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経済審議会議事録 平成10年6月22日

時:平成10年6月22日
所:内閣総理大臣官邸ホール
経済企画庁


経済審議会議事次第

平成10年6月22日(月)
10:30~12:00
内閣総理大臣官邸ホール

  1. 開会
  2. 経済企画庁長官挨拶
  3. 経済社会展望部会報告書について
  4. 経済主体役割部会報告書について
  5. 経済社会展望部会・経済主体役割部会合同報告書について
  6. 内閣総理大臣挨拶
  7. 経済審議会の今後の運営について
  8. 閉会

(出席者)

内閣総理大臣、内閣官房副長官(政務) 、首席内閣参事官、内閣広報官
豊田会長、長岡会長代理、稲葉委員、角道委員、金井委員、川勝委員、香西委員、林委員、下村委員、得本委員、那須委員、星野(進) 委員、星野(昌) 委員、水口委員、村田委員、諸井委員、師岡委員、山口(光) 委員、和田委員
経済企画庁長官、経済企画政務次官、経済企画事務次官、経済企画審議官、官房長、調整局長、国民生活局長、物価局長、総合計画局長、調査局長、経済研究所所長

(配付資料)

  1. 経済審議会委員名簿
  2. 経済社会展望部会報告書(案)
  3. 経済主体役割部会報告書(案)
  4. 経済社会展望部会・経済主体役割部会合同報告書(案)
  5. 経済審議会の今後の運営について(案)

経済審議会委員名簿

会長    豊田 章一郎     トヨタ自動車(株)取締役会長
会長代理  長岡 實      東京証券取引所正会員協会顧問、
                 日本たばこ産業(株)顧問
      稲葉 興作     石川島播磨重工業(株)代表取締役会長
      角道 謙一     農林中央金庫理事長
      金井 務      (株)日立製作所取締役社長
      川勝 堅二     (株)三和銀行相談役
      公文 俊平     国際大学グローバル コミュニケーション センター所長
      香西 泰      (社)日本経済研究センター会長
      小長 啓一     アラビア石油(株)取締役社長
      小林 陽太郎     富士ゼロックス(株)代表取締役会長
      佐々波 楊子     明海大学経済学部教授
      下村 満子     (財)東京顕微鏡院理事長
      末松 謙一     (株)さくら銀行相談役
      鶴田 卓彦     (株)日本経済新聞社代表取締役社長
      得本 輝人     日本労働組合総連合会副会長
      豊島 格      日本貿易振興会理事長
      那須 翔      東京電力(株)取締役会長
      星野 進保     総合研究開発機構理事長
      星野 昌子     日本国際ボランティアセンター特別顧問
      水口 弘一     (株)野村総合研究所顧問
      村田 良平     (株)三和銀行特別顧問
      諸井 虔      秩父小野田(株)取締役相談役
      師岡 愛美     日本労働組合総連合会副会長
      山口 光秀     東京証券取引所理事長
      山口 泰      日本銀行副総裁
      鷲尾 悦也     日本労働組合総連合会会長
      和田 正江     主婦連合会副会長

〔 豊田会長 〕 ただいまより経済審議会を開会いたします。

本日は、委員の皆様には大変ご多忙中のところお集まりいただきまして誠にありがとうございます。なお、橋本総理大臣には、後ほどご出席いただける予定となっております。

ご承知のとおり、経済審議会委員につきましては、去る2月21日に改選が行われまして、新しく委員の任命が行われました。お手元にその名簿を配布してございます。

それでは、議題に入ります前に、尾身経済企画庁長官よりご挨拶をいただきたく存じます。

〔 尾身経済企画庁長官 〕 経済審議会の委員の皆様におかれましては、この1年間、精力的なご議論をいただき、誠にありがとうございました。また、本日はご多用中のところをご出席いただきまして、ありがとうございます。

さて、我が国経済の最近の動向を見ますと、昨年以来の経済の先行きに対する著しい不透明感には落ちつく兆しがみられているものの、最終需要の停滞が生産や雇用等実体経済全体に及ぼす影響が強まっており、景気は停滞し、一層厳しさを増しております。

このため、政府といたしましては、これまでにも経済の実体に応じて、昨年11月の緊急経済対策や、金融システム安定化対策等の迅速かつ的確な執行に努めてまいりました。さらに本年4月には、総事業費16兆円超の総合経済対策を取りまとめましたが、それを踏まえた本年度補正予算が去る6月17日に国会で成立したところであり、その着実な推進を図ることとしているところでございます。

こうした中、経済審議会におかれましては、我が国経済が現状の厳しい状況から脱出できるか、また現在進められている構造改革の先にいかなる経済社会が待っているか等といった点について、国民の皆様に明確な展望を示すべく、昨年7月以来、約1年間にわたり、精力的にご審議いただきました。

本日取りまとめいただきます、「経済社会展望部会報告書」、「経済主体役割部会報告書」、さらには両部会のエッセンスをまとめました「合同報告書」につきましては、現在の我が国を取り巻いている将来に対する不透明感・閉塞感を払拭し、構造改革後の我が国経済社会の明確な将来展望を切り開いていくために役立つものであると確信しております。 言うまでもなく、我が国は、これまでに蓄積してきた対外資産、外貨準備、個人金融資産、人的資源、高度な技術基盤等、21世紀における新たな発展を実現するための高い潜在的能力を有しております。本報告書にも述べられているとおり、我が国は、構造改革を進めることにより、これらの「プラスのストック」を将来に向けて発展・継承していかなければなりません。政府といたしましても、報告書に描かれた経済社会の将来展望を実現すべく、経済構造改革をはじめ経済の実情に応じた各種施策の総合的推進に努めてまいりたいと考えております。

最後になりましたが、委員の皆様方のこれまでのご尽力に深く感謝申し上げるとともに、今後とも一層のご支援とご協力をお願い申し上げまして、私の挨拶とさせていただきます。

〔 豊田会長 〕 ありがとうございました。

それでは、議題に入らせていただきたく存じます。

まず最初に、「経済社会展望部会報告書(案)」につきましてご説明いただきたいと存じます。経済社会展望部会は、昨年7月以降、構造改革後の我が国経済社会の将来展望につきまして精力的に調査・審議を行い、本日行われました部会におきまして報告書をお取りまとめいただきました。同報告書(案)の概要につきまして小林部会長からご説明をお願いいたします。

〔 小林委員 〕 展望部会長の小林でございます。展望部会の審議経過、また審議の結果につきましてご説明をいたします。

私ども展望部会は、21世紀初頭の構造改革後の日本経済社会、その姿を展望するという目的の下に創られまして、昨年7月25日から審議を開始いたしました。本日、最終会合の第13回の会合がございました。この間、足元の景気が停滞あるいは厳しさを増す状況が続きましたので、現状の危機脱却のための対策、そして、そこを抜けて成長軌道への回復の道筋についても審議を進めました。また、こういった時間的な経過を引き継いだ後のより長期的な我が国経済社会の目指すべき基本的な方向等について議論を進めてまいりました。

