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計量委員会(第1回)議事録

経済企画庁

計量委員会(第1回)議事録

計量委員会(第1回)議事次第

日時 : 平成11年2月17日(水) 10:00~12:00

場所 : 経済企画庁官房会議室(729号室)

  1. 開会
  2. 議事
    • (1)計量委員会の今後の進め方について
    • (2)政策シミュレーション等を通した計量モデルの評価について
  3. 閉会

(配付資料)

  • 資料1   計量委員会名簿
  • 資料2   計量委員会の今後の進め方について
  • 資料3   論点メモ
  • 資料4   中期多部門モデルを用いた政策シミュレーション
  • 参考資料1 中期多部門モデルの説明
  • 参考資料2 中期多部門モデル方程式体系一覧
  • 参考資料3 中期多部門モデル変数名表

計量委員会委員名簿

天野 明弘  関西学院大学総合政策学部教授
新居 玄武  学習院大学経済学部教授
岩田 一政  東京大学大学院総合文化研究科教授
植田 和男  日本銀行政策委員
小川 一夫  大阪大学社会経済研究所教授
奥村 洋彦  学習院大学経済学部教授
国友 直人  東京大学大学院経済学研究科教授
佐和 隆光  京都大学経済研究所教授
島田 晴雄  慶応義塾大学経済学部教授
橘木 俊詔  京都大学経済研究所教授
南部 鶴彦  学習院大学経済学部教授
伴  金美  大阪大学経済学部教授
深尾 光洋  慶応義塾大学商学部教授
藤原 正寛  東京大学大学院経済学研究科教授
吉岡 完治  慶応義塾大学産業研究所教授
吉川  洋  東京大学大学経済学研究科教授
吉田 和男  京都大学大学院経済研究科教授

〔 委員長 〕 ただいまから第1回計量委員会を開催させていただきます。

これまで本委員会の委員長は、関西学院大学の天野明弘先生が務めてこられましたが、天野先生がかねてより辞意を表されており、この度、経済審議会の豊田会長より私が当委員会の委員長を務めるようご指名をいただきました京都大学の橘木でございます。よろしくお願いいたします。

本日は、委員の皆様方にはご多用中のところお集まりくださいまして、誠にありがとうございます。

本委員会では、去る1月18日経済審議会が小渕総理より「新たなる時代の姿と政策方針」策定についての諮問を受けたことを踏まえまして、2010年頃までの長期展望を行なう上で、計量モデルの果たす役割と計量モデル分析を超えて考慮すべき点につきまして議論を行なってまいりたいと存じます。

委員の皆様方からは、忌憚のない意見を頂戴できれば幸いです。

委員にご就任いただいております方々につきましては、お手元にお配りしてあります委員名簿(資料1)のとおりでございますが、そのうち天野委員が19日付で本委員を退任されるご予定のほか、日銀政策委員になられた植田委員につきましても退任予定となっております。

それでは、まず事務局から本日ご出席の委員と事務局の紹介をお願いいたします。

〔 事務局 〕 本日は、橘木委員長を含めて6名の方のご出席のご返事をいただいておりますけれども、委員長席から向かいまして奥村委員。国友委員はご出席ということですけれども、ちょっと遅れられております。次が南部委員、藤原委員もご出席のご返事をいただいておりますけれども、ちょっと遅れられております。最後に吉川委員でございます。

事務局側は、経済企画庁総合計画局長の中名生でございます。右に向かいまして高橋審議官、佐久間計画官、委員長席左側に移りまして牛嶋審議官、私、計量分析を担当しております荒井でございます。あとは計量班でございます。よろしくお願いいたします。

〔 委員長 〕 ありがとうございました。

続きまして本日の議題に入る前に、中名生総合計画局長にご挨拶をいただきたいと存じます。

〔 総合計画局長 〕 

2月は大学の先生方は入学試験とか論文の審査があって最もお忙しい時期と伺っておりますけれども、そういうお忙しい中をやりくりしてご出席をいただきましてありがとうございます。

橘木先生には、今回新たに計量委員会の委員長をお引き受けいただきまして、心から御礼を申し上げます。

今、委員長からもご紹介がありましたように、先月の18日に小渕総理から経済審議会に諮問をいただきまして、新しい経済計画、「経済計画」という言い方はしておりませんけれども、新しい経済計画を策定するようにということで諮問をいただいております。

その背景にございますのは、現在の経済計画、「構造改革のための経済社会計画」が3年余前に村山内閣のときに策定された計画でありますけれども、この計画で想定していた姿と現実のその後の経済の動きが非常に乖離してきたという事情がございます。

例えば、実質成長率の数字で申し上げますと、この計画では構造改革を進めるということを前提に期間の2000年までの平均成長率が実質3%程度、構造改革が進まない場合にはそれが1と4分の3%ぐらいになるという言い方をしておりましたけれども、現実は99年度の政府見通しまで織り込んで考えましても、ここまでの間の平均成長率は0.5~0.6%という状況になっておりますし、最終年度の完全失業率ということでも2%台を考えておりましたが、足下はご承知のとおり4.3%ということで非常に厳しい経済状況になってきているということがございます。

そういう状況でありますと、足元はノーマルな状態ではございませんから、逆に言いますと先の展望が非常にしにくい時期でもありますが、片方で、今、景気が非常に悪い要因の1つとしては、家計の場合でも企業の場合でも、この先の日本経済、日本の社会の姿というのがよくわからない、先に対して確信を持てないということが足下の消費行動、投資行動を控えさせている。そういう要因にもなっておりまして、それだけに片方では、こういう時期に先の展望を示すということが求められているという事情もあるのだろうと思います。

もう少し長いタームで考えてみましても、今、日本の社会経済が非常に大きく変わりつつある時期なのだろうと思います。変革期というのはいつの時代でも言いますからなかなか説得力のない話でありますけれども、今度の新しい計画といいますか「あるべき姿とそのための政策方針」というのは、今後10年程度を期間としてということになっておりまして、これは所得倍増計画以来の長い期間をカバーするということになっております。普通5箇年計画、あるいは7箇年計画という感じなのですが、今度は10年間ということになっておりまして、そうしますと2008年とか2010年というところを視野に置いていくということになりますが、例えば人口の動き1つとりましても、明治以来といいますか幕末以来急増してまいりました日本の人口が、おそらく今度の展望でカバーする期間内に頭を打って減少の方向に向かうというのは、かなり間違いのない先の姿だと思いますから、そういうのを1つとっても非常に大きな日本の経済社会の変わり目にきているということだろうと思います。

そういうものを織り込んでどういうふうに展望するかということで、1月18日に諮問をいただきまして、お手元の資料2の(別紙1)「検討体制」にございますように5つの部会を設けて、先月末から今月の初めにかけて各部会が順次立ち上がって審議を始めていただいている状況でございます。

先ほど申し上げましたように、先を計量的に描くというのは今大変難しい時期であるということは、我々も重々認識いたしておりますけれども、片方では、各政策の間に整合性を持たせて先を考えるという作業はますます重要な課題ではないかと考えております。

計量委員会では従来からマクロフレームを考える場合のツールになります各種のモデルその他について専門的な立場からいろいろとご助言をいただいてまいりましたが、今度の経済計画を作るに当たりましても、また新しい状況を踏まえていろいろご意見をいただけれ場合と考えております。

もう一つは、従来、経済計画の場合ですと、例えば実質、名目の成長率でありますとか、完全失業率でありますとか、物価というようなものを代表的な指標として考えてまいりましたけれども、その他にも10年頃日本の経済社会を描くに当たってどういうものが重要な指標であるかというようなことも併せてご意見をいただければというふうに考えております。どうぞよろしくご指導のほどをお願い申し上げます。

〔 委員長 〕 ありがとうございました。

それでは、本日の議題に入らせていただきます。

まず、本委員会の今後の進め方についてお諮りしたいと思います。内容については事務局から説明をお願いいたします。

〔 事務局 〕 今、局長の挨拶の中で引用させていただきました資料2の(別紙1)の5つの部会を設置するということが1月18日の経済審議会総会で決定されまして、そのとき同時に、基本理念を検討するためということで、その上に、各部会の部会長等によって構成される「基本理念委員会」というものがございます。またそれと独立したものとして従来よりおかれている「計量委員会」というものを経済審議会の下に引き続き存置するということが決定されております。

(別紙2)が今日お諮りすることでございますけれども、計量委員会の公開について(案)でございます。これは経済審議会といたしまして平成8年の3月の総会で、政府の審議会に先駆けて審議内容の公開に踏み切るということをやりまして、そのときの決定として「部会及びこれに準ずるものについても総会に準じて公開することとする。ただし、具体的な方法は各部会において決定する」ということになっておりまして、「具体的な方法については、それぞれの部会なり委員会に任される」ということでございます。それ以来、計量委員会は今回が初めての開催となりますので、この手続についてまずお諮りしたいということでございます。

