第2回構造改革推進部会議事概要

1.日時 :

平成11年3月9日(火)10:00~12:00

2.場所 :

合同庁舎4号館共用第2特別会議室(407号室)

3.出席者 :

水口弘一部会長、五十嵐三津雄、江口克彦、加藤秀樹、リチャード・クー、清水秀雄、中村靖彦、長谷川公敏、濱田康行、村井勝の各委員

(社)経済団体連合会経済本部本部長 角田博氏

日本労働組合総連合会総合政策局長 村上 忠行氏

在日米国商工会議所副会頭 ロバート・F・グロンディン氏

今井政務次官、林官房長、中名生総合計画局長、牛嶋審議官、高橋審議官、梅村企画課長、大西計画課長、涌野計画官、塚原計画官、佐々木計画官、林部計画官、佐久間計画官、荒井計画官、渡辺電源開発官、岩瀬計画企画官、福島推進室長他

4.議題 :

ヒヤリング

5.審議内容 :

(1)(社)経済団体連合会経済本部本部長 角田博氏からのヒヤリング

【1】講演内容

・構造改革を進める上で整備すべきビジネスインフラとしては、金融システム、企業法制、会計制度が重要。

・金融システムについては、【1】利便性、効率性、透明性を高めるため、商品、業務等の自由化、【2】金融サービス毎の縦割りの管理を改め、多様な金融サービスの出現に対応するため、横断的な法制度である金融サービス法の制定、金融所得課税の見直し、【3】金融サービスの電子化に向けた環境整備、【4】証券市場の活性化のための税制の見直し等がそれぞれ必要。

・金融システムの改革を行うためには利用者側が自らリスク管理を行う必要があり、金融機関の情報開示はそのための大前提。

・企業法制については株主重視のための方策が求められる中、自己株式償却のための規制緩和など既に実現されたものもあるが、商法をはじめ時代に合っていない法令を見直すことが必要。また、企業形態の多様化のため、株式交換・移転制度、会社分割制度、分社化法制、倒産法制について、制度の整備又は見直しが必要。

・会計制度については、制度が実態を追い抜く状況にあり、時価会計など導入は進んでいるが、企業側の環境が整っていないことから、そのための対策が必要。

【2】主要な質疑応答

○(問)ビジネスインフラの整備については、産業構造がどのように変化するかという観点から捉える必要があるのではないか。

(答)基本は市場での企業活動であるが、その結果産業構造がどうなるかを見極めることは難しい。そのため、市場での企業活動が可能となる土台を整えることが重要であり、その土台がビジネスインフラであると考えている。

○(問)産業構造促進税制のようなものについてはどう考えるのか。

(答)産業構造に関する税制には、【1】設備廃棄促進のための税制、【2】事業転換を容易にするための税制の二つがあるが、そのあり方については経団連でも検討している。

○(問)金融機関の情報開示のためには、企業の情報開示が大前提である。金融機関に情報開示を迫る前に、企業自身が情報を開示すべきではないか。

(答)企業の情報開示は必要であると認識している。経団連としても、連結会計や時価会計の推進など、情報開示に取り組んでいる。

○(問)経団連は株式持合いの解消には消極的なようだが、株式持合いは構造改革を遅らせる原因でもあり大きな問題ではないか。

(答)持合いは解消すべきと考えている。ただし、激変緩和は必要であり、そのための時間は必要である。

○(問)分社化や会社分割について、日本の大企業に対するアンケート調査では、実際にやる気のある企業は少なかったとも聞くが、経団連のメンバーはそれらの制度を利用する意思はあるのか。

(答)会社分割に対するニーズは最近高まっており、少し前の調査ならばそれが反映されていない。数字のデータはないが、経団連でも要望は強いと考えている。

(2)日本労働組合総連合会総合政策局長 村上忠行氏からのヒヤリング

【1】講演内容

・現在は将来に期待が持てない状況にあるが、なぜそうなったのかについて反省が必要。反省点としては、【1】経済社会政策の基本に「生活の安定」策を据えなければならないこと、【2】政策決定における透明性、公正さが不可欠であること、【3】「市場任せ」ではなく、新たな公正・競争ルールの設定を絶えず意識すべきであることである。

・「経済社会のあるべき姿」とは、個人の努力が活き、組織が人を活かし、地域社会で協力しあえる、雇用・年金・医療・住宅などの公的セーフティネット、ナショナルミニマムが確立した「高度福祉社会」である。

