経済審議会国民生活文化部会(第1回)議事録

経済企画庁

経済審議会国民生活文化部会(第1回)議事録

経済審議会国民生活文化部会(第1回)議事次第

日時  平成11年2月10日(水) 10:30~12:45

場所  共用特別第2会議室(407号室)

  1. 開会
  2. 委員紹介
  3. 国民生活文化部会の公開について
  4. 国民生活文化部会の今後の進め方について
  5. 大臣挨拶
  6. 閉会

(配付資料)

  • 資料1 経済審議会 国民生活文化部会 委員名簿
  • 資料2 国民生活文化部会の公開について(案)
  • 資料3 「新たなる時代の姿と政策方針」の諮問文
  • 資料4 経済審議会の今後の運営について
  • 資料5 「新たなる時代の姿と政策方針」の策定手法の多様化について
  • 資料6 国民生活文化部会について(案)

経済審議会国民生活文化部会委員名簿

部会長
清家 篤   慶応義塾大学商学部教授
部会長代理
大田 弘子  埼玉大学大学院政策科学研究所助教授
委員
井堀 利宏  東京大学大学院経済学研究科教授
川勝 平 太   国際日本文化研究センター教授
黒木 武 弘   社会福祉・医療事業団理事長
鈴木 勝 利   日本労働組合総連合会副会長
ピーター・タスカ ドレスナー・クライン・オートベンソン証券会社ストラテジスト
永井 多惠子   世田谷文化生活情報センター館長
         日本放送協会解説委員
西垣 通     東京大学社会科学研究所教授
浜田 輝男    エアドゥー北海道国際航空咜代表取締役副社長
原  早苗    消費科学連合会事務局次長
福武 總一郎   (株)ベネッセコーポレーション代表取締役社長
森  綾子    宝塚NPOセンター事務局長
湯浅 利夫    自治総合センター理事長

〔 高橋審議官 〕 ただいまから、第1回の国民生活文化部会を開催させていただきます。

 私は、事務局を務めさせていただきます、経済企画庁総合計画局の審議官の高橋でございます。よろしくお願いします。

 委員の皆様方には、本日はご多用中のところをご出席いただきまして、誠にありがとうございます。

 去る1月18日の経済審議会総会において、小渕内閣総理大臣より「新たなる時代の姿と政策方針」の策定について諮問が行われました。同時に、その検討体制として、「企画部会」のほかに、新たに「構造改革推進部会」「国民生活文化部会」「グローバリゼーション部会」「地域経済・社会資本部会」の4部会を設置することとされました。

 その折に、各部会の部会長及び委員は経済審議会の豊田会長が指名することとされましたが、本部会の部会長には、清家 篤氏が指名されたところであります。清家部会長、よろしくお願い申し上げます。

 また、委員に指名されました方々は、お手元の資料1の委員名簿のとおりでございますが、本日は初回でもありますので私の方から本日ご出席の委員の皆様をご紹介させていただきたいと存じます。

 大田 弘子 委員でございます。

 黒木  武弘 委員でございます。

 鈴木 勝利 委員でございます。

 ピーター・タスカ 委員でございます。

 永井 多惠子 委員でございます。

 浜田 輝男 委員でございます。

 福武 總一郎 委員でございます。

 森 綾子 委員でございます。

 湯浅 利夫 委員でございます。

 本日の経済企画庁の側の出席者は、お手元の座席表のとおりでございます。ご紹介は省略させていただきます。

 なお、堺屋経済企画庁長官につきましては、国会のために、12時20分過ぎにまいる予定でございます。その折に挨拶をさせていただくことを予定したいと思います。

 それでは、この後の進行は清家部会長にお願いしたいと存じます。よろしくお願いいたします。

〔 部会長 〕 清家でございます。当部会の部会長を務めさせていただきます。ぜひ皆様方のご理解とご協力を得て、活発な議論をしていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、早速でございますが、まず最初に、この部会の部会長代理を私の方から指名させていただきたいと思います。お忙しいところを大変恐縮でございますが、大田委員にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

 それでは、本日の議題に入らせていただきます。

 まず、本日の部会の公開方法についてお諮りしたいと思いますので、事務局から説明いただきます。

〔 高橋審議官 〕 資料2をご覧いただきたいと思います。

 国民生活文化部会の公開については、以下によることとする。

 1. 原則として議事録を会議終了後1カ月以内に作成し、公開する。ただし、発言者の公開は  行わないものとする。

  また、原則として議事要旨を会議終了後2日以内に作成し、公開する。

 2. 配布資料は、原則として議事要旨と併せ公開する。

 3. 会議開催日程については、事前に周知を図るものとする。

 以上でございます。

〔 部会長 〕 ただいまご説明がございました本部会の公開について、ご意見等がございますでしょうか。

 よろしゅうございますか。それでは、本部会の公開については、本会合の冒頭にさかのぼって、公開することとさせていただきますのでよろしくお願いいたします。

 続きまして、事務局より、先日の経済審議会総会で行われました「新たなる時代の姿と政策方針」の策定の諮問の内容及びそこで了承されました経済審議会の今後の運営等について紹介いただき、引き続き、本部会の進め方につきましても説明をお願いいたします。

〔 高橋審議官 〕 それでは、資料3をお開きいただきたいと思います。資料3は、1月18日に小渕内閣総理大臣より経済審議会の豊田会長に対して行われました諮問でございます。

 「内外の歴史的な大転換期にあたり、『新たなる時代』の我が国経済社会のあるべき姿と、その実現に向けての経済新生の政策方針いかん。」、これが諮問内容でございます。

 その下に「説明資料」が付いておりますが、その概要をかいつまんで申し上げます。

 内外情勢の変化は大きく、今や、歴史的発展段階の転換を感じさせる。日本は高度に完成した工業社会を実現したが、さらに多様な知恵の時代へと進んでいる。この新しい人類文明において、我が国は積極的かつ創造的な役割を果たすべきときではなかろうか。

 そうしたときに、従来の経済計画(GDPを中心とした経済計画)の発想を超えて、我が国のあるべき姿を探求する必要があるのではなかろうか。

 下にいろいろな課題が書いてございます。

 少子・高齢化を乗り越え、新しい繁栄と安寧を長期実現することが求められる。

 また、労働・資本・土地等の生産要素を最適活用し、情報化を一層推進することにより、市場メカニズムを通じた効率性を最大限に発揮できるよう、構造改革を抜本的に前進させる必要がある。これを通じて、新しい経済社会のシステムに対する不透明感を払拭するために、個々人が自らの好みを選択でき、かつ全体としては調和のとれた安心と安全が確保できるような経済社会の具体像とそれを実現可能とする政策的道筋を明確に示すことが求められている。

 そこで、新しい経済政策方針としては、「21世紀初頭の我が国経済社会のあるべき姿を描き、国民が自信と誇りを持って未来に臨めるよう、平成11年から21世紀初頭までの10年間程度にとるべき政策の基本方針の策定を求めるものである。」ということで、期間としては、21世紀初頭の約10年間の政策の基本方針の策定を求めているものでございます。

 また、「策定にあたっては、全国規模で広く国民の生の声を聞くとともに、海外からも意見を求めるなど、内外に開かれた活発な議論が求められる。」、こういうことが特徴となっております。

 こうしたことを審議するために、同日の経済審議会総会におきまして、資料4にありますように、企画部会のほかに4つの部会が設けられました。それぞれの部会の上に、会長・部会長等によって構成される基本理念委員会を設けて、全体の理念の調整にあたるという形になっております。

 各部会の主な内容は、次のページの(別添)にあるとおりですが、ごく簡単に申し上げますと、企画部会は、総論としての大きな方向性、マクロ経済の展望について検討するということになっております。

 構造改革推進部会は、産業、経営、市場等の経済各面における構造改革の進捗と必要性を点検し、抜本的な改革を実現するための問題を整理して、そのためのいろいろな方策を明らかにするということでございます。

 国民生活文化部会は、国民の生活と文化を規定する人口、教育、環境、資源、社会保障等が経済に与える影響及びその対応策について検討する。また、ここにいろいろ掲げていますような問題について、その施策・仕組み等を検討するということになっております。

 グローバリゼーション部会は、我が国の世界における位置づけ、それに関連する諸問題について検討することとされております。

 次のページでございますが、地域経済・社会資本部会は、地域社会のあり方、それに伴う社会資本整備のあり方について検討することになっております。

 これがそれぞれの部会の位置づけでございます。

 次に資料5をご説明いたしますが、先ほどの諮問文の説明の最後に、広く国民の意見を聞く、策定手法についても多様化を進めるということが求められておりますが、そのためにいくつかの方策をここに掲げてございます。それを実行していきたいということでございます。

 1.マスコミへの特集企画

 2.シンクタンクへの短期集中委託調査

 3.国民等からの提言募集

 4.各国有識者からのヒアリング・意見募集等

 5.モニターによる意向調査

 6.ビシュアル発表資料の作成を進める

 7.以上で集まった意見提言については、各部会で活用するとともに、企画部会に広報委員会を置き、委員長から記者レクの際に適宜公表する。

こういう段取りになっております。

 特に「2.シンクタンクへの短期集中委託調査」というのは、各部会の審議に活用できように、この部会に関するものとしては、2のbの「会社人間からの脱却と新しい生き方等、脱会社人間像を探るための調査」を委託するということでとり進めているところでございます。

 以上が資料5までの説明でございます。

 それでは、本日ご議論いただきます資料6をご覧いただきたいと思います。

 既に、総会あるいは企画部会でご議論いただいておりますが、21世紀初頭の「新たなる時代の我が国経済社会のあるべき姿」を求めていくためには、審議会全体としてなるべく共通の理念を持ち、できる限りそれに基づいた政策方針を各部会においてご議論いただくのがいいのではないかということでございました。

 そこで、経済審議会における検討の進め方としては、各部会において、まず「あるべき姿」における我が国の国家像についてご議論いただくことになりました。各部会とも、この議題について共通にまず第1回でご議論いただくということでございます。各部会の議論の結果は、基本理念委員会、企画部会で更にご検討いただき、それぞれの部会にその結果をまたフィードバックしていくことになろうかと存じます。

 本部会におきましても、第1回目の本日、まず、「あるべき姿」における我が国の国家 像についてご議論いただければと存じます。

 その議論の参考としまして、3枚目でありますが、(別紙)「『あるべき姿』における我が国の国家像をどう考えるか」を用意いたしました。国家像を考える上での視点ということで、大括りに7つに分けてございます。

