第三回個人消費動向把握手法改善のための研究会議事要旨

1.日時:

平成12年6月2日(金)18:30~20:30

2.場所:

経済企画庁特別会議室(436会議室)

3.出席者

(研究会)

竹内啓座長、池本美香委員、井出満委員、早川英男委員、舟岡史雄委員、牧厚志委員、水谷研治委員

(事務局)

小峰調査局長、中城調査局審議官、大守内国調査第一課長、妹尾景気統計調査課長、浜田国民経済計算部長、嶋田国民経済計算部企画調査課長、丸山国民経済計算部国民支出課長、山下経済研究所総括主任研究官、岡本総務庁消費統計課長、會田総務庁管理企画室長

(事務局招待者)

畑通商産業省調査統計部商工統計課長

4.議題

  1. (1)供給側における消費統計・調査の現状
  2. (2)新技術を用いた調査手法の例
  3. (3)新たな消費調査の可能性

5.議事内容

以下の通り

(1)供給側における消費統計・調査の現状

  通商産業省調査統計部商工統計課長より説明

  • 通商産業省では、指定統計第64号として、商業を営む事業所及び企業の事業活動の動向を明らかにするために、商業動態統計調査を実施している。これは当初、百貨店販売統計(昭和25年)、商業動態統計調査(昭和28年)として開始されたものであり、平成11年度にはコンビニエンス・ストア統計を開始した。
  • 以下、調査対象の選定方法、公表内容、名目値としてでる商業販売統計を実質化したものとして第3次産業活動指数があることなどを説明。

(2)新技術を用いた調査手法の例

  経済企画庁内国調査第一課長より説明。

  • 経済企画庁では、これまでの統計調査ではあまり使用してこなかったパソコン、テレビ、電話といった様々な情報ツールをもちいて、新たな調査手法の検討を行っている。これらの検討により、統計調査の回答者負担の軽減、速報化を目指している。
  • 電話自動応答システムを利用した景気ウォッチャー調査、パソコン通信を利用した企業ヒアリングシステム、テレビによる消費動向調査の試行等の実施の仕組み、状況について概説。
  • ウォッチャー調査は、既に実用化しており、速報性や実感に関するコメントの興味深さ等から成功した調査の一例といえる。

(3)新たな消費調査の可能性

  1)A委員からの説明

  • 家計調査をみると、高額な支出品目は、購入頻度が少なく標準誤差が大きい。これを縮小するために、大標本による高額支出調査を実施することを提案したい。

  2)総務庁消費統計課長からの説明

  • 家計調査、社会生活基本調査をみると、土・日曜日に買い物に出かける回数は平日に比べて特に集中しているとは言えない。したがって、曜日調整の効果が大きいとは考えにくいが、X-12ARIMAで試算を行っている。
  • 家計調査から、調査継続世帯を抜き出して、チェーン指数を作成し、前年同月比に対応するものを算出する試みを行った。通常の対前年同月比とほぼ同じ数字が算出された。
  • 継続世帯の消費支出の前月又は前々月からの変化から、DIを作成した。加工方法により、結果に差が出る点も興味深い点がある。

  3)経済企画庁景気統計調査課長からの説明

  • 過去に、消費動向調査で行ったことがある家計収支(金額)調査の手法について説明。同手法による調査は家計調査に比べて、名目消費支出の分散が大きかった等の課題となる点を指摘。
  • 従来調査を踏まえ、今後検討すべき新調査として、金額ベースの家計収支程度の簡易な調査を大規模に行う方法や、預貯金口座を利用して家計収支を把握する方法を提案した。

(4)自由討議

  大要、以下のような議論が行われた。

  • 総額支出を求めても、必ずしも客体の負担軽減や回答のしやすさにはつながらず、記入の正確性の面でも、数値の信頼性に疑問がある。やはり、新調査を行うとしても、高額支出の消費について家計調査と同じように品目別に、大規模調査を行うことが好ましい。
  • 新調査を家計調査と同じ調査区で行う場合、調査員の負担が大きすぎる。
  • 家計調査のような詳細な調査を景気動向把握に利用している国はない。各国とも、短い家計簿記入期間、小サンプルで、日本よりも大まかな調査を行い、利用している。
  • 支出総額一本と高額支出調査とをあわせて、新たに調査を行うことが現実的ではないか。
  • 高額消費支出について、充分な標本数の確保が可能か。
  • 商業販売統計調査においては、小売業で売っているものを最終消費財と考えており、中間財等販売先の区別は原則必要ないので行っていない。財の小売販売額については確かに法人向け販売が含まれるものの、小売売上では分かる。通信費等への消費のシフトという傾向は、第3次産業活動指数等のサービス産業を含めた調査を参照することにより、把握することは可能である。
  • 統計調査を民間委託で行うのは、行革の関係から一つの潮流となっている。しかし、民間委託することによって、回答義務や秘密保持等に関して統計法上の課題は残る。
  • 簡易な大規模調査を行う場合には、常識的に調査員を利用した調査方法ではなく、郵送等の方法を選択するべきだと思われる。
  • 調査回答率を高めるためには、調査の事前説明等の調査員の関与が必要ではないか。郵送調査では回答率が低くなる恐れがある。
  • 消費動向調査では、耐久財の数量のみを回答させているが、今日の多様な財・サービスが存在する状況ではこのような回答は無意味でないか。今後調査を見直す必要がある。
  • 景気の現状などを聞く場合、客体の主観を回答させるような調査は、悲観的な回答に流れる傾向がある。
  • 主観を回答させる調査は悲観的な回答が出やすいこともあり、レベルという点ではそれほど有用ではないかもしれないが、時系列の推移は有用であり、一概に無意味とは言えない。
  • 景気ウォッチャー調査はウォッチャーが勤めている企業の動向ではなく、彼等からみた景気動向について回答してもらうので、比較的客観的な回答が多いのではないか。

―  以  上  ―

〔問い合わせ先] 経済企画庁調査局内国調査第一課  指標班

TEL  03-3581-9517