グローバリゼーション部会(第3回)

議事録

時: 平成11年3月15日

所: 共用第1特別会議室(404号室)

経済企画庁


グローバリゼーション部会(第3回)議事次第

日時 平成11年3月15日(金) 14:00~16:00

場所 共用第1特別会議室(404号室)

  1. 開会
  2. 議題1:
    外務省ヒアリング
    21世紀における我が国の基本的な対外経済政策について
  3. 議題2:
    大蔵省ヒアリング21世紀の国際通貨金融体制と我が国の役割について
  4. 議題3:
    通商産業省ヒアリング21世紀の国際貿易投資体制と我が国の役割について
  5. 閉会

(配付資料)

  1. 資料1  外務省 説明資料
  2. 資料2  大蔵省 説明資料
  3. 資料3  通商産業省 説明資料/

グローバリゼーション部会委員名簿

部会長
八城 政基    シティバンクジャパン会長
部会長代理
田中 明彦    東京大学東洋文化研究所教授
糸瀬  茂    宮城大学事業構想学部助教授
國谷 史朗    弁護士
高阪  章    大阪大学大学院国際公共政策研究科教授
篠原  興    国際通貨研究所専務理事
下村 恭民    政策研究大学院大学教授・埼玉大学教授
高木  剛    ゼンセン同盟会長、連合副会長
中西 輝政    京都大学総合人間学部教授
浜  矩子    株式会社三菱総合研究所経済調査部長
ロバート・アラン・フェルドマン   モルガン・スタンレー証券チーフエコノミスト
グレン・S・フクシマ   アーサーD ・リトル(ジャパン)株式会社取締役社長
松本  大    ゴールドマン・サックス・グループLPリミテッド・パートナー
若林 之矩    労働福祉事業団理事長


〔 部会長 〕 それでは、ただいまから、第3回のグローバリゼーション部会を開催させていただきます。

 本日は、ご多用中のところご出席いただきまして、誠にありがとうございます。

 それでは、本日の議題に入らせていただきますが、本日は、21世紀における我が国の対外経済政策に関しまして、関係省庁からのご説明をいただき、それをもとに議論を行う予定であります。

 議事は、各省からご説明いただいた後に、一括して質疑の時間をとるという形で進めたいと思います。ご説明いただきます省庁の順番は、外務省、大蔵省、通商産業省ということにさせていただきます。

 なお、本日はご欠席でありますけれども、J委員から、今回の議題について文書でご意見が寄せられておりますので、どうぞ後でご覧くださいませ。私がサマリーを申し上げて間違えるといけませんので、そのまま読んでいただく方がいいのではないかと思います。中には、短期の資金移動についてのご意見も入っているようですし、円の国際化とか、あるいは為替レートについてもご意見を述べておられるようでございますので、どうぞお読みくだされば幸いと思います。

 それでは、まず、外務省からご説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

〔 外務省 〕 本日は、グローバリゼーション部会で、21世紀における我が国の基本的な対外経済政策についてご報告させていただく機会を得まして、大変光栄に存じております。時間も限られておりますので、直ちに本題に入りたいと思います。

 お手元の資料のご説明を簡単にさせていただきます。最初の3枚紙は、私が本日お話しさせていただくレジメでございます。その後に、関連資料として幾つかの表、グラフ等がございますが、これは時間の関係もございますので、適宜折りに触れてリファーするということにさせていただければと存じます。

 それでは、早速、レジメの1から入りたいと思います。まず、グローバリゼーションの定義についてはいろいろご議論もあろうかと思いますが、本日私がお話しさせていただく前提として、私の頭の中には、冷戦の終了と情報革命によって、民主主義と市場経済が一挙に世界に拡大しつつある現象といった感じでとらえております。

 資料の1ページに、横につぶれたような世界地図がございますが、これは冷戦初期においては、いわゆる市場経済がOECD諸国に限られていたのが、冷戦が終わった時点では、それがロシア、東欧等の移行国、あるいは中国のような開放経済をとっている国、さらには東南アジアのようないわゆる新興国にまで市場経済圏が広がったということを図示したものでございます。ほぼ人口にして10億人だったものが、恐らく40~50億人のオーダーに一挙に広がったということが申せると思います。

 そこで、グローバリゼーションの流れというのは、後戻りするものかどうか、不可逆であるかどうかという点でございますが、私の感じは、民主主義と市場主義への流れというものは、一つの歴史の不可逆の流れではないかと考えております。言い換えれば、アメリカの力、即ち軍事力、経済力、政治力、あるいはソフト・パワー(説得力)という力によって広がったというよりは、民主主義と市場経済自体が持っている普遍性、あるいはそれゆえの自己拡大力といいましょうか、そういったもので広がりつつあるということでございます。そういう意味で不可逆と申し上げてよろしいのではないかと考えております。

 その一つの証左としまして、しばしばグローバリゼーションはアメリカナイゼーションではないかと言われますけれども、アメリカにおいてもグローバリゼーションというのは問題になっていることが挙げられます。これは所得格差の拡大であり、ドロップアウトに対する社会の懸念であります。そういったことが問題になっていることをとっても、グローバリゼーションが直ちにアメリカナイゼーションではないということが言えると思います。

 グローバリゼーションが人類にもたらす利益、これは申すまでもないと思います。経済面に限ってみても、ここにございますような3つのことが指摘できると思います。詳細は省略させていただきます。

 問題は、グローバリゼーションが人類にどういう課題を提起しているかという点でございます。ここでは6つの点に整理させていただきしました。

 まず第1は、市場のパラダイム・シフトでございます。巨額な民間資本が誕生し、これが自由に世界中を動き回ることによって、これまでの国が国境において、資本であれモノであれヒトであれ、そういう移動をコントロールしてきた、それができた時代が大きく変わっているということ、これが一つの大きな特徴であろうと思います。資金面でも、かつては公的資金が、ODAであれ、いろいろな投資であれ、中心でございましたが、いまや民間が中心であるということが申せると思います。

 第2番目が、システミック・リスクでございます。金融、あるいは情報等がネットワークでつながれているがゆえに、一地域、ひとつの国のクライシスが一挙に世界中に広まってしまう、いわゆるシステミック・リスクが生まれたということでございます。これはアジア危機、あるいはこれから問題になりつつあるいわゆるコンピュータ2000年問題等は、その典型であろうと思います。

 3つ目は、地球の有限性に基づく問題と書いてございますが、いわゆる食糧、エネルギー、環境等の問題は、市場がもともと地球が有限であるということを想定しないで、どこまでも安いものをより多くという原理で動いているがゆえに生じている問題ということで括ってあるわけでございます。

 4つ目は、市民に対する直接の脅威と書いてございますが、国境が事実上低くなった、あるいはなくなったことによって、自由に動くヒト、モノ、カネ、サービス、情報といったものがすべていいものばかりではない。悪いヒト、悪いカネ、悪いモノ等も動くわけでございます。その結果として、国のコントロールをかいくぐって、直接市民に脅威を与える勢力が出てきた。それは麻薬であり、国際組織犯罪であり、エイズ等の問題でございます。

 5つ目は、過激な競争がもたらす問題。競争というのは勝者もあれば敗者もあるわけです。そういう意味で、敗者をどのように保護するか。弱者の保護というための社会的な安全網が必要になってきているということでございます。

 最後に、市場の画一化と個人・民族のアイデンティティーの問題でございます。これは日本でも一部、グローバリゼーションに対する慎重論者に見られる議論でございますけれども、市場の画一化によって、画一化されているのは経済だけではなくて、結果として文化やものの考え方まで画一化してしまうのではないかという危機感、これは日本だけではなく、ヨーロッパ等にも相当広がってあります。

 典型的な例がフランスでございます。一昨年、ル・モンド紙の記者でビビアンヌ・フォレステールという女性が「経済の恐怖」という本を書いてベストセラーになりましたし、また、その年の公務員ストライキのデモのときのバイブルだったと言われております。これは要するに本来経済というのは国民のためであるべきものであるのが、結果として企業のためになり、その結果として、庶民が経済から放り出されている。それがひいては文化を破壊しているといった、経済学ではなくて、むしろ思想的、文学的な本でありまして、これが爆発的に売れて、今22か国語に訳されているということから、画一化に対する文化的な抵抗はかなり広まっていると申せると思います。

 以上が、グローバリゼーションがもたらす課題でございます。

 しからば、国としてどのような対応をすべきかということになりますが、その前に一言、国家主権そのものが今大きな変遷、変質を遂げているということに触れておかなければならないと思います。

 自由化が進むことによりまして、これまでの国家の主権は相当程度縮小されてまいりました。最近、国際政治学者でスーザン・ストレンジという人が「国家の退場」という本を出しましたけれども、国家は国際関係の中から徐々に身を引きつつあるといったことをテーマとした本でございますが、現に、例えば関税、モノの流れ、ヒトの流れ等について、国家の果たす役割、国家の規制の度合いは非常に減っております。

 その意味で、国家主権が縮小していることは間違いございませんが、しかし、同時に、国を守り、治安を維持し、税金を取ってそれを国民に還元する、そういう基本的な国家の主権は依然として残っております。残っておりますと同時に、残っているものについて各国間、国際間で協力しなければ、十分にグローバリゼーションに対応できないという状況になっております。例えば警察同士の協力、あるいは税関同士の協力といったことも、これはサミットのようなコンテクストにおいても非常に進んでおります。

 同時に、国家の主権が縮小したそのバキューム、空間を埋めているのが、非国家プレイヤーの活躍でございます。これも先生方ご案内でございますので、あえて詳しくは申し上げませんが、ここにございますような国際機関、企業、個人、NGO等のいわゆる市民社会、シビル・ソサエティーといった様々な主体が国際関係で活躍し、影響を及ぼしつつあるという状況でございます。これはある意味で、新しい状況の下で、市民の日々のきめ細かな関心に国家が十分に対応できない。選挙で選ばれた政府が、十分に一人一人の国民の関心に応えていけない。そういう新しい時代に対応して、市民社会が一定の役割を持ってきたということが申し上げられると思います。

 そういった事情を背景としまして、それでは一体、国家として、日本として、この状況にどう対応するかというのが次のページでございます。まず、日本の世界における位置づけは、アジアで3分の2の経済を占めていると言われておりますが、アメリカ、ヨーロッパに次ぐ経済的な地位、影響力は、今後も変わらないと思います。幾つかの関連資料がございますが、この時点では省略させていただきます。

 それから、今後の日本が行うべきこととして、日本自身の改革の問題がございますが、これも本日のテーマではございませんので、省略させていただきまして、次の3)の国の対外経済政策に移りたいと思います。当面の政策課題といたしましては、新しいパラダイムにふさわしいルールやスタンダードを作る。この過程に積極的に参加する。あるいは新しく生じたシステミック・リスクを回避するための対策に積極的に参加していくということでございます。

 具体的には、後ほど大蔵省、通産省からご説明があると思いますが、国際金融体制の再構築、WTOの新しいラウンド、あるいはOECDで行っております多数国間投資協定交渉といった問題が具体的な例だろうと思います。

