経済審議会基本理念委員会(第1回)議事録
経済企画庁
経済審議会基本理念委員会(第1回)議事録
経済審議会基本理念委員会(第1回)議事次第
日時 平成11年2月19日(金) 18:30~20:15
場所 経済企画庁官房特別会議室(729号室)
- 開会
- 経済企画庁長官挨拶
- 議事の公開方法について
- 「新たなる時代のあるべき姿」の基本理念について
- 閉会
(配付資料)
- 資料1 基本理念委員会委員名簿
- 資料2 基本理念委員会の議事の公開方法について(案)
- 資料3 我が国の国家像についての意見集計について
- (参考資料)
- 参考資料1 企画部会の今後の進め方について(案)
- 参考資料2 構造改革推進部会の進め方について(案)
- 参考資料3 国民生活文化部会について(案)
- 参考資料4 グローバリゼーション部会の進め方について(案)
- 参考資料5 地域経済・社会資本部会の進め方について(案)
経済審議会基本理念委員会委員名簿
- 経済審議会会長 豊田 章一郎 トヨタ自動車(株)代表取締役会長
- (企画部会)
-
部会長 小林 陽太郎 富士ゼロックス(株)代表取締役会長
部会長代理 香西 泰 (社)日本経済研究センター会長 - (構造改革推進部会)
-
部会長 水口 弘一 (株)野村総合研究所顧問
部会長代理 江口 克彦 (株)PHP総合研究所取締役副社長 - (国民生活文化部会)
-
部会長 清家 篤 慶應義塾大学商学部教授
部会長代理 大田 弘子 埼玉大学大学院政策科学研究所助教授 - (グローバリゼーション部会)
-
部会長 八城 政基 シティバンクジャパン会長
部会長代理 田中 明彦 東京大学東洋文化研究所教授 - (地域経済・社会資本部会)
-
部会長 森地 茂 東京大学大学院工学系研究科教授
部会長代理 安土 敏 サミット(株)代表取締役社長、企業小説家
出席者
(委員会)
- 豊田経済審議会会長、小林企画部会部会長、水口構造改革推進部会部会長、江口構造改革推進部会部会長代理、清家国民生活文化部会部会長、大田国民生活文化部会部会長代理、八城グローバリゼーション部会部会長、安土地域経済・社会資本部会部会長代理
(事務局)
- 堺屋大臣、今井政務次官、塩谷事務次官、林官房長、中名生総合計画局長等
〔 委員長 〕 大臣は、あと5分ぐらいでいらっしゃいますが、その前に、時間でございますので始めさせていただきます。
今日は、こういう時間に、お忙しい中をお集まりいただきまして大変ありがとうございました。
ただいまから、第1回の基本理念委員会を開催させていただきます。
この基本理念委員会は、1月18日の経済審議会の総会におきまして、新たなる時代の基本理念に関する考え方のすり合わせを行うため、審議会の会長と各部会長、部会長代理の方々をメンバーとして設置されたものでございます。
当委員会の委員長は、経済審議会の会長として私が務めさせていただきますのでよろしくお願い申し上げます。
なお、これからいろいろとご討議いただくわけでございますが、私から、各部会長の皆様にお願いさせていただきたいのですが、各部会には委員としていろいろな方に参加いただくことになりました。新しく当審議会の委員になっていただいた方々が大勢いらっしゃいますが、新しい委員の方々も議論において遠慮されることのないよう、自由で積極的なご発言を引き出すように各部会長の皆様方にぜひリードしていただきたいと思っております。いろいろと新しいアイデアを盛り込んだものにまとめていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
それでは、大臣のご挨拶は後ほどいただくこととしまして、議事を進めてまいりたいと思いますが、当委員会は私を含め委員の間で自由に意見交換を行うという懇談会的な運営をしていきたいと思いますので、この後の進行役は事務局にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
〔 事務局 〕 それでは、委員長のご指示でありますので、私が便宜進行役を務めさせていただきます。
今、委員長からお話がありましたように、大臣は5分ほど遅れるということでありますので、大臣が来たところでご挨拶ということにいたしたいと思います。
まず、各部会でもお決めいただいておりますけれども、この基本理念委員会での議事内容の公開について、皆様のご了解を得たいと思います。
〔 事務局 〕 お手元に資料がございますが、2枚めくっていただきまして、資料2が「経済審議会基本理念委員会の議事内容の公開について(案)」でございます。各部会でも、始まりますときにお願いしていることでございます。そこにございますように、
「経済審議会基本理念委員会の議事内容の公開は、今後、以下によるものとする。」
「1.経済審議会基本理念委員会については、原則として議事要旨を会議終了後2日以内に作成し、公開するものとする。また、議事録を会議終了後1カ月以内に作成し、公開するものとする。ただし、議事要旨、議事録ともに発言者名の公開は行わないものとする。」
「2.配布資料は、原則として議事要旨と併せて公開するものとする。」
「3.会議開催日程については、事前に周知を図るものとする。」
以上でございます。
〔 事務局 〕 ただいま説明のありました公開の仕方は、経済審議会の場合、各部会とも共通にこういうことでやっていますけれども、この委員会もそういうことでよろしゅうございましょうか。
(「異議なし」の声あり)
〔 事務局 〕 それでは、基本理念委員会の議事内容の公開につきましては、本日の冒頭にさかのぼって、そのようにさせていただきます。
続いて、本日の議題の方に入らせていただきます。
諮問があった後の経済審議会のご議論の状況でありますけれども、1月18日に総理から諮問をいただきまして、その後、5つの部会をそれぞれ立ち上げて議論を始めるということで、1月に、まず、企画部会が諮問後第1回の議論をやっております。その後、順番に申し上げますと、地域経済・社会資本部会、国民生活文化部会、構造改革推進部会ということで、既にそれぞれ第1回の部会を開いていただいております。なお、グローバリゼーション部会につきましては、来週の月曜日に第1回の部会を開いていただく予定となっております。
各部会で、最初に「10年後のあるべき姿」というのを検討する際に、基本的に選択が迫られる大きな問題について、まず各部会の考え方をできるだけすり合わせるということで、共通に議論をしていただこうと、それぞれの部会でご議論していただきました。
その議論の主な内容は、資料3で、今お手元に第1回の各部会でのご議論の様子をお配りしてございます。
後ほど、各部会長から、各部会でのご議論の様子をご報告いただきたいと思っておりますが、最初に、事務局の方から、この資料3についてご説明申し上げることにします。
〔 事務局 〕 お手元に資料3がございますが、資料3「我が国の国家像についての意見集計」ということで、それぞれ7つの質問について書かれております。
「1.世界における我が国の位置づけについて」でございますが、「世界秩序への関わり方」としまして、「積極的に関わるべき」というところに、「いつまでも所与のものとして自国だけいかに発展していくかを議論すべきではない」というところから始まっております。
