経済審議会経済主体役割部会(第10回)議事録

時:平成 10年 5月 19日

所:経済企画庁特別会議室(436号室)

経済企画庁


経済審議会経済主体役割部会(第10回)議事次第

日時 平成10年5月19日(火)10:00~12:00

場所 経済企画庁特別会議室(436号室)

  1. 開会
  2. 経済主体役割部会報告書(素案)について
  3. 経済審議会報告書(展望・役割両部会合同報告書)(素案)について
  4. その他
  5. 閉会

(配付資料)

  1. 資料1  経済主体役割部会委員名簿
  2. 資料2  経済主体役割部会報告書(素案)
  3. 資料3  経済審議会報告書(展望・役割両部会合同報告書)(素案)

部会長 水 口  弘一 (株)野村総合研究所顧問
部会長代理 金井   務 (株)日立製作所取締役社長

 

荒木   襄 (社)日本損害保険協会専務理事

 

潮田  道夫 毎日新聞経済部副部長

 

浦田  秀次郎 早稲田大学社会科学部教授

 

奥野  正寛 東京大学大学院経済学研究科教授

 

川勝  平太 国際日本文化センター教授

 

河村  幹夫 多摩大学経営情報学部教授

 

神田  秀樹 東京大学大学院法学研究科教授
 

 

 
公文  俊平 国際大学グローバルコミュニケーションセンター所長

 

ポール・シェアード ベアリング投信株式会社ストラテジスト

 

末松  謙一 (株)さくら銀行相談役

 

竹内  佐和子 東京大学大学院工学系研究科助教授

 

鶴田  卓彦 (株)日本経済新聞社代表取締役社長

 

得本  輝人 日本労働組合総連合会副会長

 

豊島   格 日本貿易振興会理事長

 

那須   翔 東京電力(株)取締役会長

 

西村  清彦 東京大学大学院経済学研究科教授

 

樋口  美雄 慶応義塾大学商学部教授

 

グレン・S・フクシマ 在日米国商工会議所(ACCJ)会頭

 

星野  進保 総合研究開発機構理事長

 

星野  昌子 日本国際ボランティアセンター特別顧問

 

本間  正明 大阪大学経済学部長

 

森地   茂 東京大学大学院工学系研究科教授

 

諸井   虔 秩父小野田(株)取締役相談役

 

山内  弘隆 一橋大学商学部教授

 

山口  光秀 東京証券取引所理事長

 

吉野  直行 慶応義塾大学経済学部教授

 

米倉  誠一郎 一橋大学イノベーション研究センター教授

 

和田  正江 主婦連合会副会長

〔 部会長 〕 ただいまから、第10回の経済主体役割部会を開催させていただきます。 委員の皆様方には、ご多用中のところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。 さて、本日の議題は2つでございます。

1つ目は「経済主体役割部会報告書(素案)について」でございます。2つ目は「経済審議会報告書(展望・役割両部会合同報告書)(素案)について」でございます。

まず第1の議題、「経済主体役割部会報告書(素案)について」でございますが、本日お手元に配布しております資料2は、これまで9回にわたり活発にご審議いただいた内容、事務局にいただいたご意見等を踏まえまして取りまとめた素案でございます。事務局より、素案の概要につきまして説明をお願いいたします。

〔 事務局 〕 それでは、お手元の資料2をお開きいただきたいと思います。

全体の成り立ちにつきまして、今、部会長よりお話のありましたとおり、これまでの9回のご議論を踏まえて取りまとめたものでございます。

最初に、目次をご覧いただきたいと思います。「はじめに」ということで、第1章で「現在の経済社会の問題点」を挙げ、第2章で「システム再構築の方向性と経済主体」ということで、「システム再構築の方向」それから「経済主体の役割はどう変わるか」ということを述べております。そういった経済主体のシステム再構築のためにどのようなことをなすべきかということで、提案を、それぞれの主体に応じまして、1、2、3、4、5と並べております。

それでは、報告書の素案について簡単にご説明させていただきたいと思います。

「はじめに」ということで、この報告書のねらいについて述べたものでございます。

「 大きな潮流変化の中で、これまで有効に機能してきた我が国経済の各システムが十分に機能しなくなってきており、それがこのところの低迷状態の一因となっている。従来の制度の中には合理性を失っているものがあることに加え、現在進められている改革の重要性は認識されているものの、変革に伴うリスクや低成長による限られたパイの奪い合いが予感され、高度成長期の経験との違和感も相まって国民の間に閉塞感や漠然とした不安感をもたらしている。

こうしたことの背景として、既得権益や協調性のメリットへの過剰な固執、変革に伴うリスクの回避、システム自体の硬直性等のために、改革に向かおうとするダイナミズムに欠けていることがあげられる。その他に、市場の中に過剰な規制が残存していること、政府と民間のガバナンスが非効率であることといった要因も考えられる。

このような要因を取り除き、日本経済が全体としてうまく機能するように、変化する潮流に合ったシステムに再構築していく必要がある。そこで、現行のシステムの問題点を明らかにした上で、改革の過程や改革後の各経済主体のあり方に関して、1つの羅針盤となることを願って、この提案を行うこととする。」

そういうスタンスでこの報告書のねらいが記載されているところでございます。

そういったねらいに沿いまして、第1章以下に書いております。

第1章「現在の経済社会の問題点」では、1として「既存の経済システムの特質」を述べております。

2として「潮流変化に対する適合性の欠如」を各主体で述べております。これは、これまで何回か議論いただきました点を取りまとめてございます。

(1)の企業では、非効率なガバナンス、創造的な視点の不足

(2)の個人では、自己責任意識の不足

(3)の政府では、非効率性と不透明性

というような特徴が挙げられるということで問題点を整理したところでございます。

第2章「システムの再構築の方向性と経済主体」では、そういった問題点を踏まえて、 1として「システム再構築の方向」を述べております。

「 今日の我が国経済の成果は一朝一夕にもたらされたものではなく、多くの先人達の努力と創意等に基づくものである。それだけに、従来のシステムの中にも国際的にも十分通用しうるものがあり、それらによって培われた有形無形の資産の中には国際社会をリードするに足る財産が存在している。

今後求められるべきことは、市場機能重視を基本として、これまで日本的システムの中で蓄積されてきた有形無形の資産を最大限活用しつつ、国際的にも受け入れられるような効果的なシステムを再構築することである。

再構築されるシステムにおいては、市場が的確に機能し、かつ活性化することが大前提である。そのためには、明瞭で客観的なルールと市場原理に基づき、グローバルな思考や自己責任の意識や能力に加え、多様な価値観を持って行動する経済主体の存在が不可欠であり、そうした主体が自らの能力を十分発揮できるようなシステムの構築が求められている。

ただし、市場機能が必ずしも万能ではないことに鑑み、市場から取り残される真の弱者に対して配慮を行うことも重要である。」こういう基本認識を述べております。

その上で、方向性として具体的に次のようなことを述べております。

・民間部門が中心のシステムであること

・常に活性化のメカニズムが働いていること

・市場においては透明で公正なルールが確保されていること

・ルールの確保にはグローバルスタンダードが重視されていること

・価値観の多様化に対応した多様な選択肢が存在していること

・個人の意欲と能力が最大限発揮される場が提供されていること

・公的部門の運営について受益と負担が明確であり効率的であること

こういった認識の下で、2として「経済主体の役割はどう変わるか」ということが、6ページ以下に述べております。

6ページの頭には、

「 最も重要なことは、経済主体を構成する個々人の意識改革である。自己責任意識の確立、結果平等から機会平等への意識変革、透明で公正なルールの重視への意識改革を行っていく必要がある。

このような意識変革を進めていく中で、各経済主体は以下のような役割を果たしていくことを求められているのではないだろうか。」

ということで、各主体の果たすべき役割、求められている役割を述べております。

「企業は、規制緩和等により自由な活動の場が広がる中で、経済活動を中心となって推進する役割を担っていく。」ということで、そういう認識に立っていくつか役割を求めております。 「個人は、自己実現に向け意欲を持って能力発揮を果たし、リスクとリターンを自己管理しつつ、自己責任を基本とした行動をとる。」ということを書いております。この「個人」の最後に、「自らが行った選択についての自己責任を求められる」個人に対しては、「もちろん、教育を含めた、個人が自立していくための基礎的インフラの整備を忘れてはならない。」ということで結んでおります。

政府につきましては、「政府は、官民の役割分担を徹底し、民間や地方に委ねられるものは可能な限りこれに委ね、行政組織については極力スリムにすると共に、行政事務の効率化と重点化を図っていく。民間活動を補完する役割に徹する」という基本の下で、いくつか述べております。 さらに、「NPOは、市民の自主的な参加活動を基本とする新しい主体として近年急速に発展してきている。既存の各経済主体で現在果たしきれなくなっている問題もNPOという新しい主体の役割を加えることによって解決策を見出すことも可能であり、その意味で各経済主体の機能を強化する役割を担っていくことが期待される。」このように取りまとめたところでございます。 こうした各経済主体の役割を十分に発揮するために、どのような社会的な変革、システムを再構築するために何をなすべきかということで、8ページ以下の第3章「システムを再構築するために何をなすべきか(提案)」で具体的な案を提言している、こういう構成になっております。 1の「透明で公正な市場に向けた共通インフラの整備」は、各経済主体に共通した課題として「透明で公正な市場に向けた共通インフラ」ということでまとめたわけでございます。第1に、過剰な規制の緩和・撤廃、第2に、情報開示と説明責任の徹底や評価システム・機関の整備、という2つの点について提案しております。

(1)「規制緩和等による民間中心システムの構築」ということで、「規制緩和・撤廃への一層の取り組み」と「市場機能の阻害要因としての民民規制の解消」について述べております。  1の「規制緩和・撤廃への一層の取り組み」については、これまで行革審、あるいは、この第2パラグラフにありますように、この部会でも特別のワーキング・グループにご審議いただきましたが、6分野についていろいろご提言をいただき、また具体的な進捗が見られております。 第3パラグラフにありますように、

