠組みが、今までのかなり硬直化した法律的な運用によって効果を発揮していないというところをどう改善するかという議論が必要だろうと思うのです。

 2番目は、直接ベンチャー支援ということではないのですけれども、中小企業大学校というのがございます。これは中小企業大学校の校長さんのアイデアによって、先ほど来お話があるような、民間との交流とかをずいぶんやっているのです。ところが、これは本来、私は数をしっかり把握していないですけれども、全国で8つとか9つつくらなければいけないことになっているのですけれども、これが全部できていないのです。全部できていない理由を調べましたら、各都道府県が誘致合戦で、おれのところに中小企業大学校をほしい、いや譲れないというような議論で、例えば、四国は一つもない、こういう状況になっているわけです。

そういうような、新たな創業段階における円滑な資金供給を含め、当然、それは必要なのですけれども、今までの政策がどの程度本当にうまくその目的にかなって運用されているのかということを、きちんとフォローしていただきたいと思います。

〔 E委員 〕 1点目は、単なる質問です。ソフト分野の技術開発をどう支援していくかという問いかけがありますが、ソフト分野の技術開発とは一体どんなものなのかが私はわからないのですが。情報技術という意味でおっしゃっているのか、それとも、いわゆるサービス業などにおいて制度の技術革新というのが当然あるわけで、例えば、宅急便などは制度の技術革新だと思っているのですけれども、そういうもののことをおっしゃっているのか。もし後者だとすると、そんなものをどうやって支援していくのか、私にはとんと知恵が出ないので、もしそんなことがわかるのだったら、すぐにでもそういう学校に入って、私はサービス業をやりたいと思うのですけれども、果たして可能なのかどうかということ。これは質問です。

 2点目は、創業あるいは起業についての日本的風土の問題ですけれども、先ほど優先順位というお話があって、私は、時間的な優先順位のことを申し上げたいのです。すなわち、今すぐに起業できる・創業できるということについて何をすべきかという話と、それから、もう少し先のことを考えて、そういった人たちがたくさん出てくるようにするにはどうしたらいいか、多分、2種類あると思います。後者の方の話というのは、教育制度というのが大いに影響を与えていると思います。それは高等教育の問題を逃げるつもりは全くないのですが、私は、初等教育の段階からであると思っています。どちらかと言えば、勉強のできる人はわりと選択肢が多いけれども、それ以外の人は選択肢がないようなシステムになっている。それ故に、さっきA委員がおっしゃった、気違いのような人は全部抑えられてしまっている形になっているのではないか。これは長期的な話です。

 短期的に、今すぐに創業・起業がほしいというときに問題になっているのは何かというと、これは完全に規制の問題であると私は考えています。スカイマークの経験でも申し上げれば、日本的風土が問題になったことは一つもなかった。何が問題であったかというと、結局、免許制度という規制が存在したこと。同時に、三社の寡占体制という市場の構造になっていたこと。三社の寡占体制という構造は、規制の結果人為的につくり上げられたものであったわけですから、これも基本的には規制の問題であった。

 逆に言いますと、アメリカの場合に、1978年の航空の自由化法が通りましてからずいぶんたくさんの航空会社ができましたけれども、規制が厳しかった時代には、新しい航空会社はできなかったわけです。そのことを考えると、短期的にまずやらなければいけないのは、徹底的な規制の撤廃である。

日本的な風土とかいったものは、新しい会社をつくっていけば、その中でいくらでも改革をしていくことができる。あるいは、日本的風土の方がよければ、それを採用していくことができるわけですから、短期的な問題はそこの点に尽きると思います。

 3つ目は、意欲ある人間の能力開発という点についてですが、私はこれもわりと楽観的に考えています。イギリスやアメリカの大学院は30歳以上の人が約半分以上を占めるという話がありましたが、私のところにいる大学院生はほとんど30歳以上です。要するに、一度企業に入ってからまた戻ってきた人たちが大部分です。やる気のある人は、そういうことをやるのです。つまり、会社を辞めて、自分で能力開発のチャンスを掴むということをやる。

そのときに大事なのは、辞めて、次に就職するときに中途採用がどんどんできるような、要するに雇用の流動性、これはもちろんご提案にも書いてありますけれども、そこの部分をきっちりと確保するということと、それに伴う年金の問題とかをきっちりと対応するということ。

もう一つは奨学金の問題です。お金さえあれば、会社を辞めて、もう一回勉強してきたい。奨学金が取れるでしょうか、という質問はずいぶんあります。あるいは、アメリカの大学に留学をしたいのだけれども、とりえず2年間勤めて、例えば女性の場合でも、「銀行に入って2年ぐらい勤めてお金が大分たまった。あと1年ためて、そうしたら銀行を辞めて留学ができるのです」、そういう人もいます。ですから、奨学金の問題はお金の問題ですから、経済戦略会議の能力開発バウチャーの制度というのは、そういう点では私は賛成です。もちろん、このバウチャー制度というのは、失業者だけではなくて、新卒者についても、全部バウチャーでやるべきだと私は考えておりますけれども。