まず1.といたしまして、一般的な原則がすべて書いてあるわけですが、「原則として議事要旨を会議終了後2日以内に作成し、公開するものとする。また、議事録を会議終了了後1カ月以内に作成し、公開するものとする。ただし、議事要旨、議事録とも発言者の公開は行なわないものとする。」ということで、委員がこういう意見であった、あるいは事務局からこういう説明があったという書き方になるものでございます。

2.配付資料は、原則として議事要旨と併せて公開するものとする。

3.会議開催日程については、事前に周知を図るものとする。

ということでございまして、2.に書いてございます配付資料につきましては「原則として……」というふうに書いてございますのは、部会によっては、場合によって「委員限り」の資料というものが議論される。特に、計量委員会のようにシミュレーションの結果を議論するという場合に、非常に暫定的な数字も私どもとしてはご議論いただきたいわけですけれども、その出方によって数字が一人歩きするという性格がございますので、そういうような場合には「委員限り」として扱わさせていただく。そういうことについて委員長とも相談してケース・バイ・ケースで対応していきたいということでご了解いただきたいということでございます。

〔 委員長 〕 ただいま説明のありました「本委員会の今後の進め方」について討議したいと思います。特に資料2の経済審議会の体制、あるいは計量委員会の公開、あるいは討議事項について、これから計量委員会でどういうことを討議していくか、あるいは私自身も含めてなのですが、今回の計画の中で計量委員会が一体どういう位置づけにあるのかということも、私自身もまだ100パーセント理解しておりませんし、基本理念委員会との関係とか、あるいは他の部会との関係とか、そういうこともこれから審議していく上で非常に大事な点だと思いますので、フリーに討議したいと思います。特に今回の計画において、数字をどうやって見たらいいのかというようなことも含めて、自由にご討議いただきたいと思います。

どなたからでも結構ですので、お願いいたします。

〔 委員 〕 いつ頃までの作業のご予定でいらっしゃるのですか。

〔 総合計画局長 〕 全体の新しい計画づくりは、一応「今年の夏を目途……」という言い方をしておりまして、明確に何月までというふうには言っておりませんけれども、大きなテーマとしては大変窮屈なスケジュールだというふうに思っております。

〔 事務局 〕 事務局側の考えというものをあまり打ち出すのもどうかと思うのですけれども、計量委員会というのは、私の理解では、従来、経済計画を策定するごとに伝統的には中期多部門モデルと長期多部門モデルという2つのモデルを私どもが道具として持っているわけですけれども、これの推計結果、モデルのプロパティーというものを専門的な立場からご議論いただいて、その結果をモデルのバージョンに反映させる。最終的にはそういうモデルで将来のマクロフレームを描くということでご了解をいただく。それを事務局の方で経済計画の全体に投影していくということをやっておりました。

今、委員長がおっしゃった企画部会、基本理念委員会というのも、そもそもの問題意識としてはマクロフレームとかそういうものが念頭にないということでは決してないわけでございますけれども、そこで議論していただきますものと、計量委員会でご議論いただきたい、例えばモデルのプロパティーというようなもの、あるいは資料2の「進め方」についての(案)のIII.に計量委員会における討議事項(案)ということで書いてございますけれども、今後の展望に当たって、例えば潜在成長力というものをどういうふうに計量的に把握すべきかどうか。あるいは現下の消費性向の低迷、あるいは設備投資の不振というようなものを、資本ストック調整でありますとか、あるいは消費関数といった観点からどういうふうに数量的に分析ができるのか。現在の手段で果たして十分なのか、あるいは改善できる点があるとすればどういうことなのかという、経済学の専門のお立場からご議論をいただくということで、私どもとしてはお願いしたいと思っております。

各部会の相互の関係と申しますのは、計量委員会を離れましても非常にオーバーラップする部分もございます。グローバリゼーションというのは他の構造改革と独立にはあり得ないということで、それぞれ核となる討議事項とオーパーラップする討議事項があって、現在、各部会が審議を始めた段階で必ずしも明確な仕分ができておりません。各部会それぞれでご議論がございまして、そういう仕分表のようなものを作る必要があるのではないかというご意見もいただいておりますので、これから事務局もそこのところは整理していかなければいけないことだと思っております。

〔 委員長 〕 ありがとうございました。

他にご質問、討議事項はございませんでしょうか。

計量委員会というのは、私も何年かやらせていただいているのですが、とにかく、計画ごとに数字を出すというのが1つの仕事だった。将来、10年、20年後、日本経済が一体成長率が何パーセントで失業率が何パーセントで、財政赤字なり貿易収支なりの姿を数字で出すということをやってきたような記憶があるのですが、今回の計画においては数字はそんなに出す必要もないというふうに理解してよろしいのでしょうか。あるいは数字を出すのではなくて、いわゆる計量モデルなり経済学というものが計画に対して一体どういう役割があるのか、あるいは限界があるのかというようなことを討議する場なのか。その点はいかがなのでしょうか。

〔 委員 〕 先ほど局長から、今後10年の見通しというのが、例えばEUなどの状況を見ていても、少なくとも失業率でみる限りはもう2桁近い失業率が、もう15年あるいは国によっては20年近く続いている、そういう状況が続き得るわけです。ただ、需要の方のいろいろな問題が長期的にもかなり大きな役割を持ち得るというのが私の持論なのですが、ただ、それでモデルにスタンダードな形で組み入れて、いわゆる短期のケインズ的なモデルで10年をフォアキャストするのがいいかというと、これもまた必ずしも正解とは言えないという気がするわけで、ですから、中期多部門モデル、あるいは長期のモデルを一体どういうふうに使って10年のことを議論したらいいか。私はモデルは使いようがあると思いますし、モデルには価値があると思うのですが、本当にどういう形で数字を作って、我々がどういうふうに解釈するのか。いろいろなコンディショナルでいろいろなことを用意しておくというのも1つなのかもしれませんけれども、いずれにしてもその辺が議論できたらと思います。

〔 委員長 〕 局長、何かございますか。

〔 総合計画局長 〕 私もモデルは詳しくないのですが、今の吉川先生のお話は全くそうだと思いまして、ある意味では10年先を考えるというのは、かなり無謀な話でもありまして、例えば今から10年前を考えてみますと、1989年ですから、バブルの末期といいますか最盛期というときで、あのとき、今の状況を想定できたかというとなかなかそういう話ではない。大変難しい時代ですが、実は去年の暮れに経済審議会の企画部会でご議論いただいて、少なくとも長い展望をする必要があるのではないということをフォローアップ報告という形でまとめていただいたのですが、そのときに出たご議論というのは、先ほど人口の動きだけ申し上げましたが、人口はほんの一例でありますけれども、多くの委員の方々が、今、日本は非常に大きな転機にあるのではないか。それもかなり長いタームで考えた上での転機ではないだろうか。そうすると、そういう状況を考えるときには、2年先、3年先、あるいは従来の計画のような5年先ということではなくて、もう少し長いタームで議論した方がかえって有効なのではないだろうか。

もう少し目先の議論で申し上げますと、例えば今、景気回復最優先ということで、かなり財政を出しているわけでありますけれども、いずれ財政バランスについても回復を見出さなければいけないとすると、それも多分3年、5年というタームでそういうのが展望できるだろうかということを考えますと、大変難しい話ではありますけれども、少し期間を長く取って日本のあるべき姿、大臣はそういう言い方をしておりますけれども、それはある意味では「どうなる」ということと同時に、いくつかの選択肢があって、その中のどれを選択していくかという問題もある。そういうことで10年程度ということになったわけでありますけれども、今、先生からご指摘がありましたように、従来の計量モデルで10年の姿をどういうふうに追っていくかということになりますと、多分、モデルの外の話も含めて使い方を考えていく必要があるだろうというのが私どもの考えでございます。

〔 委員長 〕 他の委員の方、今後の進め方ないしは計量委員会でやるべきようなことに関してご意見ございませんか。

〔 委員 〕 先ほど作業のことを教えていただいたのですが、計量委員会と各部会と相互に情報を流してチェックし合うような体制に夏までにもっていくということなのでしょうか。例えば年金の問題などは国民生活文化部会でもし扱われるとすると、従来のように、部分均衡だけでいろいろ考えていても、やはり失敗をくり返してしまうと思うのです。あるいは外国人労働者を入れた方がいいかというようなことを、おそらくどこかでおやりにりるかと思いますけれども、その場合も、入れたときのメリット、デメリットを計量的にグローバリゼーション部会というところで把握される体制になっているのでしょうか。