「 しかしながら、規制の緩和・撤廃は未だその途上にある。規制の緩和・撤廃が遅れることは民間企業の活力を削ぎ、高コスト構造を通じて、我が国経済の競争力を低下させかねない。特に、経済のグローバル化を背景に企業が国を選ぶ時代にあっては、我が国産業を空洞化し、国内の雇用機会を失わせるおそれがある。」こうした観点に立って、昨年11月の「21世紀を切りひらく緊急経済対策」と本年4月の「総合経済対策」において、大幅な規制緩和措置を講じているということを述べた後で、「今後はこうした規制の緩和・撤廃を一層進めることにより、企業あるいは個人の活力、適応力を最大限に引き出して、民間需要中心の自律的な安定成長に乗せていくことが不可欠である。そのためには、政府、企業、個人等の各経済主体が、規制緩和・撤廃の推進に対して、より積極的かつ主体的に取り組む姿勢を保つことが必要である。」ということで、具体的に、3つの点を提案しております。

1)で、政府については、常に実効性を確保するということから、事前、事後の十分なチェックを求める。そのためには、規制緩和は第6回でご議論いただきましたように、「このため、規制の緩和・撤廃を行う際には、その目的や効果、具体的なスケジュールについて、または仮に規制を存続ないし新設する際においても、その費用対効果について国民各層に分かりやすく説明し、理解を得ていくことが重要である。さらに、許認可等の行政処分及び行政指導の透明性、明確性を確保するため、行政手続法を遵守するとともに、各々の規制について行政の権限がどの範囲にまで及びうるのかを明確にしていくことも必要となってくる。また、規制の緩和・撤廃が目的通りに実行されているかどうかのチェックも必要である。」ということを述べております。

2)で規制緩和・撤廃の推進は、国だけではなく地方にも共通の課題があるということ  を述べております。

3)で「一般国民及び事業者においては、現在の規制体系のどこに問題があるのかといった点、並びに規制の存続や新設の必要性のいかんに等について、積極的に点検し」、発言を行ってほしいということを述べております。

 2「市場機能の阻害要因としての民民規制の解消」としては、民民規制のワーキング・グループの提案を受けて、そのポイントを述べさせていただきました。これは省略させていただきます。 11ページ、(2)「市場機能発揮のための情報開示、説明責任及び評価システム」でございます。これも第6回の当部会でご議論いただいたところをもとに整理いたしました。

まず、基本的な認識としまして、情報開示あるいは評価システムについて、「次のようなものが考慮されるべきである」として、4つまとめてございます。

1)情報の保有者が自ら保有する情報について属性を含めて極力開示していくような仕組みを構築する。

2)情報の非保有者に情報の開示を請求する権利を付与する。

3)利用者にとって分かりやすい情報開示がなされるような仕組みを構築する。

4)評価機関の間の健全な競争を促進する仕組みを構築する。

こういった4つの基本的視点を述べた上で、「第一に」以下でいろいろな具体的な提言を述べたという形になっております。これが11~12ページに書いてあるところで、企業内容の開示、説明の仕方、評価システム、情報公開ということについて述べたところでです。

12ページ、これは企業に関するところで、前回の部会において主にご議論いただきました。2の「柔軟で活力ある企業システムの構築」ということで、大きく(1)で「コーポレートガバナンスの再構築」、それから、18ページの(2)で「新しい企業を起こしやすいシステムの構築」、前回は「起業と退出」で書いてございましたが、もう少し積極的に「新しい企業を起こすシステムの構築」とタイトルを改めて書いてございます。

(1)の「コーポレートガバナンスの再構築」につきましては、前回ご議論をいただきましたので、そのご議論を踏まえてどのような点を直しているかということだけをご説明したいと思います。

若干ご指摘がございましたのは、「コーポレートガバナンスの再構築の方向性」ということで、15ページの「b)現行の企業統治機構の改革」で、この間は、第1パラグラフで、「例えば」ということで株主総会と取締役会の間に間接民主主義的な制度も選択しうるように検討したらどうかということがありましたが、ここは「検討に値すると考えられる」としております。

あとは、前回ご議論いただいたところを書いたところでございますが、18ページのd)の「金融機関に対する検査・監督体制の整備」ということで、下から6行目ぐらいに「例えば英国の例に倣い」ということで、自主規制機関に基づく検査・監督の提案がなされているわけですが、「なお」以下で、「その場合においても、自主規制の範囲・内容等を法律に位置づけ、明確化するとともに、自主規制機関のガバナンスに十分留意し、同機関の社会公共性を確保していくことが重要である。」ということで、これは民民規制のワーキング・グループでも指摘されている点を付与したところでございます。

(2)の「新しい企業を起こしやすいシステムの構築」ということで、これも前回ご議論いただいたところを中心に述べております。

20ページに、 2の「創業支援機能の充実」とございますが、前回は商社等の機能についても書いてありましたが、商社だけを挙げるのもどうかということで、その辺については少し文章を整理させていただきました。

次に、22ページに移りまして、3)にM&Aに関連しまして三角合併のことを述べておりましたが、その後もう少し事実関係について調べてみますと、金融持株会社の法案が出ておりますが、三角合併について、一部金融機関については法律でこういった制度が認められるようになっておりますので、そういった事実に基づきまして若干記述を改めさせていただきました。

これが主な訂正点でございます。

次に、24ページ以下、3の「個人の自立を支える環境整備」では、「個人においては、各々の価値基準に従って主体的に選択することにより、自己実現を図ることが可能なシステム」ということで、大きく「能力発揮のための環境整備」「自立した個人による投資・消費活動を支える環境整備」と整理させていただきました。特に、「能力発揮のための環境整備」の施策の中で、労働市場についてもルールに基づく十分な市場監視が必要だろうというご指摘がございまして、その点を受け入れまして、25ページの「第一に」というところの3行目ですが、「一方で、これが適切に実施されるよう派遣労働者の保護の強化を図るなど新たに生まれる市場のルールを整備するとともに、ルールが遵守されるよう市場監視機能の強化を図る必要がある。」と入れております。 26ページ、27ページは、第7回のときにご議論いただいたところを主として踏まえてございます。

29ページ、4の「負担と受益の明確化による多様なニーズに応える効率的な行政の確立」は、官と民との観点、あるいは国から地方へという中で、具体的にどのような提言ができるかということで、これは主として前回ご議論いただいた点を踏まえて直したものでございます。あるいは、その前にご議論いただいた点を直したものでございます。

大きく変わりましたのは、30ページの(1)の「公共サービスへの民間活力の導入」 の 1「PFIの考え方の導入」というところを、最近の情勢を踏まえて直させていただきました。 最初に、PFIとは何かということを書いた上で、これは英国においては幅広く導入ささているが、「PFIが実績を上げた背景として主に以下の点が挙げられている」ということで、 1)VFM(Value For Money)という基本的考え方が徹底されていること

2)徹底した官民の役割分担が確立していること

3)チェック機能が存在していること

4)公共部門であっても、民間の競争にさらされている競争環境にあること

という4点を挙げております。

その上で、我が国においても、これまで社会資本整備の分野についていろいろな手法があるわけですが、それに加えて、

・BOT方式

・公共施設と民間施設を一体的に整備する方式

・公共主体に代わって民間企業が社会資本を建設し、コストは公共主体からの収入によ  り回収する方式

等を一層推進する必要があるということを述べた上で、留意点を述べております。

さらに、31ページにいきまして、「今般、『民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律案』が国会に提出されたところである」と現状の認識を書いております。 ただ、この点につきましては、今、与党で議員立法でこの法律案が作成されているところで、本日現在ではまだ国会に提出されておりませんので、そこについてはまだ事実と違っているところでございます。恐らく、まとまって、国会に提出されるのではなかろうかと見ているところでございます。

こうしたPFIの法案について、評価でございますが、「今後は、この法律を受け策定される基本方針や実施方針において、官民の役割とリスク分担の明確化、事業や事業主体の選定に当たっての客観的評価や公的支援措置のあり方に関し、英国等における優れた点を取り入れながら、より効率的な公共サービスが提供されるよう、また、施設の特性や地域のニーズに対して柔軟かつ弾力的に対応できるような仕組みを構築していくことが期待される。」という形で結んでおります。 それから、第三セクターあるいは公的金融のあり方については、これまでご議論いただいた点について若干訂正を加えてございますが、基本的には同じでございます。

それから、前回ご議論いただきました(2) の「地方分権型行政システムにおける公共サービスの新たな構築」では、この間ご指摘のありました、33ページの 1の「政策に対する評価機能の充実強化と不断の見直し」で、「一般的な政策評価のルールとしては、以下のように整理しうる。」ということで、下から半分以下のところに書いてありますが、現状に対する評価ルールと新しい事業に対する評価ルールは分けて書いた方がいいというご指摘をいただきまして、Iで現状に対する評価ルールを新しく加えさせていただきました。地域の現状や公共サービスの現状に対する評価と住民ニーズの把握・評価ということで、i「地域の現状や公共サービスの現状に対する評価」、ii「公共サービスの新規立案や改善に対する住民ニーズの把握・評価」の2つの段階が必要だろうということで整理をさせていただきました。

次に、NPOにつきましての環境整備、5の「NPOの健全な発展に向けた環境整備」ということで、37ページ以下ですが、これはNPOワーキング・グループの提言を主として取り入れたものでございます。