 特に、21世紀初頭の展望というのは、非常に大きなテーマであるため、議論を深めるという観点から、部会の審議と並行しまして、地球環境、グローバリゼーション、産業構造、技術革新、雇用・労働、財政・社会保障、金融、土地・住宅、ライフスタイル、この9つのワーキンググループを設置して検討を行いました。

こうした部会、ワーキンググループにおける委員各位の非常に活発なご審議をいただきまして、9つそれぞれのワーキンググループの報告書は今年4月から6月にかけて取りまとめられました。また、これらの検討結果を踏まえまして、部会としての報告書が本日の第13回の会合で了承されました。

報告書の特徴と大まかな内容についてご報告いたします。

まず、当面の現状の危機脱却に向けての政策運営の基本的な考え方でありますが、1番目に、不良債権問題等「負の遺産」の迅速な処理、2番目に、構造改革など供給面、サプライサイドの対応、3番目に、総需要喚起のためのマクロ経済政策、4番目に、将来への明確な展望、この4つの柱が基本になっております。これに加えて現下の厳しい雇用情勢を踏まえ、雇用問題に配慮した政策展開を図ることも重要であります。

我が国経済の回復の道筋でありますけれども、98年度から2003年度の平均的な経済成長率、これは幅をもってみようということで、2%台半ばと見込んでおります。さらに、時間的な経路としましては、ここ2、3年は本格的回復につながる底固めの時期とみなし、2%台半ばよりも低めの成長である。しかし、それ以降は本格的な回復が実現されて、2%台半ばよりやや高めで推移すると考えております。なお、失業率については、2003年度には 3.5%弱、財政赤字については2005年度には3%目標を下回ると見込んでおります。

 次に、構造改革後の展望でありますが、中長期的に目指す基本的な方向性は「透明で公正な市場システム」、「環境と調和した社会」この2つのシステムを作るということで、これをとおして、先ほど大臣もお触れになりました「プラスのストック」を将来の世代に継承していくことが重要だと考えております。

具体的に申しますと、開かれた透明で公正な市場システムが有効に機能するためには、情報開示等による透明性、労働・資本等の柔軟な移動による効率性を確保した上で、機会の平等、再挑戦可能性を新しい市場システムにおける公正基準として位置づけていくことが必要であります。

環境と調和した社会につきましては、地球温暖化防止に向けて、合同会議対策をはじめとして、いろいろなチャネル、施策を通じて、マクロ経済及び個別産業への影響を最小限に抑えることにより、低排出型社会を構築していくことは可能だと考えております。

こうした2つの基盤的システムを確立することにより、柔軟・創造・挑戦型産業構造、流動性と安定性を兼ね備えた労働市場、効率的で魅力ある金融・資本市場、世代間公平を基礎とした活力ある財政・社会保障制度、ゆとりある土地・住宅環境、こういったことをプラスのストックの具体的な中身として、将来世代に継承していくことが可能であります。

 特に社会保障制度につきましては、年金の給付基準を引き下げる等の制度改革を行うことによりまして、安定的な社会保障制度を構築することができる。一昨年12月の経済審議会財政社会保障ワーキンググループの報告によりますと、財政・社会保障制度を当時の状況そのままに放置をした場合ですけれども、2025年度に財政赤字を含めた潜在的な国民負担率が70%を超えるという、いわゆる危機ケースが示されておりました。今回の試算では、社会保障制度改革に加えまして、経済構造改革、財政構造改革を進めることにより、潜在的国民負担率を50%以下に抑えることが可能であることを示しました。

 以上を踏まえまして、我が国経済の長期的な姿を定量的に展望しますと、財政構造改革、社会保障制度改革に加え、経済構造改革による技術進歩率の向上や、女性・高齢者の労働力の増加を見込むことにより、2010年度に向けて経済成長率及び1人当たりの経済成長が維持されるという姿を描くことができます。

 なお、この報告書につきましては、試算や図表を用いることによりまして、読みやすさ、また将来をイメージしやすいように努めました。

 日本経済社会の変革期を乗り切るための案内図を描くための一助とすると同時に、今後の構造改革をはじめとする中長期的な政策運営についての議論の糧となるのではないかと祈念をしております。

 今日、最後の部会でも各委員から、基本的にこの報告書で行こうということのほかに、直近の状況が非常に厳しいだけに、特に最近の短期のところについては、これがベストケースではないか。また、それだけに関係者各位の断固たる決意によって実行していくことが、将来可能である構造改革後の姿を実現することのためには必至だということが、全員の委員から強く意見の表示がされました。また、これは当然でありますけれども、グローバルな視点、そういった流れがどんどん加速をしていることも視野に入れながら、スピーディな実現というものが極めて大切だということが強く表明をされました。このことを付言をしておきたいと思います。

 以上で報告を終わります。

〔 豊田会長 〕 ありがとうございました。

 これに対するご議論は他の報告書案とあわせて、後ほどいただくこととしまして、引き続き、「経済主体役割部会報告書 (案) 」につきましてご説明をいただきたいと存じます。経済主体役割部会は、昨年7月以降、新しい経済社会における各経済主体の役割と課題等について精力的に調査・審議を行い、去る6月9日の部会におきまして報告書をお取りまとめいただきました。同報告書(案)の概要につきまして水口部会長からご説明をお願いいたしたいと思います。

〔 水口委員 〕 経済主体役割部会長の水口でございます。経済主体役割部会の審議経過並びに審議結果につきまして、簡単にご説明をいたしたいと思います。

経済主体役割部会は、現在、内閣において進められております6つの改革が進展した後の経済社会における各経済主体の役割と、新しい経済システムのあり方を検討するために設置され、昨年7月31日から審議を開始いたしました。以来、6月9日の最終会合まで計11回の会合を重ねまして、企業部門、個人部門並びに公的部門といった各経済主体、並びにNPO等の新しい主体がどのような中心的役割を担っていくのか、各主体相互の関係はどのようになっていくのかという問題について議論を進めてまいりました。

 具体的には、公的部門の役割、企業部門の課題と役割、個人部門の課題と役割、さらに各経済主体間に共通する問題、あるいは相互に関連する問題等の横断的な議論については、部会全体で検討しまして、民民規制、雇用・労働、NPOについてはワーキンググループを設置してそれぞれ検討を行ってまいりました。