 もう一つは、地球規模問題への対応でございます。これは先程のレジメの1枚目の1の3)の3つ目と4つ目、地球の有限性に基づく問題や、市民に対する直接の脅威といった問題に対応する対策でございます。

 もう一つが、セーフティー・ネットの整備でございます。これは国内の弱者、失業者保護だけではなくて、国際関係における弱者、マージナライズされた地域に対する支援といったことが中心になります。アジア支援についても、日本としては特に社会的な弱者対策について相当の貢献をしていることは、別添の資料5をご覧いただければおわかりいただけると思います。

 そこで、こういった課題に取り組むに当たって、幾つか念頭に置くべきポイントがあると思います。

 その第1が、分野横断的アプローチの必要性でございます。いまやいかなる問題も、個別の特定分野の専門家のみで解決できる問題ではなくなっております。ここに例がございますように、金融、貿易、投資、開発、あるいは社会政策、これは雇用、福祉、環境といったものが入ると思いますが、そういった問題は、お互いに極めて緊密にリンクしているということで、一つだけを切り離して議論することはできないと思います。一方で、個別の分野のエキスパティーズが一層必要とされると同時に、他方で、分野横断的なアプローチもまた必要になってきているということであろうと思います。そして、それに見合って、それぞれに対応している国際機関、IMF、世銀等、ここにございますような機関についても、それぞれが相互に調整し合いながら、分野横断的な対応をしていかなければ、新しい問題には対応できないという状況にきていると思います。

 その具体的な例が、最近の電子商取引をめぐるルールづくりでございます。資料の15~16ページの資料6を見ていただくとわかりますように、現在、電子商取引のいろいろな側面につきまして、どういう国際機関が問題の検討を行っているかということをマトリックスにしたものでございます。これは昨年10月にオタワで開かれました電子商取引閣僚会議のときの資料をもとに作ったものでございますが、電子商取引という新しい事象に対応するために、これだけの分野でこれだけの機関が対応をしなければいけない。そうしなければ電子商取引全体に対する統一的なルールができないという状況であることがおわかりいただけると思います。

 次に、「経済と社会の関連性の密接化」と書いてございますが、特に最近の一つの傾向は、貿易とか投資といった経済のルールづくりに当たって、労働基準とか環境基準、いわる社会条項的なものを含めるという動きが非常に盛り上がってきております。これは来るべきWTOのラウンドでもそうでございますし、あるいは国際金融機関の貸出においてもこういったものをコンディショナリティーにすべきであるという議論が非常に高まっております。こういう経済と社会問題の密接化にどのように対応するのかということも大きな課題であると思います。

 次に、こういった問題に日本として対応していく上で、どういう座標軸でものを見るべきかというのが、2でございます。価値観をどこに置くか。若干、価値観という言葉は誤解を招くかもしれませんが、決してイデオロギーという意味ではなくて、どういうルール、何を軸にすることが日本にとって一番国益になるかという観点から、ここにあるような観点を考えるべきであるということで幾つか掲げておきました。

 第1は、自由化の功罪といいましょうか、アメリカが言っているような、とことん自由な市場に任せるのがいいのか、あるいは一定の国家の役割が必要であるのか。最近のはやりの言葉で言えば市場対国家ということになりましょうが、それについて日本としては一体、自らの体力や性質から見てどの辺に身を置くのがいいのか、どういったルールが世界的にできるのがいいのかということを考えることが必要であろうと思います。

 その次は、グローバリズムかリージョナリズムか。言い換えれば、国連、WTO、あるいはIMF、あくまで中心でいくのか。それとも、アジアにおけるよりきめの細かい対応をすべきなのか。例えばAPEC、あるいは一時提案されて流れましたが、AMFのような発想、そういったものをやっていくのか。恐らくこれらは相互補完的な側面もあろうかと思いますが、日本として一体どちらにウェイトを置くことが国益にかなっていくのかといった視点も必要であろうと思います。

 それから、グローバル・スタンダードとアジア的価値観。これも若干ジャーナリスティックな表現でございますが、いわゆるグローバル・スタンダードと言われているものとアジア的な考え方といったもの、どのような調和が必要か。言い換えれば、経済の合理性、あくまで合理性を追求する経済の世界の話と、いわる非合理な安全、安心を求める一種の文化、社会の側面と、これが両立できるのかどうかといったことが一つの課題になると思います。

 それから、少し観点は違いますが、最近のユーロの誕生のような欧州の台頭と日米関係。日・米・欧の関係を今後どのようにマネージしていくのかということも、先ほどのグローバル・スタンダードとアジア的な発想とも関連してきますが、かつ、日米の特殊な関係を踏まえ、政治、経済外の側面も含めて、どういう日・米・欧関係を作っていくのかといったこと。こういった幾つかのことが、先ほど申し上げたルールづくり、あるいはスタンダードづくりにおいて、日本としてしっかりとした座標軸を作らなければいけない分野であると思います。

 最後に、こういった日本の国益に基づいた価値観なり判断を国際的なルールに反映させていくために非常に必要なことが、日本のいわゆるソフト・パワーであると思います。日本が日本の正しいと思うルールを世界のルールに広げていくために、自己の論理を相手に説得する発信力と申しましょうか、説得力、そういったものがまだまだ日本には不足していると思います。これは単に外務省とか政府だけができる問題ではなく、日本全体の話であると考えております。官と民の一層の連携。民が開発したスタンダードを世界に広げるという側面においても、官としてできることはあると思います。そういう意味で、官と民の連携といったことがますます必要になってくると思います。

 最後に、市民社会の成熟による国民の力の結集。まだまだ日本ではいわゆるシビル・ソサエティーというのは成熟していないと思いますが、世界の流れとしてそういう方向にあると思います。そういう意味で、国民一人一人が市民として目覚め、議論をし、何が日本にとっていいかということを議論していく。そういう国民の力を結集することによって、はじめて日本としてソフト・パワーが発揮できる。その結果として、先ほど申し上げましたようないろいろな分野横断的なルール・メーキングに日本として貢献ができ、また、自分の主張が反映できることになるのではないかと考えております。

 時間がまいりましたので、とりあえず私の発表はこれで終わらせていただきます。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。

 それでは、次に、大蔵省からご説明をお願い申し上げます。

〔 大蔵省 〕 お手元に、大蔵省説明資料「21世紀の国際通貨金融体制」という資料がございますが、これに沿ってご説明させていただきます。

 本日、グローバリゼーションについてお話ということでございますが、現在、私どもがいろいろ議論しております中で、2つ大きな問題がございます。一つは、国際金融通貨制度と申しますか、俗にアーキテクチャーと言っておりますが、これをずっと議論してきております。もう一つは、皆様ご承知かと思いますが、いわゆる円の国際化。本日は、この2点についてご説明させていただきたいと思います。

 まず、資料の1ページにございます「21世紀の国際通貨金融体制」ということですが、これは皆様よくご承知のとおり、一昨年の夏にタイの通貨危機をはじめとしまして、アジアの各国に通貨危機が飛び火し、その後、ロシアとかブラジルでも危機に陥ったということで、G7、もしくは新興市場国も入れましたG22、あるいは暫定委員会、いろいろな場で、いわゆる国際金融アーキテクチャーについて議論が行われてきたわけでございます。

 これは現在でも続いておりまして、今後、4月末に予定されておりますIMF・世界銀行の暫定委員会、開発委員会、それからケルン・サミットに向けて、いろいろ議論が進んでいくことになるかと思いますが、現在の議論には大きく言うと2つ目標があるかと思います。

 一つは為替相場の安定ということでございまして、ご高承のとおり、先ほど言いましたように、タイの通貨危機以降、アジアの通貨は今一斉にフロート、つまり完全にドル・ペッグから自由になっている。将来、こういったアジアの通貨体制がどうなるのか。先進国側から見ても、今年の1月にユーロが登場いたしまして、各国も今後ユーロが出てきたということで、通貨が多極化時代を迎えるのではないかということで、為替相場についての議論がいろいろ出てきている。こういう中で、どうやって安定させていくか。これが一つの大きな問題。

 もう一つは、一昨年夏のアジア危機以降、非常に大量な民間資金が国境を超えて移動するようになってまいりまして、こういう国際通貨危機の予防・解決。これは従来と同じやり方ではなかなか難しいのではないかということで、今いろいろ議論が行われているわけでございます。

 特に、G7で今どういうことが議論されているかということでございますが、一つは、先進国における金融機関のプルーデンシャル規制の強化。つまり健全性等の観点から、金融機関の健全性を守っていこうということでございます。

 2番目は、新興市場諸国の金融システムの強化。先ほど申しましたように、今回のアジアの危機では、タイ、韓国といった国の民間銀行が大量に資金を海外から借りていた。そういった点からすると、国際通貨システムを安定化させるためには、そういった国の金融システムの強化が必要であろう。これは透明性とか監督当局による監督が入ってくるわけです。

 持続可能な為替制度とは、先程申しました点でございます。

 次に、危機への対応策、民間セクターの関与ということで、先程申しましたように、かつてのメキシコ危機とかブラジル危機は、危機ではあったのですが、基本的には政府が借りていた海外からの債務をどうするかという問題で、これは国際機関と先進国とその国の政府が議論すればすんだ。ところが、韓国やタイ、インドネシアの場合には、民間が借りている資金が大変に多くございまして、これについては、まず民間と民間の間でいろいろ今ご議論いただいているわけです。不良債権の処理の話とか、金融セクターの改革の話というのはまさにそういう問題。これが最近出てきた新しい話でございまして、こういった問題にどうやって対応していくのか。

 そういったことを背景にすると、IMFのプログラムにおいても、今までと同じようなやり方でいいのか、かつまた、大量な資金が必要とされるようになっておりますので、十分な資金手段があるのかという問題。ひいては、そこから暫定委員会、開発委員会の強化といった問題が出てまいります。

 最後に、金融危機の社会的影響ということで、例えば韓国などもそうですが、経済構造改革を今後進めていく上で、多くの失業が出るとか、いわゆる弱者が非常に生活が苦しくなるのではないか。例えば金融機関の資本増強するために、財政的にも社会保障関係の予算にしわ寄せがいくのではないかといったことから、いわゆるソーシャル・セーフティー・ネットをどのように強化していくのかといった問題があるわけでございます。

 我が国としましては、こういった問題について、一つは、マネージド・フレキシビリティーと言っておりますが、安定性と柔軟性のバランスのとれた為替相場制度を検討していく。もう一つはIMFを改革していく。そういった2つの提案を行っているわけでございます。

 2ページにまいりまして、それでは現在、G7でどういう提案が出ているかということですが、これは去る2月20日にボンでG7がございまして、このときのG7のコミュニケの一部を抜粋したものでございます。

 特にご注目いただきたいのは、最初のパラグラフ12の3つ目の段落、「我々は、IMFがBIS、各国中央銀行及び他の関連する当局との密接な協力のもとに取り組んでいる金融政策及び金融監督の透明性に関する基準の策定に向けた進展」。これは今、各機関がいろいろ議論を行っておりまして、こういうものをまとめて、いわゆるティートマイヤー報告、ドイツの連銀総裁ティートマイヤーが出した報告に基づいて、新しいフォーラムが作られようとしております。