・「産業・企業・市場のあるべき姿」について、産業のあり方としては、完全雇用を達成できる発展力を確保するため、情報通信など「技術革新をリードする新産業」「ものづくり産業」「サービス・流通産業」の3つがバランスした産業構造を形成して発展すること、世界経済の安定的発展に寄与できる産業構造に意識的に改革することが必要。企業のあり方としては、企業に参加した人、技術、資本が活かされ発展することが基本であり、そのためには、新規市場の開発、技術革新等新たなチャレンジを常に行える経営体質の構築、従業員・経営者がそれぞれの能力を発揮するとともに、その能力を高めていける組織とするとするなどの改革が必要。市場のあり方としては、公正競争のルールが確立した市場を構築することが必要。

・「構造改革」の実施における重要課題としては、国民合意による経済社会・産業・企業・市場の「構造改革」の推進、世界各国との調和のとれた諸制度・慣行への改革が必要。

【2】主要な質疑応答

○(問)ベンチャー育成が必要と言われるが、新たな事業を起こす際に、その分野で長年の経験を有する人が定年に達した後も有効に活用できるような仕組みを組合としても考えていくことが重要ではないか。

(答)高齢化が進む中、高齢者を有効に活用していくことが重要であると考えている。

○(問)産業構造が変わらないといけないと言われている中で、労働組合の人たちは公共事業優先の考えを持っているように感じるが、今後どのように取り組んでいくのか。

(答)連合は行政改革を推進することに賛成である。高齢化が進むと国の金に頼らざるを得ないが、そのためには政府のコストダウンが必要である。公共投資についても将来につながるものを要求している。

○(問)資料中、「アメリカモデルのグローバルスタンダード」とあるが、具体例は何か。

(答)アメリカモデルのスタンダードはよく「市場主義」と言われるが、アメリカ社会の真似をするだけでなく、良いものと悪いものを振り分けることが必要。具体的にはアメリカとヨーロッパの中間当たりが良いと思う。

○(問)「高度福祉社会」と財政のバランスはどのように取るのか。

(答)経済が発展しなければ高度福祉社会も無いことから、経済がまず重要である。その上で、国民の負担率が高まる中で福祉をいかに維持していくかを考えなければならないが、重要なのは福祉は無駄なものではなく経済への貢献ができるものだということである。

○(問)労働組合から見た場合、企業は誰のものか。

(答)従業員、株主、社会など全てのものとしか言えないが、個人的には、今までは従業員が中心であったと考えている。

○(問)最近は若手の働き口がないと言われているが、それについてどう思うか。

(答)働き口のない若者がフリーターやパートなどに流れ、雇用は流動化しているが、今のような形で流動化することが将来の日本にとって悪い影響を与えているのではないか。

(3)在日米国商工会議所副会頭 ロバート・F・グロンディン氏からのヒヤリング

【1】講演内容

・規制緩和を行う場合には、部分毎に行うか、それとも全てを一度に変えるか。経団連や連合の話では激変緩和は必要との考えであったが、それで規制緩和が進むのかは疑問。

・ベンチャー企業育成のようにゼロからスタートした企業を育成することは重要であるが、対日直接投資のように、日本の外で出来上がったものを日本に持ってくることも重要である。日本の外か内かという区別はせず、「新規参入」は新規雇用増につながるものとして歓迎すべきである。

・資本市場の活性化のためには、株主を重視することが必要。ベンチャー企業への投資はハイリスクであり、ベンチャーへの投資を促進するためには、株主を重視し、株主の得になるようにすることが必要。

・日本の現状である「安定」やローリスク・ローリターンは、それ自体がハイリスクであることを認識する必要が有る。改革しなければ現状を保てるという考えは誤りである。

・M&Aは、会社の資産を有効に活用していない者を追い出すものであり、企業の経営者にとってはこのようなプレッシャーも必要。

・従業員に対しても、アメリカに比べ日本のストックオプションは不十分であり、その点でアメリカの方が従業員を大切にしているとも言える。

・単純な自由化や一部分の規制緩和だけでは役に立たない。独禁法などの法整備や違法行為の処罰なども同時に行う必要があるように、全体を見た改革が必要である。

【2】主要な質疑応答

○(問)グローバルスタンダードについてどう考えるか。

(答)「グローバルスタンダード」という言葉があるのは日本だけではないか。アメリカのスタンダードやヨーロッパのスタンダードが何であるかは決まっていない。仮に日本型のスタンダードをグローバルスタンダードにする場合には、スタンダードの形成には長い歴史が必要であることを認識すべきである。

○(問)M&Aで大企業同士の合併が進むと新規参入が阻害されるのではないか。

(答)大型合併はアメリカの企業同士のみならずアメリカの企業とヨーロッパの企業の間でも行われているが、新規参入を阻害しないことを十分に分析した上で合併案を認めるかどうかの判断がなされている。

6.今後のスケジュール:

次回の構造改革推進部会(第3回)は3月16日10:00~12:00に開催する予定。

以上

なお、本議事概要は、速報のため、事後修正の可能性があります。

(連絡先)

経済企画庁総合計画局計画企画官室

吉野

Tel 3581-0977