経済審議会企画部会(第2回)議事録

時:平成 10年 10月 28日

所:共用第一特別会議室(第4合同庁舎4階)

 

経済企画庁


経済審議会企画部会(第1回)議事次第

平成10年10月28日(水)14:00~16:00

共用第一特別会議室(第4合同庁舎4階)

  1. 開会
  2. 議事
    1. 1) 現行経済計画の想定と現実との乖離
    2. 2) 将来の経済社会のマクロ的変化
  3. 閉会

(配付資料)

  1. 資料1 企画部会委員名簿
  2. 資料2 計画の想定と実績の乖離
  3. 資料3 経済計画で具体的に記述された政策の進捗状況
  4. 資料4 「社会資本の整備目標」進捗状況(暫定版)
  5. 資料5 計画の想定と実績の乖離の要因
  6. 資料6 将来の経済社会のマクロ的変化

(参考資料)

  1. 参考資料1 計画期間中にとられた主な政策
  2. 参考資料2 主要経済指標の中長期的推移
  3. 参考資料3 経済審議会経済社会展望部会(98年6月)より抜粋
  4. 参考資料4 7か国蔵相・中央銀行総裁会議声明(仮訳)
  5. 参考資料5 アジア通貨危機支援に関する新構想 -新宮澤構想-
  6. 参考資料6 経済審議会・企画部会の趣旨及び主要テーマについて

経済審議会企画部会委員名簿
部会長  小林 陽太郎富士ゼロックス(株)代表取締役会長
部会長代理香西  泰(財)日本経済研究センター会長
委員  跡田 直澄大阪大学国際公共政策研究科教授
    荒木  襄日本損害保険協会専務理事
    伊藤 進一郎住友電気工業(株)専務取締役
    角道 謙一農林中央金庫理事長
    小島  明(株)日本経済新聞社論説主幹
    小長 啓一アラビア石油(株)取締役社長
    佐々波 楊子明海大学経済学部教授
    ポール・シェアードベアリング投信(株)ステラテジスト
    嶌  信彦ジャーナリスト
    長岡  實東京証券取引所正会員協会顧問
日本たばこ産業(株)顧問
    那須  翔東京電力(株)取締役会長
    樋口 美雄慶応義塾大学商学部教授
    星野 進保総合研究開発機構理事長
    堀  紘一ボストン・コンサルティング・グループ社長
    松井 孝典東京大学理学部助教授
    水口 弘一(株)野村総合研究所顧問
    村田 良平(株)三和銀行特別顧問
    八代 尚宏上智大学国際関係研究所教授
    吉井  毅新日本製鉄(株)代表取締役副社長
    吉川  洋東京大学大学院経済学研究科経済学部教授
    鷲尾 悦也日本労働組合総連合会会長

 


〔 部会長 〕 ただいまから、第2回経済審議会・企画部会を開催させていただきます。委員の皆様には、大変お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。

第1回にご出席のなかった委員の方をご紹介いたします。シェアード委員はまだお見えでいらっしゃいませんが、大阪大学の跡田先生、ボストン・コンサルティングの堀さん、慶応義塾大学の樋口先生をご紹介いたします。よろしくお願いいたします。

今日は2つ議題がございます。1つが、「現行経済計画の想定と現実との乖離」、2つ目が「将来の経済社会のマクロ的変化」ということでございます。

今日は4時までですが、大部分を第1の議題に使わせていただきたいと思っております。それでは、早速、「現行経済計画の想定と現実との乖離」に入らせていただきたいと思います。

事務局からご説明をお願いいたします。

〔 事務局 〕 ご説明いたします。

前回の企画部会でもご指摘のございました、「なぜ、95年12月に閣議決定した現行経済計画の想定との乖離が生じているか」ということをひとつきちんとレビューをするというのが第1の議題の目的でございます。

資料をいくつか用意してございますけれども、確認のために、資料2に「現行経済計画のマクロフレームとその後の実績」を、98年度の見通しも含めまして表にしてございます。ご案内のように、実質経済成長率96年度から2000年度まで5年間の平均で3%と経済計画では想定しておりました。括弧内に1と4分の3となってございますが、これは構造改革が進展しない場合の平均成長率ということでございます。計画が策定されました当時、非常に円高が進んでおりまして、国内の空洞化が懸念されていた。そのために経済対策も発動されていたという状況の中で、足元、非常に経済が弱いという段階で構造改革をしないと低成長に陥る、ひとつ構造改革をしっかりやって3%という成長を達成しようというのがこの計画のポイントであったろうと思います。

右側の実績を見ていただきまして、96年度は3.2%ということで計画を上回る実績になっておりますが、ご案内のように97年度以降、98年度は先般の政府経済見通しの改定試算値の▲1.8ということで2年連続のマイナス成長ということで、計画とかなりの乖離が生じております。

お手元の資料に別立てで「委員限り」にさせていただいております「資料2別紙」というものがございます。「委員限り」にさせていただいております趣旨は、従来、経済計画の想定で需要項目別の内訳というのは経済計画の中で公表されておりませんで、需要項目別に分けて実績との乖離をフォローしたものでございます。

需要項目別にご覧いただきますと、1枚目の図表の左下にございますが、「実質民間最終消費支出」が1996年度は1ー3月の消費税引上げ前の駆け込みということもあって、計画の想定を上回りましたが、97年度4ー6月以降減少しておりまして、98年度においても全く計画の平均伸び率2.1とほど遠い減少傾向にあるということでございます。

右上の「民間住宅投資」につきましても、96年度はやはり消費税引上げ前の駆け込みということで計画を上回る伸びを示したわけですが、その後はご覧のように大きな減少に転じているということでございます。

民間企業設備投資につきましては、97年度までは円安が進んで、輸出製造業の設備投資が増勢にあったということで、レベルとして計画とそう違っておりませんけれども、98年度には大きな減少に転じているということでございます。

以上が民間需要でございます。

政府需要に目を転じますと、計画策定時には実質の政府消費が平均2%ということで着実に伸びるという想定でございましたが、実績はほとんど横ばいで推移しております。

実質政府固定資本形成。公共投資でございますが、これはご承知のような630兆円の公共投資、当初の公共投資基本計画というものがございまして、それに沿った形で実質で平均3.5%という伸びを想定しておりましたが、その後、財政構造改革という政策転換が行われまして、96年度の実績値で前年比3%程のマイナス。97年度は7%を上回る前年比の減少ということで、98年度は政府の改定試算の内訳が公表されておりませんので、図の中にございませんけれども、ほぼ95年度に近い水準にまで、総合経済対策の効果から政府固定資本形成が元に戻るという形になろうかと思います。

政府支出についての想定が、現行計画と現実の乖離の1つの要因でございます。

2枚目に移らせていただきまして外需でございます。

輸出につきましては、最近におきましてはアジアの経済危機ということで想定を下回ってきておりますけれども、97年度まではむしろアメリカ経済が非常に好調であったというようなことで、計画の想定を上回る輸出の伸びが見られました。輸入につきましては内需の不振を反映して、97年、98年と内需にパラレルに減少してきている点が想定と大きく違っております。内外需に分けてまとめてみますと、もっぱら97年、98年というように内需が落ちてきたという点が計画の想定と全く違っている点でございまして、外需もほぼ均衡しているという想定からプラスに転じておりますが、目盛りがちょっと誤解を招く目盛りだと思いますが、内需の減少の方が非常に力が強くて計画の3%という想定を下回っているということでございます。

右が物価でございますが、97年度は消費税引上げの影響ということで、平均の想定を上回っておりますが、レベルとしては消費者物価、卸売物価ともほぼ想定に近い物価の姿となっております。

失業率につきましては着実に低下するというのが経済計画の想定でございましたけれども、ご案内のように特に足元、昨日、9月の失業率が発表になりましたけれども4.3%ということで最悪の失業率の上昇が見られております。

経常収支対GDP比につきましては、計画におきまして、これは数字は公表しておりませんけれども、方向としては着実に縮小するという想定をしておりましたが、先ほどの内外需の内訳で類推できますように97年度以降大幅に上昇してきている。マクロの主要な計数で見ますとこういうような乖離の内訳ではないかと考えております。

元の資料に戻っていただきまして、資料2の残りのページでございますが、四半期別に今の状況と計画との乖離を見たものでございます。

かいつまんでご説明申し上げますと、実質経済成長率につきましては、97年の1ー3月に消費税引上げ前の駆け込みで比較的高い水準にあったものが、4ー6月以降落ち込んできているということでございます。ということで、特に想定との乖離が生じたというのは、やはり昨年の4ー6月以降のことではないかと考えております。

名目につきましては、それと同様の動きでございます。

消費者物価につきましては、消費税引上げの影響をならしてみれば、ほぼ計画の想定の範囲内ということでございます。

5ページにまいりまして、卸売物価でございますが、これも消費者物価と同様でございます。卸売物価指数で計画の想定より実績が高く出ておりますが、これは経済計画で使っております係数が、総合卸売物価と申しまして輸出入物価を含んだ指数を使っておりまして、計画の策定時には100円程度の円レートであったわけですが、それに比べると円安に推移しているということで、輸入物価の上昇がこの乖離に寄与していると言えるかと思います。

最後のページは、完全失業率でございますが、特に最近月におきまして急激な駆け上がりがみられるという状況でございます。

以上が経済指標から見た計画の想定と実績との乖離ということでございますが、資料3に移らせていただきますと、経済計画はマクロの将来展望と同時に個別の施策についても記述してございます。

その中で第4章第1節、高コスト構造是正・活性化の促進というところが一番具体的な記述が書き込まれている部分でございますが、これを例に取ってフォローしてみるということでございます。

規制緩和政策につきましては、経済計画では定期的に計画の見直しを行い改定をするということでございまして、進捗状況としましては、特に今年に入りましては新たな規制緩和推進3か年計画が策定されるということで、少なくとも方向としては経済計画の想定に沿った施策の実施が図られているということでございます。

競争政策につきましては、独禁法の適用除外カルテルの廃止、見直しにつきましては、具体的には右側の進捗状況に書いてございますような施策の進捗がみられておりますし、次のページに移らせていただきまして、再販価格の維持制度についてもほぼ廃止、あるいは範囲を限定するというようなことで、公取を中心に施策の進捗がみられているということでございます。

同様に、新規事業の展開に関しましては、2ページの下になりますが、商法の改正、あるいは独占法の改正という形で企業活動を促進するという観点からの取組みがなされている。

3ページにまいりまして、持株会社の解禁、あるいは法人課税は実効税率で40%程度に引下げるということで、考えようによっては計画の想定以上に実際の施策が進展している部分もあるということでございます。

ベンチャー企業への資金供給の円滑化にしろ、創造的中小企業に対する支援、その次の雇用につきましても、有料職業紹介の自由化というようなことで、これはいろいろな施策の進捗状況の速さ、遅さというスピードについてはご議論があるかと思いますが、少なくとも方向としては経済計画で提言した内容に沿っていると言えるのではないかと思います。いままで、方向として大体合っているというような評価をさせていただいたわけですが、そういう評価というもので本当にいいのかどうかというのは、次の金融システムの問題でございます。

これは計画の内容といたしましては、95年12月の当時の判断でございますが、「不良債権の処理に当たっては、信用秩序の維持や預金者保護に配慮しつつ……」ということで、おおむね5年以内、計画期間の中の「できるだけ早期に積極的な処理を進め、問題解決の目途をつける」。その際、「不良債権の担保となっている不動産の流動化の促進を図る」ということで、その限りにおいては非常に正しいことが書いてある。その後の、金融システムの安定化を図るための制度的対応についても同様のことでございます。