 それから、「IASC(国際会計基準委員会)による国際的に合意された会計基準の核となる基準の完成」。これは債券発行が今非常にマルチナショナルになってきておりますので、例えば債券発行するときの財務諸表については、国際的な基準を作らないと、国際的な投資家も安心して投資することができないといった側面から、議論が行われております。

 もう一つは、「OECDによるコーポレート・ガバナンスの原則」。これも先ほど言いましたように、民間と民間の関係が非常に大きくなっていますので、こういった観点からコーポレート・ガバナンスについてある程度合意できるのはどういうことかということについて、5月の閣僚理事会に向けて今検討が進められております。こういったいろいろな議論の進展を支持する。

 次の段落ですが、「我々は、適切な民間セクターの関与を伴いつつ、緊急短期クレジット・ラインを供与する、強化されたIMFの融資制度の創設に向けた大きな進展を歓迎する」。IMFにもっとたくさんの資金を一度に出すような貸付手段が必要だろうということでございます。

 次の段落の最後の行からですが、読みますと、「我々すべては、危機の予防・解決におけるIMFのプログラム及び手続きを改善する方策や、暫定委員会及び開発委員会の組織改革を含む適切な組織改革を検討することに合意する」ということで、例えばIMFのプログラムを作るときに、もっと先進国の各国、援助国の関与を高めるとか、トラブルに陥った国の主体性をもっと認めるとか、そういったことを今後議論していくということになっております。

 パラ13では、「望ましい社会政策のあり方に関する一般諸原則についての作業が極めて重要」。これは先ほど申しましたソーシャル・セーフティー・ネットの強化という考え方でございます。

 最後のパラ14ですが、「我々は、ヘッジファンド等の高レバレッジ機関(HLIs)との取引に内包されているリスクを軽減する方策についてのバーゼル銀行監督委員会による提言を議論し、支持した」。バーゼル銀行監督委員会から、「モニタリングが重要だ、お金を貸している先進国の銀行に対する監督とか透明性を高めていこう。しかし、なかなかヘッジファンド自体を直接規制するのは難しい」。大まかに言いますと、そういった議論が行われているわけですが、そういった提案を支持する。「また、IOSCO(証券監督者国際機構)や他の関係する機関もHLIsについての問題に取り組んでいることに留意し、近々彼らからの報告を受けることへの期待を表明した。我々は、HLIsとの取引の際には、金融機関による適切なリスク管理がとりわけ重要であるという点について、バーゼル銀行監督委員会に同意するものである」。こういった報告が行われているわけでございます。現在、G7では、これに基づいて、さらに専門家による議論が続けられている。

 では、それに対して我が国の立場はどうかということでございますが、4ページにまいりまして、「我が国の基本的立場」。これは昨年12月15日に宮澤大蔵大臣がフォーリン・プレスクラブでスピーチを行いましたポイントでございますが、大きく分けて3つございます。

 一つは、「短期資本移動のもたらすリスクと対応策」ということで、よく順序だった方法で資本自由化を進める。つまり、何でもかんでもただ自由化するだけではよくない。自由化するにしても、きちんと手順と順番がある。

 2番目に、資本移動、特に短期資本移動のモニタリングの強化。

 3番目に、撹乱的な資本流入を防ぐための市場調和的な規制を維持。これはなかなかわかりにくいかと思いますが、今回のアジアの危機でも、アジアの国々が一度に大量の資金を借り入れたというところに危機の原因の一つがあったということで、例えばそういった国の金融機関、新興市場国の金融機関の監督とか、健全性、プルーデンシャルな観点からの規制を通じて、ある程度撹乱的な資本流入を防ぐということも考える必要があるということでございます。

 4番目に、資本流出を防ぐための措置の再導入が正当化される場合もあり得ること。一般的に言いますと、資本流入を抑えることに比べますと、資本流出を抑えることは非常に難しいとされているわけでございます。最近で言うとマレーシアのようなケースがあるわけですが、こういった資本流出を防ぐための措置の再導入も場合によっては、いろいろな条件はつくのですが、正当化されることもあり得る。

 5番目に、今度、先進国側から見ても、貸し手側のモニタリングの強化が必要であるということ。

 6番目に、各国の規制当局及び国際的な規制機関の間の協調の強化が必要だ。以上が、短期資本移動がもたらすリスクと対応策ということでございます。

 2番目に、「為替制度」ですが、これは2つに分かれております。一つは、主要な先進国通貨の為替相場の安定。これについては、安定性とフレキシビリティーのバランスのとれた為替相場制度。マネージド・フレキシビリティーの可能性を検討する必要がある。

 2つ目に、今度、新興市場国ないし発展途上国にとっては、どういう通貨制度が望ましいかというと、「最も緊密な貿易及び投資の相互依存関係にある先進国の通貨、あるいは幾つかの通貨のバスケットにペグし」、ペグというのはクギで打つという意味でございますが、完全に連動させることを言っております。そういうことが一つ考えられるのではないか。ただ、最後にありますように、いずれにしても、これは「個々の国の状況に応じてケース・バイ・ケースで慎重に検討する」問題である。

 3つ目に、「危機に陥った国への流動性の供給」ということで、一つは、IMFが予防的かつ必要な際に、迅速に資金供与できる新しい融資制度を作る。これは現在SRFという予防融資制度が検討されているのですが、それ以外に、何か問題があった国、常時、危機が起きる前からその国の経済をモニターして、危機があったときには直ちにお金が出るといったシステムが必要ではないか。それから、当然そういう巨額な資金支援をするということであれば、短期の流動性をIMFに持たせないといけませんので、IMFが市場から借入れを行うことはどうか。それから、IMFが新たなSDR、SDRというのはIMFが創造しているいわゆる疑似通貨でございますが、これの一般配分を通じて各国の外貨準備を補強することも考えられるだろう。4番目に、IMFの役割と機能を補完するために地域内で相互に通貨支援を行うメカニズムの設立を検討したらどうか。この議論のエクステンションとして、例えばAMF(アジア通貨基金構想)とか、マニラ・フレームワークなどが出てくるわけでございます。

 以上が、我が国の基本的立場でございます。

 次の5ページに(参考)としてつけてございますのは、先般3月1日に世銀のシンポジウムで大蔵大臣がスピーチを行いました提言について書いてございます。基本的にはIMF改革について日本としていろいろ細かな提案を申し上げているということでございます。

 次に、円の国際化について少しお話しいたしたいと思います。6ページをご覧いただきますと、まず現状どうなっているかといいますと、ここに経済規模と使用通貨ということで、米国、日本、ユーロ11、EU15か国ということで表が挙げてございますが、ご覧いただいてわかるとおり、経済規模で言うと、名目GDPで日本は全世界の15.8%、貿易でも 6.8%。これに比べると、円が貿易で使われている割合は 5.0%、外貨準備に占める円の割合でも 4.9%ということで、経済規模に比べると低いということが偽らざるところかと思います。

 特に下の(参考)をご覧いただきたいのですが、我が国からの輸出、円建が36%でございまして、我が国への輸入は21.8%。我が国は実は輸入しているものは原油とか、いわゆる国際的な商品が多いものですから、ドル建の方が多くなるという面はありますけれども、それにしても、私どもが買っているのに2割しか円建にならないというのはおかしいのではないかという議論もあるかと思います。

 こういった現状、実はここずっと変わってきていないのですが、これまでどういう議論があったかと申しますと、7ページの「円の国際化の推移」をご覧いただきたいと思います。円の国際化というのは、実は話は古うございまして、まず、1984年に日米円・ドル委員会がございました。ここで円について自由化をして、ドルについて負担を減らそうということで、これを受けて外為審で円の国際化について議論いたしました。1年後の85年にユーロ市場の自由化ということで、ロンドン等の海外市場(ユーロ市場)における円取引の自由化を行っております。例えばこのときにユーロ円CDを作ったり、国内でも、例えば債券発行の機関についてある程度自由化するといったことを行っております。

  また、そのままさらに外為審で、いわゆる東京オフショア市場の創設について議論いたしまして、86年12月に東京オフショア市場が創設されております。要するに国内の金融市場とは遮断した上で、東京における外・外取引、つまり日本の銀行がオフショア勘定を作りまして、海外からお金を預かり、そのお金をそのまま日本国内で使わずに海外の貸付に回す。ワンタッチで日本の銀行に入ってくる。こういったものについては、日本の経済活動に直接関与していないということで、税をはじめとする日本の様々な取引から一応除外しているというものでございます。

 その後、昨年になって、なかなか円の国際化が進んでいないではないかということで、現在、外為審で円の国際化専門部会で検討が進められておりますが、昨年12月にとりあえず「中間報告」が出されました。そのポイントは何かというと、基本的に円を国際化といっても、我々がプレイヤーの人に円を使いなさいと強制することはできないわけで、結局、我々にできることは環境整備だ。つまり皆さんが安心して円の取引ができるということではないかということで、我が国市場における非居住者にとっての円取引の利便性の向上を念頭に置いて、いろいろ検討を行っていただきました。

 「中間報告」で出たもので、既に政策措置がとられているものがその下でございます。一つは、FB(ファイナンシャル・ビル)でございますが、これは1年未満の、代表的なものは外為特会のファイナンスを行うために発行している為券などでございますが、これの市中公募。いままでは日銀引受けでしていたわけでございますけれども、これを市中公募にする。それから、税制の改正ということで、TB・FB、短期国債と蔵券でございますが、この償還差益に対する源泉徴収の廃止・非居住者非課税。利付国債についての利子源泉徴収を非居住者に対し免除・非課税にする。これまでも事実上、一旦税を課した上で、最後に還付するというやり方もやっていたのですが、なかなか使い勝手がよくないとか、事務的に大変だという海外の方からの声もございまして、こういった措置を講じたわけでございます。

 8ページにまいりまして、これがそのとき行いました「円の国際化の推進策について」という発表でございます。細かな技術的なこともあるので説明は割愛させていただきますが、9ページをご覧いただきたいと思います。真中に(参考)がございます。実は今申し上げたもの以外に、直接円の国際化と関係したということはないのですが、例えば「有価証券取引税及び取引所税は平成11年3月31日をもって廃止する」という決定を行っております。

 それから、(4)その他が最後にございますが、【1】にありますけれども、「平成11年度より、30年国債及び1年物TBを導入することとし、国債の償還年限の一層の多様化を進める」ということで、いわゆるイールドカーブといいますか、利率の曲線がある程度滑らかに出るということで、海外の投資家の方も非常に使いやすくなるのではないかということを我々としては期待しているわけでございます。

 ただ、いろいろ円の国際化の措置を講じましたが、アジアの国などに行っていろいろお話を聞いておりますと、なかなか難しい面がありまして、例えば先ほど言いましたが、いままでアジアの国はドルに百パーセント、ペッグしている。つまりドルと完全に平行に為替が動いていたわけです。したがって、例えばアジアの国から見れば、アジアに進出している企業も結局、ドルで会計をした方が、現地の通貨との為替リスクがなくなりますから、そういう点でのメリットがある。それから、原油をはじめとして国際的な商品はドルで値付けが行われているということで、なかなか難しい。それから、国際的なプロジェクトは各国の企業が参加してまいりますので、こういったところではどうしてもドルの方が皆さんの使い勝手がいい。