最初に(1) の「特定非営利活動促進法」いわゆるNPO法について紹介をし、その法律の評価について第2パラグラフで、

「 この法律では、団体に対する政府の監督を必要最小限度に止め、その活動の是非は団体情報の開示による国民の判断に委ねることとしている。今後、団体側には情報公開に耐え得る管理運営の体制を作り、国民に対して活動の透明性を担保した上で社会に役立つ活動の実績を上げていくことが求められる。一方、都道府県をはじめとする所轄庁には、法の円滑な施行に向けて、関係者への十分な周知や、条例の制定など万全の準備を行うことが求められる。」

ということで評価をしております。

以下、(2) の「今後の環境整備」で環境整備について4つの提言をしておりますが、これについては前回のご議論を踏まえて、若干言葉を補って整理させていただいたところでございます。基本的な内容については、前回ご報告のありましたワーキング・グループの報告と同じという形になっております。

40ページに「おわりに」ということで、以上の提言を締め括った上で、

「 今後目指していくことは、従来の我が国のシステムの中で良いものを残しながら、見直すべきところは見直した上で、グローバル化に対応して、諸外国のシステムに良いところがあれば、それを学習し取り入れつつ、新しいシステムを構築していくことである。中長期的には、我が国一国内においても多様なシステムや価値観が共存し、また世界大の市場の中でも多様なシステムが併存しかつ切磋琢磨し合うこととなるだろう。そのような中で、我が国としてモデルを呈示しつつ、世界をリードしていく分野も出てくるのではないか。重要なことは、果敢な変革にこそ、将来的な可能性は十分にあるという認識を共有することである。本報告書は一つの提案に過ぎないが、そのようなシステムの再構築を目指していく中で、経済の好循環メカニズムが蘇生することを通じて、我が国の経済は再び活性化していくと信ずるものである。」

というふうに結んだところでございます。

以上、報告書の素案としてご報告させていただきます。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。

それでは、ただいま説明のありました「経済主体役割部会報告書(素案)」につきまして、ご意見をお伺いしたいと思います。どうぞ、どなたからでもよろしくお願いします。

〔 A委員 〕 漠然とした発言で恐縮ですが、大変内容的にすばらしい報告書ですので、内容に関するコメントはないのですが、ぜひお願いしたいのは、どういうふうにしたら最も実現可能かという手段について、ご検討いただければと思います。内容的には大変すばらしいものだと思います。

〔 B委員 〕 2点ほどです。

1点は、細かいことですが、ちょっと気になったのは、11ページの「市場には本来不安定性が内在している。市場機能をより重視するようになれば、市場の不安定性に基づくリスクが高まることが予想され」という形で書いてあるのですが、これは「不安定性」というのか「不確実性」なのか、そのどちらかが理解できなかったのです。

「不安定性に基づくリスク」と「不確実性に基づくリスク」というのは全然違うもので、全体を見ますと、何となく不確実性に対するリスクのように見えるのですが、経済に対するシステミック・リスクかノン・システミック・リスクかというところが、これを読むと混同している気がいたしまして、これは不確実性ということですか。

〔 事務局 〕 私どもが書いた感じとしては、不確実性の方が強いのではないかと思います。 もう一回読み直してみます。

〔 B委員 〕 もし不安定性だとすると、これは政策と絡んできますので、もっときちっと書き込まないといけないことになってきますので、それをちょっとお願いしたいと思います。 2点目は、さっきの実行をどうやって担保するかという話ですが、こういうところでよく言われるのは、例えばある時期を設定するとか、期限を設定するとか、そういうようなことは今回の場合はやらない、つまり何らかの形でそういう数字を入れるというような、ビッグバン形式ですね、そういうことは入れないということですか。

我々の方から見ると、担保してほしいというところがありますので、何らかの形で、ある種の拘束力のようなものを出したいという気持ちがあるのですが、それはいかがでしょうか。

〔 部会長 〕 私、部会長としたら、ビッグバンをはじめとして、ターゲットと目標年次というのは既に相当計画で出ておりますので、それらをさらにきちっとバックアップする形で推進していくという形でこういう形にして、それぞれについて、こういうのはいつまでにどうしろということはなかなか書きにくいという感じがありますので、こういう表現にしております。

事務局の方から、追加で特に考えがあったら発表してください。

〔 事務局 〕 各種の提案がありまして、提案によっては間もなく法案が出るようなものもありますし、それから、現に経済対策などでも「検討すべし」というようなものもありますし、そういったもので今明言できるものについて、あるいは政府の中で「急ぐべきである」と期日を記すべきだとされているもの、あるいは、した方がいいものについては、もう一回チェックしてみますけれども、今、部会長からお話がありましたように、全体としては、これを促進する、その中でこれが実行されるという形で言ってみたいと思っております。

例えば、401Kプランにつきましても、今度の経済対策でも「検討する」ということが述べられ、またそれをここに書いてあるような形で、これはそれをさらに一歩進めた形で、もう少し積極的に検討することを提言しているわけですが、遠い将来において実現されるものというよりは、なるべく近い将来において実現されることが可能なもの、あるいは実現することが望ましいものという形で、できる限りこれまで提案のあったものをわかりやすく、かつ具体的に提言をさせていただいた、こういうつもりで述べております。

この辺についてもう少し具体的にした方がいい、あるいはもう少し積極的に書いた方がいいというものがあれば、ご指摘いただいて、それを検討させていただければと思います。

〔 部会長 〕 既にいろいろな計画、ビッグバンをはじめとしていろいろなものがございますが、そこではっきり目標年次が出ているものは、この本文の中でも引用して入れる、その辺の工夫はいろいろ検討していきたいと思っております。

〔 B委員 〕 もう1点、それに関連してですが、政策に対する評価機能のところで、評価をする主体というのは、この中で必ずしも明確でないような気がするのです。つまり、あまり書けないという気持ちはわかるのですが、客観性とかいうのを考えると、その辺の主体をはっきりさせる。しかも、それにある種の公正というか、中立性というものを入れるのはどうしても必要ではないかと思います。

以上です。

〔 C委員 〕 私は、大変すっきりと理路整然と書かれていて、説得力のある報告であるというふうに思ったのです。

細かなことを2点だけ申し上げます。

これは基本的に個人の自立ないし個人の責任ということを重視されて、そういう哲学で書かれていると思うのですけれども、経済主体の個人のところで、6ページですが、「教育を含めた、個人が自立していくための基礎的インフラの整備は忘れてはならない」、これだけを見ますと、教育の基礎的インフラがまだ整備されていないというふうに読まれかねないということで、「教育システムないし教育制度を含めた、個人が自立していくための基礎的インフラの再構築」の方がいいのでは。今の教育のあり方がまずい、そういう意味だと思いますので。

もう一点は、第3章の4の基本的な考え方で、「官から民へ」と「国から地方へ」という2つの柱で書かれているわけですけれども、この官というのは、どちらかというと中央官庁という意味で書かれておりますが、一方、地方にも官がありますので、地方における効率的な行政の確立という面をもう少し出していただいて、地方の官のあり方のスリム化ということもやはり重要であるという認識をお出しいただければと存じます。

〔 D委員 〕 私も皆さんと同感でございまして、前回申し上げたことも大分入れていただきました、どうもありがとうございました。

前回のときに、ベンチャーに関する税制の問題はどういうふうに考えたらいいだろうかという問題提起をしたと思うのですが、1カ所、純粋持株会社に関する税制の問題というのは指摘されているのですが、全般的に創業支援のところでそういう話が出てこないのです。これは何か議論があって、その点は入れない方がいいと判断なさったのか、いかがでしょうか。

〔 事務局 〕 ベンチャーの税制につきましては今、政府の経済対策の中でもエンジェル税制とかいうことで書いてありますので、なるべくそういう税のことについても触れるつもりで書いたのですが、今おっしゃるように、まだそういった税制面の認識があまり印象に残らないというのであれば、その辺は、非常に重要な話でありますので、浮かび上がるようなことがもう少し可能なのかどうか検討してみたいと思います。

意識的にベンチャー税制というか、税制のことを落とした、そういう環境でもって仕事をしたということではありませんので考えてみます。

〔 E委員 〕 NPOに絡みましては、いろいろ盛り込んでいただいて大変感謝しております。 先ほど、Aさんがおっしゃったこととも関係があるのですが、最近、各地でそれぞれのNPOに対する支援を行っていくNPOセンターというのが既に十数カ所生まれてきているわけですけれども、今日の報告書についてではないのですが、地方公共団体によっては条例作りの段階から、NPOを交えて既にそういう話し合いや実際の作業が始まっております。それで、地方公共団体複数にわたって事務所を所有している場合には、経済企画庁に届出をすることになっているわけですけれども、経済企画庁のほかの部局などで、既に、こうした意図をくみ上げてのNPOとの話し合いとかいうようなことを始めておられるのかどうか。今日の主題と離れて申しわけないですが、ご存じであれば教えていただきたいと思います。

〔 事務局 〕 NPOにつきましての法律が一応成立いたしましたので、今のところ、これを12月には施行できるようにしたいということで準備いたしております。

条例のもとになると言うと変ですけれども、ひな型みたいなものを経済企画庁の方で、経済企画庁が受ける部分についてのいろいろな手続のものを作りまして、それを自治体の方に見ていただいているという作業をしております。

それから、これは部内の室でございますけれども、国民生活局の中にNPO室を設けまして、鋭意その作業を行っております。

地方自治体との関係でございますと、そういう作業の中で自治体の条例を作るというのは議会でつくりますので、議会は大体6月議会・9月議会とありますので、2回議会で審議できるようなことを考えまして、先ほど申し上げた12月に施行できるようにということでございます。そのために、知事会だとかで、経済企画庁の方でこういうことでやりますという説明をしてございますので、自治体の方の準備はどんどん進んでいるかと思います。

ただ、自治体の方でも、言い方がおかしいのですけれども、熱心に取り組んでいて自分でどんどんでき、かつ今お話がございましたようにNPOの方々と一緒になって条例を作るように進んでいるところと、そこまで行かないところがございます。これもなかなか難しくて、国の方からこうしろああしろという法律ではなく、団体委任事務ですので、従来のように、「国がこう決めたから、あなたたちはこうしなければだめだ」というわけにもなかなかいかないという、そういう微妙なところがございます。

