第1回構造改革推進研究会議事概要

1.日時:

平成10年10月1日(木)14:00~16:00

2.場所:

合同庁舎4号館共用第2特別会議室(407号室)

3.出席者:

水口弘一座長、池本美香、岩田一政、小椋正立、滝上宗次郎、出島敬久、中島隆信、林克彦、村井勝の各委員
中名生総合計画局長、高橋審議官、牛嶋審議官、大西計画課長、涌野計画官、青木計画官、林部計画官、佐久間計画官、岩瀬計画企画官他

4.議題:

  1. 議事の公開方法について
  2. 構造改革推進研究会の趣旨及び主要テーマについて
  3. ワーキンググループの設置について
  4. 各検討テーマにおける構造改革の推進に向けた論点について

5.審議内容:

  1 冒頭、中名生総合計画局長から挨拶

  2 議事の公開方法について

事務局から、資料2「構造改革推進研究会の議事の公開方法について(案)」について説明。委員からの意見はなく、本件は了承された。

  3 構造改革推進研究会の趣旨、主要テーマとその論点、ワーキンググループの設置について

事務局から説明の後、討議。委員からの主な意見は以下のとおり。

  • 高コストとは何を意味するのか。比較の対象はあるのか。独占的なものについては比較できないのではないか。生産性格差の問題として捉えても、業種間での比較はできないことから、同一業種内または異業種間の生産性の伸び率で比較するしかないのではないか。
  • 過去様々な審議会が開かれ、提言がなされているが、それが国民に伝わっていない。国民全般に伝わるような分かりやすい形でのメッセージを出す必要がある。
  • 国民に意欲をわかせるような施策を検討すべきである。
  • 医療・福祉は高齢化に対応したものであり、教育は義務教育を終わった段階の高等教育を扱うとのことだが、少子化に対応した福祉としての保育サービスについても検討すべきではないか。
  • 保育サービスについても議論はなされているが、24時間保育などは無認可保育所が行っている一方で、認可保育所は政治的な課題に直面している。
  • 高コスト構造是正については、騒音、排気ガス等の社会的費用も含めて検討するのか。含めないとすると、豊かな暮らしという観点からは齟齬を生じる可能性がある。
  • 高コスト構造是正について、現在のマクロ経済の状況はデフレ的であり、その中で高コスト構造是正により物価をさらに下げる方向に進めることに意味はあるのか。高コスト構造是正の目的は、将来の見通しが不透明であり新規事業が少ない状況を正すことである。研究会においても「事業を起こしやすいようにする」という要素が必要ではないか。単に「是正」ではなく、経済の「活性化」という視点に重点を置くべきである。
  • 教育は主として高等教育について検討するとのことだが、現実の学生を見た場合、大学に入るまでに創造性が失われていることから、高等教育だけの問題ではないのではないか。
  • 高コスト構造については、日本ではガソリンの価格が高かった時期があったが、複雑な流通経路など我々の目に直接触れにくい部分に原因があった。高コスト是正は、経済が元気を取り戻すためのものであり、現在の構造調整が終了した後全く新しい形での経済成長が始まることを我々は期待しており、そのためにできるだけの準備をしておくという意味で重要である。
  • 医療や教育は規制が厳しいため規制緩和が必要だが、教育については多数の審議会が存在するにもかかわらず規制をなくそうということを提言したものはない。現在の日本経済の活力の低下は教育の影響が大きいと思われる。教育について検討するのならば、技術教育などがいかに市場から乖離しているかについて述べていきたい。
  • 現在の教育は少子化の流れに合っておらず、かつての供給構造がそのままの形で残されている。例えば、地元の小中学校では少子化のために空き教室が多数存在するが学校同士の合併は行われていない。また、学校給食については生徒数が約半数になったにもかかわらず、給食センターの規模は変化しないなど、義務教育にかかるコストは増大している。
  • 在宅支援センターの新設や人材の流動化に必要な教育を行うために、少子化で不要になった小中学校を資源として利用すべきである。
  • 大学のあり方について、大学と企業の結びつきがもう少し強まっても良いのではないか。国立大学は多くの優秀な教員が集まっているにもかかわらず、教育の枠の中に閉じこもっている。その意味で国立大学の民営化は重要である。
  • 大学と産業との結びつきについて、米国は日本より進んでいるにもかかわらず、米国では人材不足を大きな問題と考えており、ここ1~2年は外国人の優秀な人材を利用しつつ、その間に産学官が連携して米国人の教育を進めることが検討されている。