1.世界における我が国の位置づけについて

 我が国は、大国として世界秩序の形成に積極的に関わるべきか、あるいは、世界秩序を与件として考えていくのか。

 これからの我が国は、尊敬される国であるべきか。そうであれば、コストはどれだけ払うこととになろうか。

2.自由と社会的秩序などのトレードオフについて

 自由と社会的秩序、個性と組織、応報と安全ネットという相反する関係にあるものを、どういう水準に設定するか。

3.産業・技術等のワンセット主義について

 これまでの我が国経済社会、特に戦後の我が国経済社会は、農業から各種工業まですべての産業を取りそろえる、あるいはすべてのシステムを取りそろえるということでやってまいりました。そういった各産業や技術のワンセット主義を今後どこまで維持すべきなのか。ワンセット主義をとらない場合、各段階は、産業があれば、それを支える技術があり、その技術を支えるための人材の育成機関としての教育があり、その基底に情報やそれに関する常識というものがあります。そういった連関というものがすべてなくなるということか、あるいはどこかの産業がなくなったとしても、技術以下の連関が残るのかどうか、こういうことをどのように考えるかという問題でございます。

4.日本固有の良さについて

 グローバル化が進んだ後でも、将来にわたり絶対的に守るべきであり、かつ一度失うと取り戻せない日本固有の良さこれは社会システム・制度・慣行・文化いろいなものがあろうかと思いますが――は何であろうかという問題意識でございます。

5.経済成長について

 これまでは、経済成長を1つの中心的な課題として追い求めてきたわけですが、引き続き、経済成長は重要な要素と考えるべきか。あるいは、ほかに何か追及すべき価値があるのかどうか。人口が減少していくと、経済成長にはマイナスの要因に働きますが、移民を受け入れてまでも経済成長を追及するのかどうか、こういった問題があろうかと思います。

6.個人の帰属先について

 戦後は、特に企業を中心とした「会社人間」、会社を中心とした社会システムが形成されてきました。そこに帰属した人が、「会社人間」から脱却した後に、会社、地域、家族などが変容する中でどこに帰属先を求めようとするか。家族か、地域か、NPOか、あるいはそうした中で人のネットワークはどのようなものとなるのかということでございます。

 また、税、社会保障、あるいは相続という問題を考えるときには、経済単位というものも大きく結びつくわけですが、そうした場合は個人なのか家族なのかという問題でございます。

 7.地域のあり方について

 これから我が国の人口が減少していく中で、どうしても人が住まない地域も出てくる可能性があります。そうすると、広大な過疎・無人地帯が存在するおそれがあるが、これを許容するのかどうか。

 こうした問題を考えるときに、地方自治のあり方、国土保全、環境という問題が関係しますが、そういうものをどう考えるかということでございます。

 こういった問題を1つの参考としてリストアップしたところでございます。

 私の説明は以上でございます。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。

 それでは、まず、ただいま高橋審議官のご説明を踏まえまして、今一番最後に(別紙)でご説明いただきました、「『あるべき姿』における我が国の国家像をどう考えるか」について、少し時間をとってご議論いただきたいと思います。

 恐らく、ここに挙げられた7つのポイントのうち当部会に特に関係があるのは、2、4、6というところだろうと思いますが、この部会の位置づけを明確にする意味もございますので、今回は初めでございますから、すべてのポイントについて忌憚のないご意見をいただきたいと思います。どなたからでもご自由にご発言いただきたいと思います。

〔 A委員 〕 個々の項目について、それぞれ意見を言うのですか。それとも全体、これに関して何でもよろしいのですか。

〔 部会長 〕 はい。

〔 A委員 〕 多分、企画会議といいますか、この前の委員会で――基本理念委員会ですが――考えられていると思うのですが、逆にというのは、今日のご説明を聞きますと、「あるべき姿」というのは、我々しろうとですと、今は明治以来の大変革期と言われているわけですが、明治政府というのは、西欧キャッチアップということが諸制度のベースにあって、それが現在の我が国の政治や行政、あるいは経済、教育の基本の制度になっていると思うのです。その部分まで相当メスを入れてやろうとしていくのか。それは別の言い方をすると、西欧キャッチアップ型のものをベースにした機関・制度を前提としてやるのか、もう少し抜本的な見直しをするのか。もっと言えば、あるべき我が国の新しい姿を描くためには、どういう制度と基本的な考え方

を入れるのかということも多少頭に入れて論議するのか、その辺をお聞きしたいのです。

 もしそういうことであれば、相当重たい論議です。私自身は、事前にスタディしてきなさいと言われたのですけれども、どの程度まで言ったらいいのかというのをまだ迷っているというのが現状です。

〔 部会長 〕 私の理解は、この日本の社会をどの程度まで変えるかという、今のA委員のご質問自体が、我々の討議すべきテーマの1つだろうと思っております。そういう面から言えば、できるだけ風呂敷を広げて、深く議論した方がいいのではないかと思います。

 今、A委員の方から「あるべき姿」について、例えばこの7項目が企画委員会等でどのような経緯で出てきたものかというようなご質問があったと思います。その辺は、私は企画委員会に出ておりませんので、事務局の方で何か情報がありましたら、お知らせください。

〔 高橋審議官 〕 具体的に企画部会でこの内容について議論をしたというよりは、企画部会で、経済審議会の諮問を踏まえて、「あるべき姿」というものをまずみんなで議論した方がいい。その「あるべき姿」というのを最初に出して、その出した「あるべき姿」にある程度に沿いながら、各部会でのそれぞれの具体的な検討項目というものを検討していった方がいいのではなかろうか。

 そうすると、まず共通の理念を持つために、各部会で、そもそもの今後の国家像の「あるべき姿」についてまず自由に議論していただいて、ある程度の共通の理念を形づくった方がいいのではないか。そういうことが企画部会での最初のご議論でございました。それを踏まえて、各部会でまずこういうことでやっていただこう、と。

 「国家像をどう考えるか」、これは事務局の方でとりあえず用意させていただいたということでございます。

〔 B委員 〕 私、ちょっと先に失礼させていただきますので、順序立った発言ができるかどうかわかりませんけれども、申し上げさせていただきます。

 まず、私は、これからの世の中ということを考えますと、経済はともかくとして、国民一人ひとりの精神性というのが非常に問題なのではないかと思っております。

 昨今の若い人の動向などを見ますと、人への配慮というものが非常に希薄になってきておりまして、精神性の拠りどころというのをどこに求めるのかということについては、非常に国民が迷っているのではないかという気がいたします。

 4あるいは6のあたりで出てくる議論だと思いますけれども、どの調査を見ても、家族というところが非常に大事ですが、もう一つ、これから21世紀にますます都市集中が行われる中で、帰属意識というのが非常に失われてくると思います。その場合、なかなか日本人には慣れないことですが、地域社会というのが1つのキーワードになってくるのではないかと思います。

 それぞれの能力というものを高めてある結果を得たときに、その結果というのをどこに返すかというのを忘れた人間というのは、モラルを失うのだろうと思います。それを必ず地域社会に返すというような、私たちの心の慣行みたいなものをつけたいなと、私は個人的に思っていまして、私も地域のセンターの運営などをするようになってまいりました。

 どうも職業を失って、退職後、その地域に関わるという方が多いわけですけれども、実は、あるポストを得られて、65歳以上の方で地域に参加なさるというのは、地域でそれまで活動している者にとっては非常に迷惑な場面もあるのです。というのは、ポストを持った方というのは、なかなか一兵隊としてお働きになるというような元気も、それから妙にプライドもお持ちになって、なかなかうまくいかないということがございます。

 若いうちはなかなか暇がないでしょうけれども、30代後半から40代ぐらいになったらそろそろ地域へ関わっていくというような、それは個人的な心の持ち方ですけれども、そういうことに全体になってくれば大分変わっていくのかなという気がいたします。

 1つ制度的な提案が、これは既に文部省の方で出ていまして、それは今非常にいろいろな問題があります教育関係でございます。学校という制度の中に今までは、教育委員会、それから学校というふうな1つの命令系統と申しますか、そういうものがあったわけですけれども、ここに学校評議会というものをつくって、それで校長をサポートするという制度が、間もなくスタートしていくと思います。こういうところには、地域社会の中のしかるべき識者であるとか、会社などであるポストに就いた人とか、あるいは弁護士とか、そういう専門性を持った人に関わってもらうという制度になってくるはずであります。こういうところに必ず関わるというような、お役所のお忙しい方にも関わっていただくというようなことが大事ではないかと思います。

 それから、もちろん、その後ご議論になると思います、日本の場合には非常にインフォーマルな部分で、福祉をはじめとしたいろいろな実際上の取引というのが行われています。こういう取引というのは、ボランティアというような観念が非常に強いわけですけれども、これをもう少し顕在化させて実際の取引にして、アメリカなどでは非常にこの部分がGNPを押し上げているようでございますので、その部分をもう少し活動しやすいような形に誘導していくことが非常に大事だと思います。

 この場合、日本の国民の中に、営利と収益の判断がなかなかつかないのです。例えば、非営利法人などで、何かをモノを売ったり、参加料を有料にしたりすると、それは営利をやっているのではないかというふうな混同があるわけです。そうではない、収益事業というのは、ご承知のように、そこで儲けた利益を必ず別のプロフェッショナルを雇うとかいうふうに、事業収支の中できちっとゼロにしていくというシステムですけれども、それが国民の中に定着していないわけです。そういう点も、きちっとさせて、そういう取引を顕在化させていくということが非常に重要だと思います。

 かつてのように日本の経済が、アメリカの猛烈型資本主義のように、あんなふうな復興をするとはちょっと考えにくいですが、静かな中に、ある幅をもった経済活動が出ていけばそれでいいのではないかという気がいたします。今まで日本が持っていたいろいろないいところを守りながら、新しい精神性豊かな人々が構成している国家というのができれば、私は、それでいいのではないかなというふうに思っております。

 以上でございます。

〔 C委員 〕 題名として「あるべき姿」ですけれども、「あるべき姿」は何であるかは誰もわからないと思います。来る将来も、あまりにもいろいろなポシビリティがありますから、先のことをこのままトップダウン的に決めることは、まず無理があると思っています。これを守って、これをなるべく変えるかとか、そういうこともできないと思います。自然的にそういうふうに進化するしかないと思っています。

 しかし、教育も、就職も、いろいろな面で選択肢を広げて、柔軟性をなるべく導入して、結果を待つしかない、という感じがします。

 例えば、自由と社会的秩序などのトレードオフ、このトレードオフは前もって決めるようなものではないと思います。自然に起こりますし、本当に長期的にそのトレードオフが存在するかどうかということは、私も疑問を持っています。

 そういうことで、守るべきものと捨てるべきもの、そういう段階の決断はあり得ないと思っています。

 ちょっとニヒリスティックな意見で、すみません。

〔 D委員 〕 私も、「あるべき姿」という言葉にすごくこだわりを持っていまして、この文章の中で「べき」がたくさん出てくるのです。どうして「べき」が出てくるのかなと、そこでつまずいてしまって……。「どうなるべき」なんて、決めてしまっていいのだろうかというふうなことで、ちょっと初めの段階でつまずいてしまいました。

