第5回スペースとゆとり研究会議事概要

1.日時:

平成10年4月13日(月)12:00~14:00

2.場所:

経済企画庁729会議室

3.出席者:

樋口廣太郎座長、奥谷禮子、玉田樹、西藤冲、藤川鉄馬、クリスチャン・ポラックの各委員。
中名生総合計画局長 他。

4.議題:

  1. (1)「公共施設の活性化」について
  2. (2)「スペースの文化的視点」について

5.審議内容:

開会の後、中名生総合計画局長より次回研究会のテーマ、本日の議題に関連する参考統計等につき紹介。

議題に移り、まず(1)について、1名の委員より以下のとおり意見発表があった。

  • 〇 既存の公共スペースが補助金依存体質等により赤字を垂れ流し、自治体の荷物になっていることから、潰すものは潰す、民間に払い下げ可能なものは払い下げる、関係者を処分する、などとしてはどうか。
  • 〇 多くの第3セクターが生まれたが赤字になっている例が多数ある。そこから読み取るべき教訓として、中央の言いなりにならない、無理な企画をしない、ニーズのないところで商売を行わない、経営見通しを立てる、など。
  • 〇 そこで、これからの公共スペースの基本条件として、(1)30万人居住圏ではハコモノを共用化する、(2)風土に根ざしたものを作る、(3)メンテナンスのしやすいものにする、(4)特定の場所に資本の集中投下を行って内外からの集客力を高める、(5)世界をマーケットに発想する、を提案する。

これに対し、他の委員からの主な意見は以下のとおり。

  • 〇 公共施設の有効活用のためには、(1)プロジェクトの費用便益分析、費用対効果分析等、事前・事後の経済的評価を充実させ、結果を公表する、(2)効率性を高めるためにBOT、BOOなどを通じて民間の参入促進を図る、こととしてはどうか。
  • 〇 国から来るお金について地方の人が無責任であることが根本的な問題。地方分権を進め、国税中心から地方税中心への税制のシフトを行い、地元の人間が地方税を管理するという方向を目指してもよいのではないか。
  • 〇 多くの公共施設の立地場所に問題が見られる。保養・スポーツ関係施設については公的部門が整備する時代は終わっており、民間に任せるべき。また、経理について、多くの公的施設は減価償却を計算に含めておらず、企業会計原則に即した見直しが必要。プロジェクトの評価については、空間の有効利用という観点からのチェックを導入してはどうか。博物館や美術館については、もともと国家権力の誇示という性格があり、教育的観点から作られたが、今日にあっては楽しみや精神的充足の場としていくことが求められる。米国のリンカーンセンターのようなイベントホールが都市の集客力を支えている海外の事例に見習うべき。
  • 〇 公共施設の評価についての情報の開示が重要。また、これから公共施設を作る場合についてはPFI、既に出来ているものの運営については民間が買い取って公共部門に貸すというリースバック方式の活用を考えてはどうか。複数の「道の駅」へ行ったが施設毎の成否が大きく異なる。無責任な経営形態を招く一元的な補助金・交付金の配分をやめ、地方債の発行要件を緩和して国民全体が投資できるような環境を作ることが必要。国民が地方債に投資するようになれば、地方自治体の事業がチェックされる。
  • 〇 海外では公共施設自体が民間の投資対象になっている事例がある。日本の公共施設は一般来客用の駐車スペースが施設管理公務員用の駐車スペースより不便な所にあるなど問題が多い。ふるさと創生予算の使途検証をしてみてはどうか。

引き続き(2)について別の1名の委員より以下のとおり意見発表があった。

  • 〇 空間の拡大及び質の向上を図る上での課題・視点を、住む空間、働く空間、街や都市の空間の3つに分けて考えてみた。
  • 〇 住む空間という点では、自然とのつきあいの在り方の工夫、内部空間への日本文化の包摂、「住みだおれ」ともいうべき住宅を広くしたいという志向、が必要。
  • 〇 働く空間という点では、事務所の空間に余裕を持たせること、職場の食堂にもっと投資をすること、が重要。
  • 〇 街や都市の空間という点では、自分の家の外観をきれいにするなど地域住民としての連帯意識を持つこと、街並み形成に調和ある統一をもたらすための自制や規制などが求められる。

これに対し、他の委員からの主な意見は以下のとおり。

  • 〇 日本の不動産評価は地面の価値しか見ない。上物のインテリアや周辺の環境等土地以外のものに価値を見出し評価する仕組みが重要。ニューヨークなどのようにオフィスビル街に商店が集まるためには、固定資産税の減免等の措置が必要。そうしないと商売がペイしない。
  • 〇 中央区で事例がある高層ビルの半分をオフィス、半分を住宅にするというのはよいやり方。街並みの復元整備に市民の意見が取り入れられることが重要。フランスでは自分の家をきれいにする、街をきれいにするという村単位の市民運動の競争が起き、10年位で地方の村が非常にきれいになった。花かざりコンクールのように市民運動から出発した成功例もある。
  • 〇 日本の住宅産業は、客の注文に対してまともに対応せず、勝手に作って売り逃げという姿勢で客には不満ばかりが残る。住宅産業の近代化が重要。住まい方の研究とあわせ、広場などの整備をしていく必要がある。
  • 〇 今後、地価が下がれば都市計画がやりやすくなる。ヨーロッパの都市計画家のオーソリティは非常に高く、強い権限を持っている。日本とは事情がかなり異なる。

以上の討議までで定刻となり、閉会。

6.今後のスケジュール

次回第6回スペースとゆとり研究会は4月22日の午後0時から2時に開催する予定。

以上

なお、本議事概要は、速報のため、事後修正の可能性がある。

(連絡先)

経済企画庁総合計画局計画課経済構造調整推進室

(担当)福島、押田

TEL 03-3581-0783(直通)