経済審議会経済主体役割部会(第8回)議事録

時:平成10年3月24日

所:経済企画庁特別会議室(1230号室)

経済企画庁


経済審議会経済主体役割部会(第8回)議事次第

日時 平成10年3月24日(火) 14:00~16:00

場所 経済企画庁特別会議室(1230号室)

  1. 開会
  2. ワーキング・グループ報告書(案)について
  3. 公的金融について
  4. 経済主体役割部会報告書スケルトン(案)について
  5. その他
  6. 閉会

(配付資料)

  1. 資料1   経済主体役割部会委員名簿
  2. 資料2ー1 雇用・労働ワーキング・グループ報告書(案)
  3. 資料2ー2 民民規制ワーキング・グループ報告書(案)
  4. 資料3ー1 公的金融について(論点整理)
  5. 資料3ー2 公的金融について(説明資料)
  6. 資料4   経済主体役割部会報告書スケルトン(案)

経済審議会経済主体役割部会委員名簿

部会長
   水口 弘一   (株)野村総合研究所顧問
部会長代理
   金井   務   (株)日立製作所取締役社長
   荒木   襄   (社)日本損害保険協会専務理事
   潮田  道夫   毎日新聞経済部副部長
   浦田  秀次郎   早稲田大学社会科学部教授
   奥野  正寛   東京大学大学院経済学研究科教授
   川勝  平太   早稲田大学政治経済学部教授
   河村  幹夫   多摩大学経営情報学部教授
   神田  秀樹   東京大学大学院法学研究科教授
   公文  俊平   国際大学グローバルコミュニケーションセンター所長
   ポール・シェアード   ベアリング投信株式会社ストラテジスト
   末松  謙一   (株)さくら銀行相談役
   竹内  佐和子   長銀総合研究所主席研究員
   鶴田  卓彦   (株)日本経済新聞社代表取締役社長
   得本  輝人   日本労働組合総連合会副会長
   豊島   格   日本貿易振興会理事長
   那須   翔   東京電力(株)取締役会長
   西村  清彦   東京大学大学院経済学研究科教授
   樋口  美雄   慶応義塾大学商学部教授
   グレン・S・フクシマ   在日米国商工会議所(ACCJ)会頭
   星野  進保   総合研究開発機構理事長
   星野  昌子   日本国際ボランティアセンター特別顧問
   本間  正明   大阪大学経済学部長
   森地   茂   東京大学大学院工学系研究科教授
   諸井   虔   秩父小野田(株)取締役相談役
   山内  弘隆   一橋大学商学部助教授
   山口  光秀   東京証券取引所理事長
   吉野  直行   慶応義塾大学経済学部教授
   米倉  誠一郎   一橋大学イノベーション研究センター教授
   和田  正江   主婦連合会副会長


〔 部会長代理 〕 まだ委員の方でご出席でない方もいらっしゃいますが、定刻になりましたので、ただいまから、第8回の経済主体役割部会を開催させていただきます。

委員の皆様方には、大変ご多用中のところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

本日は、部会長が、所用により若干遅れて出席されるということでございますので、その間、部会長代理であります私が、部会の進行役を務めさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

本日の議題は3つございます。1つ目は、「ワーキング・グループ報告書(案)について」でございます。2つ目は、「公的金融について」でございます。3つ目は、「経済主体役割部会報告書スケルトン(案)について」でございます。

本日は、議題が非常にたくさんございますので、一つ一つの議題につきましてご審議いただく時間が必ずしも十分ではないかと思いますが、積極的にご意見を賜りまして審議が滞りなく進みますよう、ご協力お願い申し上げます。

それでは、第1の議題、「ワーキング・グループ報告書(案)について」でございますが、ご承知のとおり、本部会には、雇用・労働ワーキング・グループ(これは経済社会展望部会と合同でやっております。)、民民規制ワーキング・グループ、NPOのワーキング・グループ、この3つのワーキング・グループがございます。それぞれ活発なご審議をいただきまして、報告書(案)がまとまってまいりましたので、今回は雇用・労働ワーキング・グループと民民規制のワーキング・グループ、次回にNPOというふうに分けまして本部会にご報告をお願いする予定にしております。

最初に、「雇用・労働ワーキング・グループ報告書(案)」につきまして、このワーキング・グループの樋口座長よりご説明をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

〔 樋口座長 〕 それでは、報告させていただきます。お手元に配られております「雇用・労働ワーキング・グループ報告書(案)〔概要図〕」、1枚紙でございますが、これに沿ってお話しさせていただきたいと思います。本文の方は、資料2ー1という形で配付されていますので、ときどき参照させていただきたいと思います。もう一つ、「雇用・労働ワーキング・グループ報告書(案)資料編」というのがございますので、これにも沿ってお話しさせていただきたいと思います。

私ども雇用・労働ワーキング・グループが考えましたスケルトンでございますが、完全雇用を達成するために、個人及び企業、さらには政府というものが、どのような役割を分担していく必要があるのだろうかということについて考えてみたいということでございます。

完全雇用という言葉は、従来からずっと使われている言葉でございますが、私どもの定義は、お配りしました概要図の真ん中辺にございます「労働者各人の持つ意欲と能力を十分に発揮しうる社会の実現」、これを完全雇用であると考えようということでありまして、必ずしも、数量的な完全雇用ということではなくて、むしろ、個人を主体にした考え方に基づいて、それぞれの意欲、能力が発揮できるような環境整備というのがいかにあるべきかということについて考えていきましょう、ということであります。

今日の報告は、個人、企業、政府の役割分担の中で、特に、政府がこの目的を達成するために何をなすべきであるのか、あるいは逆に、何もしない方がいいのかについて考えてみようということでございます。

社会を取り巻く環境は大きく変わってきているわけでありますが、その要因として、グローバリゼーションの流れ、さらには少子・高齢化の流れというような中長期的な変化が起こってきている。さらには、その足元におきまして、景気の停滞の中で失業問題がクローズアップされてきているという実態があるかと思います。

そこで、報告書(案)資料2ー1の方を1枚めくっていただきますと目次がございまして、この目次、1章・2章・3章の3章立てになっております。1章のところでは、今の失業問題に特に焦点を当て、これまでの失業がどのような実態になっているのか、どのような特徴、従来とは違った動きを見せているのかというような現状認識、現状把握をしようということ、さらに、それに対する政府のあり方について議論をしております。

2章におきましては、それを元にしまして、個々人が失業という問題を回避するために、それぞれの労働者の能力発揮、これを十分に行うことができるような社会基盤というのはいかにあるべきなのか。それについての個人と企業と、それと政府の役割について考えようということであります。

そして3章で、最終的な「政策のあり方」というような提言という形でまとめさせていただいております。

〔概要図〕に戻ってお話しさせていただきますと、まず、「グローバリゼーション、少子・高齢化」の進展の中で、特に最近、個々の企業で雇用保障を行っていくということが非常に難しくなってきているというような現状認識を持っています。もちろん、雇用保障というのは、マクロの経済の安定、消費性向の安定というものに大きく寄与しているわけですので、これを軽減していいということではないわけですが、実態問題として、規制緩和ですとか、あるいは競争の激化という中で、企業の勝ち負けというものがわりとはっきりしてきている。そうなってきますと、個々の企業における雇用保障というだけでは、十分な完全雇用を達成する基盤は整備できないだろう。労働市場全体としまして、むしろ、こういう完全雇用を達成するような基盤整備というものを考えていく必要があるのではないだろうかというようなことを指摘しております。

右側の四角にまいりますが、最近の失業率が上昇している背景について考えようとしたのがこの四角でございます。その中では、1つは、経済成長率と失業率との相関というのがかなり高まってきている動きが見られるということがございます。

例えば、我々がやった作業の中で、過去の日本経済における成長過程を3つの期間に分けていろいろな作業をしているわけですが、参考までに、資料編を開けていただきたいのですが、7ページに図表7がございます。実質経済成長率を独立変数として、失業率や雇用失業率を従属変数にして、単純回帰分析を行う。そうしますと、1956年~74年のオイルショックまでの期間というのは、マイナスの計数が出ておりますが、その計数が失業率について-0.24というような、GDPの成長に対する失業の感応度というのが必ずしもそう高くはなかった。それが、85年の円高不況以降につきまして、かなり高まってきている、こういう関係が見られるということを指摘しているわけであります。

その要因、一体どうして起こっているのだろうか。景気の変動、成長率の変動に対して失業率の感応度が高まっている。その要因を、需要面・供給面の両側から考えてみようということをやっているわけですが、まず、需要面で考えられるのは、最近、雇用調整速度がかなり早まっている可能性があるということを指摘しております。8ページが、単純な雇用調整関数を計測した結果であります。これも3つの期間、全体の55年~96年、それとそれぞれのザブピリオッドに分けて、3つの期間について推定を行っているわけですが、1つは、一期前の雇用者数の計数というものがだんだんに小さくなっている。逆に言えば、雇用調整速度、最適雇用量に到達するまでの期間というものが短縮されてきているということがあるらしい。それと同時に、実質GDPの計数が大きくなっているということは、これが大きく伸びるときには雇用量も大きく伸びるし、逆に、マイナス成長であれば、大きく最適雇用量が低下するという動きが見られてきているということ。

この雇用調整関数はマクロで測っているわけですが、これがどうしてこういうような変化が起こってきているのか。これは、コアの労働者、企業における中心的な労働者についての雇用調整の問題もございますが、それと同時に、パートタイマーあるいは嘱託職員というような非正規社員の数が増えてきていることで大きく影響しているのではないか。あるいは、有期雇用という期限付きの雇用というものの増加によって、雇用調整が行われやすいような環境ができてきているのではないか、という問題指摘をしております。

資料編の4ページですが、これを見ていただきますと、図表4ー1のところに正規社員・非正規社員の対前年の雇用の伸びをとっていますが、黒い線の方が正規従業員・正規労働者の雇用の数の増加を示しておりまして、白い部分が非正規のパートタイマー・アルバイト・嘱託労働者というものの増加を示しているわけですが、95年以降、正社員はほとんど見られない。雇用の増加がほとんど、白い部分・非正規社員の増加で起こってきているということから、下の図表の4ー2で見ましても、非正規社員がかなりの比率になってきているということが言えるかと思います。

その結果、労働市場として、どうも二重構造的な色彩というのが最近生まれてきているのではないか。1つは、正社員、これについては企業も、あるいは労働組合の方も、雇用保障を第1に考えていくという、この考え方には大きな変化が起こっていない。しかし、非正規社員のウェイトが高まるという形での、人件費の硬直化を回避したいというような動きがあるのではないかということであります。