 私自身は、ボランティア活動をしてきて、地域でも生きて、また、NPOセンターを去年から設立して、6の「個人の帰属先について」ですが、家族でもいいし、地域でもいいし、NPOでもいいというような選択肢とか、そういう個々人の多様な生き方があっていいと思っていたものですから、「べき」で、こういうふうに定められていくというのはどうなのかと。その辺で私自身は、「べき」を決めていくというのはどうなのかなと思いました。

〔 部会長 〕 今、D委員の方からご質問ということですけれども、私も、「べき」というのはたくさん出てくる必要はないと思いますが、事務局の方から何かご説明がございますか。

 それでは、また議論させていただきたいと思います。恐らく、この場の議論というのも、我々が、例えば個人の行動をどうするべきだとかというようなことはあり得ないので、今おっしゃったように、いろいろな人がいろいろなことを自由にできるようになる、そのスキームはどういうものであるべきか、そういうことだろうと思います。個人が「どうするべき」とかという話では全然ないと私は理解しております。

〔 E委員 〕 このメモを見て感じましたことを3点申し上げます。

 1点目は、今お話に出ていた「あるべき」ですが、恐らく、これは私の受け止め方では、日本の魅力といいますか、魅力ある国にどうしてなるだろうか、というふうにとらえていたのです。1には、「尊敬される国であるべきか」と書いてあって、よくこんな恥ずかしいことが書けるなぁと思うのですけれども。尊敬されるとか、これは人がしてくれるものです。恐らく、日本の魅力づくりというようなことは、やはり、考えていった方がいいかなと。そのような意味で、私は、「あるべき姿」というのをとらえております。

 2点目は、日本の……、司馬遼太郎さんの言い方ですと「この国のかたち」というようなことになるのでしょうが、議論するときに、変化を前向きに受け入れるべきだろうと思っております。今、日本型システムが大きく変わっていますけれども、そのときによく、「かつてはよかったけれども、今は悪い」とか是非論でとられることがあるのですが、今起こっている変化、例えば産業構造が大きく変わっているとか、国民の意識も変わっている、国際的な競争構造も変わっているというような変化、それは前向きに受け止めて、その中でよい仕組みを新しくつくっていくということが必要だろうと思います。

 そのときにキーワードになるのが、1つは流動性の確保であり、もう一点が豊富な選択肢、そのようなことかなと思います。これはいろいろ意見があるでしょうし、ここら辺を議論することになると思います。

 流動性ですが、今までの日本のシステムというのは、いろいろ状況を固定化することでリスクに対応してきたという点が多いと思うのです。株の持ち合いもそうですし、メインバンクもそうですし、超長期の雇用もそうですし、例えば借地借家法みたいな契約形態もそうですが、関係を固定化することでリスクに対応したり、安心を得てきたというのがあると思うのですが、恐らく、この前提条件はかなり崩れておりますので、流動性を確保する。人も、資金も動きやすく、移動を確保しやすい仕組みに変えていくということが、私は重要だろうと思っております。

 そのときに、個人の選択肢が豊富に与えられていること。ただ、このことは口で言うのは簡単ですが、実は大きい社会変革をも意味すると思っています。

 3点目は、こういう議論をするときに、表層的な議論ではなくて、内部に対立軸もかなり持つということは踏まえて、そこまで踏み込んだ議論をした方がいいと思います。

 例えば、(別紙)の2に「安全ネット」という言葉があるのですが、安全ネットの構築ということ1つを取りましても、今までの日本の安全ネットと、恐らくこれからの社会で必要とされる安全ネットというのは対立するだろう。今までの安全ネットは、わりと政治的に弱者というものをつくって、そこを守っていく。例えば、地域間の所得再分配ですとか、農業を保護するとか、産業間の所得再分配です。政治的に弱者というようなものをつくって、それを守る、それが既得権にもなるという状況があったわけですが、これからの安全ネットは、もう少し結果の平等から機会の平等にシフトすべきだと思いますし、それから、地域とか産業という集団ではなくて、あくまで個人を対象にした所得再分配に移った方がいいと思います。安全ネットというのは1つの例ですが、中にはこれまでの既得権との対立軸もあるのだという、そこまで踏み込まないと、私は本当の議論にはならないと思います。

 以上3点が、感想です。

 1点だけ付け加えますと、多分、いろいろなシステム変革をして、望ましい形を模索していって、さっき申し上げた流動性とか選択性というのを考えるときにネックになるのは、日本人の、きちっとしていないと気がすまないとか、そのあたり……。これは、どう変えるという話ではなくて、いろいろネックになるのだろうなと。

 これは、堺屋長官のお言葉だったと思うのですが、ずいぶん前に、「ちゃんとリズム」ということを何かの会合でお聞きしたことがあった。ちゃんとしてないと気がすまない。きちっとしていることで安心する、というようなところが確かにあるのです。規制緩和にしても、行政改革にしても、それを進める過程で混乱とか、軋轢とか、ちょっとぐじゃぐじゃっとなることは必ずあるのですが、それを許しにくい国民性もあるように思います。そこら辺が、与件としてどう考えるのかなというあたりではないでしょうか。

〔 F委員 〕 部会長の方から、主として2、4、6について意見を述べよということで……。

〔 部会長 〕 全体について、ご議論いただきたいと思います。

〔 F委員 〕 まず、2についての私の意見は、「トレードオフ」と書いてありますけれども、例えば社会保障の場合には、自己責任とか、自立心とか、そんな観点から社会保障がセーフティネットとして組んでいるということで、必ずしもトレードオフというのかどうかというのは、逆に、トレードオフと言えないのではないかという気がするというのが第1点ですけれども、それがトレードオフとすると、そこの調和をどういうふうに考えるかということについては、しいて言えば、社会の安定みたいなことが定性的な水準になるのではないか。あるいは、人としての尊厳とか、いろいろな言葉はあるでしょうけれども、数量的には出ない話でありまして、社会的安定みたいのが、このトレードオフの中を取り結ぶキーワードではないかという感じがいたします。

 4の「日本固有の良さ」、これは文化学者とかいろいろな人に教わりたいわけですけれども、私が「日本人あるいは日本の社会の良さ」を言うときにいつも好きで使っているのが『魏志倭人伝』であります。『魏志倭人伝』には、日本というのは父子男女の別がないとか、酒をよくたしなむとか、よく挨拶をして相手に敬意を表するとか、日本人というのは長生きで100年とか89年生きている人がざらだとか、盗みをしない、争いもしない、そういう形でいろいろ書いてあります。『魏志倭人伝』は非常に古い話になりますし、かなりフィクションがあるでしょうけれども、日本人をかなり正しく評価している点があるのではないかということで、かなり乱暴ですが、「日本の良さ」という意味では使っています。これが失われたものもあり、守られているものもあり、いろいろだと思いますけれども、私としては、「日本固有の良さ」というものは日本人では気づかないところがあるので、外国人の書いたもの等をもう少し勉強して、後でまた意見を述べさせていただきたいと思います。

 6の「個人の帰属先」、私どもの今までの理解は、人間どこの組織に、どういうものに帰属するかというのは、経済的な保障いかんだったのだろうと理解しています。国がそういうことを保障しているのなら国に帰属しますし、地域社会なら地域社会ですし、家族がそういう形で保障をしてくれるなら家族であったのではないかと思っています。そういう意味で、日本人が、そういう保障というものは大事に考えないということで、恐らく、「好み」ということがこれからの帰属を決めるキーワードになるのではないかということでこの諮問があると思うのですが、本当にそういう経済的保障を含めた保障で帰属するのか、もうそれは日本人が捨てて、21世紀は「好み」で帰属するのか、こういうことについては私としてはまだ何とも言いようがないわけですけれども、だんだん家族が変わり、地域社会が変わり、NPOというものが育ってくるということになると、これからの21世紀の帰属は、今までみたいな経済的な保障があるところに、つまり会社が一番保障していましたから会社でしたけれども、だんだん諮問にありますように人の好みで帰属が決まるという方向に行くのではないかと思っております。

 以上、感想でございます。

〔 G委員 〕 「あるべき姿」ということにつきまして、ごく個人的な、自分として21世紀というのはこんな社会になったらいいなということについて、ごく主観的なお話を、大ざっぱですけれども、させていただきたいと思います。

 人類がこの世に出現して約200万年、そのうちの199万年というのは、森に行ってとったり、海や川からとったり、ほとんど狩猟採取の生活をずっとしてまいりました。農業を始めたのが1万年前です。現在我々やっています文明社会というのはたかだか200年でございます。そういうことからいきますと、人類の歴史の中のほんとうに1万分の1ぐらい、まばたきの瞬間であるわけです。

 世の中非常に便利になってまいりましたし、豊かになってきたのですが、人間として、もうちょっとゆっくりしたいと。

 私、今回、航空会社の肩書で参加させていただいていますが、本業は養鶏業でございます。生き物の世界からみていますと、人間というのはすごく変わった生き物になってしまったなと、そんな感じが非常にしております。我々の先祖の血といいますか、そういうものをもう少しこれからは……、豊かさ・便利さというものもあるわけですけれども、生き物として・人間としてゆったり生きていきたい、そんなふうに思っております。そういうところに少し世の中のシステムというものを変えていかなければいけないのかなと。

 実感でございますけれども、例えば、GNP2%なのか、3%なのか。そのことが私どもの生活と直接に本当に関連してくるのだろうか。かつては、経済成長というのは非常に大事なことだったと思いますが、今になりますと、そうではない、新しい物差し。例えば、我々の生活の豊かさ、GNA(グロス・ナショナル・アメニティ)とか、そういう1つの物差しみたいなものが非常に必要なのかと思っております。

 そんなことで具体的には、これから都市と農村の問題、この交流というのが日本人が豊かに生きていく上ですごく大事なポイントかと思っております。

〔 H委員 〕 まだ、この問題についてはっきりした考えを持っているわけではございませんけれども、今日のメモを見せていただいた範囲で申し上げますと、まず、「あるべき姿」という問題を考えました場合に、個人個人がそれぞれ「あるべき姿」を考えるのは別としまして、行政組織なり国家というものが目標としてどういう国家を目指すかということを考えるということになりますと、従来、明治維新のときには「富国強兵」という国家目標があったと思うし、あるいは戦後の経済の復興という中では「西欧に追いつけ・追い越せ」というキャッチアップというような問題があったと思うわけですが、そういう経済面でいきますと、少なくとも物質的には西欧諸国に追いついたというようなところで、次のところの目標をどういうふうに考えるのかというのが、「あるべき姿」という問題の一番の悩ましいところではないかという感じがするわけでございます。