実際にどういう施策が行われてきたかということを見ますと、SCP法の施行等々、次のページの、一番下の「金融再生関連法」まで、これも評価としては「経済計画に沿った進展がみられる」という評価になってしまうのかもしれませんけれども、そういう評価の仕方ということに果たして問題がないかどうかというご議論をいただきたいと思っております。

次に資料4でございます。政府の手が届く一番直接的な政策手段の1つでございます公共投資、社会資本の整備目標でございますが、経済計画におきましては、かなりいろいろな分野について計数を挙げて、あるいはものによっては年度を特定して目標を掲げております。これは毎年度フォローアップを行なっておりまして、昨年のバージョンより1年分実績値が追加されております。ものによってまちまちでございますが、全部ご説明する時間もございませんので恣意的ではございますけれども、いくつかピックアップしてご覧いただきたいと思います。

1ページの「排水が公的主体により衛生処理される人口の割合」、これは下水道とか集落排水でございますが、これは目標といたしまして2000年度に「7割を超える程度」と、計画で設定しておりますが、97年度の時点でまだ6割を下回っているということで、まだまだ努力が必要な分野ということであろうかと思います。

下から3番目に「東京圏における鉄道の混雑率」ということで、2000年頃に「180%程度」ということで、「新聞が読める」というのがうたい文句でございますが、現実の推移を見ますと、徐々に180%に向けて混雑が緩和してきているということでございます。

2ページにまいりまして、どちらかと言うと合格点をあげてもいいもので、上から2番目から3番目、4番目、5番目、これ全部同じことでございますが、「河川、急傾腫地等において、景観や親しみに配慮して緑化が行われている割合」、例えば上から2つ目の河川について見ていただきますと、2000年度に25%という目標に対して98年度で既に24までいっているということで、「緑化の割合」については比較的進捗が見られるということでございます。

3ページにまいりまして、「デイサービスセンター・デイケア提供施設の整備水準」についても、これまでの改善テンポを考えますと、手の届くところまできている。

次の「特別養護老人ホームの整備水準」についても、かなり目標に近いところまで実績が積み上がってきているということでございます。

全く難しいというのは下から4つ目でございまして「幅の広い歩道等の設置率」ということで、経済計画の将来目標といたしまして「21世紀の初頭」、これも「初頭」と書いてあるだけで、2010年なのか2020年なのか、そこははっきりしていないわけでございますが、「約5割に高める」という将来目標を置いておりましたが、現実は15%ということでかなり低い水準にとどまっている。

それから、下の2つもなかなか成績のはかばかしくない問題でございまして、「大都市圏等の密集市街地における避難困難地区人口」も「21世紀初頭」に「おおむね解消」と言っていたものが、まだ500万人以上いる。「床上浸水対策必要戸数」についても、なかなか目標まで届かない状況にございます。

5ページにまいりまして、注目されております「光ファイバー網の整備された地域の割合」を見ていただきますと、将来目標といたしまして「2010年度」「早期の全国整備」ということを掲げてございますが、97年度までの実績ではまだ2割に届かない。

「情報化教育環境整備率」は、小学校につきましては1クラスの半分、中学校につきましては1クラスの全員にはパソコンが支給されるという整備率でございますけれども、これも目標といたしましては「99年度」に「おおむね100%」とうたっておりましたけれども、97年度までの段階ですとまだ3分の1ぐらいにしか普及していない。これは現在、関係省庁の補正予算の要求でかなり上積みを計画されているところと承知しております。

以上のように、社会資本という一番政府の管理下にあるような類の目標につきましても、なかなか精粗まちまちで、閣議決定されている目標というものを我々並びにそれぞれの実施官庁としてどういうふうに考えたらいのかという問題も、経済計画のフォローアップの1つのポイントであろうと思っております。

資料5でございますけれども、これは実態経済において、先ほどマクロの指標で計画と実績がどのように違っているかというのを見ていただいたわけですが、その原因として、もちろん最初から計画の数字がおかしかったという評価もできると思いますけれども、私どもでいろいろ考えまして、原因となる問題をいくつか浮き彫りにする形で資料を作っております。

まず1つは不良債権問題でございますが、資産価格、地価についても株価についても下落が続いているということでございます。特に株価につきましては、このグラフで「計画策定時」というのは95年の10ー12月に相当すると思うのですが、その頃は株価が底を打って少し回復基調を見せ始めていたという時点で計画を策定いたしたわけですけれども、その後、96年の4ー6月をピークにまた下落に転じまして、最近では1万3,000円という最安値を記録するということで、ここはおそらく株価とか地価についてどういう想定を置くというはっきりとした数値的なものは、計画のときにはなかったのだと思いますけれども、かなり頭の中にあったものと違ったものの1つではないかと思っております。

これを反映いたしまして、2枚目に「家計のバランスシート調整」がございますが、家計の負債比率が非常に高い水準のまま止まっている。

3枚目に「金融機関の公表不良債権等の推移」が書いてありますが、計画策定の段階までは公表されている不良債権というのが13兆円程度ということで、山を越えたという認識があったのではないかと憶測しております。当時は業務純益を何年間かかけて不良債権の償却に充てるということで問題が解決するというような期待も一部にあったように思いますが、その後、(注2)の少し黒くなっております棒グラフでは、金利減免債券まで入れると30兆円近くある。それも徐々に償却が済んできたと思っておりましたところが、(注3)にありますように、米国並みの開示項目について集計すると、また30兆円ぐらいに増えている。さらに最近では第2分類まで含めると87兆円というようなことも言われているわけでございます。

ここら辺は情報開示が十分じゃなかったからこういうことになったのか、あるいはそういう問題ではなくて、不良債権問題の持つ重みというものを我々自身しっかり受け止めていなかったのか、いろいろな角度からのご議論があると思います。後ほどご議論いただければと思います。

次にそれを背景にした「企業バランスシート調整」が進んでいない。負債比率が高止まりしているという図でございます。

あと、「供給面での対応の遅れ」ということで、構造改革が進んでいないから低成長になっているのか、あるいは構造改革は進んでいるのだけれども、その他の要因のため低成長になっているのかということで、構造改革がどのぐらい進んでいるかというフォローを試みているわけですが、なかなか指標的に峻別できるものがございませんで、わかりにくい資料になって恐縮でございますが、物流の分野についてはトラックにしろ、海運にしろ、鉄道にしろ、それなりの施策の進捗がございまして、例えば、鉄道についても、これは物流ということと直接関係はないかもしれませんが、一部の私鉄が値下げをするとか、そういうようなことも起こっているわけですが、図に書いてございますように、自動車から鉄道あるいは海運、航空というようないわゆるモーダルシフトについて見ますと、足元の景気の低迷ということもあってはかばかしい進展がみられてないということでございます。2ページ目はエネルギーということで、発電の卸しについての自由化がなされたということで、5倍程度の応募があり、落札価格についても平均的な発電単価を2割から4割下回るということで、これも自由化の成果が現れている分野でございます。

3ページにまいりまして、流通ということですが、これも大店法の廃止というようなことで施策の進展が見られているわけですけれども、WR比率(小売に対する卸売の比率)が高いことが日本の流通の多段階制の1つの指標になっているわけですが、94年以降あまり大きな進展が見られていないということで、個別の施策の進展と指標的なマクロのパフォーマンスというのがどうもはっきり結びついていないのではないかということがございます。

次に電気通信については、ご承知のように国内の遠距離通話から国際通話、携帯の加入量かつ通話量というのも、非常に大幅な自由化の結果、大幅な低下が得られている。これは非常に進んでいる分野であろうと思います。

金融サービスについて、ここでは図として普通社債の発行額ということで平成10年に入って非常に社債の発行が増えているということで、これは規制緩和の影響もあるのではないかということで書いてございますが、この中には銀行の貸し渋りということで企業が流動性を確保するために社債を発行している。それも最近ではリスク管理の高まりでなかなか難しいという状況もございますので、果たして本当に規制緩和のよい影響でこういうことになっているのかどうかということはなかなか断定が難しい問題だろうと思っております。

旅客・運送サービスにつきましては、運賃規制の自由化ということが各分野で行われている。

農業生産につきましては、農地の権利移動面積が平成8年は11万haに達するということで、農地の流動化が進展してきているということが言えると思います。

基準認証関係につきましては、あまり大きな動きはございません。

13ページの公共工事につきましては、関係閣僚会議で公共工事のコストを平成9年から11年の3年間に10%以上削減するということで取り組んでおりますが、平成9年度についての実績調査がまとまりまして、これが年3%の実績が達成されたということで、これも一応施策の進展が見られるということでございます。

住宅建設につきまして、建設費指数が平成4年をピークに下落に転じております。これも規制緩和の影響ということで言っておりますけれども、実態の建築需要が非常に弱いという需給要因から下がっている部分もございまして、私たちの計画で想定していたような高コスト構造是正がどこまで進んでいるかというのと、需給要因によるコスト低下というのとちょっと峻別がつかない分野でございます。

もう1点は次のページからでございますが、特に昨年の4ー6月以降非常に景気が停滞しているという原因の1つとして、先ほどの公共投資の話もございますが、9兆円の国民負担増ということがよく言われるわけですが、その点について資料を作ってみたものでございます。9兆円を事後的に家計調査などから確かめてみますと、確かに9兆円近い家計の負担増があったのではないかと考えられます。内訳としまして消費税の引上げで5兆円、96年度までの特別減税の取り止め、これは定義により2兆円、社会保険料の引上げが0.6兆円、医療費の負担増、自己負担の増が0.8兆円ということで、大方は消費税の引上げ、特別減税のとりやめ分でございます。ただ、これが経済計画にとって意外なことであったかと言いますと、経済計画を策定しましたのが95年の12月で、税制改正のパッケージ、消費税の引上げ、あるいは特別減税の打切りというのを含めた税制改正のパッケージが94年の10月でございまして、経済計画策定時には既に想定していた。ただ、その事後的な影響が的確に想定されていなかったということであって、国民負担増ということ自体は経済計画においても大方は想定されていたということでございます。

2枚目に「経済白書」の資料でございますが、「なぜ消費が去年の4ー6月以降落ち込んだか」ということの要因分解をしたものでございます。「トレンド」と書いてございますのが消費関数から計測したトレンドでございまして、これによりますと「駆け込み需要の反動及び可処分所得の減少」によって説明される以上の消費の低下が、特に昨年の7ー9月以降顕著になっておりまして、これをどうしても家計の消費マインドの冷え込みと言う以外ないわけですけれども、「なぜそういう冷え込みが生じているのか」という点が議論の1つのポイントであろうと思います。

次のページは、先ほどの金融機関の不良債権問題とも関係いたしますが、金融機関の貸出態度が非常に厳しくなっている。それに合わせる形で中小企業の設備投資が落ちている。果たして因果関係がどれだけあるかというのがはっきりいたしません。後ほどまたご説明いたしますけれども、企業の成長期待というものが低下しているということの方が大きな原因であるとすると、貸し渋りがある程度収まっても企業の投資は力強い回復が期待できないというふうにもみれますので、ここは皆さんでご議論いただきたい点があると思っております。

アジアの混乱が我が国に与えた影響ということで、これもいろいろな見方があると思いますが、1つの試算として私どもで計算したものをご紹介させていただいておりますが、幅がございますのは、アジアがどのぐらい減速するかというのに見方に幅がある。あるいは日本の輸入の価格弾性値をどのぐらいと見るかによって幅があるということでございますが、これですと最低で0.3ポイントGDPを押し下げる。最大で0.67ポイントGDPを押し下げるということでございます。ただ、また後ほど資料にございますが、10月のIMFのワールド・エコノミック・アウトルックが5月からどのぐらい改定されているかというのをアジアについて見ますと、アジアのGDPの減速幅というのはもう少し厳しいという見方もあり得ると思いまして、その場合、我が国に対する影響もその分大きいものになろうかと思っております。