ひな型的なものは作っているということと、知事会にお話をしていること、それから、県の方で十分に時間がとれ、かつなるべく早く施行するということで、2回の議会の開催ができるような日付をもって、本当は1年間の猶予はございますけれども、それを12月施行という形で努力しております。

それから、国民生活局の方では、常々先生のところとのいろいろなご連絡などをしていると思いますので、今、お話のあった点につきましては、私の方から国民生活局によくお伝えをしたいと思っております。

以上でございます。

〔 F委員 〕 11ページの情報開示の項目のところで1)から4)までありまして、3)の「利用者にとって分かりやすい情報開示」、これは非常に大事なことだと思うのですけれども、もう一つ、利用者にとって必要なときに情報開示がなされるかということ、いつ情報開示がされるかということが大事ですので、どういう文章になるかわかりませんけれども、「必要なときに」という意味のことを入れていただきたいと思うのが1点です。 その下の方に、(「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」が今国会で成立したところであり、その着実な施行が望まれている)とあります。それから、同じような意味で、10ページに「『消費者契約法(仮称)』の早期施行」が述べられております。これは両方とも、私どもにとりまして運動の大きなポイントにもなっております。文章に入れるのが今の時期として適当なのかどうかはわかりませんけれども、私どもにとりますと、早期施行も大事ですけれども、内容がまだまだ不十分であったり、不備な点が多かったりという点があります。ただ、これはこれから議論していく法案ですので、ここの文章に「充実」とか「拡充」という文章を入れるのはおかしいのかなと思いながら読んでおりましたけれども、私どもの取り組んでいる立場としますと、内容的には必ずしも十分なものとは理解していないということだけ申し上げておきたいと思います。

文章に入れるかどうかは、ご検討いただきたい思います。

以上でございます。

〔 部会長 〕 第1点のタイムリーディスクロージャーの問題は、12ページに一応、「併せてタイムリーな情報開示を行うことにも留意すべきである」とは書いてありますが、おっしゃるとおり、3)のところに、「わかりやすい情報開示がタイムリーになされる」ということは入れた方が、より分かりやすいとは思います。

〔 G委員 〕 私も、大変立派な報告書ができたと感謝していると同時に、少し感じているところで2、3のコメントがあります。

まず、全体の構成としては、コーポレートガバナンスとか、M&Aの市場の促進とか、持株会社導入の話とか、ずいぶん充実した、ポイントを得た分析があるわけですけれども、ここではシステム的な観点がとられている割には、労働市場に関する話が少しバランスが取れていないような気がするのです。

それは一つは、量のことです。もう一つは、内容のこと。労働環境に関するところになってくると少し話が曖昧になっているような気がするのです。

従来から議論しているように、コーポレートガバナンスの改革、再構築を、労働市場の流動化の問題と1つのセットとして、システム論から見た場合はセットとして考える必要があろうかと思うので、その辺のバランスをもう少し図ることができたら、より充実した議論になってくるのではないかという気がします。

もう一つ、全体的な構成から見た場合、やや欠けている観点としては政府の役割、これからどういうふうになるかという話です。行政サービスとか、官民とか、地方分権の話が出ているのですけれども、例えば、これからの政府の役割がこうであるべきであるというような規範的な記述がもう少しあってもよさそうな気がいたします。

特に、その中で、これから断固として改革をやるとなると、ますます安全ネットの整備、例えば、これは金融市場においても、あるいは労働市場においても、政府が安全ネットの整備に当たって、過去の整備が十分できていなかったという補完的な意味合い、あるいはこれからどういうふうに安全ネットを整備すべきなのかという前向きな話も含めて、この辺の記述がもう少しあってもいいのではないかという気がいたしました。

より細かいところで、コーポレートガバナンスのところでは、21ページで純粋持株会社制度に関する記述、レコメンデーションが出ています。これは大変いい方向だと思うのですが、あまり具体的な記述にはなっていないというのが私の実感です。

例えば、「以下のような環境の整備を行う必要がある。」とわりと強い口調の発言がありますが、中身を見てみると、一歩下がって、ちょっと曖昧な表現になっているなというのが私の印象でした。

例えば、連結納税制度のところになりますと、レコメンデーションとしては、「連結納税制度について検討を進める」とあります。恐らく、今のマスコミあるいは財界の論調を聞いていると、このことに反対する人はいないだろうと思います、「検討する」というわけですから。ですから、せっかくの機会ですから、1つの可能性として、この辺のことをもう少し強調する。例えば「導入」を、もう少し積極的に指示するとか、1つの可能性としては、指摘しておきたいと思います。 ちょっと気になるところは、「国際的な制度整合を図る」という記述が出ていますが、連結納税制度の導入の実態を調べますと、世界的なコンセンサスというものはできていないので、持株会社があっても連結納税制度を導入している国もあれば、導入していないところもあります。ですから、それよりも、持株会社を日本がどういうふうに使いたいのかという観点をより強く出した方がいいと思います。

もう一つ、3)のところでは、従業員の労使関係の話が出ています。これは半分質問、あるいはこれからもう少し調べていただきたい点なのですが、持株会社導入が決まった去年の初めごろ、例えば、企業の労働組合が傘下企業と交渉するのか、持株会社と交渉するのかということをめぐって、経団連と連合との間で議論があって、未解決のままに法律ができてしまった。2年以内にこの問題に関して具体的な答えを出すという話にはなっているはずですが、それ以来、全然この話について報道も何も聞いていないので、どういうふうになっているのかなという気がしたのです。 その観点から言いますと、このレコメンデーションは、非常に曖昧になっており、「これについて適切な対応を図る」となっているのです。ですから、この議論は一体どういうふうになっているのかなという気がしたわけです。

もし、それよりももう少し具体的な提言ができたら、より付加価値が付くという気がいたします。

以上です。

〔 部会長 〕 何か説明がありますか。

〔 事務局 〕 労働市場のところについては、確かに、コーポレートガバナンスのところに比べればごく簡単に書いてあるので、そういう意味では、若干バランスに欠けるところはあるのだろうと思いますが、実は、労働については、樋口先生が座長になられてワーキング・グループを作っておられて、その中で比較的詳しく論じてありますので、そこのところをそのまま持ってくると若干ダブるところもありますので、どの辺がバランスなのかというところ、私どもとしてはかなり苦労したわけですが、G委員のようなご指摘があるのであれば、樋口先生ともご相談して、どの程度、もう少し入れれば、今のような形ができるのか、少し検討してみたいと思います。

連結納税の問題について、「検討」というのは、今ご指摘もありましたように、特にNTTの分割以来、この問題は政府の中でも具体的に議論をされているわけですが、この審議会の中でも、連結納税制度がどの辺までやったらいいのかについて、実はそこまで突き詰めて議論を進めてこなかった経緯もあり、それで一歩手前にとどまっているわけであります。おっしゃる意味では、いろいろな意見があろうかと思いますので、その辺、さらに書き込むとすれば、もう少し議論を進めたらいいのかどうかということとの兼ね合いではないかなと思っております。

労働組合のところについては、政府がどうのこうのするというよりは、労使間の話し合いでありますので、その点の状況がご指摘のような形で、なおまだ進んでいないという印象を受けられたところなのだろうと思います。そういった状況を踏まえて、こういうような感じの文章にとどまっているというのが実態でございます。

〔 H委員 〕 これは全体としては、非常にいろいろな意見が盛り込まれていいものができたと思うのです。

今ご指摘のあった連結納税制度の問題、ここにも書いてあるのですが、「税制面では、経営戦略としての組織のあり方が税制によって制約されることがないよう」というか、全く税制によって制約されているわけです。しかも、ベンチャーの問題等を考えあわせても、連結納税制度がないと、先ほどの雇用問題はどちらかというと難しさの方ですけれども、メリットが出てこないところが問題であり、確かに国によって違うとか、どこまでを連結納税の範囲に入れるとかという議論はまた別途いろいろなところでされているわけですから、ここのところについてはもっと強く書いていただいた方がいいのではないかということであります。

それから、雇用問題についても、適切な対応を図るのは、国の知ったことではないという話なのですが、しかし、これは環境下によっていろいろ違うわけで、それについてももう少し強く書いた方が、この「純粋持株会社制度の魅力を向上させる環境整備」としては非常に大事な話ではないかという気がいたしました。

あと、ちょっと細かい点ですけれども、先ほど教育のお話が出ましたが、教育も、先ほどの1行ではいかにも寂しい気がいたしますので、これももうちょっと強く書かれた方がいいのではないかということであります。

もう一つ、これは疑問ですが、いろいろこういうことをやっていく上で司法改革みたいなものがベースとして1つ必要なわけです。今の日本ではなかなか、いろいろな問題が起こったときに司法に対して何ともできない。これはここで取り上げる問題ではないのですけれども、条件の1つとして、どこかにちょっと一言入れておくということも必要かなと思いました。

簡単ですが、以上です。

〔 部会長 〕 持株会社の問題の2)と3)の連結納税の問題と、今、H委員のおっしゃった点、私自身、この連結納税については「検討をすすめる」ということは、あまりにも従来的で役所的な表現にすぎるかなという感じもいたしますので、もう少し前向きな言葉を、先ほどは「導入」という言葉もありましたけれども、これはまた事務局でいろいろ考えていただきたいと思います。〔 I委員 〕 前回も休みまして、書類でいろいろ提案させていただいて、かなり取り入れていただものですから、積極的にこれをという問題はないように思います。