〔 事務局 〕 全体のとりまとめは企画部会が行なうということになっておりまして、その他に基本理念ということに関しましては、その上部委員会が設けられるということは申し上げたとおりでございますが、一般的に言いますと、事務局が同じ総合計画局であるということで、計量委員会での作業の結果をそれぞれ他の部会に必要に応じてインプットする。年金の問題にしましても、国民生活文化部会で行なう作業というのもございましょうし、それは事務局の方で計量委員会の議論と整合性を図る。あるいは場合によっては国民生活文化部会自体ではそういう計量経済的な分析というのは必ずしも議論の主要なテーマとはなりにくいということでございましたら、私どもの方が作業を担当するということで、先ほど、中期多部門、長期多部門という2つのものしか申しませんでしたけれども、必要に応じまして財政社会保障のモデルでありますとか、私どもが持っている分析ツールとしましては一般均衡的なモデルというものも一応動かせるようにはなっておりますので、そこは需要に応じて道具を活用する。その結果は計量委員会でもできればご議論いただきたいというふうに考えております。

〔 委員 〕 局長、先程の委員から10年という話が出たのですけれども、それでちょっと思いついたことでございますけれども、今年の正月に雑誌とか本の整理をしていましたら、「エコノミクス・トゥデイ」という雑誌が出てまいりまして、それの1989年の号がでできました。そのタイトルが「黄金の90年代はくるか」というタイトルで、実は委員の先生もいらっしゃいますので、若干弊害があるかもしれませんけれども、それをもう1回読んでみたら、強気なことおびただしいというか、信じられないことが出ていたのです。日本経済の行く手には1点の陰りもない座談会をやっている先生方の共通の意見でした。例えば、アメリカ経済、アジア経済の問題も議論していますけれども、そういうようなところでいろいろな齟齬が起こったとしても、回復力が一番早いのは日本だと、全員の意見が一致しているわけです。ですから、間違いだったということを言っているわけではないのですが、10年前のエコノミストの考え方みたいなものがたまたま雑誌で見て、振り返ってみて勉強になったのですけれども、計量委員会というのは、先ほど局長がおっしゃったように、広い意味でパースペクティブというのを議論する場だとすると、これから先の10年後の人たちのためにも、やはり現時点で我々がどんなことを考えているかというようなことを議論して残しておいた方がいいのではないかという気がするのです。それは数字をどうするか、モデルをどうやって扱うかというテクニカルな話よりも、もう少し、こういう考えで少なくとも10年の展望をしましたというようなことが明晰に残っていますと、情報公開という意味ではないのですけれども、広い意味で、いわば1999年におけるかなりの数のエコノミストがこんなふうに考えていたということを、10年後に「エコノミクス・トゥデイ」みたいな、しかし、あれは民間のパブリケーションということですから消失してしまえばなくなってしまってそれで終わりだと思いますが、そうじゃない形で残せるのではないか。そんな感じがたまたましました。

〔 委員長 〕 わかりました。この本委員会でも10年後どうなっているかということを多少出した方がいいのではないかというご意見だったと思います。

他の委員の方、これに関してございませんですか。

〔 委員 〕 先ほど局長から出ましたように、10年というタームですと、人口ファクターというのはかなり大きいと思うのです。従来のモデルですと、そこのところが十分反映されていないのではないかという問題がありますので、技術的な問題としては人口・労働関係をかなり強化して、長期的なサプライサイドのファクターを分析して、潜在成長率に反映させていくというようなパスが考えられるのではないかと思います。特に、橘木先生がいらっしゃいますので、女性の労働とかそういうことと絡めていけば、新しい計量的な問題も出てくるのではないか。

〔 委員長 〕 人口なり労働問題の強化を10年というタームであればやらなければいけないということですね。

〔 委員 〕 私、遅れてきたので、全体像がわかっているかどうかわからないのですけれども、私、率直に言って、中期マクロ計画とかシミュレーションとかいうものをほとんど信じていません。うまく当たるときもあれば当たらないときもある。むしろやるべきことは、シミュレーションをやって数字を出すということではなくて、数字を出すということは大蔵省とか通商産業省とかいう省に使われることになって、財政とかそういうことの縛りに。本来、経企庁……、経企庁が今後どうなるかも含めてですけれども、もう少し中立的なことをきちんとやる。むしろベイシックなことをきちんとやるということの方が大事ではないかと思っています。具体的には2つぐらいのことを思っていまして、1つは、財政とか社会保障ですけれども、経企庁は昭和40年ぐらいで国富統計をやめてしまっているわけです。本来、国が持っている社会資本の額とかそういうものがどれだけあるのかということがきちんとわからない限り、国民負担というのはネットで考えるべきですから全然わからない。我々はそれを単なるフローの積み上げでしか、我々が持っている社会資本というものを把握しないわけです。そういう国富をきちんと計るという地味な仕事をまずおやりになるべきではなかろうか。それがあって初めてこういうシミュレーションとかそういうことが意味を持つのではなかろうかというのが1点です。

もう一つは、中期とか長期とかいうことになると、いろいろなものが変わります。具体的にはシステムも変わりますし。ただシステムが変わるというのは非常に把握しにくいことですけれども、もう一つ明らかにこれから変わるだろう、今後の10年間で大きく変わるだろうと思われれていることは多分2つあって、1つは情報化。情報化というのは多分いろいろなものの価格がボンボン下がってくる。同様に物の品質がどんどん変わるわけです。そういうときの物価の計り方みたいなものが多分どんどん変わってくる。それから、地球環境問題というものができて、おそらく排出権取引とかいろいろなことが起きてくる。途上国への援助なんかもいろいろ起きてくる。そういうことが起きてきたときにどういうふうにモデルに反映させるのかというような作業をやっておくということの方が、私は個人的には重要な仕事ではないかと思っています。少数な論法かもしれませんし、1つのサゼスチョンとしてお聞きいただくだけでも結構ですけれども。

〔 委員 〕 私は、今の委員のご意見につきましては、言ってもどうせだめだろとおもったので、そういうことは発言していないということです(笑)。国富統計というのは非常に重要な統計だと私は思っていますが、これは私の先輩の諸先生方もかなり昔から言われていると思うのですが、特に統計関係の先生方は言われていると思うのですが、なかなか実現しないまま現在に至っているということだけは言わせていただきたいと思います。

〔 委員長 〕 この局は総合計画局で、国富統計作っていたのは経済研究所でしょ。だからちょっと所管が違うので……。

〔 委員 〕 計量委員会はフローベースの仕事をしているわけですよね。だけど、これからは、プロフィットロスだけを見ていても経営はできないという時代になっているわけですから、例えばバランスシートをきちんと作る。それをこの局だけではなくて経企庁全体でもう少しきちんとお考えいただくべき時期にきている。プライバタイゼーションとか、独立行政法人とか、そういうものも国富がどれだけあって、それの時価がいくらあるのかということがわからないことには、そういうこと自体議論ができないわけです。議論が空回りしているというのが私の非常に強い印象ですので、きちんとした統計を是非、経企庁全体で、あるいは政府全体で整備されることをご検討いただければと思います。

〔 事務局 〕 国富統計はおっしゃるとおりで、私どももその辺非常に気にしておりまして、実は昨年、社会資本ストックにつきまして1つのストックの推計を出しまして公表いたしましたものがありますので、不十分かもしれませんけれども、それはご覧になっていただければと思います。

〔 委員長 〕 皆様のご意見は、企画庁全体に対する希望ということで、これは是非とも内部でテイクノートしてご検討いただければと思います。

時間の関係もございますので、資料2は、一応、了承していただいたということで、次の議題に移りたいと思います。

次の議題は「政策シミュレーションを通じた計量モデルの評価」ということについてご議論いただきたいと存じますが、まず、前半の中期多部門モデルに関して事務局より説明をしていただきたいと思います。

〔 事務局 〕 中期多部門モデル関係で資料をいくつか用意しておりますので、まず資料のご確認をいただきたいと思います。

資料3に全体の論点メモの(案)ということで、これがI.が中期多部門モデル関連で、そこがまた2つに分かれておりまして1.政策シミュレーションの評価、2.新バージョンの再推計モデルについてでございます。

II.につきましては、後半部分のご議論ということで、マクロ経済展望について計量モデルを離れて幅広い観点からご議論をいただくという予定にしております。

I.の中期多部門モデル関係でございますけれども、資料4は、表紙をめくっていただきますと、平成9年6月、かなり前になりますけれども、事務局で公表させていただきました規制緩和の経済効果の試算の資料でございます。

まずこの資料につきましてご説明して、ご議論いただきたいと思います。

資料4の、規制緩和の経済効果ということでございますけれども、橋本内閣のときの「六つの改革」ということで経済構造改革ということが、今日に至るまで政府として非常に大きな政策課題となっておりまして、そのときに経済構造改革をした結果としてどのように経済的な効果があるかということを数字で示すということが要請されていたということで、総合計画局の方で平成9年に計算を行なった結果がございます。