最後に「将来の不透明感」ということでございますが、資本ストック循環についてのグラフ、これも経済白書の引用でございますが、従来、横軸に資本ストックの前年同期比がとってございまして、その6%というところを中心に資本ストックの循環が生じていた。この「循環」と申しますのは、縦軸が設備投資でございまして、設備投資の伸び率が低まると資本ストックの前年同期比が低くなるということで、時計回りに循環が起こるわけですが、92年のあたりからこの循環が外れてどんどん左下の方にシフトしている。今、資本ストックの前年比が4%のあたりで循環している。これが4%で止まるかどうかという点が不確実でございまして、成長期待が弱まると設備投資も低下する。設備投資が低下すると実際の成長率が低下するという、「低成長の罠」という言葉がございますけれども、自己実現的な予想というものがございまして、果たしてこのままで通常の循環ということで止まるのか、あるいはさらに一段の調整が必要になるのかというのはなかなか客観的な判断が難しい点だろうと思っております。

ちなみに「4%」と申しますのは、ほぼゼロに近いような非常に低い期待成長率の下での資本ストック循環ではないかと思っております。

次のページに「企業行動に関するアンケート調査」がございますが、これは上場企業を対象に各年初、1月にアンケート調査をした結果を毎年度取りまとめているものでございます。「当年の見通しはいくらか」、「今後3年間の見通しはいくらか」、「今後5年間の見通しはいくらか」ということを、傾向として企業が予想する期待成長率が、90年代、つまり平成2年度以降長期的に低下して、最近は1%、2%の範囲内というところまで低下してきているということでございます。これは今年の1月の時点でございますので、今年平成10年度、一番右でございますが、企業の成長期待ということで0.9というのがございます。その上の1.4、これは今後3年間の成長率、1.7というのが今後5年間の成長率ということで、将来にかけて緩やかに成長率が回復していくという期待を常に企業は持っているわけですが、それにしても全体として右下の方に成長率がこれまで長期的に低下してきているという状況にございます。

業種別に見ますとまちまちでございまして、製造業の中でも比較的自分の業界の成長率は高いというところが電気機械、精密機械、非製造業の中でも通信とか航空、運輸という部分は非常に高い成長率を見込んでおりまして、特にマイナスの成長率を見込んでおりますのは、右側の方の非製造業の中でも建設、不動産というところは、今年についてはマイナスの成長率、今後5年間ということをとっても1%に満たない、あるいはマイナスの成長を予測しているところもあるということで、かなり業界によって見方が違っているということでございます。

資料の説明は以上でございます。

〔 部会長 〕 ありがとうございました。

資料5の〔別紙〕、これはいいのですか。

〔 事務局 〕 これは第2のテーマともちょっと関係いたしますので、資料5の〔別紙〕に「世界経済の見通しの想定と実績」というのがつけてございます。先ほど説明の中で触れさせていただきましたけれども、少なくとも97年度までは米国経済が予想よりも非常に好調だったということでございます。

アジアにつきましても、当時、やはりこういう混乱が起きるということは予測できてございませんで、ほとんどの国際機関が7%程度の成長を2000年までの間持続するという見通しを立てておりまして、我々もそういうコンセンサスの見方に同調する形で、特にアジアの混乱ということを予想してはいなかったということでございます。

〔 部会長 〕 ありがとうございました。

シェアードさんお見えになりましたのでご紹介いたします。

それでは、今、事務局からご説明いたしました「現行計画の想定と現実の乖離」について、皆さんからご意見を伺いたいと思います。

〔 A委員 〕 まず、非常に詳細かつオープンな資料を作っていただきましてありがとうございました。

若干のコメントというか感想を述べさせていただきます。

まず、資料2ですが、これは先ほど事務局も言われたように初公開であって、本来、もっと早くこういう分析が必要ではなかったかと思います。

結局、外需の見通しの誤りは、ほとんどが輸出ではなくて輸入ですから、これは結局内需からきているものである。したがって、誤りの原因は内需であるわけでして、問題は内需の何が一番問題かということなのですが、これは当然同時決定であって、なかなかよくわからないわけです。

そこで、問題なのは、「委員限り」のグラフの右下の2つ、政府関係の支出であるわけです。政府の最終支出と政府の固定資本形成というのは、べつに内需に依存するわけではない。外生変数ですから、この見通しの誤りというのはかなり政府の責任であって、他は結局民間機関でも同じように間違えているわけです。

結局、この問題は何かというと、その当時から財政再建をするということはコンセンサスであって、財政再建すれば当然公共投資が落ち、政府消費が落ちるということはわかっていたにもかかわらず、デフレ効果を過少評価するために、あえてこんなに伸びるような政府支出の見通しを作ったのではないかということであって、これは、そうだとすれど非常に大きな問題であるわけです。

今、銀行経営とか何かで、過去の経営責任ということが問われてきいるのですが、今後、こういう乖離を生じないためにも、特に外生変数である政府支出の見通しを、これは計画ではなくて調整局なのですが、どういう根拠に基づいてこういうことをしたのかというのは、事後的にもきちっと分析していかなければいけないのではないかと思います。

財政再建がいけないということではなくて、財政再建が必要なのは当然なのですが、そのデフレ効果をあえて事前に過少評価するということが問題なのだということであります。2番目に重要なのは資料5ですけれども、16ページあたりを見ていただきますと、消費性向、白書の分析だそうですが、やはり大事なのは消費性向がなぜ落ちたかということで、これは事務局もおっしゃいましたが、普通、消費性向の要因分析というのはインフレと雇用不安で説明できるわけで、インフレではなくてむしろ雇用不安が大きいと思いますが、そちらの分析が重要だと思います。それは今後の、雇用が一層悪化することによるデフレスパイラルという問題と密接に関わるからだと思います。

18ページの「アジアの通貨経済の混乱が我が国の経済に与える影響」という点なのですが、この分析自体は非常に立派なものだと思うのですが、問題は、アジアの危機を何か非常に外生的なものというふうに受け止めていいのかどうかということです。米国が言っていますように、ある程度は日本の不況からきている面もあるのではないか、日本の内需の落ち込み及び円安というものが、アジアの通貨経済の混乱に与えた影響をどう評価するのか。そういうことを無視する分析というのはいまだに日本を小国モデルというふうに考えていることで、これは特にアジア経済を見るときは全く成り立たない仮定であるわけですから、是非、日本の景気後退のアジアに与える影響と両方分析しなければ、かなりバランスを欠くものではないかと思います。

あとは細かいところですけれども、資料3なんかで、これまでどこまでフォローアップができたかという点なのですが、これは事務局もおっしゃいましたけれども、方向だけ合っていればいいというわけではないわけでして、例えば、私の関係している点であれば3ページの有料職業紹介とか派遣事業の点について、例えばネガティブリスト化ということが1つの評価と言われているのですけれども、実際ネガティブリストの中にはサービス業、製造業という2大産業が全部入ってしまうということで、これではある意味でほとんどネガティブの意味がない。派遣についてはもう労働省の方には、うちも例外にしてくれという申込が各省から殺到しているそうですけれども、そういう状況では何のためにネガティブにしたかという意味がないわけでして、そういうようなこともきちっと監視していただく必要があるのではないか。

資料4の社会資本のところでは、これは言うまでもないわけですが、例えば保育所について言えば、全体量が問題なのではなくて、保育所自体は全国ベースで余っているわけで、その地域偏在が問題なのですから、全国平均で見て目標値を達成するかどうかというのはあまり意味のない指標であるわけで、そういう面についても是非配慮が必要ではないかと思います。以上でございます。

〔 部会長 〕 ありがとうございます。

それとの関連か、今のいくつかについて、事務局で特にコメントありますか。

〔 B委員 〕 今、A委員から出された問題の第1点と関連してご質問をしたいと思います。

私も、計量経済学をやっている立場から、今度の予測が結局予測値と現実値との乖離がなぜ起こったのかというのが問題なわけでありますが、それは大きく2つの要因があるだろうと思います。

1つは外生変数の与え方、それ自身を見誤ったのではないかという問題と、もう一つは現行の経済モデルによって的確にどこまで予測することができるか、その予測力の問題というようなことに分けて考えることができるのではないだろうか。

そうした場合、今回どちらの方が大きかったのかというのは、やはり検討しておくべきことでありまして、特に、先ほどご指摘のあった政府の固定資本形成の大きな乖離、これは前者の方の外生変数の与え方の問題であるわけでありますが、もし、現実の固定資本形成が与えられたならば、どのような日本の姿になっていたのかということを経済モデルの方から導くこともできるということになると思いますので、そこら辺ご検討いただけたらと思います。

〔 C委員 〕 僕は、これは計画というより期待だったと思う。どちらかというと期待と実績の乖離だと見ているので、本気になってこの時点でこんな計画を立てているというのは、1995年ぐらいの状況を考えたら、私の書いた本なんかではみんな逆のことが書いてあるわけですから、こんなことは本当には経済企画庁も考えてはいなかっただろうと思うので、これはこれでいいと思うのです。

ただ、問題は、これから先の展望を考えたときに、一貫して感じられるのは、マクロ経済学者なんかと僕ら実践をやっている人たちとはだいぶ違うわけなのですけれども、私は、他の要因より消費、つまり、成熟経済になったときに成長経済と何が一番違うのかというと、サプライサイドをいくら刺激しても、結果としては景気が盛り上がらないのが成熟経済であって、これが成長経済と決定的に違うことだと認識しているのです。ところが、一連の政府の考え方には、内閣が代わっても、そこのところの認識が甘くて、サプライサイドを刺激すれは景気がよくなるという信仰、つまり10年前まで通用した論理、今通用しない論理、それがすごく大きくまだ色が出ているので、物事がうまくいかないのではないかと思われるので、先ほど、事務局の方から、何故に消費マインドが冷え込んだのか議論していただきたいということで、それは非常に率直でいいことだと思うのですが、これは議論するだけではなくて、経済企画庁としても一番突っ込まなければいけないところはそういうところだと思うのです。そこが解明できなかったら、成熟経済下で今のようなデフレ状況になったときに企画庁として力が発揮できないということになってしまうのではないかと思うのです。ここはまさにポイントだと思います。私は、論理が全部変わったのだと思うのです。途中退席するのにしゃべってしまって居心地悪いし、申し訳ないのですけれども、何かあったら後で来ていただければ、もう少し詳しく説明いたします。

〔 D委員 〕 先ほどご紹介にあずかりました。

また経済企画庁の部会の方に参加させていただく機会を得まして、大変光栄に思っております。微力ながらご期待に応えようと思っております。

第1回目は欠席させていただいたので、ちょっと途中から入ってきて恐縮ですが、今日のテーマに関して、先に2点ほど指摘したいと思います。

1つは、こういうふうに計画と現実が乖離したということは、これは日本にとって一番大きな問題だと思いますけれども、真剣に考えなければいけない問題だと思いますけれども、同時に、日本がずっと外国に対して内需を促進するというふうに約束してきた。特に96年とか97年あたりのG7あたりのミーティングではずっとそういう姿勢で臨んできた。ある意味では、そこで海外からちょっと懐疑的にみられた部分があったのですけれども、一応、「信用してください、必ずやる」というふうに国際約束したわけです。それが実現できなかったということが1つ世界の中での日本に対する信任がちょっと低下してしまっているという、ちょっと悲しいもう一つの背景があるわけで、それを指摘させていただきたいと思います。