この間いただいたのとデータの編集が少し変わっているものですから、あるいは若干私の勘違いがあるかもしれませんが、この中で1つ問題意識としてどこかに強くしておいていただきたいと思ったのは、ベンチャー企業の体質あるいは新しい創業について制度的な面からいろいろ、こういうことを考えるべきだ、ああいうことをするべきだということが書いてありますが、ベンチャー・キャピタルというものをやる場合に、日本にもかなり技術を持った人はいるのだけれども、それが育たない背景に、ベンチャー・キャピタリストというものの質の問題があるのだろうと思います。日本のは大体、金は出すけれども口は出さないという形のキャピタリストであって、いわゆる金を出す方のガバナンスが効いていない。片一方に、夢を持った起業・仕事をやっている。片一方では、資本を出す人はその仕事についての内容をフォローできない。それは質的にもフォローできない。ここに日本と、例えばアメリカなどとの間に大きな違いがあるだろうと思うのですが、それを、ところどころに若干触れてはあるのですが、1つの問題意識としてはどこかにまとめて、ベンチャー・キャピタリストというものがもう少し技術的裏付けを持ったガバナンスのある存在に育つとことが必要だということを提起する必要があるのではないかという気がしたものですから、それを今申し上げたわけです。

以上です。

〔 J委員 〕 全体として非常に行き届いているリポートであると私は思いますし、内容も非常に充実していると思っております。

ただ、全体を拝見して思っていることですけれども、現実に、摩擦的失業を超えて、非自発的な失業が3.9%という現状をいろいろと考えて、それが消費行動とか、いろいろな個人の行動に影響しているということを考えますと、ここで失業という問題について何か強い認識を我々が持っておかないといけないのではないか。

全体のトーンというのは、仕事を持っている個人というものを前提にしているように、今読み返すと私は思うのですけれども、これからの社会というのは、そういうことにならない。特に、産業構造がいろいろと変化していきますと、相当な失業率というものも覚悟しなければならない時代でありますので、ここでは労働市場の流通性の問題は出ておりますけれども、もう少し我々自身として失業率ということについて、また失業の問題について、1つの認識だけは書き込んでおいた方がいいかなと、これは感想でございます。

〔 G委員 〕 それはまさに先ほどの私の言った、政府の安全ネットに対することに直結してくるのです。コーポレートガバナンスの改革、それから労働市場の流動性を図っていく、規制緩和・改革を全部やると、失業率が上がってくるわけですから、政府にとっては今まではなかった、日本的なシステムがあったからこそ政府が担わなくてもいいような作業、つまり労働市場に対する安全ネットの仕事が出てくるわけです。失業率が、もし改革の結果として急に上がった場合は、政府はどういうような対応をとるのか。失業手当を出すのか、あるいは、より訓練のところに重点を置くのかというようなことが、もう少し提言とか検討があればいいなと思います。全く同感です。

〔 部会長 〕 先ほどの事務局からのご説明のとおりで、できるだけ取り入れるようにしていきたいと思います。

D委員、特にご意見がございますか。

〔 D委員 〕 前回読ませていただきまして、私も、実はそういうところを感じまして、事務局の方にお願いしまして、24ページから大分入れてもらったつもりでございます。まだそれでも足りないというようなご指摘だろうと思いますが、片方、展望部門の方での役割と、こちらの役割というのはどういうように関連してくるのかなと。展望部会の方は、失業問題というのを全面的に取り上げてやっているわけで、そこをどのように棲み分けしたらいいのか。もちろん、こちらで書くということも必要だろうと思いますので、そこを検討させていただきたいと思います。

〔 部会長 〕 この後、展望部会と合同の素案を説明していただきます。その中にかなり詳しく入っておりますので、それを見た上で、またご意見があれば伺いたいと思っております。 それでは、いろいろご意見もあろうかと思いますが、時間の関係もございますので、第1の議題につきましては、ここまでとさせていただきたいと思います。

続きまして、第2の議題、「経済審議会報告書(展望・役割両部会合同報告書)(素案)について」でございます。前回ご説明しましたように、現在経済審議会では、本部会とも  う一つ経済社会展望部会がありまして、この部会と同様に報告書取りまとめに向けて審議が行われております。そこで、両部会での議論をわかりやすく紹介するために、両部会それぞれの報告書とは別に、経済審議会として合同の報告書を出してはいかがかと考えたところでございます。本日、資料3としてお手元に配布しておりますものは、両部会での審議内容、事務局にいただいたご意見等を踏まえまして、取りまとめた報告書(素案)でございます。事務局から、素案の概要につきまして説明をお願いいたします。

〔 事務局 〕 今ご紹介がございましたように、3月に、両部会長、それから長岡会長代理にお集まりいただきまして、合同報告を作ること、その取りまとめの方向性についてご議論をいただきました。

これは、両部会の報告を一体としてわかりすく紹介をし、両部会の報告とは重複感をできるだけ避けるという命題をもっておりまして、構成は、目次をご覧いただきますと、第1章が「構造改革の推進と成長軌道回復への道筋」、第2章が「構造改革後のマクロ経済の展望」、第3章が「新しい経済社会システムの姿」となっておりまして、足元、それから中長期のマクロ、それからシステムという3本立てになっております。

1ページめくっていただきまして、2ページの「はじめに」というところで、90年代「総じて低迷を続けている」ということから書き起こしておりますが、景気の先行きに対する不安とか、将来像についての不透明感があって、マインドが冷え込んでいるということ、それから、少子・高齢化とか年金などの負担の問題が将来の生活設計を不透明にしているということを、国内の問題に加えまして、一番下のところですが、海外からも強い懸念材料視されているという問題意識を書いております。

その下は、経済審議会では、2つの部会で検討を重ねてきたということを紹介しております。 第1章は、「構造改革の推進と成長回復軌道への道筋」ということですが、3ページをご覧いただきますと、1の「構造改革の痛みへの対応」ということで、「痛み」という言葉をここでキーワードに使っております。「痛み」を、古い構造を破壊する過程での痛みと、新しい構造に移ることのできない痛みとに分けまして、前者の方がイ)で書かれているように、「規制緩和とか制度変更の過程での既得権をめぐる利害の対立などによる、あるいは財政の縮小などによるデフレ効果等である。一般に、痛みの回避と改革の推進が二者択一的に捉えられてはいないか。」ということで、構造改革というのはそういったものではないということがその下に書いてございますが、「及び、その過程で経済の体力を損うことのないように、政策の柔軟性を確保し~」云々ということで、こういったコンセンサスが必要であるということを言っております。

もう一方の痛みは、「全体としてのシステム構築が遅れて、相互に整合的でないシステムのままで経済活動を行わなければならないことから生じている」のではないかということで、「例えば、産業構造変革に伴って発生する失業に対し、労働市場の流動化が進んでいないため」という場合を例としております。

もう1つのキーワードとしましては、1の一番下のパラグラフに、先ほどの役割部会でのまとめにもございましたように、ダイナミズムを失っているということ、それから、「国民の政府に対する、民間企業相互間の低下しつつある信頼感を回復」ということで、信頼感が低下しているというのも1つのキーワードとして挙げております。

2は「財政構造改革と足元の景気停滞」、この両者のバランスの取り方について論じておりまして、イ)は、昨年11月に成立しました財革法の法律の趣旨を書き、今回修正が行われたということを紹介しております。

ロ)は、足元の経済情勢の中で、このような財政構造改革路線と、現下の景気のデフレスパイラルをもたらす危険性などの状況を踏まえて、今回のような公共事業の追加とか減税措置を盛り込んだことは必要な措置である、という評価をしております。

4ページのハ)で財政構造改革の意義を改めて申しておりまして、「将来へ向けて維持可能な財政構造を作るためのものであり、その必要性、緊急性は依然として高い」ということを指摘しております。

ニ)で、今回、財政赤字の削減目標の達成年限が2年延ばされることになりましたが、これを「着実に進めていくことが不可欠である」という整理をしております。

4ページ、3の「金融システム改革」、4の「不良債権処理の目途はいつつくのか」というのがございますが、これは金融システムの安定化の話と改革の話ということで、2つのバランスを説いております。

まず、3の方で、金融システムの改革は極めて重要なもので、決して頓挫してはいけないものだ。改革そのものが金融システムの安定化に資するものであるということを言っております。 それから、ここは強調したいのですが、ロ)で、金融システムの改革というものは、ほかの市場とかシステムに関連していまして、この変革が全体としての本格的な変革の起爆剤と期待されるということ、この点を強調しております。

4の「不良債権処理の目途はいつつくのか」ということで、イ)のところは、これもロジカルに書いておりますが、30兆円の公的資金が準備されて、金融システムの安定は確保されているということを紹介しております。

5ページにまいりまして、ロ)で、アメリカでも好景気でありますが、大変なリストラが進められていて、我が国の金融機関も自己改革による体力増進が必要であるということを強調しております。

ハ)では、システムの安定化の鍵が不良債権の処理であるということで、アメリカでは概ね94年には問題が解消されている。我が国の場合はまだ50%程度にとどまっているということを紹介して、処理のペースが遅いということを言っております。

その下に、ニ)としまして、まだ98年3月期の数字が出ておりませんが、こういった不良債権の大幅な償却が今期予定されておりますので、そういったことを紹介しております。

ホ)に、不良債権処理の見通しについて、若干の試算をしてみたいと考えております。 こういった中で、早期の処理が必要であるということが強調できればということでございます。 それから、(不良債権担保土地の流動化)、これは土地・住宅ワーキング・グループの報告とか、先月の経済対策の中身でこういったことが重要であると強調しているパラグラフでございます。 6ページにまいりまして、5の「成長軌道回復のシナリオ」として、これは展望部会では4点強調されている点でございますが、イ)で、いわゆる「負の遺産」の処理を完了せよ、供給面からの経済の活性化、需要の下振れに対しては総需要喚起が必要である、将来への明確な展望により国民が自信がもつ、という4点をここで改めて挙げております。