「尊敬される国であるべきか」という問いも出してありますが、「尊敬されるか否かは結果であり、目指すべきものではない。」という意見がございました。
「その他」という整理にしておりますが、2つの問いに直接整理しづらかったものですから、その他として、それぞれの部会から出されました意見をこのように書かせていただいております。
次のページ、「2.自由と社会的秩序などのトレードオフについて」でございます。こちらは、「自由・個人・応報・優先」というところにいれておりますが、「集団主義が経済の活性化を阻害しており、その是正をハードランディング的方向性で考えるべきである。」という意見をいただいております。
「その他」では、構造改革部会で、「あるべき姿に至るまでの調整過程が重要。」「構造改革を進めるには、自立した個人を作ることが必要条件。」という意見をいただいております。
その下に国民生活文化部会、地域経済・社会資本部会のご意見を書いてございますが、ここでトレードオフという言葉が何回も出てきております。トレードオフ自体が、かなり尖った表現でして、それについてここにありますようなご意見が出ております。ひとつご覧いただければと思うのは、上から2つ目の「社会保障分野では、『自由と社会的秩序』とは必ずしもトレードオフになると思わない。」、その下で、「これを守ってこれを捨てる、と決めることはできない。自由と社会的秩序のトレードオフというものも長期的に存在するのかどうかは疑問」。地域経済・社会部会では、「自由と社会的秩序をトレードオフの関係で議論するのは不適切で、自由を享受するためにも必要となるルール的社会秩序はある。」というご意見等がございます。
「3.産業・技術等のワンセット主義について」でございます。「ワンセット主義の維持」というふうに入れてございますが、「フルセット主義を捨てると地方を捨てることにならないか。」というような意見、3ページにまいりまして、「エネルギー、食料といった将来の日本経済に係る安全保障の議論も重要。」ということ。その反対側の「ワンセット主義の一部あるいは全部放棄」というところに、「衰退産業の保護は反対。しかし、淘汰されるものの中からも後世に伝えていくべき技術をいかに保護し、伝えていくかが大事。」というご意見も紹介しておきます。
「4.日本固有の良さについて」でございます。ここにご覧いただきますようなご意見をいただいております。「何事もきちんとしていること」「自然をとりこみ共生する」というご意見をいただいていますが、ここは、比較的あまりご意見が出ていないのかなという感じがします。
「5.経済成長について」でございます。「経済成長の重要性」というのがここにはございますが、ここは「経済成長は重要な要素である」と「経済成長以外に追求すべき価値がある」というのに分けていまして、ご覧のようなご意見が出ております。
4ページにまいりまして、「その他」のところでは、構造改革推進部会で「ゆとりと豊かさ」「1人当たりの生産性を向上させる必要がある」、国民生活文化部会で「幅を持った経済」「インフォーマルな取引を公的にサポートする」というご意見などを紹介しております。
「6.個人の帰属先について」でございます。2つ目に「地域社会が重要」、3つ目に「家族や地域やNPO等、多様な選択肢があってしかるべき。」、下から2つ目に「ボランティアでは行き先のなかった退職者・高齢者がNPO・市民活動・市民事業では活躍できる場がある。」などのご意見をいただいています。
5ページで、「個人をいかに集落や自治といったコミュニティ作りに取り入れていくか議論すべき。」というご意見がございます。
それから、縦型の社会構造から横型の社会構造が必要になってきていますが、それがそのようになっていないので「構造改革が必要となった」というご意見などがございます。
その下、「家族の機能を再生する必要があるのではないか。」という意見もございます。
「7.地域のあり方について」でございます。広大な「過疎・無人地帯」が存在するおそれが人口減少の中であるわけですが、これを許容するかという問いに対しまして、「許容する」という方はございませんで、「許容しない」という方にたくさんご意見をいただいています。右の「許容しない」の欄をご覧いただきますと、上から2つ目に、「農村・農業で衰えている集落の生産機能をいかに再生させるかが重要。」、その2つ下で、「食料や建材等の国内生産を増加させることにより、地域の環境、文化、風景、農林、水産業を復活させられるのではないか。」というご意見がございます。
6ページでは、構造改革推進部会のご意見として、今世紀は都市経済中心であったわけですが、都市が住みづらくなって、「地方の良さが認識されるのではないか」。国民生活文化部会のご意見としては、地域の人々が主体となった政策提案とか地域づくりというご意見がございました。
参考としまして、「あるべき姿」における我が国の国家像をどう考えるかという7つのクエスチョネアが付けてございます。
〔 委員長 〕 大臣がいらっしゃいましたので、ご挨拶をいただきたいと存じます。
〔 大臣 〕 それでは、早速、挨拶させていただきます。
皆様、お忙しいところをお集まりいただきましてありがとうございました。
この委員会は、各部会の部会長及び部会長代理で構成されていまして、経済審議会会長に委員長になっていただきまして、これから経済審議会が検討する案の基本骨子を議論していただくところでございます。
従来の発想と違いまして、今度は、10年ぐらいの長期にわたる日本の経済社会のあり方、かなり広い範囲でこれを考えていきたいと思っております。
特に時代が非常に変化しまして、近代工業社会から次の社会に転換するということで、基本的な日本の国のあり方、こういったものをどのように考えるか。まず、この委員会で方向を統一してみていただきたいと思っているところでございます。
そういう意味で、皆さんから忌憚のないご意見といいますか、本音のところを言っていただきたい。また、単に現在の延長だけではなしに、未来から見た姿というものを鮮明に描き出していただければありがたいと思っております。
私たちもいろいろと議論をいたしまして、既に企画部会を含めて4つの部会は開かれていまして、1つまだ開いていない部会がありますが、いろいろとご意見を伺いました。そういうのを1つのたたき台といいますか、議論の種としてここに出させていただいております。
一体未来の日本はどうあるのか、経済社会の面から議論していただく大変重要な委員会だと思っております。
私どもも、遠慮なく議論に参加させていただきまして、ここでは、我々も私人に戻って議論に参加させていただきたいと思っております。幼稚なことも、過激なこともいろいろ申し上げるかと思いますけれども、よろしくご審議、ご批判いただきまして、何らかの方向が見えるようにしていただければありがたいと思っております。よろしくお願いいたします。
〔 委員長 〕 ありがとうございました。
〔 事務局 〕 資料説明の途中でございました。引き続きご説明させていただきます。
〔 事務局 〕 最後にお手元の資料のご紹介だけをさせていただきます。参考資料が5つ付いておりまして、これは、先ほど事務局のほうからご説明しました、各部会の進め方についての資料でございます。グローバリゼーション部会につきましては、2月22日に予定されています資料を、先物で付けているものでございます。
以上でございます。