 こうした部会及び3つのワーキンググループにおける活発な審議の結果、雇用・労働、民民規制それぞれのワーキンググループ報告書が4月に、NPOワーキンググループ報告書が5月に取りまとめられ公表されました。これらのワーキンググループの検討を踏まえまして、部会としての報告書が6月9日の第11回会合において了承されました。

 また、このような各経済主体の役割と課題等の審議とは別に、昨年秋に新たに経済構造改革ワーキンググループを設置いたしまして、一昨年12月の経済審議会建議、6分野の経済構造改革で掲げられました諸施策の着実なフォロー・アップを図りつつ、同建議の内容を拡大・深化させた形で、今後進めるべき規制緩和等を盛り込んだ提言を経済構造改革ワーキンググループ報告書として取りまとめました。

 それでは、経済主体役割部会報告書の特徴とその概略についてご報告をいたします。

 この報告書では、企業、個人、政府といった経済主体の役割に着眼しつつ、我が国の経済システムの問題点を明らかにした上で、その再構築に向けての改革を推進していく上に1つの羅針盤となるべき具体的な提案を行いました。特に、制度改革を進めていくだけではなく、経済主体の意識やあり方が変化しなければ本当の対策はあり得ないのではないかという問題意識の下で議論を進めてまいりました。

具体的には、まず、各経済主体共通のインフラとして公的規制の撤廃・緩和に加えまして、いわゆる民民規制の見直し、格付機関、アナリスト、ファイナンシャルプランナー等の重要性、そして司法インフラの充実等を指摘しております。

次いで企業につきましては、コーポレート・ガバナンスの問題点を、企業自身、メインバンクをはじめとする金融機関、金融監督当局の3段階に分けて指摘した上で、企業内外から監視する仕組みについて提案をしております。すなわち、取締役会の機能強化・充実、監査役会等取締役会に対する内部の監視機能の強化、メインバンクに代わり機関投資家の活性化により市場を重視したコーポレート・ガバナンスに変化していくであろうということでございます。また、経済社会活性化のためには、起業・退出・再起業に至る循環のメカニズムがシステムとして組み込まれることが重要であるという観点に立ちまして、株式の新規公開の促進、資金面のみでなくマネージメントを組み合わせた支援の重視、分社化、M&Aの促進策、再起を促進しうるような倒産法制の見直し、シリコンバレーにおけるネットワーク型産業集積に見られるような起業家精神を醸成する社会風土のあり方等に至るまで提案をしたことも特徴の1つであります。

個人につきましては、能力発揮のために必要な税制の見直しを含めた環境整備、自己責任の下で市場で主体的に行動するために必要な、例えば米国における401Kのような確定拠出型年金や、会社型投信の導入などの資産運用手段の拡充、アナリスト等の育成等について提案をしております。

政府につきましては、官から民へ、国から地方への基本を実現する方策として、既に進められておりますPFIの導入、近年問題となっております第3セクターの処理のあり方について提案をしております。

さらに、これからの経済社会における新しいセクターとしてのNPOについて、経済システム全体の中での役割を明確化しまして、包括的に捉え高い評価と期待をしたということは画期的なことと考えます。

さて、最後に、委員全体のご意見を踏まえまして総括的に申し上げたいと思います。現在我が国はアジア経済危機とともに、円ドルレートの大変動、金融不良債権の処理等々早急に足元の経済状態を直す、早急に回復させることが喫緊の課題となっておりますが、同時に、持続的成長を実現していくために、中長期的な意味で真剣に取り組むべき変革の方向性を示すことが重要であります。また、変革に対し、恐れずに果敢に取り組んでいくこと。そして、それを国内のみならず国際的にもよく理解させるよう実行していくことが非常に重要であると思います。また、それが日本経済の内外における信頼を回復し、活性化させていく上で必要なことであると考えております。

今回は、こういった変革の方向性の中での今すぐ取りかかるべきものについて、各提案ごとにプリントをまとめまして、また資料、用語解説もこれに加え、国民の皆さんへのメッセージとしてわかりやすく、具体的に提案できたのではないかと考えております。

以上をもちまして、簡単でございますが、報告とさせていただきます。

〔 豊田会長 〕 ありがとうございました。

これにつきましても、後ほどあわせてご議論いただきたいと存じます。

次に、「経済社会展望部会、経済主体役割部会合同報告書(案)」についてご説明をいただきたいと存じます。ご存じのとおり、経済審議会では、我が国経済社会の将来の姿をわかりやすく国民に示すべく、経済社会展望部会と経済主体役割部会の2つの部会のエッセンスを取りまとめた報告を作成しまして、両部会においてご審議をいただいてまいりました。同報告書(案)の概要につきまして、中名生総合計画局長からご説明をお願いいたします。

〔 中名生総合計画局長 〕 お手元の資料をご覧いただきますと、資料2が「経済社会展望部会の報告書(案)」でございます。資料3が「経済主体役割部会の報告書(案)」でございます。この2つの部会報告書のポイントにつきましては、ただいま両部会長からご報告があったところでございます。その次に、資料4の「経済社会展望部会・経済主体役割部会合同報告書(案)」がございます。私の方からこれに沿って概要をご説明させていただきます。

資料4の表紙をめくっていただきますと、最初に目次がございます。合同報告書の案では3章構成になっております。第1章が「構造改革の推進と成長軌道回復への道筋」ということで、今の厳しい経済状況から回復軌道へいかにして戻っていくかということを述べております。

第2章は「構造改革後のマクロ経済の展望」ということで、経済構造改革をはじめ諸改革が進められた後のマクロ経済の展望を行っております。

第3は「新しい経済社会システムの姿」ということで、我が国の経済社会システムがどのように変わっていくかということの展望と必要な課題というものを述べております。

第1章に入りまして、「構造改革の推進と成長軌道回復への道筋」ということでは、6ページの下のイ)のところですが、先ほど小林部会長からご報告がありましたように、長期低迷から我が国経済が脱却するためには、4つの点が重要であるということを言っております。1つは、不良債権問題やそれに伴う金融システム不安等の「負の遺産」の処理を完了すること、2つ目は、構造改革により供給面から経済の活性化を進めること、3つ目は、適切に総需要喚起が行われること、4つ目は、将来への明確な展望により国民が自信をもって経済活動を行うようになること、の4点でございます。とりわけ、この第1点で挙げております不良債権問題の処理というのは喫緊の課題である、ということを言っております。

こういう4つの方向での施策がなされたという前提の下に、8ページの(図表2)で、今後5年間の我が国経済の中期的な展望をモデルにより試算をしております。今後5年間の成長率、ここに書いてありますように幅がございますけれども、中央値としては2%台の半ばということで考えております。この5年間のうちでも前半はこの2%台の半ばよりも低め、後半は高め、こういう形を考えております。

