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経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針-知恵の時代へ-

経済企画庁


contents

「経済社会のあるべき姿」のめざすもの
経済新生の政策方針
多様な知恵の社会の形成
少子高齢社会、人口減少社会への備え
環境との調和
世界秩序への取り組み
政府の役割
2010年の経済社会
「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」の特徴
内閣総理大臣談話

「経済社会のあるべき姿」のめざすもの

 「経済社会のあるべき姿」とは何か、その目標と概念(コンセプト)は、いままでの社会とどう違うのかを示します。

 日本は明治維新以来、ひたすら近代工業社会の形成に励み、特に戦後は、すべての資源と能力を経済の発展、とりわけ近代工業の成長に振り向けてきました。

 この間、国民の多数の間に、「効率」「平等」「安全」を社会的正義とする価値感が存在し、それを背景に日本経済は急速に復興し、長期にわたる高度成長を続けてきました。

 しかし現在、日本経済が直面している不況は、単なる循環要因ではありません。そこには、戦後の成長を支えてきた近代工業社会の規範が、人類文明の大きな流れ(新たな歴史の潮流)にそぐわなくなったという根本的な問題があります。

 「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」では、まず最初に「集約」として、2010年を目途とした経済社会の「あるべき姿」の概念を明確に示しました。今、求められているのは個々の政策や制度の改善の集計としての世の中の変化ではなく、総体としての経済社会の発想と構造の改革を目指した具体的な制度の改革だからです。既にはじまっているいくつかの改革も、そうした大きな社会変化の中での位置付けと役割を持っています。

 右の図では、戦後から80年代までに形成されてきた最適工業社会が、新たな歴史の潮流のなかで、2010年には、経済社会のあるべき姿、すなわち、新しい多様な知恵の社会へ、どのように変化していくのかを描いてみました。そこでは、社会全体としての「最大自由と最少不満」が実現し、また、効率、平等、安全と並ぶ価値観として、「自由」が加わってきます。

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経済新生の政策方針

「経済社会のあるべき姿」に向けて日本を再生していくために、今後実施していくべき重要な政策方針を示します。

1. 多様な知恵の社会の形成

 これからの多様な知恵の社会においては、絶えざる新しい知恵の創造による経済と文化の活性化が必要となります。世界からの情報知識が入りやすく、世界への発信がしやすい状況を創るとともに、個性と創造性にとんだ組織と人材を育成する仕組みと社会的気質が必要です。育児、教育、雇用慣行や地域、家族のあり方がそれにふさわしいものに変わっていきます。

 また、「個」の自由と自己責任が基本的な行動原理となります。人々は自分の価値観に従い、より自由に人生の選択を行います。社会では、独創性、多様性が尊重され、人々はそれぞれの個性を地良く発揮します。個々人の「夢」に挑戦できる社会条件が整備され、人々は自己実現に向けて活発に行動します。

多様な知恵の社会では、透明で公正な市場で、消費者が自己責任による自由な選択を行ない、また、それが財・サービスの生産にも反映されます。

そのため、

  • 「透明性」「説明責任」「経済社会情勢の変化への適合性」を重視した規制改革(物流、情報通信分野の包括的な改革方策の検討など)
  • 魅力のある事業環境の整備と創業・起業の促進(会社分割制度及び倒産制度等の整備・充実、不動産の証券化の促進、店頭市場の改革など)
  • 個人が自由に職業を選択でき、起業に挑戦できる環境整備(労働者派遣事業や職業紹介事業の規制改革、企業年金のポータブル化、雇用分野の性善別禁止など)
  • 教育の充実(多様な学校の設置、実用的な外国語教青や情報教育の充実など)
  • 外国人労働者の受入れによる多様性と活力の確保(専門的・技術的分野の外国人労働者の受入れを積極的に進めるための具体的方策の検討・推進など)
  • 科学技術の振興(産学官や地域間、国際間、研究開発分野間の連携の強化、新しい研究開発システム、研究機関の整備など)
  • 多様な知恵の社会での街づくり、地域づくり(「小さな大都市」構想一ゆとりの「空間」とゆとりの「時間」の街づくり、独自の産業・文化を持つ地域づくり、多面的機能を発揮する中山間地域・離島等の活性化など)
  • 多様な知恵の社会を支える社会資本整備(世界最大級の高速・大容量を持つ情報通信ネットワークの形成、ワンストップサービスの推進など電子政府の実現、国際拠点の24時間化など)
  • 首部機能移転の検討

