第3回スペースとゆとり研究会議事概要

1.日時:

平成10年3月16日(月)12:00~14:00

2.場所:

経済企画庁729会議室

3.出席者:

樋口廣太郎座長、奥谷禮子、堺屋太一、坂本春生、玉田樹、西藤冲、クリスチャン・ポラック、松田義幸の各委員。
尾身経済企画庁長官、栗本政務次官、林官房長、中名生総合計画局長 他。

4.議題:

(1)「ライフスタイルの変化に対応したスペースの確保」について

(2)「高齢者向けのマーケティングとスペースの創造」について

5.審議内容:

大臣挨拶による開会の後、中名生総合計画局長より次回研究会のテーマ、本日の議題に関連する参考統計等につき紹介。

議題に移り、まず(1)について、1名の委員より以下のとおり意見発表があった。

○ 生活、人生、生命空間としてライフスペースの考え方を提唱したい。

○ ライフスペースのコンセプトとして、1.日常生活行動空間、2.情報伝達・コミュニケーション手段の範囲、3.交通手段の範囲と時間距離、4.社会的活動領域、5.人生選択の範囲、6.意思決定への参加の機会、7.生命生存空間、の7つに分類整理できる。

○ ライフスペースの拡大とは、ライフスペースの量的水準と質的水準が向上し、テイストが豊かになり、その結果個人の選択肢と選択機会が増大することと、ライフスペースに関する活用のシステムが充実し、その結果個人が容易かつ迅速にこれをエンジョイできるようになることの2つを意味する。

○ 今後は、所得水準の向上、西欧化、余暇時間の増大、車社会、国際化、情報化、長寿化、少子化、女性の社会進出等、ライフスタイルの変化に対応したスペースの拡大を図るために多くの具体的課題に取り組むことが必要。

引き続き(2)について別の1名の委員より以下のとおり意見発表があった。

○ 高齢者を取り巻く意識変化として、1.老後の面倒は自分で見たい、2.しかし社会保障制度などに対する不安が増大、3.60歳以降も仕事を続けたい、4.住宅のリフォームと自然豊かな地域への居住を希望、5.地域コミュニティを頼りにし趣味も多彩化、が挙げられる。

○ 高齢者を取り巻くニーズを内需拡大に顕在化させるための条件としては、1.自助努力による仕事(趣味)開拓環境の整備、2.多様な住まい方のための環境整備、3.社会資本のマネジメント変革、が有効。具体的には、1については兼業社会構築、個人投資減税、NPO商店街、2については相続的譲渡制度、兼居社会構築、クラインガルテンの復興、3についてはオペレータの変更、社会技術の導入などが求められる。

○ 以上をまとめると、時短による自由時間の量的増大、リタイヤ高齢者の増大、多様化した市民生活に対応するため、働き方と働く場の多様性=兼業、住まい方の多様性=兼居、を行える社会の構築を目指すべき。

以上を受けて各委員からの主な意見は以下のとおり。

○ 20年以上前から不動産の「親子売買制度」を日本でも普及すべきと言っているのに実現していない。小売店、農家などで親が60歳になったときに40年賦で子に資産を売り、かりに80歳で親が亡くなれば残っている20年分のみが相続税の対象となる、というような制度であり、米国やドイツで普及している。公共施設の活用については、市民の利用請求に対し禁止が例外的な欧米の例を見習うべき。日本は逆に許可するのに大変な理由がいる。これにより各種のイベントなどが可能になれば金のかからない景気振興策になろう。日本では、河川敷を縦に通る道路は現在認めないということになっている。河川周縁スペースの活用についても制度を見直す必要がある。

○ 東京の銀座を土日のみ生活文化国際博覧会場にしてみてはどうか。そうした経験を通じてライフスタイルと価値観の開発を行い、その学習効果を地方の銀座に広げていけばよい。イベントが学習機会として役立った例には長野オリンピックとパラリンピックの関係がある。

○ 雇用保険制度が長期正社員に対応するための制度一本となっていて、給料が月によって変動する派遣労働者やパートタイマーのニーズに対応していない。退職し失業保険の給付を受けようとするときも、会社都合か自主都合かで大きな差があり、退職して大学で学び直そうという人が増えているのに対応できていない。

○ 相続税が最大の問題と考えている。フランスでは親子売買の制度は30年前からある。また複数の世帯による別荘共有の制度も普及している。こうした制度の普及には大統領制のような直接民主主義の意義も大。

○ 第4次全総にあったマルチハビテーションの概念を復活させてほしい。

以上の討議までで定刻となり、閉会。

6.今後のスケジュール

次回第4回スペースとゆとり研究会は3月31日の午後6時から8時に開催する予定。

以上

なお、本議事概要は、速報のため、事後修正の可能性がある。

(連絡先)

経済企画庁総合計画局計画課経済構造調整推進室

(担当)福島、押田

TEL03-3581-0783(直通)