ただ、道具立てといたしまして、ここでは中期多部門モデルを使っておりますけれども、ケインズ型のモデルで供給側の政策の効果をどのように計るかという点につきまして、私どもやりながら非常に悩ましいものを感じていたわけでございますけれども、この点について、供給側の要因、10年というタイムスパンということもございまして、モデルの道具立てとしてどういうようなことが考え得るのかという幅広い観点からご議論いただければと思います。

試算について簡単にご紹介したいと思いますけれども、1 ページの2.に今回の試算の基本的な手法ということで、主な8分野を対象としているということでございます。計量モデルとして中期多部門モデルを使っているということでございますが、この他に、規制緩和の経済効果の測定ということで言いますと、一般均衡モデルということが考えられるわけですが、どうしても世の中の要請として構造改革のプロセスにおいて生じ得る不均衡、つまり、失業の問題、あるいは場合によっては経常収支に与える影響、こういうものを提示しない限り何年先かわからないけれども均衡状態に達したときには、これだけべネフィットがありますということだけでは説得的でないのではないかということで、どういう道具立てを用いるのがベストなのかよくわかりませんけれども、一応、手段としては不均衡を許容するということで中期多部門モデルを使うということをやったわけでございます。その場合にケインズ型のモデルの中に、どういうふうに供給側の効果を入れていくかということでございますけれども、1ページの下の方から書いてございますけれども、各分野、あるいは経済全体に対する生産性の向上の効果ということで、生産関数の言葉で言いますと全要素生産性を外部から人為的にある想定された量だけ挙げるということを1つやっております。

もう一つは、各規制緩和分野で、新規投資、あるいは新規の消費需要というものが新たに起こるということで、これもモデルの外部から一定の額を消費あるいは設備投資に積み増すという、主としてこの2つ、生産性の向上、新規需要の追加というものを追加して中期多部門モデルを回してみるということを、この試算ではやったわけでございます。

結果としまして3ページに表がございまして、規制緩和などの経済構造改革の効果ということで、1998年から2003年度までの6年間ということで、もう少し具体的な前提は後ほど見ていただきますが、実質GDPで0.9%上昇、真ん中辺にございますが、消費者物価で上昇率が年に1.2%低下するというようなことで試算を行なわせていただいたわけでございます。

少し具体的な前提を見ていただきますと、5ページに4.前提についての考え方ということで、生産性の向上を想定する当たって4つの基準がございまして、分野によってまちまちでございますけれども、この4つのうちあるものは国内比較、これは全体として現在生産性の高い企業のレベルまで全体が追いつくということで、金融業、運輸業などにおける生産性の上昇については国内規格基準を使っている。

国際比較としましては、欧米に遜色のない生産性水準に到達するというふうに仮定したものが金融、流通、エネルギーという分野でございます。

過去の例を参照というのは、NTTの民営化のような大規模な改革があった場合に、前後でどれだけ生産性が向上したかというのを参考に今後の生産性の上昇を想定するという基準。

4番目としましては、その3つ全く独立に各省庁が改革の成果として公表している、例えば生産性に対する目標、あるいは新規需要に対する想定というものがアベイラブルなものがございますので、こういうものを積み上げていくという、かなり凝った4つの基準で、それぞれの分野について個別に考慮を行なっているということでございます。

これと別に外部性の効果ということで5ページの下の方にございますけれども、ここは主に文献でありますとか学術研究の成果から、非常に部分的ではございますけれども情報通信の外部効果がこのぐらいあるだろうということで、全産業の全要素生産性に与える効果を推計して全体に積み増すということをいくつかやっております。

5ページの前半で述べました分野別の効果を縦糸としますと、横断的な効果を私どもは横糸というふうに呼んでいるわけですが、その両方を一応は考慮する努力をしているということでございます。

例えばということで、7ページに各分野における試算の前提ということで書いてございますが、例えばということで1)の金融だけご紹介いたしますと、期待される経済効果というところに生産性の向上というのがございます。これもビッグバンの結果ということで2001年度までにすべての銀行が最も効率的なレベルにまで生産性が向上するという想定をしまして、モデルへのインプットとしては、金融サービス業全体の全要素生産性が4年間に3割近く上昇するという仮定を放り込んでいる。その他に、新規最終消費の創出ということで、金融サービスが自由化することによって、個人の金融サービスに対する消費が、ここでは2000年度に米国並みになるということで、その結果、個人消費のうちの手数料ということで勘案しておりますが、2000年度までに3,000億円程度増加するという想定をしております。

この他に、ちょっと細かくなりますけれども、輸出入の増加ということで、ビッグバンに至るまで、あるいはビッグバン直後というのは日本の金融部門の競争力がまだ十分に確立されていないということで、金融サービスの輸入が生じる。逆にビッグバンが生じた後は、東京市場の競争力が強まってくるということで、逆に金融サービスの輸出が増えるというような、かなり細かい想定をモデルのインプットとして用いております。

各分野について、次に情報通信がございますし、それぞれ生産性の向上、新規需要の創出ということで、需要としては消費あるいは設備投資を勘案するということで、9ページには運輸、4)の流通、10ページはエネルギー、土地・住宅、11ページでは、医療・福祉、そして最後に12ページで雇用・労働。ここで書いております雇用・労働は産業としての雇用・労働ということで、労働者派遣業というものがどれだけ拡大するかということで、その分野における新規設備投資がどのぐらいか、ここでは年間300億円という試算でございますけれども、こういうものをモデルのインプットとして使っているということでございます。

15ページの表が総括表になっておりますけれども、各分野ごとの効果として、今、挙げました8分野につきまして、ものによりまして全要素生産性を右から2番目に(期間)というのがございますが、その期間にどれだけ追加したか、あるいは最終消費なり設備投資、あるいは輸出入についてどれだけのインパクトを与えたかということが書いてございます。その他に、経済全体に対する横糸の効果としまして、経済全体の生産性上昇が合計で、1998~2003年の間に0.95%ということを想定しております。この想定の個々の推計について議論すると限りがないわけですけれども、全体的な評価といたしまして、かなり生産性上昇というものを大きく見ているということでございます。今、ご紹介しましたように、経済全体の横断的な効果だけで全要素生産性が6年間の合計で0.95%ということで、その他に各分野の全要素生産性の上昇が加わるということでございます。

先ほどご紹介したシミュレーション結果から感じられますことは、3ページにございますけれども、全要素生産性を上昇させるということを外部からインパクトとして与えた場合に、生産関数を通じて供給が拡大する。供給が拡大することの効果によって需給ギャップが広がる。それによって物価が下がる。物価が下がったことによって追加的な需要が生まれるということで、実質GDPへの効果というのはもちろんプラスなわけですけれども、経済の姿として消費者物価が年に 1.2%も上昇率が低下するということにも現れているわけですけれども、供給と需要のバランスということを考えると、これは本当に規制緩和の効果というふうに言っていいのかどうかという感じがいたします。これは一般均衡モデルを使った場合にも同じように問題があるのだと思いますけれども、規制緩和をした場合に一般均衡モデルの場合は生産要素のトータルが所与のものがあって、それが規制緩和をすることによってある分野から別の分野に移動するということなのですけれども、一般に規制緩和の効果といって人々が期待していることというのは、何か新しい産業分野とか、新しい需要というものが追加的に生まれてくる、そのメカニズムというものが必ずしも中期多部門モデルあるいは一般均衡モデルの中には内在していなくて、先ほどご説明しましたように、外からどれだけ追加需要があるかということを想定して値としてしまっている。いろいろな計量的な試験をしてみますと、かなり外から与えたインパクトの大きさによって結果が決まってくるということがございまして、モデルを使うということは、非常に重要なツールとしてモデルを意識してはいるのですけれども、その実、かなりの程度にインパクトで答えが決まってきているということがございます。

本来、インパクトとして与えている各産業の全要素生産性がどのぐらい変化するかとか、あるいは新規需要がどれだけ出てくるかというようなことも、本来は定量的にきちっと把握できなければ本当の計量的な提示にはならないのではないかと私は本心では思っているのですけれども、今の段階ではこういうような作業の段階にとどまっているわけで、これについてご専門の立場からいろいろご批判なりご意見をいただければと思います。

これが規制緩和の経済効果の試算、ちょっと古いものですけれども、今回、提出させていただいてご議論をいただきたいという点でございます。

〔 委員長 〕 ありがとうございました。

ただいまの説明につきまして皆様のご意見を伺いながら討論したいと思います。

〔 委員 〕 大学の方の仕事で11時15分ぐらいに失礼させていただきますので、最初に発言させていただきます。

経済の成長を考えるときやはりTFPがカギなのです、その言葉を使うならば。最近、日本の労働力人口が減っていくというので、成長に対してかなりネガティブな議論をする人が多いのですけれども、日本の成長のレコードを見てみると、他の国でもそうですがTFPが圧倒的で、特に日本の場合には高度成長期から大体労働力人口の寄与というのが1%で、高度成長期仮に10%とすると、残りの9は資本とTFP。4%成長になっても労働はせいぜい1で、残りの2点いくつはTFP、2%ぐらいはTFPということだと思うのです。