 そういった様々な問題があるわけですけれども、例えばドル・ペッグについて申しますと、先ほど言いましたように、いまやアジアの国も見直しが出てきているわけでございます。また、タイやアジアの国からも円でぜひ今後はお金を借りたいという声もございますので、我々としては、無理矢理円を使わせるということではございませんが、使いやすい通貨の一つとして、オプションとして円も提供して、結局はそういうことがアジアの通貨の安定にも役立っていくのではないか。このように考えているわけでございます。

 どうもありがとうございました。

〔 部会長 〕どうもありがとうございました。

 それでは、次に、通商産業省からお願いします。

〔 通商産業省 〕 本日は、貴重なお時間を頂戴いたしまして、誠にありがとうございます。私ども常日頃、WTOの問題を扱っているわけでございますけれども、今回、21世紀の国際貿易投資体制のあり方ということに関連しまして、次期WTOの交渉の展望ということでご説明させていただきます。お手元の資料3に沿って、簡単にご報告いたしたいと思います。

 最近、新聞等で、2000年からのWTOでの新ラウンドという話が度々載りますが、この11月末、シアトルにおきまして、第3回のWTO閣僚会議が開かれまして、そこで、次の新しい貿易交渉が打ち出されるという見込みでございます。

 ご案内のとおり、WTOの前身はガットでございまして、既に去年で50年経っているわけでございますけれども、過去8回、いわゆるラウンド、大規模な貿易交渉が行われてきています。最近時点で行われたものが、ウルグアイ・ラウンドでございまして、86~93年まで8年近くかかった大交渉でございました。ただ、その成果は大変著しいものがございまして、これによって国際貿易体制は飛躍的に拡充されたと私どもは認識しております。

 その第1点は、WTOという国際機関が出来上がったこと。これは従来ガットというデファクトベースの事務機関だったわけですけれども、IMF・世銀と並ぶ国際機関として設立した。もう一つは、従来はモノの関税といったことが中心テーマだったわけですけれども、ウルグアイ・ラウンドの結果、サービス、あるいは知的所有権というモノ以外の分野に比率が拡大した。これも大きな成果だろうと思います。3つ目、これは地味でございますけれども、最も私どもが重要だと思っておりますのは、紛争処理手続きが飛躍的に強化されたということでございます。

 それを踏まえまして、今回、WTOとしての初めてのラウンド、大規模な交渉が始まろうとしているわけでございますけれども、私どもの交渉の意義といたしましては、2に書いているようなことだろうと思っております。

 基本的にWTOの交渉というのは、自由化をさらに促していくこと、いままで不十分だったルールを整備していくことという、自由と規律というのが車の両輪だろうと思っております。えてして世上では、WTOといいますと、自由化、自由化と考えがちでございますけれども、私どもとしてはルールを作っていくこと、規律を強化していくということも、もう一つ大きな柱ではないかと思っております。そういうことを通じまして、海外での事業環境整備、あるいは国内で現在進めております経済構造改革の推進に資するのではないかということでございます。

 もう一つは、今申し上げましたルールの重要性でございますけれども、これまでややもすると大国が一方的な措置をとってしまう。政治的に強い国が問答無用で一方的に押し付けを行うということがありがちでございましたけれども、国際的な貿易・投資、これは後で少し申し上げますけれども、そういう分野でルール・オブ・ローをますます強化していくことが、一方的な措置の防止、あるいは企業活動の予見可能性を高めていくという意味で非常に重要だ。こういう意味で、自由化とルールづくりという2つが大事だということを申し上げた次第でございます。

 3番目の保護主義台頭への牽制。これは常々自転車論ということで言われることでございますけれども、こういう交渉を行うことを通じて、現在、世界的な経済状況、よくないところが多いわけでございますけれども、貿易問題というのは貿易制限措置によって解決しようという傾向が見られがちでございますけれども、こういう保護主義への対抗という効果も期待できるのではないかと思っております。

 交渉対象分野、今どんなことが考えられているかということですが、その前に、ウルグアイ・ラウンドのときにも言われていたことであり、今回さらに考えられますのは、その時代時代の変化ということでございまして、一つは技術革新が非常に進んでいることです。通信分野、情報分野での技術革新。それから、先程来お話に出ておりますグローバリゼーションが進んでいる。それと歩を一にしてということだと思いますけれども、サービス経済化も一層進んできているという状況にございます。

 それは何を意味するかといいますと、波打ち際の制限、国境措置が非常に低くなってきて、その代わりに国内の政策、これは経済政策に限らず、先ほども出ておりましたけれども、社会的な政策も含めて、今後どのように国際的な、ハーモナイゼーションといいますか、コンフリクトを抑えていくためにどうしたらいいのかということが大きな課題になってきているということが、背景としてあろうかと思います。

 現在、交渉の対象分野として考えておりますのは、農業とサービス分野というのは、ご案内のとおり、ウルグアイ・ラウンドのときに既に次の交渉日程が決められていた分野でございまして、これに加えまして、今申し上げました背景を踏まえての新しい形でどのように取り込むか。あるいはウルグアイ・ラウンドのこれまでのラウンドで必ずしも十分進捗を見ていない項目についてどのように扱ったらいいのかということが、ここに書いてあるような項目だろうと思います。

 とりわけその中で、投資に関するルールづくりを私どもは強調しております。これは後で時間があれば触れたいと思いますけれども、産業構造審議会のWTO部会に投資小委員会というものを作りまして、ビジネス各界からもいろいろヒアリングをしたわけでございますけれども、途上国を中心に、投資ルールの整備が不可欠であるという意見が非常に強く出ておりまして、こういう分野におけるルールづくりはWTOが一番適しているのではないかという意味で、投資のルールづくりに重点を置きたいと思っているわけでございます。

 それから、鉱工業品の関税の問題。さらに、競争、あるいはアンチダンピング、電子商取引、知的財産権といった分野につきましては、今申し上げました新しい課題であり、また、ウルグアイ・ラウンド以来、必ずしも進捗が見られていないという分野でもございまして、2ページに書いてございますが、私どもの立場といたしましては、今申し上げました関税、投資ルール等の分野については、ぜひ次のラウンドで交渉対象としていきたいと考えておりますし、それ以外の分野につきましても、前向きに検討していきたいと考えているところでございます。

 ややテクニカルになりますけれども、次に交渉の方式について書いてございます。ウルグアイ・ラウンドは、ご存じのとおり、すべての交渉項目をパッケージとして一括受諾方式で交渉したわけでございます。これは最初にして最後でございまして、東京ラウンドのときはもう少しばらばらだったわけでございます。今回も私どもは、どういう交渉対象分野が決まるかということはございますけれども、そういう交渉対象分野については、一括パッケージとして交渉していくことが、それぞれ参加する国の利害のバランスを図っていく上で非常に重要ではないか。国によっては、それぞれ分野ごとに交渉していけばより簡単にできるのではないかという意見を持つ国もありますけれども、かえってそれは交渉を長引かせてしまう結果になるのではないかと考えております。私どもとしては、ウルグアイ・ラウンドが少し長過ぎたという点があるものですから、3年程度を目処に短い期間で交渉を終結したいと思っております。

 それから、諸外国のポジションでございますけれども、まだそれぞれ国によってははっきりポジションを示していないところもございます。アメリカは、今年に入りまして、次の交渉をラウンド方式でやっていこうということを打ち出しましたけれども、ただ、その交渉のやり方につきましては、いわゆるパッケージディールを指向しているのかどうか。農業、サービスといったビルト・イン・アジェンダに力点があるのかなという感じでございます。ただ、最後のところに書いてございますが、環境、労働、WTOの透明性という制度的な問題についても、これは交渉を対象にするつもりがあるのかどうかはもうひとつ明確ではございませんけれども、何らかの手当をする必要があるということを言っております。

 EUは、交渉対象範囲は非常に広くとっています。メンバー国が15か国ございますので、それぞれの国の利害を足し上げていきますと、どうしても交渉項目が大きくなってしまうという問題はありますけれども、基本的な考え方、包括交渉方式としてパッケージで交渉するという点では、日本の立場と非常に近いと思います。

 最後に途上国でございますけれども、中には積極的に次の包括交渉を支持する国もありますけれども、LDC等途上国の多くは、次の新しい交渉の立ち上げには慎重でございまして、そういう意味で次の交渉をうまく立ち上げていく上では、アメリカの立場をどのようにフレキシブルにしていくかと同時に、途上国をどのように引っ張り込んでいくかということが、現在のところ非常に大きなイシューになってきております。

 3ページにまいりまして、途上国の関心項目が書いてございます。4点ほどございまして、一つは、ウルグアイ・ラウンドの結果が自分たちにとってメリットが十分なかったということ。

 2つ目が、ウルグアイ・ラウンドの結果は難し過ぎてどうも履行ができない。知的所有権の履行のようなものでございますが、これは2000年から途上国には義務がかかりますが、とても履行できないのだということを言っている。

 3つ目に、ウルグアイ・ラウンド後いろいろ途上国に配慮した規定が、およそすべての協定と言っていいと思いますけれども、入っております。入っていますけれども、非常に明確でなかったり、あいまいな書き方になっておりまして、実際に途上国にどのように裨益するのかはっきりしないということもございます。

 4番目に、もちろん次の交渉は負担の増大になるということでございまして、この声が、WTOのメンバーが今 130数か国ございますけれども、途上国の数が飛躍的に増えておりますので、途上国を巻き込んでいくために、どのようなアジェンダを設定していったらいいのかということは、非常に大きな問題になろうかと思います。

 交渉の準備の進め方でございますけれども、先進国四極、あるいはOECDサミット等の場を通じて、先進国の中でコンセンサスを作っていくということ。それから、途上国がますます重要になりますので、リージョナルな枠組みの中でコミュニケーションを強化していくということで、APEC、ASEMといった枠組みの下での閣僚会議がございますので、そういった場を利用していく。とりわけ、日本としてはアジアの国に対する説得といいますか、対話を強化していかなければならないのではないかと思っております。

 4ページに交渉項目が簡単に書いてございます。いままで申し上げた点と重複する点をできるだけ省きながら、ご説明したいと思います。サービスと農業が交渉対象として決まっているわけでございますけれども、サービス貿易については、私どもは、もう一つ産構審のWTO部会にサービス貿易小委員会を作りまして、どのような交渉の仕方をしていったらいいのかということを議論していただきました。

 サービス貿易については、ウルグアイ・ラウンドのときに一応新しく合意ができたわけでございますけれども、いかんせん初めての合意なものですから、自由化という点では極めて不十分でございます。これをさらに自由化を進めていくということ。それから、ルールの整備も、ガットに比べますと、ガッツというのはまだまだ十分なルールができておりませんので、こういった点を次の交渉でさらに詳細を詰めていくということになろうかと思います。その中で、私どもは、サービス貿易については、国際的に今後独占、寡占といった問題も生じてくるのではないかと思っておりまして、競争法的な観点からのチェック、ルールも何がしか必要になってくるのではないか、と思っております。