ロ)で、「経済対策」により、中長期的な成長軌道に向けての好循環にポイントを切り換えることである。

ハ)では、経済構造改革の推進が極めて重要であること。経済の活性化が、新しい雇用の創出や安定化につながる。同時に、労働力の円滑な移動を促進し、雇用の安定化を確保するためには、労働市場のルール整備、市場監視機能の強化、紛争処理システムの整備等の環境整備を行う必要があるということを書かせていただいております。

ニ)ですが、ここは「成長軌道回復のシナリオ」ということですので、2003年ぐらいまでの中期展望の試算をもとに記述をし、表を付ける予定でございます。

以上が足元の話でございまして、7ページからは、構造改革後のマクロ経済の展望という、より長期の話になってまいります。

第2章「構造改革後のマクロ経済の展望」の柱書きに書いてございますのは、「負の遺産」を解消して2010年ごろに向けて未来へ継承していくべき新しい社会を構築するのだということをまず言っておりますが、連休明けに出ました総理府の世論調査でも、どうも悪い方に向かっているではないかと言う人が72%いるという数字が紹介されておりました。そこで、以下6つの代表的な不安材料を取り上げてみたということで、「○○ではないか」というクエスチョネアに対して、反論する、答えを言うという形で進めております。

その柱書きの一番下に書いてありますのは、不安材料の多くが、これまでのパフォーマンスに対する、まだ維持できるという過度の期待と、それから将来の不透明感から来る悲観論が、プラスでダブルになっているのではないか、一種のダブルギャップではないかということを少し示せればということであります。

まず、1の「経済成長率や生活水準は低下していくのか」というところですが、ここでは、労働力人口は2005年にピークを迎えて減少に転ずるものの、国際的にも高い技術開発力を更に伸ばし、非製造業にも拡大していくことにより、全体としても伸びる余地は大きい。また、労働力が稀少化していくと、それを打ち消すべく効率的な生産を行うインセンティブが高まるということが言えるかと思います。

ロ)では、GDPの成長率の全体を経済の活力として結び付けてきたけれども、これからは1人当たりの実質GDPの成長率で考えていくべきではないかということでございます。これまでの長期的なトレンドよりは低いけれども、メッセージとしては、他の先進国と比較してそれほど低くはないことを、ここで言いたいということであります。

2の「我が国経済は少子・高齢化の負担に耐えられるか」ということであります。こちらは、ライフスタイルのワーキング・グループ、それから経済企画庁長官の研究会であります「スペースとゆとり研究会」で出ています意見を参考に書かせていただいております。 イ)で、年齢別などの役割分担を固定化して考えてはいけないということで、その下に、少し片仮名が出てまいりますが、エイジフリーの社会とか、9ページにまいりまして、自分の人生設計に基づいて学習、仕事、余暇に時間を使うことのできる、循環的と言うのでしょうか、リカレント型の社会が望ましいということ、性別にとらわれない、ジェンダーフリーな社会が求められる、ということを言っております。

それから、このあたりで、社会保障制度改革による、これはもう少しロングで2025年ぐらいを予定しておりますが、試算を1つ入れてみたいと考えております。

ニ)では、将来社会保障制度がうまくいかないのではないかという不安感があるけれども、適切な制度改革を行えば十分に機能する。それから、年金、医療、介護を含む1つのまとまったシステムとして設計されていけば、不安を抱く必要はないということ。

これは規制緩和で強調されますが、ホ)のところにございますように、健康関連、介護関連ビジネスなどが拡大してくるということを紹介してございます。

9ページの3の「地球環境問題による成長の制約はあるか」は、イ)のところは、全体で6%の削減という目標があるわけでございます。

ロ)で、10ページの7行目ぐらいに、合同会議で示された対策の実施により、省エネルギー化が進展すれば、経済成長率はそれほど低下させることなく、CO2 排出量を抑制することが可能となるという試算。これは地球環境ワーキング・グループの報告書で出ておりまして、それを引用しているものですが、こういったメッセージを書いております。

10ページの4の「失業率が上昇し、生活不安が高まるか」は、先ほどもお話がありましたように、大変重要なところであろうと思います。

イ)では、失業率の上昇を景気循環的な失業と、労働市場の構造変化を背景とした構造的失業との2つに分けて、これを自発的失業と非自発的失業とみて、両者の動きを比較しております。 ロ)にございますように、構造的な失業率は、今後とも上昇するであろうこと。それは、その下の3行に書いてあるようなことであります。

11ページにまいりまして、ハ)で、構造改革の過程で、非自発的な失業率が中高年も含めて一時的に上昇する可能性もあるだろうということですけれども、今回の「総合経済対策」にも書かれていますような対策なども盛り込まれているということを紹介しております。

その下に、「求職理由別失業率の推移」ということで、97年まで自発的と非自発的の失業率が書かれております。

次に、5として「我が国経済はグローバリゼーションの波に耐えられるか」ということで、イ)では、グローバリゼーションというものは、国際化などという概念を通り越しているのだというところから始まりまして、2つ目のパラグラフで、受け身でなく、積極的に国内の構造改革を進めることで対応していこうということ。

ロ)で、空洞化について論じておりますが、その2つ目のパラグラフにございますように、グローバリゼーションの潮流を積極的に活用して外国企業の国内市場への参入を促し、非貿易財産業を中心に競争を活発化させることが効率的であるということを言っておりますとともに、我が国は、ご存じのように外から内に対する投資が少ないわけですが、その障壁として、一番下のところに、「例えば」として、公的規制とか民民規制、あるいは法人税率の高さなど、こういった点の具体的な例を少し挙げて、こういうことの重要性の認識が必要であると言っております。

12ページの6の「経常収支赤字国となり、豊かさが失われてしまうか」については、図表8にございますように、日本は96年末に19.3%とため込んでいるわけで、将来への備えは十分にできているということ。図表8のすぐ上にございますが、経常収支は黒字を維持し続ける必要はそもそもないわけで、一時的に赤字を出して過去に蓄積した分を取り崩すというのは健全なものではないか、というようなメッセージを中心に書いてございます。そう大きくは悪化しないし、また、黒字を維持しなければいけないと考える必要はないのだということを言っております。

14ページから、第3章「新しい経済社会システムの姿」ということで、システム論をしております。

ここは、柱書きに書かれておりますように、どういうシステムを前提として、どう動けばいいのかというのがわからない。それから、大きな変革期であるとは漠然と思っているということで、これにできるだけ具体的な姿を示しうるかという問題が柱書きに書かれておりまして、1の「従来型システムの特徴とは-その変革の必要性と方向性」というところから始まっております。 これは、経済主体役割部会報告書の最初にも書かれておりますように、日本の従来型システムの特徴が安定的関係とか協調のメリットを生かすというものでありますが、効率性とか競争原理の徹底した追求が不可欠となってきたというのが、イ)の6行目~7行目ぐらいに書かれております。 ロ)では、先ほども頭にちょっと出てまいりましたが、それぞれのシステムの中で変革があっても、その動きが部分的にとどまりますと、全体としてなかなか動かないということ。それから、相互の補完性の上に全体の社会というものがあるわけですから、全体としてシステム改革を進めていかなければいけないということを改めて認識する必要があるということでございます。

それでは、どういう原則があるのかということで、2として「新しい経済社会システムの基本原則」とございますが、これは透明で公正な市場というものに尽きるというのが、ここの主題でございます。

15ページで、民民規制の見直し・解消などについても言及してございますが、ロ)で、「透明で公正な市場」を支える柱として4点が指摘できるということで、

第1は、「機会の平等」。この機会の平等につきましては、展望部会で大変強調されている点であります。

第2は、「自己責任原則」。

第3は、「多様な選択肢と十分な情報開示」。「十分な情報開示」のところでは、4行目あたりから政府の持つ行政情報の開示とか、企業会計における国際基準に則った時価情報の充実などのディスクロージャー。それから、消費者契約法の早期制定ということを書き込んでございます。 第4は、「ルールの重視」。ここは、政府の役割について個別の裁量的処理から手を引くということ、市場ルールの整備やルールに基づく監視機能の強化がその役割の重点であるということを書いてございます。

16ページにまいりまして、1つコラムが付いておりますが、読みやすさのためにコラムの形でいくつか挿入してみたいと考えております。ここは、「日本型システムか、米国型システムか」ということを言っておりますが、市場原理を追求した1つのモデルである米国型市場システムも決して完璧なものではない。日本型市場システムや諸外国の市場システムのメリットとデメリットを精査することにより、これまでのメリット、(例えば)として、規律の重視などをできる限り損なうことなく、今後の変革の成果を最大限に発揮させるようなシステムを、全体として形成していく、いわば実験が求められている。こうしたことを通じて、世界に通用する我が国に適合した新しいシステムを見つけ出していく必要がある、ということをコラムとして書いてございます。

さて、具体的な姿はどうかというのが、その後でございますが、「企業システム」の(雇用システム)のところから始まっております。

雇用システムは、イ)の最初に書いてございますように、終身雇用型が後退するということを言っておりますが、それが言われるように完全に崩壊するとか、そういう意味ではないであろうということで、「大まかに類型化すれば」というところに書いてございますように、3つの形態の者が併存して、それぞれのタイプを労働者も企業も選ぶというものになるのではないかということで、この辺は多様性というのが1つのメッセージでございます。

16ページは、コーポレートガバナンスでございますが、企業内での株式持ち合いの解消に伴って、株主がその役割を強めていく。17ページの上では、メインバンクのことについて、メインバンクを中心とした関係から変化をしていくのではないか。「企業は」というのが3行目にございますが、「メインとしての取引関係を、異なる金融機関の中から選択するようになる」ということで、メインバンクというのと、メインとしての金融機関というので、もう少し広い概念として金融機関を使っておりますが、より多様な選択が出てくるのではなかろうかということを言っております。