などを行なっていきます。

2.少子高齢社会、人口減少社会への備え

 21世紀初頭には、日本の人口は頭打ちから減少に転じます。こうした大きな変化に備え、そのマイナスの影響を最小限に抑えつつ、プラスの効果を最大限に引き出すような経済社会のシステムが構築されます。
 そこでは、年齢にとらわれない社会、職業生活と家庭生活が両立する社会、安心でき効率的な社会保障制度が備わる社会が実現します。
少子高齢社会、人口減少社会に備えるため、安心できる効率的な社会保障や年齢にとらわれない経済社会、生涯学習のための条件整備、少子高齢社会に対応した街づくりなどが必要です。

そのため、

  • 公的年金制度の見直し(厚生年金の給付水準や支給開始年齢の引上げなどの制度改正)
  • 高齢者医療と介護の充実(介護サービスヘの民間事業者の参入など)
  • 65歳まで希望者は雇用される継続雇用制度の普及・促進(年齢差別の禁止の検討など)
  • 生涯に渡り様々なライフコースを選択できる条件の整備(大学等の社会人の積極的な受入れの促進など)

また、少子高齢社会での街づくりとして、

  • 歩いて暮らせる街づくり(日常生活の移動時間の短縮、多様な機能の混在する街並み、良質な住宅の整備、歩行空間、公共空間のバリアフリー化や交通安全対策の推進など)など少子高齢社会にふさわしい社会資本望偏などを行なっていきます。
    さらに、少子化に対応するには、固定的な性別役割分担思想や雇用環境の是正、職場や地域における仕事と育児の両立支援などが必要です。
    そのため、
  • 育児休業制度の活用や、育児をしながら働きつづけることのでぎる条件整備レ延長保育や低年齢保育の推進など多様な保育サービスの確保
  • 認可保育所についての規制緩和
  • 家事アウトソーシング産業の育成

などを進めていきます。

3.環境との調和

これまでの大量生産・大量消費・大量廃棄型の経済社会システムは限界に達し、循環型経済社会の形成と地球環境問題への対応が進み、持続可能な経済社会が確立します。

環境と調和した経済社会を実現する観点からは、循環型経済社会の構築、地球環境問題への適切な対応及び安全で持続可能な発展社会を支える社会資本が必要です。

循環型経済社会構築のため、

  • リサイクル可能な品目を可能な限りリサイクルするという基本原則の徹底
  • 製品、サービス及び企業の環境配慮について適切な評価のできる環境ラベル制度の充実
  • リサイクル財の利用拡大の促進
  • 廃棄物処理事業者とリサイクル事業者の連携の強化、技術開発導入支援などを行なっていきます。また、地球環境問題では、地球環境保全に関する国際交渉に積極的に参加し、国際的な枠組みづくりに取り組みます。国内的な取り組みとしては、
  • 省エネルギー対策(自動車、家電、0A機器等のエネルギー利用機器のエネルギー消費効率の改善、住宅、建築物における断熱性の向上など)
  • 交通体系について、鉄道、バス、路面電車等の公共交通機関の利用促進、交通渋滞の緩和など
  • 太陽光発電、風力発電等の新エネルギー等の積極的な開発・導入

などを進めていきます。

4.世界での位置付け

日本は経済社会の面で世界の主要プレーヤーでありつづけます。また、知識や知恵の創造・発信において、世界の中核の一つとなります。アジア地域の経済発展の主導的な役割を果たしていきます。

グローバリゼーションの推進に貢献し、その利点を最大限に享受していくため、世界経済のルールや基準の形成に積極的に取り組んでいきます。

特にアジアとの緊密な経済的結びつぎを考慮し、

  • アジア地域の域内連携推進に向けての先導的な役割
  • 危機予防のための体制整備
  • 「円の国際化」の推進に取り組みます。
    世界への情報発信においては、日本が知的活動の拠点になるよう、
  • 文化・学術関係等の諸情報の保存・整備・発信
  • 情報通信ネットワーク拡大と利用コスト低下に向けたインフラ整備
  • 情報通信技術に関する教育の充実、諸外国への留学機会の拡大支援
  • 情報教育及び外国語教育の充実、日本語の国際社会への普及促進