  • 米国の州立大学の収入のうち、授業料は3~4割で残りは企業から資金を集めている。日本の国立大学で同じことを提案しようとしても、数年前までは議論の余地もなかった。また、米国の州立大学では総長が経営者のマインドを持っており、日本でもそのようなことを可能にする環境整備が必要である。
  • 教育についてはグローバルな視点から教育制度の中に外国との接点を増やすことが必要ではないか。それは友好関係の構築や学生の交換などではなく、外国の大学を日本に入れるとか、一緒にプログラムを作ることなども必要である。
  • 効率性というのは物、情報、金の受け渡しの点で欠けているのではないか。そのような視点で各テーマを串刺しにするような議論はできないか。
  • 教育・医療ともに、国が現業的な役割を果たす時代は終わったと認識すべきである。既に産業部門からは国は撤退しているが、教育・医療においては未だ介入を続けている。このような社会主義的な政策はやめて、市場に任せるべきではないか。
  • 国立大学は、特に技術に関しては日本を代表する存在であるが、それでもバイオテクノロジーやエレクトロニクスの分野では海外に比べると遅れをとっている。国立大学では予算の制約があり、国の財政で超一流の研究を行うことは不可能である。大学に経営の主体性を与えるべきではないか。
  • 国立大学と民間との競争について、現在国立大学で大学院に重点を置く改革が進められているが、理学部は現在のままでは基礎研究でさえも民間に及ばないと考えており、改革の先頭に立っている。このように、競争の圧力は現実に存在する。
  • 医療について、国立大学の病院経営はうまくいっていない。そのため、大学全体としては大学の独立行政法人化に反対していたにもかかわらず、医学部は賛成に回った大学の例もある。大学の中でも経営に近いところは現在のようなやり方は適しない。
  • 日本は総合大学が中心であるが、プロフェッショナルをうまく育てられていない。世界のスタンダードは非常に高い水準にあり、それと比較すると日本の大学制度全体がうまくいっていないのではないか。
  • 規制緩和については、国から行うのではなく、当事者が意見を言っても良いのではないか。現在でも一部の人ならば熱心に取り組んでいるが、例えば国立大学で教育の当事者自身が組織として意見を言うことはないのか。
  • 教育や医療については、規制を行うのは一定限度までは国が保証するという国の責任を果たすためであるという側面があり、消費者主権だけでうまくいくかは疑問である。ニュージーランドの教育改革では、一定の基準を満たせば補助金を与えるというようなガイドラインを作成の上規制緩和を行っている。
  • 構造改革としてはこのほかに重要なものとして金融問題が抜けている。そのため、金融問題を扱うワーキンググループを設けて検討する必要がある。
  • 土地について、現在の状況は参考資料3にまとめられているとおりであり、土地に関する問題点と解決のための方向性は正しいが、施策にもう少し踏み込みが足りない。債権管理回収業やSPC法による流動化なども範囲が限定されており、うまくいかない可能性がある。
  • 土地の価格が下がっていけばある均衡点に達し経済が回復するとは思わない。日本の中小企業の多くは借り入れ過多であり、銀行の貸し付け手形を6カ月で償還するのではなく書き換えを繰り返し自己資本化している。それを銀行が返せと言わなかったのは土地の担保があるからであり、今のように地価が下がり貸し渋りの状況になると多くの中小企業は事業ができない。
  • 土地の有効利用について、ニュージーランドでは土地を一定の広さまでしか分割できない法律が存在する。市場メカニズムは必要であるが、諸外国の美しい町並みは都市・住宅政策がしっかりしていることによるものである。このような視点についても考慮していただきたい。
  • リサイクルについて、近年米国では、最初(設計段階)から、廃棄、リサイクルを考えたモノづくりが進んできており、物流についても、同様にリバース・ロジスティックス、グリーン・ロジスティックスといった考え方に基づき一般企業が事業参入し、効率を高めている。また、単一の企業による取り組みではなく、全体としてリサイクルを行うという方向もあるのではないか。

6.今後のスケジュール:

次回の構造改革推進研究会(第2回)は11月2日14:30~16:30に開催する予定。

以上

なお、本議事概要は、速報のため、事後修正の可能性があります。

(連絡先)

経済企画庁総合計画局計画企画官室

Tel 3581-0977