第2番目は、もう一つ感じるのは、こういうふうにある意味で見通しを誤ったという1つの背景にあるのは、事前に政策の整合性を十分に図らなかったという、全体の政策当局、あるいは政治プロセスがそれをできなかった。よく言われることですけれども、日本の場合はあまり指令塔的なところがない、いろいろな場で調整を図っている、それは内閣であったり、あるいはこういう審議会みたいなところであったり、あるいは今度できる経済戦略会議みたいなところだったりする。しかし、振り返ってみると、もう少し事前に計画全体のいろいろな問題点、いろいろ矛盾し合っている点を内包しているということにどうして気がつかなかったのか。これはもちろん経済企画庁あるいは特別なところを批判するつもりは全然ないのですけれども、やはり1つ反省すべき点がそこにあろうかと思うのです。

その関連で2,3挙げますと、今、内需がどうして落ち込んでいるかということに対して、おそらくいろいろな要因が複合的に重なっていると思いますが、1つにはやはり金融システム問題が大きなネックになっているということです。

資料3の方では、当初の計画で、5年以内にメドをつけるというような話があって、それがどういう進歩状況になっているのかという記述があって、大体計画の内容にそって進歩が見られると評価されてますけれども、しかし、考えてみると、出てきている進歩というものは、ある意味では事前に計画したようなものではなくて、金融危機の中から生まれてきたり、あまり望ましくないような形で出てきた。特に97年に経済があれだけ落ち込んだ背景には、実は大きな不良債権問題、金融システム問題、実質的に過少資本問題があったにもかかわらず財政を強力に引き締めた。それだけではなくて、日本の国民に対して政府が「危機的な状況にある」というような暗いメッセージを送ってしまった。財政危機から始まってそして金融危機に連鎖して、最後には経済危機だらけの世界になってしまって、ある意味では非常にマインドが冷え込んでも仕方ないような部分があったのです。

もう一つはビッグバンの実施です。ビッグバンは長期的にみれば非常に必要なことですけれども、短期的に見れば、金融界にとって大きな打撃になった。ですから、ある意味では財政のルートから、金融政策のルートから、金融界、銀行セクターが大きな打撃をこうむって、そこで危機が勃発した。11月になりますと、拓銀とか山一が破綻するようなことになって、そこでますます消費マインドが冷え込む。

ですから、金融システムを5年間かけて、ある意味では情報を隠しながら、本当の情報をもらすというやり方でいいのかどうか。むしろ計画の1つの前提になっているのですけれども、果たしていいのかどうかという反省すべき点もここにあろうかなという気がします。 さらに付け加えますと、不動産絡みの話がいろいろ出てくるのですが、私は外国人として政策プロセスを見ていて非常に奇異に思うのは、1つは不動産政策に関するものです。と申しますのは、計画が95年の12月にできた。その中で、先ほどのご説明では、資産のデフレ圧力がかかってきたという話があったのですが、実は97年の2月まで国家の政策としては、土地の政策の目標は地価を引下げることだった。これは97年の2月に内閣の方で決定されて、初めて不動産政策を切り替えたのです。それで言いたいことは、本当は95年あたりから、こういうような計画を出すのであれば、特に不良債権問題、こういうことをやるということになりますと、その時点で不動産に対する政策を切り替えるべきだった。そこで政策の対応が非常に遅かったので、こういう結果に、ある意味では、100%ではないのですけれどもさせたということがある。

私は97年の2月に不動産マーケットに対する政策が変わったというのは、日本のバブル崩壊後の経済にとって大きな転換期を意味するというふうに認識したのですが、それから見てみますと、ほとんど実施されていない。今、98年の10月ですから1年半以上たっているのですが、やっと国会を法案が通ったという状況ですから、不動産に関するところでは、構造部門のところで対応が非常に遅かった。これは1つの事例に過ぎないのですが、全体の政策の整合性はどういうふうに図るのかということが、我々にとって、経済審議会にとって大きな宿題として課せられているような気がしてならないわけです。

〔 部会長 〕 ありがとうございました。

〔 E委員 〕 私はジャーナリズムの立場から少し申し上げたいと思うのですけれども、例えば社会インフラが未達の部分がいくつかあるという話がありましたけれども、これなんか新聞とかいろいろなことでしょっちゅう言われていますけれども、下水道を早くやれとかそういうことが言われているわけです。それを、予算配分をきちっともっとドラスチックにやると言いながら、ほとんど予算配分は変わらない。こういうのは言ってみれば政治の問題と非常に関係があるのではないかという気がするわけです。今、D委員は政策の総合調整というふうに言ってましたけれども、やはり、政治的な要因を加味していかないと、各省庁の力関係だけでやっている限りは、下水道だとか、歩道を広くするとか、そういう福祉的な社会インフラというのはなかなか広がっていかないのではないか。そういうところにも要因を求めるべきではないかと思います。

細かいことがいくつかありますけれども、例えば不良債権の問題は、もちろん金融機関の努力というのは必要なのだけれども、先ほど言った経済見通しが、96年度から書いてありますけれども、90年度、バブル崩壊した後も3~5%の成長ということを確か言っていたと思うのです。3~5%の成長が10年間続けば不良債権はなくなるとみんな企業経営者は思いますよ。それを企業経営者が信じたということもまた問題だろうけれども、やはり政府が公式ベースでそういう甘い見通しを立てれば、どこかにちょっと飛ばしておこう、どうせ5年か6年すれば、これは不良債権でなくなると思うのは企業経営者としてある意味では当然だろうと思うのです。そして、価格が上がったときに処理すればいいと。現実は逆のスパイラルを描いてしまったために一挙に矛盾が吹き出てしまった。そういう意味で言うと、政府の経済見通しというのをきちっとシビアに出していくということは、企業経営者に与える影響、あるいは企業心理に与える影響はすごく大きいのではないかということが2番目です。

もう一つは、輸送コストのところでは「横ばい」とか「やや上昇」ぐらいで、これは合格点だと言っているのですけれども、日本にとって輸送コストが大きいというのは、実は公共社会政策の上ではものすごく重要な問題だと思うのです。これは国内だけを比較していれば確かにそんなに上がっていないけれども、例えば、高速料金はアメリカなんかほとんどタダなわけです。もし、東京から北海道まで10トントラックを走らせれば12,3万円かかるわけです。ワシントンからカルフォルニアまで日本の高速料金で走らせたら、おそらく何百万円とかかるのではないかと思うのです。そういう意味で言うと、国内においていくら輸送コストとかそういうものがあまり上がらないからといって「これは合格だ」という言い方は間違いであって、やはり日本の国際競争力の非常に大きな意味というのは輸送コストというのはすごく大きいと思うのですけれども、これはやはり国際的な比較の中で、輸送流通コストをどうやって改善するかというのは、日本の経済行動にとってものすごく重要な問題だと思うのです。そこら辺は海外との比較なんていうのも出していただきたいと思います。

もう一つは、アジアの混乱というのは、まさに日本がどうするかということももう一つ大きいのですけれども、おそらく全員が間違えたというのは、やはり今の通貨経済といいますか、マネー投機というのですか、この問題をどう把握するかという問題が非常に大きかったという気がするのです。もちろん日本の問題としては日本の内需をきちっとするというのはものすごく重要なのだけれども、通貨システム、今日の新聞を見ると、ソロスは白旗を掲げて「やめた」なんていうことが出ていますけれども、ヘッジファンドを中心とする通貨投機という問題を見誤った、これは国際社会全体が見誤ったということであろうと思うのですけれども、こういう問題を今後どう考えるのかということが、すごく大事かなと思います。

しかし、それを置いたとしても、例えばこれから11月に日本は大変な外交の季節を迎えるわけですが、ロシアの訪問とか、クリントンの訪日だとか、江沢民の訪日だとか、APECの首脳会議とか、これをおそらく日本の外交としては、多分何か、今のままの状況でいけばただルーティーンをこなすという形で終わってしまうのだろうと思うだけれども、実は、こういう外交、これからの1か月間の外交はすごく重要な意味を持っている。そういったときに、共通することはアジアです。日本の経済を再生することによってアジアのしんばり棒を作るのですよというメッセージを大きく発することができれば、この11月、12月の外交というのも、すごく色彩がはっきりしてくるというふうに思うわけです。しかし、今の流れを見ていると、多分、「クリントンさん来ました」、「江沢民さん来ました」、「向こうに行きました」、行って何かルーティーンをこなしたというだけで終わってしまって、重要な外交というような匂いが全然出てこないだろうと思うのです。

そういう意味で言えば、僕は、来年なんかはヨーロッパがすごく大きな意味を持ってくるだろうと思うのですが、日本経済を再生することによってアジアを再生していくのだ、というようなそういう大きなスローガンというか、大きな意思というものをもっていくということが、これからの外交という面でも重要なのではないかということがもう1点です。

最後にもう1点だけ言うと、僕もジャーナリズムの感覚だから、こういう経済計画の作り方というのはなじんでないし、全然わからないのだけれども、やはり各省庁が出した数字を延ばしているという感じがどうしても否めないわけです。例えば2010X年、かつて経済企画庁もそういうことをやったこともありますけれども、僕も毎日新聞にいたときに、1985年のプラザ合意の直後に「日本大転換」、それは2○○X年ぐらいにどういう生活になるかということを思い描いて、半年か1年ぐらい連載したことがあるわけです。そういうことから言うと2010X年、つまり、今の団塊の世代たちがリタイアする頃の我々の生活というのは一体どうなっているのか、どういう生活が一体居心地のいい社会であり、居心地のいいシステムであり、あるいは国際社会の中で居心地のいい、あるいは尊敬されるような日本なのかということを、逆に一ぺん思い描いてみる。今の感じでいけば厚生年金なんか20万円ぐらいしかもらえないわけです。20万円しかもらえないのだったら払うのはバカくさいと思うのは当たり前なわけです。しかし、今考えてみると、アメリカの年収は300万円か400万円ぐらい、日本は500~600万円ぐらいある。しかし、どちらが豊かかと言うと、200~300万円でも豊かな生活ができるシステムというのがアメリカにあるわけです。したがって、20万円とか15万円もらったって豊かな生活ができるシステムというのはこういうのがあるのですよというような、感性でわかるシステムという図を描く。そして、そういう社会を作るために何が今邪魔になっているのか、この規制が邪魔になっているとか、この族議員が問題だとか、そういうことを言い出すと問題なるかもしれないけれども、そういうことが問題になっているとか、そういうことの方法論から問題を考えていくということもしないと、おそらくこういうものを読んだときに国民がなかなかエキサイティングしないのではないか。やはり国民のエネルギーをくみ出して、政治、社会を変えていくためには十年後にこういうふうになるんだ、そのために邪魔している規制はこれなんだ、そのために邪魔している利害団体はこれなんだ、邪魔している何とかというのはこれなんだなということがわかってきたときに、初めてエネルギーというのは出てくるのだろうと思うのです。

そういう意味で言うと、国民の生活者、消費者に見合った、感性に見合ったような社会経済システムというのを描いてみる。そこから逆算しながら、問題点を洗い出してみる。そういう方法論もあってもいいのではないかという感じを受けました。

〔 F委員 〕 皆さんがおっしゃったことに関連すること、しないことを含めまして、2,3申し上げたいと思います。

1つは、従来から私は、5か年計画というものの位置づけというものをもう少し明確にしておいた方がいいのではないかという考えを持っているのですが、中国の5か年計画と日本の5か年計画とは全く違うわけです。完全に民主主義市場経済下の五か年計画ということは、結局、その中で政府がやること、あるいは目標、こういう日本の国にしたい、あるいはこういう国際環境の中で貢献していきたいという方向を示すということだろうと思うのです。実際的に何パーセントという数字を計量的に出してやっていくということは、かなり誤解を招くことがあるのではないかという気がしています。

政府がやることというのはGDPの比率の中で非常に低いわけです。もともと市場経済は政府の比率を、「小さな政府にしろ」ということになっているわけですから、その方向でじゃあ政府はどういうことをしようかということになると思うのです。そうなると「合理的な政府支出」ということで、特に一番大事なのは構造改革、ディレギュレーションという、規制をなくして、いい環境を作っていくということが第一番ではないか、そういう方向に沿っての5か年計画といいますか、目標値を与える。そうすると、今、E委員が言われたように、明るい展望が、これは後半の問題になると思いますけれども、明るい展望を開くということになる。

