第3回構造改革推進研究会議事概要

1.日時:

 平成10年11月19日(木)10:00~12:00

2.場所:

 合同庁舎4号館共用第2特別会議室(407号室)

3.出席者:

水口弘一座長、池本美香、出島敬久、中島隆信、橋爪大三郎の各委員
中名生総合計画局長、高橋審議官、牛嶋審議官、大西計画課長、涌野計画官、林部計画官、佐久間計画官、岩瀬計画企画官他

4.議題:

  1. 高コスト構造是正・活性化の進捗状況と一層の推進について(Ⅱ)
  2. 教育分野の構造改革について

5.審議内容:

(1)高コスト構造是正・活性化の進捗状況と一層の推進について(Ⅱ)
○新しいアプローチによる具体的施策として「ホワイトカラーの専門性の向上」とあるが、どこまでを専門性と考えるのか。また、「資格制度の整備」とあるが、資格がなぜ必要なのかよく分からない。資格を設けることが円滑な参入を妨げる要因になり、規制緩和とは逆行する印象を受ける。
電気通信分野について考える場合、統計の不備も考慮に入れる必要がある。例えば企業の情報化投資については、企業が情報化や研究開発等をどこまで正確に申告しているかがわからない。日本の研究開発投資は過小評価されているとの指摘もある中で、国際比較をする場合、ある程度同じベースで見ないと正確な判断ができないのではないか。
電気通信業の高コスト構造是正については進んでいないものもあり、NTTの地域通信の効率性がかなり低いという指標が既に計算されている例もあるので、それを引用すれば客観的な裏付けになるのではないか。また、新規参入時の接続料の問題が解決されないと既存のネットワークを活用した新たなサービスの発展は望めない。
コンピュータの普及に関しては、特にサ-ビス業のコンピュータはものを作るのではなく、今までのサービスをコンピュータに置き換えていくわけだが、その際システムが置き換え可能になっているかが重要である。また、音声対応機器やスキャナーの登場などコンピュータの方が日常に近づいているという面もある。一方、米国の家庭では、レシピを使って料理をしたり、税の申告も家庭でやるため、こうした部分がコンピュータの普及に寄与しているのに対し、日本の家庭では、家事が標準化しにくいというのが普及しない重要な要素であると考えられる。
○日米ギャップの比較をして、早く米国並みになる必要があるということを言いたいのだと思うが、果たして米国並みが目標でよいのか。そうではなくて、例えば電話料金はいったいいくらがよいのかという観点から考えるべきではないのか。日本においては、何年後にはいくらになるという戦略的アプローチがあれば目標や為すべきことがもっとはっきりしてくるのではないか。また、構造改革がうまくいっていないとすれば、どの規制や業界慣行がよくないといった具体的なものを指摘する必要があるのではないか。
○米国を目指すという観点からのみの議論は危険ではないか。米国において情報化が進んでいるのは国土が広大であるがゆえの必然性からくるものであり、日本の場合はそういった意味のニーズがないと考えられる。人口密度と情報化の関係についても考慮に入れる必要があるのではないか。また、日本の家庭においてコンピュータが普及しないのは、日米間で情報化にあたっての費用の格差の問題があるのではいか。学校でコンピュータを普及させる際には、学生の知識向上が目的なのか、企業のように運営・管理の効率化が目的なのか明確にすべき。
○電気通信分野については効率性と公平性の両方を念頭におく必要がある。例えば関東圏にTTNetが参入し市内電話料金の引下げ競争が始まったが、NTTが関東圏にのみ低料金を導入しようとしたときに、郵政省は一地域のみの料金値下げは認めなかった。地域間でコストの高低がある中で、効率と公平のトレードオフをどこで釣り合いをとるのか議論が必要である。また、影の規制として施行や工事等についての規制がかなりあるのではないか。工事等の規制は安全面については必要であるが、電話の工事については特に規制は必要ないのではないか。 ソフトウェア産業については、規制緩和によりデファクトスタンダードが発生し、1社の製品しか使われなくなるという状況になった場合、値上げされる可能性もあるので逆に独占禁止政策が必要になるのではないか。
また、家庭での情報化の遅れが指摘されているが、米国とは異なり投資信託等が普及していないことや税申告が基本的に必要ないことから、日本の家庭においては情報処理に対するニーズがないのではないか。

(2)教育分野の構造改革について
○大学設置基準を緩和し大学設立の自由度を高めると、何をもって大学とするのか、また、高等専門学校・専修学校・各種学校との違いは何かということが分からなくなるのではないか。大学設立が基本的に自由と言われている米国では、何をもって大学としているのか。
○大学新設について文部省が抑制的に対応しているために大学への新規参入が妨げられている面もあるかもしれないが、少子化により大学のみならず予備校も経営が苦しいと言われている中で、新規参入しようとするものがそもそも現れるかは疑問である。現状において新規参入が少ないのは、規制だけが原因とは言えないのではないか。
○教育サービスの特徴として、今現在学生が満足しているかという短期的な視点よりも教育を受けた者が将来的に満足できるかという長期的な視点が重要だという側面がある。短期的な結果を求める営利企業が大学に参入した場合にその点を担保できるか。
○現在国立大学には法人格がなく、知的所有権の移転等において機動性に欠ける。国立大学に法人格を与える場合には採算が問題となることから、コストの構造について学生が負担すべき部分と公的補助が必要な部分を洗い直すことが必要となる。
○何をもって大学とするかについては、もともと国が決めることではなく、大学と社会の関係の中で自ずと決まることではないか。
○奨学金や研究費を個人に配分することで大学のコストを支えることはいいことである。現在も文部省から科学研究費が配分されているが、ある程度多元的に、様々な機関から配分することが必要ではないか。
○大学の経営をコスト意識に基づく合理的なものとするためには、教員の移動の自由を保障する必要がある。
○名古屋大学医学部の汚職事件が話題になっているが、企業が大学に研究費を出す場合、一旦文部省を通じて出せば問題にならないが、国立大学の教員に直接渡すには様々な制約がある。
○大学が行う教育を良いものにするためには、良い教育をすることについて教員側に何らかのインセンティブを与えることが必要である。
○教育コストの日米比較をする場合に、大学の授業料のみを比較すると米国の方が高くなるが、日本は大学に入学するための受験教育にコストがかかっている。大学に関する規制緩和の効果は、大学の授業料が下がるというよりも受験教育に必要なコストが下がるという点が重要である。
○大学は4年ではあるが、4年生は就職活動に忙しいので実質3年になっている。そのため、4年を通じたカリキュラムを組むことが困難となっている。
○機関補助から個人補助へシフトする際に、学生は必ずしも社会の役に立つ教育を選択するとは限らないことから、「良い教育」のあり方を学生個人の選択のみに委ねることが適切かどうかを検討する必要がある。
○大学の事務部門について、教員・学生数に対する事務員の比率は私立大学よりも国立大学の方が高い。国立大学の個々の事務官はよく働いているが、無用な事務手続きが多過ぎることから、かなり効率化の余地がある。また、大学に関する事務は定型化されているにもかかわらず、頻繁に異動するために専門化が進んでいない。そのため、派遣労働者を入れたり、退職者を再雇用することなどによりかなり合理化できるのではないか。

以上

なお、本議事概要は速報のため、事後修正の可能性があります。

(連絡先)

経済企画庁総合計画局計画企画官室

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