〔 事務局 〕 今ご説明いたしましたように、資料3は、3つの部会で、資料3の最後に(参考)で付いています7つの設問についてご議論をいただいたものを、項目に沿ってまとめたものでございます。
これを材料にしていただいてご議論いただきたいと思いますが、初めに、それぞれの部会でのご議論を踏まえて、あるいはそれから離れて、ご意見を伺いたいと思います。
最初に、A委員から、ご意見をお願いいたします。
〔 A委員 〕 こういう形でお話しすると思いませんでしたから、用意もしていませんが。
1つは、企画部会の方は、企画部会そのもののミッションが、もちろん企画部会本来のこともあるのですが、どちらかというと各部会でいろいろ議論されたものをどうまとめていくかというところが、かなりメインではないかというお話も伺っていたのですが、今伺ったことについて、ちょっと感想を申し上げたいのです。
各部会でのものがまとまってきたからかもしれませんけれども、この中のどれかをつなぎ合わせても、10年先の日本のあり方のイメージはあまり湧いてこない、正直に言うとそういう感じです。言葉がまとまってしまったからなのか、本来こういうものがないからなのかわかりませんが。
例えば、1の「世界における我が国の位置づけ」というところからよりも、「個人はどこに帰属すべきか」というところから議論していった方が、将来のあるべき社会の姿というのが見えてくるのではないか。世界の中の日本という、大きな話が先にあるのではなくて、それはまさに結果だ、むしろ逆から議論していったらよいのではないか。
私は、感じから言うと、そういう考え方の進め方の方が、ここから出てくるシナリオなどが、もう一つの課題である「結果的に多くの人たちにとって関心の対象になり得るもの」になるのではないかという気がします。
とりあえず、感想だけを申し上げます。
〔 事務局 〕 B委員お願いいたします。
〔 B委員 〕 構造改革推進部会の主な意見は、今ご説明があったところは重複しないようにして、議事録は既に議事概要という概略が出ておりますが、2、3申し上げます。
1つは、「あるべき姿」というのはもう既にあるのではないか。問題は、いかに実行するかである、という議論。
それに対して、そうは言っても現実との差は非常に大きい。したがって、それを認識する。しかも、その差を縮めていくということが実行になるわけですから、それは何が必要であるかを議論すべきである。その場合には、何かのスローガン、例えば「経済社会憲章のようなものが必要ではないか」というようなご議論が必要なのではないか。
「日本の固有の良さ」とか「ワンセット主義」とかのあたりは省きます。
要は、当面の不安のみならず、中長期の不安があるので、そのために、わかりやすい形で中長期の姿が描ければいいと思っている。
それから、「あるべき姿」へのプロセス、そのプロセスが重要。これは先ほどもご紹介があったとおりです。この委員は金融関係ですから、自分が苦労していることを言われたのではないかと思います。
それから、長文のレポートを作成しても読んでもらえない。そのためには、全体を網羅する必要はなく、断片的でもいいからターゲットを絞ってまとめるべきではないか。
これは「あるべき姿」に対する議論で、まだ委員の皆さんは言うべきことが非常に多いようでありましたが、あとはメモとして月末までに出してくださいと言ってあります。
それから、構造改革推進部会の固有テーマについて、これが非常に重要な点なので、私自身もそういう考えを強く持っておりました。私が言う前に、各委員の間から出たのは、ここに出てきている案の検討テーマについては、規制緩和推進計画は既にでき上がっており、これでいいのか。その前提として、あとは個人とか、企業とか、民間がしっかりやれよ、こういう話が多いので、その辺はおかしいのではないか。規制緩和推進計画というのはまだ十分できていない。そこをまずスタートとしてとらえる必要があるという意見。
それとの関係で、これは経済審議会固有の問題ではありませんけれども、税制の問題ですね。それから、グローバルスタンダードという問題についてどうか、このような議論がございました。
最初ですから好きな議論をしていただくということで、C委員もいらっしゃいますけれども、何ら調整するつもりはなく、それぞれ皆さんに勝手な意見を言っていただいたところです。
〔 事務局 〕 どうもありがとうございました。次に、D委員お願いいたします。
〔 D委員 〕 私どもの部会は、国民生活文化部会というので、文化というのが付いていまして、私も、ここにおいでのE委員もエコノミストですから、こういう文化の香りは-E委員は多少あるかもしれませんけれども-あまりない者がこのような部会に参加してどのくらい役に立つのか非常に心配なところはあるのですが、できるだけおもしろい議論をしていこうということで、特に第1回目は自由な議論をさせていただきました。
既に、A委員、B委員からお話がありましたように、「あるべき」という言葉に大分引っ掛かりをお持ちの委員の方は多かったと思います。私も、どちらかというと「あるべき」というよりは、経済学者ですから、我々が言えるのは「どうなる」と。しかも、どうなると言っても、その「どうなる」ということについてある程度言えるのは平均値の話で、その「どうなる」という平均値のまわりの分散もこれから広がってくるわけで、なかなか「あるべき姿」というものを、特に国民生活文化という面で出すのは難しいのではないかという印象でした。
ただ、1つのポイントは、今言いましたように、どうなると言っても、その分散が広がっていくということや、要するに個人の選択肢がどのくらい拡大していくか。特に「国民生活こうあるべし」ということは誰も言えないわけですから、国民各個人がどのくらい自分の選択と自己責任において生活のあり方を実現していくことができるかどうかという条件をどうしたら整えられるかということは議論できるのではないか、ということだったと思います。
そういったことを議論する際に、国民生活文化部会として、委員の方から、今日のこの委員会にお願いというのがありました。それは、議論の前提としてどんなことを考えたらいいかということであります。先ほど、世界秩序への関わり方というところで、与件という話が出てきましたけれども、今申し上げる与件というのは必ずしもそういう意味ではなくて、国民生活がこれからどうなるかというのを考える際の、経済学の言葉で言えば「外生変数」、例えば人口構造は高齢化することがはっきりしているわけですけれども、それは与件としていいですね、と。これは確認だと思いますけれども。あるいは、人口構造自体を内生変数化して何か変えるという話までするのでしょうか、その辺を決めていただきたいですね、というようなことです。
あるいは、競争構造。我々は、国際的な競争の中に好むと好まざるとに関わらず参加していかなければいけないのだ、日本の国内市場を国際市場から隔離することはできないのだ、という与件で話を進めていいのでしょうか。先ほど、フルセット主義・ワンセット主義のお話等もありました、その辺とも絡んでくると思いますが、そういうことです。
あるいは、人々の意識の構造。例えば、豊かさの基準というものが大分変化しつつあるように思いますけれども、そういうものを「こういう形で豊かさを考えるべきだ」というように、変化を変えることができるというふうに考えるか。それとも、人々のそういった、例えば豊かさの基準というものは今の変化の方向で進むのだという与件にするのか。その辺も、決めてほしいということではありませんけれども、議論をする際の大きな前提になるので、ある程度固めておいてほしい。