第2番目に、予算の問題も、これは来年度における国内、海外への政府としての重要なメッセージだろうと思いますので、C委員が言われるように、願望値というようなことではだめなので、もう少し現実的な、せめて期待値というようなことがなければならないと思います。そういう点では政策対応が極めてまずかった。ということはやはり現実の分析が非常に悪かったということだと思います。

したがいまして、経済成長率の見通しがこれだけ間違った、民間とこれだけ違ったと言って、両方で「おまえが悪い」、「俺がよかった」ということをお互いに言い合っても、極めて非生産的な話であって、こんなことをしてもしようがないし、また、エコノミストの間でも、「俺は正しかったけれども、おまえは間違えた」、こんなことをやっていてもしようがないと思うのです。もっと現実を正しく見ていくということが必要ではないかと思います。

僕が1つ恐れるのは、ここにきて、現実が悪いということになったら、全部が「悪い、悪い」ということになって、いままでよかったことも一ぺんに悪い方に行って、企画庁の予測も、長官の一言があったのか、あるいは全体の環境が全く違うからか、大きく変わった。同時に、いろいろな対策につきましても、何でもありでいくらでも金が出る。95年には金融不良債権、住専問題のときには6,850億円であれだけ大問題になったのが、今年は、私も関係しておりましたけれども、去年の年末以来で30兆円という枠組みができた。と思ったら知らぬ間に、「知らぬ間に」と言うとおかしいけれども、今度は60兆円という、これをドル換算してアメリカなんかに行ったら目を剥くような数字だと思うのです。「日本はすごい、よくそれだけのものを出す」というような状況になっておりますので、やはり財政のディシプリンも必要だし、それから、官民ともにモラルハザードということが非常に必要ではないかと思っております。

最後の点は、先ほどのご説明の中でも、株式市場の問題について、これはもちろん株式市場ですから様子はわかりません、あるいは市場の警告とかマーケットのシグナルに耳を傾けろということは、私もいつも言っているのですけれども、株式市場にしろ、あるいは公社債市場の動きにしろ、あるいはジャパン・プレミアムの問題とか、あるいは外為市場の動きとか、これはいろいろな予測がありますけれども、やはり非常に重要なマーケットであることは間違いないし、現にこの数年間の経済政策、景気対策というのは、全部株式市場の動向によってやってきたと言っても間違いないと思うのです。いままでやった中で1万5,000円を割ると一生懸命やった。株価は大体3割から5割戻っているのです。ただ、今回だけは1月のあれが底かと思って16兆円と言ったら結局は戻らない、ひどい状況になってきている。これは他の要因がずいぶんあるけれども、そういう状況からやはりマーケットの状況ということをどう見ていくかということは、これからの計画を作る場合、非常に重要な問題で、これを無視できないと思います。

ですから、計量的な積上げだけではなくて、これが心理的な要素をものすごく大きく持ってくる。アメリカにしても7,000ドルで止まれば、まずいいと思いますけれども、それよりいくと今度は心理的にものすごくマイナスの経済効果を及ぼすと思うのですが、これは私どもの研究所なんかでも、マクロモデルをやっているエコノミストと現場をやっているストラテジスト的なエコノミストの間では、いつもかなり予測が違ってくるという点があるものですから、その辺をどういうふうにこれから取り入れてやっていくかということが非常に重要な問題ではないかと思います。

と言って、「君なら、どうする?」と言われても、私もちょっと案がありませんので、これはまた皆さんでお知恵を出していただきたいと思っております。

〔 G委員 〕 財政学者という立場でお話をさせていただきたいのですが、大蔵省の回し者ではないということを申し上げたいところですけれども、一応、ここで議論されているのは、比較的長期といいますか5年ぐらいの計画というものを議論されていると思うのですが、そういう中で財政をどう位置づけるのかというので、どうも皆さんのご議論を聞いていますと、今のお話はちょっと別ですけれども、それまでのご意見を聞いていますと、すべて財政は外生変数で扱っていいという、マクロモデルはすべてそうやっていると思うのですが、長期的な経済を考える際には、財政政策というよりは財政収支というのはあくまでも内生化して考えてもいいものなはずなのです。

つまり、赤字が累積すれば、それはまた結果的に実物経済に何らかの形で影響を与えてしまう、ないしは政府自身が維持できなくなる、サステイナブルでなくなるおそれがありますから、そういう形で財政というものをあまり外生化して、それが経済に対して影響を与えられるのだという議論は、こういう長期の計画を考える中では少し危険なところがある。ただし、ある程度の外生化、個別の政策というのは外生の中で議論をしてもいいところはありますけれども、結果的に財政の収支の制約を受けないと危険なところがある。特に最近の、はっきり言うと無茶苦茶な国債発行、地方債発行をしていくというのは、もう1,2年のうちに財政が破綻することは目に見えているので、おそらく平成のドッジラインのようなことが必要になるような、財政的にはそういうことが必要になるような状況が生まれるのではないかと思いますので、その辺、今回、財政がものすごく収縮しているというわけですけれども、基本的な構造改革という長期の計画が走る中での経済計画というのを、本来想定していたはずなのですけれども、そこがどこでズレたのかというのが問題なのではないかと思いまして、むしろ、今、議論していただきたいというか、もっと掘り下げていただきたいのは、昨年来の不況の原因といいますか、不況が深刻化した原因が実物面なのか金融面なのかというのを、もう少しきちんと分析された方がいいと思います。私自身は、むしろ金融要因の方がはるかに強いのではないかという予想を持っております。従来のモデル分析というのは、金融的な側面を分析するのが非常に弱いと、私自身は理解しております。反対の意見もおありかもしれませんけれども。通常の一般均衡的なモデルというのは、貨幣の部分を分析するのが弱いですので、その辺、もう少し別に短期の不況の原因を分析する手段を開発されるのを少しお勧めしたい。

最後に、計画というもの、先ほど、夢では困るというご意見もありましたけれども、ある程度夢であってもいいのではないかというのが、私が思っているところです。というのは、あくまでも資本主義体制の中での計画ですから、政府が目標値を示す。この目標が例えば「長期的に日本はマイナス成長ですよ」というようなのを出してしまったら、この先、何もないということになりますから、今日の数字は1人当たりではなくてマクロの数字で出されていますけれども、少なくとも1人当たりの数字は成長が必要だろう。それがなければ、はっきり言うと国民の希望がないと言ってもいいと思いますので、目標値はそれでもいいかもしれませんけれども、ただ、その目標に対してこれだけの乖離が起こっている。それはやはり短期の政策が失敗しているということと、構造改革の計画、財政も民間経済に対しての構造改革の施策がうまく適応されてなかった、タイミングを間違えてしまったという、そこの部分があるのではないかと思いますので、それをやはりもう少し突っ込んで分析されないと、次の計画を立てるときに、おそらくまた失敗をするのではないか。次の計画はひょっとするともっと萎縮したようなものになってしまうかもしれませんので、そうならないようにするためにも、もう少し金融面といいますか、信用創造とか信用クランチが実物経済に与えるプロセスをきちんと盛り込んだ計量モデルを開発していただきたいというのが希望であり意見でございます。

〔 H委員 〕 私、2点ばかり申し上げたいのですが、1つは、先ほどからいろいろ出ていますけれども、東アジアの要因と申しますか、海外要因で特に東アジアとの連関を、貿易財については特にグローバルになってきているわけで、そういう中で日本の経済自身、単独というかインデペンデトではあり得ないし、例えば東アジアだったら、今、120円ぐらいで換算すると、日本を500兆円とすると300兆円のGDPになっているわけです。そうすると、いままで7~8%で伸びているとすると、20兆円から30兆円ぐらいのマーケットが開けてきていたわけです。それが今回ドンといっているわけで、輸出については多分遅行性があるので、これから相当インパクトがあると思います。したがって、これから計画を組み、それを実現していくという中では、やはり東アジア、アメリカもありますけれども、といかに連関を持っていくか、そういう政策がないとなかなか難しいのではないか。すべて外生変数が非常に大きくなるのではないかという感じを持っています。特に430億円という資金を出していきますし、宮澤構想だと300億円といってあるわけです。それをいかに有効に彼らのリスタートに活用していくか、これは非常に重要なポイントではないか。これをいかに早く立ち上げるかということが、ある意味では、日本の国内の経済を立て直すという面も非常に重要ですが、併せて彼らが彼ら自身の内需をいかに早く立ち上げるか、この点が非常に重要ではないかと思っております。

もう1点は、基本的に言いたいことは、環境が変わっている中で従来型の仕組みで計画を組んで実現していこうとしても、非常に難しいのではないかということであります。2点目は、国内で見ますと、例えば地方分権とかいろいろなことが言われていますが、本当にある意味で国内の内需を増やしていく、あるいは活性化していくためには、従来型の50年成長するという感覚での従来のままの仕組みをそのままにしてやっていけるのか、こういうことになっているのではないか。公共投資にしても、配分があれだけ議論されながらなかなかうまくいかないというのは、例えば地方交付税の問題とか、従来の全国に均霑するという発想、成長しているパイを均等に分けていく、こういう仕組みができ上がっているのではないか。

したがって、ある意味では、ある時点で壊していく。構造改革というのはそういう面を持っていたと思うのですが、その調和をいかにしていくかということになっているのではないか。経済の回復も非常に重要ですし、それと併せて、従来、ひとりでに成長しているという感覚を持っているところをどう変えていくのだ、こういう視点が是非必要になってくるのではないかと考えております。

〔 I委員 〕 私もH委員と同じように、企業経営に携わっている者として意見を申し上げたいと思います。

今、実際に企業は大変に業績が悪いのですが、業績が悪いのは、企業の利益で言いますと、部会長、ご存じでございますけれども、営業利益が悪いわけです。つまり、企業が銀行の株式の評価損があって税引き影響が悪いといっても、特別損で処理したとしても、それは実質的な問題ではない、単なる評価損に過ぎないわけです。今、問題になっているのは、大半の企業が営業利益が赤字になっているというのが毎日、新聞に出ているわけです。つまり、結局、売上量が減って、しかも世界的な価格競争の中で、これは冷戦構造が崩壊した後、世界的な競争の中に巻き込まれているわけですから、国際的な価格水準が日本にヒタヒタと押し寄せて来て、そのために価格も下がっている。

一方、リストラの方は、世界一高いコストをみんな抱えていて、リストラがなかなか進まないということで、間接費がなかなか切れない。ダイレクトコストも抑えられないという状況で、損益分岐点が上がってしまって、そこでミスマッチが起こっているわけです。したがって、そこが原因で企業の収益が悪くなっているわけです。

先ほどご説明の資料を見ますと、1%か2%の低成長ということだけれども、コストが非常に高い中での1%とか2%の成長を日本企業はやって、低い利益率の中で収益を上げて、ゴーイング・コンサーンで企業経営をやっているわけです。したがって、アメリカのように短期の高い利益率の中で、短期的な企業を3か月ごとに成果を見て、そしてだめだったらリストラするとか分離するとかというような企業形態のようなものではないわけです、日本の企業形態というのは。そういう企業の集合体が日本経済を支えているわけですから、それに合ったような社会構造なり政策を展開していかないと、これからの成熟した社会では不可能だと思います。C委員はご退席になりましたけれども、従来の時代と違って、成熟した低成長の中における日本の企業体の特殊性を踏まえて経済構造を考えていかないといけないだろうと思います。