 農産品、鉱工業品は割愛いたしまして、投資のルールでございます。これについて、先ほど申し上げましたように、私どもとしては、ぜひ次の交渉で投資ルールを作っていきたいと思っているのでございますけれども、まだ途上国との間で意見が十分一致していない点もあります。また、アメリカとの間でも、アプローチの仕方をめぐって十分なコンセンサスができていないという状況でございます。

 ただ、投資について申し上げますと、WTOというのは、サービスの分野については投資のルールを既に持っております。ガッツというサービス協定の中に投資について、内国民待遇やMFN、そういうことを与えなければいけないという包括的な投資のルールを持っております。

 製造業について実はWTOは投資のルールを完全なものを持っていないのです。唯一持っているのは、TRIMという、少しテクニカルになりますけれども、パフォーマンス・リクワイヤメントといいまして、例えば自動車製造業が外国に出ていったときに、これだけ同国の部品を使わなければいけませんよというローカル・コンテント要求みたいなことは禁止しますよといったことですが、このパフォーマンス・リクワイヤメントについて、ごくごく部分的な規律はありますけれども、製造業一般についての投資の自由化、あるいは内国民待遇、MFN、紛争処理等々を備えたルールはまだできておりません。したがって、私どもとしては、途上国、なかんずくアジアの国が入ったマルチの投資のルールづくりが非常に重要ではないかと思っております。

 先ほど、MAIの話もございましたけれども、MAIのような非常に規律の高いものをWTOのように途上国がたくさん入った場で作っていくのは、直ちには難しいと思います。私どもが非常に産業界の利害として持っておりますのは、途上国のビジネス・クライメント、あるいはインベストメント・クライメントというものを改善していく。これは政府の施策が非常に頻繁に変わってしまったり、あるいはトランス・ペアレンシーがなかったりという非常にボトムの問題も含めてでございますけれども、そういうところから投資のルールづくりを考えられないかということで、現在、先進国、途上国とすり合わせをしているという状況でございます。

 それから、競争のルールでございますけれども、これはなかなかすぐに、フルフレッジドといいますか、完全な形での独禁法のルールをWTOで作るのは難しいということは皆様ご案内のとおりでございます。

 ただ、先程申しましたように、波打ち際の措置が下がってくればくるほど、国内の競争法のルールが重要になってくるわけでございまして、これについて何らかの形で国際的な協力、あるいはルールのハーモナイゼーションのとっかかりというものを次の交渉でスタートするかどうか。これについてはまだ我々も慎重に検討しているところでございますけれども、考えていかなければならない。21世紀ということで申し上げますと、一つの重要な論点だろうと思います。途上国での競争法のルールの整備と、先進国間では、例えばアメリカの独禁法の域外適用の問題もございますし、先ほどサービスの分野の関連で申し上げた国際的な寡占、独占の問題も、一国の政府としては処理し切れない面もあるわけでございますので、こういった国際的な協調の枠組みを作っていくことも考えられるのではないかと思います。

 5ページにまいりまして、説明は省略いたしますけれども、アンチダンピング。これはウルグアイ・ラウンドのときに必ずしも十分ルールが精緻になっておりませんで、昨今の状況はご案内のとおりでございまして、保護主義的な措置として、アンチダンピング措置がとられないようにしていくことは非常に重要だろうと思いますし、TRIPS、電子商取引等は、まさに新しい技術革新に伴って、さらに国際的なルールづくりが必要な分野でございます。これ以外にも、交渉のアジェンダの候補としてはまだまだあるわけでございまして、今後、私どもとしては、産業界をはじめ国内の各界とご相談しながら、関係国ともすり合わせをして、最終的に我が国の提案をWTOに提出していくということになるわけでございます。

 1点、ここで触れていない、次の交渉で何をやるかという問題のほかに、WTOの制度的な改善、インスティチューショナル・イシューと我々は呼んでいますけれども、WTOという組織がより有効に機能していくために、今後早急に改善していかなければならないという点が4つございます。

 一つは、紛争処理手続きでございます。最近、アメリカとヨーロッパの間でバナナをめぐって紛争が起こっておりますけれども、この紛争処理手続きというのはWTOの要でございます。訴訟手続きの一種でございますけれども、紛争処理手続きを、法が欠缺している部分がございますので、これをどのように整備していくか。これは交渉ということではなくて、できるだけ今年のうちに処理したいと思っております。

 2つ目は、先程来お二人の方からもお話が出ておりますけれども、国際機関同士の協力、実物経済を扱っているWTOと金融を扱っているIMF、より緊密な協力を行うようになってきておりますけれども、これ以外にも、開発の関連で言えば国連、労働の問題で言えばILOといったところとの協力をどのようにしていくかという問題です。

 3つ目が、WTOの透明性をどのように高めていくか。これもアメリカやヨーロッパからは非常に強く出てきている議論でございまして、国内のNGOとか労働組合の方とか、国内のコスト・コンスチュエンシーにWTOの活動がよく見えないという点がございまして、これは文書の非解除をできるだけ早く進めていくこととか、あるいは国の機関だけではなくて、いわゆるNGOタイプの人たちにも参加を、WTOのような活動に差し支えのない範囲で認めていくといったことが考えられます。

 最後に、環境問題と労働問題でございます。これは、私はあえて交渉アジェンダとしては申し上げませんでした。あるいは環境問題などは次の交渉のアジェンダになるかもしれませんけれども、基本的には環境のルール、あるいは環境政策と貿易政策をどのようにハーモナイズしていくか、どのようにコンプロマイズしていくかという問題でございますけれども、基本的には、まずWTOという機関と環境関係の諸団体とがよく話し合いをしていく。そういう手続き的な面から始めていくことが重要だろうと思っております。

 労働問題については、レイバー・スタンダードと貿易的な措置、トレード・サンクションという関係でよく取り上げられますけれども、この問題についても、なかなかすぐにWTOの交渉の場に持ち出して交渉がうまくいくという保証はありません。環境問題以上に途上国は反発を強めることが予想されますので、こういった問題についても何とか国際的な機関相互の協力という中で、適切な解決が図られていくということを私どもとしては期待したいと思っている次第でございます。

 〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。

 以上で一通りのご説明をいただいたわけですが、皆さんいろいろ全体について、あるいは個別の問題についてご意見、ご質問があろうかと思いますが、時間の制約もありますので、最初の半分ぐらいは、どちらかといえばお三方のお話についてのまずご質問をいただいたらいかがかと思います。その後でご意見を聞かせていただくというやり方をいたしたいと思いますが、よろしゅうございますか。では、どなたからでもどうぞ。

〔 A委員 〕 それでは、お三方それぞれに質問ということで申し上げたいと思います。

 最初に外務省のお話の冒頭で、かなり話のイントロダクションのところに入ってしまうのですけれども、民主主義と市場経済を対のような形でおっしゃっていたと思うのですけれども、これが必ずしもうまく対にならない場面はいろいろな形で出てくるかと思います。これがグローバリゼーションという展開の中で、実はこの辺が結構問題になってくる部分があるのではないかと考えるのですけれども、その辺をどのように認識しておいでかということをぜひ伺ってみたいと思います。

 市場経済化が進むということは大変結構なことだと思うのですけれども、そこで、このペーパーの中にも出ております弱者保護の問題、あるいは市場化がもたらす画一化といった問題も出てくるということがあって、その辺と民主主義との関わりを、これは必ずしもセットで処理できないのではないかなと思うので、その辺、お考えを伺ってみたいということでございます。

 それから、大蔵省のペーパーでございますが、3点ほど質問がございます。一つは、「国際通貨体制のあり方を考える」という大きな命題のところで、グローバリゼーションというものをどのようにそこに関わらせて考えるのかということで、外務省のお話の中にもありました、要するに市場対国家、あるいは「国家の退場」といったテーマと、国際通貨金融体制、ここのところでは相変わらずといいますか、国際という、インターナショナルという言葉が出ているわけでございますけれども、ネイションステートの役割が後退していくということがグローバリゼーションの一つのポイントであるとするならば、そのことを21世紀の国際通貨金融体制を考えるという発想の中でどう組み込んでいくのか、あるいはそういう状況に対して、この発想をどう調整していくのかという辺りが問題になるのではないかと思うのですけれども、その辺をどうお考えかということです。

 それから、それと大いに関係がございますけれども、ペーパーの4ページの2)の【2】、ペッグ・システムについて論及しておいでのところですけれども、このようにある特定の通貨、あるいは幾つかの通貨にペッグしていくということをテーマとして打ち出す場合には、ペッグされる方の通貨のスタビリティーといいますか、対応力がかなり大きな問題になってくると思います。従来のブレトンウッズ体制のような場合には、突出して強い一つの国にすべてがぶら下がるという、いうならばそういうペッグ方式であったわけですけれども、そういうものがない。そういう単一の軸が欠けた中であればこそ、こういう問題を議論しなければいけないわけですけれども、そこのところでその辺をどうお考えであるか。とりわけ今、アメリカがいろいろな国がまたドラライゼーションをやろうと言っていて、それを勝手にやられては困る、勝手にそういう方向に進められても、今度は自分たちの通貨主権といいますか、自由度が制約されるということで、腰が引けたスタンスを出しているような面もございますけれども、そういう問題を2)の【2】との関わりでどうお考えかということでございます。

 3点目ですが、これは円の国際化との関わりでございまして、実は今のドラライゼーションといいますか、ペッグの問題と関係がございますけれども、今、円の国際化にどう取り組もうとしておいでであるか。いままでどういう形で取り組んできたのかということは伺いましたけれども、そこは技術論と言うと語弊がありますけれども、そういう手順、あるいはその中でどういうことをやろうとしているということは伺ったわけですが、それとはいわば違うディメンジョンの問題として、円の国際化ということに対する、あるいは自国の通貨の国際化ということに対する気構えについて、どうお考えか。

 つまり先ほどのドラライゼーションの問題ともここも関わってまいりますけれども、自分の通貨が外で広く使われていく。これは自国の通貨で決済ができる、あるいは借金ができるという意味で非常に結構なことであるわけでございますが、一方で、自国通貨のグローバルな供給責任、あるいはグローバルな観点からの自国通貨の信用度に対する責任も出てくるわけでございます。その辺を踏まえて、何のための円の国際化であるか、どういう発想から円の国際化を考えていこうとしているのか。その辺がこのペーパーの中ではうかがい知れない部分がありましたので、ぜひ伺ってみたいということでございます。

 最後、通産省のペーパーでございますが、ここでも同じことで、グローバル化、国家の退場という流れとWTO、これは国対国との交渉の場ということでございますけれども、その関係をどのように位置づけていくのかということで、これは確かスーザン・ストレンジの書いているものの中でも、これは「国家の退場」の中であったかは忘れましたけれども、新しいルール・オブ・ローというよりは、ルール・オブ・ザ・ゲームが、グローバリゼーションという中で出てきている。それに対して、こういった国際交渉の場はどのような位置づけを持っていくのかということについても問題提起があったかと記憶しているわけですけれども、その辺について補足的なご説明をいただければと思います。