 以上です。

〔 部会長 〕 それでは、E委員の質問につきまして事務局の方からどうぞ。

〔 事務局 〕 非製造業によるソフト分野での技術開発ということですが、基本的には、非製造業と製造業を比べて、非製造業で少なかったということを言いたかったのです。

参考資料の28ページをご説明しなかったので、ご覧いただきたいと思うのです。「ソフトな」と書いたのは、イメージだけで恐縮ですが、裏に何か具体的な施策を考えているというわけではございませんけれども、今後、まさに知恵の社会の中で知恵の開発・蓄積ということであれば、デザイン、ディスプレイ、広告、情報処理といったところが非常に伸びてくるし、現に伸びているということで、こういうところを支援するような施策、あるいはデータベース化みたいな話、そういうものが可能かどうかということを少し意識しておりました。

〔 E委員 〕 情報技術ということですね。

〔 事務局 〕 はい。あと、デザインみたいなものを意識しております。

〔 E委員 〕 わかりました。

〔 F委員 〕 拝見しまして、全般に、何となく今現在のアメリカの状況が理想だというようなイメージを私は受けました。

 確かに、日本のある意味で対極にあるという意味でアメリカがあるのだろうと思うのですけれども、あえて言えば、そういうアメリカ型の自由な部分というのは、必然的に格差を拡大していくということだろうと思います。格差がどんどん拡大するということが果たして、それこそ日本の風土に合うのかどうか。年収 100億円、数10億円という人が出るということが日本にとって大変好ましいのか。一方で、大変格差が激しくて所得の少ない人たちが存在するということを、日本として容認するのかどうか。目的は何なのだろうかと考えたときには、その対極まではもちろん行かないと思うのですけれども、そこのところの程度といますか、そのところをもう一度考えてみたいという感じがいたします。

 もう一つ、どうやらここで書かれている話を考えたシチュエーションといいますか、状況というのが、不況の真っ只中、とても日本がこのままやっていけないのではないかという非常に悪い状況の中で考えられている、ということが1つあるだろうと思います。そういう中で考えられたものが、本当に新しい方向を示しているのかどうかということで、そこをもう一度考えてみるといいますか、例えば、真夜中にいろいろ考えたことが、翌朝になってみるとつまらないことであったりということはよくありますが、その辺も含めて、今の状況では説得力があっても、普遍性があるのかどうかということについては、もう一度考えてみる必要があるのかなと。そういう意味では、構造的な問題と、それから循環的に起こっている問題、失業の問題もそうですけれども、そこのところは十分分けて考えてみる必要があるかなという感じがいたします。

 もう一つ、先ほどからいろいろ議論が出ているわけですけれども、この新しい産業というのはどういうものをイメージしているのか。今もお話がございましたけれども、ハイテクということのようですが、少なくとも、今日、経済企画庁さんの方の「規制緩和等によるGDPの増分の効果」というのが出ましたが、典型的な例として出るのは既存の産業の規制緩和によって出てきている。決してそれはハイテク産業によってもたらされているものではないということがあると思います。ですから、最初の話に戻りますけれども、何が目的なのか、日本中を、例えばソニーやNECのようにしてしまうということが目的なのかどうか。マイクロソフトのようにすることが目的なのかということを考えていくと、そこのところはもう一度よく考えて、ベンチャーというものの形態といいますか、産業の中身といいますか、そういうものをもう一度考えてみたいなという感じがいたします。

 もう一つ、それはそうとして、実際に、日本の場合は労働の移動の自由度が低いということは全くおっしゃるとおりですが、例えば、私はもう50を超えているわけですが、私が今の会社で具合が悪いとして、一度失職をして、勤めるために 100万円のバウチャーをいただいて何ができるのだろうか。今さら、ソニーさんで雇っていただけるかなと思うと、多分無理だろうと思います。ですから、労働の移動というのは、どうやら年齢と相当関係があるかなという感じがいたします。

 若いうちというのはいろいろな可能性があって、労働の移動も可能でしょう。そこでいろいろな付加価値をもし自分自身に付けられれば、それはそれで移動というのは非常に楽だと思うのですが、どうもそうではなくて実際に困っているのは、もうちょっと中高年であるとすれば、そこのところはなかなか難しいかなという感じはいたします。

 ですから、労働の移動ということは、どういう人たち、どういう年齢層をイメージして我々は考えたらいいのかということを、私としてはちょっと考えたわけです。

 以上でございます。

〔 部会長 〕 続きまして、いかがでしょうか。

〔 G委員 〕 1つは、雇用の流動化というのが2箇所か3箇所出てくるのですが、先ほどのご説明で、これはこの部会ではなくて、国民生活文化部会の方で取り扱うというお話でしたので、その点については触れないようにしたいと思います。

 先ほどの三菱総研さんの報告を聞かせていただきましての印象ですけれども、少し自虐的過ぎるのではないかという感じを受けたわけであります。

 一番最初にも申し上げたと思うのですが、これを読んでいますと、もちろん書いてあることはもっともだと思うのですが、全体的にすべてが悪いのではないか、こういうような印象をどうしても受けてしまうのであります。今、日本の産業でも、国際競争力をもって大変強いところもあるわけです。だから、押し並べて全部が悪いということは、私は、構造改革になっていかないのではないかと。先ほど、優先順位あるいは時間的な優先順位を付けた方がいいというご指摘がございましたが、私は、もう少し問題点を絞り込んで、どこが問題なのかということを、もう少しクリアにしていった方が、構造改革という意味では目標がはっきりしてくるのではないか、そういう感じをもちました。