それと同時に、供給側につきましても、どうもいろいろな変化が起こってきているらしいということであります。供給側につきましても最近、大分大きな変化が起こってきて、従来ですと、景気が悪化したときになかなか雇用機会が見つからないということになりますと、そのまま主婦層を中心として非労働力化してしまうということが見られたかと思います。しかし、最近、こういった傾向がどうも薄れてきている。仕事がなかなか見つからなくても、そのまま職探しを続けるという人たちが多くなってきている。

従来ですと、景気の後退によって、そういう非労働力化する人たちが多かった結果、失業率の高止まりといいますか、抑制するような影響があっただろう。それだけ、失業上昇のバッファーの役割をこういう人たちが担っていたのだろうということでありますが、最近、どうもそのような流れというものもなくなってきているとみられるということであります。

参考に、12ページに図表12がございます。これは、この1年間に企業を辞めた人の中でどれだけの人が労働市場から引退したのか、非労働力化したのかということでありますが、女子層を中心にこれが右下がりに下がってきているということで、特に景気が芳しくなくなってきています95年以降、96年・97年についても失業率が非常に高まっているわけでありますが、その中においても、こういう人たちの労働市場への残存といいますか、そのまま残るということが多くなってきているということがみられます。

参考までに、1973年~75年の第1次オイルショックのときと、今回の97年以前における労働率、これが一定であったとしたならば、失業率は何%になっていたはずなのかという試算をしてみました。その結果、75年の第1次オイルショック後の失業率に関しましては、実際に報告されていますのが1.9%という水準でありましたが、労働力率、労働市場から引退するというような主婦層における数が相当の数に上ったために、もしそれが一定でそのまま労働市場に残っていたのであれば、4.3%の失業率になっていたはずです。したがって、2.4%ほど、この人たちが労働市場から離れるという形で失業率が実際には抑制されていた。かなりのバッファー効果があったのだということですが、今度の97年につきましては、実際の失業率が3.4%であったわけですが、労働市場に仮にそのまま従来働いていた人が残ったとして3.9%ほど、0.5%程度の上昇にすぎなくなってきているということが言えるかと思います。

こういうように、従来は、実際の顕在化する失業率にならなかった人たち、失業者にならなかった人たちというのが、最近は、主婦層を中心になってきている。そういった問題を指摘しているわけであります。

こうした足元における雇用問題と同時に、今度、中長期的に考えていったならば、労働市場としてどういう問題が起こってくると考えるべきかということですが、経済成長の達成というのは政府の役割として基本的に考えていかなければいけない問題でしょう。それが「経済構造改革の推進」というところの下の方にあります左側の四角で言っているところであります。特に、雇用創出の基盤整備、起業や新規事業展開を促進するような政策のあり方を考えていくべきだということであります。それと同時に、規制緩和、人材の育成、内外の企業にとって魅力ある事業環境の整備というものをしていくべきである。あるいは、科学技術の発展のために、そして、それを産業界に持ち込むために、産学官の連携の推進が必要になってくるでしょう。それと、新規企業が資金調達や人材確保の面で負っているようなハンディキャップの除去を考えていくべきだということであります。

右側の四角の中では、労働市場の機能強化が一層重要になってきているということから、人々が安心して働くことのできる環境整備のために何をするべきなのか。どうしても、企業と個人が交渉の場に臨んだ場合、個人としての労働者の交渉力というものが弱いわけですので、そういったところに対する支援がいかにあるべきなのか、ということを考えております。そこでは、特に、労働市場の新たなルール作り、法制度の整備も含めて考えていく必要があるだろう。そして、従来はどちらかといいますと、行政側が、こういう安心できる環境をつくろうということで積極的に前に出て、リードしていくということであったわけですが、基本的には労使の関係でその問題というのは解決するべきだと。しかし、解決できない問題が存在するような場合に、ちゃんとルールが守られているのかどうかという市場監視機能というものを行政は行っていくべきではないか、という視点を指摘しております。

それと、失業給付につきましても、真の弱者への給付をどういうふうに高めるのか。そして、モラルハザードを引き起こさないような失業給付のあり方というものが、もう一度模索されるべきであろうというような指摘をしております。

さらに、企業、政府の情報公開について、これを促進するべきである。具体的に申し上げれば、それぞれの政策についての評価ができるような社会になっていかなければいけないだろうというようなことから、政府の政策評価に対する情報の開示、さらには、ある日突然、企業が倒産しますというようなことでも困るわけですから、企業も従業員、社会全般に情報を開示していくということもさらに必要になってくるだろう。

さらに、労働移動の円滑化、失業なき労働移動というものを達成する必要があるだろうということから、労働力需給調整機能の強化、さらに失業なき労働移動への支援というものをどのように進めていくのか、という問題提起をしております。

ここまでが1章の議論でありますが、2章の中で、職業能力の開発及び発揮という問題。その問題の視点から、完全雇用を達成する上で、個々人、企業、政府、これがどのような役割を担うべきかということを指摘しております。

その職業能力の開発につきましては、左側の四角で、職業能力開発におけるリスクシェアリングということで、企業内の訓練。企業の外で、学校教育ですとか、そういったものを通じての教育訓練のエフィシェンシーは必ずしも高くない。実際に働いてみて初めて、職業能力を身につけることができるエフィシェンシーが高いということがございますので、その面での企業の役割というのは、従来に変わらず大きいであろう。

しかし、その一方で、自己責任というものが追求されるようになってきている、ということを指摘しております。その中で、政府に対しましては、特に、2番目の○と3番目の○ですが、自己啓発への支援ということで、所得税制上の、自分で技能を身につけようという人たちに対して、控除制度や奨学金制度というものを用意していく必要があるのではないか。これはあくまでも、自立したいというような人たちに対する自己啓発を促進するという目的で制度を作るべきだ、ということを申しております。

それと同時に、もう一つは、学校教育と産業界の連携についてでありますが、若者の適職選択に対するシステムの構築というのが必要であろう。特に、学生といろいろ話をしていますと、一体自分が社会に出てどういうことをやりたいのか、そういうことを十分に考える機会がなかったということを言う学生も多いわけでありまして、そういうことについて授業やカリキュラムの中に取り組んでいく必要があるのではないか、というような問題指摘をしております。

右側の四角が、その身につけた能力を発揮するためには一体どういうことが必要なのかということでありまして、身につければそれで十分だということではございませんで、そういった基盤が必要であろう。そのために、ここでは特にキャリア権の問題という形で、個々人が自分の進むべき道について、技能形成について選択できるような、そういう状況というのは企業の責任として用意していく必要があるのではないかということを申し上げているわけであります。

その自己責任の前提となる自己選択の保障という形で、今のキャリア権と同時に、公平で透明な査定・評価制度というものを企業は用意していく必要があるでしょう。もし、これが公平になされないということがあれば、業績給、こういうものが高まったとしても、不公平感が増すだけである。その結果、本来こういう制度を導入することによってモラルを高めたいということが、結果としては、むしろスポイルされてしまうということも起こり得るわけですから、透明性のある制度というものを考えていく必要が企業にもあるでしょうということであります。

政府の役割としては、1つは、個別的な苦情・紛争の簡易化、あるいは迅速な処理システム。これは本来は労使の間で、企業の中で取り組むべき問題であるわけですが、この企業を超えての問題、例えば、派遣のところで起こってくるであろう問題等々については、これは企業の中では解決できないわけですから、行政あるいは司法も含めて、こういう問題に対するシステム作りをしていく必要があるでしょう。

もう一方、パートタイマーの問題でよく指摘されます税制における配偶者控除制度、あるいは社会保障制度における第3号被保険者制度等の見直しを求めるということを申しております。

以上でございます。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。

大変遅くなりました。

それでは、続きまして、「民民規制ワーキング・グループ報告書(案)について」、同ワーキング・グループの荒木座長からご説明をお願いいたします。

〔 荒木座長 〕 それでは、「民民規制ワーキング・グループ報告書(案)」についてご報告申し上げます。

我々のワーキング・グループの設置につきましては、9月16日に開催されました第2回の当経済主体役割部会でその設置が決定されまして、第1回のワーキング・グループを10月17日に開催いたしました。そして、お手元の資料の目次の次のページに委員の名簿がございますが、この6人の委員で検討を開始したわけでありますが、情報通信、物流、金融、建設、医療・福祉、エネルギー、この6つの分野につきまして、いわゆる民民規制の実態をそれぞれ担当して洗い出していく、問題点を詰めていくという作業を開始したわけであります。そういう作業をベースにしまして、8回の会合を重ねまして、3月19日の第8回会合で、これからご説明いたします報告書を取りまとめたという経緯でございます。

最初に、全体の概要についてお話を申し上げます。目次のところをご覧いただきたいと思いますが、民民規制と言われるものは、必ずしも従来、体系的な検討が行われたということがあまりございませんので、定義についてもはっきりしていない点が多かったわけでありますが、私どもは、この定義をワーキング・グループとして定めまして、それに沿って9つの類型を一応立て、その類型ごとに事例を集めて、その実態を具体的に明らかにしようという作業をしたわけであります。そして、そういった実態をベースにしまして、民民規制を存在せしめる背景、その問題点を明らかにする。それから、民民規制の解消に向けて具体的に何をしたらいいかということについて提言を試みました。それから、従来、民民規制といわれるものを主として実施してまいりました業界団体の今後のあり方について具体的な提言を試みたということであります。これが報告書の全体像でございます。

それでは、最初の第1ページから具体的な内容に入りますが、時間の都合もございますので、この中から特にコメントを必要とするものに限ってお話しをしてまいります。

最初の1ページのところに、「基本的認識」ということで、私どものワーキング・グループの論議の前提になる考え方を示しておきましたが、経済構造改革を推し進めまして、経済を活性化し、そして世界的な規模でのメガコンペティションの時代に適合できるような新しい経済社会の構築に向かいまして、公的規制の緩和ないしは撤廃が進められているわけであります。

しかしながら、一方では、いわゆる民民規制というものが存在することにより、競争の活発化が阻害される。そして、そのことが豊かな国民生活を達成するという目標でありますとか、あるいは高コスト構造の克服といったような目標の達成が妨げられるというおそれがあるわけであります。

そこで、我々は、その民民規制の実態を明らかにしながら、その民民規制の解消に向けての具体的な方策を検討するということを目指したい。そして、これまで民民規制の主な実施者でありました業界団体の今後のあり方についても、あわせて検討する必要があるという問題意識でスタートしたわけであります。これが我々の基本的認識ということであります。