 この表の中ほどのところに完全失業率がございまして、98年度の年度平均としては 3.5%でございますが、直近4月の完全失業率は 4.1%、大変高い失業率になっておりますけれども、これが2003年度には3%の半ばより少し低い、数字で申し上げますと 3.3%程度までの低下が可能ではないかという試算でございます。

それから、一番下に財政収支、中央・地方を合わせた財政の赤字の名目GDPに対する比率が書いてございます。97年度は 5.9%の赤字でございますが、これが2003年度には 3.4 %まで縮んでいく。この試算の中に書いてございませんが、その上の文章に書いてございますように、さらに2005年度まで延ばして考えると、3%というところにおさまってくる、こういう予測になっております。

次に、9ページからは、第2章「構造改革後のマクロ経済の展望」ということで、ただいまは2003年までのことを申し上げましたけれども、2010年ごろを念頭に置いて経済の展望を行っております。この第2章のところでは、展望部会の報告書との重複感を避けるという意味もありまして、人々がいろいろとその先について不安を持っている点についてどういうふうに考えるのかという形で構成がされております。それで、9ページの1のところでは、今後中長期的に考えると、経済成長率、さらに申し上げれば生活水準というのが低下していくのではないか、そういう不安、疑問に対しどういうふうに考えるのかということが書いてございます。

ここのところは表でご覧いただく方がよろしいかと思いますけれども、10ページの下の方の(図表3)、これが2010年度までの中期的な試算結果でございます。ここでケースI、ケースIIと2つございますが、最初に、ケースIについてご説明をいたしますと、ケースIでは、中長期的な成長率を考える場合に、日本経済の生産性がどの程度年々向上していくかというのが1つのポイントになりますけれども、これが足元よりも 0.5ポイントぐらい上がって、1980年代の我が国の生産性の向上と同じテンポ、年々1%ぐらいずつ生産性が上がる、これは90年代のアメリカの実績とほぼ似たような数字になりますけれども、そういう成長率というものを前提にしております。もう一つ、人口の動きにつれ、労働力人口も伸びが止まり、先にまいりますと減少に転ずるわけでありますけれども、ここでは女性の労働力率あるいは高齢者の労働力率が、働きやすい環境を整備していくことによって現状よりも上がっていくということを前提にしまして、2010年度で現状とほぼ同じ労働力人口が確保されるという前提の下に計算しております。

 そういうことで数字をご覧いただきますと、2001年度~2010年度までの実質GDPの成長率は2%程度ということになりまして、この期間内に上がり下がりがございますけれども、この間は人口の伸びというのはゼロということで、これは国民の福祉水準と直につながるということになりますが、1人当たりの実質成長率も2%程度という姿になっております。なお、部会のご議論では、これからは従来のような成長率でみていくというよりも、1人当たりの成長率というのが非常に重要になってくるのではないかというご議論がございました。

それから、ケースIIの場合には、さらに技術の進歩、生産性の伸びというのが大幅に伸びる。それから、労働力率もかなり高まるということを想定しますと、3%成長という姿が描けるというのがケースIIに書いてございます。

12ページにまいりまして、2つ目に挙げてございますのは、上から3行目でございますけれども、「我が国経済は少子・高齢化の負担に耐えられるのか」ということで、人口の伸びが鈍化し減少に向かう、あわせて人口の構成が高齢者が多くなってくるということで、財政、あるいは公的年金制度を現状のままで維持できるかどうかという問題でございます。  ここで最初に書いてございますのは、我が国の場合には年齢別の役割分担と申しましょうか、一定の年齢まで働きその後は年金の受給の対象になるという形での年齢による区分というのを固定化したままでは、こういう人口構成の変化に対応するのは難しいということが書いてございまして、そのためにエイジフリーと申しましょうか、年齢中立的な社会というのが必要になってくる。

また、12ページの下の方に書いてございますが、男女の役割分担というのもなかなか大変な話でございますけれども、ジェンダーフリーと申しましょうか、男女間で差のない社会というのを創っていくことが重要であるということを言っております。

 年金の問題につきましては、これは大変長期にわたる問題でございますから、2010年よりも、むしろ2025年までの簡単な試算をいたしております。一定の年金の改革が行われる。これは仮の前提でございますけれども、例えば、年金の給付水準を7割程度から6割程度に10%ポイントぐらい引き下げる等の改革を行うという前提で試算をいたしますと、13ページの真ん中の(図表4)にございますけれども、国民負担率は50%を下回る、試算としては40%半ばというところでおさまるということで計算ができます。先ほど部会長からもお話がありましたけれども、現状のままに推移するという、一昨年の暮れに経済審議会でお出しいただきました試算では、国民負担率に財政赤字を加えた潜在的な国民負担率が7割を超えるという数字がございましたけれども、年金の面、それからここでは財政の面についても改革というのを織り込んでございますが、そういうものを含めて考えると50%以下の負担率でおさめることができるということでございます。

 それから、13ページの下の方に書いてございますように、その場合でも、経済の成長等があり、受け取る年金の額というのは、ややもすると給付水準のカットということで絶対額として減るという認識がございますけれども、そういう姿にはならないということを書いてございます。

 14ページで、2番目の問題のまとめということで、部会でご議論がございましたことが書いてございます。ホ)の3行目あたりからですが、「高齢化は、世界各国で現在進行している現象であるが、我が国では他の主要国に類を見ない急速なスピードで進行している。今後我が国が活力ある高齢化社会を実現することができれば、世界で初めて高齢化社会に対応することのできた国として、世界各国にその道筋を示すという貢献をすることができる。」と言っております。

3番目の問題は、地球環境問題、とりわけ地球温暖化の問題ということで、これが成長の制約になるのではないかということでございます。ワーキンググループでいろいろな試算をしていただきましたけれども、まず、今の経済構造、あるいは技術の水準を変えないままに2010年を中心とした5年間に、1990年並みのCO2 の排出量を抑えようとしますと、年々の成長率を本来の姿より 1.3%ぐらいずつ引き下げないと、それだけの排出ガスの削減はできないという姿になりますけれども、去年の暮れに地球温暖化問題への国内対策に関する関係審議会の合同会議でお取りまとめいただきました対策を実施していくことによって、経済成長率にほとんど影響を与えずに温暖化問題への対処が可能であるということを言っております。

 さらに、15ページのところでは、ハ)に書いてございますように、CO2 の排出を抑えるという1つの技術的な超えるべきハードルが出てまいりますと、それに対応するための企業の対応といますか、投資需要というのが出てまいりまして、これが試算をいたしますと年々約3兆円程度の投資需要がこの課題を克服するために出てくるということを言ってございます。