 以上です。

〔 C委員 〕 意見の交換をするということも、この委員会のことに入ると思いますので、一言申し上げたいと思います。今、G委員あるいはF委員のおっしゃったところで、1つ私が気になるのは、今までは、日本国内で我々だけで日本の国内の運営ができたという環境だったと思うのですが、これからの世界は、日本の国内・我々の意思だけでは十分にいかない、外部的な要素というのが非常に強く入ってくる。そういう中でどうするかということであって、私は、この問題のとらえ方は決してネガティブにはとらえていないのです。むしろ、そういう環境の中にあって、これを前向きにどういうふうに考えていくかということではないのか、というような気がするわけでございます。

 2つ目は、ちょっと違う観点ですが、先ほど無限責任の話がございました。これも、政府の方からいろいろと案が出されていますけれども、無限責任の問題も、実際に起業家の方たちを援助して守るということだけではなくて、こういう人たちにきっちりとお金を出す人がいない、それを積極的に出す人がいないという環境が問題なのではないか。結局、出そうとする人たちのモチベーションがないということが問題ではないか。日本人は、大変お金持ちはたくさんいらっしゃって、既にそういう方たちが米国のベンチャー企業にたくさん投資なさっているのが現状です。ですから、そういう人が翻って、日本の企業を援助してやろうというお考えになれば、日本の企業は成長すると思うのですが、そういう人が日本にお金を落とそうというモチベーションがないところに、むしろ問題があるのではないかと。そこで、また原点に戻るのですが、ニーズとか、モチベーションとか、そういうことをきっちりと議論する必要性はないのでしょうかということです。

 私の意見は、2点です。1つは、日本国内だけでこれからは物事は進みません。2つ目は、動機づけが必要ではないかと思います。

〔 D委員 〕 E委員のコメントに対してコメントをしたいと思います。

 私は、既得権構造に支えられた風土の問題というのは、やはり、きちんと書いた方がいいと思います。

 スカイマークの例を出されました。確かに法律が撤廃されれば、あのようなことが起きることは確かですけれども、私が行きました九州のある県で、ガソリンの価格が日本で1、2を争うような高いものになっている、 130円ぐらいです。これは簡単な構造で、3社がカルテルを結んでいるのです。誰もが知っているのですけれども、誰もが言えない。なぜならば、その県の新聞に、その3つの石油業を営んでいるある総合的な企業が出資をしているのです。ですから、メディアの方も、そのことについて言えない。そういうことを市民が手を挙げていろいろなことを議論しよう思っても、「もの言えば唇寒し」というような状況です。地方に住んでいれば、大体そういうような構造になっているのだろうと思うのです。

 もちろん、E委員のおっしゃっていることはよくわかるのですけれども、日本的風土の問題というのは、やはり、正面から議論した方がいいだろう。

 もう一つは、小学校とおっしゃったと思うのですけれども、教育、これは全く賛成です。例えば、日本で間接金融重視できたというのは、いろいろ制度的な仕組みということもあるでしょうけれども、小学校、中学校で、直接金融の大切さとかを十分教えなかったからではないでしょうか。

 これは証券業協会で聞いたことがあるのですけれども、中学校、高等学校の教育、政治社会で、株式市場の重要性とかいうものは銀行の記述に比べるとはるかに少ないので、何とかしたい、というようなお話を聞いたことがあります。

 そういうところで、ベンチャーの重要さというものが育まれてくるのではないかと思います。

〔 E委員 〕 せっかくサポートしていただいたので……。

 前者の方の話ですけれども、全く私も同じ考えです。規制の問題だと言ったときに、私は、民民規制的なものも含めて、それに対応していかなければいけない、と。

 さっきは舌足らずだったのですが、今、九州の田舎のお話をしてくださいましたが、スカイマークだって、航空業界だって全く同じことでありますから、それに対応するにはどうしたらいいかということも含めて、私は、規制改革だと考えております。

 その内容としては、当然、司法制度を拡充していくこと、それから、競争政策を徹底していくこと、そして、一種の駆け込み寺的な組織を、OTOなどをうまく活用してつくっていく。それで、そういう民民規制に対応していくこと、そういったことを含めて規制の問題というふうに申し上げました。考え方としては全く同じです。

〔 H委員 〕 3点ほど、コメントしたいのです。

 最初は、図表の1ページですけれども、開廃業率が書いてありまして、傾向的に開業率が下がっているというのは、構造的な問題があるということを示していると思うのです。ただ、下のアメリカと比べますと、日本が高度成長の時代でも、アメリカの開業率というのは日本の倍ぐらいありまして、この差は何なのだろうか。つまり、高度成長の時代は、明らかに日本の経済の方がアメリカより活性化していたと思うのですが、それでもこれだけ差があるというのはどういうことかということです。

 1つ考えられるのは、既存の企業が新規の事業をやっていくという部分があって、それはこういう統計ではとらえられていないのではないかと思うのです。もちろん、それを入れたとしても、恐らく、下がってきているという傾向は同じなのかもしれませんけれども、既存の企業が新規の事業をやるというのも、これも非常に重要で、ベンチャー企業というのも、既存の企業がやるという部分もあるのではないかと思います。

