第1回経済審議会地域経済・社会資本部会議事概要

  1. 日時 :平成11年2月8日(月)15:30~17:30
  2. 場所 :経済企画庁共用特別第一会議室(404)(第4合同庁舎4F)
  3. 出席者
    (部会)
    森地茂部会長
    安土敏、石川嘉延、井上繁、北村浩子、小林重敬、坂本多旦、中邨秀雄、長谷川逸子、林淳司、溝口薫平の各委員
    (事務局)
    堺屋経済企画庁長官、今井政務次官、塩谷事務次官、林官房長、中名生総合計画局長、高橋審議官、牛嶋審議官、梅村企画課長、大西計画課長、林部計画官、 安井計画官、涌野計画官、染川計画官、佐久間計画官、渡辺電源開発官、福島推進室長、岩瀬計画企画官
  4. 議題
    • 地域経済・社会資本部会の公開について
    • 地域経済・社会資本部会の今後の進め方について
  5. 議事内容

     事務局から資料2「地域経済・社会資本部会の公開について(案)」、資料3「「新なる時代の姿と政策方針」の諮問文」、資料4「経済審議会の今後の運営について」、資料5「「新たなる時代の姿と政策方針」の策定手法の多様化について」、資料6「地域経済・社会資本部会の進め方について(案)」(別紙「「あるべき姿」における我が国の国家像をどう考えるか」を含む。)について説明。これらに対する各委員からの主な意見は以下のとおり。

    • 日本では都市をつくるときの秩序が必要最低限の規制となっており、ヨーロッパと比べて建築の自由があると言われているが、新たな時代に向けて新たな水準をどう設定すれば良いのか、またそれをどういう観点で考えるべきか。
    • 地方では「建築者」を“業者”として捉え、“建築家”として捉えない。これからは、地方では建築物を「つくる」という論理から「使う」という論理へ移行させなければならない。地方では国土を上手くいかしきれておらず、持続可能な社会が実現されていない。生活面を重視すべき国土全体で、地方の文化、風土、産業を持続させ、国土保全や環境保護を考えていくべき。
    • 我が国の経済成長に係る成功体験を発展途上国に伝えていくことが世界貢献ではないか。いつまでも世界秩序を所与のものとして自分の国だけいかに発展していくかを議論すべきではない。また、自由と社会秩序をトレードオフの関係で議論するのは不適切。自由を享受するためにも必要となるルール的社会秩序はある。経済成長については、それ自身を目的化すれば構造的な長期的課題を先送りすることにつながるおそれがある。何のために経済成長を追求するのか、それを議論すべき。家族崩壊が進む現状で、家族の機能を再考する必要があるのではないか。
    • 持続的な社会の形成、再生産可能な社会の構築、競争と協調のシステムの構築が必要。
      農村・農業では衰えている集落の生産機能をいかに再生させるかが重要。個人というものをいかに集落や自治といったコミュニティーづくりに取り入れていくか議論すべき。
    • 2010年までの計画はあまりに期間が短い。100年の計を作成し、それを目標として10年ごとにどうすべきか考えるべき。「時間」と「空間」を日本のサラリーマンから奪ってきた東京一極集中又は数極集中を是正する必要がある。人は働く場所を求めて農地、工場、オフィスへと移動してきたが、オフィスの設置を自由に認めたことが街を歪めた。この問題は時間をかけなければ解決できず、長期的視野に沿って考え、それによって他の分野の問題も議論すべき。狭い国土に多くの人々が住んでいる日本は、20世紀から21世紀へかけての世界の姿を先取りしているから、日本がこの問題を解決することにより、世界の見本となる
    • エネルギーや食料と言った将来の日本経済に係る安全保障の議論も重要。我が国の特徴である集団主義が経済の活性化を阻害しており、その是正をハードランディング的方向性をもって考えるべき。地方の関係では、地域コミュニティが崩壊しつつあり、中央集権的な統制により失われてきた地域が自主的に考える体制をつくっていかないと活性化にならない。現代日本人が手を入れた所は絵にならず、構築物が画一的で感性が感じられない。
    • 県という行政単位で仕切られているため、広域的な良い施策があってもなかなか実現しない。街づくりについても、国の関係省庁間で話合いが行われているとは思えず、税金の観点だけでなく環境、資源、自然の観点からも街づくりに無駄なものが多い。
    • 経営においては「変化」への対応が重要。10年後にどのように社会が変化しているのか、どのように変化させるのか。今後10年で一番変化する事象は「女性」であると考える。江戸時代の落語にある「女性への対応」が、国家の計画策定にも十分当てはまるのではないか。
    • 国家像が見えなくなっている現状で、住みたい街づくりの観点が必要。住んでいる人が自信を持ち、誇りを持ち得る風土づくりを時間をかけて行うべき。社会や地方のコミュニティーづくりの中で独自性を尊重する風土が大事。
    • 所得格差是正等の施策は戦後の前半はうまくいったが、後半では大都市化、情報等の要因によりうまくいっていない。また「安全のタブー化」という問題があり、日本では欧米と異なり安全の絶対性への期待が大きすぎる。さらにナショナルミニマム所得格差を国がどこまで面倒をみるかという問題もある。
    • 人口移動の関係では我が国の地方の中心市街地再生問題がある。我が国では、中心市街地を構成する商店街には後継者がいないため、投資意欲が抑制され、よって商店街が活性化しないという状況になっている。一方、イタリアでは相続ではなく、その地域で商業上活躍できる人が商売を行い再生を果たした例がある。
    • 街づくりと安全の観点の議論は必要。防波堤で事故回避のために魚釣りを禁止していることがあるが、それならばもっと幅の広い防波堤にすればよい。
    • 我が国の社会で変だと思うのは、我が国は車社会であるが、車は排気ガスを排出し公害を生み出す。しかし、自動車産業には何のおとがめもない。自動車産業を停滞させると、我が国の経済全体を停滞させることになるからであろうが、このような国家的利益と公害とをどう妥協させるかという話はいろいろな面で生じている。
    • 食料や建材の大半は輸入に依存しているが、これを仕方ないと考えずに、国内生産を増加させることにより地域の環境、文化、風景、農業、林業、水産業を復活させることができるのではないか。
    • 産業と技術のワンセット主義については、護送船団方式や衰退弱体産業の保護という行政施策は反対である。しかし、生き残る産業・技術と淘汰されるものの中で、淘汰されるものの中からも後世に伝えていくべき技術をいかに保護し、伝えていくかが大事である。また人口移動の観点からも我が国の「土着を良しとする発想」からいかに脱却するか。こういう発想の変化に対応するシステムを構築すべき。
    • 安全については、自己管理責任を十分身につけることが大事である。

 なお、本議事概要は速報のため事後修正される可能性があります。

(本議事概要に関する問い合わせ先)
経済企画庁総合計画局社会資本班
堀江
TEL:03―3581―0764