そういうことで、15ページのニ)に書いてございますが、地球環境問題は、今後長期的に全世界で取り組んでいくべき課題である。「我が国は過去、公害問題の克服や石油危機に対する大幅な省エネルギーの推進に成功してきた経験があり、この分野において高い技術力や人材を有している。これらを活用して世界各国の模範たる『環境と調和した社会』を実現し、さらに技術を含めてその成功のノウハウを全世界に提供していくことにより、この分野で日本発のグローバルスタンダードを形成することを目指すべきである。」と言っております。

4番目として、「失業率が上昇し、生活不安が高まるのか」という問題についてでございます。先ほど申し上げましたように、現下の失業率は 4.1%という、戦後日本で最も高い水準になっておりますが、この 4.1%という失業率の中を見ますと、労働市場の構造変化を背景とした構造的な失業というのは3%弱、景気循環的な失業というのは1%強、こういう姿になっておりますけれども、ロ)にございますように、まず足元のところ、景気を回復させていくことによって、この景気循環的な失業率を減らしていく必要があるということでございます。

16ページにまいりますと、ニ) に書いてございますが、今後日本の雇用慣行というのが変わって企業のいわば丸抱え的な構造が変わってまいりますと、構造的な失業率の水準というのは徐々に上がっていく可能性がございますけれども、労働市場の新たなルールの整備等労働市場の機能強化、ベンチャー企業の育成等の新しい雇用機会の創出、さらに職業能力開発の推進ということによって失業を吸収していくことが重要であるということを言っております。

 16ページの5のところでは、「我が国経済がグローバリゼーションの波に耐えられるのか」という問題、17ページの6のところでは、2010年という先を考えますと、今黒字であります我が国の経常収支が赤字になって、それによって豊かさが失われてしまうのではないかという疑問についても検討しておりますが、時間の関係でこの辺は省略をさせていただきます。

 次に19ページにまいりまして、第3章で「新しい経済社会システムの姿」ということで書いてございます。簡単にご説明にいたしますと、19ページの一番下のところに、「新しい経済社会システムの基本原則」と書いてございますが、20ページにまいりまして、「目指すべき新しい経済社会システムにおける基本原則は、『透明で公正な市場』である。」ということで、ロ) のところで、さらに「透明で公正な市場」ということについて説明をしてございますが、これを構成するものとしては、第1は、「機会の平等」である。ともすれば結果の平等の方にウェイトが移ったものを機会の平等ということを重視していくべきであるということ。第2は、「自己責任の原則」である。第3は、「多様な選択肢と十分な情報の開示」である。第4は、「ルールの重視」である。この4つの点を「透明で公正な市場」を創っていくために必要な点ということで指摘がされております。

以下、そういう基本原則の下で、21ページの真ん中から、「新しい社会システムの具体的な姿」はどのようなものかということで、企業システム、公共システム、社会システム、最後に、新しい経済社会の主体としてのNPO、ということで書かれております。

 最初の企業システムのところでは、まず雇用システムでは、我が国の雇用システムは流動化をしていくということで、1つの姿としては、21ページの下に書いてございますけれども、そうすると企業の中に長くいる人はいなくなるかというと、そうではなくて、そういう企業内部での専門的能力を身につけた終身型雇用者、外部労働市場で通用する専門的な能力を身につけた流動的雇用者、定型化された作業・事務を処理する非正規雇用者、こういう3つの形態が出てきて、それを企業なり労働者が選択をしていく、そういう姿ではないかということを言っております。

22ページのコーポレート・ガバナンスでは、企業間での株式持ち合いの解消に伴って、マーケットを通じた株主の役割が大きくなってくる。それから、1つのメインバンクにつながるという姿も変わっていくだろうということを言っております。

23ページからは、公共システムということで、行政関与のシステムについても、冒頭に書いてございますように、「市場原理を追求する社会においては、公的サービスの提供についても、民間に委ねられるものは可能な限り民間に委ね、政府は行政組織・行政内容のスリム化、効率化、重点化を図ることが強く求められる。」ということで、24ページの1行目のところでは、こういう観点からPFIというのも現在、議員立法で審議が進められておりますけれども、重要であるということを言っております。

 社会システムにつきましては、社会的規律と信頼の確保、教育改革の重要性ということを言っております。

 最後のNPOというのは、従来の企業、公共システム、家計という3つの分類だけではなくて、新しい経済社会の主体としてNPOという非営利の組織が、これから、ほかのところでは埋めきれない役割を果たすという重要な組織になってくるということを指摘をしております。

 以上でございます。

〔 豊田会長 〕 ありがとうございました。

 それでは、ただいまご説明のありました「経済社会展望部会・経済主体役割部会合同報告書」及び先ほどご説明のありました「経済社会展望部会報告書」並びに「経済主体役割部会報告書」につきまして、皆様方からご意見、ご質問を伺いたいと存じます。

〔 長岡委員 〕 先ほど両部会長から報告がございましたけれども、私も、経済社会展望部会に参加をさせていただきましたが、この1年間、両部会で非常に真剣にかつ頻繁に議論をして、この報告書に到達いたしました。

この1年間、まず7月に、どういう問題意識をもってこれに取り組んでいくかというときに、国民全般の中に漂っております将来に対する不安感、閉塞感、そういうものをどうやって払拭していくかということが一番の問題点であったと思います。結論的に申しまして、ただいまの合同報告書の第2章に、6つの問題を挙げまして、例えば、経済成長率や生活水準が低下していくのではないかという不安、少子・高齢化の負担に耐えられるかという不安、失業率が上昇して生活不安が高まっていくのではないかという不安、これに対してすべて一つずつ回答をし、しかも、ここに書いてあるだけではなくて、その裏付けとなるようなことは両部会の報告書の中にも全部入っているわけでございます。

そういうことを考えますと、私は長官にもお願いをしたいのでございますけれども、国民に広くこの報告書を読んで、要するに不安感の除去に役立ててもらうためには、この6つの不安などに対する、我々の答えといいますか、この議論した結果を、わかりやすいパンフレットのようなものにでもして、広く読んでいただくということが大事ではないかと考えておりますので、この席を拝借して長官にお願い申し上げたいと思います。

〔 山口委員 〕 長岡さんの意見に賛成でございまして、よろしくお願いしたいと思います。

自由で公正な競争社会ということだろうと思いますが、その中で一番肝心なのはプレーヤーが十分な能力をもって競争に参加するということではないかと思うのです。そのためには、日本人だけではなしに、外国の人の助けを借りるというか、人材を活用するということも必要な世の中になっていると思いますが、日本人の人材を育てていく。26ページに「教育改革の重要性」とありまして、我が国経済社会の将来にとって最も重要な問題の1つであると書いてありますが、全くそのとおりであります。