 世界のいわゆる経済大国になったという中で、私どもが具体的に個人として生活する場合に、豊かさを個人として実感できているのかということがよく言われます。モノは溢れておりますけれども、何か精神的に満たされていない。あるいは、何かに追いかけられて生活をしているというようなことが日本の人たちの実感ではないかという感じがするわけでございます。そういう中で、物質的なものにプラスしてどういうふうに精神的なといいますか、人間の豊かさ・個人の豊かさというものを精神的にも満足できる、そのような国家目標が果たしてできるのかどうか。国が思想統制をするということ、これは許されないわけでございますが、そういう問題について我々はどう考えていくかということが、この「あるべき姿」のポイントになるのではないかという感じがするわけでございます。

 日本の固有の文化というような問題もございましたが、これを考えるときに、どうしたって地理的、自然的な条件というものを抜きにしては考えられないわけでございまして、極東の細長い島に1億2,000万余りの人が住んでいる。しかも、その人たちはほとんど同じ民族で、しかも、同じ言葉で意思を通じ合うことができる、こういう国家というものが1つ形成されているわけでございます。同じ言葉で、ずっと歴史的にも成長してきたという事実、この中に日本の固有の文化というものがいろいろと培われているのではないかと思うわけでございます。その中で、日本人というのは、米社会といいますか、米を作る農村社会の延長というようなことがよく言われているようですけれども、お互いが比較的同質だという意識が非常にあるのではないか。そういう意味では、仲間同士もなるべく同じようなことで生活をするという意味で、これから自由社会というようなことがいろいろ言われますけれども、自由というものを考えていくときに、相互の間でどういう形で同質性というものが変わっていくのかなという感じがするわけでございます。

 所得格差というもの1つをとってみましても、日本人の場合の所得格差というのは、世界各国の話を聞いてみると、全く質的に違うのではないかと感ずるぐらい、所得の格差というものも比較的少ないという中で、これから自由の問題とかを考えていった場合に、今まで弱者の論理というものがあまり強く出過ぎていたというきらいもあるのかもしれませんけれども、自由と、その自由によって得られるいろいろな格差というものを、今度は逆にどういう形で是正をしていくかということ、これも日本人という同質感覚からみてどう考えていくかということを考えていくべきではないかと感ずるわけでございます。

 帰属の問題については、確かに、脱会社人間とか、あるいは家族は核家族化したというような問題がありまして、1つの社会の変動期に来ていると思うのですが、人間は一人では生きていけないわけですから、どこかで誰かとともに行動するという帰属先がなければいけないわけでございます。こういうものは、役所の関係でいきますと、家族あるいは自治体とかいうことになりますが、もう少し柔らかな組織といいますか、最近ではボランティアの問題も出ていますけれども、遊びというような中に、あるいは趣味というようなものの中に、こういう帰属という問題がいろいろ出てくるのではないかという感じがするわけですが、こういうことを行政側でどういうふうに取り上げたらいいかということは、私もちょっとまだわかりませんけれども、この問題につきまして今感じましたことについて申し上げさてせいただきました。

〔 D委員 〕 ボランティアのNPOの関係ですけれども、私自身が社協のボランティアセンターでボランティアコーディネーターを10年ほどしていたのですが、だんだんボランティアの行く先がなくなってきているのです。退職者の特に60過ぎた方がたくさん来られますが、どこにボランティアに行ってもらったらいいか、先がなくなってきた。というのは、社協のは福祉が多いです。今、ボランティアというとほとんど福祉に紹介をするのですが、60を過ぎた人は福祉ボランティアは嫌なのです。

 NPOセンターを作りましてからは、60過ぎた男性の退職された方がどんどん入ってこられて、すごく戦力になっているのです。「なぜ今まで来ないで、NPOになったら来たのですか」と聞くのですが、「NPOだったら何かボランティアしたい、今までのボランティアセンターではすることがなかった」と言うのです。というのは、NPOというのは市民活動であり、市民事業というのもあるのですが、ボランティア活動をする先になる。今までボランティアをしに行くところがなかった人たちがたくさん、そういう市民活動と市民事業に流れて行っているなと思います。

 そのときに、もうお金はいらないから、とにかく自分の今までに得た能力を活かしたいという人を、上手に活動していただくということをやれるコーディネーターというのが、市民事業の中では大切な存在になるのです。

 そんなことを考えますと、ボランティアの幅が広がったのがNPOかと思っています。だから、私自身はボランティアからNPOに移行したときに、突然ぷつっと切れてNPOになったのではなくて、ボランティア自身をずっと引き連れながらNPOに移行しています。

 退職後の「会社人間だった人たち」の上手な活かし方というのが、市民事業の中にはたくさんあるのです。アメリカにたくさんのボランティアがいるということは、たくさんボランティアする先がある。そういうことをNPOの中でいっぱいつくっていけたらなと思っています。

〔 A委員 〕 1つは、これからの我が国というのもちょっとオーバーですが、私たちの国がどうなったらいいのかなという点で言いますと、たしか97年12月3日、行革会議の前文の「はじめに」というところにありましたけれども、私は、あの文章は本当に衝撃的な文章だったのですけれども、そこで書いているのは、国民の統治客体意識からの脱却ということをずっと書いているわけです。このことは、先ほどもいろいろお話がありました、自助努力とか、自立とか、自己責任原則、それを守るためには個人の選択ということですし、それをもっと言うと「国家は民を信じるか」ということが今突きつけられているのだろうと思います。

 今、国は国民を、民を、どうも信じていないのではないか。その一番象徴的なものは、東京に富と情報と権力を集中して再配分するという構造、これはまさにそのことであるし、相続税率が高いとか、所得税率が高いというのも、基本的には民を完全に信じていない、そういう現れだろうと私は思うのです。そういった面からすると、民を徹底的に信じることができるかどうかということが今、一番問われていることだと思います。

 上意下達という今までの……、メディアにおいてもすべて東京発でありますし、すべてのものが東京発。ということは、東京という街がこの国をつくり、東京という街がこの国を迷走させていると言っても過言ではないと思う。それの裏返しを言えば、民を、地域をもっともっと信じるという基本姿勢に国が立てるかどうかということだと私は思います。それは民活、規制緩和ということに結びついている。民活とか規制緩和が前面に出るのではなくて、それは民を信じるかどうかということを問われているのだろうと思います。

 もちろん、それが放任であってはダメであって、監査であるとか、チェックが必要であるし、セーフティネットということも、自由を守るためのセーフティネットであると思うのです。弱者救済ということではなくて、自由を守るのだ。放任にしないためのセーフティネットという考え方が、私は必要だと思います。

 2番目は、先ほどもGNAというお話もありましたが、サスティナブル社会の構築ということが、私はこれからは大きく取り上げていく必要があるのではないかと思うのです。今まではどちらかというと、車の生産台数とか、住宅の着工件数とかというのが、多分、経済企画庁においても基本指標になった。しかし、そういうことが本当にいいのかどうか。サスティナブルというのは、創造・消費・破壊からメンテナンスとか利用という世界にいく。今までの創造・破壊の社会というのが、我が国の持っている固有のものをことごとく破壊してきた時代だったと思うのです。だから、それをもう少しモノを大切にするということでも言うのでしょうか、私、個人的には瀬戸内海の開発とかをやっているのですが、瀬戸内海の島々にはコンビニもありませんし、要するに東京の文化というのにあまり影響されていない。日本独特の文化がまだまだ残っているのです。クーラーもそれほどありません。暑ければ、打ち水を打つ。近所の者も声をかけて、鍵もかけない。そういう生活を本当に楽しんでいる、そういう部分がまだまだある。250年前、300年前というものがまだいっぱい残っている。そういうものを私たちは今、修復をして美術館にしています。そういう日本的な良さというのは、本来、モノを大切にして、長く利用していく。それはメンテナンス、サスティナブルの社会だと私は思うのです。これからはモノ、都市、情報から人へ、もっともっとフォーカスをしていく施策がとられるべきだろうし、それは教育とか、医療とか、福祉とか、リゾートとか、そういったものに対してもっともっと民営の支援、民間へのシフト。本来、そういう産業というのは、パブリックセクターが主体になっていたわけです、教育も、福祉も。そういったものをもっと民間に移管することによって、雇用吸収もある。さらにいえば、人をベースとした世界に持っていく必要があるのだろうと思います。

 あわせて、サスティナブル社会というのは、個人の知恵というものが出しやすい社会だろうと思うのです。新しいものをつくっていくというのは、大変な技術とか生産設備がいる。しかし、サスティナブルというのは、個人の智恵というものがどんどん積み重なっていける。私は、そういう時代だろうと思うのです。また、コミュニティーの問題も、サスティナブルの社会の構築ができれば、自然と地域との連携、あるいはそういったものがどんどん出てくる。先ほども申し上げましたように、個人の智恵を重視する社会ですから、当然、新しいネットワークとかコミュニティーというのが、私は構築されるだろうと思います。

 もう一つは、サスティナブル社会というのは、労働対価の考え方というのが多分変わっていくのではないかと。これは部会長がご専門なので、私のようなしろうとが言うべきではないかもしれませんが、今までの労働対価というのは、時間に対する報酬ということがメインだったと思います。しかし、これからは労働対価というのが報酬プラス生きがいとか、手ごたえというものを足したものになっていく、私はそういう感じがしているのです。人に対するサービスということが大きなウェイトを占めてくるとなれば、今、私が申し上げたような労働に対する対価の考え方も多少変わってくる。そのことが、逆に言えば、今までのような報酬体系、賃金体系だけでなくてもいい。年功序列でもない、年俸制でもない、もっと新しい賃金体系というのができてくるように私は思います。

 もう一点は、先ほど申し上げました、創造から破壊、そこに消費があって、ある面ではキャッシュ・イズ・キングというアメリカ的な文明社会に対する、要するに片方のパワーというのでしょうか、よく言われますけれども、ベルリンの壁が89年でなくなって、いわゆる近代経済が主流になって、ある種のパワー・オブ・バランスとしてあった片方の世界というのがつぶれた、なくなってきたわけです。そのことは、自由主義・資本主義の勝利だというようなとらえ方をしている。しかし、そこに放任といいましょうか、資本主義の横暴さというのがこれからどんどん、私は勢いを増していくような気がするのです。そこをどうガードしていくかというのが、私は「日本的なる文明」と呼んでいるのですが、ヨーロッパ、アメリカに次ぐ日本的な文明というのは、自然というものと本当に共生するといいますか、取り込みながらすばらしい生き方をする、そして、世界で最も長寿の国をつくり上げた、この文明というものに、私はもっともっと国民としても自信を持たないとだめだと思うのです。

