第2回構造改革推進研究会議事概要

1.日時

:平成10年11月2日(月)14:30~16:30

2.場所

:合同庁舎4号館共用第2特別会議室(407号室)

3.出席者

水口弘一座長、荒木襄、岩田一政、大熊由紀子、小椋正立、滝上宗次郎、中島隆信、林克彦、村井勝、寄本勝美の各委員

中名生総合計画局長、高橋審議官、牛嶋審議官、涌野計画官、青木計画官、林部計画官、佐久間計画官、岩瀬計画企画官他

4.議題:

  1. 高コスト構造是正・活性化の進捗状況と一層の推進(Ⅰ)について
  2. 医療・福祉分野の構造改革について

5.審議内容:

(1)高コスト構造是正・活性化の進捗状況と一層の推進(Ⅰ)について

  • ○高コスト構造是正について、個別分野ごとのアプローチとなった原因は、行政のタテ割りの問題も大きいのではないか。
  • ○物流分野が遅れているのはコストの面だけではない。アメリカでは、物流効率化を促進するコンピュータソフト開発などの様々な新産業が生まれている。また高コスト構造是正を図っていく際は、諸外国も改革を進めていくので、高い目標を設定することが重要である。低い目標を設定しているようでは、将来的に外国のシステムが入ってきて、それに合わせざるを得なくなる。業際をなくしていくのは当たり前のことであり、新しい目標のコンセンサスが作れないか。
  • ○物流は、本来さまざまな機能を組み合わせるものであり、個別分野でなくシステムの問題としてアプローチすることは評価できる。一般的には、抜本的な物流の効率化はサプライチェーン・マネジメントやサードパーティ・ロジスティクスによりもたらされるが、これらは定性的なものであり、具体的にどういう指標として目標を設定するかが難しい。より理解しやすい目標を設定し、施策を進めることが重要である。
  • ○ここでの議論は、商品や製造物を運ぶ動脈物流が中心だが、産業廃棄物などを運ぶ静脈物流でも高コストの問題がある。
  • ○日本の物流には様々な問題がある。大きなコンテナを積んだトラックが通れないのは社会資本の水準の問題であり、混雑した昼間の道路を走れないことなどは都市の構造等の根深い問題であり、モーダルシフトが進まないのは、経済計算にそぐわないという問題である。高コスト構造是正の行動計画に係る目標は比較的手がつけやすいものが多いという印象を受ける。これらを達成したからといって必ずしも時間やコストが下がるとは限らない。ピースミール(個別の規制を一つ一つ緩和していくやり方)のアプローチに限界があるのではないか。既存の規制を全てとり払った実験を行うぐらいでないと、効率化は困難。
  • ○システム的なアプローチには賛成だが、対応が抽象的過ぎる。物流だけでなく、その先の商取引の最終的な姿が変わらないと、物流の問題は改善できない。また、宅急便のような画期的なイノベーションを構造改革の成果としてどのように評価するかが問題。
  • ○規制緩和や構造改革については、プレッシャーが重要な役割を果たすのであり、OECDやWTO等の要求、外圧の影響との関係に触れた方がよい。また国内での先鋭的な業界等の意見等の存在を、生かしていく視点も必要。
  • ○EDIについては、控え目に見ても10年は議論をしているが何も変わっていない。海外からのプレッシャーに対する危機感が足りない。高コスト構造是正の評価や目標が甘いのではないか。諸外国との比較において、どの位まで物流コストを下げていくのかというを目標として設定し、国内でのコンセンサスを得ることが必要。そうすれば、個別分野の具体的な施策は出てくるのではないか。
  • ○高コスト構造については、賃金水準と規制の問題がある。賃金水準については、日本の賃金水準(一人当たり所得)は高いため、生産性がそれほど上昇しなければ、人件費の分だけコストが高くなる。生産性の諸外国との格差、生産性向上スピード等の成果を一般的に計るモノサシが必要。規制については、2000年のサービス産業に関するウルグアイラウンド合意の実行を控え、WTOにおけるサービス部門の自由化と国内規制の両立可能性を検討する必要がある。通信や金融分野での先例をみると、規制に関する一般的な原則を付属文書という形で補充している。そこに上げられているのは、透明性や補助に関する原則である。日本の規則の中央集権的性格を見直す視点として、重要な下部機関にできるだけ権限をおろすという原則がある。また、規制緩和が行われた例として、タクシー料金の幅運賃制の導入があげられているが、実際に消費者がメリットを受けているとは言えない。インセンティブ規制の考え方をもっと大胆に進める必要がある。