その下の部分は、日本型の経営について少し書いてございますが、日本では、内部情報に詳しい内部昇進取締役が大きな地位を占めていた。しかし今後は、株主等外部から効率性がより強く追求されて、社外取締役も多数起用されるのではないかということで、ここでは、透明度の高い企業経営の方向というのが1つのメッセージでございます。

それから、コラムとして、(株式持ち合いの解消は、長期安定経営を不可能にしてしまうのではないか)というのを入れております。

17ページのところは、(企業の発生と退出のシステム)、起業と退出というところで、ダイナミックな経済システム、ベンチャー等の新規ビジネスが次々に生まれるといった点を紹介しておりまして、18ページで、M&A市場の有効な機能、円滑な倒産制度というところは、部会からメッセージをいただいているところでございます。

18ページの(2)の「公共システム」というところは、可能な限り民間に委ねる、スリム化、効率化、重点化を図るということを言っておりまして、PFIの言及、それから政府の役割は市場監視・整備や危機管理にウエイトを移すことになるということを書いてございます。

その下に、(行政関与を極力減らし、スリムな行政を実現しようと言っても、新しく規制を必要とし、小さな政府につながらないのではないか)というコラムを付けておりますか、ここでも、政策的機能というものが危機管理とか監視などに求められるわけで、そういう機能が早急に発揮できるように、早く行政資源のウエイトを移さなければいけないということを書いてみました。 18ページの(公的金融)は、公的金融について部会でのメッセージをコンパクトにまとめさせていただいたものでございます。

19ページの(社会保障制度)では、社会保障制度につきまして、先ほどもありましたけれども、年金、医療、介護等個別の制度が全体として調和したものとなるよう、総合的に設計され、そういった制度の中で、給付水準というのは低くはなるでしょうが、全体として市場原理が働くとか、「社会的入院」がなくなる効果があるのだということを少し整理しております。

20ページの(3)の「社会システム」ということで、(社会的規律と信頼の回復)というのがございます。やや経済審議会的ではないのですが、ソーシャルディスインテグレーション的なものがいろいろ出てきているのではないか。これは市場原理の重視ということによって優勝劣敗の要素がさらに強くなっていくとどうなのだろうかということで、社会政策面で十分配慮する必要がある。それから、考え方として、「市場ルールの確立が」というのが、下から5行目ぐらいにございますが、「国民の行動のよりどころとなって社会的規律と相互の信頼を回復していく方向となる」というようなことを書いてございます。

それから、教育改革の重要性について少し触れておりますが、21ページで、「教育に関する不要な公的規制を撤廃し、教育機関の間で競争原理を働かせる方向での改革が必要である」ということを言っております。

それから、(個人の社会参画~)として、ハ)で、先ほどのエイジフリー、ジェンダーフリーというところについてもう一度整理をしておりまして、いわば役割分担の固定的な人生設計を避けて、さらに活力のある社会をつくっていこうということを言っております。

それから、(4)でNPOは、「経済社会の新しい主体として」というのを付けさせていただいておりますが、イ)にございますように、役割として、 1、 2、 3というような大きな役割があるということ。それから、NPO法が制定され、その趣旨を簡単に紹介しております。

最後に「結び」として、全体の話をまとめるわけでございますが、最初のパラグラフの一番下のところに、「高齢化や地球環境問題等世界各国でその取り組みが行われている問題においては、世界に先駆けてその対応に成功した国として、日本版のグローバルスタンダードを世界に示すことも十分に可能である。」ということで、この世界に模範となるというような言葉を少しずつ散りばめてこれまでもきておりまして、こういったことの1つのメッセージでございます。

それから、その下に、先ほどの「痛み」という言葉がございますが、それを受け入れる意識を持って、「正しい危機感を共有」しようということを強調しております。

それから、一番下のパラグラフで、「透明で公正な市場システム」あるいは「環境と調和した社会」、それから「プラスのストック」として将来世代へ継承するというようなメッセージがございますが、これをここに入れさせていただいております。

全体として20ページばかりのものでございますが、両部会の報告書はそれぞれ40ページを超えるものでございまして、合わせますと大体80ページでございます。それを、先ほど申し上げましたように、わかりやすく、かつ重複感を避けろという要請を入れながら作ったものでございまして、まだ不十分なものだとは思います。

それで、できれば、これにさらに補論として、マクロと、それからシステムを論じているわけですが、もう少しミクロ的に、例えば「2010年の生活」といったようなイメージで、もう少しわかりやすい補論ができればと今、別途作業をしておりますが、まだ間に合っておりませんので、本日は、ここまでご説明申し上げます。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。

それでは、ただいま説明のありました「経済審議会報告書(展望・役割両部会合同報告書)(素案)」につきまして、ご意見をお伺いしたいと思います。

〔 K委員 〕 中身について今ご紹介いただきまして、こういうまとめ方もあるのかなということで、特にそのことに大きな異論があるわけではありません。そうかな、ということであります。 先ほどの経済主体役割部会で言うと、3ページの最初のところに、バブル期以降のことがワンパラグラフぐらい書いてありますが、私の世代は、大体この時期失敗した世代でありますので、そういう意味で、反省を込めて、ちょっと勝手な印象を述べさてせいただきたいと思います。 バブル期以降の原因論について、こういう書き方もあるかなとは思うのですが、基本的に我々が見過ごしたのは、アセットサイクル、資産サイクルというのがどういうものかというのが本当によくわかっていなかったことと、それから、冷戦の後のグローバリゼーションというのが今日になってだんだん、やっとわかってきた、こういう2つが大きな要因ではないかと思うのです。過去の、個々の主体が一生懸命、大企業に貸す金がなくなったら不動産に貸しちゃったとか、ある意味では当然なビヘイビアであったわけですが、基本的には、そういう世の中の動きの基本をよくわかっていなかったということが、我々、つ まり私自身なのですけれど、反省しているわけで、そういう意味で「戦犯」だと言っているわけです。

今、どういうことを考えることが必要かと考えてみると、グローバライゼーションが第2段階に来つつあるのではないか。つまり、今回の報告は、日本がグローバライゼーションにどうアダプトしていくかということについて大変すばらしいレポートをお作りいただいたわけですが、同時に、これからグローバライゼーションの進展に応じて国家間の関係がずいぶん変わってくるのではないか。国家間が、今までインターディペンデンスという言い方でありますが、貿易だとか、関税だとか、自由化というスローガンの下に、例えばですが、お互いの国家間の関係を持ったわけですが、恐らくこれからは、EUで始まったような、リージョナルな共同ですとか、あるいは、もしかするとアメリカと日本と、今ある意味では、報道の仕方によっては非常に反感を持つわけでありますが、お互いの政策についての干渉のし合いというようなことが、だんだん当たり前になってくるのではないか。

そういう意味では、中国が今度「レートを変えません」と言ったのが、ある意味では世界的に大変歓迎されているのは、地域の経済の安定化のために、そういうのを自分たちはやりますよと宣言することです。それと同様に日本も、もしかすると、今回の報告では、日本が自分がグローバルに適用できる非常に柔軟なシステムに切り換えていくということを主眼にしておりますが、これからはもう一歩前に出て行くと、どうやって地域経済、「地域」というのは日本を超えた、例えばアジアならアジア、あるいはお互いの世界のいろいろな景気変動に対して自分はどうコミットしていくか、そういうことが恐らく日常茶飯事になる可能性があるのではないか。それに対してどういう対応を我々は今のうちから考えるかというのは非常に重要な問題で、当然、今回の報告の方向を固めた上でもう一歩先に、ぜひご努力できたらというのが印象であります。ぜひよろしくお願いしたいと思います。

印象だけで恐縮でございます。

〔 B委員 〕 人の部会のことが非常に気になって仕方がないので、展望部会の方の話になってしまうのですが、3点ほどあります。

1点は、生産性の話です。ようやく日本で生産性の低下が大問題になってきたことは非常にいいことだと思うのですが、生産性の低下がどうも物の生産性に全部捉えられているきらいが非常に強いという印象を受けました。多分、この裏に何かなさっているのかもしれませんが。

今日本で問題になっているのは、物をつくる生産性低下ではなくて、管理する生産性の低下。つまり間接部門の生産性が非常に低く、そのためにいろいろなことが起こっている。それは間接部門ですから、当然関係の関係とか、そういう問題が入ってくるわけですが、そういった問題が非常に重要な点になっていますので、そこら辺のところをもっと書かないと。物の生産性をいくら頑張ってもなかなかこれ以上上がらないというところまで到達してきています。それに対して間接部門は日本は非常に余っていますので、この部分で非常に大きな生産性の上昇が見込まれる。

そこに出ている労働者の数というのは大変なものがありますから、その労働者をいかにほかの新規事業に振り向けるか、そこの問題が非常に重要な問題だと思うのですが、その点が入っていないので、ちょっと気になりました。

もう一つ、失業ですが、これは私の印象なのですが、構造失業の点の書き方が、非常に機械的という印象を受けまして、これでは説得力がないのではないか。つまり、構造失業を出すときに、単純にトレンドをとって、それでやるというのは、私は非常に抵抗がある。しかも、それを各国と比べて低いと言っているのですが、アメリカ、現在は5%でなく、4.3%です。これは下手すると、日本とアメリカが逆転する可能性もありうるというような非常に深刻な時期に達しているわけですから、その辺のところはもうちょっと考えていただきたいと思いました。

第3点、どこにも載っていないのですが、日本の問題というのは、中央と地方の関係の問題が一番大きな問題になっているわけです。特に、公共事業というのは、建設省の方はこれは社会資本の整備だとおっしゃいますが、そのかなりの部分というのは所得移転の制度になっているわけです。特に、建設を通じた所得移転。実際に社会資本の推計をすると、社会資本の生産性が単純に計算すると、マイナスになるということがあるわけです。そういったところを含めて、中央と地方の関連で、しかも、それは経済的な依存の関係というのを、ここで何らかの形で変えないと、構造改革そのものが危うくなるという危機感を私は持っておりますので、その辺のところはもうちょっと考えていただきたいと思っております。