を行なっていきます。

5.政府の役割

官から民へ多くの機能が移転され、企業活動や産業に対する政府の関与は縮小されます。こうしたなかで、経済政策における政府の役割は、市場ルールの整備、危機管理、安全ネットの整備、外部(不)経済への対応、景気変動への対応等に純化します。

 また、こうした政府の役割も、可能なかびリ国から地方へ権限が委譲され、地方分権が進みます。これによって、生活に直結した行政サービスが、地域住民のニーズにより適合したものとなります。また、自由で活力があり、多様性のある地域社会の形成が促進されます。

政府は、行政の効率化と財政再建に向け、

  • 組織の簡素化と事業効率の向上
  • 生産性向上のための組織編成、人事管理
  • 財政の健全性の確保、財政再建
  • 行政の透明性の確保

に努めます。
また、地方自立のため、

  • 地方分権の推進と地方の自己決定能力の 向上
  • 行政の広域化の推進
  • 住民参加の拡充

を図っていきます。

2010年の経済社会 (注)

経済の展望と国民生活の姿と示します。

「経済社会のあるべき姿」をわかりやすく示すため、2010年頃までの経済について展望し、2010年頃に実現するであろう国民生活の姿を考えてみましょう。

  • 経済の展望

    景気が回復軌道に到達した後の2010年頃までの中長期的な実質経済成長率は、年2%程度となるものと見込まれます(名目成長率は年3%台半ば)。

    消費者物価上昇率は、最近の米国をやや下回る年2%程度になると見込まれます。

    完全失業率は、内外の競争激化の下で産業構造の変化が速まり、産業・職業のミスマッチが拡大するとみられるなどの要因により、2010年頃には年3%台後半から4%台前半と見込まれますが、適切な経済運営によりできる限り低くする必要があります。

経済の展望
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  • 国民生活の姿

    2010年頃の国民生活の姿を、1働き方、2学び方、3消費生活、余暇、4家族、地域、コミュニティ、5老後、にわけて、できるだけ具体的に描いてみました。

国民生活の姿

消費生活

生産性の向上を反映して、国民一人当たりでの所得は着実に増加し、人々の金銭面での豊かさは増進します。時間のゆとりが追求され、自分の意志で自由に使える時間(「可処分時間」)も、着実に増加します。
また、インターネットを通じて国土全体で情報が迅速に流れます。インターネット加入者数は98年度の1700万人程度から2010年頃には4500万人程度へと、大幅に増加しているものと見込まれます。

消費生活

働き方

2010年頃には、情報通信ネットワークや家事のアウトソーシング、介護サービス、環境に関連した産業が拡大し、創業・起業が活発化しているものと見込まれます。
また、労働の流動性が増し、適材適所の労働力配目が実現されます。今後、年齢や性別にとらわれない社会となり、高齢者や女性が働く機会が拡がると見込まれます。

働き方

学び方

学校教育でも、子供の発達段階に応じて、基礎的な教育に加え独白の特色をもった教育を行う多様な学校が生れ、教育の受け手がその好みに応じて学校を選択できる機会が拡がります。
また、人々が生涯のいつでも年齢にとらわれずに学習機会を選択して学ぶことがでさる生涯学習社会の構築が進みます。

学び方

家族、地域、コミュニティー

家族のもつ機能が再び見直され、家族の絆が強まる一方、各人は家族のなかだけでは完結しえない自分白身の関心事や活動領域をもちます。
住宅・買い物・オフィス・文化・娯楽空間や道路、公園等の公共空間は、質的に向上するとともに、空間的ゆとりが確保されます。
また、家族・地域・会社・各種サークル・NP0等多様なコミュニティに帰属意識を持つゆるやかな人間関係が形成され、個人の自己実現と好みの追求が図られます。

