第四回個人消費動向把握手法改善のための研究会議事要旨

1.日時:

平成12年6月6日(火)18:30~20:30

2.場所:

経済企画庁特別会議室(436会議室)

3.出席者:

(研究会)

竹内啓座長、池本美香委員、中村洋一委員、早川英男委員、牧厚志委員、水谷研治委員、美添泰人委員

(事務局)

小峰調査局長、中城調査局審議官、大守内国調査第一課長、妹尾景気統計調査課長、浜田国民経済計算部長、嶋田国民経済計算部企画調査課長、丸山国民経済計算部国民支出課長、岡本総務庁消費統計課長、會田総務庁管理企画室長

4.主要議題:

  1. (1)統計学的な観点からみた消費関連統計の考察
  2. (2)新たな消費調査の提案

5.議事内容:

以下のとおり

(1)統計学的な観点からみた消費関連統計の考察

  1)A委員より説明

  • 家計調査が毎月勤労統計等の統計に比較して振れが大きくなるのは、毎月勤労統計が事業所に依頼するものであり、ある程度習熟した担当者が回答するため、企業の特性が出る傾向があるので似たような結果となるのに対し、家計調査は個人に依頼するため、多様な特性を持った結果となるためと考えられる。家計という多様な特性を持つ母数の中から一定の安定した結果を取り出すことはもともと困難である。家計調査の不安定さはデータの特性と考えるべき。
  • 耐久消費財・半耐久消費財における個人消費と法人需要の区別は、消費動向把握のためには重要であり、今後の課題である。
  • 季節調整法についてはX11、X12ARIMAについて、ECM(誤差修正モデル)を用いて検証してみると双方とも、季節性を全て排除できないという問題があり、必ずしも新しいものがよいというわけではない。
  • 家計を捉えるという観点から、頻度の低い高額購入品目について調査を行う場合でも、10万近い標本であれば、安定した結果が得られると考えられる。
  • QEは2次統計であるのだから推定手法を工夫することにより、より精度の高い値を出すことを考えた方が良いのではないか。

  2)総務庁消費統計課長より説明

  • 季節調整の一環としてX12ARIMAにより曜日調整を試みても、それほど安定したパフォーマンスは得られない。
  • 消費支出の多い世帯を上位又は下位から数%取り除いて結果の振れを小さくするトリム法を使用してみると、標本誤差の減少には大きな効果が認められる。
  • 一方、高額費目を除いた結果は、分散ベースの標本誤差率で見ると、それほど小さくならないかもしれないが、尖度では改善がみられ、データの振れをかなり抑える効果が期待できる。
  • トリム平均により除外される世帯の支出を補完することは困難であろうが、高額費目については他の情報で補完することが有効な方法と考えられる。

(2)新たな消費調査の提案

  経済企画庁内国調査第一課長より説明。

  • これまでの議論を踏まえて幾つか議論の叩き台となるような案を複数用意した。第一に家計支出の中でも振れが比較的大きい高額な支出品目について大標本調査することが考えられる。
  • 第二に家計調査より簡略化して、収入や特定項目の支出を回答する方法がありうる。
  • 高額消費に関し、全数調査に近い方法を目指し、不特定多数に回答してもらう方法も考えてみたが、技術的問題が残る。
  • また、単身同居者に対し重点的に簡易な調査を行うことも考えられる。
  • さらに、供給側からは、高額販売を費目ごとに補足する調査や、法人・個人別の販売シェアを調査することも考えられる。
  • 以上を踏まえ、検討課題が説明された。サンプルサイズ、調査方式、サンプルの入れ替え方法、トリム集計の方法、金額で限定するか費目で限定するかという問題、金融取引・移転取引の識別の問題、同居単身者の状況の把握、新手法の活用、報告者メリットの付加等の論点が指摘された。
  • 鉱工業生産の季節調整手法について、X12ARIMAが導入されたが、曜日要因等を軽減するのに効果があると考えられる。

(3)自由討議

  大要、以下のような議論が行われた。

  • 高額消費の実態を知ることは景気動向を把握する観点からも望ましい。
  • 新調査案は詳細の詰めが必要。
  • サンプル数の議論については、10万というサンプル数がなぜ必要なのか。現行の8000サンプルではなぜ問題があるのか理由を聞きたい。実際に大規模調査を行う場合、実施上、予算上、様々な困難が多い。
  • 収入・支出の簡易な調査と高額支出調査を併用した調査が一つのイメージとなろう。
  • 新調査の開始時期が遅れた場合、新調査の結果を検証する必要もあることから、それをQE推計等に実用化するのにはさらに時間がかかる。
  • 総額一本を回答させる場合、どうしても思い出し調査になってしまうため、正確性が犠牲になる怖れがある。調査としては高額支出のみを聞いたほうがよいのではないか。その方が、現行の家計調査を補完するという観点からは望ましい。
  • 世帯内でこれまで把握困難であった単身同居者の収入・所得を、調査する試みは重要である。

―  以上  ―

[問い合わせ先]経済企画庁調査局内国調査第一課  指標班

TEL  03-3581-9517