第1回スペース倍増研究会議事概要

1.日時:

平成10年2月5日(木)18:00~20:00

2.場所:

経済企画庁庁議室(573号室)

3.出席者:

樋口廣太郎座長、伊藤滋、奥谷禮子、叶芳和、堺屋太一、坂本春生、玉田樹、藤川鉄馬、ポラック・クリスチャン、松田義幸の各委員。
尾身経済企画庁長官、糠谷事務次官、林官房長、中名生総合計画局長 他。

4.議題:

スペース倍増研究会の進め方について

5.審議内容:

開会に当たり尾身経済企画庁長官よりスペース倍増研究会の設置について挨拶の後、座長及び委員の紹介。続いて中名生総合計画局長より生活に関連するスペース、経済活動に関連するスペースなどについて既存統計等より概況説明の後、討議。

委員からの主な意見は以下のとおり。

〇日本は、土地が高く人件費が安いという文化を前提に、スペースを節約し、人を雇うという形態を続けてきたが、この考え方を改める時期に来ている。商店街の再活性化が必要。閉店した場所を再利用しようとする事業への助成、土地をまとめる際の税法等での支援等、障害を取り除く必要がある。少子・高齢化に対応し、65歳以上の人々のマーケティングが重要。高齢者時代にふさわしいスペースの利用(高齢者公園等)を考える。中山間地のスペース過剰にどう対処するか。流通・情報関連の環境が整備されないと人は住めない。土地の利用・流通を妨げる障害を取り除く必要がある。登記所、税務署へいくと大量の書類を要求される。

〇研究会のネーミングとして「ゆとり誘導研究会」のような方が良いのではないか。住宅スペースは、税制、借地・借家法等多岐にわたる問題に関連する。スペースに対する人々の認識は地方と都市でかなり異なる。研究会に地方の人を入れてはどうか。

〇スペースは大都市の問題とわりきっている。容積率という言葉をやめたらどうか。市長、区長が容積率の廃止等について問題提起を行い、市民、区民がいらないということなら相当思い切った措置をとってはどうか。大都市に公共投資を集中的に行うべき。高齢者が住んでいる大都市の住宅密集地域において新たな街づくりを行うための土地の仕切屋のような機能が必要。

〇定期借家権制度を導入することによって、明日にでも住宅着工ブームが起きる。これによって公共事業も減税もいらない。

〇中央区のマンションの家賃は非常に高いが、周辺に空き地がたくさんある。土地がうまく利用されていない。相続税が下がれば家を子供に譲れる。非常に狭く、天井も低いマンションがたくさん作られているのは問題。

〇スペースの中に時間の概念をいれるべき。人生80年、70万時間の質をいかに高めるか、人生のタイムバジェットという観点から、ライフスタイルの視点が必要。少子化の中で、大学は今後社会人を相手にしていく。公開講座にして、先生の価値がわかるといった形で、大学に市場原理を導入すべき。

〇住宅やオフィスのスペースが広がることによって、人々の生活態度が変化する可能性がある。公的なレジャー・文化施設はもういらない。サービス提供者が固定観念でサービスを提供しているケースがみられる(百貨店のケース)。東京は日本の中のごく例外的なケース。東京に住んでいる人だけでは、ごく一部の人の見方になってしまう。

〇現在の若い人の中には国の年金はもらえない、年金の掛け金を払うより自分で投資した方がよいという考えがかなり広がっている。国には依存していられないということになると、住むところは外国でもよいということになる。スペースが極限まで広がる。団塊の世代は所得の目減りを防ぐために、地方に移動するポテンシャルが高まる。昭和58年の国民生活白書で行った大都市と地方の生活格差論争では、地方の方が豊かという結果が出た。企業が企業内のみで製品を作る形態から、コミュニティとの関係を重視する形態へ移る動きがある。スモール・オフィスでの労働、NPOの活動、生涯教育に対する投資減税によって、市民活動の柔軟性が増大する。

〇「スペース倍増」は、「豊かな生活空間の創造」と理解したい。人のライフスタイルは急激に変わっている。モノを買えというなら、ライフスタイルの変化に応じて必要となるものを作らなければならない。オフィス・道路・家という観点ではなく、ライフスタイルという観点から攻めてはどうか。同じ面積・容積であっても利用可能性を高めることによって豊かな生活空間が拡がる。高齢者や身障者にやさしい家の中の設備、街づくりの工夫などが重要。強制ではなく、自由に街に出て行けるように。オフィスも一種の楽しみの場として捉えたい。例えば北海道の場合、東京には行きやすくとも道内や東北地方などへの移動は便利といえず、地方の人の行動スペースは必ずしも豊かでない。

〇これからは土地は資産ではなく、資源と捉えるべき。土地を最も上手に使える人に土地が配分されるようにすべき。労働の再生産の場である住居と職場を完全に分離するという考え方は過去の社会主義的発想の産物。都市計画の線引き思想によって東京の土地が必ずしも有効に使われていない。統計によれば、公会堂や体育館は映画館などよりもはるかにたくさんあるにもかかわらず、規制などの関係で魅力的な催しがなかったり、画一的になってしまっている。地方については、39の県において県内を超える外への情報発信がゼロという状態にある。「楽しい国づくり」という目標を置いて、それに至るための制度手続き面の改革は何か、というところまで遡ってはどうか。

そこで議論のテーマをしぼる提案をさせて頂きたい。テーマの一つは「土地の流動性・利用性を阻害している要因の解明と対応」。二つは古くて新しいテーマであるが「住宅」。専門家を招いてどうすれば安く、広くなるか聴いてみるのも一案。三つは商店街の振興。四つは公共施設の活性化のための知恵しぼり。五つ目として過疎地域・地方の情報発信力の向上。

委員からの発言が一巡したところで定刻を迎え、閉会に当たって樋口座長より、事務局において各委員の発言を踏まえて次回以降の研究会のための論点整理を行うよう指示があった。

6.今後のスケジュール

次回第2回スペース倍増研究会は2月26日の午後6時から8時に開催する予定。

以上

なお、本議事概要は、速報のため、事後修正の可能性がある。

(連絡先)

経済企画庁総合計画局計画課経済構造調整推進室

(担当)福島、押田

TEL 03-3581-0783(直通)