2ページ以降になります。民民規制の実態に入ってまいりますが、その前に、先ほど申し上げましたように、民民規制というものがかなり漠然とした認識にとどまっているということがございますので、ここで定義を試みております。2ページ目の上から1/3ぐらいのところに書きましたが、「本ワーキング・グループにおいては」ということで、第2パラグラフの2行目から書き出しておりますが、「国の法令に基づく規制以外の、業界団体等による、あるいは民間事業者間における事業活動に対する規制であって、直接国民生活に、あるいは事業活動に与える影響を通じて間接的に国民生活に影響して、不利益を与えるもの」とちょっと長い定義でありますが、こういう定義に基づいて議論をスタートさせました。

そして、このような定義から「民民規制の実態と問題点」ということで、先ほど申し上げましたように類型化を試みまして、その類型についての具体的な事例を集めていくというアプローチをしたわけであります。

この類型化でありますが、民民規制の類型というのは、独占禁止法との関連、それから公的規制、あるいは何らかの行政指導というような公的部門との関連、それから規制主体の意識とか、あるいは優越的な立場というようなことが関連しておりまして、これらの視点から9つのパターンに分けて、それぞれ事例を収集いたしました。これが2ページ~7ページまで書かれております。一つ一つについては特に申し上げませんが、これで全体を必ずしも網羅し得たものではございませんし、ある類型については具体的例をここでお示しできなかったものもございますけれども、全体としては、民民規制に関する問題点の理解を深めるためには一定の前進が得られたのではないかと考えております。これが7ページまで続いておりますので、後ほどお読みいただきたいと思います。

このような「民民規制を存続させる背景」ということで、7ページ~8ページにかけて4点書いております。1つには、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、民民規制と言われるものは、何らかの形で公的な部門がこれに影響を与えているといいますか、関連があるということが1つございます。公的部門のあり方というものが、民民規制の背景にあるのではないかということであります。

それから、ここで公的部門との関連で、少し別の角度でありますけれども、いわゆるエッセンシャル・ファシリティとの関連でいいますと、競争が活発化する中で、エッセンシャル・ファシリティを保有し、あるいは占有している人・主体と、この競争に参入しようとしている事業者との間で、エッセンシャル・ファシリティの利用についての公的なルールがないと、競争阻害要因になるおそれがあるのではないか、ということをここでも申し上げております。8ページにいきまして、上から2行目に、言葉はあまりよくないかもしれませんが、「規制的行為に容認的な談合体質がある」と一般的に言われているのではないか、ということを指摘しておきました。

その次は、情報開示の不徹底ということであります。

さらに、ウで、もともと消費者の安全などを目的にした必要な社会的規制が行われていたのが、時代の変化とともにその必要性が希薄化したにもかかわらず、先ほど申し上げたような、いわゆる談合体質というもの、あるいは情報開示の不徹底といったようなこととの関連で、本来の目的から離れて、不必要な民民規制として機能するに至っている、そういうものもあるということであります。

それから、特に、エのところで指摘しておきましたのは、必要な社会的規制を実施している業界団体のあり方についてでありますけれども、自主規制機関としてのガバナンスの適正化が必要であろう。社会的規制として必要な規制を業界団体等で行う場合には、それなりに適切なガバナンスのあり方が求められる必要があるということを、エのところで指摘しておきました。

その次に、「民民規制の問題点」、これが8ページ~9ページの中ほどまでにございますが、これは特にご説明申し上げるまでもないかと思います。

その次に、民民規制の解消に向けての具体的な対応策について触れております。民民規制の存在というのは、先ほど来申し上げておりますように、いくつかの社会的背景がありますので、この解消のためには、いわゆる業界団体等の自主性とか、あるいは自覚ということに委ねるだけでは早急な進展は困難とみられますので、以下申し上げますような具体的な施策が必要であろうということであります。

第1に、独占禁止法の運用の強化とその見直しということを挙げておきました。当然のことでありますけれども、民民規制の解消に向けては、競争当局が積極的な取組みをする必要があるということは、改めてご説明するまでもなかろうと思います。さらに、10ページのイという項目に、消費者の自己責任原則の下でのいろいろな行動ということを促しているわけでありますが、真ん中ぐらいに「独占禁止法の中に私人が差し止め訴訟を起こすことができるような制度を創設することを検討すべきである」ということを書いておきました。これは当役割部会の委員のご指摘にヒントを得まして、こういうことを申し上げているわけであります。

それから、エのところで、再びエッセンシャル・ファシリティの利用について書いておきましたが、その趣旨は、先ほど申し上げたとおりでございます。いずれにいたしましても、エッセンシャル・ファシリティの開放といいますか、これをオープンにするということが競争促進上必要であるということから、ここには公的なルール作るなり、行政官庁の適切な関与が必要であろうということでございます。

それから、11ページ、2番目の「行政指導等行政のあり方の見直し」ということをまとめておりますが、これも一々ご説明いたしませんが、民民規制の存在には何らかの形で行政指導等の公的機関の関連といいますか、影響といいますか、そういうものが現存しているわけですので、行政機関に対して、ここで3点を求めておいたところであります。

3番目の「国民からの情報等を収集し対処できるシステムの構築」でありますが、民民規制というのは非常に複雑な姿を呈しておりますし、先ほど申し上げたような9つの類型で、必ずしも整理できるものではありません。1つの事象がいくつかの類型にまたがることもあるということで、なかなかその把握が簡単ではございませんので、国民から寄せられるいろいろな情報に基づいて適切に対応していくことが必要なので、12ページに書き出しておりますが、いわゆる国内版のOTOというような苦情処理体制を設置することによりまして、広く国民から情報、あるいは意見、要望等を集める。そして、それぞれ関連の行政機関あるいは業界団体等に適切な措置を求めることが必要であろうということであ ります。

この国内版OTOの組織といいますか、全体のシステムにつきましては、報告書の一番最後に別紙というのがございまして、横長になっておりますが、ここに国内版OTOのイメージ図を付けておきましたので、後ほどご覧いただきたいと思います。

4番目は、「民民規制の解消に向けた国民意識の高揚」でありますが、私どもも、不十分ながら民民規制についていろいろ議論をしてまいりましたけれども、今後とも民民規制については継続的な論議が必要ではないか。ここの書きぶりで申し上げれば、「官や民から独立した法定の第三者監視機関を設け、民民規制についてさらに調査、検討を重ねることにより、その実態を明らかにし」云々ということで、引き続いての民民規制に関する検討の必要性を説いております。

それから、同じアの中ですが、13ページの一番上のパラグラフに、「学校教育等における独占禁止法等の教育を徹底する」ということで、国民意識の高揚をしていく必要があろうということであります。

次のイのところでは、現在検討されております消費者契約法というものが施行され、消費者と事業者との間の情報に関する非対称性を解消していくということがないと、なかなか民民規制を解消することは難しかろうということでございます。

それから、一番下にウとして、業界団体等の意識改革の必要性を求めております。今ちょうど規制緩和、主として公的な規制緩和が進んでおりますし、そのような時代の流れの中で、業界団体自体としても、談合体質から脱却する主体的な行動をとることが要求されているということを書いておりまして、業界団体自らが、民民規制の見直し・解消に向けての積極的な取組みを行うように求めております。

これまで民民規制についていろいろ申し上げましたが、最後に、事実の問題として、これまで民民規制の主たる実施者になってまいりました業界団体の今後のあり方について触れておきました。業界団体のあり方ということを考える場合には、14ページの3のところに書きましたように、「公的規制の緩和の深化やグローバル化の進展、地球環境問題の顕在化、消費者保護体制の整備の重要性の増大等」現在進んでおります環境変化を踏まえて検討しなければなりませんが、そもそも業界団体というのは、当該産業の発展を目的として、いわば自主的にその業界において組織されたものでありますから、その団体のあり方については一義的には、それを構成する事業者の責任あるいは権利であるということは申し上げるまでもございませんけれども、その活動が国民生活に不利益をもたらすようなことがあってはならないということを指摘したわけであります。

業界団体の問題点等につきましては、(1)に書きましたが、今、独占禁止法に基づく届出数が、昨年3月末で1万5,000を超えるという業界団体数に上っておりまして、我が国の場合は、主として行政と事業者との間の双方向的な情報伝達という役割を果たしてまいりまして、それなりに高い経済成長の時代には一定の役割を果たしてきたということでありますけれども、反面において、官民の役割分担を曖昧なものにしてきたという指摘がなされておりますし、ここに書きましたように、最近十数年間の独禁法違反事件の約1/3が業界団体によるのであるということが指摘されておりますように、かなり大きな問題点を秘めていることも間違いないわけであります。

そこで、「今後の業界団体の機能の見直しと意識改革」ということでいくつかのことを書いておきました。ちょうど15ページの一番最初の段の真ん中ぐらいに、経済同友会が昨年6月に発表いたしました「『市場中心の経済システム』にむけた業界団体の役割」という意見書がございまして、この中で経済同友会としては、自由で競争的な市場の構築・維持、消費者重視の活動への取組み、地球環境問題への取組み、標準化にかかわる国際活動という4点が、今後の業界活動の指針として提言されております。それから、私どもが調査をした業界団体の中では、既にこのような方向で積極的な活動を進めている団体もあるわけであります。そのことが今後の業界団体のあり方として参考になるのではないかということで、引用したわけであります。

それから、業界団体の今後のあり方については、特に、アカウンタビリティ、あるいは組織の透明性の問題等が重要な問題であろうということで、外部の人材の参画を含めて指摘をしておきました。

イのところで申し上げれば、とりわけ、外資系の事業者との関連で、メンバーシップのオープンなあり方を求めております。

それから、これは先にちょっとコメントいたしましたが、16ページのウのところですが、法律に基づいて行われる自主規制というものについては、公正なガバナンスが確保された団体によって行われることが適当であるということ、その実施団体のガバナンスのあり方が問題であるということを指摘しておきました。

最後に、業界団体の自己責任の確立のあり方でありますけれども、3行目の終わりから書きましたが、「市場原理が適正に機能する経済社会を築くためには、業界団体においても自己責任原則を確立した存在であることが求められる。業界団体は、公的な規制・公的活動等を理由に、自らの責任の所在を曖昧にすることはせず」ということで、「官民の役割分担の明確化を積極的に推進する必要がある」ということを結論としております。

以上でございます。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。

それでは、ただいまご説明いただきました雇用・労働、民民規制の2つのワーキング・グループの報告書(案)につきまして、あわせてご意見をお伺いしたいと存じます。順不同で結構でございますから、どうぞ。