ただ、TFPが曲者で、先ほどの事務局のお話にもあったように、一番スタンダードなのは生産関数を頭に乗せておく。TFPが上がりました、そうすると供給力が増えるだろう。それで先ほどのお話では需要の方を所与とすれば需給ギャップが広がって、超過供給になって物価が下がる。それが需要を刺激するかもしれない、こういうロジックなのだということだったと思うのですが、私はこれは非常に迂遠な、ほとんどunreliableなcausal channelだと思うのです。むしろ、どこの国でもTFPというのはあります、商品とか、あるいはリソースの部門間シフトとか。そういうのを反映して、もちろんそこにはピュアな技術進歩もあるわけです。新しい商品が出てくる、あるいはもっと能率のいい生産方法が導入される、そういうことがあるわけですが、通常は、それと同時に需要が伸びているわけです。ディマンドがクリエイトされていて、それでサプライサイドでは、生産関数の言葉で言えばTFPの上昇として計測されてくるということになっているわけですから、そこのところをどういうふうにモデル化するかということだと思うのですが、理論的にはできるわけです。こういう話をしてもなかなか通じないので、私もUCLAのAoki先生と2人でそういうモデルを作ってみたのですけれども、それは十分できるわけなのですが、こういう計量モデルでそれをどう反映するかというのは、ちょっとうまく表現できないのですけれども、とにかく事実はそういうことなのだろうと思うのです。

具体的なサゼスチョンとして、先ほど金融業を例にとられたのでしょうか、どこの産業でもTFPの伸びを想定する際に、ずいぶんキメ細かいことをされているみたいで、それぞれの産業で生産性のギャップが企業ごとにあるわけですね。それを一番遅れたところ、あるいは遅れたところが一番いいところに全部追いついたとしたらこうなるだろうという想定を置いてされているということだったと思うのですが、これも文字どおりに取るとやはりあまり現実的でない。つまり、規制緩和や何かが起きていくときというのは能率が悪いところがどんどん潰れていくということがかなりあるわけで、全員が生き残った上で一番いいところに行くというのは、かなりラッキーというか稀な例だと思うのです。

こういう積み上げをされるのであれば、ここから先がサゼスチョンなのですが、マクロの話をする場合に、やはりアメリカというのが日本の近未来を幸か不幸か表しているというところがかなりあるわけですから、アメリカはご承知のとおり90年代大変な経済成長を実現して、ほとんど3%の成長を実現したわけですが、これが一体どういう形で3%成長を実現したのか。とりわけ投資がこうなっています、消費がこうなっています、マクロの需要項目ではなくてもう少しミクロの産業部門、まさに多部門、マルチセクターで見たときにどういう形でなっているか、そこで雇用がどういうふうにあれしているかという、90年代アメリカ経済についてそういう形でちょっとインデックスのケーススタディーをやってみて、そこからある産業部門での生産性の上昇、それが部門間のリソースのシフトとか、ピュアな技術進歩とか、そういうのが産業ごとに一体どのぐらいのあれがあるかというようなことをやってみる。

先ほども言ったように、アメリカというのが日本の10年後を表している部分というのはいままでは少なくともかなりあったし、先ほど、委員から出た情報通信革命がアメリカは進んでいる。しかし、それが一体どういう形でアメリカ経済を活性化したのかというようなところを、とにかくいろいろつかまえてきて、それをちょっと多部門モデルであれするときにインプットとして使ってみるというようなことも考えられるのではないかというふうに思ったのですが。大体思いつきですが……。

〔 委員長 〕 ありがとうございました。

〔 委員 〕 情報通信ストックの外部性効果の話とTFPの話が出ているのですけれども、2つほど考えることがあります。1つは、今、委員が言ったことと関連するのですけれども、ここでの前提は、全産業で生産性が上昇というふうに書いているのですけれども、そうではなくておそらく産業の選別が起こるのだと思うのです。つまり日本の産業のかなりの部分は、情報通信のストックが増えあるいは情報化が進んでも追いつかない。正確に言えば企業のレベルだと思いますけれども、企業のレベルで追いつかないところがあって、産業のレベルでも結局選別が起こるということがあるから、全産業で生産性が上昇するという仮定自体が、情報化というか、共通のストックを考えるときに当てはまらない可能性もあるということが1つ。

もう一つは、これも先ほどの議論と関連しますけれども、外部性効果という言葉がもしかしたらまずいのではないかという気がするのです。というのは、情報通信ストックが増えると、何かそこでつかまえられない外部性が発生して、みんなの能率が上がりますという、本当はそんな話ではなくて、アメリカで起こったことは何かというと、外部性という部分をある意味では内部化したわけです。例えば、マイクロソフトとかネットスケープとかそういうのがどんどん出てきたのは、実は通信産業がどんどん投下して通信のネットワークを作ってくれた。それをどう使うかということの方が大事であって、そこでいわば広い意味で言えばソフトといいますか、そういうところがどんどん発展してきて、外部性を内部に吸収していって、そこで産業の活性化、企業の活性化につながったというプロセスがあると思うのです。ですから、どうもここのところは「外部性」というふうにしてしまうと、情報化の問題の大事なところが抜けてしまうのではないかなという感じがします。もう一つ、ちょっと細かいことを言いますと、これは、私はあまりそこまで考えていなかったのですけれども、情報通信で規制緩和により電気通信業で生産性が上昇するというので数字が出ていますけれども、今のようなことをやっていると心配だなと思います。つまりNTTが再編成されて、各競争事業者が出てきているわけですけれども、今、ご存じのように、やっていることというのは、NTTが何か新しいことをしようとすると「俺たちも一緒に並ぶまで待ってろ」って言って足を引っ張る。その足の引っ張り合いのためにモタモタしていると、アメリカのワールドドコモだのクエストだのがどんどん入ってきちゃっているということが起こっているわけです。だから、規制緩和をやると非常に活性化して生産性が上昇するというのは、ちょっと夢物語みたいで、規制緩和の中身の問題が通信の場合あるのではないかという気がしまして、これは数字で取り方を変えればいいと思うのですけれども、対応策としてはその辺が気になります。

もう一つより細かいことで申しますと、医療・福祉のところで薬価基準制度で薬価差益が解消すればコストが下がるというのが出ていますけれども、これは私個人的には真赤な嘘だと思います。ただ1つは、薬価基準制度をやめて厚生省が今唱えている参照価格制度みたいなのをやりますと、むしろトータルにみれば医療コストは上がってしまうわけです。マイナスどころではないプラマイゼロか、あるいは上がってしまう可能性もあるというふうに思いますから、この辺もどうも現実に起こっていることと想定が違ってきているなという感じがいたします。

〔 委員 〕 2のところで心理面とか不確実要因を入れることについての問題提起がなされているわけですが、規制緩和の効果を計測なさったときは、規制緩和によるいい点がずっと列挙してあるのですけれども、例えば金融の分野でしたら不確実性要因を高めてくるのが移行過程においては必ず起きるし、特に日本のように預金・保険などの受け皿を用意しなくて、完備しなくて規制緩和だけ一方的に進めていけば、一般の国民にとっては大変な不安要因が出てくるわけです。そういう、いわばマイナス面というのはこの計測のときには、何か考慮しようとされたのでしょうか。それともプラス面だけを考慮して、こういう計測をしたということでしょうか。

〔 事務局 〕 事務局のここにおりますメンバーは、この計算をしたときの当事者でないので、どれだけ正確にご返事できるかわかりませんけれども、ものによって追加した投資額なんていうのは、ネットで勘案されていたということで言うと全く考慮していなかった、と言うのもちょっと酷な気がするのですけれども、今、おっしゃった点というのは、私の判断ではほとんど考慮されていない。ただ、労働市場に対する影響はできるだけ考慮しようとしたということだろうと思います。

先ほどからのご議論との関連で、私なりのもう一つ追加的なオブザべーションを申し上げますと、新規需要を積むということをやるわけですけれども、その他に、それによって代替されている需要なり産業なりというものもあるのではないか。例えば携帯電話というものが規制緩和の効果の非常によくわかる例として使われるわけですけれども、携帯電話が使われることによって他に従来型の通信手段で、公衆電話でもいいのですけれども、使われなくなっているものがあるのではないか。あるいはそういう新規の需要が出てきたといったときに、それは本当にネットのアディッションとして、例えばマクロのバランスで見て家計の消費性向がそれだけ変わっているのかというような点になりますと、そこがちょっと検証されていない。あるいは検証が難しくて最初から諦めているということなのかもしれませんけれども、考え方としては、そういうものもやはり、先生がおっしゃるマイナスの、あるいは衰退する部分が絶対あるはずだ。委員がおっしゃった、全員が生き残って生産が上がるというのはおかしい前提だいうのとも関係しますけれども、考え方としてはそれは考慮しなければいけないことだ。しかし、そこを定量的に数字で勘案していくということができなかったということも、言い訳としてはあるのかなと思っておりますけれども。