 もう一つは、ベンチャーの支援について、9ページにたくさん支援策があって、地方政府も、中央政府もみんなやっていて、それから銀行も一時ずいぶん、2回ぐらいベンチャーキャピタルブームみたいなことでおやりになってわけですが、それにもかかわらず……。つまり支援の方はブームですけれども、ベンチャー企業自身はあまり育たないというのが実情ではないかと思うのです。

 ですから、何かが抜けているのではないかと思うのです、今までこういうふうにたくさんメニューは揃っているのですが。

 それは何なのかということですが、1つは、11ページにありますように、設立間もない時期に、アメリカの場合には、5年未満のところで非常にたくさんの投資が行われている。日本の場合は、それが創業初期の段階では低い。でも、創業初期のときこそ、ベンチャーで当たるか外れるかわからない時期なので、そのときに本当は一番お金が必要なのです。10年もたっていれば、エスタブリッシュされた企業になってしまうので、店頭市場でも何でも上場してやっていけるのではないかと思うのです。そうすると、その途中のところ、1年から5年の資金不足のところが、要するに、今あまりお金が流れていないということではないかと思うのです。

 それで、政府系金融機関とか銀行などがやっているのですが、本質的には金貸しをやっているのではないか。間接金融でこういうベンチャー企業を育てるようなことに何か限界があるので、直接金融型といいますか、投資家が(機関投資家も、個人の投資家も)ベンチャー企業の未公開株でも持ちやすいような仕組みが、まだ日本は足らないのではないかと思うのです。

 1つは、例えば年金基金などをとりますと、アメリカの場合は、上限が3%ということだけれども、額からすると、3%でも年金基金はすごく額が大きいですから、相当の金額がベンチャー企業の方に年金基金から行くことになっている。それから、いろいろな形のファンドがあって、イギリスのベンチャーキャピタルトラストというようなファンドですと、税制上の優遇措置が非常に厚くて、キャピタルゲインは一定限度までだと課税されないし、配当も非課税だし、投資減税もある。ベンチャーキャピタルトラストに投資すると減税が受けられるという相当手厚くなっている。つまり、直接金融のところで個人の投資家がお金を出しやすいような受皿というか、仕組みが、日本よりもよく整っているのではないかと思うのです。

 今、日本は店頭市場は活発になって、少しバブルではないかと言う人もいるぐらいですが、ただ、店頭市場も中身を見ると、そこの資料にもありますが、大部分がサービスとか商業が中心で、製造業とか情報については、アメリカですと情報とか金融が中心だと思いますが、日本の場合には必ずしもそうでない。流通とか商業がまだ中心だということがあります。それから、本当に店頭市場がもっと発達するためには、多分、ディスクロージャーが個人投資家にとって本当に(安心はできないですけれども、)リーズナブルな情報の下で市場に参加しやすいような仕組み。特にディスクロージャーだと私は思うのですけれども、アメリカの場合ですと、情報を売る企業について情報ベンダー会社というのですか、それに特化したような会社があって、そういうサービスを利用すれば相当詳しい企業の内容がわかるような、そういう仕組みも日本は欠けているのではないかという気がいたします。

 金融のことについて1点だけ。先ほど、日本は無限責任だからダメだという話でしたが、本来、株主としての起業家だけだったらば有限責任なわけです、出資分だけであるわけです。同時に債務者であるから、無限責任みたいになるわけです。私は、そういう無限責任でディスカレッジさせてしまうというのは、確かに改めた方がいいと思うのですが、ただ、今の資本主義の問題といいますか、ジョージ・ソロスなどのを読みますと、ヘッジファンドとかアジアの通貨危機とかロシアの通貨危機がどうして起こったのかというと、要するに有限責任だ、ファンドマネージャーも何もそういうことをやっている人は。そうすると、ダウンサイドのリスクはみんな債権者が負うような仕組みになっていて、それが銀行で言うと最後は預金者に全部しわが寄る、あるいは国が負う。そういう面も、逆の面も同時にあるのではないかと思います。

 3番目のコメントは、大学院の問題です。日本の大学院は魅力がないということで、ここに書いてある1つは、日本の場合はプロフェッショナル・スクールといいますか、アメリカですとロースクール、ビジネススクール、あるいはパブリックスクールとか、あるいはアドミニストレーションに特化したような大学院のコースがたくさんあります。日本も最近ようやく、パブリックポリシーに関連したものはいくつか、大阪大学とかがおやりになっていますけれども、まだまだ供給の方で言うと、そういう資格というのですか、特定のスキルを身につけたいというのに十分対応していないのではないか。それから、需要の方から言うと、逆に、そういうところでパブリックポリシーに近いようなこと、例えば国際協力とかいう分野で大学院を新しくつくって、問題は、例えば修士を出て就職先がない。つまり、需要する方も、企業の方が、身につけた--これはもちろんどの程度スキルを身につけさせたかということとも関係あると思いますが--、そういうスキルを正当に評価していない面もあるのではないかと思うのです。つまり、日本の大学院の教育が、必ずしもうまくいっていないのは、供給と需要と両方問題があって、供給の方で言えば、ニーズに合っていないといいますか、社会的なニーズとかに必ずしもカリキュラムが合っていないということと、その逆に、需要の方も、そういう大学院を出た修士でも博士でも、企業がどのくらい需要--それなりの投資をした人に対して評価をして遇するか。これは公務員でも同じ問題があると思っていますけれども。