〔 A委員 〕 雇用の方ですけれども、これは非常に網羅的に、かつ前向きないろいろなご提言もあるのですけれども、ちょっと気になりますのは、2ページで、「経済環境の変化と労働面への影響」というので、ここの書き方がどうであっても、後の結論とは関係ないとは思うのですけれども、例えば、グローバリゼーションの影響のときに「財の生産分野」ということで、この財の生産というのはサービスの財も入るのかどうかわかりませんけれども、どうもこれは製造業中心の、例えば、その後で輸入品の増大等というのですが、グローバル化というのは後の規制緩和とも関係があるかもわかりませんが、金融とか、通信とか、グローバル化の影響というのはむしろもっと広いので、製造業だけをグローバル化というとらえ方はどうなのだろうかという気がいたします。

もう一つは、次の「構造改革の影響」の中の規制緩和による云々というところで、短期的には「雇用を創出する企業が増大する」、これはこれでいいのですけれども、例えば、ビッグバン、特に金融は減るのかもわかりませんけれども、イギリスなどでは、規制緩和によって競争力がつけば、むしろ雇用も所得も増えているということで、そういう感じのところは、それを考えても減るのだということかもわかりませんが、短期と長期のその辺の感じが、必ずしもこれでいいのかどうかという気がいたします。

もう一つは、非正規雇用という概念がございます。その中で、人材派遣の問題は正規に入っているのだろうと思うのですけれども、そこについて、役割とかいうことについていろいろ、弊害除去とか何とかがありますけれども、その取扱い方が、パートタイマーとかはよく書いてあるのですけれども、その辺はどのようにお考えになっているのか。

以上、大きく分けて2点でございます。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。

今のA委員のご意見に、特に派遣の問題などでお答えするようなことがありますか。

〔 樋口座長 〕 どうもありがとうございました。第1点、第2点は、そのとおりでございますので、もう一度考えさせていただきたいと思います。

第3点の人材派遣は正規かどうかということでございますが、人材派遣の中に、たしか登録型と常時雇っている型と2種類あるわけです。その片方の登録型で、必要に応じて登録者の中から派遣するということについては、恐らく、定義上は非正規社員になっていると思います。常時雇っている方については、サービス業における、例えば製造業で働いていたとしても、雇用主はその場合には人材派遣業になっているわけですから、そのサービス業の方に入っている正規社員という扱いになっているかと思います。

その派遣社員の評価についてというところでございますが、これまた非常に幅の広い就業形態というところがございまして、これについてどのように評価するのかについてはもう少し考えさせていただきたいと思います。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。

続きまして、どうぞ。

〔 B委員 〕 雇用・労働ワーキング・グループの報告について、半分意見、半分質問をしたいと思います。

トーンとしては非常によく整理がされているという具合に思いますし、また、特に最近、雇用の流動化とかいろいろな形でこういう言い方をしますけれども、「労働の移動」と、そういう意味では非常に配慮をされた言葉を使っていただいていることについては、非常にうれしく思いました。

この中でも触れているのですが、今から、特に働き方がいろいろな面で変わってくる、特に自己実現を求めていく。そういう中で、透明な制度、そして公正な評価、この指摘は全くおっしゃるとおりですが、1つは、組織された労働組合があるところについては、これは十分かどうかはいろいろな意味で問題はありますけれども、まだチェックシステムがある程度は機能した。これが、組合がない未組織のところについては、今回の労働基準法の改正の問題等でもいろいろな議論があったのですけれども、従業員代表とはいいながらも、なかなかチェックができない。そういう面でも、個々人が、経営側対一労働者、そういう面では非常に弱い存在であるということは重々指摘はしておりますけれども、それをサポートする「支援」とありますけれども、もうちょっと具体的な支援策みたいなものがあれば、どういう議論があったのかお聞きしたいと思います。

もう一つは、ここでは政府の役割が中心なのは、よくわかるのですが、政府・企業・個人という中で、労働組合というあたりは、多分、企業と個人とをどうつなぐかというあたりの役割なのでしょうが、特に、組織率が大分低下してきている中で、もちろんこれは我々の責任でもありますが、集団的ないわゆる労使関係でいろいろな面で賃金や労働条件が決定されるという仕組みが、だんだん個人化、個別化されていく。そのときに、集団的な形をサポートする新しい仕組みが必要であるという指摘はしていらっしゃいますけれども、これは特に今の日本のいろいろな労働法が、どちらかというと組織された労働者がいることを前提に作られているのではなかろうか。そのあたりに、新しい仕組みという形はどういうイメージがあるのか、もしあれば教えていただきたいと思います。

以上です。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。

それでは、座長の方から何か。

〔 樋口座長 〕 非常に難しいお話ですが、基本的に、企業の中におけるいろいろな査定の問題でありますとか評価の問題、その点については、労使で自治的に解決していくべき問題だろうと思います。

問題なのは、例えばパートタイマーのような、一度企業から離れた人について、解雇の問題ですとか、そういったことが発生した場合に、それはもう企業を離れていますので、企業の中で解決しろということがあっても、なかなか解決することができないような社会的な問題が発生してくる。そういう問題に対して、政府がシステムを作っていくべきだということを申し上げているわけでありますが、現行のそういう苦情処理あるいは紛争処理というものに対する機関というのは、裁判所があったり、労働委員会があったり、労働基準監督署があったり、女性少年室ですとかいろいろなものがあるわけですが、ご指摘のとおり、例えば、労働委員会の場合には、個別紛争の問題というのは取り扱わないという形で、団体交渉、あるいは団体紛争、集団紛争についての処理機能というのは用意されているわけでありますが、個別の問題に対する取り組み方というのがシステム的になかなかまだ現状としてできていないということがあるかと思います。

ワーキング・グループの中でいろいろ議論したところも、例えば、労政事務所とか公共職業安定所で、これは法的にこういった問題を解決しなさいということはないのですが、実質的にやっているというようなところが、結果的にやらざるを得ないというようなところがあるわけですが、そういうものを解決する義務なり、あるいは権利かわかりませんが、そういったところを確立していく必要はあるだろう。あるいは、労働委員会についても、場合によっては集団的ではなくて、個別紛争についても取り扱うことができるような制度・システムに改革していく必要があるのではないだろうか。

どれがいいのかということにつきましては、これはまだ意見の一致をみておりませんが、そういったシステム自身を用意していくべきだろうということについて議論してまいりました。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。

続きまして、どうぞ。

〔 C委員 〕 2点ほどお伺いしたいと思うのです。

1つは、雇用・労働ワーキング・グループの報告書の方ですけれども、全体としては大変よくできていると思うのですけれども、最後の20ページの提言5、ここの表現が私はちょっと気になるのです。いわゆる税制の配偶者制度、それから公的年金の第3号被保険者制度、こういったものが労働抑制的に働いているという表現ですけれども、果たしてそうなのかどうか。

例えば、配偶者控除が今、金額でいうと38万円ぐらいだと思うのですけれども、この控除が果たして労働意欲を阻害するほどのものになっているのかどうか。この表現を読みますと、「こうした制度の存在は、有配偶パートタイマー労働者等について労働供給抑制的であるのみならず、勤労意欲や職業能力向上意欲に対してもディスインセンティブを及ぼしているため、撤廃も含め」云々と書いてある。それほど非常に重大なことかなぁという感じがするのです。

財政上の観点から、こんなのはいらないからやめた方がいいよという理屈なら、ある程度理解できないこともないですけれども、といって私は承認はしないけれども、これがそれほど大きな労働供給の抑制的な効果をもたらしているという実態は、よくわからない。これは統計でもあるのか、そういう首・闔臂攜Φ罎任發△襪里・△發靴修Δい辰燭發里・△譴个爾劼・┐靴鬚い燭世【4】燭い隼廚い泙后・・鹿霈w) もう一つは、民民規制の問題ですけれども、先ほどの報告書を見ますと、民民規制の温床は業界団体であるというような感じに私は受け取ったのですけれども、果たしてそうなのかという感じがするのです。

そういう面も否定できないと思います。あると思います。ただ、私が、これまでの民民規制の問題というか、業界団体の存在というか、これはむしろ官が民を統治するための手段として存在していたのではないかと。別な言葉で言うと、官が民をコントロールするために存在していたのではないか、という感じがしないでもないのです。

というのは、これもそういう研究というか、そういう資料はどこかで調べればあるはずだと思うのですけれども、業界団体に役所の人がどのくらい天下っているか、それをみればはっきりすると思うのです。多くの業界団体には、役所の人が入っています。役所の人が入って「民民規制」というと、何かなじまないという感じがする。だから、どこの業界団体がいくつあって、先ほどは数字は出ましたけれども、役所の人が何人ぐらいそこに入っているか、そういう資料があれば出していただければ、また新たな議論の対象になるのではないかということです。

どうも、業界団体だけが悪の温床みたいに言われるのは不本意ではないか。私は、別にそういう業界団体に属して何かやっているわけではないからいいのですけれども、一般論として代弁をすると、そういうことが言えるのではないかという感じがいたします。

ちょっとその点が気になりましたものですから、申し上げました。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。

今の配偶者控除の問題は、以前やりました行動計画委員会の雇用・労働のときにも非常に問題で、そのときは首・闔臂敕・併・磴覆匹盻个討い泙靴拭・・・从册瑛Р颪任笋辰討い誅・・埔谿儖・颪任癲△海量簑蠅麓尊歸・蔑磴覆匹鮓世錣譴討い襪里任垢韻譴匹癲△發刑堕垢諒・・藏饌療・覆發里・△譴个・気┐い燭世【4】燭い隼廚い泙后・・鹿霈w) 次の民民規制の問題は、荒木座長自身の損保協会では、代々副会長は大蔵省から来ていますし、私の出身母体でもものすごくたくさんおりますけれども、その辺の問題を踏まえて、また業界団体のメリット面は非常にありますけれども、これは今回は特に大きく出さなかったというふうにも聞いておりますが、その辺もお答えいただければと思います。

〔 樋口座長 〕 第1点目の、配偶者控除及び配偶者特別控除のことについて申し上げます。お手元に配付されております資料編の一番最後のページ、23ページを見ていただきますと、図表23というのがございます。これは、労働省の行っていますパートタイマー労働者総合実態調査に基づまして、配偶者控除、あるいは配偶者特別控除、配偶者手当を基にして、どれだけ就業が調整されているのかという数字になっております。これは2回調査が行われておりまして、90年の調査のときには、パートタイマー(これは俗称「パートタイマー」ということで、実際に労働時間の短い人だけではなくて、そのほかのパートタイマーも含めている数字だと思います。)100に対して30.4%の人が就労調整を行っていると考えております。それに対して95年、5年後ですが、37.6というように、この数字が大きくなっいることが1つ確認できるのではないかと思います。