〔 委員 〕 これからの作業にどういうサゼスチョンを与えているかという点からみますと、例えば、今、年金のシステムを非常に不健全にしたまま、フローの年金にかかわる所得は従来どおり払っているわけです。ところがシステムの方で何十兆円という積立金不足を出しているので、言ってみれば、例えば60兆円とか70兆円の金融機関の不良債権を処分していきます。ということは60兆円、70兆円のバブルの清算を家計の金融資産サイドでやっていかなければいけないわけです。その清算の仕方によって不確実要因はずいぶん違ってくることになると思いますので、そこが多分これから10年を見ていく場合の各年の移行過程を考えるときのカギになるのではないか。

そうすると、各部会の方で、いわば哲学的な面からこうした方がいいよという案をいっぱい出してこられると思うのですが、そこのチェックを、先ほど計画官がおっしゃったように事務局の方できちっとやっていただかないと、また同じようなことをくり返すおそれがありますので、そこを重視した作業を今度はやるといいのではないかという感想を持ちました。

〔 委員長 〕 他にご意見ありませんか。

〔 委員 〕 他の委員が何か言うのではないかと待っていたのですが……。

中期多部門モデルというのはかなりマクロなモデルですから、難しいのだとは思うのですけれども、先ほど他の委員の方々もおっしゃられたことなのですけれども、要するに量と価格で全部議論しちゃって、残った部分は全部外部性とかTFPに押しつけちゃっているという、それが今の時代に本当に合っているのでしょうかというのは、率直に言って疑問なのです。理論ではできますと先程の委員はおっしゃっていて、じゃあ、実証できませんかというのを、本当は別の委員がおっしゃるんだろうと思って待っていたのですが(笑)、おっしゃらないので言いますけれども、日銀なんかがやっているのはヘドニックプライスとかそういうものを使って、つまり、価格は変わらなくても、品質がよくなれば価格は下がっていることになる。逆に言うとものの価値は上がっているわけです。だから、ひょっとしたら品質さえ上がっていればGNPはむしろ下がったっていいかもしれないということだってあるわけですから、何かそういうあたり……、あるいは先ほど言ったことで言えば、これはどういうふうにやっていいのかいろいろ問題がありますけれども、環境なんかに関して言えばグリーンGNPとか、もう少し何か、これからの時代を考える数値指標みたいなものをもう少し……、だから、ミクロレベルで1つはやってみて、それを積み上げてマクロモデルいくかどうかということをちょっとご検討いただくのも1つではないかと思います。

〔 委員長 〕 ありがとうございました。

実証できるのかと問われていますから:是非とも委員のご意見をお伺いしないと……。理論はできると言っているのです。

〔 委員 〕 物価の計り方とかそういうのを変える……。

〔 委員長 〕 いや、他の委員の方々が言われているから、理論モデルを作ってこういうふうになりますよというのはできるけれども、理論家の考えた理論モデルを実際の実証モデルに組み込んでできるのかというようなことを問われているわけです。だから、計量の専門家から見て、どう思われますか。

〔 委員 〕 その委員がおっしゃっている理論がどういうものかということ、必ずしも、私、明確に理解していないので、ちょっとそこについてはあまりお答えはできないと思うのです。

ただ、もちろんヘドニックプライス・アプローチとかいろいろ、品質の変化と価格の指数の扱い方そのものについての問題については、かなり研究は行われていると思うのですが、それがマクロレベルでGDPとかそういうレベルでどの程度反映できるかということはちょっと定かでないと思いますけれども。もちろんサービス産業とかそういうところで、従来の価格指数、あるいは物価指数が非常に問題であるということは確かに指摘されていて、かなり研究は行われていると思うのですけれども、それを全体のマクロレベルでどういうふうに計量できるかというのはちょっと……。私自身、不勉強でちゃんと理解していないということです。

もちろん、簡単な話としましては、指数の造り方を簡単に変えてしまうというようなたぐいの話はありますけれども、それはGDPデフレーターの作り方とかそういう話ではないと思うのです、私の理解からすると。

〔 委員長 〕 わかりました。

中期多部門モデル、現在あるモデルで一体将来がどれだけ予測できるかというのは、当局のみならず学者の我々にとっても突きつけられた課題だと思うのです。例えば新商品を全然考慮していないのではないか。新商品が出てきたら古い商品は退出するということもモデルに入れなければいけないということになりますと、これはもうモデル化自体が大変な作業を要しますし、計量委員会でそのことすべてを解決できるようなことはとてもじゃないけれども無理だと思うのですが、問題点だけは見えてきたような気がしますので、事務局としましても、今日出たお話などを踏まえて、多少なりとも手掛かりなんていうのはあるような印象を持ちましたけれども。かと言って、やるのは非常に難しいというのが率直な印象だと思います。

次に、論点メモの後半、いわゆるII.マクロ経済展望につきまして、事務局からご説明いただいて、この面で今回の計画、計画という言葉は使っていないと思うのですが、10年後の指針をマクロ経済的にどう予想したらいいかという、非常に興味ある話がございますので、その話題に移りたいと思います。

それでは、事務局からご説明いただきたいと思います。

〔 事務局 〕 今日、用意しました資料は盛りだくさん過ぎで、時間内に必ずしも十分に消化できないと思いますが、後半に移りたいと思います。

その前に、簡単に資料のご紹介をしておきたいと思います。

「参考資料1」に新しいバージョンの中期多部門モデルの説明がございます。基本的には第10次報告のバージョンと同じでございますので、適宜、また時間のあるときに目を通していただければと思います。資料3論点メモの3ページ目以降に設備投資関数についてやや技術的ではございますけれども、詳しい資料を付けさせていただいております。

5ページ以降に各産業別の実績値、推計値の差が出ているのですけれども、例えばということで6ページをご覧いただきますと、上が化学、下が一次金属ですが、実線が実績値で、点線が今のバージョンで使っている設備投資関数の推計値でございます。必ずしも実績がフォローできていないというのが、特に最近、90年代を見ていただきますと、大体どの産業も共通してわかると思うのですが、やはり90年、91年のあたりのバブル期の設備投資の盛り上がりがほとんど追えていない。それとは逆に92年ぐらいを境に両者が交叉して、それ以降の設備投資の低迷がほとんど追えていない。むしろ点線の方だけ見ていただきますと、もう93年、あるいは94年ぐらいで設備投資が下げ止まる、あるいは上昇に転じるような、そういう伝統的なストック調整関数でやるとそういう姿が出るということで、これは、その他の産業を見てもほぼ共通した問題点として、やはり設備投資関数が非常に問題ではないかと疑わせる材料なわけでございます。

これも技術的な点にわたって恐縮ですが、私が計量担当になって何度かいろいろなシミュレーションをやっている中で気がついたこととして、産業別に稼動率を見てみますと、稼動率が上昇を続ける産業と低下を続ける産業というのが出てまいりまして、非常に不思議な現象なのです。稼動率が低いにもかかわらず生産がちょっと増えると設備投資をする。設備投資をして生産能力が増えるのでまた稼動率が落ちるというようなことがモデルの中で起きておりまして、現在のバージョンでどうなっているかというのは必ずしも確かめていないわけですが、どうも設備投資というものがそのときどきの需給状況と独立に生産で決まってくるというような定式化がおかしいのではないかということで、それをちょっと改良しようということで稼動率要因を何とか入れようというふうに現在のバージョンではしておりまして、それがこの資料の3ページ、4ページあたりに、細かい技術的な点で恐縮ですがと申し上げた点で、書いてございます。それの入れ方がちょっとおかしくて、生産増に対する投資の感応度が他のモデル以上に出ているという可能性があります。

また設備投資関数等につきまして技術的な点からいろいろご示唆があれば、またこの場でなくてもいただければ、事務局としては非常に幸いだということでございます。

それでは、後半の資料3の2ページのII.マクロ経済展望のフリーディスカッションということで、特に事務局の方で資料を準備せずに論点だけ書いてございますけれども、先ほど来のご議論にもありますような、モデルというものだけの議論ではなかなか10年という展望を描くことは難しい。あるいは他の人に説得的な分析を提示することは難しいということですが、特に私ども頭を悩ましているのは、先ほど委員からもご指摘がありましたが、やはり一番の論点は潜在成長率というものをどういうふうにみたらいいのか。技術進歩というのは多くの場合外生的に設定してしまうわけですけれども、長期間を展望するという際にどういう考え方で技術進歩を設定したらいいのかというのが一番の論点だろうと思います。