 以上です。

〔 部会長 〕 ベンチャー・ビジネスについて、私の私見だけを申し上げます。

 今、委員が言われましたように、私のところも、ジャフコというベンチャーキャピタルを公開しているところがあるのです。社長は野村総研から行っておりますけれども、彼が言うには、本当に日本の企業にはハイテクでもって投資しようという企業がない、とはっきり言う。そうなると、全部アメリカへ行ってしまうというような状況です。

 1つは、ハイテクというか、高技術の創業者というのはまずゼロに等しい。そうすると、流通とか、サービスとか、そういうところに行ってしまうという問題があります。

 もう一つは、戦後よく言われましたけれども、ソニーとか、ホンダとか、オムロンにしても、直近では東京エレクトロンにしろ、あれだけの大きな会社に成長してきた。今、全然出てこない。比べてみて何だろうかということ、僕は、これを事務局の方に検討してくれませんか、と。あの頃はゼロから出発したからできたのか。今、豊かになったら、みんな囲い込んで大企業が持っているからできないのか、これはよくわかりませんけれども。

 もう一つは、ベンチャービジネスとかベンチャーキャピタル問題というのは、国の産業政策としてやるべき話ではないと思っているのですけれども、ここで、それは経済団体でもいろいろな意見を出し、あるいは役所もいろいろやって、経済審議会も、通産省も、大蔵省関係もやっている。ここで総括をして1つの結論で、今までのやり方は間違っていたのか、なぜダメなのか、何かはっきりとした結論を出すべき時期にきたのではないかという感じが僕は非常にしているものですから、今のままでは非常に生ぬるくて、従来言っていることを寄せ集めたにすぎないという感じ、部会長がこういうことを言ってはいけませんけれども、そんな感じがしているということです。

〔 F委員 〕 私も、そういう意味ではベンチャーキャピタルの方に、別に関わっていたわけではないですが、昭和40年代からそういうのをやってきています。私もずいぶんその仕事に携わったのですけれども、先ほど、年数が大分たってからしかお金を出していないという話でしたが、これは当たり前でございます。なぜかというと、出す方からすると、安全なものでないと出せません。それはサラリーマンがやっているからです。個人の方だと、多分、危ないうちから出せるのでしょうけれども、サラリーマンですから、10個やって1つ失敗したら、ものすごく叱られます。ほかの9個が成功するとしても、そんなことはないです。ベンチャービジネスの場合は、10個で1つか2ついくと大成功というのが一般的な評価だと思いますが、日本はそうではありません。

 ですから、サラリーマンがそういう形でベンチャーキャピタルの中にいる限りでは、基本的にはできない。それは、サラリーマンの評価制度を変えれば別ですけれども、できないということでございます。これが実態です。

〔 I委員 〕 まさに今のサラリーマンの話を私もしようと思っていたのです。日本のファンドマネージャーや銀行をサラリーマンがやっている限りは、恐らく、そういう結論になってしまうのだろうなということです。

 それ以上にもう少し話を進めますと、先ほどC委員の方から、日本の金持ちもアメリカには投資しているのだという話があったわけですが、それは何も金持ちの行動だけではないわけです。例えば、学者も、アメリカに行って箔を付けて日本に戻ってくる。そういうのがあらゆるところで起きているわけです、芸術をやられる方もみんなそうです、海外に行って、戻ってくる。なぜこういうことになってしまうのか、なぜ国内で正しく投資を評価されないのか。

 先ほど、村社会という言葉が出ていましたけれども、そういうところに私は大きな問題があるのではないかと。それが風土なのか、それとも規制なのかというのはいろいろあるわけですけれども。

 もう一つ、なぜお金が日本の新規事業になかなか行かないか。サラリーマンがリスクがとれないというのも1つ大きな理由ですけれども、その企業が製品をつくって、それを受け入れるマーケットが十分あるのかというのがもう1つのポイントだと思うのです。例えば、ホンダが四輪車をつくったときには、国内の誰も扱おうとしてくれなかった。結局、アメリカで扱ってもらって、それで実績をつくって日本に持ってきた。

 日本にも似たような例は何百何千とあるわけで、それを見ると異常なくらいの市場の閉鎖性、これは民民規制なのかもしれませんけれども、ここをどうするのか。

 例えば、ピアノの新しい商品をつくってトレードショーに持っていく。トレードショーで小さなブースを借りて-- 100ドルも出せばブースを貸してくれるわけですから--、この新しい商品を置くと、本当に大手のピアノメーカーの方から、業者から、商社みたいな人も含めて、みんな話を聞きに殺到してくる。これはおもしろい、どういう契約体系になりますかとか、ここが壊れたときにはどうなるのか、ものすごい勢いで来る。日本では、恐らくそういうことにはならない。

 また、写真技術を開発して、アメリカのプラモデルメーカーのいくつかに、こういうものを使ってみないか、全く新しいものができるではないかと言ったら、すぐ答えがきました。ぜひ会いたいと、私が行って話をしたら、これはすぐ採用したい、と。