 3番目には、日本の固有的なものというのは、堰の切れた自由主義とか資本主義を片方で守るという意味でも、世界に通じる文明に仕上げていかねばならないと、私は個人的に思っているのです。

 あとは、5の「「移民を受け入れても」というのは、私は、我が国の人口1億3,000万近い、今までの歴史をみると明治以来、官の強制力によって増やされた人口の動態だと私は思うのです。もし自然増だったらどうだろうということを、私はまだ勉強していませんけれども、こんな人口になっていないかもしれない。だとすると、身の丈のサイズの人口というのがあるのかもしれない。今の世の中の論調というのは、高齢化社会によって年金の給付の問題もあって、人口減の問題に関して、人口は少なくてもいいのではないかという論議はタブー視されているような感じがしないでもないですが、その辺の論議についてはもっと突っ込んですべきだと私は思うのです。

 では、適正人口ではない人間をどうするのか、私は個人的に、和僑になれと言っているのです。日本という狭い空間を働き・住まいの場所にするのではなくて、所詮、資源のない国ですから、通商国家と同時に、もう一つは世界を股にかけて世界で活躍する。世界に住み、働く。そして、日本有事の際にお金を送る。平生は日本にお金を送る必要はない。そのぐらい徹する国柄になるべきだろうと思います。そういう可能性がある。

 そのためには、そういった人を育てるための教育システムを、例えば、よく言われる英語一つにしても、なかなかしゃべれるようにならない。これは多分、文部省が英語の先生のすげ替えができないからそれができないだけであって、国民のためをいろいろ思えば、当然、もっともっとコミュニケーション能力としての英語能力をやるべきであるのにもかかわらず、対日教組との問題でそれができない、という構図のように私には思えるのです。そういったことについては、もっと率直な論議をしてもいいのではないかと私は思います。

 以上です。

〔 I委員 〕 まず最初に、全体をさっきお聞きしながら感じたのですが、いよいよ経企庁さんもすごいことを始めるなぁというのが率直な印象でありまして、それはなぜかといいますと、これは部会長のご専門ですが、経済的には制度補完型と言われているわけですが、実は社会の構造も含めて今、全部それぞれの制度がそれぞれが補完し合う経済であり、社会だと思うのです。ですから、あるところの考え方とか、制度・システムをいじくると、ほかの制度に影響を与える。それは自分のところだけをよくしても全体がその結果よくならなければ直しても仕方ないということで、結局は、みんなが現状を放置したまま今日、経済的には「この体たらく」みたいなものではないかと思っているわけです。

 そういう意味からいくと、今回、こういう全体に関わる問題を議論するということは、一方では、厚生行政をどうするかという話にもつながっていくし、先ほどから出てる教育の問題をお話しすれば、教育行政をどう考えるかというのも、実はこの委員会でやるのだということになったときに、俗にいう、それぞれの行政の縦割りの中での調整をどうするのかということについて非常に危惧しているわけです。

 私は、もともとが、そういうある意味では特別なプロジェクトを内閣の下につくって、全体の行政を網羅しない限り、様々な改革がもうこれ以上進まないのではないかという思いで普段見ていますから、こういう論議をすること自体は大賛成なのですが、いざ実際にそういう問題が出てきたときに、経企庁としてどうしていくのかということについて少し不安を感じています、というのがまず全体を通しての第一印象です。

 2つ目は、私は、これからこの問題を議論するときに避けられない条件、不可避の与件といいましょうか、そういうものを共通認識を持っておかないと、行きつ戻りつの議論になるのではないかという気がしてならないわけです。例えば、グローバル化は必要ではないということで、江戸時代みたいに鎖国制度に戻って、そういう日本にしていいのだという論議に立てば、これから論議することはがらっと変わってくるわけです。そうすると、グローバル化を是認した場合の考え方と、否定した場合の考え方は全く違ってくる。

 それは、先ほどE委員の方からご指摘のあった、いろいろな変化を前向きにとらえるべきだということに私は全く同感でありまして、これからの議論をするに当たっての、今日もいくつかの資料が出されていますけれども、避けられない条件は何なのか、与えられている条件は何なのかということを明確にした上で議論を進めていかないと、結果的に、例えば経済成長をこれから、率自体がどうかということはあったにしても、私たちから見れば、今働いている人の約8割以上がサラリーマンと言われている時代に、この人たちの安定した生活、いわば雇用が守れない中で、福祉だ、ボランティアだと言ったって、そんなものは考えられないというふうに思うわけです。ですから、失業率がどう動くかという意味では、経済成長率はものすごく気になるわけです。経済は所得の移転によって発展していくわけですから、そういう意味においての失業率を一定に抑えるための前提条件があった上で話をするのか、あるいはその前提条件、つまりこれからは高失業時代を迎えるのかによって、また考え方も変わってくるのだろうと思うのです。

 そういう意味から与えられた条件をいろいろ考えてみますと、例えば、今問題になっている地球環境重視ということからみれば、ここにも触れられているとおり、大量生産・大量消費ということで経済成長を図ってきた今までの日本のやり方は見直そう、それは当然だろうと思うのです。それをあえて言えば、物質的な豊かさを求めてきたけれども、いざ豊かになってみたら、意外にこれはそんなにいいものではない。何か欠けているなぁというのが、今問題になっていること、ある意味では精神的なものなのだろうと思うのです。

 そういうことからすれば、私たちのように働く側からみれば、ある意味でこれからは成長が制限をされて、失業率も今までのように安定した失業率ではなくて、多少失業率が高くなる状況を前提に考えながら、どうしていくかということを考えるかどうかということで、また違ってくるだろう。

 あるいは、少子高齢化ということが今は高齢化で福祉の方ばかりが問題になっていますが、むしろ、少子化における経済活動の停滞というのは、商業を含めて著しいものが既に生命保険業界やホテル業界には現れてきているわけです。だから、そういう問題を経済との関連で考えていかないと、単に少子化で、子供を産めよ増やせ、あるいは高齢化の福祉をどうすればいいかという単純な視点では問題があるのではないかと思うわけです。

 ですから、高失業時代による影響がどのようになっていくかということを考えたときに――実は、ここからが組合のリーダーでもものの考え方が違ってくるわけで、日本の組合運動の普遍的な考え方としてはお聞きいただきたくないもののあえて申し上げたいわけでありますが――、今様々にある社会的な制度や経済の仕組みについて、認めるものはどんどん認めて取り入れていこうという割り切りをするのは、あえて言えば、私はたまたま今、電機産業の組合にいますから、電機産業がこれからグローバル化の中でどうやって生き抜いていく、つまり組合員の雇用をどうやって守れるかという意味での様々な施策に共鳴しているだけであります。ですから、そういうようなことを前提にしながら、福祉や教育の問題や様々なここに掲げられていることを議論していくべきではないかという思いがしてならない。

 そうしないと、ある現象の面だけの論議をすると、それは賛否両論。それは置いている前提が違っているということはこれから起こり得ることではないかいう気がしますから、今日出されたような資料を含めて、今後の討議を進めるにあたって、どれがある意味ではもう避けられない条件であって、その中でどうしていくのか。あるいは、これはこういうふうにやれば前提条件として考えなくていいのではないか、というようなことは整理した上で議論した方がいいのではないかという気がいたしました。

 以上です。

〔 C委員 〕 ちょっと付け加えますと、まず、皆さんの認識は同じだと思いますけれども、3つの大きな改革といわれている明治維新と、戦後の改革と、今度の第3の改革。本当にそうであれば、もっと危機感があってもいいと思います。明治維新というものがなかったらどうなったかということです。戦後、大量生産・大量消費社会に変わることができなかったら、戦前の構造のまま残っていたらどうなったかということを考えれば、かなり大きなダメージを受けたでしょう。その前者の場合は、西欧の各国の支配の下に植民地化したでしょう。その後者の戦後は、非常に出遅れている発展途上国の地位から卒業しなかったかもしれない。構造改革は、本当にこれぐらい大きな死活の問題だと私は思っています。

 今、賛否両論、何を守るか、何を目指すかという段階の話より深刻だと思っています。日本の経済の成長率は、この8年間、イギリスのサッチャー政権の誕生の78年よりずっと悪いです。その前のイギリスの平均成長率は、10年間の平均成長率は2.3%です。日本のこの8年間は、せいぜい0.5%。それはいろいろな意味で無理がありました、特に財政の面で無理がありました。ですから、私は個人的にもっと危機感を持っています。

 日本は物質的に豊かになって、それよりもっと精神的なものを追求しようということも、本当に日本の物質的な豊かさをこれから維持できるかという大きな疑問を持っています、正直に言いますと。

 このままいけば、物質的な豊かさ、精神的な豊かさではなくて、かなり大きなトレンド変化で、国民の生活水準はかなり下がるのではないかと思っています。

 そういうことで、特に40歳、50歳、60歳の方は、物質的な豊かさをもう肯定されていると思っていらっしゃるかもしれないですけれども、日本の若者・20歳代の人々は、本当にその自信があるか。私の意見は、この構造改革は、20代あるいは今の10代の人々が将来の日本に自信を持つという目標があると思っています。

 人口問題も、出生率がこんなに下がっているのは、みんな、その余裕はないじゃないかと思っているのです。日本の普通のサラリーマン、一流会社で働いてもどのくらい物質的な余裕、金融的な余裕があるか、私はそれは非常に狭いと思っています。ですから、物質的な豊かさを前提にして本当にいいのか、という大きな疑問を持っています。

 以上です。

〔 D委員 〕 A委員がおっしゃった、国家は民を信じるかということ。民というのは、国家というか、行政を信じていて、大震災のときに、これではいけないということを阪神間の市民たちは思ったわけです。それで、私たちは、自分たちでできることをやっていって、それで市民もやるべきではないかと、それこそ「べき」だったのです。

 市民が今まで、すべてを行政に任せてきて、それでよかったのだろうかという反省がすごくありまして、何年も考えた後にNPOセンターなるものをつくったのですが、それはまさしく私たち市民が自分たちの街をどうするのかということから前進しようということが始まりでした。ここら辺が、あと10年たったらもっと、民主主義とは何かとか、自分のやるべきことは何なのだろうかということが、例えば教育なり、研修なりで変わっていけば、かなり国民一人ひとりの意識が変わっていくのではないか。

 私たちはあまりにも任せすぎたという反省の下、自分たちでできることを模索している中で、NPOというのはまちづくりだったのだなぁということを、1年たって、手さぐりをしながらわかってきたのです。