実は、以前、先生方には資料としてお送りしてあると思うのですけれども、昨年の6月に経済展望部会というのが経済審議会にございまして、そのときの資料として2010年までの潜在成長力を、私ども2%というのを試算として出したことがございます。これは簡単な失業率とGDPの関係式を測定するということで、90年代の技術進歩率が、これは不幸にしてですけれども0.5という実績、非常に低い実績にある。それに先ほどちょっとご紹介しました規制緩和の経済効果というようなものを勘案すると、もう0.5ぐらい上乗せするということも可能なのではないかということで、全要素生産性で1%、資本の寄与でも1%、これはもう少し内訳を申し上げますと、資本ストックの伸びが年間4%ぐらいあって、資本分配率が0.3ぐらいある。掛ければ1あるいはそれをちょっと上回るぐらい。

労働については、2010年ということで言いますと、2005年とかで労働人口のピークがくるということで、2000年と2010年という両端を比べると、労働力人口はあまり変化しない、したがって寄与もゼロであるという、1+1+0ということで大体2ではないかというようなことを行ないました。

先日発表されました日経センターの2025年までの予測も、読んでみますと、結局、TFPは従来の生産関数の測定ということで1.5と比較的高めのTFPで、これはいろいろ難しいので、ここでは1.5%と想定をするということで、これもいろいろ考えて、こういう要因もある、ああいう要因もあるということは挙げてはいるわけですが、結局は最後はそこは想定してしまっているわけです。

こういう点について、人によって0.5であるとか、1であるとか、1.5であるとかいう議論がなされるわけですけれども、数字で示す場合に何かそういう主観的な判断以外に数字的な裏付けというのができないものかどうかということを非常に悩んでいるわけです。各国比較で、特に開発途上国のようなものを入れた計測ですと、高等教育の程度でありますとか、さらに、ちょっと奇想天外かもしれませんけれども民主主義の程度でありますとか、そういうものをクロスセクションのデータの変数に入れて、教育のTFPに与える効果とか、あるいは民主化の程度と市場経済というふうに言ってもいいのかもしれませんけれども、測定した例はあるわけですけれども、そういうものとは別に成熟したといいましょうか、先進国一国の経済で時系列的に、特に最近、過去に比べて潜在成長力が低下しているのかどうかというようなことを議論できる材料が果たしてどれだけあるのだろうかというような点が一番悩ましい点でございます。

ここに書いてある論点全部をこの限られた時間でご議論いただくというのは無理だと思いますが、ご紹介だけさせていただきますと、資本ケースと消費性向の問題というのは先ほどらい折りに触れて触れさせていただいておりますけれども、伝統的なストック調整の考え方に基づく設備投資関数、先ほど見ていただきましたように、数年すると設備調整が終わって反転上昇に転じるというパターンがくり返し出てくるわけで、それを実績が合わないからといってコンスタントタームで合わせるようなことをしますと、ストック調整原理がよけい働いて、人為的に抑えれば抑えるほど将来値が高く出てくるというような関数上の問題もあります。

現在の設備ストックの水準を伝統的な、過去のデータに基づく設備投資関数から考えると、もう上昇に転じてもいいというときに、実際は企業の側から見ると将来の成長期待というものが屈折して、その関数どおりには設備投資は出てこないというときに、過去のデータとは別に、そこから将来に対する成長期待、あるいは潜在成長率、企業が抱く設備投資の規定要因となっているような最適資本ストックというものをどういうふうに計れるのだろうかという、ここは10年というタームで考えるというよりはもう少し足元の問題で、10年先ということでいいますと、もう少しシナリオ的な判断が加わるのかと思いますけれども、少なくとも当面の問題としては消費の問題と設備の問題というのが重要な問題だろうと思います。

その他に、10年ということでさらに潜在成長径路に乗った先ということで考えますと、消費性向につきましても、単純なライフサイクル仮説を取り入れたような消費性向ですと、高齢化に伴って消費性向が長期的に上がっていくということになるわけですけれども、私どもが非常に機械的に推計しますと消費性向が100を超すようなことにもなっていきまして、本当にそういうことが起きるのかどうかというのを、そういう過去のデータで消費関数を推計して、それを何十年先まで延ばすということがいけないとすると、それでは他にどういう考え方でやればいいのかというようなことがございます。

資本係数につきましても、潜在成長径路に乗った後の話としても、先進国同士で資本係数を比べてみると、日本は既に他の先進国よりも高い資本係数である。資本効率が低いというのをどういうふうに考えたらいいのか。ある程度労働力不足の経済になってくるということで言うと、資本に代替されるということで合理化される部分もあるとは思うのですけれども、人口あるいは労働力が検証する中で設備投資が成長の主因になるような経済があり得るのかどうかという点も、過去のデータの継続ということ以上に将来に向けてどういうふうに考えたらいいかという点で、ご示唆いただければと思います。

先ほど来ご議論がありまして、特に委員の論点とも関係すると思いますけれども、GDP成長率というものが中心に据えられていたものと違って、質でありますとか、グリーンGNPとか、かつてこういう経済計画の場でもNNW(ネット・ナショナル・ウェルフェア)みたいな、GNP成長の見直しというような気運が一時ございましたけれども、そういうものとして何か国民的な合意ができるようなマクロ変数があるのかどうかということであります。

一部報道などで私どもの検討課題として言われておりますのは、失業率にしても失業の内容、これは深刻度ということで言いますと、従来から言われている指標としては世帯主の失業率とか、あるいは長期失業の程度というようなものが失業の深刻度の指標として考えられるわけですが、それは私どもが持っているような計量モデルの中でとらえられているかというと、そこは依然としてマクロの指標しか扱っていない。

それから、質の問題あるいは環境の問題、さらに言えば豊かさのようなものというものを果たして計量的にとらえることができるのかという点、これについてもご議論を、限られた時間でございますけれども、いただきたいと思います。以上です。

〔 委員長 〕 ありがとうございました。

今後10年を踏まえた場合に、日本経済の潜在成長率というのは一体どの程度なのか。それを特に消費性向と資本係数の動きから……、これはもう数量的な裏付けはあまりなくて、勘とエイヤッで話しても結構ですので、皆様、どのようにこの問題を考えておられるのか、あるいは最後に荒井計画官が言われたGNP1本だけでない何か新しい、豊かさだとかあるいは環境の問題などを考慮した変数というものを考える時期にきているのではないかという指摘もございましたので、このような問題、いくつかあったと思うのですが、皆様の忌憚のないご意見をお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

私が問題提起すれば、日本は将来2%の潜在成長率であるということを言われたわけです。TFPが1%、資本サイドが1%の貢献、労働はゼロ、そのような数字に対しては、皆さん、どのような印象をお持ちでしょうか。

この数字にはこだわらずに、皆さん、日本の将来の成長力をどう見ておられますか。もうざっくばらんな話でいいと思うのですが、いかがでしょうか。

〔 委員 〕 実は潜在成長力という議論をすると、すぐ思い出すのが昭和40年代の前半ぐらいに盛んにこの議論がありましたね。民間のエコノミストなども参加して、例えば設備投資研究所の石黒さんなんかがやった方が一番よかったというようなことも起こったのですけれども、ただ、私、医療のことをやっておりますので、それと結びつけて申し上げますと、1 つ考えなければいけないというのは、あの当時の日本経済というのは一種のヤング・エコノミーというか、世界中で一番若い経済であったわけです。そこで、身も蓋もない言い方をしてしまいますと、他の国より若かったからだという議論ができるのではないかと思っているところがあるのです。

そういう点で現在のことを考えてみると、まさに日本はヤング・エコノミーではなくてオールド・エコノミーにどんどん行きつつあるわけですから、これだけ高齢化が進んできた社会における潜在成長力というのは、ヤング・エコノミーというのが頭の中に残っているのですけれども、それと違った形で考えなければいけないのではないかという気がしています。

そういうこととの関連で言うと、話が飛んでしまって申し訳ないのですけれども、ブロックが11あるのですけれども、この中に広い意味でヘルスみたいなブロックがないといけないのではないかという気がするのです。そういう中で、狭い意味で言えば医療の問題とか、これから間違いなく大きくなる介護保険の問題とか、そういう医療の問題そのものを扱うと同時に潜在成長力という意味では労働とつながってくると思うのですけれども、年齢の問題なり成熟の問題なり、そういうのを入れておかないとこの議論ができないのではないか。媒介項としてやはりヘルスセクターみたいなのが必要ではないかという感じがしております。

〔 委員 〕 今の委員が「若い」とか「オールド」とかおっしゃったのは、どういう意味でおっしゃったのか必ずしもよくわからないのですが、年齢構成でおっしゃったのかなとは思いますが、そうじゃなくて経済自体が若いか年を取っているかということを言えば、アメリカなんかは一ぺん成熟してしまって、それがだめになって、またリバイブしているわけで、そういう意味で言うと、今、日本というのはある意味で言えば、戦後ずっと持ってきていたシステムがいわば古くなってしまったという意味でのオールドになっていて、それがうまくギアチェンジして新しいシステムに置き換えられれば、それはもう少し潜在成長率が高いというふうにみることもできるのではないかと、個人的には思っています。ただ、それは本当にうまくいくかどうかということ次第ですから、かなり幅がある話なのではなかろうか。