いろいろにそれぞれの委員がおっしゃっていたわけですが、大きく分けると、人口構造、企業を取り巻く競争構造、人々の意識の構造、そういった構造変化を大きく与件として、これからの国民生活あるいは文化というものがどうなるかを考える方が議論がしやすい、あるいは発散しないのではないかということだと思います。
それを今回の基本理念委員会で決めていただくというような趣旨のものか、あるいは、それ自体が正しいのかどうかわかりませんけれども、そういった要望が出ておりました。
個人の帰属先ということに関連してですが、競争構造が非常に厳しくなってきますと、企業の寿命が短くなると言っていいのかどうかはわかりませんが、企業が長期的に安定した雇用をギャランティできる確率というのは、逆に低くなってくるかもしれない。そうすると、個人の職業生涯と企業の寿命というものが、かなり一致しているような構造の下では、個人の能力開発であるとか、生活設計というものが、1つの企業とリンクしていても、それほど不都合なことはない、あるいは、むしろ便利なことが多かったのだろうと思いますが、一方で個人の職業生涯が長くなり、一方で、もしかすると企業の寿命は短くなるというようなことになりますと、場合によっては、個人の職業人生を全うするためには、企業間を渡り歩くことで最終的に長い職業生涯を全うする。そうなってきますと、1つの会社に強くリンクしたような、例えば能力開発のあり方ですとか、所得の配分のあり方ですとか、そういうものは見直さなければいけないのではないかと思います。
また、実は今でも、私のような労働経済学者からみると、労働力というのは相当多様なわけです。しかし従来、日本で、例えば終身雇用制とか、年功賃金とか、企業内組合というような日本の雇用制度の特徴と言われたようなものが議論されるときの前提になっていた、かなりホモジーニアスな労働力というのがあるわけです。つまり、日本人の若いところから中年ぐらいまでの男性の大企業社員というような人たちを前提に、例えば日本的雇用制度とかいうものを考えていた部分があると思いますが、実は今でも、そういったところにカバーされている人はそんなに多いわけではない。これからますます人口構造が高齢化してくれば、女性の比重も高くなってくるでしょう、あるいは高齢者ももっと増えてくるでしょう、場合によっては外国人も入ってくるということで、多少キャッチフレーズ的に言いますと、労働力自体が、従来想定されていたような、かなりホモジーニアスなものから、もっとヘテロジーニアスなものになってくる。そうすると、もう少し労働力の異質性あるいは非均質性というものを陽表的にとらえたような職業像あるいはキャリア像みたいなものがあってもいいのではないかというようなこともあるかもしれません。
最初ですので、その程度です。
〔 事務局 〕 先ほど申し上げましたように、グローバリゼーション部会は来週の月曜日が第1回ですから、部会意見を踏まえてということではございませんが、今日のご議論、ご説明を聞いて、F委員から何かございますか。
〔 F委員 〕 私の個人的な理由で、まだ部会が開かれておりませんで大変申しわけないと思っています。
この部会の議論の進め方を拝見した上での話ですが、できるだけ第1回は皆さんの意見を自由に発言をしていただきたいと思いますが、私の頭の中で考えておりますのは、まず第1は、どういう分野でグローバリゼーションが進んできたかということを、皆様のご意見を伺うのがいいかなあと思っております。
気がつきましたのは、当然ですが、金の流れが非常にグローバルになってきた。大変な勢いでお金が取引されるわけですが、86年と現在と比べるて大体8倍ぐらいになっています。1日の取引量は1兆6,000億ドルぐらいですから、世界貿易の4カ月分が1日に金としては動いているということで、いわゆる実体経済と金融との関係が、その力関係がかなり変わってきた。あるいは、影響が金融の方から実体経済に及ぶようになった。これは確かに大きな現象の1つだろう。つまり、いわゆるエマージングマーケットでの通貨危機、経済危機というのは、金の流れによって起こされたと言っても言い過ぎではないだろう。
第2の分野は、モノをつくるという生産の分野でのグローバリゼーションが進んできている。しょっちゅうパソコンを持って飛行機に乗りますけれども、パソコンはいろいろなものを使いますけれども、今はコンパックを使っていますが、恐らくコンパックのパソコンの中でコンパック自身がつくったものは、ブランドネームだけだろうと思うのです。中身は全部、台湾とか、香港とか、いろいろなところでできたものであって、ブランドだけがコンパックである。それほどモノの生産自体もグローバルになってきた。
ですから、先ほどお話がありました、ワンセット主義というのをどういうふうに理解するか、私はよくわかりませんが、恐らく、ワンセット主義というのは、グローバリゼーションとは両立しないものではないか。最も安く、そしていい質のモノができるのなら、どこでつくろうとそれは関係ないということになってきている。
第3の分野は、グローバリゼーションの流れの中で出てきている現象の1つは、法体系といいますか、税制も含めて、そういうものの一種のグローバリゼーションが進まざるを得ないだろう。日本だけが違った、固有の法体系なり税制を持っているということが、日本にとって果たして続けていくことができるかどうかという問題があろうかと思います。
それからもう一つは、情報といいますか、テレコミュニケーションの分野でのグローバリゼーションというのが非常に大きな流れとして起きている。
これらを一応考えてみた上で、皆さんでこういう議論を引き出せることができたら、その上で、そういうものに対して我が国としてはどう対処すべきなのか、ということが重要な課題かなあと思っております。
ですから、グローバリゼーションというと、一部には、これは市場主義で、アメリカのやり方がそのまま世界を支配するので、これは望ましくない、むしろ、否定しようという立場の方もおられるようですが、そういう議論を引き出す必要があるかなと思います。
引き出すという意味は、それを十分議論した上で、一体我が国の行くべき姿はどこに求めたらいいのだろうか、というふうにしていくのがいいかなと。
ですから、グローバリゼーションは、どうしても日本としては受け入れなければならないものだということを前提とした議論でなしに、それをつぶした上で議論をしていったらどうかと今思っています。
そのほか、先ほどから皆さんのお話を伺って、経済成長とか、ワンセット主義とか、国の経済成長と企業の将来というものを考えたときに非常に密接な関係があるわけですが、まだ出ていない問題ですけれども、私は、ステークホルダーという日本固有のものの考え方を議論してみたらどうかと思っています。つまり、ステークホルダーは日本固有の美しさみたいなものがその言葉の中にはあるようですが、実は、そういう日本固有のものでいいと思っていたものが今問題の原因になっている分野もあるという気がいたします。ですから、その辺も、与件を持って話を進めるつもりはもちろんありませんけれども、徹底した議論をしないと、本当にみんなが「なるほどこれが日本の行くべき姿だ」というものに到達しないと思いますので、ステークホルダー対シェアホルダーのものの考え方、それが企業の成長とどういう関係になってきたのか、将来どう考えるべきものかということが、ちょっと念頭に浮かんだだけですけれども、資料をいただいた上での感想でございます。