(2)医療・福祉分野の構造改革について

  • ○大熊委員の説明の中で、医療・福祉分野に民間企業が参入する場合、情報の非対称性の問題があるとのことだが、医療技術等に係る情報の非対称性ということはわかるが、介護の場における情報の非対称性というのはどの辺りにあるのか。また、そうした情報の非対称性は、モニターの強化等により解決できないのか。
  • →これに対して大熊委員より、以下の回答があった。
  • 介護分野における情報の非対称性には二通りある。一つは専門性に起因するもの。もう一つは、第三者からは介護の現場がなかなか見えにくい(知りにくい)状況であるということ。老人ホームが町の真ん中にあって、始終町の人が出入りしているといった状況なら、チェックも行き届くだろうが、町の外れにあって、訪ねる人も少ないといった老人ホームでは、モニターを行うと言っても難しい。
  • ○介護の供給主体として、株式会社なら悪という認識はどうか。
  • 特別養護老人ホーム、老人病院いずれも、1カ月間お年寄りを預かったら30万、40万と国から給付される定額制であるため、これら施設の9割以上が、症状の軽い人から入所させている。このため、症状が軽い人ほど施設にいて、重度の人が自宅にいるというアンバランスが生じている。
  • 老人介護法が昭和39年に成立した当時は、要介護の老人は少なく、また、その人たちの施設を経営する人は、篤志家等その土地の良心的な人々が施設を経営したため、特に問題はなかった。しかしながら、現在は75歳以上の老人は800万人で、あと20年すると、1600万人になり、今後、介護サービスの市場に悪質な事業者が参入してくる割合も高まる。
  • 医療・福祉における公的サービスをみると、コスト意識が全くない。例えば、市町村の介護ヘルパーは、9時に役所を出て各家庭を周った後、12時に食事をとりに役所に戻り、また1時から各家庭を回わっている。しかしながら、家庭で一番人手が足りない時間帯は、早朝と昼食時である。一番ヘルパーの手を借りたい時に、ヘルパーが働いていない状況になっている。
  • ○老人ホームでは、健康な人から苦情がでるが、要介護者から苦情がでることはほとんどなく、それをもって行政は苦情がないという。要介護者から苦情が出ないのは、要介護者は介護がないと自力では生きていけないため、現在の環境に適応し、半ばあきらめながら過ごしているからである。デンマークで手厚い福祉が行われているのは、国民全体が老人とはそういうものだということを子供の時から教育を受けて知っているからである。日本でもそういうものだということを国民全体で知っておかねばならない。
  • ○ただ民間企業の参入をと言うだけでなく、民間企業の参入を、市場の他の主体にもいい影響を与える一つのきっかけとして捉えるべき。
  • ○日本の国民医療費は、直近で約30兆円。このうち、健康保険料で賄っているのは15兆円で、残りは財政負担(補助金)と自己負担であり、財政が果たす役割は大きい。例えば、全身麻酔を伴うような高度な医療の6割以上が、公的病院で行われている。しかしながら、病床数に占める公的病院は2割り程である。何故そうなっているのかというと、現在の保険医療制度では、私的なところで高度医療を施そうとすると、赤字になる。公的機関がそれらの医療を行えるのは、赤字を気にしなくて済むからである。赤字を出しても財政補てん等がある。このように資源配分が、経済原則とはかけはなれているところで維持されている。現在の医療の価格システムを、もう少し市場における資源配分を反映した形にしないと、規制緩和をしてもなかなか効率的なところへ資源がまわっていかない。

具体的には、高度医療を私的な機関でも施せるような仕組みにする、病床規制を廃止する、経済的なインセンティブ等直接的ではない複合的な手法により、自己負担をコントロールする、補助金を、水準を満たせば誰でももらえるようなユニバーサルなものへとするなどが挙げられる。

以上

本議事概要は、速報のため事後修正あり得ます。

(連絡先)

経済企画庁総合計画局計画企画官室

TEL 03-3581-0977