 そのような雰囲気ですね。これが日本の新しいことを始めたい人がそういうところに行って、すぐそういう人に会ってもらえるかというと、全然そうならないです。

 この前もある話を聞いたのは、日本で土地の証券化を、実際にごく最近ですけれども、やったところがあります。これは大変大きな話だったのですけれども、それをやったのを、野村証券も開銀もいろいろ絡んでいるのですけれども、だれも発表しようとしないのです。これはプロジェクトファイナンスですが、なぜそういうところが発表したがらないかというと、発表すると、例えば、ある銀行が絡んでいて、このビルに対してこういうことをやりましたとなると、普通、日本の場合は、その銀行からお金を借りてビルを建てたいとすると、必ず、その銀行系列の建設会社を使えという話になってくるわけです。これはそういうのが全く入っていませんから、逆に、その銀行がこういうプロジェクトファイナンスをやったということを発表してしまうと、建設会社の方から、なぜうちを入れてくれなかったのかという突き上げがくる。ということで、みんな発表できないでいる。

 このようなところは、まさに風土の問題なのかわかりませんけれども、何とかしなければいけないのではないかという気がします。

 そこで、E委員が言われた点というのは、全く的を得ていると思うのですが、結局、日本で問題になるのは規制緩和、規制緩和の中でも新規参入だと思うのです。新規参入が自由になっていれば、今の現状が例えば寡占状況であっても、新規参入さえ自由であれば、大変な緊張関係がそこに生まれますから、そこで、消費者にとって構造改革が進みやすい世界ができるのではないか。

 昔、1970年の初頭ですけれども、アメリカの自動車会社が完全に寡占化されてしまって、GMと、フォードと、クライスラー、あとはアメリカンモターズという小さいのがありましたが、あのときに、GMをばらさなければアメリカの自動車産業の将来はないとずいぶん騒がれた時期があるのですが、結局どうなったかといいますと、トヨタが入ってきたわけです。みんな日本車を買ったものですから、もうこんな寡占の話もなくなって、今度はGMが慌てて、日本と手を組まなくてはならなくなるという形になったわけで、新規参入さえ自由であれば、私は、こういう問題はかなり何とかなるのではないかという気がします。

 日本の場合、ベンチャーというとハイテク、ハイテクということですけれども、ここでも指摘がありましたが、ほかの分野の新規参入も十分あっていいはずですし、むしろ日本の場合は、ハイテク以外で遅れているところがたくさんあるわけです。特にサービスは遅れていますから、ここをもっと新規参入しやすくしてやることは、直接的に大きなプラス効果が期待できるのではないか。

 最後に、金融の点ですけれども、先ほどの、サラリーマンではどうしようもないという点にもう一つ加えて、今回、ここで特にアメリカが非常に元気を取り戻している、ベンチャーみたないなものが非常に元気をつけているもう一つの理由は、ジャンクボンドなのです。多くの方に言わせますと、ミルケンという男が1人で資本市場を民主化してしまったと言います。つまり、今までの資本市場というのは、機関投資家やエリートの投資家の間だけのものであって、一般の人はちょっと株を買ったり売ったりするぐらいしか関与しなかったものが、ミルケンが、高いリスクなら高いリターンでいいではないか、という市場をつくってしまったわけです。そうすると、ごく普通の企業でも、ある意味ではジャンクボンドを発行するということで資金調達ができるようになってしまったわけですから、これが今のアメリカの成功に非常に大きな貢献をしたのではないか。

 そういう意味では、日本でも、投資家保護ということでありとあらゆる規制があるわけですが、結果として、その規制をクリアするものというのは極めて限られてしまう。そうすると、リターンも非常に低い。リターンが非常に低いものですから、年金の問題とかいろいろなものが次々と起きているわけですけれども。もっと、一部消費者保護はさておいて、また自己責任でジャンクボンドみたいな市場を開発してもいいのではないかという気がします。

〔 J委員 〕 日本のベンチャーキャピタルの特徴が議論されていましたけれども、サラリーマンがやっているということのほかに、日本のベンチャーキャピタルというのは、人の金を使ってやっている。これは親会社の金か、関連会社から集めるか。そういうことになると、資料の11ページにあるような結果というのは、むしろ、私はよくやった方ではないか、と。つまり、ベンチャーキャピタルという日本になじまないものを日本に取り込んで、日本的なやり方で思いっきり展開した結果がこういうものだというふうに、私は、少しこれをポジティブにとらえたいと思っています。

これではダメだから直接金融を引っ張り込むのだといっても、なかなかその展望というのは難しいだろうと考えています。

それで、少し論点が元に戻るのですが、E委員が前に、起業が少ないということを長期と短期で整理されたのですけれども、私もそのとおりだと思います。私は、長期的に、傾向的にどうして日本の起業が少ないかということの私見を述べたいのです。

今日の報告に「巨万の富」という話がありましたけれども、日本で起業が少ないというのは、1つは、金銭的に多分、元が取れない。中小企業の社長になるよりも、大企業で出世した方が生涯所得が多いという問題。それから、人生の安定・不安定という問題があるのだろう。不安定の方はマイナスですから、それは引き算になって、起業家を目指すというのは非常に不安定要素が高くなる。今日の報告にもありましたように、1回失敗するとおしまい。それよりは、安定を望む。