〔 事務局 〕 どうもありがとうございました。それでは、地域経済・社会資本部会は、G委員にご出席いただいておりますので、お願いいたします。
〔 G委員 〕 最初は、自己紹介みたいなもので、それぞれ自分の思っていることを言ったので、あまり特別なことはなかった。印象に残ったのは、ある委員が、どうしたら女にもてるかという話をして、女にもてるようなものの考え方をしないとだめなのだという話が、皆さんに大変受けておりました。したがって、まとめるようなことは特にないのですが、今日のたたき台をずっと見せていただいていろいろ私なりに感ずるところがあるので、順番に簡単に申し上げます。
まず、1の問題ですが、軍事大国にならないというのは当然のことですが、近隣の危険が非常に大きいのではないかという気がします。ちょっと話題になった「宣戦布告」という小説がありましたが、ああいう問題は当然にして起こるし、許可も取れて、発砲できないうちに侵略されてしまうということだって、ないではない。最近の話題になった本の中では、朝鮮半島が統一されるということは、北の軍事力と韓国の経済力が結び付くということで、大変な日本の脅威になるのではないかという話があるので、ただ単純に「軍事大国にならない」ということで片づけてしまっていいのかどうか。国防ということは、非常に重要な問題であって、これに触れないことが非常に問題ではないかという気がします。
ちょうど戦時中に、日本は国防のために侵略しなければならないと言ってワァワァやったような、ちょうど反対のことになっているので、その辺が問題で、日本の将来を考えたら、そのことについて一言も触れないのは問題ではないかという気がします。
尊敬される国であるべきかどうかということについては、この前の部会でも私は言ったのですが、日本ほど今日の世界の問題が集約している国はないわけです。少ない国土に大勢の人口がいるということは地球の未来の姿であります。当然、それが環境問題に結びつく。高齢化社会ということもそうです。工業が発展しすぎたり、教育が非常に行き詰まったりする、全部これは世界中で間もなく起こってくることです。その問題が全部一挙に起こっているということは、それを解決することが、すなわち世界から尊敬されることにつながるのではないか。
いつの時代でもそうですが、その時代の最先端の問題を抱えた国や地域あるいは集団が、その問題を解決されたときに一番尊敬されるわけです。世界に出て行ってコストをかけて何かをするよりも、自分の国の中で起こっている問題を一つ一つちゃんと解決していくことがすなわち、みんなが「どうやって解決したんだ」と当然に日本に聞きに来るでしょう。会社も同じことであって、大きな問題を解決した会社が尊敬されるのと全く同じ種類のことで、出て行ったりすることはないのではないかという気がいたします。つまり、問題解決型の国というか、そういうことになることが非常に重要。
それとの関係で言うと、「あるべき姿」という表現があまり日本では受けない表現ですけれども、これは目的とか、目標とか、コンセプトと言うともっと受け入れやすい。つまり、日本がどういう国になるかのコンセプトがはっきりしなければ問題解決できないわけです。マネージメントにおける問題解決とは、目標あるいは目的達成を阻害している要因の除去というふうに定義されているわけですけれども、コンセプトや目標がはっきりしないと、実は問題解決できないわけです。今のエレメントからスタートしていくという、なり行き任せでない限りは、どうしても目標、目的のようなものがいるわけです。「あるべき姿」という言い方はきついかもしれないので、コンセプトなどと言ったらいいのかなという気がします。
自由と社会秩序の問題は、私どもの部会でもちょっと出ていました。これは矛盾すると考える方がおかしいので、ルールがあるから自由にできるわけで、OB杭があるからゴルフがおもしろくなるのと同じ種類のことで、そんな難しい話ではないのではないか。むしろ、両立すると考えないといけいないなという気がします。
それから、平和とか環境という絶対的善みたいなものがいつの時代にもあります。日本では特にそれが一番前面に、今は環境と言ったら大抵何でもいい、これは誰も反対できない。戦前では軍国がそうだった。ちょっと前までは、平和と言ったら誰も反対できない。これが日本人の思考を非常に阻害しているのではないかという気がします。ですから、マクス・ウェーバー流に言うなら、ペルトフライハイトというか、価値観をいきなり出すのではなくて、ロジックを積み重ねていって分析していくような、教育レベルからそういうことをしていかないと、ただ単に価値観をとなえたら、それでおしまいというようなところも変えなければいけないと思います。
それとの関わりで言うと、一番最近の「文春」だと思いますが、立花隆さんが、世界で日本が一番「理科が嫌い」という人が多い、これは21世紀の大問題だということを書いておられます。私も、そう思います。論理がなかった、論理の苦手な国が、ますます論理を軽んずる方向に社会全体が向かっていくのでは、それこそ世界に尊敬される国などになりっこない。そのあたりもちょっと考えてみないといけないのではないかという気がします。
日本固有の良さのことは、私は、実は小唄の名取でございます。仕方なくやらされて、なってしまったのですが、やってみてびっくりしたことは、日本の音楽というのは西洋の音楽と全然違う。思い出してみると、子供のころから学生時代、1回も日本の音楽を教わったことはない。全部、西洋音楽を教えられているわけです。伴奏と歌とが微妙にズレてくるとか、音階がズレちゃうようなこととか、こういうことも含めてそもそも明治以来、全部日本の音楽を捨てているわけですから、そういう意味でいうと、果たして音楽だけでなくて、日本固有の良さというのは教えられているのかどうか、その辺も非常に疑問があります。そんなことも、つまり教育の問題だと思いますが、考えなければいけないのではないかと思います。
経済成長は、多少は成長しないといけないと思います。
個人の帰属先の問題については、会社と個人の関わりは本当に異常だったと思います。この30年ぐらい、どんな状況かということは縷々申し上げることもないですが、私は「社畜」という言葉をたまたま作ってしまって、それを佐高信さんが使って、えらい流行ったのですけれども、本当に会社が飼った家畜のような状態になっておりまして、これにはいろいろな問題があるというふうに考えなければいけないと思うのです。一杯飲んでの話題の最後は、会社の中の昇進の問題にしかいかないということが、本当に高級サラリーマンの大多数の置かれている状態です。そんな状態を抜け出さない限り、文化もへったくれもないわけです。家庭がゲゼルシャフトになって、子供の進学目的のために奉仕していて、会社がゲマインシャフトになって、みんなで集まって、身を寄せ合ってなめ合っているというような状態は、変えなければどうしようもない。
