第2回スペース倍増研究会議事概要

1.日時:

平成10年2月26日(木)18:00~20:00

2.場所:

経済企画庁729会議室

3.出席者:

樋口廣太郎座長、堺屋太一、坂本春生、玉田樹、西藤冲、藤川鉄馬、クリスチャン・ポラック、松田義幸の各委員。
尾身経済企画庁長官、栗本政務次官、糠谷事務次官、林官房長、中名生総合計画局長  他。

4.議題:

(1)今後の運営と研究会の名称について

(2)「土地の利用、流通を妨げる障害の除去」について

5.審議内容:

開会後、前回欠席だった委員の紹介。続いて中名生総合計画局長より、第1回研究会における論点整理及び本日の議題に関連する参考統計等につき紹介。論点整理に関し、複数の委員より日本の文化を評価するという視点についても必要との意見が出された。

議題に移り、まず(1)について、前回研究会での議論などを踏まえ、今後研究会の名称を「スペースとゆとり研究会」とすることにつき了承された。

続いて議題(2)について、2名の委員より意見発表があった。

最初の委員からは以下のとおり意見発表があった。

○ 「スペース」の問題は、大都市についての問題と地方についての問題に大きく二分される。

○ 大都市については、ゆとりある生活実現のため良質で安価なスペースの供給を可能とすることがテーマ。東京では優良な集合住宅の価格が諸外国の都市の3~5倍程度と高く多くの人が購入できない点が問題。これに対応するために、土地の流動化促進・供給拡大、容積率の引き上げ、プロジェクトの誘導などが必要。

○ 地方については、自然環境とゆとりあるスペースを享受できる魅力的な職場を雇用機会として創出することがテーマ。テレワークなどによりオフィス分散化を図ることが決め手であり、実際に企業トップの間で意識が見られつつある。Uターン、Jターン、Iターンについても希望は増えており支援策が必要。

これについて他の委員からの主な意見は以下のとおり。

○優良な住宅と一口にいうが「優良」の概念が捉えにくい。価格の高い住宅イコール優良であるとは限らない。広いところに住みたいといいながら東京を離れられないという建前と本音の問題もある。オフィスについても多くの職業において首都圏あるいは東京の一部地域に関係者が集中している現象を見ると簡単に分散化はできない。Uターン等も前から言われているが、経済社会的背景を基本的に考え直す必要がある。

(上の意見に対し発表委員より以下のとおり回答)

○一般に得られる統計などで優良な値段の高い住宅というのは、便利な場所にあるということによるものであって、住宅の質自体によるものでない点は指摘のとおり。地方については原因に情報基盤整備が進んでいないことがあるのは間違いないと考える。

○企業の立場からは、オフィス分散化及びエリア採用をしても、社員のローテーションが円滑に進まないという問題がある。住みやすい住宅というのは場所でなく質の問題。例えば、天井が高い、収納スペースが広い、玄関スペースが広いなど。

○周辺交通の便利さ、緑、光、散歩スペースも重要。

○土地の流動化を妨げる要因の一つとして担保設定などに係る司法制度の問題点も多い。またオフィススペース需要はますます増大が見込まれるので対応策が必要。

○テレワークの発達などにより純粋な事務所としてのオフィススペースの需要はむしろ減少していくのではないか。固定的な事務所面積を増やすことよりも、様々な場所で仕事が可能となるようなオフィス需要が出てくるのでは。

他の1名の委員からは以下のとおり意見発表があった。

○ 日本の法制は「土地は資産である」との前提で作られている。「土地は資源である」との発想に立ち返り、利用の促進と流通の利便な型にしなければならない。

○ 土地流通の情報不足と不透明性を解決するため、地域別に不動産取引所を設け、土地の売り物、買い希望、取引成立条件の公示を行う。

○ 住宅地、商用地の土地整形政策を推進するため、地形整理を目的とした土地交換を促すよう、法的整備を行う。

○ 建築物の償却年限を10年とする「10年建築」を創設し土地の有効活用を図る。

○ 腫線制限・用途別線引きの廃止、土地の道路への寄付制度、高齢者公園の創設、土地利用条件の緩和・明文化等土地行政の透明化を図る。

これについての他の委員からの主な意見は以下のとおり。

○住宅の売買・賃貸に関するコンピューター情報という点では、既に不動産業者の中に流布しており、空間としては取引所は存在しているのではないか。

(上の意見に対し発表委員より以下のとおり回答)

○実態は、売り手情報を得た不動産業者は、買い手探しに3カ月、仲間うちのみへの情報提供で3カ月、その情報をプールし、それでも買い手がみつからなかった情報のみをコンピューターにのせる。

○大きなビルや土地の売却情報は、通常、市場に出てくる前に処理される。これには、たとえば企業が、本社ビルを売却するという情報は従業員や取引先に悪影響を及ぼすかもしれないという不安を持つ、といった背景がある。賃貸料についても、他に言わないでくれという雰囲気がテナントにある。こうしたことを考えると、取引情報を取引所に提供し明らかにしろと強制できるのかどうか。税制というものは、本来、すべての人に公平であるべき。税制に情報提供のためのインセンティブを与える役割をどの程度まで課すのか。

(上の意見に対し発表委員より以下のとおり回答)

○取引所に情報を提供したくない人は、提供しなくてよい。取引所を通せば、税制の恩典を受けられるというだけの話し。

○土地は資源であるという話であるが、農地は資産になっている。農民以外は農業をできない。東京の若者で、北海道で農業をしたいという人がたくさんいるができない。山手線の内側の1.5倍にあたる面積の工業団地が北海道にあるが、少しずつ切り売りされている状態。いいアイデアであの広い土地を有効に活用できないか。

(上の意見に対し発表委員より以下のとおり回答)

○農業のために開発したから農地に使う、工業団地のために開発したら工業にという、使用目的別の利用は、もうやめたほうがよい。

○土地は資産から資源へという発想転換をどう考えるか。この転換を行うと、土地に関係する省庁の政策はどのように変わるのか。

以上の質疑までで定刻となり、閉会。

6.今後のスケジュール

次回第3回スペースとゆとり研究会(改称後名称)は3月16日の午後0時から2時に開催する予定。

以上

なお、本議事概要は、速報のため、事後修正の可能性がある。

(連絡先)経済企画庁総合計画局計画課経済構造調整推進室

(担当)福島、押田

TEL 03-3581-0783(直通)