 一人ひとりの国民の意識が10年後変われば、ある意味で、国からも発信し、また一人ひとりから発信するということで、10年後にはうまくなっていってるかなと思います。

〔 A委員 〕 今、D委員が言われた意見に私は全く賛成で、国はディレクションを示し、それを実行するのは、私は市民であり地域だろうと思います。

 今までの我が国というのは、この国をよくするために国が、あるいは政府が、いわゆる東京が、そこが先ほど申し上げましたように資源を再配分して、非常に急速に世界に冠たる国が短いスピードでできた。しかし、これからは地域に主体を持ってくる。

 私自身も最近のいろいろな経験で、岡山の市長選、これは市民が本当に主体になって、政党が全く後に出て、いくつもの市民団体が「今のままではだめだ、都市が空洞化する」ということで、現職を破って新しい市長が誕生したわけです。

 あるいは、私たちの仲間が十数年まちづくりをやり、路面電車を環状化しながら、ほかの都市にない街をつくろうではないか、そういう動きがあるのです。

 かつての我が国の高度成長の時代というのは、我々の父親・先輩たちが、自分たちのやっていることは本当に国のためになっているのだ、そういう1つの手ごたえを感じながら苦しい仕事をやってきたのだろうと思います。

 国民にとって、この国を良くしていこうという、1つの参加者としての手ごたえを感じられていないのだろうと思うのです。私は、国民に、この国を世界に冠たる国にしようとしている、その一翼を担っている、その手ごたえと実感を感じてもらうということがまさに地域づくりだと思います。住民参加による地域づくり。その地域づくりに関しては、官はお金は出すけれども、口は出さない。地域住民によってその地域に最もふさわしい地域をつくっていく、そういったことをもっともっと奨励をしていく。

 予算も、公共投資の予算よりも、地域開発のための予算をどーんと与える。そのことによって地域住民が地域に即した地域開発を、地域の行政とともにやっていく、そういう形をとることは私は大変に大事だと思うのです。

 一人ひとりの国民が少しでもいいから、国の決めたディレクションに従って参画をしているという手ごたえをどう持たせるか、そのことが、先ほど申し上げましたように、国が民を信じているかどうかということの、私は裏返しだと思っています。

〔 G委員 〕 今の、国家は民を信じているかという話ですが、21世紀というのは、多分、地域からものを言い出すというのですか、その土地に住んでいる人がその土地を一番愛しているわけですし、一番その土地のことがわかっている。ですから、地方が今何を必要としているのか、それは地方から言いだして、それに行政が支援をしていくという、そんなことかなと思っています。

 エアドウーというのも、まさにそういう世界から誕生してきたわけでありまして、21世紀の北海道を考えときに、今何が必要なのか。アクセスの問題でありまして、時間ではない、経済的な距離をどういうふうに縮めていくか。北海道と首都圏、あるいは北海道と全国主要都市とのアクセスの利便性というものが絶対必要だ、その本当に道民一人ひとりの思いが実現をさせてきたのだと思います。

 お金の使い方もそうですけれども、地方から言い出して、言い出した人たちがお金を出す。それに国が支援をしていくとか、行政が支援をしていくとかいうことですと、お金の使い方というものもかなり変わってくるのではないかと思います。

 そういう面では、先ほど来の議論がございますけれども、これからは全部中央で考えるのではなくて、地方のことは地方に考えさせる。いいものであれば、それに対しどう支援をしていくかという、そんなことではないかと思います。

 その活力というのは、地方にまだまだ十分あると私は思います。そういう意見が述べられるといいますか、そういうことが言い出せる環境がこれから非常に大事になるのではないかと思います。

〔 部会長 〕 一通りご意見を伺ってまいりました。また後のセッションでもご意見を伺いたいと思いますが、「『あるべき姿』における我が国の国家像をどう考えるか」という全般についてのご議論はこのあたりにしたいと思います。

 皆さんからいろいろ貴重な意見を伺いまして、確かに、C委員の言われるように、例えば明治維新以前の日本と、あるいは戦前と戦後の日本と、ものすごく姿は違うわけですから、今回の構造改革でも、そのぐらいの姿の違いが出てくる可能性はあるのではないかという気はいたします。

 私の専門分野の雇用の面でいいましても、50年前といいますかもうちょっと前の戦前期の日本の企業の、例えば賃金体系あるいは雇用の流動性というのは、現在のそれとは全く違うわけですから、いわゆる日本的雇用制度というものも、日本の文化に根ざしているとか、昔からあるとかというものではなくて、ある面でいえば、そのときどきの環境に合わせて、日本の労使がつくり上げてきたものだと思います。そういう面でいうと、E委員が言われたように、外部の環境変化をどのくらいドラスティックに我々が受け止めるかどうかということだと思います。

 その点では、人口構造の変化というのはものすごく大きい変化が起きることはわかっているわけですから、そのぐらいの大きな変化が起きるということを前提に議論した方がいいのではないかと思います。

 その点では、先ほどI委員の方からもちょっとお願いがあったと思いますけれども、我々の議論の前提とすべきような経済社会の構造変化、例えば人口であるとか企業を取り巻く競争構造の変化、あるいはもうちょっと言いますと人々の意識、豊かさをどういうところに感じるようになっているかというようなことについて、できれば事務局の方で今後整理していただければと思います。

 それでは、時間の関係もございますので、次に、本部会固有の検討テーマについて、ご意見をいただきたいと思います。

 まず、事務局より、その点について説明いただきたいと思います。

〔 福島推進室長 〕 資料6をご覧いただきたいと思います。「国民生活文化部会について(案)」でございます。

 1が、今ご議論いただきました「『あるべき姿』における我が国の国家像」についての議論でございます。そういった全体像を受けて、国民生活文化部会でどういうようなテーマについて検討していくかということを書いてございます。

 2に、「国民生活文化部会固有の検討テーマ」としております。最初に、・「国民生活と文化に関する「あるべき姿」となっていまして、「我が国は、急速な少子・高齢化や規格大量生産から多様化、個性化の時代へと大きな環境変化を迎えている。こうした時代の転換期の中で、国民生活・文化に関する『あるべき姿』とはどのようなものになるか。」というテーマでございます。

 これに即しまして、(検討の視点の例)として2つ柱を立てております。

 ○ 終身雇用制度等の日本的雇用慣行が変化しつつあり、「会社人間」からの脱却が求められる。また、女性の社会進出も進んでいる。今後形成される新しい社会システムはど のようなものか。そうした中で、人々はどこに帰属先を求めるのか。家族や地域、NPO等、新たな人々のネットワークはどのように構築されるのか。

○ 急速な少子・高齢化の中で、国民は年金・医療、介護等の社会保障制度や雇用がどのようになるのかと不安を抱いている。国民生活の将来の不安を払拭するために、自助努力と安全ネットをどのようにバランスさせながら築いていけばよいのか。

という2つの視点の例を挙げております。

 これらを踏まえまして、(2)では「個別検討項目」として書いてございます。①として、「人々を結びつける新たな機能の構築」ということでございます。

「イ.人々を結びつける機能として、企業、家族の役割はどう変化していくか、また、それらに代わって人々を結びつける機能を果たす新たな社会システムはどのように形成され、それをとりまく文化はどのように創造されていくのかについて検討する。」

「ロ.地域活動、ボランティア等の役割」、企業、家族という役割以外にも、先ほどからのお話にもございますような地域活動とかボランティアという役割がどのようなものになっていくのか。

 「ハ.人材育成、教育における新たなネットワークの構築について」、この新しい社会システムを支えていく人材を育成する、あるいは教育のあり方というものがどういうものかということでございます。

 ②として、「国民生活における社会保障制度」ということでございます。

 「イ.年金制度と雇用システム」とございますが、現在、年金制度の改革の方向というのが年金審議会をはじめ議論されていまして、そういった改革の方向と高齢者雇用との関係をどう考えるか検討してみたいということであります。

 それから、年金制度のあり方として、国民の生活というものを経済的な側面から考えていく必要があるのではないかということで、公的年金のみならず企業年金等の私的年金をも考慮に入れた全体的な視点から検討を行うということであります。

 「ロ.医療と介護の相互関係」とございますが、介護保険制度の導入ということが予定されていますけれども、医療と介護というのは非常に密接な関係をもつサービスですので、そういったものの関連を考えながらどのようにそういったサービスを提供していくのか、そのサービス基盤の整備のあり方について検討するということであります。

 ③としては、「高齢者の雇用・社会参加」ということでございます。先ほど、年金制度の改革の方向とあわせて高齢者の雇用を考えるということでございましたけれども、ここではもう少し広い形で、高齢者等――女性もここに入ってくるかと思います――の意欲が発揮される社会システムとはどのようなものかということで、雇用・就業やNPO活動などを通じた社会参加が促進され、その意欲と能力を十分に発揮できる社会システムをどのように設計していくかを検討するということであります。

 次に、3の「審議スケジュール」でございますけれども、本日第1回・2月10日「あるべき姿、基本理念について、部会の検討内容について」の議論をいただきまして、以下、月に2回程度のペースで、今ご説明しましたようなテーマをそれぞれ割り当てて検討していきたいと考えておりまして、5月に入りまして、とりまとめということを考えております。

 また、各回の進め方でありますけれども、それぞれのテーマにつきまして、基本的にはこの部会の外からプレゼンテーションを行っていただく識者の方を1人か2人お願いいたしまして、それにつきまして各委員から討議をいただくというような形を考えております。

 以上でございます。

〔 部会長 〕 ありがとうございました。

 それでは、ただいまのご説明を踏まえまして、本部会の固有のテーマについてご議論いただきたいと思います。どなたからでも、どうぞ。

〔 H委員 〕 この部会に与えられたテーマの中で、「人口、教育、環境、資源、社会保障等が経済に与える影響」ということでご説明がありましたが、今お話を伺っている中で、環境・資源という問題をこの部会でどういう形で取り上げられるかということが、ちょっと明確でないような気がするわけでございます。

 私自身の体験を通じて申し上げますと、現在の市町村行政というものの大きな課題は、廃棄物処理の問題ではないかと思うわけです。最近も、ダイオキシンの問題がいろいろあちこちに出ておりますが、そのほか、海面の埋め立てに伴って渡り鳥の干潟がなくなってしまうとか、そのほかいろいろな形で廃棄物の処理に伴う地方の自治体の行政というものが大きな課題を背負っているという感じがするわけでございます。環境という問題と廃棄物の問題。

 廃棄物というものは、最終的には経済の消費活動と密接に絡んでくる問題でして、大量生産大量消費という経済構造の中からはこれからも、どんどん廃棄物は出てくる。この廃棄物をどのように処理するかという問題で、自治体では、例えば分別収集の問題、あるいはリサイクルの問題という形で取り組んでいますが、これはこういうことを言ってはいけないかもしれませんが、どちらかというと補助的なやり方ではないか。抜本的な対策として、それですむのかなという感じがするわけです。