もう一つ、一番下に図表23ー3というのがありますが、これは私がやった結果でございますが、90年のこのデータを使いまして、一体どれぐらいパートタイマーの配偶者控除、あるいは配偶者特別控除の存在、あるいは第3号被保険者の存在というものが労働を抑制しているのだろうか。その場合に、収入抑制というのは、結局、労働時間×時間給ということでございまして、両方を抑制する可能性がある。

まず、年間時間の方でこれを気にしている人というのは、気にしていない人に対して24.8%ほど抑制しているという数字が出ております。あるいは、時間給のところでも、5.1%ほど賃金を低く押さえているというようなことで、これはどういうことかといいますと、例えば、企業側が春闘の後、パートタイマーについてもベースアップを認めようということがあった場合に、企業の方は、認めようといっても、パートタイマーの方がそれを待ってくれ、それをした場合に101万円を超えてしまうというようなことから、むしろ上げないでほしいというような要望があったり、あるいは賃金引上げを要望する声というものが非常に小さくなっているという実態があるかと思います。

これは90年の数字ですが、95年の統計を使いましてさらに計測した結果(これは私ではなくて、ほかの先生がなさったわけですが、)、それに基づきましても、95年さらにこれが拡張しているという結果が出ております。

先ほどご指摘いただきましたように、配偶者控除自身は38万円でございますが、それは同時に、配偶者特別控除、これが70万円以下の人たちに対して、さらに38万円を認める、合計76万円ということになり、さらには配偶者手当、これは企業から101万円を超えたかどうかを基準に出すか出さないかということを決めている企業が多いわけですが、それを基にして、例えば月2万円の配偶者手当が出ますと、それが、掛ける12カ月ということで24万円。さらにボーナスにはね返ってというようなこと、こういう小さいことなのですが、それを累計していきますとかなりの額になるということから、パートタイマーの就労抑制につながっているのではないかと思われる向きがございます。

以上でございます。

〔 荒木座長 〕 私自身も、業界団体の責任者の1人でありますから、内心忸怩たるものが多分にあるわけであります。先ほど、C委員がご指摘のように、いわゆる民民規制というのは、形式的には、確かに民間における規制なのですが、その後ろに何らかの形で行政のいろいろな影響力があるのは、この報告書の中でもたびたび指摘しておりまして、例えば、3ページのところで、先ほど申し上げました民民規制の類型の実例を挙げておきましたが、例えば、アでは、公的規制を背景とした独禁法の無理解によるもの。イでも、公的規制を背景とした独禁法の無視によるもの。無理解と無視というのはちょっと違うと思いますが。さらに4ページも、独禁法の適用除外を背景としたもの。エも、行政指導等を通じて競争制限的になっているもの。オは、さらに公的規制等が、かつて存在したとか、あるいは存在しても本来の規制が及んでいない部分にまだ規制が残っているという誤解によるものとか、いろいろ書きました。それから、カのところも、基準の問題なども、本来、公的機関がやるべきものを業界団体とか、場合によっては学会のようなところがこれを肩代わりしたりというようなことで、具体的な9つの事例のうちで半分以上は、何らかの形で公的な関与といいますか、バックにそういうものがあるということを指摘しておきましたので、私どもも、この議論の中で、業界団体が自ら主体的にというとおかしいですけれども、業界団体だけで民民規制をやっているという例がそれほど多いと言っているつもりはなかったわけであります。しかし、業界団体の存在を抜きにしては、大多数の民民規制は説明できないのではないかと私は考えております。

その辺のところは、ご質問の中にありました、天下りがどのくらいあるかというところはちょっと首・闔臂擇靴討・蠅泙擦鵑掘・未燭靴討修Δい・・悊・茲譴襪・匹Δ・錣・蠅泙擦鵑・・棏僂気譴泙靴殖隠乾據璽犬痢複院砲龍罰γ賃里里海譴泙任量魍笋般簑蠹世僚颪Ⅸ个靴里箸海蹐能颪【4】泙靴燭茲Δ法・罰γ賃里・泳釭機ぃ娃娃旭幣紊△襪箸いΔ海箸任垢掘∈廼畚粛焦・屬瞭叛蟠愡瀚^稟森坩戮量鵤院殖海・罰γ賃里砲茲襪發里任△襦・海譴蓮△修Δい・・造・△襪錣韻任垢・蕁・罰γ賃里箸いΔ發里里△衒・・¬洩欝・・量簑蠅鮃佑┐訃紊任蓮・辰法¬洩欝・・硫鮠辰鮃佑┐討い・紊任枠鷯錣紡腓【4】淵侫.・拭爾任呂覆い・塙佑┐兇襪鯑世覆い隼廚Δ錣韻任△蠅泙后・・鹿霈w) 以上であります。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。

それでは、今お触れになりました、業界団体にいわゆる天下りがどのくらあるか、調べられる範囲内で、できましたら調べていただいて、資料として付けていただければと思います。

〔 D委員 〕 私も業界団体の責任者であったこともございますので、一言言いたくなったのです。

荒木座長は忸怩たるものがあるとおっしゃったけれども、私は、あまり忸怩たるものを感じないほど、業界団体でそういうことをした覚えはない。これは仮定の話で、もし独禁法違反ということがあるとすれば、業界団体が噛むのは当然です。だから、独禁法のことを考える、あるいは独禁法を破る、今あったいくつかの体系をひっくるめて破ると言ってもいいのだけれども、そういうことをするとすれば、調査すれば、独禁法でそういうことがあることはあると思うけれども、もともと企業というのはそれぞれ独立で、常に共同行為をやっているということはまず少ないわけですから、そして、企業が独立で、共同行為でないことをやることが企業の使命ですから、企業団体というのはそういうことのためにあるのではなくて、企業が正しい目的の行為をするための団体として企業団体があるのです。

ですから、今度の場合でも、電気事業連合会にもご調査があったそうですが、問われたようなことを、電気事業連合会で相談してやるなどということは、まず、我々の頭では考えられない。それぞれの各社へ行くと、何かを断ったことがあるかもしれないし、受けたこともあるかもしれない。それが電気事業連合会へ上がってきて、どうしようかなどという相談を、まず絶対しないと思うのです、我々は。

もしあるとしたら、さっきあったように、だからC委員の意見に賛成なのだけれども、官が民に統制をするときに、民間の団体を利用することはあるかもしれませんが、そういうことでない限り、民間団体が自分で、民民規制などと恐ろしいことを、人さまの民間団体にするはずはない。我々は、各々の会社が全部民であることに誇りをもっているので、民民規制をやることに誇りなど全くもっていませんからね。

民がほかの民に対して、その方が何か民全体に望ましいことを断ったとしたら、不適当な場合もあるし、不適当でない場合もあるけれども、それを共同行為として断るなどということは、普通、ちょっと考えられないのではないかと思うのです。

だから、民民規制というのとちょっと議論が違うのではないか。

もしあるとしたら、さっきからの「天下り」という言葉を、私は、失礼だと思うから使いたくもないのですが、現在存在する民間団体がほとんど公益法人の資格を持っているのです。私たちの電気事業連合会というのは、我々の先輩も偉かったし、我々のときでも「

どうだ」と聞かれたこともあるけれども、絶対に公益法人になりたくないと思っていました。なぜならば、天下りが来るから。

民間法人が、許可をもらうために、あるいは監督されるために法人になろうとするからいけない。

ことに、この頃で目に余るのは、公益法人は全部、理事会と評議員会は兼ねてはいけない、数はいくつにしろのと、全部やられていますね。誰が決めたのだといったら、内閣で決められたという。内閣に出ている人たちは、みんな総理大臣以下、立法機関と行政機関とを兼ねているではないか。理事会と評議員会と兼ねて何で悪いのかと言ったら、それはそうですけれどもと、私に説明に来た人は言いましたけれども、それほど公式的になってしまっているのです。こういう統制があるのです。公益法人をもっといいものにしようと思ったら、ああいう統制をするというのが、そもそも官僚統制であってね。

いつか、NGOのときに、私もちょっと申し上げましたけれども、どうも民民規制があるという発想が、民間の業界団体とすぐ結びつくのは、極めておかしい話だ。それは民各個が民民統制しようという企業があるとしたらけしからん、という発想になる方が正しいのではないかと思うのですが、そうでしょう。

〔 荒木座長 〕 この例にも書いてありますように、あるいは独占禁止法との関連抜きには、民間の事業者団体による民民規制というのは非常に考えにくいというのは、全くご指摘のとおりでありますから、それは本来あるべきものではないというのも、まさしくそのとおりだと思います。そういうトーンで書いたつもりではあるのですが。

今のご指摘の中で、私も先ほど引用いたしましたが、エッセンシャル・ファシリティの問題で、電気事業連合会の方にいろいろ首・闔臂陲里汗睫静銈鬚・蠅い靴泙靴燭里蓮▲┘奪札鵐轡礇襦Ε侫.轡螢謄・陵・僂量簑蠅砲弔い董・典せ・範・膕颪撚燭・茲蠏茲瓩鬚靴燭箸・△修ΔいΔ海箸鮖笋匹發・簑蠅砲靴燭錣韻任倭瓦・覆い里任后・修譴任蓮∩漢海瓦兇い泙擦鵝・修Δ任呂覆・董・帖垢療典せ・伴圈△海譴浪燭眦典せ・箸世韻任覆・督命・箸・い蹐い蹐覆海箸砲△襪錣韻任△蠅泙垢韻譴匹癲△修ΔいΩ・彭・併・箸魃弔爐燭瓩法△い錣罎襪修了・箸里燭瓩離┘奪札鵐轡礇襦Ε侫.轡螢謄・箸靴董△△觴錣諒惘廚鯤殕【4】靴討い蕕辰靴磴觧・伴圓・△修譴鮑E戮倭瓦・寨莇般海任呂覆ぁ∧未痢⇔磴┐佚杜呂龍ゝ襪療澱譴世箸・貧・世箸・∈E戮歪命・・チ茲侶覯未修海貌・辰討・襪箸いΔ箸【4】法△修海鬚匹ΔいΔ佞Δ忙箸錣擦討い・・箸いΔ箸海蹐髻・・・淵襦璽襪・舛磴鵑箸覆い函∋篥・僻獣任世韻貿い擦討・・函・杜呂里箸海蹐任呂覆・董・典つ命・里箸海蹐龍チ茲・淑・犬【4】討海覆い里任呂覆い・・海譴蓮■裡圍圓了堝睫屬量簑蠅謀儀薪・砲△蕕譴討い襪錣韻任垢韻譴匹癲△修海鮨修珪紊欧討い燭錣韻如・茲靴董・澱譴世箸・貧・了藩僂砲弔い董・典せ・伴圓涼賃里・△修涼賃里箸靴討亮茲蠏茲瓩鬚靴董・燭蕕・稜啾湘・覆海箸鬚靴燭箸・靴覆い箸・△修ΔいΔ海箸砲弔い銅疚世魑瓩瓩燭錣韻任倭瓦・△蠅泙擦鵝・修療世蓮△匹Δ召劼箸弔翰・鬚い燭世【4】燭い隼廚い泙后・・鹿霈w)〔 D委員 〕 おっしゃるとおりなのです。私も、誤解して、電気事業連合会に聞きに来たのは間違いだと言っているわけでもございません。それから、電力会社が9つ、沖縄までを入れると今10ありますけれども、それぞれがああいうことについては対応が違っているのも事実です。それがいいことだとも思っていません。しかし、それほどさように、ああいうことは相談しないで各社でやるのが、それぞれ会社が独立している証拠だ。その方がいいのではないか。官が何とかといって、事業連合会を指導したら、全部同じ色になったら、そんな気持ちの悪いことはない。むしろ、日本の官と民というのは、民民規制の話を一般的に議論して、官が相談するのはおかしいので、民で相談しなければならないものではないか、とさえ思っているぐらいで、そういう意味で申し上げているわけであります。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。