もう一つの問題点は、例えば社会資本の整備目標にしても、いろいろありますけれども、新しい21世紀を考えるような事業分野に対する、光ファイバーというと多少手前事になりますので言いにくいのですが、こういう問題とか、あるいは情報化の教育の問題とか、非常に低いわけです。つまり、社会的な資本の形態としても、大体、進捗できているという話もあったけれども、できていない分野に日本の21世紀をかけて企業はみんなやっているわけです。つまり、従来、日本の企業のキャッシュフローの源泉だった主幹部門のいろいろな事業体というのは、1つの企業の中で見ましても、それの成長が止まって価格が下がって、一方、なかなかリストラできなくて、分岐点が上がってしまう。それを新規事業とか新製品で回収しようとしても、そちらもうまくいかないということですから、今、我々が置かれている立場というのは、有効需要をいかに創出するかということ。バランスのとれた設備投資なり経済政策をやっていくと同時に、21世紀を迎えて新しい事業創出分野の方にももっと資金を投入していかないといけない。そのあたりが遅れているということは、単に数字的に遅れているということではなくて、その効果がものすごく影響してきているということをよく認識していただきたいということです。

ですから、日本の特殊性と、アジアの問題もそうなのですけれども、日本の円高構造に急速になってきたものが、結局は、アジアとの関係で問題を起こしてきた。今後は、そういう東アジア、あるいは東南アジアを含めたグループとしての日本経済を考えていかないとやっていけないのではないかということもご認識賜りたいと思いますので、私は、数字的な分析は非常に立派にできていると思いますけれども、そういうようなところを是非、特殊性も含めてご検討賜れば大変ありがたいと思っております。

〔 J委員 〕 私は、おそらく経済とは一番遠いところにいる人間なのですが、今日聞いた範囲で、私が感じたことが2点あるのですが、1つは、ここで言っているモデルというものが私自身にはよくわからなくて、物理の方では自然というものを、どうそれに近いもので表現するかという意味で「モデル」という言葉を使って、その場合はゴールというのが非常にはっきりしているわけです。そのモデルを作っていろいろなことを議論する。現実とモデルとの乖離というのは、当然、それをどう縮めていくかというのが重要な問題になるわけですが、どうも、今日の話を聞いていると、経済、特にここで言っているモデルというのは、どうもそんなものではないらしいというのがわかってきまして、だから、本来、モデルと実態が合わないのはなぜかというのがここの議論なのですが、そういう問題が本当に意味があるのかというのが私自身の疑問なのです。

要するに、人間が関係したところというのは、ゴールをどう置くかという問題、先ほど、どなたかおっしゃっていたのですが、計画を立てて何かをやるというときに、ゴールがどこにあるのかという問題だろうと思うのです。ゴールというのがはっきりしない限り、計画もあるいは実態との乖離というのも意味を持たないのですが、そのゴールが、今、皆さんのいろいろな意見を聞いていても、委員によって全部ゴールが違っているような感じを受けるのです。ですから、そのような中で実態と何かが乖離するという議論はほとんど意味を持たないのではないかという気がしまして、それが第1点です。

というのは、僕らから見ますと、地球の上で人間が生きていくときに、人間が生きていく上で必要なものの流れとかエネルギーの流れがあって、そういうものは当然有限なわけです。人口が増えていって、これだけ経済規模が拡大してくれば減っていって当然なのですが、実物に関わる経済では、今の話を聞いていると、みんなコストを下げてという話です。こんなことは非常に不思議な気がするのは、普通は全体が減っていって資源がなくなっていけば、本当はもっと高くしてなるべく実物の方は減らしていかなければいけないというのが普通の発想だろうと思うのですが、いろいろな規制を緩めて、とにかく実物はコストを下げて安くして、世界的な規模で日本が競争できるような環境を作っていく。これがまず第1点の不思議なことです。

一方で、金融の方はそういう制約がないわけです。資源的な意味で上限があるとか何とかということではなくて、極端なことを言えば、通貨なんて刷れば刷るだけいくらでも増やせるのではないかと思うのですが、一方は、制約がないために、どこかで金融みたいなものが増えてしまえば、実物に関わるところと金融というか通貨みたいなところに関わるところで、ゴールの置き方によって非常な矛盾が生じてきても不思議はなくて、今、我々が直面している問題というのは、僕らから見るとそういう問題ではないかという印象を受けるわけです。

ですから、ゴールというものをもっと明確にしない限り、こういう乖離とか何とか言っても意味を持たないのではないか。いいモデルを作る、そのモデルを作るためにどこが間違っていたのかという議論をするなら別なのですが、そのときのゴールと今のゴールが違っているとしたら、こういう現実と想定が乖離したという議論はほとんど意味を持たないのではないかというようなのが2番目の印象ということです。

その程度しか、今日の話に関わっては私の意見はありません。

〔 部会長 〕 政務次官、どうも政治の話が出ていまして、政治がすべてではないとも思うし、と言って、政治はかなり大きな役割を、例えば公共投資の分野、かなり重点的にとか、思い切って変えようという話がだいぶ昔から経済審議会では出ているのだけれども、ほとんど変わらないではないか。そこにおける政治の問題はどうだとか、もっと言えば、現実に95年以降の話ですが、モデルのお話もあったけれども、私も、経済審議会のメンバーでずっとやってきて全く忸怩たるところがあって、私、そんなにいままでいいかげんなものが出ているのを「OK、OK」と言ったつもりは全然ないのですけれども、かなり議論のところは皆さん真剣に議論されて、おっしゃったゴールについても、細かいところは別にして、日本の社会が成熟化していく中で、無茶苦茶な量的な拡大ではなくて「生活大国5か年計画」、何ていう名前だって非難されたけれども、言わんとするところは、やはりクォリティーオブライフを重点的に置いたものを作ろうとか、それから、これも問題ですが、内外価格差を解消しようと思ったことがいいのか悪いのかは別にして、割高のところはもう少し何とかしようとか、そんなにいいかげんな計画をやってきたはずではないと思うし、それをモデル化するときは、私もべつに専門家ではありませんが、企画庁のモデルもいくつかの研究所のモデルも、OECDのモデルも、本質的に違うモデルを使っているという感じもしないし、僕のあさはかな理解から言うと、OECDのモデルを使えばもっと公共投資に使えという話になるのではないかと思っていますけれども、ただ、一方で、かなり重要なところでやるべきところに対して、政治的な意思が、結果論ですけれども、誤った方向にいろいろな施策を走らせたのではないかと、だから政治家が悪いというつもりはありませんが、実際に政治の中に身を置いて、ちょっと政務次官というお立場を離れて、ポリティシャンとしてお話をされると、どんな感じでしょう。

〔 政務次官 〕 いずれにいたしましても、よく言われていますように、世紀末だからそうだったのかどうかわかりませんけれども、予想外、予想を超える大きな転換の時を、ここ数年迎えたのだろうと思うのです。東西冷戦だって、この時期にああいう形で、あるいはバブルがはじけるのも、この時期にこういう形でという予想の範囲の分野と予想を超えるものがあったのだと思うのです。

ですから、一番最初の問題の成長にいたしましても、役所、特に経済企画庁がやった、いろいろな期待とか、あるいは目標とか、あるいは見通しとか、いろいろな言い方をされておりますけれども、ここのところでちょっと見誤ったかなということですが、過去の見通しを見ましてもわりと打率はいいのです。じゃあ、民間がすべて当たっていたかというと、民間は途中で気軽に訂正ができますから、そこは役所と違いがあるのだろうと思うのです。

ですから、政治のリーダーシップが、こういう転換期だからこそ一番求められているのだろうと思うわけですが、とりわけ経済は、6割が個人消費、2割が民間設備投資という、民間に関わるものが経済でありますので、政治はその環境をどう整備していくか、環境をどう整えていくかというところで大きな責務があるのではないかと考えていますが、大変難しい時代に入ってきた。いずれにしても、20世紀の始末をここでつけなければいけないね、こんな感じです。

〔 部会長 〕 いくつか具体的な質問が出ていますけれども、これはこうだと今の段階で事務局の方からコメントができるところがあったら、ちょっとしていただいて、その後で2番目の議題にまいりますから、いかがですか。

例えば、もともとの説明のところで、やはり一番大きなギャップだった政府固定資本形成のギャップのところの問題、外生変数というか、そういうものの扱い方についてどうかとか、できれば、次のステップで、「いや、少しこういう扱いをしていたらどうなったか、どういう政策の違った選択があったのか、その選択を取ったらどういう結果になったのか」という、‘What if'というのは常に意味があるとも思いませんけれども、そういう回し方をして違う数字が出るか出ないかなどということは、今後の検討としてはしてもいいのではないかという気がしていますけれども。

今日の一連のご質問、コメントは、ずっとこなしてからまた改めて次回にでも事務局に伝えますか。是非ここはコメントしておきたいというようなことがございましたら、どうぞご発言ください。

〔 事務局 〕 計量分析を担当している立場から関連するご質問に関してだけお答えしたいと思いますが、A委員からB委員、特に、この間もA委員がおっしゃいましたけれども、事後的なシミュレーションというのをすることによって外生変数の想定の違いでどれだけが説明できるのか、あるいはモデルの予測力の問題なのかというのをチェックすべきだということで、厳密なシミュレーションを行ったわけではございませんけれども、マクロ的な想定の違いとしては、1つは公共投資の想定が違っているということでございますけれども、他に2つほど重要な要因がございまして、もう一つは為替レートの水準、これは私のご説明の中でも申し上げましたが、当時は非常な円高であったのがその後円安に振れているということでございます。3番目は金融政策の想定でございまして、当時は、実質金利がほぼゼロというような超金融緩和が長い期間にわたって続くということはあり得なかった、そういうふうに想定をした。この3つの想定というのはA委員などがよくおっしゃるように「お互いに関連している問題」で、どれか1つだけを欠いてシミュレーションをするということは必ずしも正しくないのだろうと思います。

定性的に言いますと、多くの方が言われましたように、財政再建をして、かつ金融緩和をして、為替レートが安くなって、というのは一連の動きでございまして、それだけアジアの危機にも日本は寄与しているのではないかという、定性的には確かにそのとおりだろうと思います。

ただ、分析の結果、日本の財政赤字というのが日本の金利にどれだけ影響があるのか、あるいは日本の為替レートにどれだけ影響があるのかというと、そこは確証がなくなってきて、確かに外国から見て日本のとっている政策というのは、例えば、円安の協調介入で是正を求めたときも「自分でそういうことをしているのではないか」と、アメリカ側から思われるというのも定性的にはわかるのですけれども、本当に計量的にそういうことが私どもの持っているような分析のツールで出てくるかというと、そこはちょっとまだ自信がないところはございます。

私どもの経験ですと、財政が引締めということでシミュレーションをしてみましても、やはり金利がこれだけ低い状態が長く続いて、かつ投資が出てこないというのがモデルから見ると非常に異常なことで、そこは何人か委員の方のご指摘もございましたけれども、マネー経済の、あるいは金融、実物を主体に組み立てられているこれまでの計量モデルでは、なかなかとらえることができないというのが正直なところでございます。その点だけちょっと申し上げておきます。

〔 事務局 〕 E委員から、先ほど輸送コストとの関係でそのトレンドだけ見るのではなくて外国との比較で考えるというお話がありましたけれども、まさにこの問題、高コスト構造是正の議論をしていった背景には外国と比べていろいろなものが割高であるということがありまして、それを内外価格差という形でとらえておりまして、具体的には物価局の方でフォローして毎年の動きを追っておりますので、高速料金等の比較をやったものもあると思いますので、後ほどお送りしたいと思います。