〔 部会長 〕 今ご質問いただいた点についてお答えいただく前に、もしどなたか関連したことでご質問があれば、どうぞ。B委員。

〔 B委員 〕 それぞれのご報告者にご質問とコメントのようなものでありますけれども、まず、外務省のお話を伺っていまして、ここで「国家の退場」といった書物のタイトルを引用なさったわけですけれども、基本的には、国家主権の縮小という側面があることは確かであるけれども、逆に、国際協力といった文脈の中で国家の役割は非常に大きくなってきているということも言えるのではないかと思います。そのことを冒頭に変質とおっしゃったと思うのですが、それは、僕は非常に正確な表現ではないかと思います。特に後のWTOの話でもそうでしたし、国際金融制度のアーキテクチャーをどうするかという話でもそうでありますけれども、これらの新しい動きはみんなそれぞれ国家というものが一つの非常に重要なネイション・ステートを代表するエージェントとしてルールづくりという新しい仕事を課せられているということを意味しているのでありまして、その意味では、国家主権、あるいは国家の役割の変質ということが縮小と拡大と2つの側面を併せ持ってきているのではないかというのが私のコメントです。

 それから、円の国際化の話につきましては、A委員のおっしゃったことと全く同感でありまして、国際通貨化することによるメリット、デメリットをどう評価されているのかということをもう少し明確にされればありがたいと思います。

 それから、通産省からお話を伺っておりまして、これはまさにWTOでの交渉事のプロセスについて非常に詳しいお話を伺ったわけですが、基本的には一つの問題として、昔はといいますか、日本の元気だった頃は、産業政策の旗頭であった通産省が今どういう役割を果たすかというと、一つは、それの変質だと思いますが、技術政策ということだと思います。

 これはグローバリゼーションの第1回目の会合のときに確かワンセット主義をどう考えるかといった話があったと思うのですが、その中の一つのポイントとして比較優位をどう考えるか。特に比較優位というのが、昔は貿易論では比較優位というのは最初にありきだったわけですが、今は比較優位というのは作るものであって、どういう比較優位を作っていくのかという技術政策に関する一種のポリシーみたいなものがあり得る。あるべきかどうかわかりませんが、あり得ると思うのですが、そういうことに関して、例えばアメリカの商務省のレポートなどを見ていますと、コンペティブネスをどうやって高めていくのかということに関してかなり詳しい調査がなされている。そういうパラレリズムで、通産省はどのように考えていくのかということも、もしお話を伺うことができればいいなと思います。

〔 部会長 〕 C委員がご質問があるようですが、いままで出たところをまずお答えを聞いて、その上でC委員の方にまいりたいと思います。

 それでは、今日のプレゼンテーションの順番でお願いいたします。

〔 外務省 〕 それでは、A委員の最初のご質問にお答えいたします。民主主義と市場経済はセットでは対処できない面があるのではないかというご指摘だったと思います。そのとおりだと思いますが、民主主義も市場経済もいずれもシステムとして完全なものではございません。したがいまして、それぞれの欠陥がぶつかり合うということは当然あり得ると思いますが、本来的にアプリオリに民主主義と市場経済とは相入れないものだと考えるべきではないと思います。

 具体的に申し上げれば、いわゆる市場の失敗といったものがあった場合、あるいは競争による敗者が出た場合、それに対して、それを放っておくことはできない。放っておくことは、ある意味では非民主的である。そこで国の役割が出てくるわけでございます。国の秩序、国民の安全、一人一人の繁栄、安定を守る国としての役割が出てくるということだと思います。さらに、国だけでは対処できない細かい問題について、先ほども触れましたように、いわゆるシビル・ソサエティーの出番がある。したがって、国とシビル・ソサエティーの役割が連携を強めることによって、市場経済システムが民主主義に反する部分を補っていく。調和を作っていく。そういう関係にあるのではないかと私は理解しております。

 もう一つの点は、ご質問ととらえてよろしゅうございますか。あるいは単なるコメントということですか。

〔 B委員 〕 どちらでも結構です。基本的には特に立場の違いはないと思います。

〔 外務省 〕 まさにご指摘のとおり、範囲は縮小したけれども、いままで以上に協力、ルールづくりとかスタンダードづくりという面で、これまで以上に国の役割が重要になってきている。これは経済活動そのもののプレイヤーとしてではなくて、ルールを作って、それを監視する。市場経済が機能しやすいように、また、それが非民主的にならないような枠組みを作るという意味において、これは単一国家だけではできない。各国が協力して、国際機関とも協力して、シビル・ソサエティーとも協力して、そういう役割を果たしていく。その役割が非常に拡大しているという点。先生とほとんど同じと思いますが、そのように私も考えております。

〔 大蔵省 〕 まず最初にA委員の最初のご質問、非常に難しいご質問なのですが、今のA委員のコメントの中に、後半のご質問の趣旨は多分、グローバリゼーションと、ちらっとおっしゃっていましたが、いわゆるネイション・ステートの衰退というところがあるのかと思うのですが、むしろ金融の分野で言えば、いわゆるIMF・世銀の下におけるブレトンウッズ体制が、いまや通貨体制も金融、全体のあり方に対しても、一度見直ししなければいけないという時期にきているのだろうと思います。

 そういう意味から言うと、いわゆるグローバリゼーション、グローバルなスタンダードというものが一つあって、それと対抗する形で何か我々の方がそれに合わせるという、そういう意識ではあまりとらえておりません。例えば先ほど少し申し上げましたが、国際通貨体制の問題にしても、いままではG7とかG10といった限られた国だけがむしろ中心になって議論していた。それに対して、新興国等のプレゼンスが非常に高くなってきて、これが22か国に広がり、ご承知かと思いますが、先週ボンベイでは33か国が集まってセミナーをやるといった形で、むしろみんなで議論している。

 ただ、他方、先ほど言いましたように、今回のアジア通貨危機などもそうですが、非常にインターナショナルな市場でのプレイヤーの数が増えてきている。例えばインドネシアなどで言えばそれこそ何百、あるいは千ぐらいの会社が海外の何百という銀行からお金を借り、そういう形で進んできているので、やはり何らかの形で、みんなが納得といいますか、安心して取引できるような基準なりは作っていかなければいけないのだろう。そういう観点でグローバリゼーションをとらえている。それは必ずしもネイション・ステートの衰退ということはちょっと、基本的に為替制度というのはネイション・ステートがあっての話ですから、あまりそういう観点から我々としては考えておりません。

 それから、2番目と3番目のお話は、ある意味ではB委員のご質問と同じ趣旨かと思うのですが、いわゆるペッグ・システムについて、米国がダラライゼーションに対して困るという意見があった。これはアルゼンチンのことを念頭に置いておっしゃっているのだろうと思いますが、おっしゃったように、かつてはドルにペッグすればすべて経済的に、一番ドミナントな通貨でしたから、それでうまくいっていた。ただ、他方、ユーロが出てきて、実際ユーロが今後どれぐらい取引されるかというのは市場取引を見ていかないとわかりませんが、マルチポーラーになるのかどうか。ただ、そういう議論が出てきているという中で、為替というものは絶対的な基準はないわけで、あくまでも為替というのは2つの通貨の比較ですから、何らかのベンチマークが要る。そのベンチマークをどのように決めていったらいいかという議論なのだろうと思います。

 そういう中で、では円の国際化との関係でどうか。先ほどお話が出ておりましたが、円の国際化についてどういう思想を持っているのか。実は今まさに外国為替等審議会でご議論いただいているものですから、私の方からあまり触れなかったのですが、これまでの議論から言いますと、例えばドルもそうですし、マルクは1975年ぐらいでしょうか、マルクが国際化するときにもそういう議論がありましたし、円についても、まさに前回円の国際化を議論したときに、例えばそれで日本の金融政策の政策が縛られるのではないかといった議論をしてきたわけです。

 ただ、その点については、我々として、いろいろ議論した上で、日本の責務ということで、円の国際化を進めていかなければいけないのだというところは我々として決断している。

 では一体、どういう考え方に立って進めようとしているのか。ここは恐らく大きく分けて2つ側面があろうと思います。一つは、国際的なインターナショナルな側面ということで、これだけ日本の経済が例えばアジアの経済に占めるプレゼンスが高くなっているので、彼らにある程度円を使うという選択の幅を持たせる必要があるだろう。

 具体的に言えば、例えばかつて円がずっと強くなってきたときに途上国の方からいろいろ要望があったわけですが、その一つに、円が強くなったことによって彼らが、円借款とか、日本からの公的支援は全部円建で行われておりますので、これの返済負担が非常に高くなったという問題があったわけです。ところが、これも例えば彼らの外貨準備の中に円の負債に応じて円の資産があれば、事実上、円の為替が切り上がったことによる、何通貨建てであるかによるのですが、当時はドル・ペッグでしたから、現地通貨建、あるいはドル建の負債も非常に増えている。そうした中で、もし円をある程度ポートフォリオとして持っていれば、そういった影響が相殺されるという議論があったわけです。そのときに、なぜ円を持たないのかといえば、円を持っても適当な投資手段がない、運用ができないという声があったわけで、そういったところは我々として改善しなければいけないのではないか。

 それから、当然のことながら、日本からの投資も非常に多くなってきているわけですから、円にすればさらに増えるのではないかという期待が途上国側にもあるのだろうと思います。そういった観点から、実は向こうの国の方から円の国際化を進めてくれという要望が非常に多く出ております。

 あと、今度、国内的側面という点から見れば、いわゆる日本のメリットということでしょうが、今の話の裏返しになるのですが、海外に投資するときに、日本の投資家が円建で投資できれば安心して投資できる。日本とアジアの国で取引するときに、どうしてドル建で取引しなければいけないのか。外為審でいろいろアジアの方なども呼んでヒアリングをやっていますが、そういう意見が結構出ております。

 あと、最近はなくなりましたが、一時ジャパン・プレミアムといった問題があって、日本の銀行がドルのファンディングが難しくなったというので、なかなかドルで貸さないということもあったようでございます。そういったこともあったのだと思いますが、例えばタイとか韓国などからは、日本の金融機関に円で貸してほしいといった要請もきているわけです。そういったもろもろの観点から、我々として円の国際化は進める必要があるのだろう。このように考えております。

〔 通商産業省 〕 2点ご質問があったと思います。

 1点目は、共通の問題でございますけれども、国家といいますか、ネイション・ステートの役割についてどう考えるかということでございますが、私も、役割が小さくなったというよりは、変わってきていると言った方が正確ではないかなと思います。WTOの世界についてその点を敷衍して申し上げますと、基本的には、これまで国際的なルールがなかった世界にルールを作っていく。各国政府は、その国際的なルールに従って、国内の規制を行っていくということだろうと思います。波打ち際の措置については、もちろん徐々に減ってきているわけでありますけれども、他方、麻薬の問題とか、マネー・ロンダリングの問題等、別の観点からのチェックといいますか、波打ち際での規制も必要になっております。

 いわゆる通常の経済活動といいますか、産業活動ということに限って言えば、政府の役割はより後ろに一歩下がって、うまくマーケットが機能しない場合に介入するとか、あるいは国内規制につきましても、それぞれの国がばらばらの基準で国内の規制、サービス産業等でございますけれども、規制を行うということではなくて、一定の国際的な規律、ルールの下で実施しなければならなくなっていくという意味で、姿、ありようが変わってくるということではないかなと思います。