この問題は難しい問題で、私自身の経験からいきますと、特に、金融・証券というのは、法律で定められた許認可制の下における自主規制機関といいますか、業界団体というのは、どうしても民民規制という問題が非常に強い。それは、G委員の御専門ですけれども、メーデーにしろ、あるいはビッグバンにしろ、全部それぞれが独禁法違反ということがずっと言われて、最後は全部自由化に踏み切った。また、我々の場合はまさにそうでありまして、もともとは株式の委託手数料というのは、取引所の独禁法適用除外だったのです。それが外れてきた、それで自由化。私は引受けの責任者ですから、それに便乗して、我々も引受手数料というのを固定手数料で、まさにこれは民民規制でやってきて、東京電力さんからはずいぶんたくさん手数料をいただいてきた。これも今、自由化の方向へ全部なってきたということで、これは業界によって相当違うということがございますので、先ほど来の荒木座長のご指摘のとおり、独禁法の関係とか、そういうことは非常に大きな問題だろうと思います。

〔 E委員 〕 先ほどもお話の出ました配偶者控除、配偶者特別控除などを含めてですけれども、資料でお示しいただきましたようにいろいろありますし、さまざまなところで指摘されていることでもありますので、このような指摘が必要だというふうに感じております。

それに加えて、私、今感じておりますのは、ここに出ておりますような制度だけの問題ではなくて、日本の社会というのが、世帯単位でずっときてしまった。それを世帯単位ではなくて、個人単位に切り換えていくという、その認識が必要なのではないか。

ここの報告書の中にそういう文章が入れられるのかどうかはちょっとわかりませんけれども、そういう視点が必要なのではないか、ということを付け加えさせていただいておきます。

以上です。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。

それでは、まだいろいろご意見はあろうかと存じますが、時間の関係もございますので、第1の議題につきましては、ここまでとさせていただきたいと思います。

なお、各ワーキング・グループの報告につきましては、ただいまいただきましたご意見等を各ワーキング・グループの内部でご検討いただきまして、今後の取扱いにつきましては、各ワーキング・グループでそれぞれ取りまとめた段階で、適宜公表していただくことにしたいと考えておりますが、よろしゅうございましょうか。

よろしければ、そのように取り計らわせていただきたいと思います。

それでは、次に、第2の議題であります「公的金融について」、事務局より説明をお願いいたします。

〔 事務局 〕 公的金融については、資料3ー1でございます。ご承知のように、公的金融につきましては、これまで、資金の受動性から生じる規模の拡大、そこから生じる民業の圧迫、あるいは、見えざる将来の財政負担という問題点が指摘されてきておりましたけれども、これらに対しましては、ご承知のように、昨年の11月~12月にかけまして、自民党の行革推進本部、資金運用審議会懇談会、行政改革会議から、制度の大幅な見直しの方向性が示されたところでございます。

この役割部会におきましてもテーマであります、それぞれの経済主体の役割ということで、公的金融につきまして、今回、皆様方からご意見、ご議論をいただきたいと思っているところでございます。

事務局の方で、公的金融に関しまして、3つの論点を取り上げてそれぞれ考え方をまとめておりまして、こういう考え方につきましてご議論いただきたいと思っております。

3つの論点といたしましては、1つは、公的金融の今後の役割という点。その次に、その役割を果たす中で、公的金融の効率化をどのように図っていくべきかという点。もう一点、郵貯の役割についてどのように考えるかという点。この3点を取り上げさせていただいております。

1つ目の論点といたしまして、公的金融が今後どのような役割を果たしていくべきかということについてでございますけれども、民間の経済活動の中では外部経済等の「市場の失敗」が存在するであろう。その際に、資源配分の最適化を図ることが必要となりますけれども、その場合には、1つには、補助金を含めた財政支出あるいは税制という対応が必要となりますが、それに加えまして、有償資金を活用するといういわゆる公的金融の役割も重要ではないかと考えております。実際問題といたしまして、これまで我が国におきましても、国内貯蓄を社会資本整備等に効率的に活用するということで、これまでの経済の発展に貢献してきていると考えておりますが、こういう有償資金を活用するという基本的な役割及び必要性は今後も存在するのではないかと考えております。

ただ、公的金融として関与すべき度合いにつきましては、社会経済情勢の変化に応じて変化するということでございまして、特に今後は「官から民へ」という原則のもと行政のスリム化、重点化を図る行政改革、あるいは市場原理を貫徹するシステムということで目指しています金融システム改革、こういうことを踏まえますと、今後の公的金融につきましては、民業の補完を基本とし、そのスリム化、重点化を図っていくということが基本となると考えられると思っております。

実際問題として、公的金融のふさわしい分野として、受益者負担を求めるべき政策分野、そういう分け方がされますけれども、公的金融が必要とされる分野は具体的にはさまざまでございまして、例えば、欧米の主要国におきましても、我が国でいう公的金融、このシステムは存在しておりまして、分野としても、住宅政策、地方向け、中小企業対策、貿易政策、社会資本整備という幅広い分野で公的金融が活用されているところでございます。

こういう状況も踏まえまして、主な対象分野ということで、「住宅」「中小企業」「社会資本」「地方」と4つ挙げておりますけれども、この主な対象分野を例といたしまして、それぞれの必要性ということをまとめてみたものでございます。

まず、住宅分野でございますけれども、基本的に、住宅取得資金は、個人にとって金額が大きく、生涯設計にも影響するため長期資金が必要となるが、個人で容易に調達できるとはいえないこと、あるいは個人の自助努力による資産取得を後押しすることが政策的に求められているということから、質の高い住宅取得を支援するという政策的意図を明確にしたものは、公的金融の対象としてふさわしいのではないか。

中小企業でございますけれども、信用力等の基盤の弱い中小企業が多いことから、民間金融市場などでの長期資金へのアクセスが困難であること、あるいは中小企業の自助努力を引き出しつつその資金調達の円滑化を図るという観点から、公的金融の対象としてふさわしいのではないか。

社会資本でございますけれども、社会資本整備の中でも、受益者が特定できるもの、あるいは大規模であること、あるいは超長期のプロジェクトであるということからそのリスクの大きさ、したがいまして市場メカニズムで最適な供給がなされないおそれのある事業などは、公的金融にふさわしい分野ではないか。

地方向けでございますけれども、地方向けにつきましても基本的には、学校、病院、下水道等地域に密着した超長期的な社会資本整備等を行うという観点からしまして、公的金融の対象としてふさわしいのではないか、というふうに考えられるのではないかということでございます。

公的金融の2つ目の論点といたしまして、公的金融の効率化でございますけれども、公的金融の場合には、市場規律と財政規律が機能するシステムにするということが基本と考えられるのではないかということでございます。そのための効率化の具体的な方法として3つ、コスト分析手法、公的金融の出口としての手法の多様化ということ、資金調達の際においても市場原理とマッチングさせること、この3点が考えられるのではないかということでございます。

まず、コスト分析手法の導入でございますけれども、論点1で述べましたような、民業補完に徹する。その上で、残る政策的に必要な分野・事業が対象とする場合であっても、さらにコスト分析を行っていくことが必要ではないかと考えております。

そのコスト分析を行う際には、できるだけ民間の企業会計に近づけ、透明性、客観性の高いコスト分析手法、さらには、それらについてのディスクロージャーを行う際につきましても客観性、透明性の高いものとすることが重要ではないか。こういうことを通じまして、公的金融のガバナンスの強化、さらに業務の効率性の向上につながると考えられるのではないかということでございます。

次に、公的金融の手法の多様化でございますけれども、我が国の場合には、基本的に直接融資という手法がとられておりますし、欧州諸国におきましても、基本的には直接融資という手法がとられております。ただ、近年、米国におきましては、この直接融資という手法から、債務保証あるいはリファイナンスというものを中心とする手法に転換してきている状況でございます。

そういう中で現在、我が国におきましては、市場原理が貫徹する金融システム改革を進めております。それらとの関連を申し上げますと、民間金融機関の補完、今申し上げました市場メカニズムとの整合性、民間金融市場の今後の発展への貢献ということから考えまして、アメリカで中心となっているような債務保証、リファイナンスなどの手法も導入していく必要があるのではないかということでございます。

具体的な例といたしましては、よく言われることかもわかりませんが、例えば、住宅の場合に、住宅債権を購入して証券化するという手法が考えられます。アメリカでセキュリタイゼーションが進んでいるということがございますけれども、その基本的な要因としては、住宅債権の証券化ということが大きな要因でございまして、この住宅債権が証券化されれば、我が国におきましても一般投資家にとってのミドルリスク・ミドルリターンの金融商品にもなり得るということで、今後の発展性が見込める分野。こういう分野におきまして、公的金融機関が証券化を推進するということは、流動化債権市場の発達を促進するということで金融市場の活性化にも資することになるのではないかということでございます。

もう一つの例といたしまして、例えば、中小企業分野では、直接融資に加えまして債務保証を積極的に活用すること。これによりまして民間の補完、あるいは民間金融機関のリスク軽減に資する方向へ変化していくことが必要ではないかということで、手法の多様化ということを取り上げております。