J委員の方からいろいろご意見をいただきましたけれども、技術的な点もいろいろあると思いますので、後ほどお時間をいただいて機会を見つけてご議論したいと思います。

〔 部会長 〕 G委員、長期的に見て財政関係を大部分外生化するという問題もあるというお話もありましたけれども、実際には振り返ってみて、93年、94年以降の何年かのところで、実はあまり財政均衡にこだわらないで、思い切って手を打つ時期というのは明らかにあったのではないかという感じはしますよね。けれども、そのうちに、本当は悪循環だけれども、3.5で伸びるはずが伸びないでゼロで、どんどんまともな債権が不良債権化して、F委員もおっしゃったけれども、6,850億円で大騒ぎしたのにいつのまにか60兆円になってしまった。

今の段階で、「いや、この間までの失敗というのは、財政均衡に捕らわれ過ぎて手を打たなかったのだから」と言って、「じゃあ……」というその反省から基づいた拡大政策に手を打つと、よほどその財政の話をきちんとしておかないと、4、5年前に考えていたのとは全く違ったルールの財政の不均衡の話を我々は今しているわけで、6,850億円が数兆円に膨らんだという話なら別だけれども、本当に60兆円とか100兆円に近いものをやろうということになると、かなり経済の実態の認識と経済に合った政策のマッチングというものが、依然としてズレた中でこれからやろうという政策を議論するような危険に陥らないようにしておかないと非常に問題になるような気もしますよね。

ですから、依然として過去のこの辺の、なぜギャップが生じたのかということは、明らかに政治的な部分があったことはそれとして、一応そこに入る前にかなり厳密にモデルを含めた経済予測力、あるいは実態把握のところについての反省というのはきちんとしておかないと私は思いますし、これは本当にちょっとプライベートセクト、例外かもしれないけれども、私が先ほど「忸怩」と申し上げたのは、本当に去年の消費税を上げたときも含めて、なるほど、こうやって見れば9兆円吸い上げたことになるのだけれども、我々などの業界で見ていると、96年度伸びたということもあるし、あの辺の時点でもそんなに悪いという実感はお客様を回っても我々は感じていなくて、格別に、急激に回復しているとは思いませんでしたけれども、緩やかにだんだんというのは「そういう感じではないか」と。ですから、消費税プラス2%ということは、他も合わせてだけれども、一挙にその後の展開になるとは私は予想外だったと思います。もちろんその後のアジアの問題というのは、これはもう予想を超えてという感じもありましたけれども。

当時は、会議所などはやはり中小企業のメンバーが多いこともあって、あの当時の財界の四団体、F委員もいらっしゃるけれども、私の感じから言うと、あの辺の2%上げについては慎重論もあったけれども、会議所を除けば直間比率を変えるということと、一応こういうところでやることについては問題はないのではないかという方向で、民間も動いていたような気がするのですけれども、その点においては、実態において判断を間違えていたという感じがします。

いずれにしろ、その辺のところは現在からスタートして、本当はプライベートの企業だったら、今の段階でいろいろな状況を考えれば、社長の立場にある人は、1両年中にということは政治家でなければなかなか言えないことで、企業の経営者だったら今の客観情勢から言えば「ここ数年はとにかくよくなることは期待するな」と。だけど、先ほど、E委員がおっしゃったけれども、「うちは5箇年計画、10年計画が実現するようなポテンシャルが必ずある。そのためにはこういうシナリオを書くのだ」と言うと思うのです。だけど、そういうことを、べつに今の総理という意味ではなくて、今の政治家が言えるポジションにあるかどうかというと、言わなければいけない時期はもう何年も前にあって、ここまで来て一体どういうステートメントを国民に対してきっちり示すことができるのか。政治の口からそれが言えなければ、審議会であれ、どういうところであれ、きちんとした数字と見通しというものを出していかないと、また多くの人を誤らせるということをくり返すことにつながっていってしまえば、審議会に顔を連ねている意味が全くないので、最終的な表現とかいうものはどうなるかは別にして、是非この辺のいままでのギャップの分析に基づいて、改めて現状がどういうところにあるのか。アジアとの連関の問題などは確かにかつてそれほど強く意識はしてこなかったところだとは思いますけれども、宮澤さんだのの効果なども含めて、どういうふうに評価をしていくかというのは是非皆さんのコメントを、事務局でも細かく吟味していただいて、次回以降のところにどういう形で我々の検討に反映をしていくのか。この辺、少し吟味をさせていただいて、またその途中で皆さんには個々にご意見をいただくこともあろうかと思いますけれども、ちょっと時間が過ぎていますので、第2の方にいってもよろしゅうございますか。

今日の主体は第1の方なので、まだあるという方はおっしゃっていただいて結構ですけれども。

〔 D委員 〕 一言だけですけれども、そのとき2%だけだということで、そんな大変なことではないように思われたというふうにおっしゃったのですけれども、全くそのとおりですけれども、金融システムが健全であれば、金融システムが全く問題ないという前提であれば、そこで、9兆円ぐらいで財政再建ができたと思うのですけれども、問題はあと4年間時間をかけないと回復のメドがつかないというのは、そのときの政策の前提だったのです、金融システムの方は。ですから、この順番というものが、例えば、簡単に言いますと金融システムを先にフィックスして、直して、それから財政再建をやれば、その順番でやればおそらくこれだけ状況がひどくはならなかったのではなかろうか。そういう意味で、先ほどの私の発言では政策の整合性、組合せだけではなくて時間的な順番というものについても十分吟味が必要だというふうに感じております。

〔 部会長 〕 ビッグバンの問題などもそのことですね。わかりました。

それでは、2番目の「将来の経済社会のマクロ的変化」について事務局からご説明をお願いいたします。

〔 事務局 〕 今の議論に触発されたわけではないのですけれども、参考資料の方に、ご説明は省略させていただきますけれども、参考資料4として、最近のワシントンにおけるG7の声明、参考資料5として、何人かの委員から言及のありました宮澤構想ということで、アジアの問題、それからアジアも含めて国際的なヘッジファンド等の流動的な資金の流れにいかに対処するかということで、検討が行われているという資料を用意させていただいておりますので、中身はご説明いたしませんけれども、資料のご紹介だけさせていただきます。

資料6でございますけれども、「将来の経済社会のマクロ的変化」ということでいくつかの資料を用意させていただいております。

1つは、本年6月の本審議会の展望部会報告で2010年までの成長率の見通しを出してございます。一応、年平均で2%ということを出してございますけれども、下の四角で囲んでございますように、これから先、日本は人口、あるいは労働力人口が減少する社会を迎えるということで、おそらく2005年、あるいは2007年、労働力率の見方によって違いはありますけれども、そのあたりが労働力人口のピークになるということで、2000年の最初の10年間は労働からの寄与というものはほとんど期待できなくなるということで、資本、それと重要なのは全要素生産性の上昇率ということで、この試算では全要素生産性の上昇率を90年代のこれまでの計測が0.5%ですので、規制緩和等の努力を行うことによって、それから少し生産性を高めていくという想定を置いて、この2%という数字を今年の6月の段階では出したわけでございます。

その2%の成長の中身ということで、これは全く1つのシナリオとしか言えないわけで、必ずしもこういうことで自信がある、あるいは経済企画庁の事務局として「こうである」という主張をするつもりはございませんけれども、「ちなみに」ということで提示をさせていただいておりますけれども、やはり高齢化が進むということによって消費中心の社会になっていくのではないかということがマクロ的には言えるのではないかと思います。家計最終消費の実質GDP比率というのが2枚目のグラフに書いてございます。97年のところがみんなどこのグラフも切れておりますけれども、実績のところは実績で書いてございまして、将来予測のところは供給型の長期モデルを使った推計値ということで、景気循環のようなものを捨象した形で数字ができておりますので、ちょっと切れてとぶところがところどころございます。消費の実質GDPに占める比率がやや上昇して62%程度に高まるのではないかというふうに一応の推計をしてございます。

消費性向につきましては、これは足元が90年代に入って下がってきて、これがなぜかということが1つの議論でございますけれども、高齢化とともに全体の消費性向が高まるという仮定を置いた長期的なモデルで推計をいたしますと、消費性向が年に0.4ポイントほど高まって、この点線で書いてございますように将来にかけて定常的なテンポで消費が高まっていくというような姿が一応描けるのではないかと思います。

もちろん、1つの大きなポイントとしては90年代に消費性向が下がってきている要因がなぜか、また現状というものを異常と考えたらいいのか、あるいは長期的な経路の出発点が現状なのだというふうに考えるべきかというのは、1つの将来展望の際の大きなポイントだろうと思います。

2枚目は、私どもの推計では「2000年初頭には景気回復」ということを仮定しておりまして、最終消費支出の伸びが高まります。それ以降も成長率を上回る消費の伸びというものが安定的に見込めるのではないかということでございます。

次に設備投資でございますけれども、これは日本の景気循環、篠原先生などよくおっしゃるわけですが、過去GDPに占める名目設備投資の比率というものが20%というのが過去の中期循環のピークの値でございまして、この図にもございますけれども1990年度にほぼ20%に近い19.6というところまで達した後、中期的な調整局面に入っているということで、足元96年、97年のあたりを名目GDP比率で見ますとやや回復がございますが、先ほどの資本ストックの循環の図のときにご説明しましたように、これがさらに上昇していくのか、あるいは一段の調整が必要とされるのかというところは不透明でございます。私どもの推計のときには、「2000年の初頭にかけて景気が回復するというシナリオを描いておりましたものですから、設備投資比率につきましても2000年の初頭に山があって、その後、国内貯蓄が減少するに従って、設備投資の名目GDP比率についても緩やかな低下傾向をたどる。これも1つのシナリオとして提示させていただいてございます。

資本係数の推移というのが同じページの下の図にございますが、これは定義が(注)で書いてございますが、実質GDP分の固定資産ということで、GDP1単位を生産するのにどれだけの資本ストックが必要かという指標でございます。これも2000年の初頭にかけてちょっと下がっている、谷になっている部分がございますが、これは稼働率を考慮していないので、実質GDPの方は景気が回復するに従って増えますと、見かけ上は資本係数が下がるという現象がちょっと現れております。しかしながら長期的には資本係数がこれまでよりは緩やかでありますけれども上昇していく。1つの要因としては労働力が稀少になるということが資本でとって代わられていく、成長に対する寄与として労働力から寄与するというものが、資本が寄与するという方向に長期的に代わっていくのではないかということでございます。

そうしたことを反映して、GDPの構成要素としては消費が高まり、かつ民間投資についてはそれほどの落ち込みはない、やや下がるぐらい。ここではシナリオとして将来にかけて政府投資、あるいは政府消費とも、構造改革が進むということで政府支出の割合が低められるということが1つの姿かと思います。

この図では隠れて見えないのですが、「純輸出」と下の方に白抜きで出ているのがございますけれども、現在のところ景気循環要因で輸入が落ち込むということで経常収支の黒字が拡大してございますけれども、この長期モデルで景気循環を捨象した均衡経路というものを描いてみますと、現在はほぼ均衡で、2000年に入ってからは財・サービスの純輸出ということでいうと赤字ということもあり得る。当然のことながら、要素所得がございますので、経常収支ということで言いますと、黒字を維持するということでございますが、一応、推計結果としてはこういうものが提示されてございます。

最後に、世界経済をどう見るかということでございますけれども、私ども内部の検討があまり進んでいる段階ではございませんので、一応10月のIMFの「world economic outl-ook 」の資料をご紹介させていただいております。一番右に5月との乖離幅ということで5月のIMFの「world economic outlook」との差が書いてございますが、やはりこの5か月間で非常に大きな見通しの変化があったと。日本の新聞では日本の成長率が2.5ポイントも低下したというのが報道されるわけですが、それ以外にも下の方をご覧いただきますと、太字で書いてあるところが混乱している地域でございますが、アジア、NIEsについては4.7ポイントの大幅な下方修正。ASEAN4については7.7ポイントの大幅な下方修正。ロシアについても7ポイントの大幅な下方修正というで、この5か月間に非常に大きな見通しの変化があったということだろうと思います。