 2番目の技術政策に関するご質問でございますけれども、おっしゃるとおりでございまして、通産省でも、特に先端的な技術、これは情報、バイオ、あるいは新素材の分野、そういう先端的な、かつ基礎的な技術分野で、国、産業界を挙げて取り組むべきだろうと思っております。WTOのルール、口幅ったいようですけれども、より応用分野の技術開発について国が肩入れをするということについては一定の規律がございますので、これはできないわけでございますけれども、より基礎的な分野について技術開発を行っていくということは、より産業活動を高次のレベルに先進国は上っていく。それに伴って、途上国なり開発途上国に既存のコンベンショナルな産業を譲っていく。そういう段階的な発展という意味からも必要なことだろうと思います。

 また、途上国の問題につきましては、一定の範囲内で、WTO上も、幼稚産業といいますか、技術開発についても緩い規律が適用されておりまして、そういう意味で、その両方が相まって、次の21世紀の産業の役割分担が行われていくことを期待しているところでございます。

〔 部会長 〕 では、これから後は20分しかありませんので、皆さんご質問なり ご意見なり、ない混ぜでどうぞご遠慮なくご発言いただければと思います。C委員からどうぞ。

〔 C委員 〕 外務省と大蔵省に一つずつ質問させていただきます。

 まず外務省が言われた点、基本的に賛成ですが、一つ確認させていただきたいのは、レジメの2ページにありますセーフティー・ネットの件なのですけれども、セーフティー・ネットが必要だという点は誠にそのとおりですが、お金がかかるわけですから、誰がどのように負担するかということについての今後の見極めについて、お考えをいただきたいと思います。

 昨年の秋の世界銀行・IMFの会議などでも出ていたと思いますけれども、新興市場の金融危機はヒューマン・クライシスになったということが言われて、そのとおりだと思うのですが、そこで、ヒューマン・クライシスを起こしたのは、ある意味では先進国の金融機関であり、民間金融機関であり、ある意味では途上国の政府であったのかもしれませんが、セーフティー・ネットということになると、基本的には先進国の政府が負担しなければいけないと思いますが、この負担の意欲がある国とか、能力のある国、今非常に限られていて、先行きはさらに、その能力、意欲が減退していくのではないかということを懸念するわけですけれども、この21世紀のグローバリゼーションの下での展望を考えるときに、その辺どういうことを考えておられるか。あるいは日本は何をするかということで臨まれるということでしょうか。

 それから、大蔵省のお話で、レジメの1ページですけれども、目標として為替相場の安定ということを挙げられて、そのとおりだと思うのですが、為替相場に非常に基本的な影響を与える円とドルの関係で言うと、過去15年ぐらいにわたって、恐らく日米二国間の貿易の赤字、黒字の不均衡を、為替相場を動かすことによって解決するという手法がとられて、それが国際的にも、あるいは国内的にも、いろいろな歪みとかひずみをもたらしたという議論がありますけれども、今後、21世紀を見通して為替相場の安定を考えるときに、引き続き日米間の、アメリカの貯蓄過少、供給過剰の体質というのは改まらないだろうと思いますから、日米間の貿易不均衡は引き続き続いていくと思うのですけれども、それを為替相場という手法を動員しないで解決するという原則で臨まれるのかどうか。あるいはそれに対して、アメリカ側はどのように反応するであろうか。その辺について、差し支えない範囲でお話しいただければと思います。

〔 部会長 〕 それでは、まず外務省から、その後、大蔵省からお答えいただけますか。あとまだお二人ご質問なさりたい方がありますので、手短にお願いいたします。

〔 外務省 〕 それでは、手短に、セーフティー・ネットに関してお答え申し上げます。

 今後の金の負担等、誰が行っていくのか。今後、意欲、能力のある国は限られているというご指摘でございました。おっしゃるとおりだと思いますが、セーフティー・ネット構築に必要なのは、いわゆる純粋なキャッシュとしての金だけではなくて、知恵とか経験といったものも十分に機能し得ると思います。そういう意味で、いわゆる技術協力的なものは役割を発揮し得る分野であると思います。そういう意味で、現在あるリソース、これは先進国であれ国際機関であれ、現在あるリソースの中の割り振りによって、セーフティー・ネット部分により多く割り当てていくということで対応ができるのではないかと考えております。

 また、今後21世紀に向けてますますグローバリゼーションが進んでいく中で、このグローバリゼーションの持っているプラスをより最大限にするためには、このセーフティー・ネットが必要なわけでございまして、そういう意味でグローバリゼーションに対する受容力、リセプティブネスを高めるために、セーフティー・ネットにより重点を置くということが必要になってくる。そういう認識は徐々に広がっていると思います。下にネットがなければ誰も恐がって綱渡りをしないということですから、綱渡りができるようにするためにいわばネットを備えておくということだろうと思います。そういう意味で、既存のリソースの中での重点シフトということで対応ができると考えております。

〔 大蔵省 〕 最初のセーフティー・ネットの点について簡単に申し上げますと、これは先ほど少し申しましたように、今回の東アジアの危機などでも、一つは構造改革で失業者が増えるだろうという問題。もう一つは、金融セクター改革等に大量の財政資金が必要になるので、社会保障予算などはしわ寄せを受けるのではないかというのが2つ目の問題。

 これについては基本的に我々としては国際機関と一緒にやっていくということで、特に世界銀行が中心になりまして、この間も東アジアにおける金融危機による社会的弱者への影響、社会的影響といったコンファレンスをやっておりますし、そういった中で、世界銀行とかアジア開発銀行等が、例えば保健衛生セクターとか、栄養セクター等への融資を増やすとか、公共事業的なプロジェクトへの融資を増やすといったことをやっておりまして、当面はそういったところと協力してまいりたいと思っております。

 それから、日米間の貿易問題と為替相場による調整、なかなか非常に難しい問題だと思うのでございますが、少なくとも最近の為替相場というのは、貿易のインバランスの問題だけではなくて、むしろ資本取引等による影響も非常に大きいので、必ずしも為替相場による日米間の貿易の調整というものが、現実問題としてどの程度の影響だったのかということは難しいところがあろうかと思います。最近、少なくとも貿易の問題につきましては、例えばいろいろな構造協議とか、もしくは日米間で協議をしている窓口があるわけで、そういったところでの議論を通じながら進めていく話だろうと思っております。

〔 D委員 〕 これは質問というよりはコメントなのですが、円の国際化に関してなのですけれども、外為審議会ではないのであまり話をしても仕方がないのかと思うのですが、なぜ国際化をやるかというときに、そもそも円の国際化という意味が、お話を伺った上でもかなり私にはぼんやりとしてはっきりわからないのです。例えば途上国の方からの要望で運用資産として、金融資産として、円が使い勝手がいい方がいいとか、あるいは日本からどこかに投資する際に決済手段として円が使えた方が便利であるとか、そういった話はかなりツールとして円のことを考えていると思うのですが、それはほかにもいろいろなやりようで目的は達成できるのではないかと思います。

 一方で、実際に円を広く使ってもらうようにすることには、責務としてやらなければならないという決意があられるという話なのですけれども、恐らく、前回も申し上げたように、グローバル・スタンダードの最たるものは英語という言葉のツールだと思うのですが、みんなが使うから便利であるわけであって、そういった中で、道具としての円をみんなに使ってもらうようにするためというのはかなり大変な作業であって、それに伴うコストもかなり高いのではないかという気がいたします。

 その中で、それだけのコストを払ってまで、円の国際化と言われるものがどれだけ日本の経済なり国益にいい側面があるのかということは、個人的には若干疑問があります。

〔 部会長 〕 大蔵省、何かご反論なり何なりございましたらどうぞ。なければ結構でございますが。

〔 大蔵省 〕 ご指摘のようなご意見があるのも事実だと思います。

 ただ、そこは多分、一つには、コストをどれぐらいに見るかというところに分かれるのだろうと思いますが、あとはコストとメリットというか、ベネフィットのアナリシスの問題だろうと思うのですけれども、大きなコストというのが政策的な意味なのか、それとも円を使うということに伴う、例えば市場の方の、いわゆる本当の意味でのコストといいますか、そういった意味なのかよくわかりませんけれども、我々として特にそういう大きなコストがあるとは思っていないのですが。

 もう一つ、先ほど言い忘れたかもしれませんが、アジアの国が今後どういう通貨制度をとっていくかは別にしても、少なくとも今完全ペッグから離れてフロートしているわけですけれども、将来的には何らかのシステムをと言っている国も結構あって、そこは大蔵大臣のスピーチにもありますが、バスケットを入れたいと言っている国もあるわけです。そういったときに、彼らが選べるチョイスとして、円も一つのチョイスとして出しておくということは、日本の経済、これだけ大きいプレゼンスを持っているわけですから、日本の責務ではないかと考えておりますが。

 この辺は、正直言いまして、先ほど言いましたように、今いろいろご議論いただいておりまして、恐らく4月か5月にはレポートが出ると思いますから、それをご覧いただければと思います。

〔 E委員 〕 外務省に一つお尋ねしたいのは、MAIの話で、主としてアジアの途上国と言われている国々から、OECDにおける現在の議論を見ていると、あまりにも投資側のメリットのための視線ばかりだという感がある。投資しやすく、移動しすく、引き揚げやすい。そういう感覚でこの議論を関心を持って見ている向きが非常に多いのですが、その辺、どういう現状になっているのか、お教えいただけないかということ。

 大蔵省には、少しエモーショナルな質問になるかもしれませんが、IMFの問題についていろいろなご指摘がありましたけれども、IMFの、例えばWTOについてインスティチューショナルなルールについていろいろ議論があるというお話もありましたが、IMFについてインスティチューショナルなルールなり、あるいはフォーマリティーをめぐるいろいろな意見なり、その辺はどのようにお考えになっておられるのか。

 IMFについては、例えばマニラ・フレームワークについても、今度のAMFについても、サプルメンタリーなファシリティーズという位置づけしか得られていないといいますか、そういう中で、ゆくゆくはIMFの機能をどのように改革、強化、あるいは悪いものはやめてしまうといったことも含めてお考えなのか、教えていただきたいと思います。

 通産省には、貿易と労働の問題のお話がありました。これはソーシャル・クローズィーズの議論にも関わるものがいろいろあるのだろうと思いますが、例えばグローバル化があるレベルで非常に進展してくるに従って、アジア、とりわけ南西アジアで児童労働者の数がものすごく増えているわけです。例えば貿易と児童労働の関係みたいなものをどのように考えるか。

 例えば去年フランスでワールドカップがありました。そのワールドカップで、世界のすごいレベルの選手たちが蹴るボールが児童労働で作られているという問題が、いろいろ問題になったことをご記憶の方もあるだろうと思うのですが、そういうことを含めて、ごくごく普遍的な人権と貿易問題みたいな議論が、先ほど途上国のご意見があるということでございましたけれども、その途上国の意見とはそもそも誰の意見なのかという視点もないままに、日本政府は、海外でいろいろ聞きますと、途上国の意見に配慮してというお立場だと聞きますが、その途上の意見とは何ぞやという根っこのところを読み間違えますと、日本の勧告みたいなものはいかがか。