経済審議会がそういうことを言っていいかどうかという議論はあろうかと思いますけれども、しかし、今後の我が国の活力ということを考えますと、これは中心的な問題ではないかと思いますので、全政府的にそういう点について取り組んでいただくことが必要ではないかと思います。

〔 和田委員 〕 私は、経済主体役割部会に参加させていただきまして、いろいろ考えたり勉強させていただきました。日々の生活の中から、それから主婦連合会としての消費者運動の中で感じておりますこと、3点だけ申し上げたいと思います。

1点目は、消費マインドの冷え込み、これが将来展望には回復が不可欠と言われております。そして、今お話がありましたように、将来に対する不安が、ここに示されたものをわかりやすく提供しまして「なるほど不安はない」というところまで行くかどうかというのは、大丈夫かなという懸念があることは事実でございますけれども、何とか財布の紐を緩めることができるようになったとしても、消費マインドの質というのが今までと全く変わっている、今までのままではないということ。これは今までの経済審議会の中でもいろいろと触れられてはおりますけれども、消費性向を十分に見極めて対応していくことが必要だということを痛感しております。合同報告書の6ページの「成長軌道回復のシナリオ」の3点目に、適切に総需要喚起ということが述べられておりますけれども、この点から言っても、これからの消費性向というのをきちんと見極めていくことが必要ではないかということを、1点目に申し上げたいと思います。

2点目は、個人の社会の参画システム、これが取り上げられております。年齢、性別にとらわれない社会を目指すということで、例えば、税制なり企業の配偶者手当等いろいろなところの再検討が必要だと。これは確かに検討が必要だとは思いますけれども、それらの前提として、これからの社会というのは男女を問わずに、個というものを確立していく。家庭、職場を問わずに、社会のあらゆる分野で女性と男性が対等な構成員として、平等に共同して参画するための条件整備というのが、具体的に申し上げますと選択的な夫婦別姓などということを含めまして、これが大事だということが前提にあるということを申し上げておきたいと思います。

3点目には、これからは個人も自己責任を問われることになると思います。行政情報・企業情報、例えば金融商品であっても「情報提供するから、その後は個人の責任で選択するなり行動してください。あとは個人の責任ですよ」ということが言われていますけれども、その情報の提供について、情報を出せばいいというのではなくて、本当に消費者が使いやすい情報の出し方、内容というものが必要だと思います。今検討されています行政情報の情報公開に対する法案などを見ましても、まだまだ不十分な点がある。これにあわせて、消費者の立場に立った消費者契約法というような点も、十分にこれから進めていく必要があると思います。

そして、2010年ということを目指していろいろな手当てがされ、書かれておりますことが実現されていくと思いますけれども、正直なところ、情報公開なのだから自己責任だと言われたときに、今の私ども以上の高齢者はなかなかその対応がしきれないという点を十分に配慮する必要があると思います。経済的弱者に対する配慮というのは、必要なことは記述されてもおりますし、言うまでもありませんけれども、経済的弱者だけではなくて、効率化あるいは機械化というものを進める社会そのものに対応しきれない人々がたくさんいるということに対して、これは行政のみに求めることではないし、それから経済審議会だけで対応する問題ではないことは十分承知の上で、いろいろな機会に、これについては政府全体で取り組んでいただきたい、考慮していただきたいということをお願いしたいと思います。

 以上3点を発言させていただきます。

〔 得本委員 〕 2点述べたいと思います。

今の閉塞状況から新しい次の展望をどうするのかという意味では、いろいろなご議論を通じながら1つの方向性を出した。この基本方向ということは、私も賛同したいと思います。

十分議論には参加できなかった面もあるのですが、今後のフォローということも含めてご検討いただきたいのですが、1つは、8ページに「我が国経済の中期展望」ということで、97年度がマイナス成長、雇用状況も非常に悪い状況で、特に2003年度の完全失業率を 3.3%と想定されました。現在が4%になるということから、雇用に対するいろいろな面で、勤労者には不安感があります。先ほどの説明の中にも、産業構造が変わったりする中で、構造的な摩擦による失業率というのは今よりは若干上がらざるを得ないだろうという、そういう方向というのは私たち自身も否定はできないと思いますが、今までの中期計画等々については、雇用の問題等について、経済成長率が3%のときには2%台半ばから若干上という、それが1つの計画であったわけです。そういう点では、これは明らかに構造も変わったりするという中での計画の見直しにもつながりかねない。そういう面では、一般的には我々は、どちらかというと雇用の状況というのは、相対的にほかの国に比べるとよかったという感覚が非常に強く残っているだけに、 3.3という数字自体が一人歩きをして、心理的に不安感につながらないように、そのあたりできちんとした雇用計画等を含めたフォローをぜひお願いしたいと思います。

それから、これとの関係にも若干なりますけれども、21ページ~22ページにかけて、特に2010年にいろいろな仕組みという形を展望されるときに、企業システムの中で、雇用のシステムについて、ここでは21ページの下に、3つに分かれるという形にしていますが、そういうことも個々の企業、または労使がどう選択をしていくか、この方向については私も決して否定するものではありませんが、22ページの四角で囲まれているところは、これはあくまでも1つの例示ということで出されたことは重々承知はしておりますし、意見を申しまして、企画庁の調査をもとに見込めばこうだという形で若干修文はしていただいたことも承知はしておりますけれども、2010年の雇用形態というのは、個々の産業や企業がどう選択をするのかということが基本であって、あまり明確な形で、例えば終身雇用を前提としない雇用にシフトするのが半数近くなるとか、そのあたりの記述は若干ミスリードしかねないような印象も与えるので、意見としてこれについては述べさせていただきたいと思います。

〔 尾身経済企画庁長官  〕  皆様の今のご意見に対して、私自身の考えていることを申し上げさせていただきます。

 長岡委員からの閉塞感、不安感の払拭のためのPRということにつきましては誠にごもっともでございまして、できるだけの努力をさせていただきたいと思います。

人材の問題が山口委員からお話がございましたが、まさにそのとおりでございまして、例えば、教育審議会の議論というのが、従来で言いますと大学の先生中心で行われておりまして、極めて抽象的といいますか、実体の社会に合わない面もあるのではないかという感じもいたしますので、この点についても十分考えていきたいと考えております。

和田委員等のご意見、対等な社会の条件整備、例えば高齢者が自己責任原則を守れないのではないかということも、まさにおっしゃるとおりでございまして、十分配慮させていただきたいと思います。

失業率の問題等につきましては、今、得本委員からお話がございましたが、リストラが片方で行われ、片方でベンチャー等で雇用吸収するときに、労働移動の自由化・弾力化ということをどうしても考えていかなければいけない中で、例えば、人材派遣業とか職業紹介業についての自由化をして、労働のミスマッチを直していくということをしっかりとやらないと、そのための対応が遅れますと失業率の上昇につながるという面もありますので、そういう点についてもぜひご理解をいただきまして、私ども、全体のミスマッチをなくしながら全体の雇用を増やしていくという方向をぜひ実現していきたいと考えている次第でございます。