このIMFの10月の見通しによりまして、アジアの99年というのを見ていただきますと、アジア、NIEsについては0.7ポイント、ASEAN4についてはマイナス0.1ポイントということで、かつてのような強い成長は見込めないものの、概ね安定化する、減少が止まるということが見込まれておりまして、唯一例外といいますのはロシアがマイナス6.0ポイントということで、来年まで混乱が続くのではないか。これが現在の一応のコンセンサスではないかということでございます。

退席されましたが、K委員が前回、アジアあるいは世界を含めてどうなるかという展望を次回示してほしいということをおっしゃっておりましたけれども、現在の段階の見通しとしてはこういうことだろうと思います。もちろん、ヘッジファンドの動き、ロシアから、財政状況も悪い、貿易収支も赤字であるブラジルとかベネズエラに狙い打ちされる、あるいはその影響でアメリカの株式市場に影響が出るというようなことは、また金融の問題として別途注意しなければいけないものだろうと思っております。

一番最後に、これも古い資料で恐縮でございますけれども、経済社会展望部会のグローバライゼーション・ワーキンググループ、佐々波委員にやっていただきました報告書から「世界経済の勢力図の変化」ということで、2010年までを展望いたしますと、我が国を含めたアジアというものを合計いたしますと、NAFTA地域、あるいはEU地域と並ぶ世界の3大勢力になるのではないかというようなことを試算していただいたことがございます。以上でございます。

〔 A委員 〕 今、事務局が言われたことの批判ではなくて、ご説明を聞くときの注意すべき点みたいな形でコメントしたいと思います。

まず、2ページの需要サイドの展望なのですが、確かに消費性向が今後上がっていく、あるいは貯蓄性向が下がっていくということはそうだと思うのですが、なぜ、それを人口成長率と結びつけて考えるのか、それはどういう理論に基づいているのかというのがよくわからないわけで、私は、これはむしろ人口が減ってくるというより、それと同時に起こっている高齢化の進展、人口に占める労働者の比率が下がるということが、ライフサイクル仮説的な形で貯蓄率を下げていくというふうに解釈すべきではないかと思います。

人口と直接結びつく理論というのはちょっとよくわからないというのが1つと、もう一つは政策との結びつきというときに人口では非常に弱いわけで、出生率の回復というのもありますけれども、むしろ大事なのは、既存の人口のうちでの就業率を高めるような政策で、消費性向の上昇、あるいは貯蓄の低下に歯止めをかけられることができるのではないか。そのためにはどういう改革をすればいいかというところにも結びつくわけでして、その意味で、ちょっと人口と消費性向をダイレクトに結びつける見方には疑問を持つということと、より重要なのは、4ページの、今おっしゃった資本係数の上昇という点であります。

これはL委員がいつも言っておられることですけれども、既に日本の資本係数というのはかなり高いわけで、これがさらに上がるという根拠は何なのか。労働力代替ということも言われたのですが、労働力が減っていけば資本蓄積が進むというのは、あくまでも短期モデルの発想であって、長期モデルであれば、労働資本比率が下がっていく、あるいは資本労働比率が上がっていくということは、資本の収益率が下がっていくのです。つまり、投資の必要性は高まっていくけれども、投資の収益率は下がっていくわけですから、そこにどういう形で投資のインセンティブが増えるのかということに対して説明しない限り、単純に労働が不足するから資本で代替すればいいというわけにはいかないわけでして、そこが1つの大きな課題であろうかと思います。

規制緩和をすれば、全部要素生産性が上がるということなのですが、どういう規制緩和をどういうふうにすればどういうメカニズムで生産性が上がるのかということをはっきりしないと、単なる空頼みになってしまうのではないかと思います。

それに関連して、時間もありませんけれども、先ほどちょっとJ委員がおっしゃった点ちついてコメントさせていただくと、地球の資源は有限なのだから、今さらコストを下げて消費を増やすというのは逆行しているのではないかとおっしゃった点は、それはそうなのですが、今、資源を十分に効率的に使ってないからであるわけで、例えば自然科学でもエネルギーロスがいっぱいあるときは、その効率を上げることによって有限の資源の中で消費を増やすということは可能なわけでして、今、まさに必要なことはそういうことで、これから日本の労働力が減っていく中で、今、非常に貴重な労働力をさまざまな規制によって無駄使いしているわけです。したがって、規制緩和することによって既存の貴重な労働力をより効率的に使うということは、決して資源の有限性とは矛盾しないという点を1つ指摘させていただきたいと思います。

〔 E委員 〕 「将来の経済社会のマクロ的変化」というテーマに合うかどうかちょっとわかりませんけれども、僕はここ1,2か月の動きを見ていて非常に気になるのはヨーロッパの動きなわけです。ドイツではコールがやめて社民党と緑の党ができた。ブレアは「第3の道」ということを言い出してきている。今、欧州諸国は保守党政権はスペインとアイルランドしかなくて、ほとんどは中道左派とか左翼政権になってきているわけです。そこで言ってきていることは何かというと、みんなはっきりしていることは、まだきちっとした形にはなっていませんけれども、大体まとまってきているのは、環境と福祉と雇用、それと市場経済というものをどういう1つのシステムにするかということが大きな議論になってきているという感じがするわけです。

情報化、あるいは自由主義経済システム、これはベースで、これが元に戻るということはないと思うのです。しかし、ここ数年間進んできたアメリカ的な勝者、敗者がはっきりするような市場原理主義だけでは政治的にもたない。そこで出てきているのが雇用と環境と福祉、それは個別に出てきているわけですけれども、おそらくこれから世紀末から来世紀にかけて重要なのは、雇用、環境、福祉という問題と市場経済というものをどうやって1つのシステムにしていくかというところが、20世紀と21世紀のすごく大きな違いになってくるのではないかという感じがするわけです。

おそらくいままでのこういうモデルなんかも、これ、みんな個別に議論しているわけです。それを1つの市場経済のルールの中で3つの議論をまとめていくということが、これから重要になっていくのかなと。僕はジャーナリストとして、例えばサミットはいままで20何回かあって、僕は14,5回現場に行って取材していますけれども、この数年間のサミットというのはだんだんそっちの方向にきているわけです。世紀末の課題をどうするかというと、結局は雇用であり、福祉であり、環境であり、もう一つ言えば犯罪とか、そういう問題です。それと市場メカニズムというものをどう結びつけるか。そこのところの議論はあまりないのだけれども、そこがすごく大きな議論になってくる。

そういう意味で言うと、この経済審議会などが中長期的に話をするとなると、そこら辺の議論というのを我々も理念的にあるいは理論的にきちっとしておくということは、これから国際社会の中で議論する上で非常に重要なのではないかと思います。

〔 部会長 〕 今、E委員が言われたことに関係しますが、僕はI委員がおっしゃったことと聞き間違えてしまったかもしれないので、今、例えば現実にアウトプットの方については、いろいろマーケットの問題その他もあって単価も下がったり何かして、アウトプットは従来どおり伸びない。リストラするにしても、いい悪いは別にしていろいろ制限要因があって、欧米的にはいかないのだというときに、「欧米的」とは言いませんが、方向としては、先ほど、I委員は、むしろそれはギブンとしてやられていくというふうにおっしゃったわけですか。

〔 I委員 〕 欧米的な方向に流れていっているステイクホルダーがいくつかあって、そのステイクホルダーの中で我々は生きていくわけですから、資本の論理が強くなっていくことは事実です。しかし、E委員のおっしゃるように、それだけの方向で向かっていくわけにはいかないということです。

〔 部会長 〕 そういう意味でおっしゃったわけですね。

〔 I委員 〕 ええ。

〔 部会長 〕 それはよくわかりました。

〔 G委員 〕 これはかなり細かなシミュレーションをやられて出されていると思うのですけれども、私自身もこういう結果を出すようなシミュレーションをやったことがあるのですけれども、将来の日本という点で、日本がこれまでやってきたことというのは、基本的には資本主義かもしれませんけれども、マーケットのない資本主義社会を作ってきて、それでここまで来て、どうも失敗だということで、マーケット化を図ろうという、行政からマーケットの方に力を移そうとしているときのシミュレーションだろうと思うのですけれども、ここでやっていることは完全なマーケットの状態でのシミュレーションです。ただし、このシミュレーションの前提となるところで最も強いのは「人口が減る」という前提を置いていらっしゃる、というか労働力が減るという前提。これから日本が開かれていくときに、本当にこういう状況でいくつもりなのかどうか。少なくとも欧米のマーケットはそれほどは閉鎖していなかったはずです。ある程度は障壁は持っていたと思います、人の流れに関しても。しかし、モノとカネの自由化が進んだ後に、次は必ず人の自由化といいますか、労働力の移動というものが起こり始めるはずなのです。それをここではどうも考慮されていないので、少なくとも2000年の前半はまだ無理かもしれませんけれども、後半段階でアジア全体の中でそういう可能性というのを全く否定してシミュレーションをやっておくというのは、将来を考える上ではどうも問題があるのではないか。これは政治がまだオープンにするということを決めてはいないですけれども、少なくともシミュレーションをやる中である程度の人口というものを、労働力という面を少し考慮される必要性があるところまできているのではないかというのが私の思っているところで、マーケット化というのを、モノの面だけのマーケットでここで閉じているのは、もちろん金融面がまだ入っていないのでそれが問題でしょうけれども、さらに労働力という面も、やった方がいいか悪いは別にして、少なくともそういう面をある程度考慮された方が。あまりにも現実と乖離している。少なくとも300万人ぐらいの人が入り込んでいるという状況が陰で囁かれているわけですから、そういう面がもっと強くなると思われる21世紀の段階を、もう少し正直にシミュレーションの中に入れられてもいいのではないかという感じがします。積極的に入れていくというのも1つの手ではないかと思います。そうすれば、全く違う姿が出てくる可能性がありますから、ちょっとここでは極端な、経済学の答案としてはいいのですけれども、現実的な政策論をするには、少し問題が背後にあり過ぎるのではないかということをちょっと指摘させていただきます。

〔 部会長 〕 最後非常に重要な問題、これはまた独自にいろいろ議論しなければいけませんが、G委員のおっしゃったことというのは、極端な面で、どこかまでいけば必ず否応なしに外から入ってくるという面と、オーバーオールなソーシャルコストとして払わなければいけない部分と、今のような点でプラスと、どうバランスさせるかということはやはり考えなければいけない。

これは、今回ではないですが、前のときでも、どこかで検討してましたか、検討ではないのだけれども、いくつかあれですね、検討部会でやったのですか、どこでやったのでしたっけ?

しかし、これは放っておくわけではなくて、最終的にやるかやらないかは別にして、どうなるか、検討は是非したいと思います。

ちょっと時間が過ぎてしまいましたが、最後に次回のスケジュールだけ、事務局からお願いいたします。

〔 事務局 〕 次回は、11月10日(火)の10時から、よろしくお願いいたします。

〔 部会長 〕 次回のテーマは何でしたか。

〔 事務局 〕 次回は、参考資料6の一番下でございますけれども、主要なテーマとして、本日は「計画の策定と現実との乖離」、「将来の経済のマクロ的変化」というのをお願いしたのでございますが、あといくつか残っておりまして、そのあたりをまたお願いするのと、当企画部会では経済計画のフォローアップというものをまとめることを目的としておりますので、フォローアップ報告について少しお図り申し上げたいと思っております。

〔 部会長 〕 次回は11月10日(火)の10時からでございますが、ひとつよろしくお願いいたします。

それでは、第2回の企画部会をこれで終わらせていただきます。

どうもありがとうございました。

──以 上──