 これから10年という経済の「あるべき姿」というものを、この審議会でご議論されるとするならば、廃棄物処理の問題、これに伴う経済活動というものを抜きにしてはなかなか難しいのではないかという感じがするわけで、この辺をぜひお取り上げいただきたいと思うわけでございます。

〔 高橋審議官 〕 今ご指摘になりました廃棄物問題は、確かに重要な問題だろうと思っております。資料4「各部会の検討内容について」で、「環境、資源」というのが当部会として特記されていますが、その後、事務局の中でもいろいろ議論をして、いろいろな角度からの取り上げ方があるのかなということで、特に廃棄物の問題、あるいは最近特に重要なリサイクルの問題、こういった問題については構造改革推進部会の中で取り上げてみようかという形で今、整理しております。同時に、既にこの点については私どもは別の勉強会をやっておりまして、かなり話が進んでいますので、そちらの方でご議論いただいて、それを必要に応じてご報告申し上げる、そのような形にしてはどうかと思っております。

〔 G委員 〕 具体的な検討テーマの中に、国民生活文化部会として食の問題です。環境も、非常に今後の重要な問題でありますけれども、多分、21世紀というのは食の分配論議といいますか、これが大きな地球上のテーマになってくるだろう。今の我々の食生活をそのまま維持していくということが難しいのではないだろうかという心配があるわけです。食と農というのは、まさに命と生活のベースの部分でありますので、その辺をどういうふうに考えていくかという視点も1つ必要だろうと思います。

〔 A委員 〕 (検討の視点の例)で、(2)の①にも関係すると思いますが、「人々はどこに帰属先を求めるのか」。先ほどもちょっと申し上げたのですが、私は3つの"チ縁#と呼んでいるのですが、ブラッド・家族とかの血縁、場所とか住まいとかの地縁、もう一つはナレッジの知恵の知縁、その3つの"チ縁#を、分離させるのではなくて、どううまく組み合わせるかだと思うのです。ヨーロッパやアメリカ社会はそこに、多分、宗教のようなものが入ってくるのでしょうけれども、知縁という、インテリジェンスによる縁というのは、逃げることができるわけです。宗教のようなものはなかなか逃げることができない。そういった面で、私は、これからのインターネット社会とか、新しいテクノロジーを利用した中で、家族の縁というのはなかなか逃げることができない。しかし、拠りどころでありたい。場所も、なかなか逃げることはできないけれども……、要するに人間というのは、1つ逃げる場所がほしい、そういう拠りどころというのは私は裏腹のように思うのです。そういった面を考えた場合に、ナレッジ縁というのが1つのキーワードになるかなと思いました。

 これは、先ほどちょっと申し上げました、地域のまちおこしとか、NPOに参加とか、ボランティアに参加とか、そういった興味・関心というナレッジによる縁というわけですから、それは非常に思いました。

 もう一つは、自助努力、安全ネットの問題について言いますと、自助努力に関しては、例えば、私はこの自助努力の部分で特に感じるのは、先ほども申し上げた、国民の統治客体意識に対する過度の依存度というのは、多くは福祉の分野でそれが形成されているように思うのです。その福祉の部分というのは、今までの弱者対象の福祉から、普遍化していく福祉。これは、障害者福祉、高齢者福祉、保育も含めて、そういう福祉になっていくのだろうと思います。その場合に、普遍的な問題として考えた場合に、それは福祉が施しからサービスに転換していくのがこれからの時代であると思いますし、そういった中での自助努力をどうしていくかということが、私は非常に大きな問題だと思います。

 ちょうど2000年から公的介護保険が実施されると聞いていますけれども、そのような場合でも、バブル崩壊後の最初の福祉の制度でありますから、まさに自助努力というものを、もっと言えば国民の選択に委ねる福祉ということを、もっともっと推進していくような制度と仕掛けを作っていくべきだろうと思います。

 今回の場合、介護保険も、福祉制度も、社会保障制度審議会の基礎構造改革委員会に私も参加させていただいていますが、事業者補助から利用者補助へしていく。これは所得移転をしていくということです。それを介護保険でやっていこう。しかし、介護保険でできるサービスというのは決して十分ではないです。福祉をサービスとする場合は、個人がよりよいサービスが求められる仕掛けにしておかねばならない。とすれば、現在、厚生省が考えておられるようなケアプランに基づく画一的なサービスになりがちな制度よりも、個人に原資を渡しきるという、いつも私は申し上げているのですが、バウチャーとか利用券の制度を導入することによって、個人の自助努力とか自己責任を促すような制度・仕掛けというものをぜひしていただきたい。

 あわせて、私費の問題がありますけれども、私年金もどんどん積極的に支援を大蔵省もしていただきたい。例えば、今の生命保険、保険に関して日本人が今、年間70万円ぐらい、1家族で保険に入っているといわれています。ということは、それだけ生命保険会社、損保会社もお金があるわけです。そのお金の多くは、アメリカの国債を買っているという状況で、橋本総理がそういうことを言うと、アメリカにいろいろ言われるような、今そういう状況になっている。しかし、そのアメリカの国債を買っているお金を多少なりとも生前給付という形に誘導することができれば、今の財政の部分も相当、私は国民の負担を軽減するといいましょうか、サービスレベルを高めることができる。そういったことも私はぜひ考えていただきたいと思います。

 また、公設民営という考え方。今、地方においては地方財政が厳しくなって、起債制限ということがどんどん言われて、地方債を発行できなくなっているわけです。そういう問題も、建物をパブリックセクター・市町村が建てて、それを社会法人とか民間企業に貸与するという形だと、全く地方債を発行しても問題ないわけです。今の例えばゴールドプランというのは、厚生省のお金を使わないと厚生省に報告義務がないから、必要なベッド数を確保しているかいないかを国がカウントできないから、厚生省の金を使わないとだめだという。そういう非常におかしな構造になっている。厚生省のお金を使おうが、建設省のお金を使おうが、地方自治体が起債をして建てようが、そんなものは一切どうでもいいと、そういったことをもっともっとすることによって、国のお金を使うことではなくて、国民から介護保険に相当するバウチャー、プラス・アルファのお金を、リバース・モーゲージみたいな考え方もありますけれども、そういう形でどんどん工夫をしてもらいたいと思うのです。そうすることによって、自助努力というのはもっともっと促進されるでしょう。

 安全ネットというのも、今、第1種の福祉事業というのは入所ということになっています。入所というのは、特別養護老人ホームとかいう入所です。入所に関しては、民間はできないことになっている。第2種という在宅にはできる。そういったことも非常におかしな区分けになっている。逆に言えば、セーフティネットとしての素地として弱者救済の部分、守らなければだめな部分に関しては、きちんと国とかパブリックセクターが今までの措置制度でやる。しかし、それは一部である。大部分の普遍的なものは、第2種のような形で多くの国民を受け入れる、そういう枠組みも私はぜひつくっていかなければならないと思います。

 そうすることが、ハに「人材育成、教育」とあるのですが、人材の育成とか教育をしても、受皿がなければ意味がない。21世紀における最も雇用吸収の市場としてあるのは、私は福祉の分野だと思います。その分野に関して、もっともっと民間も参入できるようなことを、大胆に進めていただきたいと思うのです。この部分というのは、既得権のいろいろな勢力がありますから、なかなか難しい面はあるのでしょうけれども、しかし、既得権である社会法人とうまく携えてやっていくことによって、私は十分にできるだろうと思います。その辺のことも配慮いただいたらと思うのです。

〔 E委員 〕 私は、先ほどのC委員のご意見に大賛成で、今相当改革が迫られていると思います。日本の今持てるよい資源を活かすためにも改革が必要ですが、なかなかその改革が先送りされ続けていて……、というのは、その改革は抵抗を伴うが故に先送りされているという気持ちを持っています。

 それからこの審議スケジュールを見ますと、ちょっと違和感を感じます。高齢者であるとか、福祉、年金というところにわりとシフトしているのです。本当は、今の転換期で議論すべきことというのは、例えば、これからのガバナンスのあり方であるとか、受益と負担の関係であるとか、社会の中での移動性の確保であるとか、地方と中央の問題とか、そういうことだと思うのです。

 ですから、ここに掲げられているテーマも、これをきっかけにして議論していけば、大テーマにぶつかる話ではあるのですけれども、例えば「高齢者等の意欲と能力」というあたりも、本気で議論すれば、高齢者だけの問題ではなくて、現役時代からの働き方を大きく変えるという話になるわけですから、大きい話には結びついていくのですが、下手をすると、どうもこれまで議論をしてきたことの積み重ねで報告ができてしまうという懸念がないわけではないと思っております。

 やはり、議論すべきは、かなり大きいシステム変革なのではないかと、それを念頭にくれぐれも置いておいた方がいいのではないかと思います。

〔 部会長 〕 私も、そのように思っております。

 今、E委員からもご指摘がございますけれども、この部会での固有の検討テーマというのは、ここに出ているのは案ですから、これ以外にもっと大切な問題があるのではないか、あるいはこんな問題はそんなに時間をかけて議論をする必要はないのではないかというようなご意見もぜひ、最初の会でございますので、皆さんからご意見を承りたいと思いますので、そのあたりについて何かコメントはございませんでしょうか。

 I委員、いかがですか。

〔 I委員 〕 私も、E委員の意見に賛成です。そういう意味で議論すればいいかと思っております。

〔 部会長 〕 C委員は、何か付け加えられることがございますか。

〔 C委員 〕 そのとおりだと思います。今何が問題かということから始まりますと、経済の行き詰まり、制度疲労です。ですから、その疲労になった制度の部分に対して、どういう提案を出せるかが一番関心のポイントではないかと、私は個人的に思っております。

〔 部会長 〕 今、E委員もちょっと言われましたが、ここにある項目というのは、これらについて何らかの結論を出すということも大切なのですけれども、恐らく、こういうところの議論を通じて新たな問題が見えてくる。例えば、高齢者のもっと活躍できるような仕組みとはどういう仕組みなのかということを考えると、実は「会社人間」のあり方そのものを問い直さないといけないというようなことが、多分、出てくると思います。恐らく、年金の問題などを考えれば、例えば負担と給付の今の仕組みをもっと抜本的に変える必要があるとか、あるいはこういうようなことは別な仕組みを新たに考えた方がいいのだとかというようなことも出てくるかもしれない。

 私も、ここに出てきている項目はみんなそれぞれ大切な項目で、またそれぞれ深めていけば非常におもしろいテーマだと思いますが、恐らく、このスケジュールの中ですべて深めて十分な結論を得るということはなかなか難しいかと思いますから、その辺は議論をしながら、追々、まさにどこにウェイトを置くべきかということを発見すること自体も非常に大切なことではないかと思います。