以上です。

〔 部会長 〕 非常に重要なご指摘がありましたので、これは主に展望部門の方の話で、よくお伝えいただきたいと思います。

〔 D委員 〕 いろいろと今日は、立場の悪いところに立たされているような気がしないでもないのですが,私も今日、これを読ませていただきまして、失業に対する認識というのが、どちらかというと甘いのではないかという意識を持っております。

例えば、10ページのところで、足元における失業というのは、自発的失業によるところが大きいのだと。確かに、パーセントで言いますと、どちらが大きいかといったら、それは自発的失業の占める比率が高いという結果になっているわけですが、過去3カ月ぐらいを見てみますと、失業率が急激に上がってきている。これは必ずしも構造的な失業が増えたからだということは言い切れないという気がしておりまして、需要不足失業というようなものが深刻な状況になってきている。それが故に、今度の「総合経済対策」というものをとったということですので、非自発的失業を陰に隠さないで、前面に出してくる必要があるという気がいたします。

もう一つの論点としまして、労働市場ですが、労働市場の流動化が進んでいないからいろいろなところで摩擦的失業というものが長期失業になってしまっているということが指摘されているかと思うのですが、なぜ、労働市場の流動化が進んでこないのだろうか。それは労働市場の職業紹介であるとか規制の問題もあると思いますが、基本的には、需要が不足している、雇用機会ができない、そのために労働市場が流動化してこないという、少なくとも転職率が落ちついているというような状況になってくるのだろうと思います。その視点から見ても、現状の認識として、需要が不足しているということは強調してしかるべきではないかという感じを受けております。

以上です。

〔 G委員 〕 数点あります。まず一番の問題意識としては、これは大変立派な報告書ができたという印象は受けますが、私の印象としては、日本の場合は直面している問題が多いせいかもしれませんけれども、日本の政策展開を見ていると、これだという非常に整合性のとれた戦略的なビジョンというものが欠けているような気がするのです。ですから、こういう展望・役割両部会の合同報告書というものが、そういう欠点を補う意味においては大変重要な役割を果たすことができるだろうと感じております。ですから、スタンスとしては、ある意味であらゆる問題を戦略的に捉えて、なるべく整合性のとれた形でのものを出せたら、非常に利用価値が高まるだろうと思います。それが1点です。

ちなみに言いますと、6ページの5のイ)のところで、非常に問題が簡潔に捉えられているような気がして、これを読んで感心したのです。この一節に尽きるだろうというような感じがします。 ただ、その前のところでは、足元の環境が非常に深刻であるということで、非常に話題的な記述があるのですけれども、このあたりの診断と処方箋に関して、疑問というか、コメントがあります。                                                 去年の政策の失敗は何だったかということ、私に言わせると、ここに「不良債権処理の目途はいつつくのか」という問い掛けがあるのですけれども、答えは明確ですね。2001年3月31日、これは政府の計画であるわけです。去年の失敗は、この不良債権問題、つまり金融安定化5カ年計画の中で4年間も残したところで、大々的なビッグバンと非常にきつい財政引締めを同時に政府がやってしまったというところにあったかと思います。

そのことを今から議論しても仕方がないので、ではこれからどうすればいいのかということになりますと、今般いろいろ議論が出ているのですけれども、不良債権問題を根本的に問題解決するために集中期間をつくっておいて、例えば1年でやるとか、または1年半でも、2年でもいいのですけれども、3年はちょっと遅すぎるのではないかということです。

ある意味では、不良債権問題を一気に片づける、片づけてから本格的にビッグバンの準備に入る、この順番が非常に大事だと思います。

ですから、正直に言いまして、今から不良債権問題の試算をするとかいう記述がありますけれども、ここ5年間、どれだけの数の人間がこのことをやったかということになりますと、枚挙にいとまがないと思います。ですから、今からそんなことをやっても意味はないという気がするわけです。

それから、ちょっとおもしろい切り口としては、「痛み」の分析があります。非常におもしろい結論、例えば、2番目の痛みを、改革をより加速させることが痛みを和らげることにつながるという、非常に独創的な考えがあり感心しました。もう一つは、分け方としては、旧体制から新体制に移行するときの痛みとして、調整の痛み。例えば古いシステムの中の調整と新しいシステムの中の調整、恐らくこれはこの報告書に出ている2つの痛みだと思うのですけれども、もう1つの痛みとしては、いわゆる旧システムのストックの痛みというものがあるのです。不良債権問題は、まさにそういう古いシステムの中のストックの痛みである。ですから、これはある意味では、一括払いでいいということになるわけです。これだけストックの痛みがあるから、一括払いでやればいいわけです。そのために30兆円というお金が用意されているわけです。

ですから、言いたいことは、その辺の議論をもうちょっと整理して、そういう観点から見たらいいなということです。

ちなみに、去年失敗した緊縮財政の行き過ぎという話をしたのですけれども、ここで一つの分け方としては、財政政策を循環的な観点、それから構造的な観点、さらに過去のストックの観点、つまり、場合によっては、不良債権問題を片づけるのに17兆円の財政の出動が必要かもしれませんというストックの部分の3つに分ける。つまり、循環、構造、それからストック、すなわち1回きりのストックの問題、この3つに分けて議論を整理すれば、もしかすると、よりクリアなピクチャーが出てくるかもしれません。

ただ、そのクリアなピクチャーが、申し上げましたように、6ページの上の部分にもう既に出ているというように、結論に当たる部分での調整が必要かなという気がしたのです。 話がとびますけれども、コーポレートガバナンスのところでは、これはまたなかなかよくまとまっていると思いますけれども、少し細かいところでは気になるところがあったのです。例えば、17ページの株式持ち合いの解消という話があります。恐らく、市場のコンセンサスとしては、持ち合いの解消は着実に進むから、これは誰でも認めていることです。むしろ、日本の将来を展望するときには、この持ち合いの話で一番重要なのは、株式持ち合いの解消が進んで、持ち合いシステムそのものが縮小された、あるいはビッグバンによって元気づけられた形で残るのか、それとも完全に持ち合い制度が崩壊するのかという区別をする必要があると思います。

ですから、例えば「持ち合い解消」という言葉だけを使いますと、ある程度は解消する、残るというふうに想定する人もいれば、完全にシステムが崩壊するというふうに捉える人もいるわけですから、この辺のことをはっきりした方がいいと思います。

これは全く個人的な意見ですけれども、むしろ、システムそのものを何らかの形で残すべきだというような展望を、私自身が描きたいところですけれども、それはほかの人が賛成するかどうかわかりません。システムそのものをビッグバンを実施することによってなくした方がいい、と議論する人もいるかもしれません。この辺のことをよりはっきりした方がいいと思います。

この中で、より細かいところですけれども、ちょっと気になった言葉としては、最後の文章では、「年金基金や投資ファンド等の機関投資家は、安定的に株式を保有するものと見込まれ」とあります。「安定的」という言葉が出ているのですけれども、安定株主の役割として期待されているような気がするのですけれども、実は、ここではっきり分けなければいけないのは、機関投資家はある意味では株式市場における安定的な役割を果たすのですけれども、個別銘柄となりますと、極めて不安定的な投資行動をとるわけです。この辺は、むしろ不安定的な、つまり本当に厳しくその企業を見て投資スタンスを決めることによって、むしろビッグバンのプラスの効果が出てくるわけで、企業ベースでも、経営者ベースでも、従業員ベースの自己責任というものが生きてくるわけです。

ちょっと細かい関係で恐縮ですけれども、報告書は重要なものですから、あえて指摘したのです。

あと一点、16ページのロ)には、「株式持ち合い解消に伴って、コーポレートガバナンスにおいて株主がその役割を強めていく」、この記述がちょっと曖昧すぎるのです。つまり持ち合いという経済主体も株主なわけですから、ちょっと問題かなと思っているのです。

先ほど言い忘れたのですけれども、5ページの真ん中のところに、「97年度後半からクレジットクランチ問題が発生した」とあります。確かに問題意識としては発生したのですけれども、この「クレジットクランチ」という用語は非常に危ない用語です。本当にクレジットクランチがあったのかという議論がありまして、もしあったとしても、実はそれがビッグバンが要求してるような不良債権の償却とか、その融資の姿勢の正常化とか、いろいろな議論があるわけで、この報告書の中で「クレジットクランチ」とか「信用収縮」という言葉を使うときに、1つ注意が必要だろうと思っているわけです。

以上です。

〔 部会長 〕 数多くのご指摘をありがとうございました。

ほかにいかがでございましょうか。

まだ、いろいろとご意見があろうかと思いますけれども、第2の議題につきましては、ここまでとさせていただきます。

今までいただきましたご意見、特に展望部会に係る部分につきましては、また向こうの部会の方にも、こういう意見があったということで伝えていきたいと思います。

それでは、「経済主体役割部会の報告書(素案)」、「経済審議会報告書(展望・役割両部会合同部会報告書)(素案)」ともに、本日、委員の皆様からいただきましたご意見を踏まえまして、さらに修正を行って、次回第11回の部会では、報告書(案)としてお諮りをしたいと存じます。 なお、本日、時間等の関係で十分ご意見をお聞きできなかった点もあるかと思いますので、ご意見がございましたら、後ほど書面等で事務局までご連絡いただければと思っております。 最後に、次回の日程等につきまして事務局からご説明をお願いいたします。

〔 事務局 〕 次回第11回の部会は、6月9日火曜日14時から、この同じ会議室で開かせていただきますので、またよろしくお願いいたします。

〔 部会長 〕 ありがとうございました。

それでは、第10回の経済主体役割部会の審議は以上にいたしたいと存じます。本日は長時間のご審議、誠にありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします。

以上