「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」のポイント

序 知恵の時代へ

(1) 最適工業社会

  • 明治維新以来、官と産業界の協調によって近代工業社会を形成
  • 90年代の不況は近代工業社会の規範が人類の文明的な流れにそぐわなくなったという根本的な問題から生じている。

(2)「あるべき姿」の条件 : 「未来変化への対応性」

  • 知恵の社会化、少子高齢化、グローバル化、環境制約に対応することが必要

(3)「あるべき姿」の目標 : 「最大自由と最少不満」

  • 各個人が好みにより選べる自由と、社会の根底に共通の感覚である「公」の概念の形成
  • 失敗者への安全ネット・再挑戦機会や弱者の人権の保持
    (安全ネットの構築と負担コストのバランス)
  • 国民一人当たりだけでなく、総体での経済成長の維持

(4)「あるべき姿」の概念 : 「多様性と創造的変革」

  • 経済社会の基盤は自立した個人
    (縦社会から横へ)
  • 家族や職場にのみ帰属する「単属者」から、「複属者」へ
  • 各個人が自らの好みで選択する経済社会へ
    (消費者主権の確立を。官はルール作りや事故処理)
  • 企業が存続し繁栄し続けるためには、常に創造的な変革が必要
  • 外国人の流入も視野に、刺激と機能の多様な補充が必要

(5) 経済選択の基準としての価値観 : 「新しい効率、平等、安全と自由」

  • 効率、平等、安全に加えて、自由が「正義」となり、好みの選択と競争によるイノベーションが強く支持される。

1.「あるべき姿と政策方針」の基本的役割とその実行

  • 基本的役割は、
  1. あるべき姿について選択の方向性を明確化、
  2. 経済運営の基本方向を定め、重点となる政策目標と政策手段を明確化、
  3. 家計や企業のガイドラインを示すこと。
  • 本政策方針の中では大きな方向性を提示するにとどまっているものについては、早急に検討に着手し、その結果をわかりやすいプログラムとして示す。

2.21世紀初頭の経済社会のあるべき姿

(1)多様な知恵の社会

  • 多様性と独創性を発揮
  • 個々人が夢に挑戦
  • 性別にとらわれない社会
  • 多様な個人の帰属先
  • 多様性のある国土
  • 情報通信ネットワーク化

(2)少子・高齢社会、人口減少社会への備え

  • 年齢に関するフリーな発想
  • 仕事と家庭の両立
  • 安心でき、効率的な社会保障制度

(3)環境との調和

  • 循環型経済社会の形成
  • 地球環境問題への対応

(4)世界における位置づけ

  • 世界の主要プレーヤーであり続ける日本
  • アジア地域発展への役割

(5)政府の役割と新しい「公」の概念

  • 政府の役割は、市場ルールの整備、危機管理、安全ネットの整備、外部(不)経済、景気変動への対応に純化
  • 個々人が社会全体に貢献するという新しい「公」の概念の確立

3.経済新生の政策方針(重要政策)

(1)多様な知恵の社会

  • 透明で公正な市場の確立
  • 国際的に魅力ある事業環境の整備
  • 個人の自由な選択・挑戦が可能な環境整備
  • 教育の充実
  • 外国人労働者の受入れによる多様性と活力の確保
  • ものづくり、科学技術の振興
  • 多様な知恵の社会における地域経済と社会資本

(2)少子・高齢社会、人口減少社会への備え

  • 安心できかつ効率的な社会保障
  • 年齢にとらわれない社会
  • 少子高齢社会にふさわしい街づくりと社会資本
  • 少子化への対応

(3)環境との調和

  • リサイクル可能な品目を可能な限りリサイクルするという基本原則の徹底
  • 動脈・静脈一体型の産業構造・技術基盤
  • 地球環境問題への対応
  • 環境にやさしい安全な持続的発展を支える社会資本

(4)世界秩序への取り組み

  • 次期WTO交渉への働きかけ
  • 国際金融資本市場におけるルール作り
  • アジア地域の域内連携推進
  • 世界への情報発信力の向上
  • 外国語教育、情報教育
  • 国際経済協力

(5)政府の役割

  • PFIの推進等による行政の効率化
  • 財政の再建(景気回復後に)
  • 行政の透明性確保
  • 地方分権の推進と行政の広域化の推進

(6)回復軌道へ向けての政策課題

  • 適切な政策運営により、今後着実な景気回復に向かうことが期待される。
  • 緊急避難的な対応においても、中長期のあるべき姿と整合的でなければならない。
  • 回復軌道を短期循環にとどめないため、上記のような、日本経済システムを抜本的に転換させるための施策を着実に実施。

(参考) 2010年の経済展望 (新しい成長軌道に回復後2010年まで)

  • 経済成長率(実質 2%程度、名目 3%台半ば)
  • 消費者物価上昇率(2%程度)
  • 完全失業率(3%台後半~4%台前半)

経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針の構成

序 知恵の時代へ

第一部 「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」策定の意義

  • 第1章 戦後の経済発展と歴史的大転換
  • 第2章 「あるべき姿」を選択する必要性
  • 第3章 「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」の基本的役割とその実行

第二部 経済社会のあるべき姿

  • 第1章 多様な知恵の社会
  • 第2章 少子・高齢社会、人口減少社会への備え
  • 第3章 環境との調和
  • 第4章 世界における位置づけ
  • 第5章 政府の役割と新しい「公」の概念

第三部 経済新生の政策方針

  • 第1章 多様な知恵の社会の形成
  • 第2章 少子・高齢社会、人口減少社会への備え
  • 第3章 環境との調和
  • 第4章 世界秩序への取り組み
  • 第5章 政府の役割
  • 第6章 回復軌道へ向けての政策課題と新しい成長の姿

(参考)2010年の経済社会

  • 第1章 経済の展望
  • 第2章 国民生活の姿