家族、地域、コミュニティー

老後

高齢者が消費・余暇生活を楽しむことにより、高齢者向けのレジャー、ファッション、情報等の市場は大きく拡大します。ホームヘルパーが徐々に増加すること等により、在宅サービスを基本として、施設サービスも併せた介護サービスの供給体制の一整備が進みます。
要介竈者をもつ家族は、最も望ましい介護形態を選択することが可能となります。介護保険制度が定着し、これまでの家庭だけの介護から、社一蓑会全体での介護となります。

老後

(注)
「2010年の経済社会」は、経済審議会答申の参考資料として付されたものですが、性格な数値等を予想し、目標として設定するのは困難であることから、政府の再策目標である閣議決定には含まれていません。

「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」の特徴

「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」は、21世紀の新しい経済社会の指針としてふさわしいものとするため、所得倍増計画(1960年)以来の10年程度の長期間を対象としています。今後の人口減少などの太さなトレンドを考慮して、1999年から21世紀初頭までの姿と政策方針を示す必要があるからです。

また、これからの日本は政府主導ではなく、独立した「個」を基盤とした自由経済に徹することを表現するため、「計画」という名をあえて使いませんでした。

策定に当たっては、経済審議会とその5つの部会で審議を重ねたほか、インターネットでの意見募集や地方でのシンポジウムの開催など、国民の皆様から広く意見をいただき反映をさせるよう心掛けました。政府としては、こうして策定された政策方針に沿って、皆様のご理解とご協力を得て、政策の着実な推進を図っていきます。

特に、この政策方針のなかでは大きな方向性を提示するにとどまっているものについては、政府内で早急に具体化の検討に着手し、その結果をわかりやすくプログラムとして示すこととしています。

日本の人口とGDPの推移

「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」についての内閣総理大臣談話

平成11年7月8日
閣議決定

  1. 我が国の経済社会は歴史的な大転換期にあります。知恵の社会、少子高齢化、グローバル化、環境問題への対応など、現在我が国が直面している諸課題を克服するためには、経済社会の仕組みと気質を抜本的に変革することが不可欠であります。その際、どのような方向に進むかを、国民が選択する必要があります。今、その大きな方向を解き明かすことが求められています。
  2. このような認識のもと、政府は、本日、「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」を閣議決定いたしました。これは、知恵の時代の扉を開くため、二十一世紀初頭の日本の「あるべき姿」として、我々が選択すべき方向とその結果として実現されるであろう経済社会の姿を描き、それを達成するため経済運営の基本方針を定め、重点となる政策目標と手段を明らかにしたものです。まさにこれは、個人や企業の活動のガイドラインとしても大きな役割を担っていると申せましょう。
  3. 私たちが二十一世紀に築いていくべきは、グローバル化の中で、多様な知恵の時代にふさわしく、自由で、少子高齢化、人口減少に備えた仕組みを持ち、環境とも調和した経済社会です。
    このような経済社会のあるべき姿に向けて実施していくべき重要な政策方針の第一は、多様な知恵の社会の形成であり、自由で魅力ある経済条件を整備し、透明で公正な市場と消費者主権の確立に努めてまいります。
    第二に、少子高齢化、人口減少への備えとして、安心のできる効率的な社会保障、年齢にとらわれない経済社会の形成、少子化への対応等を進めていきます。
    第三は、環境との調和であります。このため、特に生産・消費・再生の循環型経済社会の構築と、地球環境問題への適切な対応を行います。
    第四に、世界の主要な経済プレーヤーとして、世界経済のルールや基準の形成に主体的に参画する等、世界経済の安定的な発展に積極的な役割を果たします。
    以上に加え、政府としては、行政の効率化、財政再建及び地方分権を推進してまいります。

  4. 私といたしましては、本政策方針で示した施策に直ちに積極的に取り組み、内閣をあげて全力で実施してまいる決意であります。特に、本政策方針の中では大きな方向性を提示するにとどまっているものについては、政府内で早急に具体化の検討に着手し、その結果を分かり易いプログラムとして示すことといたします。
    本政策方針の推進にあたっては、国民の皆様の御理解と御協力が不可欠であります。国民各位におかれましては、本政策方針の趣旨を十分御理解の上、さらに積極的な御協力をいただきますよう、お願いいたします。

豊田章一郎経済審議会会長から答申を受ける小渕恵三内閣総理大臣

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電話番号 03-5253-2111(大代表)