〔 高橋審議官 〕 今いろいろご意見いただきまして、大変ありがとうございます。部会長あるいは部会長代理ともいろいろご相談をしながら、この検討テーマについてもう少し深めていきたいと思います。

 もう少したちますと、大臣が国会から戻ってまいりまして、挨拶を差し上げることになると思いますが、かねて堺屋長官自身は、歴史的な変革の中にあって、その歴史的な変革をどういうふうに認識して、またそれに即応したシステムをどうやって形成していくか、作るか、要するにそういうシステムの大きな問題として問題をとらえていただくことが経済審議会では大変重要ではないかということを言っておられますので、またそういった観点に立って当部会でも議論を進めていただけるように、事務当局としてもご相談させて頂きながらやっていきたいと思いますので、ここに書いてある言葉そのものにこだわってやるということではなくやりたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

〔 部会長 〕 この進め方についても議論していただいた方がいいかと思うのですが、先ほど事務局の方から、各回のテーマ、1回に1~2人の識者からプレゼンテーションをいただくということでございましたけれども、恐らくこれも、先ほどE委員が言われたように、あらゆる問題に対立軸があるわけですから、意見の多少というか、かなりはっきりと異なる方をお2人ぐらい呼んでプレゼンテーションをいただいて、議論するというようなことも、そういう方が来てくださるかどうかはわかりませんけれども、考えていただければと思います。

 このスケジュールとか、討議の進め方等についても何かサジェスチョンとかご意見がございましたら、お願いしたいと思います。

〔 E委員 〕 今日、いろいろなご意見が出て、よく整理するといくつか議論すべきことがあると思うのです。例えば、格差を容認するのかというようなことです。それから、民間に本当に委ねられるのか。何だかんだ言いながらも、日本はお上にどこかで依存しているようなところがあって、本当に民に委ねきれるのか。いくつか重要なポイントは出てきているように思うのです。それから、地方と東京といっても、本当に言われているような格差があるのかとか、いくつかあると思いますので、それぞれ素材はあると思いますが、それぞれの素材の中で今回はここはきっちり議論しようというようなことを、1つポイントを決めるというのは重要だと思うのです。

 よく議論されるのは、「そんなにアメリカがいいのか」とずいぶん言われるわけですけれども、これもやはりきちんと議論すべきことで、アメリカ型がいいのかということが極めていい加減な形で、例えば規制緩和の批判のような形でも言われたりもするのですが、そういうこともきっちりとこの中でも十分に議論することが必要だと思います。

 それから、あまり外部から呼んできてヒアリングをして、何となくまとめるというよりも、最初の1、2回は、今いろいろご意見があったものの中から、わりと今世の中で対立的にとらえられているようなもの、これまでのシステムを大きく変えることにつながるイデオロギー的な部分といいますか、そういうところで議論してもいいのではないかと思います。

〔 部会長 〕 その辺は、いかがでしょうか。

〔 A委員 〕 今E委員が言われたように、対立軸の比較をするものは経企庁でもいろいろな資料を作っていただいたらいいのではないかと思うのです。例えば福祉の分野においても、官と民のサービスのコスト比較のデータ、大蔵省で作ったものですか、そういったものがベースになって論議が進んだわけです。対立軸にあるものは、何かデータ的なものを出していただいたら進むかなと思います。

〔 部会長 〕 事務局の方はいかがでしょうか。スケジュールですと、部会のとりまとめという最後のところで、全体の議論をまたするという形になっているようですが、今、E委員の方からご提案がございましたし、A委員の方もサポートがあったかと思うのですが、例えば、次回ぐらいの会議をそういった対立軸についての我々のディスカッションに充てるとか、そういうようなことはいかがでしょうか。

〔 高橋審議官 〕 もう一回考えてみたいと思いますが、実は、いろいろな対立軸というのは、この部会だけではなくて、すべての部会にまたがる問題だろうと思います。ですから、今日ご議論いただいたところは、基本理念委員会あるいは企画部会でもう一回整理をしていただいて、それをもう一回フィードバックして議論してもらう。要するに、ここだけの議論ではなくて、ほかの観点からみてどうかといったところも含めてご議論いただく、そういうような機会を設けてはどうかとは思っております。

 それから、外部からの識者を呼ぶというのも、実は、先ほどお話のありましたシステムをどういうふうに変革するかということについて、そういう大きなシステムの変革について具体的な意見を持っている方にお出でいただいて、それを軸にしてご議論いただいてはどうか。例えば、そのように考えているわけです。

 全般的にご説明申し上げて、ご議論いただくということになると、なかなか議論が煮詰まらないので、そのようなことをしてみてはどうかと。ただ、全体的な日程とかの組み合わせにつきましては、一番都合のいいやり方を部会長とご相談しながら考えてみたいと思います。

〔 部会長 〕 そうしましたら、その点は、先ほど何人かの委員の方から、その前提になるような条件を確定しておいた方がいいというようなご意見もございましたし、それから我々の中でもこれは別に意見を一致させる必要はないわけですが、どういう論点がであろうかという、少なくともそれぞれの論点についての一致はなくても、どの論点が重要だということについて、ある程度の枠組みを決めておいた方がいいと思いますので、事務局の方と相談させていただいて、そのようなスケジュールが可能かどうか検討させていただきたいと思います。

 それから、今、E委員が言われたように、こういうテーマですから、あまり無理に結果をまとめるとか、形を整えるというのは、むしろ趣旨ではないかと思いますので、できるだけここで自由に議論して、何かおもしろいアイデアが出てきたらいいな、そういう感じで進めさせていただきたいと思います。

 それでは、ただいまの「検討させていただく」というところも含めまして、この部会の進め方については、おおむねの了承をいただいたというふうに考えさせていただきたいと思います。

 まだいろいろご意見があろうかと思いますが、時間の関係もございますので、本日のディスカッション自体は、ここまでとさせていただきたいと思います。

 特に今日議論いたしました資料6の1及び2での論点については、かなり基本的で幅広いものでございますが、今後、今のお話にもありましたように、できるだけ早急に議事を進めたいと思いますので、大変恐縮ではございますが、できましたら2月末ぐらいまでに、皆さん方の何かアイデアをメモにして事務局の方まで送っていただけると大変ありがたいということでございます。

 それでは、大臣が見える前に、次回の日程について事務局よりご説明いただきたいと思います。

〔 福島推進室長 〕 次回につきましては2月25日木曜日の午前10時から12時まで、場所は経済企画庁内、7階の方になりまして、708、709の会議室を予定しております。開催通知につきましては別途また郵送でご案内させていただきますのでよろしくお願いいたします。

〔 部会長 〕 メモは、メールでも、ファックスでも、手紙でも、どんな形でもいいということですね。

 そのアドレスは、どこかに書いてありますか。

〔 福島推進室長 〕 それもまたきちんとご案内させていただきます。

〔 高橋審議官 〕 12時30分に国会が終わって、大臣が今駆けつけていまして、今まいりますのでちょっとお待ちください。ぜひ大臣のこの審議会に対する考え方というのをお伝えしたいということですので、恐縮でございますが、よろしくお願いいたします。

 部会長からちょっとお話がありましたが、メモというのは、先ほどの論点の1の「あるべき姿」、まずここについてのご意見をお出しいただけたらありがたいということ。それから、固有のテーマについても、また今日お話しいただけなかったところ、あるいはお話しいただいたことについてもう一回まとめていただければありがたいと思います。それから、今度の議題に関して、もしゲストを呼ぶならば、この人の話を聞いたらこの部会としては大変生産的ではないか、貢献ができるのではないかということがございましたら、ぜひそれも含めてご推薦いただけたらと思います。

〔 部会長 〕 それでは、堺屋大臣が到着されましたので、恐縮ですけれども、早速ですが、ご挨拶いただきたいと思います。

〔 堺屋経済企画庁長官 〕 どうも遅くなりました。つい今まで、国会の答弁がございましたので、すぐ帰ってきたのですが、皆様方をお待たせすることになりまして、申しわけございませんでした。

 この経済審議会は、総理大臣直属の諮問機関でございまして、日本の経済計画を従来作成してまいりました。その中で、従来は経済計画という形で、所得倍増計画以来、5カ年計画というようなかっちりとしたものを作ってまいったのですけれども、もう計画経済の時代でないから、今回は「あるべき姿」と、それに至る道程、政策ということで、10年程度というかなり長期にわたる日本の姿を皆様方に描いていただきたいということになりました。

 その中で、5つの部会をつくったわけでございますが、既にご説明申し上げていると思いますけれども、特に生活文化という点につきまして、これからの国民生活、これは少子・高齢化の問題もあれば、家族や教育の問題、あるいは地域社会の問題もございますが、そういった広い観点から一つ言及していただきたい、ご意見を伺うということにいたしました。

 従来の経済計画とは、一味も二味も違うところでございますけれども、年金の問題、人口構造の問題を含めて、日本の将来を考える中では大変重要な分野が、生活と社会がどう変わっていくか、文化がどのように変わっていくかという点だと思います。

 つきましては、この部会におきまして、日本人の考え方、これが少子・高齢化の中でどのように変わっていくものだろうか、そして、夢と安心が両立する社会がどのようにつくられるか、つくり得るのか、こういうことをお考えいただきたいと思っております。

 また、それにあわせまして大変重要な問題として、生活文化が変化する中で外国人の移民も含めて労働力をどのように確保しいてくか、あるいは女性・高齢者の立場をどのように考えていくか、非常に幅広い問題がございます。単なる数値だけではなしに、心理的な影響も非常に将来の日本には重要な要素になってくるのではないかと考えております。

 特に、この委員会は、多様な先生方にお願いしておりまして、ご自由な意見を出していただきたいと思っております。これまでの政府の、主として事務局の資料を説明するようなものと違って、皆様方の方から自由に発言していただくと同時に、それぞれの専門的な分野、あるいは従来の経験を踏まえて積極的に、文章、数値あるいはご意見を出していただければ幸いと思っております。

 本来ならば、この部会は、私が最初から出席して皆様方のご意見を伺いたかったのでございますけれども、今日は参議院の本会議、衆議院の商工委員会とつながりまして、またすぐこの後、午後から再開ということになっておりますので、恐縮でございます。皆様方の討論は、後ほど、事務局からの報告でよく聞かせていただきます。

 大変にありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。

〔 部会長 〕 大臣、どうもありがとうございました。

 それでは、ただいまの堺屋大臣のご挨拶をもちまして、第1回の国民生活文化部会の審議は終了させていただきたいと思います。

 なお、本日の審議内容等については、私の方からこの後、記者クラブにおきまして若干のブリーフィングをさせていただきたいと思っておりますので、よろしくご了承いただきたいと思います。

 本日は長時間どうもありがとうございました。

(以上)