それから、資金調達の面でございますけれども、公的金融につきましては、単に出口での民業との関係だけでなく、入口の面におきましても民間金融との関係を常にチェックする必要があるのではないかということでございます。そのために、公的金融の資金調達におきましても、民間金融の補完に徹するという考え方は徹底する必要があるということでございます。

ただ、これまでは、委員ご承知のような、郵便貯金等の預託義務制度というものがございまして、あえて言えば、公的金融の出口の所要資金量と入口の資金量とが切り離されていまして、これまで公的金融の肥大化等の問題があると指摘されてきておりましたけれども、ご承知のような形で、今般、郵貯等の預託義務が廃止されることになりました。したがいまして、今後は公的金融の出口において必要な資金だけを能動的に市場原理に基づきながら調達していく、そういうふうな方向になると考えられております。

その仕組みとしまして、具体的には財投機関債、財投債という形で、金融市場から調達する方法が議論されております。それぞれの財投機関債あるいは財投債につきましては、それぞれのメリット・デメリットが指摘されておりますけれども、基本的には、これらを適用するに当たりましては、公的金融機関の財政規律を一層高める、さらには市場原理と調和した形となる、こういう点を基本としていくべきではないかということでございます。

3つ目の論点といたしまして、郵貯の役割でございますけれども、先ほどから申し上げておりますように、公的金融の入口としての郵貯の存在がこれまでございましたけれども、郵貯につきましては、運用部への預託義務が廃止され、郵貯が自主運用を行う、またその組織形態は郵政公社に移行するという方向が示されております。郵貯につきましても、今後、金融システム改革が進む中で、市場原理が徹底されていくことを踏まえたものである必要があり、郵貯における社会政策的な役割というものもございますけれども、これにつきましても市場原理を阻害しないような形で検討されるべきであると考えられるということでございます。

公的金融に関する論点につきまして、このような考え方でまとめておりますけれども、こういう方向でよろしいかどうかを含めまして、ご議論、ご意見をいただきたいと思っております。

以上でございます。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。

ただいま説明のありました「公的金融について」ご意見をお伺いしたいと思います。

〔 F委員 〕 少し今のご説明に補足をさせていただきたいと思いますが、今ご説明のように、海外でも公的金融はございまして、大きく分けますと2つタイプがございます。1つは、アメリカのように郵便貯金のような原資がない国。それから、ドイツ、フランスのように、郵便貯金に似た形の原資がある国がございます。原資のある、ドイツ、フランス、日本というのは、直接の融資が非常に多くなっておりまして、そのために民間との競合ということが言われてきたわけでございます。

ドイツでは、郵便貯金は民営化されましたが、シュパールカッセという地方の貯蓄銀行がございまして、これがランデスバンクという州立の銀行と結び付いていまして、わりあいに日本の財投に似たシステムが現在でもございます。

フランスも、郵便局がございまして、1万7,000店舗がございまして、CDCという大蔵省の資金運用部のようなものがございまして、それで公的金融が存在いたします。

今後、先ほどのご説明のように、郵便貯金と年金が自主運用になりますので、我々の日本の財投というのは、アメリカ型になっていくことが望ましいと思われます。つまり、原資がない形での公的金融のあり方を考えるということだと思います。その場合には、マーケットから調達しないといけないわけですので、それが財投機関債として個別の機関が債券を発行する、あるいはまとめて財投債として発行する、こういう形になっていくのだと思います。これになりますと、アメリカ型に近くなりますので、あまり資金が潤沢にございませんから、その潤沢でない資金で何らかの形で、民間の補完の形で政策金融を行うということだと思います。そうしますと、中小企業金融の分野などですと、アメリカではSBA(スモール・ビジネス・アドミニストレーション)というのがございまして、そこは 民間の中小企業向け融資を債務保証する、そういう形で補完をしておりますので、日本もそういう民間への補完というのを今後、徹底する必要があると思います。

あとは、住宅債権の流動化のように、これも民間の金融機関が貸し出した住宅債権、それを政府の公的機関がある程度保証みたいのを付けまして流動化する。こういう形ですと、政府系が自分で貸し出すというわけではありませんで、民間の方の融資がイニシアチブで、それを補完するという形であると思います。

あとは、先ほどのご説明の2ページ~3ページにございましたが、その分野としましては、「住宅」というのはどこの国でもございます。これはアメリカでも、ドイツでも、フランスでもございます。「中小企業」も、どこの国でもございます。「社会資本」は、フランス、ドイツ、日本でございます。「地方」も、ほとんどの国であるという形ですので、なるべく限定的な形でやるということだと思います。

最後は、3ページからですが、コスト分析、あるいはコストベネフィット分析。これはやはり今後必要なことでありまして、アメリカの機関を見ておりますと、いろいろな政府の機関のダイナミズムが非常にございまして、日本でも、財投機関の民営化なり、あるいは再構築、そういうものがダイナミックに行われる制度がぜひ必要だと思います。

コメントは以上です。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。

続きまして、どうぞ。

〔 A委員 〕 2ページの社会資本のところで、「道路、空港、鉄道建設等社会資本整備のうち、受益者が特定できるものやプロジェクトの大きさや超長期性」というけれども、後者は特定できなくてもいいのか。

一番上に書いてある「ふさわしい分野」との関係なのですけれども、例えば、港湾などでも、発展途上国では民営化しています。これは特定できるという、本来、民間でやるべきものであって、プロジェクトの大きさや何からとかと、わかりにくいというか、舌足らずのような気がする、という感じでございます。

〔 G委員 〕 2、3のコメントがあります。まず、トーンとか問題意識についてですけれども、私は、前々からの発言でおわかりいただけるように、公的金融部門の改革が日本の改革全体的なプロセスにとっては一番大きな問題だと認識しております。これを改革するのが、日本の将来にとっては急務であるというふうに私は認識しているのです。その観点から言いますと、特に、公的金融についての要旨ですけれども、全体のトーンとしては、やや呑気な感じというのでしょうか、もう一つ危機感が伝わってこないような、悪く言えば、ちょっと公的金融システムの弁解的な解釈がにじみ出ているような感じがしてならなかったのです。

私の基本認識としては、まずどういう問題があるのか。公的金融分野は、まず大きすぎる、肥大化している、これが基本認識です。資料の2ページには、いろいろな国際比較の数字が出ているのですけれども、ちょっと異論をとなえたいところですが、私の解釈では、日本の公的金融システムというのは、郵貯プラス簡保プラス国民年金、この3つを足しますと資金運用部は、たしか413兆円ぐらいです。簡保が100兆円以上です。足して調整すれば、本当の広い意味における公的資金の額が510兆円です。ここで公的金融としてとらえているのは、財投というより狭い定義なわけです。これが第1点です。ですから、この数字が示している以上に、公的金融部分が肥大化しているというのが第1点です。

第2点は、日本の金融市場におけるこの割合がどんどん増大してきているということです。これも危機的なことだと思います。

私はやや違う定義をしているのですけれども、よくビッグバンの話では、1,200兆円の金融資産という数字が出るわけですけれども、これを分母としまして、分子には簡保プラス資金運用部の合計をとりますと、この割合が実は今、4割ぐらいまできているということです。いろいろな定義の仕方があるでしょうけれども、これが4割まできている。バブルの崩壊が始まった時点では、これが3割だったのです。ですから、バブルの崩壊の過程の中で、1割ぐらい、10%ぐらい上がってきている。これは、恐らくほっておくとますます上がっていくだろう、というふうに私は心配しているのです。

第3点は、そもそもこういうシステム自体が時代に合わなくなってきている。それこそ、経済企画庁がこのようないろいろな審議会を通してやろうとしている改革の動きにかなり反する、という厳しい認識を持っているわけです。ですから、こういう認識も報告書の中で、私の極端な立場までいかなくても、もう少し厳しい問題としてクローズアップされてきてもいいのではないかという気がします。

その観点で言うと、読んでいると、トーンとしては、市場の失敗があって、公的金融を正当化できる。住宅金融にしても、中小企業の金融にしても、あるいは基幹産業の育成にしても、いろいろな分野で正当化できるというトーンがありすぎる。市場の失敗といっても政府の失敗とかいうものがありまして、市場の失敗があるから何でも正当化できるような問題ではない、というふうにちょっと警告を、生意気ながらしたいと思います。

最後になりますけれども、自主運用のところですけれども、F委員から、将来の改革はどういうふうになるのかという説明がございましたけれども、流れとしては、これから財投を改革して、資産運用のところを自主運用にして、財投の資金調達の分野を財投債とか財投機関債とかいろいろな形でやれば問題が解決するのではないか、そういうような考え方があろうかと思うのですけれども、これもちょっと危険です。

危険性として2つ挙げたいと思うのですが、1つは、結局は、自主運用の大部分が財投機関債あるいは財投債の購入になるのではないか。つまり、形だけを変えて、実態はあまり変わらないという危険性が1つあるわけです。

もう一つは、そうではなくて、郵貯とか、簡保とか、徹底的な自主運用をするようになるという可能性もないわけでもないのですけれども、これでも、非常にいろいろな危険性をはらんでいると思います。つまり、言ってみれば、官僚の機構が公社とか、いろいろな形で改革するでしょうけれども、官僚機構がジャイアントファンドマネージャーになるという危険性があるわけです。そんな自主運用みたいなものをやるのであれば、もう少し縮小する方向で改革をやってから、自主運用を実施した方がいいのではないかという気がしてならないわけでございます。

ちょっと細かいところまで話がとんでしまいましたけれども、非常に重要な問題として、もしかすると我々が今審議している一番重要な問題として、公的金融の改革があるというふうに認識しているところでございます。

〔 C委員 〕 ただいまのご説明、大変うまくまとまっているような感じがするのですけれども、ただ、論点2のところ、「公的金融の効率化をどのように図るべきか」というところで、結論としては、市場原理に沿った形で効率化していくべきだ、そういうようなニュアンスで書いてあると思うのです。今の流行は大体そういう方向に流れていると思うのですけれども、大筋はそれでよろしいと思うのですけれども、ただ、画一的に規制できない分野もあるのではないかという気がするのです。だから、そういう分野をどう考えるかということ。