 それと、もう一つ私はあるだろうと思います。それは富の反対側ですが、巨万の富、ビル・ゲイツという話によくなるのですけれども、これからは起業を興す動機の中で、オレは金持ちになるのだという富の動機というのは、相対的には少し薄くなっていくだろう。どこかにも書いてありましたけれども、コミュニティーベンチャーとか、社会貢献とか、世界への接点とか、そういうプラス・アルファが起業の動機になってくるのではないかというふうに思います。ですから、あまりビル・ゲイツ型で引っ張らない方がいい、というふうに私は思っております。

 例え話をすれば、お医者さんの世界なのですけれども、お医者さんの世界では、開業医になるか、地方の病院の院長になるというのが一番金銭的には恵まれるのですけれども、実際には、それを選ぶ人は非常に少ない。昨日もテレビでやっていました。非常に安い給料で病院で働く人が多いです。これは、医者として接点が少なくなって、世界が縮こまってしまう。言ってみれば、人生がおもしろくなくなってしまうという問題があるのです。

 ですから、起業家が直面するであろう、そういう困難というものをある程度緩和するようなことをすることが、長期的、傾向的に起業を高めることになるだろうと思っています。

 ちょっと長くなりましたけれども、あと大学のことだけを申し上げておきたいのです。資料2の4ページに、平成10年の構造改革推進研究会の話が書かれているのですけれども、実は、平成10年12月の2カ月前に大学審議会の報告というのが出ています。厚くて読めないので、要旨というのがあるのですが、時間があったらそれをちょっと見てほしいのですけれども、今、大学審議会を中心にして、今のままの大学教育でいいと考えている人は少数派なのだろうと思います。ただ、そこの上の2つの「自由な大学設置」と「大学教育における営利企業参入」という問題ですけれども、この2つは、私は慎重に考えた方がいいと思う。下の3つには、全く異議がありません。ヨーロッパを見ても、学校と病院と教会というのは大体、営利企業でもって金持ちになった人が寄付してつくるというパターンが多いです。しかし、一端、その教育活動を始めたら、それ自体が営利であっていいのかということは、かなり慎重に議論した方がいいだろう。ここで、いくらそういうことを言っても、日本の教育界との合意という問題があって、いわゆる営利の問題というものをあまり簡単に議論しない方がいいのではないかと思っています。

 ここに、社会のニーズに対応した教育をやりなさいという話があるのですが、それはそのとおりですけれども、社会のニーズというのも、私の経験でも、揺れる。つまり、不況になれば専門教育が好まれるし、好況になって安定すれば教養科目が好まれるという問題はある。だから、今どなたかがおっしゃっていましたけれども、不況のどん底の中でこの議論をしているのだということを自覚してやった方がいいだろうという気がしています。

 以上です。

〔 K委員 〕 時間もないようですから、簡単に申し上げさてせいただきたいと思います。

 三菱総研さんの中間報告が資料2の方に反映しているという意味で、風土の分析を盛んにやられているということで、それはそれなりに腹に収まることも多いのですけれども、戦後の50年という、ここに書いてあるとおり、これだけで考えてみても、当時の、あるいは今までの経済社会の要請に応じて意識や風土ができているということがあるわけで、何か天然自然に社会風土が日本にでき上がったわけではないということを考えると、そういう意味の、もうちょっと評価した書きぶりがないとなかなか落ちていかないところがあるのではないだろうか。ところで、環境がこう変わる。したがって、私たちの社会もこう変えていこう、というようなトーンの方が、もうちょっとスッと落ちるかなと思いました。

あわせて、そのときに、もう少しこういうふうにと言ったときには、風土のことを詰めていくというより、結局、私たちのビヘイビアを変えていくということですから、簡単に言いますと、システムを変えていくしかない。その中で、まただんだん意識ができ上がってくる、風土ができ上がってくる。システムを変えていく。

私は、そういう意味で、例えば、先ほどからも出ています、日本のベンチャーといったときに、何かよくわからないものがありますけれども、産業構造を改革する、産業構造を転換するということで考えていきますと、10年のスパンで考えたりすると大変早いのは、ある意味で言うと、既存企業、これが新規産業にどんどん出られるという仕組み、そういうものをどんどん作れるようなシステムをもっと掘り下げていった方がいいのではないか。

 私は、そういう意味で、連結納税というのは産業構造転換促進税制だというふうに言ったりするのですが、税制でありますとか、もう一つは、ないないと言いますけれども、近年、株式市場をものすごく賑わして大変な株価を作ったりしているようなものがあるわけで、株式市場のもうちょっと緩やかなあり方、市場からお金を集められる構造、そういうものについてもっと積極的に突っ込んだペーパーがあった方が現実的ではないかと思っております。

 もう一つ、教育のことについて、こういうことでの議論が始まるといくらでも議論が深まるのですが、端的な結論だけを私は申し上げますと、初等教育からずっと上まで議論していってもしようがない。今の段階にあっては、高等教育はどうあるべきかというようなことに掘り下げるべき優先順位があるのではないかと思っております。

〔 部会長 〕 L委員は、本日まだご発言がございませんが、どうぞ。

〔 L委員 〕 では、箇条書き的に申し上げます。

 三菱総研の方からお話がありました資料、この内容が悲観的で、やや否定的ではないかということでありますが、私は大変賛成でございます。むしろ、時代というものが全面的に大きく変化している。大事なことは思い切って、良くも悪くも過去を否定して、そこから出発するという、その度胸が今は必要ではないかということです。