そのことは、契約と関係があるのです。会社と個人の間の契約が、雇用契約と委任契約しか基本的にはないわけですが、今の働き方はもっとはるかに複雑になっているのです。例えば、私は、大企業に10年勤めてから、出向して関係会社の経営者をやった。私は、会社とは雇用契約で結ばれているのか、委任契約で結ばれているのか、今もってはっきりしないわけです。その他、これはいろいろありますが、会社と個人を結ぶ契約、民法が想定している契約ではとても測れない。にもかかわらず、いろいろなことがそのまま行われているから、建前と本音がズレてくる。そのあたりも大きな問題があるのではないか。
そのことと、最後の地域のあり方は非常に関係がありまして、結局、長距離通勤をしている限りは時間的・空間的に、個人には時間もなければ空間もないわけです。時間と空間がなければ、人生のすべてがないということになるわけで、これも非常に問題です。
大臣がかねて主張しておられるように、首都機能移転ということは必要ですが、それだけで本当にいいのだろうか。もっと必要で、日本は、比較的立派な家なのに、家中の人が台所とトイレに集まっているようなことになっています、一極集中というのは。もっと居間とか、応接間とかをうまく使って、日本国土をうまく使うようなビジョンを出さないと、これは国防上も一発ミサイルで東京をねらうよと言われたら、全部手を挙げなければいけないようなこととも関わりがあるので、そのあたりもちょっと問題ではないか。そのあたりについて何か出さないと、この委員会というか、経済審議会としては落ちてしまうのではないかと思います。
あと2つほど、短いことです。人材の二重構造の問題が、私は総合商社からスーパー業界に行った者ですから、非常によくわかるのです。人材の二重構造があまりひどい、これは給与と関係があるのですが、そのために社会の、会社間の移動ができなくなっている。つまり、銀行とか商社のように非常に給料の高いところと、非常によく働いているのに給料の安い流通業界があると、移動がないわけです。こういうことが国中でできていますので、これは規制とも関係があり、護送船団方式とも関係があるわけですが、そのあたりを解決しないと、いくら移動しろと言っても移動できないというのが正直なところです。では、大企業に勤めた人はハッピーかというと、非常に気の毒な人生を送っている人が、私の友人はもうほとんどが終わってしまいましたけれども、「あぁ、しまった」と思っている人が非常に多いのではないかと思います。
もう一つは、女性です。女性の労働ということ、男女差別ということは今もって厳然として存在しておりまして、この問題も言われている割りには解決されていない。これは女性側にも問題があると思いますが、そのあたりもちょっとしたビジョンというか、何か示すことができるし、するべきではないかと思います。
いずれにいたしましても、ほかにもいろいろあるのですが、最終的には、これらの問題を解決していく国、英語で言うとマネージ・ツゥという言葉、「うまくやる」というような意味であったと思いますが、そういう種類のことが我々日本がこれから目指していくことの1つの方向の中にあるのかなというように思います。
長くなりまして、すみませんでした。
〔 事務局 〕 どうもありがとうございました。5人の部会長の方からご発言をいただいきましたが、この後は自由にご議論をというところですが、実際はもう10分ぐらいしかなくなっておりますが。
〔 B委員 〕 個別の問題一つ一つを言うとエンドレスになりますから、今後の進め方として考慮すべき点について3点ほど、私の意見を申し上げたいと思うのです。
1番目は、大臣も、「あるべき姿」から戻してきて、どうしたらいいかということを言われた。事実、諮問もそのようになっておりますし、また、私自身も、経済審議会で96年に出した「6分野の構造改革」なども、経済審議会の立場からみたら、この6分野は、将来これが一番いい、そのためにはこういうことをすべきだということでアプローチをしましたので、まさにそれが一番いいと思います。
2番目は、その場合に考えるべきことは、これはいくらやってもしょうがないかもしれないけれども、ここにも円の国際化という問題が出ておりますけれども、やはり、今後10年間をみた場合の国際環境ですね。国際環境といってもいろいろあります、政治、経済、しかも発展段階によってずいぶん違いますが、この問題を与件として、あるいはどう考えるかという問題は考える必要があると思います。
3番目は、1999年からほぼ10年とみた場合に、私自身の考えは、この2年くらいが最大の重要な時期だと。例えば、2001年というのはあらゆる問題、例えば、僕が深く関係しているところから言えば、ビッグバンという問題も全部完成の時期に入る。金融サービス業もでき上がる。それから、行政改革自身もスタートする。それから、個別に言えば、国際会計基準という問題も全部適用されて非常に大きな問題になる。したがって、この2年くらいの地固め期をどうするかという問題。その後、本当に胎動期から飛躍期に入るかという見通しをはっきりつけるということで、その辺を一律にただ漠然と「10年先はこうだ、したがって、こうやれ」と言ったのでは極めて非現実的な議論になってしまうのではないか。その辺をきちんとそれぞれの専門家、特に構造改革推進部会ではその辺を認識してやっていきたいと思います。
私自身も、この数年来、市場と政府、あるいは自由と規制と言ってもいいかもしれませんが、そのことに最大の関心を持ってみておりますので、そういった観点からやっていきたいと考えております。
〔 E委員 〕 私は、女性のことで言いますと、女性は行き着くところまで行くだろうと思うのです。むしろ、これから興味があるのは、若い男性がどう働くかということの方がおもしろいと思うのです。与党が崩れるときの方がおもしろいのではないかと思っています。
ただ、おっしゃるように、女性の問題は、特に雇用の場ではまだ非常に大きい問題ですし、それから、介護、子育てというところで選択肢が非常に限られているという問題がありますので、行き着くところまで行くにしても、選択肢は早い時点で与えられるといいますか、そうなることが重要だと思っております。
あわせて2、3点申し上げてよろしいでしょうか。
〔 大臣 〕 どうぞ。
〔 E委員 〕 今、世の中が変わっていくことへの不安が非常に大きいのです。変わってどうなるのだろうか、悪くなるのではないだろうかという不安が非常に大きいわけです。1つの制度が変わるときは、制度というのは相互補完的ですから、すべてのものが変わらないと、いろいろ軋轢が起こってくるわけです。ですから、この転換の向こうにあるものを示す、あるべき論というよりも、転換の向こうにあるものを、取り得る選択肢として示すということが必要のように思います。つまり、「あるべき」論というよりも、転換の向こうに「つくり得る新しいシステム」です。
例えば、私どもの部会で言うと、働き方が変わる、今その弊害がたくさん出てきていますけれども、より流動性の高い新しいシステム・雇用システムに移ったときは、それはそれでまたいい点が出てくるわけです。もちろん、悪い点ばかりではない。今と同じようにいい点と悪い点を持ちながら新しいシステムができていく。あるいは、産業構造が変わって、その後に新しいシステムができたときの姿、そういうものを示して、変化してもこわくないといいますか、変わることはいいことなのだ、ということを描いて見せることは大事なように思います。