今、住宅とか、中小企業とか、社会資本の問題とか挙げられていますけれども、ある程度こういったところはコストの安い公的資金が入っていくとなると、私はある意味では当然だと思うのですけれども、入口論は別にして、ただ、長期的というか、日本の産業の将来とかいろいろなことを考えてみますと、私が問題にするのは、ベンチャー企業です。ベンチャー企業というのは非常にリスキーです。だから、普通金融機関ではお金を貸さない。公的金融は、なかなか手続その他がうるさくて貸せない。開発銀行あたりが、そういうところに踏み込んでやれば本当はいいのですけれども、そう簡単に、貸し倒れになるようなものにみすみす貸すわけにいかないということで、それは抑制的に働く。それは、当然だと思うのです。そういうベンチャーでも、将来性のある、成長性のあるベンチャーはあると思うのです。そこの見分けは大事ですけれども、そういったところに、場合によっては、「貸し倒れでもいいよ、税制上その他の方法で救済するよ」というようなことを何か配慮をしながら、そういうベンチャーの育成ということを公的金融の面から考えていく。これは小さな分野かもしれません、大きな流れとは違いますけれども、そういうことを1つこの中に、1行でも何か入れてもらえれば、画竜点睛をこれが欠いているわけではありませんけれども、画竜に点が入るということで、大変立派なものになるのではないかという感じでございます。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。

ほかにいかがでございましょうか。

さっきのG委員のご指摘は非常に重要な点であろうと思いますので、今後よく検討の材料にさせていただきたいと思います。

それでは、まだいろいろご意見があろうかと思いますけれども、時間の関係もございますので、第2の議題はここまでとさせていただきますが、特に、第3の論点の郵貯の役割、郵貯の問題につきましては、極めて政治的な問題でもあり、経済審議会という立場もございます。とはいえ議論は議論としてなおする必要はあると思います。これからも何かご議論がありましたら、どうぞご意見を事務局の方へ寄せていただきたいと思います。

続きまして、第3の議題は「経済主体役割部会報告書スケルトン(案)について」でございます。前回、第7回の部会では、事務局で用意いたしました「とりまとめの方向性」につきまして忌憚のないご意見をいただきました。それらのご意見を踏まえまして、報告書の作成を念頭に置きつつ、事務局でスケルトン(案)として作成しましたのが、お手元の資料4でございます。それでは事務局より簡単にご説明をお願いいたします。

〔 事務局 〕 それでは、資料4をご覧ください。前回のご議論を踏まえまして、少し大きく書き直させていただきました。書き直した主なところだけをご説明申し上げます。

1ページの「ねらい」のところは、前回と同じでございます。

1の「現行の経済社会の問題点」ということで、現行経済システムの特質というものを記載しまして、その上で、最近の潮流変化と日本のシステムが不適合であるということを、2ページで述べております。その上で、どういったところがそれぞれの主体で不適合なのかということで、企業、個人、政府という形でそれぞれの問題点を指摘をいたしました。そのように流れをよくしたところでございます。

その上で、3ページでは、そうした問題点を解決するに当たってどのような新しいシステムを作るべきかということで、2として「目標とする経済社会と各経済主体のあり方」ということで、もう一度整理をさせていただきました。新しい日本的なシステムの中で蓄積されてきた有形無形の資産を最大限活用しうるようなシステムを作ることによって、国際的にも受け入れられる自律的かつ安定的な奥行きのある経済社会を構築する、ということで結論をしております。

そうした社会を作るために、4ページにありますように、その新しい社会の特質をいくつか挙げておりまして、その特質に沿った形で各経済主体がどのような役割をするかということで、4ページ以下、企業、個人、政府、NPOと挙げております。

それで、それぞれの役割に沿った政策をどのように行うかということで、3ページ以下、その提言をまとめたところでございます。

前回ご議論をいただきまして特に問題になりましたのは、8ページにございます、「自律した個人による投資・消費活動を支える環境整備」というところの、401(K)プランというのが、最初は、市場を活性化するというようなことで位置づけられておりますが、その位置づけを、ご議論に従いまして変え、「自律した個人による投資・消費活動を支える環境整備」として、こういった確定拠出型年金を導入したらどうかという位置づけに変えております。そういった年金が市場機能の活性化にも役に立つということで書いたところでございます。

大きな論点の整理は以上のとおりでございます。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。

ただいま説明のありました「報告書スケルトン(案)」に対するご意見につきましては、もう時間が残り少なくなりましたけれども、残りの時間の許す限りご意見を伺い、なお、足りないところは、事務局まで書面あるいはファックス等でご連絡をいただければありがたいと思います。

ご意見がございましたらどうぞ。

〔 H委員 〕 4ページです。個人の役割のところは、ここでは「働く者」としてというのと、「消費者、投資家」という、この2つだけ挙がっていて、後ろの方では住民参加という話が入っているのですが、前の方でも、その辺のことを少し書いておいた方がいいという気がいたします。

具体的には、例えば環境問題にしても、総論賛成だけれども各論は反対だとか、あらゆるところでそういうことで欧米と違う行動が出ているはずでございます、詳しく申し上げませんけれども。

それから、漁業補償の問題とか、先ほどの民民規制のときにその辺があまりありませんでしたけれども、明らかに、インターナショナルにみたらあまり合理的ではないと思うことがたくさんございます。

そんなことで、住民という言い方がいいのか、市民という言い方がいいのかわかりませんが、そういう立場のキーワードを少し入れていただければと思います。

以上です。

〔 G委員 〕 細かい点ですけれども、ガバナンスのところでは、問題をよくとらえていらっしゃると思うのですけれども、「バブル発生から崩壊に至る過程は、1・過剰な投資に走った企業、2・それらの企業に資金を供給し続けたメインバンクの双方」となっているのですけれども、3番目を入れて、金融機関に十分なガバナンスのチェック機能を果たさなかった金融当局、というふうに付け加えると、三段式の日本のコーポレートガバナンスシステムの実態と問題点、それから、後からどういうふうにビッグバンとかガバナンスの改革につながっていくのかという全体像が浮かんでくるのではないかという気がいたします。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。金融当局について、3番目に言うとそういうことですね。

ほかにいかがでございましょうか。

〔 部会長代理 〕 最初のころは、政府があって、企業があって、個人があったというような気がするのです。要するに、企業も、個人も、政府の規制とか制度の下でいろいろなものが行われることは、ある程度やむを得ないことなのですが、企業の行動をあれこれというよりも、政府の役割みたいなことを定義する方が先にあって、それから企業というふうになった方が良いのではないか。そんなふうに初めはスタートしたのではないかという気がするのですが、これはずいぶん変わったわけなのですか。

〔 部会長 〕 政府が3番目にきたという理由ですか。

私の理解では、これからは官から民へと、民間が中心である、そういう意味で過去の責任においては、今G委員のお話のように、政府の責任というのは非常に判断ミスというのはあったと思いますけれども、今後の経済主体の役割の中では、民間主体ということで、企業、個人というのが非常に大きなウェイトを占める。そういう意味で、これを2つ前に出して、政府は補完的というようなことで3番目に持ってきた。こういうような理解をしております。

ほかにいかがでございましょうか。

〔 J委員 〕 1つ感想を申し上げたいのですけれども、細かいことですが、3ページと4ページに英語が出てきます。Globally Acceptable Society 、Role-playable という言葉が、私はちょっと引っかかるのです。G委員はどうお考えか知りませんけれども、私は、アメリカの英語の感覚からいいますと、よく意味がわからないということなのです。ですから、これは日本的な感覚の漠然とした概念を表現されているので、あまり英語にされない方が、むしろ誤解を招かないのではないかと考えるのです。

というのは、先ほどの雇用・労働ワーキング・グループの報告書にも質問があったのですが、各論として、例えば、外国人の日本における雇用を取り上げることも大切だと思います。それはいわゆるブルーカラーでも、ホワイトカラーでも、総合職あるいはプロフェッショナルでも、これからの日本の労働市場における外国人の役割です。これは日本国内における外国人、あるいは日本企業が外国で活動している場合の現地の日本国籍以外の人の役割、そういう具体的な各論の面でグローバルな視点をむしろ反映していただきたいと私は個人的に考えています。

〔 部会長 〕 ネイティブから非常に重要なご指摘をいただきましてありがとうございました。

〔 K委員 〕 5ページのNPOについての項目ですけれども、「NPOは、市民の自主的な」に始まりまして、「既存の各経済主体の果たしうる機能を強化する役割が期待される」というのが、簡単に日本語の問題ですが、「既存の」というふうに既にあることと「果たしうる」という将来のところがちょっと透明ではなくて、既存の各経済主体が現在果たしきれなくなっている機能を強化するというような感じではないかと思います。単なる日本語の問題かもしれませんけれども。

〔 L委員 〕 実は、もっと前に議論すべきだったかと反省しているのです。7ページのところで、「起業と退出がしやすいシステムの構築」とございます。この中で、「時代に合わなくなった企業が退出」してというようなことが書いてありますけれども、実際、これは両面あるわけです。例えば、退出を容易にすれば、無責任経営の結果、債権者に迷惑をかけるということも片一方であるわけです。その意味では、このように「やり直しがきくように、極力迅速に」云々となると、かなり無責任なベンチャー経営とか企業経営ということも当然招来する。となると、この場合には、もしそう言うのであれば、片一方では債権者保護ももっときちんとするとか、そういう片一方で押さえをしておかないと、私は、経済システムとして債権者が保護されない、そういった一方的な無責任な企業経営が行われるということもあるかと思いまして、私は、前に議論したいと思って、しなかったのがいけなかったのですけれども、そういうことの観点も入れるべきではないかと思います。

〔 部会長 〕 M委員、何かご意見がございますか。

〔 M委員 〕 大体いいのではないかと思うのですけれども、ただ、コーポレート・ガバナンスの関連なのだけれども、経営者のあり方とか、育て方とか、その辺はなくてもいいかなと。今、ちょっとそういうことを考えていましたけれども、基本的には私は結構だと思います。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。

まだ、いろいろご意見があろうかと思いますが、先ほど申し上げましたように、時間の関係もございますので、ここでひとまず打ち切らせていただきまして、追加のご意見につきましては、事務局までご連絡をいただきたいと思います。

事務局には、本日いただいたご意見、及び後日いただくご意見を踏まえまして、必要な修正を行った上で、次回、第9回の部会に修正案を提出し、さらにご審議していただくようお願いしたいと思います。

最後に、次回の日程につきまして事務局よりご説明をお願いします。

〔 事務局 〕 次回第9回の会合につきましては、4月24日金曜日の午後2時から開催させていただきますので、どうぞまたよろしくお願いいたします。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。

それでは、第8回の経済主体役割部会の審議は以上といたしたいと存じます。本日は長時間のご審議、熱心に、誠にありがとうございました。また次回もよろしくお願いいたします。

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