いろいろ申し上げたい点もございますが、時間の関係で、ただいまの皆様のご意見を、私どもよく踏まえて一生懸命やってまいります。

〔 豊田会長 〕 ありがとうございました。

それでは、議論もほぼ尽くされたと思いますので「経済社会展望部会・経済主体役割部会合同報告書」及び「経済社会展望部会報告書」、「経済主体役割部会報告書」を経済審議会として承認したいと存じますが、よろしいでしょうか。

             (「異議なし」の声あり)

〔 豊田会長 〕 ありがとうございました。

ただいま、橋本総理がお見えになりましたので、ただいまご承認いただきました「経済社会展望部会・経済主体役割部会合同報告書」及び「経済社会展望部会報告書」、「経済主体役割部会報告書」を総理にお渡しいたします。

                ( 手交 )

〔 豊田会長 〕 それでは、総理よりご挨拶をいただきたいと存じます。

〔 橋本総理大臣 〕 ただいま、豊田会長から、経済社会展望部会、経済主体役割部会の各報告書及び合同報告書を頂戴いたしました。委員の皆様方に、これまで大変熱心なご議論を重ねていただきましたこと、厚くお礼申し上げます。

さて、我が国の経済は90年代に入りまして、バブルの崩壊の後遺症などにより、総じて低迷を続けており、大変厳しい経済運営を強いられております。

 政府といたしましては、昨年11月の緊急経済対策、さらに金融システム安定化対策等の迅速かつ的確な執行に努めてまいりました。さらに、本年4月には、総事業費16兆円超の総合経済対策を取りまとめたところであり、その着実な推進を図ることとしております。

 こうした中で、経済審議会では、約1年にわたる専門的かつ詳細な検討を経て、本日報告書を取りまとめいただき、将来に対する展望をお示しいただきました。これは、経済主体の今後の積極的な経済活動を促し、本来我が国が有している潜在的な力を引き出していくうえで、極めて有意義なものでございます。

我が国経済は現在、21世紀に向けて、新しい経済社会を築いていく過程にあります。これには、困難が伴いますけれども、国民全体が明確な将来展望を共有し、自信を持ち一体となって努力していけば、構造改革の先に、必ずや豊かで活力のある経済社会をつくり上げていくことができると考えております。

政府といたしましても、本日いただきました報告書に盛り込まれている、将来展望とその実現に向けた重要な提言につき、一刻も早く我が国経済の成長軌道を回復するために十分尊重させていただき、我が国経済社会の構造改革に向け、全力をあげて取り組んでいく所存でございます。

委員の皆様方には、これまでのご尽力に心からお礼を申し上げますとともに、引き続き、ご支援とご協力を賜りますよう重ねてお願いを申し上げて、ご挨拶にさせていただきます。 本当にありがとうございました。

〔 豊田会長 〕 ありがとうございました。

 本日は、総理のお時間は5分ほどしかございませんが、せっかくの機会でもございますので、ご自由にご発言をいただきたいと存じます。

〔 橋本総理大臣 〕 秘書官が少しサバを読んでおりまして、15分ぐらいございます。

〔 豊田会長 〕 そういうことでございますから、どうぞ。

〔 金井委員  〕  日立製作所の金井でございます。私は、経済主体役割部会の方に参加しました。

 今回の報告書は、会長、部会長をはじめ委員の方、あるいはワーキンググループの方の貴重な意見がかなり尊重的に取り上げられていると思います。そういう意味で、事務局の方々のご努力によって、かなり難しい点もあったと思うわけですが、よくまとめていただいて、ありがたく感謝しております。

 審議会の議論では、いろいろなことが議論されましたので、そのことについては申し上げることはありませんが、考えていることを2つ、3つ申し上げさせていただきたいと思います。

私は、一昨日、中国から帰ってまいりました。ちょうど急激な円安が起こったということで、中国でも各所で大変話題にされました。幸い、協調介入、あるいは不良債権問題の処理、あるいは税制の改正のお話がございまして、おさまって安心したところでございます。

しかし、現在の景気というのは、世界をも揺るがすと言われている戦後最悪の不況でございます。最近の円安とか株安というのはそれの警告だろうと思います。

この不況の原因の1つは、単に政府の短期的経済政策の善し悪しという問題ではなくて、世界経済に対する日本の経済の転換の遅れということだと思います。そういう意味から言うと、今は誰でも現在進めておられる構造改革の必要性というものを非常に強く感じてきているのではないかと思います。行政は、公的部門のあり方につきましては、政令改正あるいは規制撤廃という議論が出ておりますが、一方、私どもの民間企業についても、率直に申し上げて反省すべき点は少なからずあったと思います。収益が欧米企業に比べて低いという問題もありますが、コーポレート・ガバナンス等の問題点もグローバルな視点から見直すことが必要で、この報告書にもかなりそれが書かれてございます。

もう一つ、不況の大きな原因は、金融の問題があります。私は金融は素人ですけれども、この間のアメリカの「ビジネスウィーク」に、日本の公的部門の巨額にのぼる隠れ負債の話が載っていました。問題は、国内のみならず、海外でもいろいろ憶測されて、既に国民の不安をかき立てている、というようなところに問題が1つあるのではないかと思うのです。そういうことから言うと、よく言われていますが、不良資産あるいは負債についての透明性が確保されていること、それを政府から国民に対してよく説明をしていただくということが非常に大事ではないかと思います。

今必要なのは、そういう問題点を真正面から国民にもわかりやすく伝えていただいて、悪いところは直していく。そうすることによって、国民の信頼とか世界の信頼が得られるのではないかと思います。

民間企業、私どもは製造業でありますが、これから荒波を乗り越えて行けると思っておりますし、私どもの会社は、1910年に創業したときはベンチャー企業であります。この厳しい時代というのは、ベンチャー企業の創業の時代であるというふうに前向きにとらえていきたいと思っておりますが、そのためには、企業が国際競争力をつけることが極めて大事なことであります。その1つは、税制の問題で、これも総理がこの間おっしゃっておられましたので、申すまでもありませんけれども、税の制度というのは人とか企業の行動も決めてしまうものだと思います。国際的に整合のとれた制度に早くしていただきたいと思います。

もう一つ、今日の議論には含まれていないのですが、国際競争力の1つに産業技術力の強化というのがあると思います。今度の行政改革で内閣に総合科学技術会議というのが設けられることになりました。実は、こういう技術に関係している部門では、この総合会議に期待しているところが非常に大きいものがございます。産・官・学がしっかり協力して、日本の国際競争力を回復することが非常に大事なことだと思っておりまして、そういうことでお願いしたいと思います。