2点目に、あわせて、変化を前向きに受け入れて変わらなければいけないということです。先ほど来、何人かの方がおっしゃっているように、産業構造の変化であるとか、人口構造の変化であるとか、経済活動のグローバル化とか、こういうものを前向きに受け入れ変わらなければいけないのですが、この点はもっと危機感を持ってもいいと思います。受け入れるべき変化を先送りしているということに対して、危機感をしっかりと訴えてもいいのではないかと思います。
3点目に、対外的な問題については、外交、こういう面は私はあまりよくわからないですが、むしろ「あるべき」論といいますか、理念というものを考えるときだろうと思います。これまでのように、コストをかけずに国を守るということはできないわけで、私たちはどうやって国を守るのか、それにどんなコストを、どんな形でかけていけばいいのかというようなことは、きちんと議論する必要があるように思います。
以上です。
〔 C委員 〕 「あるべき姿」という1つの言葉でありますけれども、企業の経営をやっていますと、1つの方針を明確に出していくということがとても大事なことだと思うのです。その方針の中には3つの要素というものが含まれている。1番目は何かというと、基本理念だと思うのです。2番目に、具体的な目標。3番目に、最終的な目標。この3つが含まれていなければならないということになるわけです。どんな考え方で企業の経営をしていくのか、また、何のために企業が存在しているのかということを考えていく。
国の経営というもの、政治というものを考えても、やはり、同じことが私は言えると思うのです。どんな考え方で国の経営をしていくのか、これは考えていかなければいけないと思うのですが、最終的な目標といいますか、「あるべき姿」というものはおぼろげながらでも試行錯誤でもなかなか難しいと思うのですけれども、決めるのが難しいから・探すのが難しいからということであきらめるのではなくて、表現は「コンセプト」とか「目標」「目的」というようなことになってくるのでしょうけれども、国民に、いわゆる国家目標ではなくて、国民目標的な「あるべき姿」というものを出してもいいのではないか。
江藤淳さんではないですけれども、明治維新で、見えていたのは勝海舟だけだ。近代国家というものを目指して、1つの方向性をもって力強く動くことができたのだ、というコメントがありましたけれども、近代国家という1つの大きな目標があったから明治のエネルギーというのはそういうものに収斂していったと思います。戦後だって、経済大国というか、アメリカというものが1つの目標になっていたわけです。そういう意味で、私は、「あるべき姿」というものを構築するのが、難しいことは確かですけれども、「あるべき姿」というものをいくつか出す、それを何度か試みていくということは必要だと思います。そういう試行錯誤の中に、国民はあるいは多くの人たちが同意するような1つの「あるべき姿」というものが、出てくるのではないか。まとめる価値があるし、1つの提案をしてみる必要が、私はあるのではないだろうかと思っているわけです。
いずれにしても、構造改革推進部会で申し上げましたけれども、時代が変わったと皆さんおっしゃるのですけれども、何が一体どう変わったのかということの共通の認識がなければ、議論があちこちにとんでしまう。それぞれの考え方があったにしても、何がどう変わったのかと。大量生産大量消費の時代が終わって知価社会になったのだという考え方でもいいですし、縦社会から横社会になったのだという考え方でもいいんですが、皆さんが変わったとおっしゃるけれども、何が変わったということを認識してその話をされておられるのかと、その辺を私はいつも、どこでもそうですけれども、疑問に思うことです。案外漠然と「変わった」ということを、また受け売りで「変わった」ということでものを言っている方が非常に多い。したがって、「あるべき姿」というものもなかなか出てこないのではないかという感じがするわけです。
我が国経済社会のあるべき姿のたたき台ということで、尊敬される必要があるかという設問があるわけです。尊敬される国であるべきかというのは、私は、尊敬される国というのは、世の中が縦型・縦軸の社会から横型・横軸の社会に変わったという1つの前提からするならば、尊敬というのは上下の関係だと思うのです。尊敬される必要があるのかどうかということを私はちょっと疑問に思っているわけです。疑問というよりも、考えてみることも必要ではないか。それよりも、むしろ、好意を持たれる国家といいますか、世界の国々から好意を持たれる国。
今、日本の国は好意を持たれていないと思うのです。なぜ好意を持たれていないかというと、不透明で、不公正で、住みにくいからだと思うのです。何となくオープンではないし、規制が網の目のように存在していますから、外国から見ると非常に不公正だ。それから、住みやすいということもない。外国人が喜んで日本に来ているとか、優秀な外国人が日本に来ているなんてとても思えない。そんなことからすると、尊敬されるという必要はない。それよりも、むしろ好意を持たれる国家というものを考えてみてもいいのではないかと私は思うのです。
もう一つ、ここで「自由と社会的秩序などのトレードオフ」という関係になっているのですけれども、私は、今の日本で、社会秩序とか安定ネットとかいうことをいろいろ考えなければいけないという面はあるかもしれませんけれども、日本はあまりにも自由がなさ過ぎるという前提というか、規制が多過ぎる。そういうことからするならば、思い切って自由を強調してみる、そういうスタンスがあってもいいのではないだろうかと思います。あれもいいこれもいいとか、それはいいに決まっているわけで、中途半端な提言・まとめになるよりも、何かそういう点を主張した方がいいのではないかと思います。
ワンセット主義は、放棄というよりも、転換せざるを得ないのではないですか。さっき、F委員の方からお話がありましたけれども、これは転換せざるを得ないのではないかという感じがします。
日本的固有の良さということについては、私の方は、羞恥とか、和とか、積み重ねの文化とか、生成りの文化とか、自然主義とか、こういうような考え方というのはいろいろある、これはまた時間がかかりますから別のときにすることにします。
5の「経済成長について」ですけれども、これからの時代で、特に先進国で経済成長率ということで考える必要があるのかというよりも、考えられるのかというふうに思っています。私は経済成長率論には疑問を持っている。これは幼稚なたとえかもしれませんけれども、試験の点数が20点、30点の子供が一生懸命勉強して、これが10点増えたとか20点増えたということはできるかもしれませんけれども、90点の先進国において、これでパーセンテージを言ったら大変なことになっちゃうと思うのです。要するに、先進国の行き詰まりというのは、経済成長率、「率」で追っているというパーセンテージで追うことの1の問題点がこここに、どの国でも出てきているのではないだろうかという感じがします。
それから、「社畜」という話が出ました。確かに今までは会社人間的なというところがあった。それは貧しさ故のというか、日本経済が非常に低迷しているという10年、20年前、それから、その余韻でもっての、ここのところの「社畜」という言葉が当てはまるものかもしれませんけれども、今また、これからの時代の流れを見たら、A委員がおっしゃったように、会社人間だとか「社畜」という考え方はないのではないかという感じが私はしているわけです。