 3点、お願いしたいと思います。

〔 部会長 〕 あと時間が5分しかありませんので、部会長の独断と偏見で、ご質問を皆さんしていただいて、時間がなければ、後で事務局の方に簡単なメモでもいただければありがたいと思います。では、ご質問の方、できれば要領よくお願いします。どうぞ。

〔 F委員 〕 簡潔に。通産省の方からWTOの交渉についてパッケージでというご指摘があったのですけれども、先般のウルグアイ・ラウンドのときの農業とかその他のパッケージ交渉における教訓なり反省点、それと、今度のWTOの交渉におけるパッケージにおいて、それを生かした上、どういうスタンスをおとりになるのか。これは非常に微妙な問題になるかもしれませんが、そういうスタンスの問題。

 それから、いろいろな国内の利害関係を生かしていくメカニズムです。これをどのように構築されようとされているのか。その点についてお伺いしたいと思います。

〔 G委員 〕 大蔵省に質問なのですけれども、最近、市場を規制しようとするから逆にマネーが暴走するという議論があります。

 私も非常に共感を覚える議論なのですけれども、例えばアジアの国々の企業に外国の金融機関が多額の融資をして、それを最後、国が肩代わりをするので、その国の肩代わりを最後はIMFがまた肩代わりをする。それをやらなければ逆にいいのではないかとか、それから、為替をペッグしようとするから、そこにヘッジ・ファンドがくるのではないかとか、そういった議論がもっと、例えば大蔵省の中でもかなり強い声であるのではないかという気はするのですけれども、そういったことについての感触をお聞かせいただきたいと思います。

〔 H委員 〕 少しコメントのようになるかもしれませんけれども、円の国際化の点で、これはむしろアメリカの経験に照らして言いますと、今、日本の財政赤字が大きくなっているからやらざるを得ない面があるかと思います。今もちろん日本はまだ大きな輸出超過ですけれども、そのうちどこかからお金を取らないといけないという必要が出てくる可能性もありますので、3年先まではないかもしれないけれども、そのうち可能性はあるかもしれないので、円の国際化の本当の理由は、アメリカのように財政再建をやらないといけないからだと。サポーティングがあるというのが一つ。

 もう一つは為替の安定という点ですけれども、為替が安定すると、生産要素が動かないといけないわけです。アメリカの経済史を見ても、日本の経済史を見ても、通貨が安定し始めると、各地域間の労働の動きが始まったわけです。ですから、これからは円と、例えばアジア諸国の通貨が安定した関係の方向へ動き出すということであれば、これは日本にたくさん来てほしいという意味を持つわけです。これは今そういうことを担当している省庁は、もちろん管轄かとは思いますけれども、そういう実態経済と為替政策の総合判断も必要ではないかという気がしております。

〔 部会長 〕 最後の事務的手続きを削りまして、30秒ぐらいにしますから、どうぞ皆さんからいままでのご質問について、それぞれお答えいただきたいと思います。外務省から始めてください。

〔 外務省 〕 MAIの現状につきまして、一言ご説明いたします。

 MAIの交渉は現在停止しております。95年から始まった3年越しの交渉で、かなりのテキストができましたが、昨年10月、フランスが交渉からの脱退を表明いたしまして、それ以来、公式の交渉は続いておりません。現在、5月の閣僚理事会に向けて、どういう報告を閣僚にするか、内部で議論をしておりますが、引き続きハイ・スタンダードなルールをOECDで作りたいアメリカと、もうこの時点ではWTOに持っていくしかない、OECDは分析的作業にとどめて、WTOで交渉しようというヨーロッパ、カナダ、豪州といった国に分かれておりまして、現在、いかにしてOECDとWTOとでそれぞれの役割を適切に発揮できるかについて議論をしております。

 フランスが脱退した理由は、幾つかございますが、ご指摘のように、あまりにも投資家の権利保護に偏り過ぎている。受入れ国側の主権を損害している。特に投資家が国を訴え、かつその国の法律ではなく第三者の紛争処理で仲裁で訴えられることができるということは、主権に対する侵害である。あるいは文化を例外にすべしという伝統的なフランスの議論がございます。それから、労働環境基準に関するNGOからの突き上げ、そういったことを背景にフランスが脱退を表明し、それに対して、ヨーロッパがかなりシンパシーを表明して、現在、交渉は停止しているという状況でございます。

〔 大蔵省 〕 最初にE委員からのご質問でございますが、IMFの機構の改革ということですが、実は先ほど若干説明を端折りましたが、私の資料の5ページに大蔵大臣の「具体的提言」ということで入っておりますが、1)と2)はまさにIMFで現在行われている機構改革の議論でございます。

 一つは、1)の方は、財政金融だけではなくて、資本移動とか為替政策とか、実態経済の把握の強化もきちんとプログラムの中に入れなさい、このために、世界銀行とかOECDはもっと緊密に協力しようといった議論が行われております。その観点で、例えば先ほど言いました暫定委員会と開発委員会と、それぞれIMFと世界銀行の各国の担当大臣の集まりなのでございますが、こういったところの会議を強化しようといった議論が進んでおります。

 手続きについても、2)にありますように、従来、各国に対するプログラムは事務局だけで作っていたのですが、これを事前に各国の代表である理事会も参加して作るようにしたらどうかとか、事務局ペーパーを全部公表しろとか、そういう議論をする際に各国の政府当局者を招いて参加して議論しろとか、事後評価組織を作れといった提言が行われております。この辺は現在、まさに今後の暫定委員会、開発委員会、もしくはケルン・サミットに向けて議論が行われると思います。

 2番目のG委員からのご指摘でございますが、規制を入れようとするから暴走するのではないかと。例えば市場が民間から借り入れて、それを政府が最終的には保証するといったことになるので、恐らく大量に資金を借り入れたりすることができるようになるのではないかというご趣旨だと思います。確かにそういう意見はあって、実は危機をどうやって救うかというプロセスの中でも、インドネシアとか、そういうアジアの国はリスクがあるから、高い金利を取って貸しているのでしょうと。それを結局、モラル・ハザードの問題ですけれども、国際機関が弁済するのはおかしいのではないかといった議論もございました。

 先ほど少し申しましたように、現在議論されている危機回避なり予防策として、例えば流入について、市場調和的な規制を入れるというのも、そういう意味では、簡単に資本が流入するのを抑えるといった形で、そういったことをやろうとして、つまり市場規制的というところで通常の規制とは違うだろうと思います。

 それから、為替のペッグの問題にしても、先ほど言いましたように、新興市場国について、今後またペッグすればいいと言っているわけではないわけで、ただ、何らかのベンチマークみたいなものは要るのではないか。そこで、例えばバスケット方式とか、そういった議論が行われているわけでございます。

 H委員のご意見は、コメントという理解でよろしゅうございますか。

〔 H委員 〕 はい。

〔 通商産業省 〕 簡単に2点、お答えしたいと思います。

 まず、1点目の貿易と労働でございますが、児童労働等について、規制をもっと厳しくしろという意見のあることは事実でございます。私どもの基本的立場は、労働基準、レイバー・スタンダードの問題については、まずILOできちんとした議論をすべきではないか。そこでエンフォースメントの問題も含めて、労働関係の国際機関として、そこの優位をまず認めるべきではないか。直ちに、児童労働を行ったからといって、貿易制限をする、サンクションをする、トレード・サンクションをとるということについては、少し乱暴ではないかという感じを持っております。

 この点については、アメリカも非常に慎重な構えを示しております。先ほど少し申し上げましたけれども、WTOのインスティチューショナルなイシューとして、ILOとWTOの関係をより密接なものにしていくといったことも考えられるのではないかという立場かと思います。もちろんまだ正式といいますか、最終的なポジションははっきりしているわけではございません。

 他方、途上国、これは途上国の意見というのはどこかということでございますけれども、途上国政府の意見であるわけでございますけれども、そういうところに強く反対している国は、逆に、サービス協定上、なぜ労働力の移動、まさにサービスの典型である労働力の移動を先進国は認めないのかというカウンター・アーギュメントをしてきているわけでございまして、この辺のバランスをどのようにとるかということも、もう一つ問題だろうと思います。

 それから、ウルグアイ・ラウンドの反省についてどうかということでございます。私どもウルグアイ・ラウンドの反省として、7年7か月、長くかかったということの一点は、準備不足があった。非常に広範、網羅的な分野を対象にした大交渉であったわけですけれども、例えばサービス分野について、モダリティーについては、フンタデレステの宣言を行って以降、2年数か月にわたって準備を継続しなければならなかったという意味で、準備不足の面があったということと、それから、農業についても、規律強化ということがございましたけれども、十分議論が行われないまま、政治的な妥協といいますか、決着になってしまったという点があろうかと思います。

 そういう点を踏まえて、次の交渉では、例えば農業については、これは農林省さんの方で今検討を重ねているところでございますけれども、農業という産業の持つ非常に特異な性格、環境の保護でありますとか、あるいは地域社会の維持でありますとか、マルチ・ファンクションと呼んでおりますけれども、そういった問題を念頭に置きながら、次の農業交渉を行うべきではないかという議論を展開しつつありまして、これに対して、ヨーロッパ、その他、農産品輸入国は、基本的にはそういう方向について意見を同じくする点もあろうかと思いますので、そういった形での国際的な議論が展開していくことを私どもは期待しているわけでございます。

 もう一点、パッケージでやっていくということですが、これは、メカニズムをどうするのかということでございます。これはなかなか難しいご質問だと思いますけれども、基本的には政府の中での各関係省庁の連携を密にしていくということ。それから、関係業界に限らず、関係各方面、民間の方々、あるいはNGO、あるいはアカデミズム、ジャーナリズム等々、意見交換を密に行っていくということになろうかと思います。

 いずれにしましても、セクターごとに個別の交渉をしていけば早く交渉がまとまるのではないかということは、私どもは逆に一方的に攻められる立場になる交渉ということになりますと、かえって時間がかかるということで、急がば回れということで、パッケージ方式の方がより効率的であると考えております。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。

 これで本日の審議の方は終わらせていただきますが、もし皆さんの方からさらにコメントがございましたら、遠くからいらっしゃっている方もおられるので、大変言い足りないと思われることもあろうかと思いますが、どうぞインターネットをお使いの上でもコメントをお寄せください。それから、I委員はご発言がありませんでしたけれども、何かありましたらどうぞ、時間の関係でここでやめたいと思いますが。それから、各省庁からのコメント、あるいはお答えの中で、事務局の方の判断で、さらにこの点は聞きたいということがあれば、事務局の方でコーディネートしていただければありがたいと思います。

 それでは、次回以降の日程について事務局からご説明をお願いします。

〔 事務局 〕 次回は、4月9日の2時から4時まで。場所は、本庁舎4階の特別会議室 436号で行うことを予定しております。別途通知を郵送し、ご案内させていただきます。

〔 部会長 〕 それでは、第3回のグローバリゼーション部会の審議は以上にいたしたいと思います。

 本日は、長時間ご審議いただきまして、誠にありがとうございました。

--以上--