最後になりましたが、最近、国とか国家とかいうことが聞こえなくなったのは非常に残念でありまして、日本の国としてやるべきことを堂々と主張していただいて、国民によく説明していただきたい。

総理には大変なことですけれども、現在の経済社会の再生にぜひ頑張っていただきたいと思います。

以上です。

〔 師岡委員 〕 私は、働く女性の立場を含めまして、少子・高齢社会を大変懸念する者です。就労環境ということから考えますと、何も女性だけの就労環境が悪いことではなく、今の若者世代の働き方、こういったことが多様性の中でいかがなものなのかということを常々考えるわけです。

少子化ということでは、97年度の出生率のデータが示されました。そういう立場から考えてみましても、女性がキャリアを積んでも就労できる、能力発揮できる抜本的な少子化対策、働く状況の環境整備というものを、私はお願いしたいと思っております。そのことが少子化に歯止めをかけることになると考えているわけです。

 また、働き続けてキャリアを積んだ女性が、高齢化の中でどうしても家庭に帰らざるを得ないような状況というのがございます。介護保険制度がスタートしますので、いくらかこの分で救われるということはあるのではないかとは思いますけれども、私は、まだまだ不足するというふうに思っております。そして、社会保障政策が、働く女性にとって、大きな関わりがあるということを申し上げておきたいと思います。

 どのような環境にあろうとも、一人ひとりが、その保障が得られるシステム、これはよく「世帯単位から個人単位へ」ということが申されますけれども、結婚しようとしまいと、親と同居しようと同居しまいと、条件の違いはあっても、人が人としてきちっと保障されるような、これからの社会保障制度政策をぜひ実現させていただきたいということを申し上げておきたいと思います。

〔 和田委員 〕  総理から先ほど、困難を乗り越えて展望が開ける、そして、経済構造改革というお話がございましたが、正直なところ、ここに示されております将来に対する不安というのが、この報告書の中だけを拝見して、なるほど大丈夫だという確信が本当にみんなが持てるかというと、いろいろな疑問なり懸念というものが残っております。これから、本当に一歩一歩「大丈夫なのだ」という、その確信を持てる1日1日の積み重ねというものをお願いしておきたいと思います。

それから、これは総理がおいでになります前にもちょっと発言いたしましたけれども、これから自己責任を問われる時代になってまいりますが、その点について「情報は公開するから、あとは消費者の個人の責任であり、選択であり、行動である」ということになると思いますけれども、今検討されております情報公開法はまだまだ不十分な面があり、不備な面がある。本当の情報公開というのは、使う人が、本当に十分であり、使いやすい情報公開というのをお願いしておきたいと思います。

以上2点、発言させていただきます。

〔 豊田会長 〕 これまでのご発言に対しまして、総理より特段何かございますでしょうか。

〔 橋本総理大臣 〕 それぞれ大事な問題点のご指摘をいただいたと思いますし、いずれも、これから私どもがフォローしていかなければならないポイントですが、私どもが一番難しいと思うのは、社会保障の組み立てです。今もご発言いただきました中にもありますけれども、私どもが国会に出ました当時、日本の社会保障というのは世帯単位で考えるという基本の1つのルールがございました。しかし、それが徐々に変化をし、一人ひとりに対してということになって、今、その一人ひとりをベースにした社会保障、しかも、まさに若い働き手が減少し続ける中でこれを維持していく。どうしても、1つは、将来世代の負担というものを頭に描かざるを得ません。

それと同時に、1人であろうが、結婚していようが、あるいは親と一緒であろうが、別に暮らしていようが、同じと言われることは、確かに理論の上ではそのとおりですが、1プラス1イコール2ではなくて、1.5 であったり、 1.7であったり、いわゆる共通経費に類するものを社会保障の中に組み込むのか、組み込まないのかというのは、これは相当面倒な議論を必要とします。そして、今は1プラス1イコール2であるという方が、私は基本にあると思っていますけれども、果たして、本当に将来の設計がそれでいいのか。

 これは実は、これから先相当深刻な議論をせざるを得ませんし、その議論は雇用形態にも影響が出ますし、今の給与体系--これは官も民もないのですけれども--、終身雇用制度ベースの中で組み立てられた給与体系というものがそのままでいいのかどうかという問題にもはね返ってきます。雇用環境そのものにも、これはいろいろな影響の出てくるものだと思います。

 私ども、そういう問題意識は持ちながら今、議論を進めておりますけれども、一歩ずつ着実にと言われました言葉のように、まさにそういう意味での着実さをきちんと持ちながら、しかも、あまり遅れないようにということを言い聞かせながら、取り組んでまいりたい、そのように思いますので、どうぞご協力をよろしくお願いいたします。

〔 豊田会長 〕 大変ありがとうございました。

なお、総理は所用のため、ここでご退席になります。どうもありがとうございました。

〔 橋本総理大臣 〕 申しわけありません、失礼いたします。

ありがとうございました。

〔 豊田会長 〕 それでは、最後の議題に移らせていただきたく存じます。最後の議題は「経済審議会の今後の運営について (案) 」についてでございます。

 それでは、中名生総合計画局長からご説明をお願いいたします。

〔 中名生総合計画局長 〕 委員のお手元に資料5「経済審議会の今後の運営について(案)」という1枚紙がお配りしてございます。

これまで経済審議会では、1年間にわたって経済社会展部会と、経済主体役割部会という2つの部会でご審議をしていただいたわけでございますが、今後は、経済審議会の下に「企画部会」という形で部会を設置いたしまして、構造改革の推進等、今後の経済政策・計画等に関する重要な事項について調査・審議を賜りたいと考えております。

また、「企画部会」の下には、必要に応じて委員会を置くことができるという体制にいたしてはどうかと考えております。

それから、この下の機構図にございますように、首都機能移転委員会および計量委員会については、引き続き、経済審議会の下に置くということにしてはどうかと考えております。

以上でございます。

〔 豊田会長 〕 ありがとうございました。

それでは、ただいまご説明のありました「経済審議会の今後の運営について(案)」についてご意見、ご質問をお伺いしたく存じます。

特にご意見はございませんようですが、それでは、基本的には、この案に沿って、今後の経済審議会の運営を行ってまいりたいと存じます。

ほかに何かございますか。

それでは、本日の議題はすべて終了いたしましたので、本日はこれで閉会とさせていただきます。長時間にわたるご審議誠にありがとうございました。

なお、本日の審議の模様等につきましては、この後、私から、公表させていただきたく存じます。

それでは、これにて散会といたします。

--以上--

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