 最初の部会から申し上げていますけれども、命令、支配、管理、あるいはまた依存、従属、甘え、画一、無個性、そういう時代から全く変わってしまった。それは、堺屋大臣も、規格大量生産画一社会が終焉したということをしきりに言っておられますけれども、それはそのことで全く新しい時代というものを迎えているのだ、と。言ってみれば、舞台が、今までの歌舞伎の舞台からミュージカルの舞台に変わったのだという認識をもって、全く新しい感覚で臨まなければいけないのではないか。ですから、日本的な要素の容認というもの、これは必要だということは認めます。だけれども、この際、容認するとか、それを前提にと考えていると、改革は中途半端に終わってしまうのではないか。弁慶の舞台からキャッツの舞台には変わらないのではないか、キャッツの舞台に弁慶が出てくるというような、そういう改革になるのは非常に考えなければならないのではないかと思うわけです。

 それから、先ほどからいろいろな委員も申されていますけれども、E委員も、I委員も、D委員も、皆さんおっしゃっていましたけれども、今日の「企業や個人の創造性と自由度の高い経済社会」を実現するためにはどうしたらいいかというのは、私の持論ですけれども、3つしかないと思うのです。情報公開、規制撤廃、地方分権、この3つによって自由と、創造と、生き生きとした社会というものが生み出されると思うのです。ですから、もし構造改革ということであるとするならば、この3つを押さえなければしょうがない。

 恐らく、地方分権、地域主権という問題はこれから政治問題になっていくと思います。

 そういう中で、この3つの規制撤廃については、私は、新規参入の規制撤廃と、新規事業が参入しやすいようにというのは全くそのとおりで、そこを中心にして、特に経済的規制というものは撤廃する方向でまとめていただければと思っているわけです。

 それから、教育問題については、K委員の、高等教育からだ、優先順位はそうだということもあるかもしれませんけれども、臭いものは元から正さなければダメだという例で、初等教育を直さなければならない。一本化の一本道を歩いてきた人を急に大学で多様化することができるかどうか、このことについては、私は大変疑問に思っているわけです。むしろ、初等教育というものを思い切って学区制を外すとか、学校設立を自由化するとか、あるいは義務教育の見直しをするとかいうようなことを徹底的にやらないと……。要するに、今8歳、10歳の子が多様性を求めているわけです。何も大学生になって多様性を求める、大人になって多様性・選択を求めているということではなくて、子供の頃からいろいろな多様性を求めているわけです。そういう中で、6・3・3・4制というか、今度は6年一貫でやるというようなこといろいろと言っていますけれども、さあどうかなという気がします。もっと抜本的な、根本的な改革をしないと、多様な人間・人材というのは出てこない。したがって、ベンチャーというのは、どんなに制度・システムをいろいろ整えても出てこないのではないのか、というような感じがするわけです。

 最後に、三菱総研さんのレポートの中で、2つの言葉だけで取り上げれば、仮説【3】のところに、「官に追従しがちな」というふうに出ているのですけれども、官に追従しがちなということではなくて、「官が管理しがちな」ということではないのかと思うのです。このところで、「官に追従しがちな企業体質」ということですけれども、むしろ、官が管理しがちな企業体質、こういうふうな見方もできるのではなかろうかということです。

 もう一つ、仮説【2】で言うと、企業が無限責任を負うとともに云々とありますけれども、同時にこれは、融資する金融機関の怠慢ということもあると思うのです。要は、融・出資が的確に行われないというか、言ってみれば有担保主義といいますか、担保があれば金を貸す。事業の内容をとやかく言うのではない、というところの問題がここに出てきているのではないか。そのあたりも、事業の価値を見極める能力、そういうようなことも見ておく必要があるのではないか、そんなことを感じました。

 以上です。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。

 教育の問題は、 100人寄ったら 100の意見が出るということです。教育問題は構造改革の非常に重要な問題でありますので、本日は、日教組の問題とか、あるいは文部省行政改革の問題とか、そこの問題までは触れませんでしたけれども、これからその辺をやらないとだめだという話もあります。今後、どこまで追求できるかということだと思います。

 まだ、いろいろとご意見も多いかと思いますけれども、時間がまいりましたので、本日の審議はこれまでとさせていただきまして、さらにご意見がございましたら、ぜひ事務局までご連絡をいただきたいと存じます。

 それでは、次回の日程につきまして、事務局から説明をお願いします。

〔 事務局 〕 資料4でお配りしておりますが、一応確認させていただきたいと思います。次回は第5回目でございます。4月13日(火)10時~12時、場所はこの建物の4階の 404号室でございます。議題は2つ用意しておりまして、環境と調和した経済社会を実現させるための構造改革と、構造改革の経済効果についての数量的な分析を予定しております。よろしくお願いいたします。

〔 部会長 〕 それでは、第4回の構造改革推進部会の審議は以上といたしたいと存じます。

 三菱総研の大野さんには、いろいろありがとうございました。

 本日は長時間のご審議、誠にありがとうございました。

 それでは、次回もよろしくお願いいたします。

--以上--

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