今、委員の話を聞いて思ったのは、いわゆるボランティアとか、NPOとか、そういうノンマーケット・エコノミーの部分というのが多分これから増えていくのだろうと思うのですが、それが先ほど計画官がおっしゃった民主主義の程度とかそういうものも含めてですけれども、それがどうやって計れるのかというところにかなり影響するのかなというふうにもう一つは思います。

最後に消費性向とか資本係数とかそこら辺なのですけれども、私自身が今パラパラと投資関数なんかを見た限りで、バブルとバブル崩壊後とを考えてみたときに、最適資本調整でやり過ぎているような感じがややしていて、この時代やはり財務がかなり重要で、消費もそうですけれども、消費に関して言えば、先ほど奥村委員がおっしゃったように、公的な意味での年金及び税負担とか、そういう長期も含んだ財務の、特にストック部分、ネットのストックがどうなっているか、こういう部分をもう少し入れて、投資関数もそうだと思うのですけれども、そういうふうにやる方が当てはまりがもう少しよくなるのではなかろうかというのが私の個人的な印象です。

〔 委員長 〕 多くの委員は、いままでの体制を日本が組み替えれば、日本の潜在成長率もそう捨てたものではないという、わりあい楽観的な見方をしておられるのですね。

〔 委員 〕 うまくいけばです。

〔 委員長 〕 うまくいけば……。そのうまくいくための手段は……。

〔 委員 〕 情報産業とか、電気通信とか、シルバー産業とか、いろいろ可能性のある産業はたくさんあって、それをうまく、例えばシリコンバレーなんかは典型ですけれども、うまく回していく。それで労働力なんかはもう少し流動化させて、しかも、ある意味で言えば、いままでは所得分配を平等にし過ぎていましたから、もう少し不平等でもいいから活性化させる。アメリカほど不平等がいいとは思いませんが、もう少し平等よりも成長といいますか活性化というところにウエイトを置くことによって、もう少し何とかなるのではないかというのが私の、本当に何の裏打ちもないのですが、単なる直感ですが。

〔 委員長 〕 それを民に期待するわけですか、官がどの程度の役割を果たせるのですか。

〔 委員長 〕 官はある程度補完的な役割は果たせると思いますが。例えば、今朝の経済教室にうちの大学の松井君が、労働市場のことを書いていますけれども、いわば労働の外部市場というのを、松井君の言葉で言えば「盛年で作る」。市場を作るときにやはり官がいろいろ……、マーケットというのは自然にできるものではなくて、やはり作るもので、政府が補助するものですから、あるいは場合によっては、官が公務員という制度を通じて積極的に外部市場化する。例えば官民交流を40代ぐらいでする。特にエリート層といいますか、いい層でそういうことをやれば、もう少しいろいろなところが活性化してくる。そういう種類のことはできると思います。ただ、伝統的なケインズ政策とかそういうものでどのぐらいうまくいくかというのは、これになると私は他の委員と違って、かなり悲観的です。

〔 委員 〕 先程の委員の続きを言えば、例えば労働市場で、今、ほとんど60歳一律定年制です。それで年金にすがろうとしたところ、年金の方は将来がわからなくなってきたという話なものですから、80歳ぐらいまでの人生設計ができなくなってしまっているわけです。そうすると、例えばアメリカのように年齢差別禁止法のようなものを日本も採り入れてきて、60歳一律定年制をやめさせた場合の労働市場、賃金などを考えていくことができれば、いわゆる経済成長には明るい見通しが立つと思うのですけれども、今、企業も組合の方も60歳一律定年をすぐ変えられると困るというようなミクロの立場からの反応しかしないわけです。ところがマクロの方ではこれでは年金がもたないということになっているので、そのボタンのかけ違いを直していかないとうまく成長できないので、潜在成長力が2%でということを今後10年についてサッと判断することは非常にコンディショナルで難しいと思うのです。

もう一つは、消費者の消費性向に関わることでは、生活設計が立てられなければ消費も控えぎみになる。銀行経営者が早期是正措置で自分の判断でやれと言われたら貸し渋りをするのと同じようなことになってしまうから、今、金融の半分は霞が関を通ずる金の流れなのです。民間に対しては不良資産いくらあるかを公開して、そのことが経済成長に役立つからという論理で押しているわけですけれども、それでは金融の残りの半分も、霞が関を経由する金融についても全部不良資産を公開して、という、やはり論理的な展開をあらゆる金融についてやっていかないとだめだと思うのです。

例えば年金について経済統計、金融統計としての年金が整備されていないような段階なのです。先ほど、委員は、公共事業論議をするときにバランスシートなしに議論がなされているのは非常に滑稽だということをおっしゃったのですが、私も全くそういうふうに思うのですけれども、金融資産においてすらそうなのです。ですから、消費者の動きをこれから10年で考える場合には、やはり両方その面で作って消費者に与えて、生活設計ができるようにしないと、不安ばかり出てきて、行き着くところまで行くという形になってしまうのではないかと思うのです。

ですから、成長率を高めようとすれば、やれる手段はある。しかし、それがプロバブルかどうかと言われると、かなり判断は難しいところだと思います。

〔 委員 〕 もう少し技術的な話になって恐縮なのですけれども、設備投資関数の話で出てきたのですけれども、最近のデータを眺めてみますと、ここ数年というタームとその前とだいぶ様子が違っているわけです。それである意味で現在が転換期ではないかというような議論もあり得ると思うのです。そういうときに長期予測というのは基本的に非常に難しいので、やはり2つの局面が考えられて、つまり、現在起きている、ここ数年間のレベルがかなり異常な事態というふうに考えるのか、前の状態に戻るというふうに考えるのか、あるいは現在の事態がむしろこれからの姿であり得るかということで、だいぶ長期予想という観点からすると違うわけです。ですから、それをかなり正直に2つの予測ということを条件付で考えられた方がわりと、計量委員会としては説得的ではないかと思うのです。

何も無理して一本化して、つまり非常に強気なことを言うとか、非常に弱気なことを言うという必要はないのではないかと思います。

そういう長期的な2つのあり得るシナリオについて計量的に議論するということが、現実的には考えられるのではないかというのが私の意見です。

〔 委員長 〕 「こうなる」というのではなくて、「こういう条件ないしはこういうことをやれば、こういう潜在成長率ですよ」といろいろメニューを出したらいいというわけですね。

〔 委員 〕 メニューと言っても、あまりたくさん出すとやはり混乱すると思うのです(笑)。ですから、2つか3つ……。

〔 委員長 〕 悲観と楽観の……。

〔 委員 〕 あるいは生産的なことを言ったときに、つまりどういうものが望ましいかということを言うときには、つまり、どういう条件がなければいけないかということを計量的に言うという方向がいいのではないかと思いますけれども。

従来は計画というと、この数字1本でいくということなのですけれども、現在みたいな状況ですと、1本でいくといったときに、その信頼性ということがかなり問われてしまうのではないかと思うのです。

〔 委員長 〕 なかなかいいサゼスチョンのように私は思います。

時間もだいぶたってまいりましたので、第1回は一応このぐらいにしておきまして、次回以降のことをちょっとご相談したいと思います。

日程を今日決めてもいいという事務局からのお話ですので、皆さん、もし、よろしければ、次回は3月2日か3日のどちらかというふうに考えているのですが、いかがでしょうか。3月3日(水)の午前10時というのはどうですか。

〔 事務局 〕 私どもの方は、それで結構です。

今日のご議論の中に度々出てまいりましたけれども、人口とか労働力の話、中期多部門モデルでは必ずしも明示的にとらえられておりませんけれども、次回ご紹介する財政・社会保障モデル、これは橘木先生にも加わっていただいた作業でございますけれども、ただ、その場合も、供給型の長期モデルでやりますと、じゃあ、足元をどういうふうに反映させるのか。潜在成長径路からずれて財政赤字が拡大しているというものを考慮しないで、そもそも均衡状態にあるところから出発するというような推計で10年も20年も延ばすと、そこで、先ほどストックというお話がありましたけれども、資産とか負債というのも非常に足下の状況にも依存するということで、逆にまた難しい問題もあろうかと思います。また、次回以降ご議論いただきたいと思います。

〔 委員長 〕 先程委員がご指摘になったように、いわゆるヘルスセクターというものを独立に何かモデル化するというのも、1つあり得ると思うのですけれども、その問題も含めて2週間後に、いわゆる財政社会保障モデルというものを徹底的に議論させていただきたいと思います。

それでは、第1回の計量委員会を以上にしたいと思います。長時間、どうもありがとうございました。

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