最後に、地域という観点で申し上げれば、私は、道州制というような観点から見ていただきたいなという感じがしています。道州制というような観点から言えば、もう一つ、首都機能移転というものも論じていただきたいという感じがしております。
以上です。
〔 大臣 〕 もうそろそろ時間でございますけれども、どなたか言い逃したことがありましたらどうぞ。あるいは、今まで出た中で反論などありましたらどうぞ。
〔 A委員 〕 ここは基本理念委員会なのですが、今度、あえて、大臣が作り方を変えようとおっしゃって、そういう方向で行っているわけですが、最終的に何を作るためにやっているのかという、まさにその辺の理念をもう一度きちんとしていただく必要があるのではないかという気がするのです。
今まで私も、部分部分ですけれども、経済計画に関わってきて、確かに計画と実績がかなり乖離したところがありますが、実際に中身から言うと、今日皆さんがおっしゃったことも大分前からの経済計画の中で、非常にまじめに議論されて、入っています。結論から言うと、しばらく先へ行ってから「合っていた」と言われる計画上のメカニックを精緻にするためにやろうとしているのだろうか。
もちろん、そうではないと僕は思うのです。大臣のお話も伺って感じるわけですが、結局、10年のものを作って、1つには、行動主体のところへリソースを配分するところにつ ながっていかないと、絵だけを描いたって何にもならないわけです。それは具体的には政府の予算にもつながるし、動いている官・民それから中央・地方それぞれに対して、こういうリソースの配分をすればこうなるはずだ、そういう面と、それから、1つのシナリオとして、そういった行動主体が、これを聞いて、見て、それに自分たちでセンス・オブ・オーナーシップを感じて行動に移すという魅力のあるものを、そこで作っていこう。
その2つあるときに、多分、今度の場合には、今までのいろいろ前者に主体を置いてやってきたのではうまくいかない。それはそれとして、後者にかなりウェイトをシフトして、これを見たときに、これを読んだときに、これを聞いたときに、結果的に行動する企業だったり、地方だったり、個人だったり、消費者であったりが、それによって動く。そういうものを結果としてアウトプットとして、大臣としてはお作りになりたい、と。最終メッセージを総理が実際に国民に何らかの形で伝えられるときに、そのようなインパクトを持つようなものを作ろうとしておられる、というふうに考えていいわけですか。
〔 大臣 〕 仰せのとおりでございますけれども、まず第1に、E委員がおっしゃったように、今変化の先が見えないから、みんなものすごく不安がっているというというところがあるわけです。だから、B委員がおっしゃったように、この2年間は大変重要な時期ですが、その後では一体どうなるのかということを、まず安心のできるような姿、あるいはこういう行動をすれば安心になれるというような姿を描いておかないと、今、全国民的にその点が非常にないだろう。未来像を描いて、それに向かって動けば安心だというようなものが1つ必要だ。これが1つ目だと思います。
それに従って、企業や個人が動いたとしたら、どのような世の中の流れが起こってくるのか。これの見通しが2つ目です。
そして、そのときに、政府がどのような観点で予算なり、人材なり、法律なり、制度なりを作っていったらいいか。これが3つ目だと思うのです。
こういったことが今までの計画の中で、見事に歯車が合ったと思うのは所得倍増計画だったと思います。それ以後は、計画はできても、それに合わせてすべてうまく同一の方向に向いたとは言いかねる状態でした。また、現実とも合わないことがありました。所得倍増計画のときは、何となく高度成長というのがコンセンサスになって、そして大型重化学工業をどんどんつくるのだと計画で言うと、それに合わせて国土の全国総合開発計画ができ、あるいは重点的な配分を行うように財投が進み、金融が行われ、学校教育もそれに合わせて高度成長型の人材をつくるというようにすべてがあったと思うのです。恐らく、明治もそうだったかもしれません。
今、明治維新、戦後のような大きな転換期に来ているとすれば、同じようなことがこれから起こっていいのではないかという気もします。それは、1つの目標に全員が走るということではないかもしれない。ないとすれば、全員が同じ方向へ走らない社会でどういう資源配分を考えたらいいか、どういう法制度を考えたらいいかという設問になるわけですけれども、それはどっちになるか、皆様方のご検討も待ちたいと思いますが、それぞれの人間がそれぞれの目標を追求してそれぞれに幸せを得られる社会というのが一番いいと思います。そのときに、どのような制度、どのような資源配分が行われるような仕組みを作ればいいかということになろうかと思いますが、だんだん話は難しくなってきて、そこから先になると誰もわからないという状態なので、皆様方にひとつ解答を描いていただきたい、こういうお願いでございます。
〔 委員長 〕 いろいろと皆様方からご議論が出まして、だんだんと形ができてくるような感じがいたします。
私も、感じましたことをちょっと申し上げますと、今までも、皆さんがおっしゃいましたように、こういう計画を何回もやっておられます。しかし、時代が変わってきたということで、現在、どういう点に一番危機感があるか。この危機感が、私の感じでは、国全体にはあまりないような気がするものですから、せめてこの会ででも、危機感を少しクローズアップして、このままで行くとこうなってしまうから、やはり、大臣のご趣旨に沿ってビジョンとして、これから先こういう理想的な社会を目指してやっていくのだという、これは国民全体のコンセンサスは得られないかもしれないが、この委員会としての1つのビジョンというものをはっきり出せば、それが国民に本当に受け入れられれば、その方向に日本全体が行くのではないかというふうに思っておりますので、ぜひひとつ、大臣のご趣旨に沿ってまとめていただきたいと思います。
非常に時間が短いですが、集中的にやった方がかえっていい案が出るかもしれません、よろしくお願いいたしたいと思います。
今日はどうもありがとうございました。
〔 事務局 〕 不手際で、予定の時間をちょっと超過してしまいました。最後に一言だけ、今後の予定について申し上げさせていただきます。
5つの部会でご議論を進めていただいておりますが、部会だけでは、必ずしも各委員のご意見を十分に聞けないところもありますので、今月の末までということで、各委員には更にペーパーでもご意見を頂戴することにしております。それから、来週の末ぐらいになろうかと思いますけれども、国民の皆様から広くご意見を寄せていただくということで、インターネットでの意見の募集を始めたいと思っております。そういうものも合わせまして、来月の末ぐらいに、どういう考え方で今度の計画を作るのだという、今日は「コンセプト」というお話も出ましたけれども、基本的な考え方というのを一度世間に出して、そこでまたご議論をいただきたいと考えております。そういうこともありまして、皆様大変お忙しい中を恐縮でありますが、3月半ばごろに、もう一度基本理念委員会を開かせていただきたいと考えておりますので、いろいろ時間の調整をよろしくお願いいたします。
どうもありがとうございました。
──以上──